JP3598698B2 - チップ型バリスタの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非直線性が高く、電圧抑制能力及びサージ耐量の高いチップ型バリスタ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
チップ型バリスタはリード付きバリスタと比較して、低電圧のバリスタ特性が得やすく、基板に直接取り付けが可能であることから、ノイズ対策部品の中でも重要な位置を占めるものである。
【0003】
このチップ型バリスタは、電圧非直線抵抗特性を有する複数のセラミック層からなる積層体と、この積層体のセラミック層の間に介在されている内部電極層を備えたチップ型バリスタ素体に、内部電極層と電気的接続された外部電極を形成したものである。そしてこの外部電極は、一般にAg、またはAg−Pd合金による焼付けやスパッタリング、メッキ等の方法により形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなチップ型バリスタは、基板と直接接触することやはんだを用いて基板回路と接合されることにより、その電気的特性が変化することがあった。また、基板との熱結合は、チップ型バリスタの基板への取り付け方法に左右されやすく、このことがチップ型バリスタの性能を十分に引き出せない原因ともなっていた。
【0005】
一般にAgまたはAg−Pd合金による焼付け外部電極の形成は、外部電極の厚みが得やすいため、大きな電流密度が得られる。
【0006】
しかしながら、このAgまたはAg−Pd合金による焼付け外部電極は、はんだに浸食されやすく、そのため、高温や長時間のはんだ付けはできなかった。また、これらの外部電極が直接表面に現れた状態にあると、湿度等の外気状態によってはマイグレーションが発生し、バリスタ特性が劣化したり、最悪の場合、ショートしてしまう可能性があった。
【0007】
一方、スパッタリング等により形成された外部電極は、チップ型バリスタ素体が持つ電流を流せる能力に対して外部電極の厚みが充分にとれないため、その外部電極がチップ型バリスタ素体の能力を十分に引き出すことができなかった。
【0008】
また、AgやAg−Pd合金による外部電極を被覆するメッキとしては、電解メッキによる方法がある。この方法はメッキ浴中にスチールボールを投入し、このスチールボールと被メッキ物であるチップ型バリスタ素体によりバレルメッキが施される。そのため、チップ型バリスタ素体の表面にコーティングされているガラスや、さらにはチップ型バリスタ素体が削られる可能性がある。このため、耐環境性が低下したり、例えばチップ型バリスタ素体の表面に電流リークが生じ、漏れ電流が増加する場合がある。また、同時にチップ型バリスタ素体上にメッキ析出が起こりやすくなり、ショートとなる可能性も高い。
【0009】
そこで本発明の目的は、チップ型セラミック素体表面に損傷を発生させず、外部電極がはんだに浸食されにくく、また、チップ型セラミック素体表面へのメッキ析出を防ぐことができ、すぐれた電気特性が得られるチップ型バリスタの製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のチップ型バリスタの製造方法は、ZnOを主成分とする複数のセラミック層からなる積層体と、前記積層体のセラミック層の間に介在されている内部電極層を備えたチップ型バリスタ素体を準備し、前記チップ型バリスタ素体の表面に、前記内部電極層と電気的接続される外部電極を形成するに当たって、前記外部電極として、第1電極層を焼付けにより形成し、前記チップ型バリスタ素体をステアリン酸溶液に浸漬した後、無電解メッキにより、NiまたはNi合金からなる第2電極層を形成し、前記第2電極層の上にSnまたははんだからなる第3電極層を形成したことを特徴とする。
【0015】
また、チップ型バリスタの製造方法は、前記第3電極層を無電解メッキにより形成することを特徴とする。
【0017】
また、チップ型バリスタの製造方法は、前記第1電極層である焼付け電極がAgまたはAg−Pd合金からなることを特徴とする。
【0018】
また、チップ型バリスタの製造方法は、前記第2電極層の厚みが0.5〜3μm、前記第3電極層の厚みが1〜4μmであることを特徴とする。
【0019】
また、チップ型バリスタの製造方法は、前記第1電極層、第2電極層、及び第3電極層の各電極層の厚みの合計が5μm以上であることを特徴とする。
【0020】
本発明は、外部電極が焼付け電極からなる第1電極層と、NiまたはNi合金からなる第2電極層と、Snまたははんだからなる第3電極層とからなり、第2電極層または第3電極層のうち少なくとも第2電極層が無電解メッキ層からなるため、チップ型セラミック素体表面に損傷がなく、はんだ食われやマイグレーションが起こりにくく、また、厳しいはんだ付け条件にも耐える電極が得られる。このため、チップ型バリスタ素体の特性を十分に引き出すことのできる外部電極を備えたチップ型バリスタを得ることができる。
【0021】
そして、第2電極層または第3電極層のうち少なくとも第2電極層の形成に無電解メッキの手法を用い、しかもこれら各電極層の厚みを所定の範囲にコントロールすることにより、はんだ食われやチップ型バリスタ素体表面への析出がなく、密着強度が改善されるなど、チップ型バリスタの特性を損なうことがない。また、電極層の厚みの合計をコントロールすることにより、制限電圧が低くサージ耐量が高い、より優れたチップ型バリスタを得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
【0023】
(実施例)
始めに、原料粉末を準備した。すなわち、純度99%以上のZnO原料を98.6モル%、Bi2 O3 を0.3モル%、CoCO3 を0.5モル%、MnO2 を0.5モル%及びSb2 O2 を0.1モル%の割合で秤量し、これに純水と玉石を加えてボールミルにより24時間混合粉砕して混合スラリーを得た。
【0024】
次に、得られたスラリーを瀘過乾燥し、造粒した後、800℃の温度で2時間仮焼した。
【0025】
さらにこの仮焼物を粗粉砕した後、純水と玉石を加え、ボールミルで微粉砕し、得られたスラリーを瀘過乾燥した。
【0026】
このようにして作製した原料に、バインダーと有機溶剤(エチルアルコールとトルエン)を加えた後、さらに分散剤を加え、ボールミルで混合してスラリーを得た。
【0027】
得られたスラリーを用い、ドクターブレード法により50μmの厚みのセラミックグリーンシート作製し、このセラミックグリーンシートを所定の大きさの矩形に打ち抜き、複数枚のセラミックグリーンシートを得た。
【0028】
次に、このセラミックグリーンシート表面に、内部電極としてPtペーストをスクリーン印刷法により印刷塗布した。
【0029】
そして、これらの印刷済みのセラミックグリーンシートを交互に積み重ね、さらにその上下両側に印刷されていないセラミックグリーンシートを積み重ねたものを、2トン/cm2 の圧力で圧着しセラミック積層体とした後、このセラミック積層体を所定のチップの大きさにカットした。
【0030】
そして、これらのチップを500℃で2時間熱処理してバインダーを飛ばし、その後、1000℃で3時間焼成した。
【0031】
次に、得られたチップ型バリスタ素体の焼結体の内部電極の露出部に、外部電極として表1に示す焼付け電極厚みになるようにAgペーストを塗布し、600〜800℃で焼付けて第1電極層を形成した。
【0032】
【表1】
【0033】
続いて、第1電極層に対して、無電解メッキを行い第2電極層を形成した。
【0034】
すなわち、始めに、チップ型バリスタ素体の各試料をステアリン酸溶液に5分間浸漬した後、さらに塩化パラジウム溶液に5分間浸漬して第1電極層を活性化した。一方、比較の試料として、ステアリン酸溶液に浸漬せず、塩化パラジウム溶液に5分間浸漬したものも準備した。
【0035】
次に、これらチップ型バリスタ素体の第1電極層表面に、次亜リン酸塩を還元剤とするNi−Pメッキによる無電解ニッケルメッキを施し第2電極層を形成した。
【0036】
さらにこの後、これらのチップ型バリスタ素体を無電解Snメッキ浴に浸漬し、Snメッキを施し第3電極層を形成した後、純水洗浄して熱風で乾燥した。また、一方、別に第1、第2電極層を形成したチップ型バリスタを無電解はんだメッキ浴に浸漬し、はんだメッキを施して第3電極層を形成した後、純水洗浄して熱風で乾燥した。なお、表1に示したこれらチップ型バリスタの各メッキ膜厚は浸漬時間によりコントロールした。
【0037】
以上のようにして得た無電解メッキ処理したチップ型バリスタの各試料の電気特性を測定した。しかしながら、比較のため無電解Niメッキを施す前にステアリン酸溶液に浸漬しなかった試料には、試料表面全体にメッキが析出し、ショート状態となったため評価できなかった。
【0038】
測定にあたって、バリスタ特性はDC電流を流し、バリスタの両端電圧を測定し、1mAを流したときの電圧をバリスタ電圧V1mA とした。
【0039】
また、バリスタの性能指数を示す非直線係数αは、0.1mAを流したときの電圧V0.1mA 測定値とバリスタ電圧V1mA とで、
α=1/log(V1mA /V0.1mA )
の式で計算した。
【0040】
また、高電流或の性能として制限電圧を測定した。この制限電圧は、8×20μsecの三角の電流波形を持ち、そのピーク電流が10Aとなる電流パルスをバリスタに印加し、バリスタの両端電圧の最高電圧V10A を測定した。
【0041】
さらにサージ耐量として、制限電圧と同様な波形を有する電流パルスを印加して、パルス印加前後のV1mA の変化が10%を超えるピーク電流値を測定し、これを特性部の単位面積当たりの電流値として示した。
【0042】
以上の測定は、各ロットの試料数10個で測定した。また、バリスタ電圧と非直線係数αのばらつきを3CV(すなわち、3×σ/平均×100%)で計算した。
【0043】
一方、焼き付けAg電極の露出について、目視により、試料に一部でもAg電極の露出が確認できたものは露出「あり」とし、確認できなかったものは露出 「なし」とした。
【0044】
また、はんだ食われについて、試料を基板にとり付けて270℃のはんだ槽に30秒間浸漬した後に、試料の外部電極が0.1mm以上、取り付けはんだのほうへ移動後退しているものをはんだ食われ「あり」とし、そうでないものをはんだ食われ「なし」とした。
【0045】
また、はんだ付け後の密着強度について、試料の一方の外部電極側を固定し、もう一方の外部電極にリード線を取り付けて2Kgの力で引っ張り、外部電極が剥離するかどうかを見た。そして、剥離しなかったものを「良」、剥離したものを「不良」とした。
【0046】
また、チップ型バリスタ素体表面へのメッキ析出について、試料の対向電極間方向における外部電極とセラミックの境界部分から、同じく試料の対向電極間方向の中心部に向かって、メッキが0.2mm以上析出しているものをメッキ析出「あり」とし、そうでないものをメッキ析出「なし」とした。
【0047】
また、チップ型バリスタ素体表面の損傷について、目視により、試料の対向電極間方向に、欠け、割れ、ひび、傷等があるかどうかを確認し、損傷「あり」または損傷「なし」とした。
【0048】
以上の測定結果を表2及び表3に示すが、各試料No.は表1の試料No.と対応している。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
表1ないし表3から明らかなように、Agからなる焼付け電極である第1電極層の表面に、無電解メッキによりNi合金の第2電極層を形成し、さらにその表面にSnまたははんだの第3電極層を形成することにより、チップ型セラミック素体表面に損傷の発生もなく、素体上へのメッキ析出を防止し、はんだ耐熱性に優れたチップ型バリスタを提供することができる。
【0052】
これに対して、比較例に示す、Ag焼付け外部電極形成後、ステアリン酸溶液に浸漬しなかった試料は無電解メッキを施していても、試料のセラミック表面にメッキが析出するという不具合が生じた。
【0053】
なお、得られたデータを具体的に分析すると次のとおりとなる。
【0054】
すなわち、試料No.14は、Niメッキ電極の厚みが0.5μm未満で、部分的に下地の焼き付け電極が露出したため、はんだ食われが生じた。
【0055】
試料No.15は、Niメッキ電極の厚みが3μmを超え、Niメッキ電極が外部電極以外のチップ型バリスタ素体表面へ析出したためにショートした。
【0056】
試料No.8及び試料No.9では、Snメッキ電極の厚みが1μm未満で、制限電圧が高く、サージ耐量は低かった。また、Snメッキ電極の厚みが薄いため、はんだ付け後に十分な密着強度が得られなかった。
【0057】
試料No.17では、Snメッキ電極の厚みが4μmを超え、Snメッキ電極が外部電極以外のチップ型バリスタ素体表面へ析出したためショートした。
【0058】
試料No.19は、はんだメッキ電極の厚みが1μm未満で、サージ耐量が低く、また、はんだ食われがあり、はんだ付け後の十分な密着強度が得られなかった。
【0059】
試料No.20では、はんだメッキ電極の厚みが4μmを超え、はんだ食われもなく、はんだ付け後の密着強度も得られたが、はんだメッキ電極が外部電極以外のチップ型バリスタ素体表面へ析出したためショートした。
【0060】
以上の結果より、外部電極の厚みとして、Niメッキ電極の厚みは0.5〜3μm、Snメッキ電極またははんだメッキ電極の厚みは1〜4μmが好ましい。
【0061】
また、試料No.1では、Niメッキ電極の厚みが0.5μm以上、Snメッキ電極の厚みが1μm以上あるため、焼付け電極の露出やはんだ食われはなかった。しかし、焼付け電極とNiメッキ電極及びSnメッキ電極を含む外部電極の厚みの合計が5μm未満であるため、制限電圧が高く、サージ耐量は低かった。
【0062】
したがって、前述のように、第2電極層のNiメッキの厚みが0.5〜3μm、第3電極層のSnメッキまたははんだメッキの厚みが1〜4μmを満足し、かつ、第1電極層の焼付け電極と前記第2、第3電極層のメッキを含む外部電極の厚みの合計が5μm以上とすることがより好ましい。そして、外部電極の厚みの合計の上限は、製造コスト及び電極の寸法精度の管理上、100μm程度とすることが望ましい。
【0063】
なお、上記実施例では焼付け外部電極にAgを用いたが、これに限られるものではなく、このほかにAg−Pd(例えば、重量混合比7:3)合金を用いても同様の効果が得られる。
【0064】
また、上記実施例では焼付け電極表面の無電解メッキとして、次亜リン酸塩を還元剤とするNi−Pメッキを施したが、無電解メッキとしてはこれに限られるものではなく、このほかにホウ水素化物若しくはジメチルアミンボランなどを還元剤とするNi−Bメッキ、ヒドラジンを還元剤とするNiメッキ、またはこれらを基本とする多元系合金メッキ、例えばNi系ではNi−Cu−PメッキやNi−W−Pメッキ等でも同様の効果が得られる。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、はんだ付け時のはんだ食われが起こりにくくなり、はんだのぬれ性も改善され、過酷なはんだ付け条件にも耐えられるチップ型バリスタが得られる。
【0066】
また、無電解メッキはチップ型バリスタ素体表面のセラミック部分を損傷しないため、はんだ付け時の漏れ電流の増加をなくすことができる。また、無電解メッキであっても、その厚みを一定範囲にコントロールすることにより、チップ型バリスタ素体表面上にメッキが析出せず、ショートを防止することができる。
【0067】
また、第1、第2及び第3電極層の各厚みの合計を5μm以上とすることにより、はんだ付けされた状態等にかかわらず、一定以上のサージ耐量が得られ、かつ制限電圧が低くなるなど、優れた電気特性を得ることができる。
Claims (5)
- ZnOを主成分とする複数のセラミック層からなる積層体と、前記積層体のセラミック層の間に介在されている内部電極層を備えたチップ型バリスタ素体を準備し、
前記チップ型バリスタ素体の表面に、前記内部電極層と電気的接続される外部電極を形成するに当たって、前記外部電極として、第1電極層を焼き付けにより形成し、前記チップ型バリスタ素体をステアリン酸溶液に浸漬した後、無電解メッキにより、NiまたはNi合金からなる第2電極層を形成し、前記第2電極層の上にSnまたははんだからなる第3電極層を形成したことを特徴とするチップ型バリスタの製造方法。 - 前記第3電極層を無電解メッキにより形成することを特徴とする請求項1に記載のチップ型バリスタの製造方法。
- 前記第1電極層である焼付け電極は、AgまたはAg−Pd合金からなることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のチップ型バリスタの製造方法。
- 前記第2電極層の厚みが0.5〜3μm、前記第3電極層の厚みが1〜4μmであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のチップ型バリスタの製造方法。
- 前記第1電極層、第2電極層、及び第3電極層の各電極層の厚みの合計が5μm以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のチップ型バリスタの製造方法。
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