JP4253173B2 - 無線装置、送信制御切替方法、および送信制御切替プログラム - Google Patents

無線装置、送信制御切替方法、および送信制御切替プログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、無線装置、送信制御切替方法、および送信制御切替プログラムに関し、特に、他の無線装置への送信電力のレベル制御および指向性制御を適応的に切替制御する無線装置、およびそのような無線装置における送信制御切替方法および送信制御切替プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、急速に発達しつつある移動体通信システム(たとえば、Personal Handyphone System:以下、PHS)では、無線基地装置(以下、基地局)と移動端末装置(以下、端末)との間の通信に際し、特に基地局において、アダプティブアレイ処理により所望の特定の端末からの受信信号を抽出する方式が提案されている(たとえば、非特許文献1および非特許文献2を参照)。
【0003】
アダプティブアレイ処理とは、基地局の複数のアンテナからなるアレイアンテナで端末から受信した信号に基づいて、アンテナごとの受信係数(ウェイト)からなる受信ウェイトベクトルを計算して適応制御することによって、特定の端末ユーザからの信号を正確に抽出する処理である。
【0004】
このようなアダプティブアレイ処理を採用したアダプティブアレイ基地局においては、受信信号のシンボルごとにこのような受信ウェイトベクトルを計算する受信ウェイトベクトル計算機が設けられ、この受信ウェイトベクトル計算機は、受信信号の各フレームの先頭部分に設けられた既知の参照信号区間(ウェイト推定区間)において、受信信号と算出された受信ウェイトベクトルとの複素乗算和(アレイ出力信号)と、当該既知の参照信号との誤差の2乗を減少させるよう受信ウェイトベクトルを収束させる処理、すなわち特定の端末ユーザからの受信指向性を収束させるアダプティブアレイ処理を実行する。
【0005】
アダプティブアレイ処理では、このような受信ウェイトベクトルの収束を、時間や信号電波の伝搬路特性の変動に応じて適応的に行ない、受信信号中から干渉成分やノイズを除去し、特定の端末ユーザからの受信信号を抽出している。
【0006】
このような受信ウェイトベクトル計算機では、アレイ出力信号と参照信号との誤差の2乗に基づく最急降下法MMSE(Minimum Mean Square Error)によりウェイトの学習を行うアルゴリズムである、RLS(Recursive Least Squares)アルゴリズム、LMS(Least Mean Square)アルゴリズム、SMI(Sample Matrix Inversion)アルゴリズムなどのアダプティブアレイアルゴリズムを使用している。
【0007】
このようなRLSアルゴリズム、LMSアルゴリズム、SMIアルゴリズムなどは、アダプティブアレイ処理の分野では周知の技術である。
【0008】
アダプティブアレイ基地局ではさらに、このようにして算出された受信ウェイトベクトルをコピーした送信ウェイトベクトルで送信信号を重み付けすることにより、端末ユーザに対する送信指向性および送信電力を決定している。
【0009】
すなわち、受信時と同じアレイアンテナを用いて送信される信号には、受信時と同じ端末ユーザをターゲットとする重み付けがなされることになり、アダプティブアレイ基地局からは同じ端末ユーザのみをターゲットとする鋭い指向性を有する送信信号が出力されることになる。したがって、送信時に当該基地局の送信電波が周辺の他の基地局(セル)に与える干渉量である与干渉放射特性を抑制することができる。
【0010】
このようなMMSE系のアルゴリズムで算出された受信ウェイトベクトルをコピーした送信ウェイトベクトルで送信信号の指向性を制御する方法は公知であり、たとえば非特許文献3に開示されている。
【0011】
一方、受信ウェイトベクトルをそのままコピーして送信ウェイトベクトルとして用いるのではなく、受信信号から端末到来方向(いわゆる受信応答ベクトルまたは単に応答ベクトル)を推定し、その受信応答ベクトルから送信ウェイトを推定する方法(Zero-forcing法)が知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
【0012】
ここで、受信応答ベクトルとは、基地局で受信した端末からの信号成分のうち、各端末からの信号の振幅および位相に関する情報を表わすものである。基地局において、このような各端末ごとの受信応答ベクトルを推定することにより、各端末から基地局までの無線区間の伝搬路特性、信号受信時における電力値などを検出することが可能となる。
【0013】
特に、アレイアンテナを構成する複数のアンテナで送受信される信号の振幅および位相の成分を調整することによって、信号電波の送受信の指向性を制御するアダプティブアレイ基地局においては、各アンテナごとの振幅および位相の成分の制御は本質的に、推定された受信応答ベクトルに基づいてウェイトベクトルを計算することによって行なわれる。
【0014】
従来、各端末から基地局で受信した信号の受信応答ベクトルの推定方法としては、基地局の各アンテナごとに受信した受信信号(IQ信号)と、当該端末からの復調ビットデータの再変調信号とを複素乗算してその結果をアンサンブル平均(時間平均)することによって推定する手法が用いられている。
【0015】
上述のZero-forcing法では、有意な干渉が測定された場合には、所望ユーザ端末および干渉ユーザ端末の到来方向の情報を表わす受信応答ベクトルを推定し、推定された受信応答ベクトルに基づいて、所望ユーザ端末の方向に送信電波のビームをかつ干渉ユーザ端末の方向に送信電波のヌルを強制的に向けるような送信ウェイトを形成する。
【0016】
これにより、受信ウェイトをコピーして送信ウェイトとする場合と同様に、アダプティブアレイ基地局からは所望ユーザをターゲットとする指向性を有する送信信号が出力されるとともに、他の基地局(セル)に対する与干渉放射特性をも抑制することができる。
【0017】
以上のように、アダプティブアレイ基地局では、アダプティブアレイ処理により受信時の干渉抑圧が向上するだけではなく、上述の各種の方法による送信時の送信指向性制御により他の基地局(セル)に対する与干渉放射特性をも改善することができ、移動体通信システム全体として、周波数の利用効率を向上させることができる。
【0018】
しかしながら、上述の送信指向性の制御を用いれば、送信時に当該基地局の送信電波が周辺の他の基地局(セル)に与える干渉量である与干渉放射特性を抑制することができるものの、所望ユーザ端末そのものに対する通信品質の観点からは必ずしも最適の送信になるとは限らない。
【0019】
たとえば、上述のMMSE系のアルゴリズムを用いるアダプティブアレイ受信では、信号対雑音比を最大化するように受信ウェイトが形成される。このような方法では、ノイズ成分が大きい場合、干渉成分が小さい場合、アレイアンテナを構成するそれぞれのアンテナでの所望波成分の入力電力差が大きい場合など、様々な場合に形成される受信ウェイトが、それぞれのアンテナのウェイト値が互いに大きく異なるような受信ウェイトになる場合が発生する。
【0020】
このような、ばらつきの大きなウェイト値からなる受信ウェイトをそのまま送信ウェイトとして適用すると、アレイアンテナの一部のアンテナの送信電力は大きく低下し、実質的にアレイアンテナの残りの一部のアンテナからしか電波が送信されないような事態が生じる。このような場合には、アレイアンテナ全体の送信電力が大きく低下することになる。
【0021】
すなわち、所望ユーザ端末に対する指向性は形成されているものの、電波環境によっては、当該所望ユーザ端末における下り受信電力レベルが低下する場合が起こり得る。換言すると、所望ユーザ端末における受信レベルを常に最大化することは困難である。
【0022】
したがって、下り干渉波が存在する場合には、不十分な下り送信電力レベルのため所望ユーザ端末における通信品質が劣化する場合があった。
【0023】
一方、アダプティブアレイ基地局において、いわゆる同相合成の手法により、端末での受信電力レベルを最大化させることを可能にする送信ウェイトを算出することが知られている(たとえば、特許文献2および特許文献3を参照)。
【0024】
この同相合成の基本原理については後で詳細に説明するが、簡単に言えば、アダプティブアレイ処理により推定した端末到来方向(受信応答ベクトル)に最大電力で信号を送信できるように、アレイアンテナのそれぞれのアンテナで受信した信号の振幅比は変えずに位相が同相合成されるようなウェイトを求める。
【0025】
アレイアンテナを構成するすべてのアンテナのそれぞれについて、そのようなウェイトを受信応答ベクトルに乗算することにより、すべての乗算結果は実数成分のみとなる。その総和を求めることにより、すべてのアンテナからの送信出力が同相合成されることになる。
【0026】
アダプティブアレイ基地局において、このような同相合成により算出された送信ウェイトを用いた送信を行なえば、一定送信電力時において端末での受信電力レベルを上昇させ、最大化を実現することができる。
【0027】
【特許文献1】
特開2000−106539号公報
【0028】
【特許文献2】
特開平11−274976号公報
【0029】
【特許文献3】
特開2000−151487号公報
【0030】
【非特許文献1】
飯沼敏範他著、「アダプティブアレイアンテナ方式PHS基地局」、「SANYO TECHNICAL REVIEW(三洋電機技報)」、三洋電機株式会社、2000年5月1日発行、第32巻、第1号、p.80−88
【0031】
【非特許文献2】
土居義晴他著、「空間分割多元接続方式PHS基地局」、「SANYO TECHNICAL REVIEW(三洋電機技報)」、三洋電機株式会社、2001年12月10日発行、第33巻、第3号、p.93−101
【0032】
【非特許文献3】
笹岡秀一編著、「移動通信」、オーム社、1998年5月25日発行、p.283−312
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、受信ウェイトをそのまま送信ウェイトとする方法や、いわゆるZero-forcing法では、他の基地局(セル)に対する与干渉放射特性は抑制できるものの、所望ユーザ端末における受信電力レベルを常に最大化することは困難であり、端末受信電力レベルが低下すると下り干渉波の影響により通信品質が劣化することがあった。
【0034】
また、上述のように、同相合成手法によって形成された送信ウェイトを用いることによって、所望ユーザ端末における受信電力レベルの最大化が可能であるが、この方法では、送信指向性に関しては、所望ユーザ端末の方向以外の方向については何ら制約はなく、周辺の他のセルに干渉ユーザ端末が存在する場合、その方向に指向性のヌルを向けることはない。すなわちこの方法では、他の基地局(セル)に対する与干渉放射特性については考慮されていない。
【0035】
したがって、アダプティブアレイ基地局において同相合成手法による送信を実行すると、当該基地局(セル)の所望ユーザ端末に対しては下り受信レベルの最大化による通信品質の改善が可能であるが、他のセルのユーザ端末に対しては与干渉量の増大を引き起こし、通信品質の劣化を招来することになる。したがって、移動体通信システム全体として考えた場合、同相合成手法による送信を常時実行することは不利益が大きいという問題があった。
【0036】
それゆえに、この発明の目的は、他の無線装置における下り受信レベルの最大化による通信品質の向上を図りながら、さらに別の無線装置(セル)に与える干渉量をも抑制することができる無線装置、送信制御切替方法、および送信制御切替プログラムを提供することである。
【0037】
【課題を解決するための手段】
この発明の1つの局面によれば、複数のアンテナからなるアレイアンテナを用いて信号の送受信を行なう無線装置は、アダプティブアレイ処理手段と、第1の送信ウェイト決定手段と、第2の送信ウェイト決定手段と、受信レベル推定手段と、ウェイト切替選択手段と、送信処理手段とを備える。アダプティブアレイ処理手段は、アレイアンテナで受信した信号にアダプティブアレイ処理による受信処理を施す。第1の送信ウェイト決定手段は、アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、所望の他の無線装置の方向に対して送信電波のビームを向けかつ干渉波の方向に対して送信電波のヌルを向ける送信指向性を形成するための第1の送信ウェイトを決定する。第2の送信ウェイト決定手段は、アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを最大化するための第2の送信ウェイトを決定する。受信レベル推定手段は、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。ウェイト切替選択手段は、受信レベル推定手段による推定結果に基づいて、第1の送信ウェイトまたは第2の送信ウェイトを切替選択する。送信処理手段は、ウェイト切替選択手段により切替選択された送信ウェイトにより送信信号に送信処理を施す。
【0038】
好ましくは、ウェイト切替選択手段は、受信レベル推定手段によって推定された所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが所定のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、しきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0039】
好ましくは、受信レベル推定手段は、所望の他の無線装置からの上り受信電力レベルを測定し、測定された上り受信電力レベルに基づいて所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。ウェイト切替選択手段は、受信レベル推定手段によって測定された上り受信電力レベルが所定のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、しきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0040】
好ましくは、受信レベル推定手段は、第1の送信ウェイトを用いて送信信号に送信処理を施した場合における所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。ウェイト切替選択手段は、受信レベル推定手段によって推定された下り受信電力レベルが所定のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、しきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0041】
好ましくは、受信レベル推定手段は、所望の他の無線装置からの上り受信電力レベルを測定し、測定された前記上り受信電力レベルに基づいて所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、かつ第1の送信ウェイトを用いて送信信号に送信処理を施した場合における所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。ウェイト切替選択手段は、測定された上り受信電力レベルが所定の第1のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、第1のしきい値以下である場合には、第1の送信ウェイトを用いて送信信号に送信処理を施した場合における指定された所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが所定の第2のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、第2のしきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0042】
好ましくは、第1の送信ウェイト決定手段は、アダプティブアレイ処理の結果得られる所望の他の無線装置の受信ウェイトを第1の送信ウェイトとして決定する。
【0043】
好ましくは、第1の送信ウェイト決定手段は、アダプティブアレイ処理の結果得られる所望の他の無線装置の受信応答ベクトルに基づき第1の送信ウェイトを算出する。
【0044】
好ましくは、第2の送信ウェイト決定手段は、アダプティブアレイ処理の結果得られる所望の他の無線装置の受信応答ベクトルにウェイトを乗算した場合に受信応答ベクトルの振幅を変えずに位相を同相合成するようなウェイトを第2の送信ウェイトとして決定する。
【0045】
好ましくは、第2の送信ウェイト決定手段は、複数のアンテナのうちで受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の送信電力が所望の他の無線装置で受信できるようにウェイトを決定する。
【0046】
好ましくは、第2の送信ウェイト決定手段は、受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の電力が第2の定数となり、これにより一定値の電力レベルが所望の他の無線装置で受信できるようにウェイトを決定する。
【0047】
この発明の他の局面によれば、複数のアンテナからなるアレイアンテナを用いて信号の送受信を行なう無線装置における送信制御切替方法は、アレイアンテナで受信した信号にアダプティブアレイ処理による受信処理を施すステップと、アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、所望の他の無線装置の方向に対して送信電波のビームを向けかつ干渉波の方向に対して送信電波のヌルを向ける送信指向性を形成するための第1の送信ウェイトを決定するステップと、アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを最大化するための第2の送信ウェイトを決定するステップと、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定するステップと、下り受信電力レベルの推定結果に基づいて、第1の送信ウェイトまたは第2の送信ウェイトを切替選択するステップと、切替選択された送信ウェイトにより送信信号に送信処理を施すステップとを備える。
【0048】
好ましくは、送信ウェイトを切替選択するステップは、推定された所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが所定のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、しきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0049】
好ましくは、下り受信電力レベルを推定するステップは、所望の他の無線装置からの上り受信電力レベルを測定し、測定された上り受信電力レベルに基づいて所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。送信ウェイトを切替選択するステップは、測定された上り受信電力レベルが所定のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、しきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0050】
好ましくは、下り受信電力レベルを推定するステップは、第1の送信ウェイトを用いて送信信号に送信処理を施した場合における所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。送信ウェイトを切替選択するステップは、推定された下り受信電力レベルが所定のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、しきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0051】
好ましくは、下り受信電力レベルを推定するステップは、所望の他の無線装置からの上り受信電力レベルを測定し、測定された上り受信電力レベルに基づいて所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、かつ第1の送信ウェイトを用いて送信信号に送信処理を施した場合における所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。送信ウェイトを切替選択するステップは、測定された上り受信電力レベルが所定の第1のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、第1のしきい値以下である場合には、第1の送信ウェイトを用いて送信信号に送信処理を施した場合における推定された所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが所定の第2のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、第2のしきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0052】
好ましくは、第1の送信ウェイトを決定するステップは、アダプティブアレイ処理の結果得られる所望の他の無線装置の受信ウェイトを第1の送信ウェイトとして決定する。
【0053】
好ましくは、第1の送信ウェイトを決定するステップは、アダプティブアレイ処理の結果得られる所望の他の無線装置の受信応答ベクトルに基づき第1の送信ウェイトを算出する。
【0054】
好ましくは、第2の送信ウェイトを決定するステップは、アダプティブアレイ処理の結果得られる所望の他の無線装置の受信応答ベクトルにウェイトを乗算した場合に受信応答ベクトルの振幅を変えずに位相を同相合成するようなウェイトを第2の送信ウェイトとして決定する。
【0055】
好ましくは、第2の送信ウェイトを決定するステップは、複数のアンテナのうちで受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の送信電力が所望の他の無線装置で受信できるようにウェイトを決定する。
【0056】
好ましくは、第2の送信ウェイトを決定するステップは、受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の電力が第2の定数となり、これにより一定値の電力レベルが所望の他の無線装置で受信できるようにウェイトを決定する。
【0057】
この発明のさらに他の局面によれば、複数のアンテナからなるアレイアンテナを用いて信号の送受信を行なう無線装置における送信制御切替プログラムは、コンピュータに、アレイアンテナで受信した信号にアダプティブアレイ処理による受信処理を施すステップと、アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、所望の他の無線装置の方向に対して送信電波のビームを向けかつ干渉波の方向に対して送信電波のヌルを向ける送信指向性を形成するための第1の送信ウェイトを決定するステップと、アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを最大化するための第2の送信ウェイトを決定するステップと、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定するステップと、下り受信電力レベルの推定結果に基づいて、第1の送信ウェイトまたは第2の送信ウェイトを切替選択するステップと、切替選択された送信ウェイトにより送信信号に送信処理を施すステップとを実行させる。
【0058】
好ましくは、送信ウェイトを切替選択するステップは、推定された所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが所定のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、しきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0059】
好ましくは、下り受信電力レベルを推定するステップは、所望の他の無線装置からの上り受信電力レベルを測定し、測定された上り受信電力レベルに基づいて所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。送信ウェイトを切替選択するステップは、測定された上り受信電力レベルが所定のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、しきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0060】
好ましくは、下り受信電力レベルを推定するステップは、第1の送信ウェイトを用いて送信信号に送信処理を施した場合における所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。送信ウェイトを切替選択するステップは、推定された下り受信電力レベルが所定のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、しきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0061】
好ましくは、下り受信電力レベルを推定するステップは、所望の他の無線装置からの上り受信電力レベルを測定し、測定された上り受信電力レベルに基づいて所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、かつ第1の送信ウェイトを用いて送信信号に送信処理を施した場合における所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する。送信ウェイトを切替選択するステップは、測定された上り受信電力レベルが所定の第1のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、第1のしきい値以下である場合には、第1の送信ウェイトを用いて送信信号に送信処理を施した場合における推定された所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが所定の第2のしきい値よりも大きい場合には第1の送信ウェイトを選択し、第2のしきい値以下である場合には第2の送信ウェイトを選択する。
【0062】
好ましくは、第1の送信ウェイトを決定するステップは、アダプティブアレイ処理の結果得られる所望の他の無線装置の受信ウェイトを第1の送信ウェイトとして決定する。
【0063】
好ましくは、第1の送信ウェイトを決定するステップは、アダプティブアレイ処理の結果得られる所望の他の無線装置の受信応答ベクトルに基づき第1の送信ウェイトを算出する。
【0064】
好ましくは、第2の送信ウェイトを決定するステップは、アダプティブアレイ処理の結果得られる所望の他の無線装置の受信応答ベクトルにウェイトを乗算した場合に受信応答ベクトルの振幅を変えずに位相を同相合成するようなウェイトを第2の送信ウェイトとして決定する。
【0065】
好ましくは、第2の送信ウェイトを決定するステップは、複数のアンテナのうちで受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の送信電力が所望の他の無線装置で受信できるようにウェイトを決定する。
【0066】
好ましくは、第2の送信ウェイトを決定するステップは、受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の電力が第2の定数となり、これにより一定値の電力レベルが所望の他の無線装置で受信できるようにウェイトを決定する。
【0067】
したがって、この発明によれば、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、その結果に応じて与干渉抑制効果に優れた第1の送信ウェイトと、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルの最大化が可能な第2の送信ウェイトとを切替選択して送信処理を行なっているので、下り受信電力レベルが十分なときには第1の送信ウェイトを選択して与干渉を抑制することができるとともに、下り受信電力が十分でない場合には第2の送信ウェイトを選択して下り受信電力レベルの増大を図ることにより下りの干渉波に対する通信品質の劣化を防止することができる。この結果、移動体通信システム全体として周波数の有効利用および通信品質の改善を図ることができる。
【0068】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0069】
図1は、この発明の実施の形態による、移動体通信システム(たとえばPHS)におけるアダプティブアレイ基地局の全体構成を示す機能ブロック図である。
【0070】
図1に示したアダプティブアレイ基地局について詳細に説明する前に、この発明の基本原理について概略的に説明する。
【0071】
図2は、従来の技術において説明した3種類の送信方法、すなわち、MMSE系アルゴリズムで算出した受信ウェイトをコピーして送信ウェイトとする方法(以下、MMSE受信ウェイトコピー法:非特許文献3参照)、受信応答ベクトルに基づいて所望ユーザ端末および干渉ユーザ端末にそれぞれ強制的にビームおよびヌルを向けさせるZero-forcing法(特許文献1参照)、および同相合成手法によって形成された送信ウェイトを用いる方法(以下、同相合成最大送信法:特許文献2および特許文献3参照)の特徴を対比して示す図である。
【0072】
図2を参照して、MMSE受信ウェイトコピー法では、所望ユーザ端末における受信電力(所望波電力)は、必ずしも最大レベルではない(白丸)。一方、この方法では、受信ウェイトをそのまま送信ウェイトとして用いることにより受信信号に混入する干渉波に対しては指向性のヌルが自動的に向けられる。よって与干渉抑制効果は大きくなる(2重丸)。
【0073】
次に、Zero-forcing法では、所望ユーザ端末における受信電力(所望波電力)は、必ずしも最大レベルではない(白丸)。一方、この方法では、所望ユーザ端末および、捕捉できた(受信応答ベクトルが推定できた)干渉ユーザ端末に対してそれぞれビームおよびヌルが強制的に推定される。よって、受信信号に混入する干渉波のうち、捕捉できた干渉ユーザに対しては与干渉抑制効果が得られるが、捕捉できなかった干渉ユーザに対しては与干渉抑制効果が得られない(白丸)。
【0074】
これらの2種類の方法に対比して、同相合成最大送信法では、所望ユーザ端末における受信電力(所望波電力)は改善され、最大化される(2重丸)。一方、この送信方法では、他の基地局(セル)に対する送信指向性は無制約であるため、与干渉抑圧効果は奏しない(X印)。
【0075】
この発明は、このような各送信方法の特徴に着目し、送信方法を電波状況に応じて適応的に切替制御するものである。
【0076】
より特定的に、この発明では、所望ユーザ端末での受信電力レベルを最大化する必要があるか否かを判定し、最大化する必要があれば、同相合成最大送信法によって所望ユーザ端末の受信電力レベルを増大させることによって、下り干渉波の影響を受けることなく通信品質の改善を実現することができる。
【0077】
一方、所望ユーザ端末での受信電力レベルを最大化する必要がなければ、MMSE受信ウェイトコピー法またはZero-forcing法によって所望ユーザ端末および干渉ユーザ端末に対する送信指向性制御を実行することにより、周辺の他の基地局(セル)に対する与干渉放射特性を抑圧することができる。
【0078】
送信方法の切替の判定基準には、基地局で測定した所望ユーザ端末からの上りの受信レベル、基地局で推定した所望ユーザ端末での下り受信レベルなどが用いられる。
【0079】
以上の送信方法の切替制御については、以下にこの発明の実施の形態を参照して詳細に説明する。以下に説明する実施の形態では、所望ユーザ端末での受信レベルを最大化する必要がなければ、MMSE受信ウェイトコピー法を用いて送信ウェイトを形成し、最大化する必要がある場合に、同相合成最大送信法を用いて送信ウェイトを形成するものとする。
【0080】
図1のこの発明の実施の形態によるアダプティブアレイ基地局において、基地局の複数本、たとえば4本のアンテナ1,2,3,4で受信されたユーザ端末からの信号は、対応する送受信回路5,6,7,8のそれぞれのRF回路5a,6a,7a,8aで受信処理が施され、さらにA/DおよびD/A変換機9,10,11,12でデジタル信号に変換される。
【0081】
デジタル信号に変換されたそれぞれのアンテナからの4系統の受信信号は、サーキュレータ13を介してデジタルシグナルプロセッサ(DSP)14に与えられる。点線14で表わされたDSPの内部は、DSPによってソフトウェア的に実行される処理を機能ブロック図で示したものである。
【0082】
サーキュレータ13を介してDSP14に与えられた4系統の受信信号は、受信処理部15の同期処理部15aに与えられる。
【0083】
同期処理部15aは、周知の同期位置推定方法により、当該基地局に接続しているユーザ端末の受信信号の受信タイミングを高精度に推定して同期処理を実行する。さらに同期窓制御部15bは、受信信号に対し、所定の同期窓制御を施す。
【0084】
次に、受信信号に対してアダプティブアレイ処理部15cにより周知のアダプティブアレイ処理が施され、所望ユーザ端末の算出された受信ウェイトを用いて、所望ユーザ端末からの受信信号が抽出される。
【0085】
抽出された所望ユーザ端末の信号は、検波部15dで復調され、所望ユーザ端末の復調データ(ビット列)として、DSP14から出力される。
【0086】
また、アダプティブアレイ処理部15cで算出された受信ウェイト、およびアダプティブアレイ処理部15cで測定された所望ユーザ端末からの上り受信電力を表わす指標であるRSSI(Received Signal Strength Indicator)は、送信ウェイト制御部17に与えられる。送信ウェイト制御部17はこの発明による切替制御方法により送信ウェイトを形成する。送信ウェイト制御部17による切替制御方法については後で詳細に説明する。
【0087】
一方、所望ユーザ端末に送信すべきデータ(音声データなど)は、DSP14の送信処理部16の変調処理部16aに与えられる。変調処理部16aで変調された所望ユーザ端末のデータは、乗算器16bの一方入力に与えられる。
【0088】
また、乗算器16bの他方入力には、送信ウェイト制御部17で算出された所望ユーザ端末用の送信ウェイトが与えられ、所望ユーザ端末のデータの送信指向性が決定される。
【0089】
乗算器16bの出力は、図中1本の太線矢印で示す4系統の送信信号であり、サーキュレータ13を介してA/DおよびD/A変換機9,10,11,12に配分する。
【0090】
A/DおよびD/A変換機9,10,11,12でアナログ信号に変換された4系統の送信信号は、対応する送受信回路5,6,7,8のそれぞれのRF回路5a,6a,7a,8aで送信処理が施され、対応するアンテナ1,2,3,4を介して所望ユーザ端末に向かって送出される。
【0091】
前述のように、この発明の実施の形態では、所望ユーザ端末での受信レベルを最大化する必要がなければ、MMSE受信ウェイトコピー法を用いて送信ウェイトを形成し、最大化する必要がある場合に、同相合成最大送信法を用いて送信ウェイトを形成するものとする。
【0092】
この発明の実施の形態で採用するMMSE受信ウェイトコピー法は、周知の方法であるので(たとえば非特許文献3を参照)、その動作説明はここでは省略する。
【0093】
一方、この発明の実施の形態で採用する同相合成最大送信法は、特許文献2および特許文献3に開示された従来の同相合成最大送信法をさらに改良したものである。以下に、この発明の実施の形態で採用された同相合成最大送信法について説明する。
【0094】
図3は、従来からの同相合成の基本原理を説明するための概念図である。図3の(a)は、IQ座標平面上の受信応答ベクトルの信号点(RV_1I,RV_1Q)を表わしている。
【0095】
この受信応答ベクトルに送信ウェイトを乗算すると、図3の(b)のIQ座標平面に示すように、受信応答ベクトルの振幅すなわち大きさは変わらず、位相だけが回転する。その結果、I成分(振幅成分)のみとなるような送信ウェイト、すなわち、W_1*×RV_1=|RV_1|(*は複素共役)となるような送信ウェイトを求める。
【0096】
アダプティブアレイ基地局のアレイアンテナを構成する複数(以下の例では4本)のアンテナの各々について図3に示す条件を満たすような送信ウェイトが求められると、すべてのアンテナの受信応答ベクトルと送信ウェイトとの乗算結果はI成分(振幅成分)のみとなり、すべてのアンテナからの送信出力が、所望ユーザ端末の受信時において同相合成されることになる。すなわち、端末受信信号は、ΣW*×RV=|RV_1|+|RV_2|+|RV_3|+|RV_4|で表わされる。
【0097】
このような同相合成の基本原理を用いて、端末での受信レベルを最大化するための、この発明の実施の形態で採用される送信ウェイト形成アルゴリズムについて以下に詳細に説明する。
【0098】
まず、所望ユーザ端末の受信応答ベクトルを次式で表わす。なお、以下の式において、Tは転置を表わす。
【0099】
【数1】
Figure 0004253173
【0100】
次に、ウェイトを次式で表わす。
【0101】
【数2】
Figure 0004253173
【0102】
ここで、アダプティブアレイ処理では、所望ユーザ端末の応答ベクトルにウェイトを乗算した値が1となるようにウェイトが形成される。すなわち、ウェイトは次式を満たすように形成される。
【0103】
【数3】
Figure 0004253173
【0104】
この式を、アンテナごとの同相合成により求める。すなわち、各アンテナごとに、受信応答ベクトルとウェイトとの乗算結果が振幅成分(I成分)のみとなるウェイトを形成する。具体的には、次式を満たすウェイトを形成する。
【0105】
【数4】
Figure 0004253173
【0106】
従来の同相合成の手法では、このようにして求めたウェイトを送信ウェイトとして最大電力送信を行なっているが、この発明の実施の形態では、以下に説明するように、さらに従来の同相合成の手法を改良した方法を用いている。
【0107】
まず、アレイアンテナを構成する4本のアンテナ(アンテナ1〜4)のそれぞれの受信応答ベクトルの振幅成分(大きさ)をY1〜Y4とすると、Y1〜Y4は、次式によって表わされる。なお、次式において、RV1I〜RV4Iは、アンテナ1〜4の受信応答ベクトルのI成分であり、RV1Q〜RV4Qは、アンテナ1〜4の受信応答ベクトルのQ成分である。次式に表わされるように各アンテナの受信応答ベクトルの振幅は、当該アンテナの受信応答ベクトルのI成分およびQ成分の2乗の和の平方を取ったものとなる。
【0108】
【数5】
Figure 0004253173
【0109】
上記の振幅Y1〜Y4のうち、最大振幅のものをYとする。この発明の実施の形態で使用する改良された同相合成の手法では、所望ユーザ端末における受信電力(4本のアンテナからの合計振幅)が、最大振幅Yの第1の定数α倍となるようにするものである。
【0110】
ここで、アンテナ1〜4のウェイトのI成分をw1I〜w4Iとし、Q成分をw1Q〜w4Qと表わす。この発明の方法では、Y1〜Y4のうちの最大振幅をY1とした場合、所望ユーザ端末における受信電力がα×Y1となるように、それぞれのアンテナのウェイト成分に次式のような送信電力調整用の係数を乗算する。
【0111】
【数6】
Figure 0004253173
【0112】
ただし、アンテナごとの送信電力はウェイトで決まるので、最大電力のアンテナ1のウェイトに対し、他のアンテナ2〜4のウェイトは、アンテナ1のウェイト以下に設定しなければ、想定した指向性制御を実現できない。
【0113】
このため、上式における送信電力調整用の係数であるY1(α−1)/(Y2+Y3+Y4)が1より大きいならば、アンテナ2〜4のウェイトについては、上式に代えて、次式のように係数を乗算する。
【0114】
【数7】
Figure 0004253173
【0115】
Y1(α−1)/(Y2+Y3+Y4)が1以下なら、所望ユーザ端末の受信電力Y(t)は、次式のように合成される。
【0116】
【数8】
Figure 0004253173
【0117】
すなわち、所望ユーザ端末での受信レベルは最大振幅の受信応答ベクトルのアンテナ1本で送信した場合と比べて、振幅比でα(最小は0、最大はアンテナ本数)倍に設定することが可能となる。
【0118】
たとえば、当該基地局の周辺の他の基地局では、アンテナ1本で500mWの送信を行なっており、一方、4本アンテナの当該アダプティブアレイ基地局は、125mWの最大出力のアンプを搭載しているものとする。
【0119】
このような場合、当該基地局の所望ユーザ端末における受信電力レベルは、他の基地局の場合と同程度に設定することがシステム全体では望ましい。
【0120】
ここで、当該基地局が4本アンテナを用いたアダプティブアレイ送信が可能であるとすると、500mW/125mW=4倍の電力の比は、応答ベクトルの2倍の振幅比に相当する。したがって、α=2に設定すると、上述の所望ユーザ端末における目標受信電力レベルを達成することができる。
【0121】
さらに、Y1(α−1)/(Y2+Y3+Y4)が1以下なら、α×Y1を第2の定数βで表わす一定値とすることにより、どのような受信状態においても、所望ユーザ端末における受信レベル自体を一定値に保つことが可能となる。
【0122】
たとえば、所望ユーザ端末における受信電力レベルが常時40dBμVで一定となるような基地局からの送信電力制御を行なう場合を想定する。この場合、基地局においては、まず受信応答ベクトルを算出する。そして、基地局内に予め設けたテーブルにより、算出した受信応答ベクトルの振幅値をdBμVに換算する。
【0123】
端末受信レベルは、(応答ベクトル)×(送信電力:振幅)で決定できるので、端末受信レベルが40dBμVとなる設定値をテーブルより算出すれば、常に端末受信レベルを一定に制御することが可能となる。
【0124】
なお、実現不可能な高電力値を設定した場合は、基地局が送信可能な最大電力(前述の例では125mW×4本アンテナ)で送信することになる。
【0125】
上述のこの発明の実施の形態による送信ウェイト形成アルゴリズムは、実際には、図1のDSP14によって、図4に示すフロー図に従ってソフトウェアで実行されるものである。このDSP14は、図4に示すフロー図の各ステップを備えるプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。
【0126】
以下に、図4を参照して、この発明の実施の形態による送信ウェイト形成アルゴリズムについて説明する。
【0127】
まず、ステップS1において、基地局は、アダプティブアレイ受信処理を行ない、複素受信ウェイトWを算出する。
【0128】
次に、ステップS2において、基地局は、受信応答ベクトル算出処理を行ない、受信応答ベクトルRVを算出する。
【0129】
次に、ステップS3において、同相合成する複素送信ウェイトw_aI,w_aQを算出する。ここで、aは、アンテナ番号を表わすものとする。また、アンテナ本数をnとする。
【0130】
次に、ステップS4において、各アンテナのウェイトを当該アンテナの応答ベクトルの大きさYで除算することにより、送信ウェイトの電力調整を行なう。
【0131】
次に、ステップS5において、Y1(α−1)/(Y2+Y3+Y4)が1より大きいか否かが判断される。1より大きければ、ステップS4で電力調整された送信ウェイトを、最終的な送信ウェイトと決定して処理を終了する。
【0132】
一方、ステップS5において、Y1(α−1)/(Y2+Y3+Y4)が1以下であると判断されると、この発明の実施の形態によるさらなる送信電力調整ステップに進む。
【0133】
まず、ステップS6においてアンテナ番号aを1に設定する。
次に、ステップS7において、a(=1)番目のアンテナの応答ベクトルの大きさY_aがn本のアンテナのなかで最大か否かが判断される。最大であれば、このa(=1)番目のアンテナについてはさらなる送信電力の調整は行なわないため、処理をスキップする。
【0134】
一方、a(=1)番目のアンテナの応答ベクトルの大きさY_aがn本のアンテナのなかで最大でないと判断されれば、ステップS8において、送信電力調整用の係数Y1(α−1)/(Y2+Y3+Y4)を用いた送信ウェイトw_aI,w_aQの調整を行なう。
【0135】
ステップS9において、アンテナ番号aがアンテナ本数nに達したか否かが判断され、達したと判断されるまで、ステップS7〜S9の処理が繰り返される。
【0136】
ステップS9において、アンテナ番号aがnに達すれば、すべてのアンテナに対する送信電力調整が終了したものとして処理を終了する。
【0137】
以上の処理により、端末受信電力の最大化が指示されたときには、前述の送信ウェイトの形成アルゴリズムが実現されることになる。
【0138】
次に、この発明の実施の形態による送信制御切替方法の第1の例から第3の例について、図5〜図7のフロー図をそれぞれ参照して説明する。
【0139】
以下に説明する送信制御切替方法は、実際には、図1のDSP14によって、図5〜図7に示すフロー図に従ってソフトウェアで実行されるものである。このDSP14は、図5〜図7に示す各フロー図の各ステップを備えるプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。
【0140】
まず、図5に示した送信切替制御方法の第1の例は、当該基地局において上りの受信電力レベルを表わすRSSIを測定し、その測定値に応じて、所望方向に送信電力のビームを向け、干渉方向にヌルを向ける送信制御(送信ウェイトの形成)方法(この実施の形態ではMMSE受信ウェイトコピー方法)と、所望方向への送信電力を最大化する送信制御(送信ウェイト形成)方法(この実施の形態では同相合成最大送信法)とを切替制御するものである。
【0141】
この図5の第1の例では、上りのユーザRSSIが大きい場合、所望ユーザ端末が基地局の近傍にいることが推定される。その場合には、端末には十分な送信電力が行き届いている確率が高く、同時に他の基地局(セル)からの干渉量も低いことが予想される。
【0142】
したがって、このような場合には、端末への送信電力を最大化する必要性は低く、指向性に優れたMMSE受信ウェイトコピー法により、送信ウェイトを形成することが好ましい。
【0143】
一方、上りのユーザRSSIが低い場合、所望ユーザ端末が基地局から離れた場所にいることが予想され、したがって、端末での受信電力レベルが低く、他の基地局(セル)の干渉を受けている可能性が高まる。
【0144】
したがって、このような場合には、端末受信電力を最大化する必要があり、同相合成最大送信法によって送信ウェイトを形成することが望ましい。
【0145】
図5を参照して、この場合の制御について説明する。まず、ステップS11において、測定された上りユーザRSSIがしきい値X以下か否かが判断される。
【0146】
しきい値Xよりも大きいと判断されると、ステップS13に進み、所望方向に送信電力のビームを向け、干渉方向にヌルを向ける送信制御方法であるMMSE受信ウェイトコピー法により、送信制御(送信ウェイトの形成)が実行される。
【0147】
一方、ステップS11において、測定された上りユーザRSSIがしきい値以下と判断されると、ステップS12において、所望方向への電力を最大化する送信制御方法である同相合成最大送信法により、送信制御(送信ウェイトの形成)が実行される。
【0148】
次に、図6に示した送信切替制御方法の第2の例は、当該基地局において下り送信制御にMMSE受信ウェイトコピー法のような所望方向に送信電力のビームを向け、干渉方向にヌルを向ける送信制御方法を用いている場合に、所望ユーザ端末での受信電力レベルを推定し、その推定値に応じて、所望方向に送信電力のビームを向け、干渉方向にヌルを向ける送信制御方法(この実施の形態ではMMSE受信ウェイトコピー方法)と、所望方向への送信電力を最大化する送信制御方法(この実施の形態では同相合成最大送信法)とを切替制御するものである。
【0149】
この図6の第2の例では、MMSE受信ウェイトコピー法のような方法で送信ウェイトを形成した場合であっても、条件が適合すれば所望ユーザ端末に大きな電力を送信できる場合もあることに鑑み、所望ユーザ端末の受信電力レベルの推定値が十分な場合には、端末への送信電力をあえて最大化する必要性は低く、指向性に優れたMMSE受信ウェイトコピー法をそのまま用いて、送信ウェイトを形成することが好ましい。
【0150】
この場合の(MMSE受信ウェイトコピー法を用いた場合の)端末受信レベルは次のように推定される。すなわち、アダプティブアレイ受信時に算出された受信ウェイトベクトルに所定のキャリブレーション補正を施した送信ウェイトベクトルをW_TX*とし、受信応答ベクトルをRVとすると、端末受信レベルは、Σ(W_TX*×RV)で表わされ、これは1/max{送信ウェイトの振幅}に等しい。なお、アンテナ1のウェイトが最大の場合、送信ウェイトの振幅は、sqrt{W_TX_I12+W_TX_Q12}で表わされる。
【0151】
一方、所望ユーザ端末の受信電力レベルの推定値が不十分な場合には、端末受信電力を最大化する必要があり、同相合成最大送信法によって送信ウェイトを形成することが望ましい。
【0152】
図6を参照して、この場合の制御について説明する。まず、ステップS21において、MMSE受信ウェイトコピー法で推定された所望ユーザ端末の推定受信電力レベルがしきい値Y以下か否かが判断される。
【0153】
しきい値Yよりも大きいと判断されると、ステップS23に進み、所望方向に送信電力のビームを向け、干渉方向にヌルを向ける送信制御方法であるMMSE受信ウェイトコピー法により、送信制御(送信ウェイトの形成)が実行される。
【0154】
一方、ステップS21において、推定された端末受信レベルがしきい値以下と判断されると、ステップS22において、所望方向への電力を最大化する送信制御方法である同相合成最大送信法により、送信制御(送信ウェイトの形成)が実行される。
【0155】
次に、図7に示した送信切替制御方法の第3の例は、図5の第1の例と図6の第2の例とを組合せたものであり、当該基地局においてRSSIを測定し、その測定値が第1のしきい値よりも大きければ、MMSE受信ウェイトコピー法を選択し、測定されたRSSIが第1のしきい値以下であれば、下り送信制御にMMSE受信ウェイトコピー法を用いている場合での所望ユーザ端末での受信電力レベルを推定し、その推定値に応じて、MMSE受信ウェイトコピー方法と、同相合成最大送信法とを切替制御するものである。
【0156】
図7を参照して、この場合の制御について説明する。まず、ステップS31において、測定された上りユーザRSSIが第1のしきい値X以下か否かが判断される。
【0157】
第1のしきい値Xよりも大きいと判断されると、ステップS32に進み、所望方向に送信電力のビームを向け、干渉方向にヌルを向ける送信制御方法であるMMSE受信ウェイトコピー法により、送信制御(送信ウェイトの形成)が実行される。
【0158】
一方、ステップS31において、測定された上りユーザRSSIが第1のしきい値X以下と判断されると、ステップS33において、MMSE受信ウェイトコピー法で推定された所望ユーザ端末の推定受信電力レベルが第2のしきい値Y以下か否かが判断される。
【0159】
第2のしきい値Yよりも大きいと判断されると、ステップS35に進み、所望方向に送信電力のビームを向け、干渉方向にヌルを向ける送信制御方法であるMMSE受信ウェイトコピー法により、送信制御(送信ウェイトの形成)が実行される。
【0160】
一方、ステップS33において、推定された端末受信レベルが第2のしきい値Y以下と判断されると、ステップS34において、所望方向への弾力を最大化する送信制御方法である同相合成最大送信法により、送信制御(送信ウェイトの形成)が実行される。
【0161】
以上のように、この発明の実施の形態によれば、アダプティブアレイ基地局において、所望ユーザ端末における下り受信電力レベルを推定し、その結果に応じて与干渉抑制効果に優れたMMSE受信ウェイトコピー法と、所望ユーザ端末における下り受信電力レベルの最大化が可能な同相合成最大送信法とを切替選択して送信処理を行なっている。このため、所望ユーザ端末における下り受信電力レベルが十分であると推定されたときにはMMSE受信ウェイトコピー法を選択して与干渉を抑制することができるとともに、下り受信電力が十分でないと推定された場合には同相合成最大送信法を選択して下り受信電力レベルの増大を図ることにより下りの干渉波に対する通信品質の劣化を防止することができる。
【0162】
なお、上述の実施の形態では、下り受信電力レベルの最大化が必要ない場合に用いられる送信方法としては、MMSE受信ウェイトコピー法を用いているが、この発明はこの方法に限定されるものではなく、たとえばZero-forcing法を用いてもよい。
【0163】
要するに、送信時に所望端末方向にビームを向け、干渉方向にヌルを向けるような送信指向性制御を行なうが、所望ユーザ端末においては下り受信電力は最大化されないような送信方法であれば、どのような方法であっても用いることができる。どの方法を採用するかは、その方法が信号処理量、処理速度などの拘束条件を満たすことを条件に、各方法を適用した場合に、所望ユーザ端末に到達させることができる電力値、干渉ユーザ端末に対する与干渉量、総出力量などの要素を全体的に検討して、どの方法が最適かを判断して選択することが望ましい。
【0164】
なお、上述の実施の形態では、この発明をアダプティブアレイ基地局に適用した場合について説明したが、この発明は、基地局に限定されるものではなく、たとえばカード端末のような、アダプティブアレイ処理が可能な移動端末装置にも適用が可能である。
【0165】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0166】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、アダプティブアレイ無線装置において、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、その結果に応じて与干渉抑制効果に優れた第1の送信ウェイトと、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルの最大化が可能な第2の送信ウェイトとを切替選択して送信処理を行なっている。このため、所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが十分であると推定されたときには第1の送信ウェイトを選択して与干渉を抑制することができるとともに、下り受信電力が十分でないと推定された場合には第2の送信ウェイトを選択して下り受信電力レベルの増大を図ることにより下りの干渉波に対する通信品質の劣化を防止することができる。この結果、移動体通信システム全体として周波数の有効利用および通信品質の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態によるアダプティブアレイ基地局の全体構成を示す機能ブロック図である。
【図2】 アダプティブアレイ処理を用いた各種送信方法の特徴を対比して示す図である。
【図3】 同相合成の基本原理を説明するための概念図である。
【図4】 この発明の実施の形態による同相合成最大送信法による送信ウェイト形成アルゴリズムを示すフロー図である。
【図5】 この発明の実施の形態による送信制御切替方法の第1の例を示すフロー図である。
【図6】 この発明の実施の形態による送信制御切替方法の第2の例を示すフロー図である。
【図7】 この発明の実施の形態による送信制御切替方法の第3の例を示すフロー図である。
【符号の説明】
1,2,3,4 アンテナ、5,6,7,8 送受信回路、5a,6a,7a,8a RF回路、9,10,11,12 A/DおよびD/A変換機、13 サーキュレータ、14 DSP、15 受信処理部、15a 同期処理部、15b 同期窓制御部、15c アダプティブアレイ処理部、15d 検波部、16送信処理部、16a 変調処理部、16b 乗算器、17 送信ウェイト制御部。

Claims (18)

  1. 複数のアンテナからなるアレイアンテナを用いて信号の送受信を行なう無線装置であって、
    前記アレイアンテナで受信した信号にアダプティブアレイ処理による受信処理を施すアダプティブアレイ処理手段と、
    前記アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、所望の他の無線装置の方向に対して送信電波のビームを向けかつ干渉波の方向に対して送信電波のヌルを向ける送信指向性を形成するための第1の送信ウェイトを決定する第1の送信ウェイト決定手段と、
    前記アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを最大化するための第2の送信ウェイトを決定する第2の送信ウェイト決定手段と、
    前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定する受信レベル推定手段と、
    前記受信レベル推定手段による推定結果に基づいて、前記第1の送信ウェイトまたは前記第2の送信ウェイトを切替選択するウェイト切替選択手段と、
    前記ウェイト切替選択手段により切替選択された送信ウェイトにより送信信号に送信処理を施す送信処理手段とを備え、
    前記受信レベル推定手段は、前記所望の他の無線装置からの上り受信電力レベルを測定し、測定された前記上り受信電力レベルに基づいて前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、かつ前記第1の送信ウェイトを用いて前記送信信号に送信処理を施した場合における前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、
    前記ウェイト切替選択手段は、前記測定された前記上り受信電力レベルが所定の第1のしきい値よりも大きい場合には前記第1の送信ウェイトを選択し、前記第1のしきい値以下である場合には、前記第1の送信ウェイトを用いて前記送信信号に送信処理を施した場合における前記推定された所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが所定の第2のしきい値よりも大きい場合には前記第1の送信ウェイトを選択し、前記第2のしきい値以下である場合には前記第2の送信ウェイトを選択する、無線装置。
  2. 前記第1の送信ウェイト決定手段は、前記アダプティブアレイ処理の結果得られる前記所望の他の無線装置の受信ウェイトを前記第1の送信ウェイトとして決定する、請求項1に記載の無線装置。
  3. 前記第1の送信ウェイト決定手段は、前記アダプティブアレイ処理の結果得られる前記所望の他の無線装置の受信応答ベクトルに基づき前記第1の送信ウェイトを算出する、請求項1に記載の無線装置。
  4. 前記第2の送信ウェイト決定手段は、前記アダプティブアレイ処理の結果得られる前記所望の他の無線装置の受信応答ベクトルにウェイトを乗算した場合に前記受信応答ベクトルの振幅を変えずに位相を同相合成するような前記ウェイトを前記第2の送信ウェイトとして決定する、請求項に記載の無線装置。
  5. 前記第2の送信ウェイト決定手段は、前記複数のアンテナのうちで受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の送信電力が前記所望の他の無線装置で受信できるように前記ウェイトを決定する、請求項に記載の無線装置。
  6. 前記第2の送信ウェイト決定手段は、前記受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の電力が第2の定数となり、これにより一定値の電力レベルが前記所望の他の無線装置で受信できるように前記ウェイトを決定する、請求項に記載の無線装置。
  7. 複数のアンテナからなるアレイアンテナを用いて信号の送受信を行なう無線装置における送信制御切替方法であって、
    前記アレイアンテナで受信した信号にアダプティブアレイ処理による受信処理を施すステップと、
    前記アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、所望の他の無線装置の方向に対して送信電波のビームを向けかつ干渉波の方向に対して送信電波のヌルを向ける送信指向性を形成するための第1の送信ウェイトを決定するステップと、
    前記アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを最大化するための第2の送信ウェイトを決定するステップと、
    前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定するステップと、
    前記下り受信電力レベルの推定結果に基づいて、前記第1の送信ウェイトまたは前記第2の送信ウェイトを切替選択するステップと、
    前記切替選択された送信ウェイトにより送信信号に送信処理を施すステップとを備え、
    前記下り受信電力レベルを推定するステップは、前記所望の他の無線装置からの上り受信電力レベルを測定し、測定された前記上り受信電力レベルに基づいて前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、かつ前記第1の送信ウェイトを用いて前記送信信号に送信処理を施した場合における前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、
    前記送信ウェイトを切替選択するステップは、前記測定された前記上り受信電力レベルが所定の第1のしきい値よりも大きい場合には前記第1の送信ウェイトを選択し、前記第1のしきい値以下である場合には、前記第1の送信ウェイトを用いて前記送信信号に送信処理を施した場合における前記推定された所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが所定の第2のしきい値よりも大きい場合には前記第1の送信ウェイトを選択し、前記第2のしきい値以下である場合には前記第2の送信ウェイトを選択する、送信制御切替方法。
  8. 前記第1の送信ウェイトを決定するステップは、前記アダプティブアレイ処理の結果得られる前記所望の他の無線装置の受信ウェイトを前記第1の送信ウェイトとして決定する、請求項に記載の送信制御切替方法。
  9. 前記第1の送信ウェイトを決定するステップは、前記アダプティブアレイ処理の結果得られる前記所望の他の無線装置の受信応答ベクトルに基づき前記第1の送信ウェイトを算出する、請求項に記載の送信制御切替方法。
  10. 前記第2の送信ウェイトを決定するステップは、前記アダプティブアレイ処理の結果得られる前記所望の他の無線装置の受信応答ベクトルにウェイトを乗算した場合に前記受信応答ベクトルの振幅を変えずに位相を同相合成するような前記ウェイトを前記第2の送信ウェイトとして決定する、請求項に記載の送信制御切替方法。
  11. 前記第2の送信ウェイトを決定するステップは、前記複数のアンテナのうちで受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の送信電力が前記所望の他の無線装置で受信できるように前記ウェイトを決定する、請求項1に記載の送信制御切替方法。
  12. 前記第2の送信ウェイトを決定するステップは、前記受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の電力が第2の定数となり、これにより一定値の電力レベルが前記所望の他の無線装置で受信できるように前記ウェイトを決定する、請求項1に記載の送信制御切替方法。
  13. 複数のアンテナからなるアレイアンテナを用いて信号の送受信を行なう無線装置における送信制御切替プログラムであって、コンピュータに、
    前記アレイアンテナで受信した信号にアダプティブアレイ処理による受信処理を施すステップと、
    前記アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、所望の他の無線装置の方向に対して送信電波のビームを向けかつ干渉波の方向に対して送信電波のヌルを向ける送信指向性を形成するための第1の送信ウェイトを決定するステップと、
    前記アダプティブアレイ処理の結果に基づいて、前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを最大化するための第2の送信ウェイトを決定するステップと、
    前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定するステップと、
    前記下り受信電力レベルの推定結果に基づいて、前記第1の送信ウェイトまたは前記第2の送信ウェイトを切替選択するステップと、
    前記切替選択された送信ウェイトにより送信信号に送信処理を施すステップとを実行させ、
    前記下り受信電力レベルを推定するステップは、前記所望の他の無線装置からの上り受信電力レベルを測定し、測定された前記上り受信電力レベルに基づいて前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、かつ前記第1の送信ウェイトを用いて前記送信信号に送信処理を施した場合における前記所望の他の無線装置における下り受信電力レベルを推定し、
    前記送信ウェイトを切替選択するステップは、前記測定された前記上り受信電力レベルが所定の第1のしきい値よりも大きい場合には前記第1の送信ウェイトを選択し、前記第1のしきい値以下である場合には、
    前記第1の送信ウェイトを用いて前記送信信号に送信処理を施した場合における前記推定された所望の他の無線装置における下り受信電力レベルが所定の第2のしきい値よりも大きい場合には前記第1の送信ウェイトを選択し、前記第2のしきい値以下である場合には前記第2の送信ウェイトを選択する、送信制御切替プログラム。
  14. 前記第1の送信ウェイトを決定するステップは、前記アダプティブアレイ処理の結果得られる前記所望の他の無線装置の受信ウェイトを前記第1の送信ウェイトとして決定する、請求項13に記載の送信制御切替プログラム。
  15. 前記第1の送信ウェイトを決定するステップは、前記アダプティブアレイ処理の結果得られる前記所望の他の無線装置の受信応答ベクトルに基づき前記第1の送信ウェイトを算出する、請求項13に記載の送信制御切替プログラム。
  16. 前記第2の送信ウェイトを決定するステップは、前記アダプティブアレイ処理の結果得られる前記所望の他の無線装置の受信応答ベクトルにウェイトを乗算した場合に前記受信応答ベクトルの振幅を変えずに位相を同相合成するような前記ウェイトを前記第2の送信ウェイトとして決定する、請求項1に記載の送信制御切替プログラム。
  17. 前記第2の送信ウェイトを決定するステップは、前記複数のアンテナのうちで受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の送信電力が前記所望の他の無線装置で受信できるように前記ウェイトを決定する、請求項16に記載の送信制御切替プログラム。
  18. 前記第2の送信ウェイトを決定するステップは、前記受信応答ベクトルが最大のアンテナで送信できる送信電力の第1の定数倍の電力が第2の定数となり、これにより一定値の電力レベルが前記所望の他の無線装置で受信できるように前記ウェイトを決定する、請求項17に記載の送信制御切替プログラム。
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