JP4252192B2 - 脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、優れた特性を有するエステル型の非イオン界面活性剤として知られており、各種工業分野において、乳化剤、分散剤、油相成分調整剤、浸透剤、洗浄剤組成物、古紙再生脱墨剤などとして利用されている。
【0003】
この脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを製造する方法としては、各種触媒を用いて、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキサイドを直接付加重合させる方法が開発されている(特公昭53−24930号公報、特開昭54−1038125号公報、特開平4−279552号公報、特表平4−505449号公報、特開2000−61304号公報など)。例えば、特公昭53−24930号公報には、亜鉛、アルミニウムなどのハロゲン化物または有機金属化合物を組み合わせたものを触媒として用い、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキサイドを直接反応させて、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを製造する方法が開示されている。しかし、これらの方法では、多くの未反応脂肪酸アルキルエステルが残存するうえに、生成物のアルキレンオキサイド付加モル分布が広く、生成物の品質が安定していないという問題があった。
【0004】
上記問題を解決する方法として、特開平8−169861号公報には、金属水酸化物または金属アルコキシドにより表面改質された複合金属酸化物触媒を用いて、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキサイドを直接付加重合させる方法が開示されている。このような方法によれば、残存する未反応脂肪酸アルキルエステルを減少させ、尚且つ、アルキレンオキサイド付加モル分布が狭い脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを製造することができる。
【0005】
しかし、上記製造方法で得られる脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、中性領域では加水分解し難いものの、酸性領域またはアルカリ性領域において加水分解し易いという問題があった。これに対して、欧州特許公開第0031310号公報には、2種以上のオキシアルキレンユニット(AおよびB)を有する、RICOO−B−(A)nRIIで表される脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが開示されており、これは加水分解に対して安定であることが記載されている。しかしながら、この脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、OH−B−(A)nRIIで表されるポリアルキレングリコールと、RICOOHで表される脂肪酸とをそれぞれ合成した後、これらをエステル結合させることにより得られる。従って、その製造においては、煩雑で効率が低い合成工程が必要であり、経済効率が悪いという問題があった。
【0006】
また、特開平11−071328号公報には、複合金属酸化物触媒を用いて、脂肪酸アルキルエステルに所定モル数のエチレンオキサイド(EO)を付加重合させた後、別のアルキレンオキサイド(AO)を付加重合させることにより、RIC(O)(AO)m(EO)nORIIで表される脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを製造する方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような、脂肪酸アルキルエステルにエチレンオキサイドを付加重合させた後に別のアルキレンオキサイドを付加重合させる方法によれば、エチレンオキサイドとアルキレンオキサイドとがブロック付加した脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが得られる。これは、中性領域だけでなく、酸性領域またはアルカリ性領域においても加水分解し難いという特長を有している。しかしながら、このような脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造においては、反応時間を短縮し、製造効率を更に向上させることが望まれている。
【0008】
本発明は、中性領域だけでなく、酸性領域およびアルカリ性領域においても分解し難い脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、これを短時間で効率的に製造できる方法とを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、エチレンオキサイドとアルキレンオキサイドとのランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、酸性領域およびアルカリ性領域においても加水分解し難いという特長を有することを見出した。更に、本発明者らは、特定の触媒を用いて、脂肪酸アルキルエステルに、エチレンオキサイドとアルキレンオキサイドとの混合物を直接反応させることにより、前記ランダム付加体を短時間で効率的に製造できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、複合金属酸化物触媒の存在下で、脂肪酸アルキルエステルに、エチレンオキサイドと、これ以外のアルキレンオキサイドとの混合物を反応させて、エチレンオキサイドとこれ以外のアルキレンオキサイドとのランダム付加体である下記一般式(I)で示される脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを生成させる脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造方法であって、
前記複合金属酸化物触媒が、下記一般式(a)で表される化合物の焼成物、下記一般式(b)で表される化合物の焼成物および金属イオンとしてAl 3+ および/またはMn 2+ が添加された酸化マグネシウムの焼成物からなる群より選ばれる少なくとも1種である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造方法である。
R1C(O)(EO/AO)mOR2 (I)
(式中、R1は炭素数1〜40個のアルキル基またはアルケニル基であり、R2は炭素数1〜20個のアルキル基またはアルケニル基であり、AOは少なくとも1種の炭素数3〜8個のアルキレンオキサイドであり、その平均付加モル数は2〜5であり、EOはエチレンオキサイドであり、その平均付加モル数は3〜20であり、mはAOとEOとの合計平均付加モル数である。)
pMgO・Al 2 O 3 ・qH 2 O (a)
(式中、pは1〜5の数であり、qは0〜20の数である。)
[Mg 2+ 1-x Al 3+ x (OH) 2 ] x+ [A y- x/y ・zH 2 O] x- (b)
(式中、A y- は、CO 3 2- 、SO 4 2- 、OH - 、NO 3 - 、Fe(CN) 6 3- よびCH 3 COO - からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、xは0<x≦0.4を満足する数であり、yは1〜3の数であり、zは0〜10の数である。)
【0013】
このような製造方法で得られる脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、脂肪酸アルキルエステルにエチレンオキサイドとアルキレンオキサイドとがランダム付加した付加体であり、中性領域だけでなく、酸性領域およびアルカリ性領域においても加水分解し難いという特長を有している。
【0014】
更に、本発明の製造方法によれば、このような脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを、エチレンオキサイド付加重合とアルキレンオキサイド付加重合とを別工程で行うことによりブロック共重合を得る従来の方法よりも、更に短時間で効率的に製造することができる。これは、アルキレンオキサイドおよびエチレンオキサイドを反応器に導入した後の熟成工程が1回で済むことに加えて、アルキレンオキサイドの反応速度が、複合酸化物触媒の存在下で特に高い反応速度を示すエチレンオキサイドと混合することにより、アルキレンオキサイドを単独で反応させる場合よりも高くなり、反応に要する時間が短縮されるためであると推察される。
【0015】
前記製造方法においては、前記複合金属酸化物触媒が、下記一般式(a)で表される化合物の焼成物であることが好ましい。
【0016】
pMgO・Al2O3・qH2O (a)
【0017】
前記式(a)において、pは1〜5の数であり、qは0〜20の数である。
【0018】
この好ましい例によれば、中性領域だけでなく、酸性領域およびアルカリ性領域においても加水分解し難い脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、更に短い反応時間で得られる。
【0019】
また、前記製造方法においては、前記複合金属酸化物触媒が、下記一般式(b)で表される化合物の焼成物であることが好ましい。
【0020】
[Mg2+ 1-xAl3+ x(OH)2]x+[Ay- x/y・zH2O]x- (b)
【0021】
前記式(b)において、Ay-は、CO3 2-、SO4 2-、OH-、NO3 -、Fe(CN)6 3-およびCH3COO-からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、xは0<x≦0.4を満足する数であり、yは1〜3の数であり、zは0〜10の数である。
【0022】
この好ましい例によっても、中性領域だけでなく、酸性領域およびアルカリ性領域においても加水分解し難い脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、更に短い反応時間で得られる。
【0023】
また、前記製造方法においては、前記複合金属酸化物触媒が、金属イオンが添加された酸化マグネシウムの焼成物であることが好ましい。
【0024】
この好ましい例によっても、中性領域だけでなく、酸性領域およびアルカリ性領域においても加水分解し難い脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、更に短い反応時間で得られる。
【0025】
この場合、前記金属イオンは、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Co3+、Sc3+、La3+およびMn2+からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
また、前記金属イオンの添加量は、前記複合金属酸化物触媒100質量部に対して0.1〜40質量部であることが好ましい。
【0027】
また、前記製造方法においては、前記複合金属酸化物触媒が、6A族、7A族および8族から選ばれる少なくとも1種の金属と、アルミニウムと、マグネシウムとを含有する複合金属酸化物であることが好ましい。
【0028】
この好ましい例によっても、中性領域だけでなく、酸性領域およびアルカリ性領域においても加水分解し難い脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、更に短い反応時間で得られる。
【0029】
6A族、7A族および8族から選ばれる前記金属は、クロム、モリブデン、マンガン、テクネチウム、鉄、コバルト、ニッケルおよびルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。
【0030】
また、前記製造方法においては、前記複合金属酸化物触媒の表面が、金属水酸化物および金属アルコキシドの少なくとも一方によって改質されていることが好ましい。この好ましい例によれば、アルキレンオキサイド付加モル分布を狭くすることができ、未反応脂肪酸アルキルエステルの残存量を低減することができる。
【0031】
次に、本発明の脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、エチレンオキサイドとこれ以外のアルキレンオキサイドとのランダム付加体であり、前記一般式(I)で表される。このランダム付加体は、前記本発明の製造方法により製造されることが好ましいが、他の製造方法により製造されるものであってもよい。
【0032】
次に、本発明の洗浄剤組成物は、前記本発明の脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される複合金属酸化物触媒は、アルコキシル化活性を有するものであれば特に限定するものではないが、次に挙げるような複合金属酸化物触媒であることが好ましい。
【0034】
好ましい複合金属酸化物触媒としては、まず、下記一般式(a)で表される水酸化アルミニウム・マグネシウムの焼成物が挙げられる。
【0035】
pMgO・Al2O3・qH2O (a)
【0036】
前記一般式(a)において、pは1〜5、好ましくは2〜4、特に好ましくは2.2〜3.5であり、qは0〜20、好ましくは0〜15、特に好ましくは0〜12である。
【0037】
前記水酸化アルミニウム・マグネシウムとしては、例えば、協和化学社製「キョーワード300(商品名)」(組成式;2.5MgO・Al2O3・qH2O)などを使用することができる。
【0038】
前記水酸化アルミニウム・マグネシウムの焼成は、例えば200〜1000℃、好ましくは300〜950℃、特に好ましくは400〜800℃で行うことができる。焼成温度をこのような範囲に設定すれば、より確実に高い触媒活性を得ることができる。また、焼成時間は、例えば30〜400分間、好ましくは30〜300分間、特に好ましくは60〜250分間である。
【0039】
好ましい複合金属酸化物触媒としては、次に、下記一般式(b)で表されるハイドロタルサイトの焼成物が挙げられる。
【0040】
[Mg2+ 1-xAl3+ x(OH)2]x+[Ay- x/y・zH2O]x- (b)
【0041】
前記一般式(b)において、Ay-は、CO3 2-、SO4 2-、OH-、NO3 -、Fe(CN)6 3-およびCH3COO-からなる群より選ばれる少なくとも1種である。このなかでCO3 2-、SO4 2-およびNO3 -が好ましく、CO3 2-が特に好ましい。xは、0<x≦0.4、好ましくは0.1≦x≦0.35、特に好ましくは0.25≦x≦0.3である。yは、Ay-の平均イオン価を表す数であり、1〜3である。zは、0〜10、好ましくは0〜8、特に好ましくは0〜5である。
【0042】
前記ハイドロタルサイトは、天然物であっても、合成物であってもよい。前記ハイドロタルサイトとしては、例えば、協和化学社製「キョーワード500(商品名)」(組成式;Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)などを使用できる。
【0043】
また、前記ハイドロタルサイトの焼成は、前記水酸化アルミニウム・マグネシウムと同様の条件で実施することができる。
【0044】
好ましい複合金属酸化物触媒としては、次に、金属イオン添加酸化マグネシウムの焼成物が挙げられる。添加される金属イオンとしては、例えば、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Co3+、Sc3+、La3+およびMn2+からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのなかでAl3+、Ga3+およびMn2+が好ましく、Al3+およびMn2+が特に好ましい。また、前記金属イオンの添加量は、複合金属酸化物触媒全体に対して、例えば0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは0.8〜15質量%である。
【0045】
前記金属イオン添加酸化マグネシウムは、例えば、次のようにして製造することができる。まず、アルミニウムイオンを含む水溶液に酸化マグネシウム粉末を加えて攪拌した後、蒸発乾固させる。十分に乾燥させた後、得られた固形物を粉砕し、焼成する。アルミニウムイオンを含む水溶液としては、例えば、アルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物などを含む水溶液を使用することができる。また、焼成は、前記水酸化アルミニウム・マグネシウムと同様の条件で実施することができる。
【0046】
好ましい複合金属酸化物触媒としては、更に、6A族、7A族および8族から選ばれる少なくとも1種の金属と、アルミニウムと、マグネシウムとを含有する複合金属酸化物が挙げられる。
【0047】
6A族、7A族および8族から選ばれる前記金属としては、Cr、Mo、Mn、Tc、Fe、Co、NiおよびRuが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらのなかで、Fe、Cr、Mnが好ましく、Mnが特に好ましい。
【0048】
この複合金属酸化物においては、マグネシウムとアルミニウムとの原子数比が、Al/(Mg+Al)で表示した場合、0.1〜0.7であることが好ましく、0.3〜0.6であることが更に好ましい。また、6A族、7A族および8族から選ばれる金属の、複合金属酸化物中の全金属に対する原子数比は、0.05〜0.4であることが好ましく、0.1〜0.25であることが更に好ましい。
【0049】
前記複合金属酸化物は、例えば、例えば、次のようにして製造することができる。まず、各金属のイオンを含む混合水溶液を調製し、この混合水溶液に沈殿剤を添加する。続いて、沈殿剤の添加により析出した沈殿物を水洗し乾燥した後、これを焼成する。混合水溶液は、例えば、各金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物などの金属化合物を含む水溶液を混合することにより調製できる。沈殿剤としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩またはその混合物を使用することができる。また、この工程は、混合水溶液と沈殿剤との混合液のpHを、7〜11、更には8〜10の範囲に維持しながら実施されることが好ましい。また、焼成は、前記水酸化アルミニウム・マグネシウムと同様の条件で実施することができる。
【0050】
前記複合金属酸化物触媒は、金属水酸化物および金属アルコキシドの少なくとも一方で表面改質されていることが好ましい。
【0051】
表面改質は、例えば、前記複合金属酸化物触媒表面に、前記金属水酸化物および前記金属アルコキシドの少なくとも一方(以下、「改質剤」ともいう。)を含む溶液を接触させることによって行うことができる。
【0052】
前記金属水酸化物としては、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物が使用でき、好ましくは、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの水酸化物が使用できる。また、前記金属アルコキシドとしては、例えば、前記金属水酸化物と同種の金属を含むメトキシド、エトキシド、プロポキシドおよびブトキシドなどが使用でき、好ましくは、前記金属を含むメトキシドおよびエトキシドなどが使用できる。
【0053】
前記複合金属酸化物触媒の改質に使用される改質剤の量は、前記複合金属酸化物触媒に対して、例えば0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜3質量%である。0.5〜10質量%とすることにより、高い触媒活性を確保しながら、改質による効果をより十分に得ることができる。
【0054】
複合金属酸化物触媒表面を改質し、改質された前記触媒を用いて反応を行うための操作方法としては、例えば、特開平8-169861号公報に記載されているような2通りの方法を採用することができる。
【0055】
第1の方法においては、まず、複合金属酸化物触媒表面に改質剤を含む溶液を接触させて、改質済みの複合金属酸化物触媒を調製する。この工程は、例えば、複合金属酸化物触媒表面に改質剤を含む水溶液またはアルコール溶液を噴霧した後、これを乾燥または焼成することによって行われる。次に、アルコキシル化用反応器内に、改質済みの複合金属酸化物触媒と、脂肪酸アルキルエステルと、エチレンオキサイドおよびアルキレンオキサイドの混合物とを導入して、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル合成反応を行う。なお、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル合成反応の詳細については後述する。
【0056】
第2の方法においては、まず、アルコキシル化用反応器内に、脂肪酸アルキルエステルと、複合金属酸化物触媒と、改質剤を含む溶液とを導入し、これを混合する。この工程は、例えば、反応器内に、予め脂肪酸アルキルエステルを導入しておき、その後、複合金属酸化物触媒と改質剤を含む溶液とを添加することによって行われる。この場合、複合金属酸化物触媒と改質剤との添加順序については特に限定されない。次に、前記アルコキシル化用反応器内に、エチレンオキサイドおよびアルキレンオキサイドの混合物を添加し、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル合成反応を行う。なお、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル合成反応の詳細については後述する。
【0057】
本発明の製造方法は、前記複合金属酸化物触媒の存在下において、脂肪酸アルキルエステルに、エチレンオキサイドとアルキレンオキサイドとの混合物を反応させるものである。
【0058】
前記製造方法においては、まず、エチレンオキサイドとアルキレンオキサイドとの混合物を調製する。前記アルキレンオキサイドは、炭素数3〜8個、好ましくは3〜5個のアルキレンオキサイドである。また、前記アルキレンオキサイドは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0059】
エチレンオキサイドの量は、反応に使用する脂肪酸アルキルエステル1モルに対して、例えば1〜40モル、好ましくは3〜20モル、特に好ましくは5〜15モルとなるように調整する。また、アルキレンオキサイドの量は、脂肪酸アルキルエステル1モルに対して、例えば1〜10モル、好ましくは1〜5モル、特に好ましくは2〜5モルとなるように調整する。
【0060】
更に、エチレンオキサイドの量と、アルキレンオキサイドの量は、その合計が、脂肪酸アルキルエステル1モルに対して、2〜50モル、好ましくは4〜25モル、特に好ましくは7〜20モルとなるように調整する。
【0061】
次に、前記混合物と脂肪酸アルキルエステルとを反応させる。前記脂肪酸アルキルエステルとしては、下記一般式(II)で表されるものが使用される。
【0062】
R1COOR2 (II)
【0063】
前記一般式(II)において、R1は、炭素数が1〜40個、好ましくは3〜30個、特に好ましくは6〜22個のアルキル基またはアルケニル基である。R2は、炭素数1〜20個、好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜4個のアルキル基またはアルケニル基である。また、前記脂肪酸アルキルエステルは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0064】
反応は、特に限定するものではないが、例えば、次のような条件で実施することができる。反応温度は、80〜230℃、好ましくは120〜200℃、特に好ましくは120〜180℃である。反応温度を80℃以上とすることにより、触媒活性を一層向上させることができ、230℃以下とすることにより、生成物の着色およびアルキレンオキサイド鎖の分解を確実に抑制することができる。また、反応圧力は、0〜20気圧、好ましくは2〜8気圧、特に好ましくは2〜6気圧である。反応圧力を20気圧以下とすることにより、安全性の確保が容易となるからである。
【0065】
また、前記複合金属酸化物触媒の使用量は、脂肪酸アルキルエステルに対して、例えば0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。前記触媒の使用量を0.01質量%以上とすることにより、反応完結まで時間を一層短縮することができ、20質量%以下とすることにより、反応温度の制御および反応後の触媒除去が容易となる。
【0066】
また、反応は、特に限定するものではないが、例えば、次のような操作により実施することができる。まず、オートクレーブに、脂肪酸アルキルエステルと、前記複合金属酸化物触媒とを仕込み、オートクレーブ内を脱ガスおよび脱水処理した後、窒素で置換する。次に、予め調製したエチレンオキサイドとアルキレンオキサイドとの混合物を、所定の温度および圧力条件下でオートクレーブ内に導入し、脂肪酸アルキルエステルと反応させる。反応終了後、反応生成物を冷却し、反応生成物から触媒を分離する。
【0067】
また、複合金属酸化物触媒を表面改質する場合は、次のような操作によって反応を行うこともできる。まず、オートクレーブに脂肪酸アルキルエステルおよび複合金属酸化物触媒を仕込み、ここに改質剤を添加し、前記複合金属酸化物触媒表面を改質する。次いで、前記オートクレーブ内を脱ガスおよび脱水処理し、窒素で置換する。続いて、予め調製したエチレンオキサイドとアルキレンオキサイドとの混合物を、所定の温度および圧力条件下で前記オートクレーブ内に導入し、脂肪酸アルキルエステルと反応させる。反応終了後、反応生成物から触媒を分離する。
【0068】
また、反応後の触媒分離は、例えば、反応生成物に水などを添加して低粘度化し、更に、珪藻土、セルロース系樹脂および活性白土などの濾過助剤を添加したあと、これを濾過することにより実施できる。
【0069】
本発明の製造方法において得られる脂肪酸ポリアルキレンアルキルエステルは、下記一般式(I)で表される。
【0070】
R1C(O)(EO/AO)mOR2 (I)
【0071】
前記一般式(I)において、R1は、炭素数が1〜40個、好ましくは3〜30個、特に好ましくは6〜22個のアルキル基またはアルケニル基である。R2は、炭素数1〜20個、好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜4個のアルキル基またはアルケニル基である。
【0072】
EOは、エチレンオキサイドである。エチレンオキサイドの平均付加モル数は、3〜20であり、好ましくは5〜15である。
【0073】
AOは、炭素数3〜8個、好ましくは3〜5個のアルキレンオキサイドである。アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、2〜5である。
【0074】
mは、エチレンオキサイドの平均付加モル数とアルキレンオキサイドの平均付加モル数との合計であり、2〜50、好ましくは4〜25、特に好ましくは7〜20である。
【0075】
この脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、エチレンオキサイドとその他のアルキレンオキサイドとのランダム付加体である。このような脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、中性領域のみならず、酸性領域およびアルカリ性領域においても加水分解または加溶媒分解し難いため、幅広い用途に使用することができる。また、泡切れ性に優れるという特長を有しており、洗浄剤組成物を構成する成分として有用である。
【0076】
本発明の洗浄剤組成物は、前記脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含むものである。洗浄剤組成物中における前記脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの割合は、例えば1〜60質量%、好ましくは2〜50質量%、特に好ましくは3〜30質量%である。
【0077】
更に、前記洗浄剤組成物は、その他の成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。
【0078】
アニオン界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、リン酸エステル型界面活性剤などが挙げられる。
【0079】
カチオン界面活性剤としては、例えば、高級アミン塩、高級アルキル(またはアルケニル)第4級アンモニウム塩、高級アルキル(またはアルケニル)ピリジニウム第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0080】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型界面活性剤、アルキルアミドベタイン型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アルキルアミノスルホン酸型界面活性剤、アルキルアミノカルボン酸型界面活性剤、アルキルアミドカルボン酸塩型界面活性剤、アミドアミノ酸型界面活性剤、リン酸型界面活性剤などが挙げられる。
【0081】
更に、本発明の洗浄剤組成物には、必要に応じて、例えば、洗剤ビルダー、酵素、再汚染防止剤、漂白剤、蛍光剤、香料、色素、溶剤、ヘアーコンディショニング剤、紫外線吸収剤、殺菌剤、防腐剤、ふけ止め剤、ハイドロトロープ剤、乳濁剤、増粘剤、ゼオライト、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩などの各種添加剤を配合してもよい。
【0082】
洗剤ビルダーとしては、例えば、炭酸塩、ケイ酸塩およびアルカノールアミンなどのアルカリビルダー、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩およびクエン酸塩などの多価カルボン酸塩、並びに、ポリアクリル酸塩、ポリイタコン酸塩、オレフィン−マレイン酸共重合体およびアクリル酸−マレイン酸共重合体などの高分子ビルダーが挙げられる。
【0083】
酵素としては、例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、リポラーゼなどが挙げられる。再汚染防止剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。また、漂白剤としては、例えば、過炭酸ソーダ、過硼酸ソーダなどが挙げられる。
【0084】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
2.5MgO・Al2O3・qH2Oで表される水酸化アルミニウム・マグネシウム(協和化学社製;商品名「キョーワード300」、以下同じ。)25gを、700℃で3時間窒素雰囲気下で焼成し、複合金属酸化物14gを得た。
一方、エチレンオキサイド648g(ラウリン酸メチル1モルに対して9モル)と、プロピレンオキサイド(PO)190g(ラウリン酸メチル1モルに対して2モル)を混合し、アルキレンオキサイド混合物を調製した。
次に、オートクレーブに、ラウリン酸メチル350gと、前記複合金属酸化物2.1g(ラウリン酸メチルに対して0.6質量%)と、KOHの40質量%水溶液0.21g(KOHとして0.084g)とを仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した後、攪拌しながら昇温および脱水した。次いで、オートクレーブ内を温度180℃、圧力3気圧に維持しながら、前記アルキレンオキサイド混合物838gを導入した後、熟成した。反応時間(アルキレンオキサイド混合物の導入時間と熟成時間との合計、以下の実施例においても同じ。)は260分であった。
反応終了後、反応液を80℃に冷却し、水150gと、濾過助剤として活性白土および珪藻土をそれぞれ5gとを添加した後、反応液から触媒を濾別した。その結果、EOとPOのランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが得られた。
【0086】
(実施例2)
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表されるハイドロタルサイト(協和化学社製;商品名「キョーワード500」、以下同じ。)25gを、500℃で3時間窒素雰囲気下で焼成し、複合金属酸化物14.5gを得た。
一方、エチレンオキサイド739g(ステアリン酸エチル1モルに対して15モル)と、ブチレンオキサイド(BO)161g(ステアリン酸エチル1モルに対して2モル)を混合し、アルキレンオキサイド混合物を調製した。
次に、オートクレーブに、ステアリン酸エチル350gと、前記複合金属酸化物2.1g(ステアリン酸エチルに対して0.6質量%)と、NaOHを0.059g仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した後、攪拌しながら昇温および脱水した。次いで、オートクレーブ内を温度180℃、圧力3気圧に維持しながら、前記アルキレンオキサイド混合物900gを導入した後、熟成した。反応時間は396分であった。
反応終了後、実施例1と同様にして反応液から触媒を濾別した。その結果、EOとBOのランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが得られた。
【0087】
(実施例3)
エチレンオキサイドの使用量を、ラウリン酸メチル1モルに対して3モルとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、EOとPOのランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを得た。なお、反応時間は282分であった。
【0088】
(実施例4)
硝酸マグネシウム6水和物68g、硝酸アルミニウム9水和物48g、硝酸マンガン6水和物24gを、450gの脱イオン水に溶解し、溶液Aを調製した。一方、炭酸ナトリウム13gを450gの脱イオン水に溶解し、溶液Bを調製した。前記溶液Aと前記溶液Bとを、予め1800gの脱イオン水を仕込んだ触媒調製槽に、2mol/LのNaOHでpHを9に保ち、温度を40℃に保ちながら1時間で滴下し、滴下終了後1時間熟成させた。母液を濾過により除き、得られた沈殿物を6Lの脱イオン水で洗浄し、噴霧乾燥して、水酸化アルミニウム・マグネシウム・マンガン30gを得た。これを800℃で3時間窒素雰囲気下で焼成し、複合金属酸化物19gを得た。
触媒として前記複合金属酸化物を用いること以外は、実施例1と同様にして、EOとPOのランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを得た。なお、反応時間は270分であった。
【0089】
(実施例5)
オートクレーブにKOH水溶液を添加しないこと、すなわち複合金属酸化物触媒の表面改質を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、EOとPOのランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを得た。なお、反応時間は127分であった。
【0090】
(実施例6)
ラウリン酸メチルに代えてオレイン酸メチルを使用すること以外は、実施例5と同様にして、EOとPOのランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを得た。なお、EOおよびPOの使用量は、各々、オレイン酸メチル1モルに対して12モルおよび3モルとなるように設定した。反応時間は151分であった。
【0091】
(実施例7)
ステアリン酸エチルに代えてパルミチン酸メチルを使用することと、複合金属酸化物触媒の表面改質を行わないこと以外は、実施例2と同様にして、EOとBOのランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを得た。なお、EOおよびBOの使用量は、各々、パルミチン酸メチル1モルに対して15モルおよび2モルとなるように設定した。反応時間は170分であった。
【0092】
(実施例8)
複合金属酸化物触媒の表面改質を行わないこと以外は、実施例4と同様にして、EOとPOのランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを得た。なお、反応時間は130分であった。
【0093】
(比較例1)
2.5MgO・Al2O3・qH2Oで表される水酸化アルミニウム・マグネシウム25gを、700℃で3時間窒素雰囲気下で焼成し、複合金属酸化物14gを得た。
オートクレーブに、ラウリン酸メチル350g、前記複合金属酸化物2.1g(ラウリン酸メチルに対して0.6質量%)と、KOHの40質量%水溶液0.21g(KOHとして0.084g)とを仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した後、攪拌しながら昇温および脱水した。次いで、オートクレーブ内を、温度180℃、圧力3気圧に維持しながら、エチレンオキサイド648g(ラウリン酸メチル1モルに対して9モル)を導入し、その後熟成した。続いて、プロピレンオキサイド190g(ラウリン酸メチル1モルに対して2モル)を導入し、その後熟成した。反応時間(エチレンオキサイドの導入時間および熟成時間と、その他のアルキレンオキサイドの導入時間および熟成時間との合計、以下の比較例においても同じ。)は329分であった。
反応終了後、反応液を80℃に冷却し、水150gと、濾過助剤として活性白土および珪藻土をそれぞれ5gとを添加した後、反応液から触媒を濾別した。その結果、EOとPOのブロック付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが得られた。
【0094】
(比較例2)
実施例4と同様にして、水酸化アルミニウム・マグネシウム・マンガンの焼成物である複合金属酸化物を調製した。この複合金属酸化物を触媒として用いること以外は、比較例1と同様にして、EOとPOのブロック付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを得た。なお、反応時間は342分であった。
【0095】
(比較例3)
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表されるハイドロタルサイト25gを、500℃で3時間窒素雰囲気下で焼成し、複合金属酸化物14.5gを得た。
オートクレーブに、ステアリン酸エチル350gと、前記複合金属酸化物2.1g(ステアリン酸エチルに対して0.6質量%)と、NaOHを0.059g仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した後、攪拌しながら昇温および脱水した。次いで、オートクレーブ内を温度180℃、圧力3気圧に維持しながら、エチレンオキサイド739g(ステアリン酸エチル1モルに対して15モル)を導入し、その後熟成した。続いて、ブチレンオキサイド(BO)161g(ステアリン酸エチル1モルに対して2モル)を導入し、その後熟成した。反応時間は468分であった。
反応終了後、比較例1と同様にして反応液から触媒を濾別した。その結果、EOとBOのブロック付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが得られた。
【0096】
下記表1に、上記実施例および比較例において使用した脂肪酸アルキルエステルおよびアルキレンオキサイドの種類と、生成物の構造および付加モル数を示す。また、下記表2に、上記実施例および比較例における反応条件を示す。
【0097】
【0098】
【0099】
表2に示すように、実施例においては、比較例よりも短い反応時間で、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを製造できることが確認できた。
【0100】
上記実施例および比較例で得られた脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルについて、加水分解率および起泡力を測定した。結果を、表3に示す。なお、加水分解率および起泡力の測定方法は、次の通りである。
【0101】
(加水分解率)
pH4およびpH9の緩衝液に、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを5質量%となるように溶解し、これを50℃の温度条件下で保存した。1週間後、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの加水分解により生成した脂肪酸量を高速液体クロマトグラフィーにより定量し、得られた値から加水分解された脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの量を算出した。
【0102】
(起泡力)
Ross−Miles試験装置を用い、JIS K3362に記載の測定法に準拠し、0.1質量%の脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル水溶液について、滴下終了直後と、滴下終了から5分後の泡高を測定した。なお、測定温度は、25℃とした。
この測定値は泡切れの評価に用いることができ、滴下終了直後の泡高(a)に対する5分後の泡高(b)の比(b/a)が小さいほど、泡切れが良好であると評価できる。
【0103】
【0104】
表3に示すように、実施例で得られたランダム付加体である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、比較例のブロック付加体と同等の低い加水分解率が得られることが確認できた。また、起泡力についても比較例と同等の結果が得られ、泡切れが良好であることが確認できた。
【0105】
これらの結果から、本発明によれば、従来のブロック付加体の製造方法で得られるものと同等の良好な特性を有する脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを、従来よりも短時間で効率良く製造できるといえる。
【0106】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、複合金属酸化物触媒の存在下で、脂肪酸アルキルエステルに、エチレンオキサイドとこれ以外のアルキレンオキサイドとの混合物を反応させることにより、中性領域だけでなく、酸性領域およびアルカリ性領域においても加水分解し難い、ランダム付加体の脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを、短時間で効率良く製造することができる。
Claims (3)
- 複合金属酸化物触媒の存在下で、脂肪酸アルキルエステルに、エチレンオキサイドと、これ以外のアルキレンオキサイドとの混合物を反応させて、エチレンオキサイドとこれ以外のアルキレンオキサイドとのランダム付加体である下記一般式(I)で示される脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを生成させる脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造方法であって、
前記複合金属酸化物触媒が、下記一般式(a)で表される化合物の焼成物、下記一般式(b)で表される化合物の焼成物および金属イオンとしてAl3+および/またはMn2+が添加された酸化マグネシウムの焼成物からなる群より選ばれる少なくとも1種である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造方法。
R1C(O)(EO/AO)mOR2 (I)
(式中、R1は炭素数1〜40個のアルキル基またはアルケニル基であり、R2は炭素数1〜20個のアルキル基またはアルケニル基であり、AOは少なくとも1種の炭素数3〜8個のアルキレンオキサイドであり、その平均付加モル数は2〜5であり、EOはエチレンオキサイドであり、その平均付加モル数は3〜20であり、mはAOとEOとの合計平均付加モル数である。)
pMgO・Al2O3・qH2O (a)
(式中、pは1〜5の数であり、qは0〜20の数である。)
[Mg2+ 1-xAl3+ x(OH)2]x+[Ay- x/y・zH2O]x- (b)
(式中、Ay-は、CO3 2-、SO4 2-、OH-、NO3 -、Fe(CN)6 3-よびCH3COO-からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、xは0<x≦0.4を満足する数であり、yは1〜3の数であり、zは0〜10の数である。) - 前記複合金属酸化物触媒の表面が、金属水酸化物および金属アルコキシドの少なくとも一方によって改質されている請求項1に記載の脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造方法。
- 請求項1または2のいずれかに記載の方法により製造される脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル。
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