JP4247417B2 - 殺虫マットの揮散持続剤、および殺虫成分と共に、該揮散持続剤を含有する長時間用殺虫マット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は殺虫マットの揮散持続剤、および殺虫成分と共に、該揮散持続剤を含有する長時間用殺虫マットに関し、詳しくは殺虫マットにおいて、殺虫成分を長時間(少なくとも300時間)にわたり有効に揮散持続させるための揮散持続剤、および殺虫成分と共に、該揮散持続剤を含む長時間用殺虫マットに関する。
【0002】
【従来技術】
従来よりカ、ブユなどの刺咬性の飛翔害虫からの被害を防ぐため、殺虫成分を含有する殺虫マットを加熱してその殺虫成分を揮散させ、飛翔害虫を防除することが行われている。ところが殺虫マットに含有されている殺虫成分を揮散させ効果を得るには加熱するだけでは十分ではなく、またその使用できる時間も7〜8時間程度と短いものであった。
【0003】
そこでマットに共力剤などをいっしょに含有させ、殺虫成分の揮散を調節したりしてその効果を高めたり、使用できる時間を延ばそうとする試みがいろいろとされてきている。例えば、特公昭61−35966号には、アレスリンを有効成分とする電気蚊取用殺虫剤にアレスリン量の25〜100%量のサイネピリン500を配合する殺虫効力持続法が示されており、殺虫成分の揮散持続時間を8〜10時間とすることが可能であると記載されている。
また特開平7−196417号では、プラレトリンを含有する加熱蒸散用殺虫マットにおいて、0.5〜10倍量のサイネピリン500を配合することで、一定量の殺虫成分を長時間たとえば、12時間使用しても十分な効力をもつように揮散させることが記載されている。
【0004】
しかしこれらは、殺虫成分の揮散は高められてはいるが、その使用できる時間についてはいずれも10〜12時間程度であり、これではマットの取替え頻度が減ることはなく手間がかかり、また経済的にも好ましくはない。
そこでこの欠点を解決して、マットの使用できる時間を延ばすための手段について検討されているが、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及びα−
[2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエンが殺虫マットにおいて殺虫成分を長時間にわたり有効に揮散持続させる作用があることについては知られていない。
【0005】
そして従来において3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールは、特開昭54−14521号に記載のある殺虫成分の安定剤、特開昭53−121927号に示されている酸化防止剤などの用途、また特公平2−25885号にある吸液芯用殺虫液組成物における吸液芯の目詰まりを惹起せず、該芯の長寿命化を可能とし、これに基づいて殺虫剤の蒸散性(揮散量及び有効揮散率)を顕著に向上させる作用が知られているにすぎなかった。
そのうえ特開昭53−121927号では、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンや3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどは、加熱器で加熱すると殺虫成分であるアレスリンより早く揮散消失してしまい、安定効果が発揮されないことが記載されており、加熱蒸散の用途には不適であることが示唆されている。
【0006】
一方、α−[2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエンは、通常は殺虫成分の効力に対する共力作用を目的として使用されているものであり、例えば特開昭63−152304号には、2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)シクロペンタ−2−エニル−クリサンテマートを配合する多孔質マットに1/2〜8倍量を含有させることで、殺虫成分の揮散量に対して共力剤の揮散比率が長時間にわたって高くなり、殺虫成分が少量でも長時間充分な殺虫効力を発揮できることが示されている。
そしてここでも12時間までは有効な揮散が得られることは示されているが、それ以上の殺虫成分の揮散については記載がなく、ましてや300時間にもわたり殺虫成分を有効に揮散持続させる作用を有することは何ら示唆すらされてはいない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来に比べより長時間にわたり殺虫成分を有効に揮散持続させることができ、それによって十分な殺虫効果を得ることができる、マットの取替え頻度が少なくてすみ、経済的である殺虫マットを得ることにあり、そのための殺虫マットの揮散持続剤、および殺虫成分と共に、該揮散持続剤を含有する長時間用殺虫マットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、殺虫マットにおいて、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び/又はα−[2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエンが殺虫成分の有効な揮散持続を発現することで上記の課題を解決するのに適していることを見い出したことにより本発明に到達した。
すなわち、本発明は下記の殺虫マットの揮散持続剤、および殺虫成分と共に、該揮散持続剤を含む長時間用殺虫マットによって達成される。
(1)3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び/又はα−[2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエンからなる殺虫マットの揮散持続剤。
(2)殺虫成分と共に、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び/又はα−[2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエンからなる殺虫マットの揮散持続剤を含有したことを特徴とする長時間用殺虫マット。
(3)殺虫成分100重量部に対して3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールからなる殺虫マットの揮散持続剤を20〜100重量部含有したことを特徴とする長時間用殺虫マット。
(4)殺虫成分100重量部に対してα−[2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエンからなる殺虫マットの揮散持続剤を65〜150重量部含有したことを特徴とする長時間用殺虫マット。
(5)殺虫成分100重量部に対して溶剤を60〜200重量部含有したことを特徴とする請求項2乃至4記載の長時間用殺虫マット。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(以下、BHAという)及び/又はα−[2−(2ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエン(以下、ピペロニルブトキサイドという)からなる殺虫マットの揮散持続剤は、マット基材にいっしょに含有される殺虫成分の加熱による揮散を向上させると共に、少なくとも300時間にもおよびその有効量の揮散を持続させることが可能である。
そしてこの効果を有効に得るためのマット基材でのBHAの殺虫成分に対する割合は、殺虫成分100重量部に対して20から100重量部が適当であり、20重量部より少なかったり100重量部よりも多いと、有効な揮散を得られなかったり、マット基材の種類によっては、結晶が析出したり必要量を含有させることができない場合があり好ましくない。
またピペロニルブトキサイドにおいては、殺虫成分100重量部に対して65から150重量部が適当である。
【0010】
さらに本発明においてはマット基材に溶剤をいっしょに含有することにより、殺虫成分の揮散をより安定にすることができる。すなわち使用初期では溶剤の方が殺虫成分よりも揮散量が多いことから単位時間あたりの殺虫成分の揮散が抑制され、過剰な揮散が起こらない。また終期においては溶剤はすでにほとんどが揮散しており、そのために殺虫成分のみが揮散することになりその結果として使用期間を通じ安定な揮散が得られる。この場合に殺虫成分100重量部に対して溶剤を60〜200重量部含有することが適当である。
【0011】
ここで本発明の殺虫成分としては、各種の加熱蒸散用途に適した殺虫成分が使用でき、ピレスロイド系、カーバメイト系、有機リン系などの殺虫成分が挙げられ、その中でも安全性が高いことからピレスロイド系殺虫成分が好ましく、例えば、ピナミン・フォルテ、バイオアレスリン、エキスリン、プラレトリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、フェンバレレート、シペルメトリン、シフェノトリン、エムペントリン、テラレスリン、エトフェンプロックス、トランスフルスリンなどが示される。
これらの中で好ましい殺虫成分としてはプラレトリンを挙げることができ、その構造が知られている酸側、アルコール側の不斉炭素に起因する4個の光学異性体と酸側のcis/transの2個の幾何異性体よりなる計8個の立体異性体のいずれか1種もしくはこれらの混合物が使用できる。
これらのうち、d,d−T80−プラレトリン(酸側がd−cis/trans体でcis/transが約2/8であり、アルコール側がd−体)が工業的に入手ができることから好ましい。 また、効力の点からはd,d−T100−プラレトリンが好ましいものとして挙げられる。そしてこの他にも、プラレトリンと同様にその構造が知られている光学異性体、立体異性体のいずれか1種もしくはこれらの混合物を使用することは特に制限されない。
【0012】
本発明の殺虫成分の使用量はマット1枚当たり飽和量まで含有させることができるが、その効力および経済性の観点から好ましい量を設定すればよい。
より詳しく説明すれば、例えば、マットの容積が22×35×3mmの場合、12時間×30日を設定した時、プラレトリンを例に示せば150〜300mgとなるように使用すればよい。ただしこれは一つの基準であり、有効量の殺虫成分が目的とする期間、持続されていればよい。
例えば、蚊を対象とした場合では、4.5〜8畳の大きさの空間において、殺虫成分としてピナミン・フォルテでは1.5mg/hr以上、バイオアレスリンでは1.2mg/hr以上、エキスリンでは0.7mg/hr、プラレトリンでは0.4mg/hr以上が有効量とされており、各殺虫成分においてこのような有効量が得られるようにそれぞれ調節すればよく、上記の3成分を例に示せば540mg以上/マット、432mg以上/マット、252mg以上/マットとなるように含有させればよい。
そしてBHAまたはピペロニルブトキサイドの含有割合は、これらの殺虫成分のマット基材における含有割合を基準として調製すればよい。
さらに本発明の揮散持続剤を含有した長時間用殺虫マットは、上記に示した他により広い空間でも使用することができ、例えば、10〜16畳の大きさの空間で用いることができる。
【0013】
本発明の長時間用殺虫マットは、殺虫成分とBHAまたはピペロニルブトキサイドの含有割合が満足されればよく、公知の一般的な方法にてマット基材に滴下、塗布、浸漬など適当な方法により含浸させることにより製造される。そして本発明の効果を損なうことがない限り、公知の共力剤、酸化防止剤、保留剤、溶剤、香料および染料などを併用することができる。
例えば、共力剤としては、サイネピリン500、MGK264など、酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、アルコール類、グリコール類、エーテル類など、溶剤としては、飽和脂肪族炭化水素および不飽和脂肪族炭化水素、水、アルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類、グリコール類、イソプロピルミリステートやブチルステアレートなどのエステル類などが挙げられる。
そして溶剤においては、殺虫成分100重量部に対して60〜200重量部をマット基材に含有することが効果の点から好ましい。
さらに必要に応じて、また好みにあわせて芳香成分、消臭成分、殺菌成分、防腐成分、難燃成分、誤食防止成分などを配合することができる。
【0014】
上記の各成分を保持させるためのマット基材としては、有機繊維としてリンター、パルプなどの天然繊維:羊毛、綿、絹などの動植物性繊維:レーヨンなどの再生繊維:アクリル、ポリエステルなどの合成繊維が挙げられ、またガラス繊維、石綿などの無機繊維などから得られる紙、不織布、黒鉛、CaCO3、SiO2、Al2O3、パーライト、白陶土、タルク、セピオライト、ベントナイトなどの無機質粉:焼結金属:ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのプラスチック発泡体が示される。
これらマット基材の厚みは1〜7mm、好ましくは1.2〜4mmがよく、厚みが過度に増すと熱伝導性が不十分となり有効成分の良好な揮散が得られない場合がある。また、薄過ぎるとマットの単位面積あたりの有効成分の保持量に制約を受けたり、使用開始時(通電初期)の短時間に有効成分が多量に揮散してしまうことなどがあり好ましくはない。
このマット基材の大きさは、通常1〜100cm2程度であるが特に制限されるものではない。またその形状も、板状、円形状、多角形状、不定形状、筒状な適宜好ましい形状とすることができる。そして形態的には、蒸散面及び/又は被加熱面にアルミなどの金属薄膜を設けたものでもよい。
【0015】
本発明においてマットを加熱する熱源としては50〜350℃程度の熱を与えることができるものであればよく、抵抗ヒータ(ニクロム線など)、半導体(PTC)を用いた発熱板や加熱ヒーターなどの電気的なものが繁用性があり、安全性の点からも好ましい。また、アルコール、ガスなど燃焼熱を用いたもの、触媒による酸化反応を用いたもの、空気及び/又は水と接触して発熱する物質を用いたもの、熱風を用いるなどがあり、さらに直接加熱、間接加熱の何れでもよくその手段は特に制限されるものではない。
【0016】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0017】
a.殺虫マットの作成
担体として2.2cm×3.5cm×0.3cmのパルプ板を使用し、そこに表1記載の各成分を点滴して含浸させ殺虫マットa〜gを作成した。
【0018】
【表1】
【0019】
b.揮散試験
i)表1記載の殺虫マットa〜gを電気蚊取り器にセットし、約125℃で各マットを加熱し、1日12時間当たりのプラレトリンの揮散量を測定した。その結果は表2に示した。
なおプラレトリンの揮散量は、揮散したプラレトリンを12時間連続で捕集しシリカゲルに吸着させた後、抽出および濃縮したものをガスクロマトグラフにより定量分析することにより求めた。
【0020】
【表2】
【0021】
揮散試験の結果から、BHAがプラレトリンの有効な揮散および持続に適していることが明らかに認められた。すなわち他の物質では試験開始20日後では、ほとんどプラレトリンの揮散は見られないが、BHAを配合した場合は、有効量の揮散が認められている。さらにその後、試験開始30日においても有効揮散が確認された。
またピペロニルブトキサイドは100mgではプラレトリンの揮散および持続に関して満足できるものではなかったが、200mgをマット基材に含有させることにより、BHAとほぼ同様に十分な揮散そしてその持続が得られた。
その他の物質は、含有量を200mgとした場合でも、プラレトリンの十分な揮散および持続を得ることはできなかった。
【0022】
ii)殺虫マット(プラレトリン300mg、溶剤(ディマールH:日本テルペン社製)200mgを含有)におけるBHAおよびピペロニルブトキサイドの好ましい含有量について検討し、その結果を表3に示した。
【0023】
【表3】
【0024】
殺虫マットにおけるBHAの含有量は、プラレトリン300mgに対して60mg以上において有効な揮散が認められた。そして好ましくは120mgから300mgであった。
またピペロニルブトキサイドは200mg以上において、BHAと同じく優れた有効揮散が確認された。
【0025】
iii)殺虫マット(プラレトリン300mg、BHA100mgを含有)における溶剤の好ましい含有量について検討し、その結果を表4に示した。ここでは溶剤としてディマールHを用いた。
【0026】
【表4】
【0027】
殺虫マットにおいて、プラレトリン300mgに対して溶剤を180mg〜600mg(殺虫成分100重量部に対して60重量部〜200重量部に相当)含有させた本発明の好ましい例によれば、プラレトリンのさらに優れた揮散量が得られ、かつ30日にわたりその揮散量は持続されることが確認された。
【0028】
c.殺虫試験
25センチ立方(25cm×25cm×25cm)のケージにアカイエカ成虫(メス)15匹を入れ、28m3(和室6畳相当)の部屋の所定位置(床面より高さ1m、4ケ所)に設置した。そして部屋の床面中央部に本発明の長時間用殺虫マット(プラレトリン300mg、溶剤(ディマールH)400mg、BHA100mgを含有)を電気蚊取り器にセットし、通電した。
その後、30日までアカイエカのノックダウンを経時的に観察し、KT50を求めた。なお、比較にはBHAを含まない殺虫マットを用いて実施した。この結果は表5に示した。
【0029】
【表5】
【0030】
【製剤例】
次に本発明の揮散持続剤を含有する長時間用殺虫マットについて、その製剤例を具体的に示す。ここに示した製剤例のマットは何れも本発明の効果を奏するものであるが、その中でも製剤例2、3および7は例えば10〜16畳程度の広い空間での使用に適したものとして挙げられる。
【0031】
【表6】
【0032】
【発明の効果】
本発明の揮散持続剤によって、殺虫マットに含有された殺虫成分の有効な揮散が長時間(少なくとも300時間)にわたり持続される。そして、殺虫成分と共に、該揮散持続剤を含有する新たな長時間用殺虫マットは、加熱蒸散器にセットすることにより長時間にわたり有効な揮散が得られるため、マットの取替え頻度が少なくてすみ経済的である。
さらに従来知られていた空間よりもより広い空間での殺虫効果を得ることもできる。
Claims (2)
- 殺虫成分100重量部に対して3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールからなる加熱蒸散器用殺虫マットの揮散持続剤を20〜100重量部、および溶剤として飽和脂肪族炭化水素もしくはエステル類を60〜200重量部含有することを特徴とする、300時間以上の長時間にわたり殺虫成分を揮散持続させるための加熱蒸散器用殺虫マット。
- 殺虫成分100重量部に対して3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールからなる加熱蒸散器用殺虫マットの揮散持続剤を20〜100重量部、および溶剤として飽和脂肪族炭化水素もしくはエステル類を60〜200重量部含有させ、前記殺虫マットを加熱蒸散器で加熱して、少なくとも300時間殺虫成分を揮散させることを特徴とする、殺虫成分の揮散持続方法。
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