JP4246009B2 - リガンドを担持した担体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゼラチンおよびアラビアゴムを含み、かつリガンドを効率よく担持した担体、並びに該担体の製造方法に関する。本発明のリガンドを担持した担体は、粒子凝集反応、酵素免疫反応、化学発光法などの担体を用いた免疫学的測定に使用可能である。
抗原や抗体等のリガンドを固定化した担体は、免疫学的な検査に利用されている。なかでも、担体が粒子の形状のものは粒子凝集法などによく用いられている。
担体に抗原や抗体を固定するには、数多くの方法が行われている。例えば、物理吸着によるものや、共有結合による結合方法が挙げられる(非特許文献1(石川榮治ら 酵素免疫測定法 1978年 医学書院 東京))。一般に共有結合法は結合が強固で、担体に多くの抗原、抗体を結合させることができる優れた方法である。この方法の中でも、カルボキシル基とアミノ基の間の結合を利用した方法として、主に混合酸無水物法とカルボジイミド法が用いられている。しかしながら、これらは操作上、再現性に難点があるという問題点がある。そこで、N−ヒドロキシスクシンイミド(N-Hydroxysuccinimide)法が考案された(非特許文献2(H Hosoda et al. Synthesis of corticosteroid haptens possessing the bridge at the C-4 position. Chem Pharm. Bull. 1980, 28: 1294) および非特許文献3(H Hosoda et al. The preparation of steroid N-hydrosuccinimide esters and their reactivities with bovine serum albumin. Chem Pharm. Bull. 1979, 27: 742))。この方法は、EDAC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)などの水溶性カルボジイミドで担体のカルボキシル基を活性化し、これにリガンドのアミノ基をN−ヒドロキシスクシンイミドで結合させるものである。この反応に用いる試薬は、幾つかのメーカーから市販されており入手可能である(非特許文献4(PIERCE Chemical Company, instruction sheet EDC No.22980))。
抗原や抗体等のリガンドを固定する担体は、生物由来担体と人工担体に大別することができる。前者は、動物赤血球などが代表で、ヒツジ血球などをホルマリンやグルタルアルデヒドで固定化して使用される。しかし、生物由来であるため表面に存在する抗原部位が交差反応を引き起こし、目的とする凝集反応を正確に検出できない場合がある。この欠点を補うために人工担体が開発された。その中でも生体由来のゼラチンと水溶性多糖類を用いる複合コアセルベートは古くから使用され、種々の検討がなされている(非特許文献5(HG Bundenberg de Jong. In Colloid Science 1949 Vol 2, Amsterdam)、非特許文献6(近藤保、小石真純、マイクロカプセルその製法、性質、応用、p6-11、三共出版、1989年)、特許文献1(特開昭57-160465)、特許文献2(特開昭57-153658) および特許文献3(特公平7-86508))。また、特許文献4(特開2001-330614)において佐藤らは、ゼラチン/アラビアゴムコアセルベートに、先に延べたN−ヒドロキシスクシンイミド法によって抗体を結合させる方法を報告している。
石川榮治ら 酵素免疫測定法 1978年 医学書院 東京
H Hosoda et al. Synthesis of corticosteroid haptens possessing the bridge at the C-4 position. Chem Pharm. Bull. 1980, 28: 1294
H Hosoda et al. The preparation of steroid N-hydrosuccinimide esters and their reactivities with bovine serum albumin. Chem Pharm. Bull. 1979, 27: 742
PIERCE Chemical Company, instruction sheet EDC No.22980
HG Bundenberg de Jong. In Colloid Science 1949 Vol 2, Amsterdam
近藤保、小石真純、マイクロカプセルその製法、性質、応用、p6-11、三共出版、1989年
特開昭57-160465号公報
特開昭57-153658号公報
特公平7-86508号公報
特開2001-330614号公報
このような状況下、本発明者は、ゼラチンアラビアゴムコアセルベートを作製し、試薬メーカー能書の方法(非特許文献4(PIERCE Chemical Company, Instruction sheet EDC No.22980, p2,3))や佐藤らの方法(特許文献4(特開2001-330614))に従ってN−ヒドロキシスクシンイミド法により抗体結合を試みたところ、その結合量は低く、高感度な免疫反応に用いる担体として使用するには必ずしも満足できるものではなかった。このような問題点を本発明者は新たに見出し、本発明ではこのような問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、リガンド結合量の増大した担体を再現性よく製造する方法を提供することを目的とする。
なお、免疫学的検査に用いられる担体がリガンドを効率よく結合していることは、当該検査の感度を高める上で重要であるため、効率よくリガンドを結合した担体の製造には強い要望があるものと考える。
上記課題を解決するため検討を重ねた結果、本発明者は、N−ヒドロキシスクシンイミド法の特定の反応に使用する反応液が、リガンド結合の効率に多大な影響を与えていることを発見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の手段を提供する。
(1)ゼラチンおよびアラビアゴムを含み、かつリガンドを担持した担体の製造方法であって、
ゼラチンおよびアラビアゴムを含む担体のカルボキシル基を活性化させる第一反応および活性化されたカルボキシル基にリガンドのアミノ基を結合させる第二反応を含むN−ヒドロキシスクシンイミド法に従って担体にリガンドを担持させる工程を含み、
ここで第二反応が、以下からなる群より選択される反応液中で行われることを特徴とする方法
(a)0より高く0.01 M以下の濃度の緩衝液、
(b)0より高く0.2重量%以下の濃度の塩の水溶液、
(c)0より高く10重量%以下の濃度の糖類の水溶液、および
(d)純水。
(2)前記(a)0より高く0.01 M以下の濃度の緩衝液が、0より高く0.01 M以下の濃度でpH 4〜5の緩衝液である、(1)に記載の方法。
本発明のリガンドを担持した担体の製造方法によれば、リガンド結合量の増大した担体を再現性よく作製することが可能である。当該方法により作製される本発明の担体は、免疫学的反応等の分析反応に関与するリガンドを高効率に結合しているため、本発明の担体を用いて高感度な分析反応を行うことが可能となる。
以下、本発明のリガンドを担持した担体およびその製造方法について説明する。なお、以下の記載は、本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
本発明の担体は、ゼラチンおよびアラビアゴムを含み、かつリガンドを効率よく担持したものである。本発明の担体は、担持しているリガンドの種類に応じて、免疫学的な分析、生化学的な分析、遺伝学的な分析等、種々の分析反応に利用することができる。
本発明の担体は、ゼラチンおよびアラビアゴムを含むものであり、ここで「含む」とは、ゼラチンおよびアラビアゴムを主成分として担体が構成されているが、その他必要に応じて任意成分を含んでいてもよいことを意味する。任意成分としては、例えば、担体に所望の性質を付与するために添加される物質、および担体を形成する際に添加され担体に混入する化学物質等が挙げられる。ここで「担体に所望の性質を付与するために添加される物質」には、担体内に封入される後述の芯物質が含まれる。
本発明の担体原料となるゼラチンは、当該技術分野でゼラチンアラビアゴムコアセルベートを調製する際に使用可能なものであればよく、主として、ウシ、ブタの骨や皮に含まれるコラーゲン質を分解生成したものを使用することができる。ゼラチンおよびアラビアゴムは、それぞれ商業的に入手可能なものを使用することができる。
また本発明において担体は任意の形態であり得、例えば、コアセルベートのような粒子の形態、あるいはマイクロタイタープレートのウェル等の容器底面上に固相させた一層の膜の形態とすることができる。
担体がコアセルベートの形態を有する場合、コアセルベート径(直径)は、コアセルベート形成終了時のpHおよびゼラチン/アラビアゴム重量比(G/A)により適宜調節することができるが(図1参照)、一般に免疫学的分析に使用する担体を作製する場合には、コアセルベート径(直径)を例えば1〜10μmとすることができる。
上記担体に担持させる「リガンド」は、本発明の担体を用いて行われる分析反応に関与するものであり、免疫学的な分析、生化学的な分析、遺伝学的な分析等、任意の分析反応に関与するものであり得る。リガンドとして、例えば、抗原、抗体、酵素、ホルモン、細胞、核酸等が挙げられるが、これに限定されない。
なお、本発明において、リガンドの担体への結合は、N−ヒドロキシスクシンイミド法によるもの、すなわち、担体のカルボキシル基とリガンドのアミノ基との共有結合によるものであるため、リガンド自身が本来アミノ基を有しているものであることが望ましい。担体にリガンドを担持させる手法については、後で説明する。
先に、「ゼラチンおよびアラビアゴムを含む担体(リガンドを担持していないもの)」の調製の仕方について説明する。ここでは、その形態がコアセルベートである場合を例に説明する。
まず、ゼラチンのゲル化温度以上(好ましくは35℃以上、例えば約40℃)において、0.01〜2重量%のゼラチン(G)と0.01〜2重量%のアラビアゴム(A)を、その重量比(G/A)を一般的には0.5〜1.5、好ましくは0.5〜1.2、より好ましくは0.5〜1.0になるように、29〜65重量%の水溶性有機溶媒中で混合する。ここで水溶性有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン等が使用可能であるが、毒性等を考慮すればエタノールが望ましい。また、G/Aが上記範囲を超えるとコアセルベート径の調製が困難になる傾向があり、上記範囲を下回るとリガンドの結合量が減少する傾向がある。コアセルベートの調製液中には、当該分野で公知のとおり、コアセルベート粒子の凝集を防止するために、界面活性剤を添加しておくことが好ましい。界面活性剤の種類および添加量については、その効果を奏する範囲内において当業者であれば適宜設定することができる。
次いで、酸(例えば酢酸、プロピオン酸、希塩酸、希硫酸)の添加により、ゼラチンアラビアゴムコアセルベートを析出させる。ここで酸の添加量は、作製したいコアセルベート径に応じて適宜設定する(図1参照)。その後ゲル化温度以下(好ましくは35℃以下、例えば約10℃)に冷却し、グルタルアルデヒド、ホルマリン等のアルデヒドで架橋する。
また、コアセルベートの形態を有する担体の作製にあたっては、芯物質を加えて、芯物質をコアセルベートで包んだいわゆるマイクロカプセルとすることもできる。所望の芯物質を用いることにより、コアセルベートの比重調整、コアセルベートの磁性化、着色等を行うことが可能である。その際には適当な界面活性剤(例えばTween20、Tween80、Triton X-100など)を添加して、分散性を上げておくことが望ましい。芯物質としては、SiO2(ガラス)、TiO2、CuO、CoO、Fe2O3などの金属酸化物の微粉末、カーボン、タルクなど種々のものを利用することができる。磁性体を含有させた担体は、適宜の磁気発生手段(永久磁石、電磁石等)により、液体中での攪拌、洗浄、測定等の各種処理工程を短時間で行うことができる。なお、当業者であれば、担体を所望の性質とするために適切な芯物質の種類および芯物質の使用量について適宜選択することができる。
また、コアセルベート以外の形態を有する担体、例えば容器底面上に固相させた膜状の担体については、以下に記載のとおり調製することができる。すなわち、ゼラチンのゲル化温度以上において、0.01〜2重量%のゼラチン(G)と0.01〜2重量%のアラビアゴム(A)をG/A比0.5〜1.5となるように塩類を含まない水溶液の溶液中で混合し、これをゲル化温度以下に冷却し、アルデヒドで架橋することにより調製することができる。
次に、調製されたコアセルベートの形態の担体にリガンドを担持させる方法、N−ヒドロキシスクシンイミド法について説明する。ここでは、リガンドとして抗体を用いた場合を例に説明する。
上述のとおり調製された、アルデヒドで架橋済みコアセルベートに対して、これを純水で洗浄後、必要に応じて染色を行い、公知のN−ヒドロキシスクシンイミド法を適用する。N−ヒドロキシスクシンイミド法は、担体のカルボキシル基を活性化させる「第一反応」と、活性化されたカルボキシル基とリガンドのアミノ基とを結合させる「第二反応」を含む。まず、「第一反応」として、N−ヒドロキシスクシンイミドとカルボジイミドをそれぞれ適切な濃度(例えばそれぞれ最終濃度0.0075〜0.03g/mL)で含む反応液に、先の架橋済みコアセルベートを懸濁し、室温で2時間から一晩(例えば6〜12時間)反応させる。第一反応の後、コアセルベートを遠心洗浄し、次いで「第二反応」として、目的とする抗体を適切な濃度(例えば最終濃度1〜50μg/mL)で含む反応液を加え、室温あるいは冷蔵(2〜8℃)で2時間から一晩(例えば6〜15時間)反応させる。なお、本明細書において、第一および第二の各反応において基質が反応する場となる液体を「反応液」と称する。
本発明では、後述の実施例で実証されるとおり、「第一反応」の反応液として、酸性緩衝液、例えばMES(pH4.5)やリン酸クエン酸バッファー(pH5)、あるいは純水、生理食塩水(0.9% NaCl溶液)を使用することができる。「第二反応」の反応液として、これまで当該反応で推奨されていたpH7〜9の塩基性緩衝液、例えばリン酸バッファー、炭酸バッファー(pH7〜8.5)、HEPES(pH8.5)より、低濃度の緩衝液、塩濃度の低い塩の水溶液、糖類濃度の低い糖類の水溶液および純水の何れかを好ましく使用することができる。なお、第二反応において、低い塩濃度を有する緩衝液は当然使用可能である。
第二反応で用いられる「低濃度の緩衝液」とは、好ましくは0より高く0.01M以下、より好ましくは5mM以下である任意の緩衝液をいう。
後述の実施例では、第二反応で用いられる「低濃度の緩衝液」は、好ましくは上記濃度範囲のpH5以下の緩衝液、より好ましくは上記濃度範囲のpH4〜5の緩衝液、具体的には、上記濃度範囲のリン酸クエン酸バッファー、酢酸−酢酸ナトリウムバッファー、グリシン−塩酸バッファーが挙げられる。後述の実施例ではpHが上記範囲より高いと、リガンドの担体への結合効率が低下するため好ましくない。また、リガンドがタンパク質である場合には、pHが4より低いと、その高次構造が破壊され得るため好ましくない。
また、「塩濃度の低い塩の水溶液」とは、好ましくは0より高く0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下の濃度で塩を含有する水溶液であり、塩の種類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。なお、第二反応に好ましい塩化ナトリウム水溶液の塩濃度をイオン強度で表すと、イオン強度0.17 ms/cm以下の水溶液、より好ましくはイオン強度0.08 ms/cm以下の水溶液ということができる。すなわち、本発明ではこのようなイオン強度を有する塩の水溶液を、第二反応の反応液として用いることができる。従って、各種バッファーにおいても濃度(モル濃度)は可能な限り低くした水溶液を使用すべきである。
また、ここで「糖類濃度の低い糖類の水溶液」とは、好ましくは0より高く10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の濃度で糖類を含有する水溶液であり、糖類の種類としては、スクロース、ラクトース、グルコース等が挙げられる。
また、「純水」とは、市販の純水製造装置により精製される水であり、一般化学分析用、ガラス器具の洗浄に用いられるレベルの純水で充分である。例えば、濾過、蒸留、逆浸透、イオン交換、またはこれらの組み合わせにより精製される水である。
第二反応の反応液は、リガンドがタンパク質である場合には、酸性条件下におけるリガンドタンパク質の変性を考慮して、純水またはpH=約5.0の溶液が好ましく使用され、具体的には、pH=約5.0の濃度0.01M以下のリン酸クエン酸バッファー、pH=約5.0の濃度0.01M以下の酢酸−酢酸ナトリウムバッファー、0.01M以下のMES(pH 4.6)が好ましく使用される。ただし、第二反応に適した反応液がこれらに限定されないことはいうまでもない。
上述の反応液を第二反応に使用することにより、従来第二反応での使用が推奨されていたpH7〜9のモル濃度の高い塩基性緩衝液と比べて、10倍以上ものリガンドを結合させることが可能になる。
なお、第二反応で使用される反応液は、当該反応液中にアミノ基を含有すると(例えば、グリシンHClバッファー等の場合)リガンドの結合効率の低下が懸念されるが、後述の実施例(図3)に示されるとおりグリシンのアミノ基の影響は少ないと考えられる。
第二反応の後、BSA(bovine serum albumin)やゼラチン、動物血清などで、未反応の官能基をブロックし(ブロッキング)、所望の免疫学的反応に供される抗体を担持したコアセルベートが作製される。作製されたコアセルベートは、そのまま目的とする免疫学的反応用の溶液に置換して目的の反応に利用してもよいし、バイアル瓶等に分注して凍結乾燥し、長期保存をすることも可能である。
また、本発明で用いるN−ヒドロキシスクシンイミド法は、当該方法において公知のとおり、N−ヒドロキシスクシンイミドに代えて、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジンを含むN−ヒドロキシ化合物を使用することができる。また、当該方法において公知のとおり、カルボジイミドとして、EDAC;1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、DIPC;ジイソプロピルカルボジイミド等を使用することができる。なお、後述の実施例では、N−ヒドロキシスクシンイミドとEDACを使用した。
上述のとおり、本発明に従って、N−ヒドロキシスクシンイミド法の各反応において特定の反応液を使用して担体にリガンドを担持させることにより、リガンドを効率よく担持した担体を再現性よく製造することが可能となる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
本実施例では、N−ヒドロキシスクシンイミド法の第二反応で使用する反応液が、リガンドの担体への結合量に及ぼす影響を調べた。
[方法]
(1)ゼラチンアラビアゴムコアセルベートの形成
0.6gのアラビアゴム(仙波糖化工業)をEtOH:H2O(2:1)に溶かし、更にTween20、フェリコロイドW10(タイホー工業)を添加し、1N NaOHでpHを調整したのち、40℃に加温した4%ゼラチン水溶液(S1757、ニッピ工業)を13mL混合する。攪拌しながら、0.2N酢酸をゆっくり添加し、コアセルベートを作製する。予め求めたpH 5〜5.6において酢酸添加を中止して、目的径約8〜10μmのコアセルベートを作製した。コアセルベートが形成されたら、氷水の入ったバットにてそのまま攪拌して10℃以下に冷却し、ゲル化した。後、グルタルアルデヒド(和光純薬製)を2mL加え、そのまま30分間攪拌し、室温で一晩静置してコアセルベートを架橋した。
得られたコアセルベートは、粒度分布測定器(HORIBA製作所 CAPA700)を用いてコアセルベート径を確認した。
(2)N−ヒドロキシスクシンイミド法によるウサギ抗ヒトIgGの結合
架橋したコアセルベートは、純水で洗浄後、20%(V/V)に調整した。その10mLを分取して、精製水にN−ヒドロキシスクシンイミド(ナカライテスク(株))とEDAC(Sigma Chemical)をそれぞれ0.01g/mLになるように溶かしたもの10mLを加え、攪拌しながら室温で2時間反応させた(第一反応)。反応後、コアセルベートを遠心洗浄し、ウサギ抗ヒトIgG(Jackson)を0.01M PBS(pH7.2)をはじめとする各種水溶液に5μg/mLになるように溶解したものを加えて、室温で一晩反応させた(第二反応)。第二反応後はBSA/PBS(0.1%BSA含PBS pH7.2)で3回洗浄して、ウサギ抗ヒトIgG感作粒子とした。また、同様に抗体を加えない未感作粒子も作製した。
(3)ウサギ抗ヒトIgG結合量の測定
ウサギ抗ヒトIgG感作粒子と未感作粒子をBSA/PBS pH7.2で0.5(V/V)に希釈し、その200μLを分取して遠心し、沈さに、BSA/PBS pH7.2で予め求めた最適濃度に希釈した抗ウサギIgG抗体POD標識(フナコシ)を1mL加えて攪拌しながら室温で1時間反応させた。後、BSA/PBS pH7.2で6回洗浄して、沈さに1mLの基質溶液(OPD含、H2O2添加クエン酸バッファー pH5)を加えて室温で15分間発色の後、3N硫酸0.5mLを加えて遠心し、上清のOD492nmを測定した(図2)。あるいは、抗ウサギIgG抗体POD標識の代わりにアルカリフォスファターゼ標識の同抗体を用いて、OD405nmを測定した(図3)。
[結果]
図2および図3に、第二反応で用いる反応液を各種変えた場合の抗体結合量の違いを示す。用いた反応液を以下に記す。
CP4: 0.01M リン酸クエン酸バッファー(pH4)
CP5: 0.01M リン酸クエン酸バッファー(pH5)
CP6: 0.01M リン酸クエン酸バッファー(pH6)
CP7: 0.01M リン酸クエン酸バッファー(pH7)
CP8: 0.01M リン酸クエン酸バッファー(pH8)
0.2〜0.8% NaCl: 0.2〜0.8重量% NaCl水溶液
純水: ミリポワ(MILLIPORE)社純水製造システムにより調製
HEPES: 0.01M HEPES(pH8.5)
MES: 0.1M MES(2-(N-morpholino)ethane sulfonic acid)(pH4.5)
AcOH−Na: 0.01M 酢酸−酢酸ナトリウムバッファー(pH5)
0.01M PBS: 0.01M Phosphate buffered saline(pH7)
0.01M PB: 0.005Mもしくは0.01M Phosphate buffer(pH7)
0.01M CB: 0.01M 炭酸バッファー(pH9.2)
Gly−NaOH: 0.15M グリシン−NaOHバッファー(pH8.2)
Gly−HCl: 0.015Mもしくは0.15M グリシン−HClバッファー(pH4.6)
1.25〜10% Suc: 1.25〜10重量% スクロース水溶液
図2および図3によると、純水、酢酸−酢酸Naバッファー(pH5)、0.01M MES(pH4.5)、リン酸クエン酸バッファーpH4(CP4)を第二反応の反応液として用いた場合、抗体の担体への結合量が高く、次いでリン酸クエン酸バッファーpH5(CP5)を用いた場合が高かった。従来、文献やinstruction(第23版総合カタログ 同仁化学研究所 2002-2003 p79、同第21版 p98,99、PIERCE Chemical Company, Instruction sheet EDC No.22980 p3)で使用されている0.01M PB(Phosphate buffer)pH7、0.01M 炭酸バッファー(pH7〜8.5)、0.01M HEPES(pH8.5)を用いた場合、抗体の担体への結合量は極めて低かった。また、食塩水(0.8% NaCl)を用いた場合も抗体結合量は低く、塩(NaCl)濃度は低い方が抗体結合量が増加する傾向がみられた。なお、塩(NaCl)濃度を0.2重量%より低くした場合、塩濃度の低下に伴い抗体結合量が更に増大する傾向がみられた(データ図示せず)。また、スクロース水溶液を用いた場合、スクロース濃度が低い方が抗体結合量が増加する傾向がみられた。更に、アミノ基を含む緩衝液(グリシンHClバッファーおよびグリシンNaOHバッファー)を用いた場合のアミノ基によるリガンド結合の著しい阻害は確認されなかった。
<実施例2>
本実施例では、N−ヒドロキシスクシンイミド法の第一反応で使用する反応液および第二反応で使用する反応液をそれぞれ変化させて、リガンドの担体への結合量に及ぼす影響を調べた。
[方法]
第一反応で使用する反応液を変化させた以外は、実施例1に記載の手法に従った。
[結果]
図4に、第一反応および第二反応で用いる反応液をそれぞれ変えた場合の抗体結合量の違いを示す。図4によると、第一反応に0.01M PBS(phosphate buffered saline)pH7を使用すると、第二反応に純水を使用しても抗体結合量は低かった。一方、第一反応にCP5、純水、生理食塩水(0.9% NaCl)、MES(pH4.5)を使用し、第二反応に純水を使用した場合には、抗体結合量が高かった。また、0.1M MES(pH4.5)を使用した第一反応とCP5、純水を使用した第二反応の組み合わせでは、抗体結合量は高かったが、HEPES(pH8.5)を第二反応で使用すると抗体結合量は低くなった。
図4の結果は、第一反応が、文献等に示されるように酸性条件でなければ、活性基が分解されることを示していると考えられる。しかしながら、担体のカルボキシル基を活性化する第一反応において酸性緩衝液(CP5)を使用すると多くの抗体が結合する理由は不明である。
以上、実施例1および2の結果から、担体にN−ヒドロキシスクシンイミド法により抗体を結合させる場合、第一反応は、文献(PIERCE Chemical Company, Instruction sheet EDC No.22980 p3)に記載の如くMES(pH4.5)、CP5などの酸性溶液あるいは純水で行えばよいことが分かる。一方、第二反応は、文献(第23版総合カタログ 同仁化学研究所 2002-2003 p79、PIERCE Chemical Company, Instruction sheet EDC No.22980)では塩基性緩衝液(pH7〜9)が好ましいとされているのとは異なり、酸性溶液、低い塩濃度を有する塩の水溶液、または低い糖類濃度を有する糖類の水溶液、または純水の使用が好ましいことが分かる。好ましい反応液を用いた本発明の方法に従えば、従来第二反応に好ましいとされていたpH7〜9のリン酸バッファーやHEPESを使用した場合と比べて、10倍以上もの抗体を担体に結合させることが可能である。
コアセルベート径に及ぼすG/A比とpH(コアセルベート形成終了時)の関係を示すグラフ。 N−ヒドロキシスクシンイミド法の第二反応で使用する反応液が抗体結合量に及ぼす影響を示すグラフ。 N−ヒドロキシスクシンイミド法の第二反応で使用する反応液が抗体結合量に及ぼす影響を示すグラフ。 N−ヒドロキシスクシンイミド法の第一反応および第二反応で使用する反応液の組み合わせが抗体結合量に及ぼす影響を示すグラフ。

Claims (2)

  1. ゼラチンおよびアラビアゴムを含み、かつリガンドを担持した担体の製造方法であって、
    ゼラチンおよびアラビアゴムを含む担体のカルボキシル基を活性化させる第一反応および活性化されたカルボキシル基にリガンドのアミノ基を結合させる第二反応を含むN−ヒドロキシスクシンイミド法に従って担体にリガンドを担持させる工程を含み、
    ここで第二反応が、以下からなる群より選択される反応液中で行われることを特徴とする方法
    (a)0より高く0.01 M以下の濃度の緩衝液、
    (b)0より高く0.2重量%以下の濃度の塩の水溶液、
    (c)0より高く10重量%以下の濃度の糖類の水溶液、および
    (d)純水。
  2. 前記(a)0より高く0.01 M以下の濃度の緩衝液が、0より高く0.01 M以下の濃度でpH 4〜5の緩衝液である、請求項1に記載の方法。
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