しかしながら、このようにマニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFに拘らずステアリングホイールに配設されたマニュアル変速スイッチの操作でマニュアル変速を行うことができると、簡単な操作で容易にマニュアル変速を行うことができる反面、ステアリングホイールの回転操作中などに誤ってマニュアル変速スイッチに触れると、運転者の意に反してダウンシフトが行われて、運転者に違和感を生じさせることがある。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、マニュアル変速スイッチの操作のみでマニュアル変速を行うことができるマニュアル変速操作の利便性を維持しつつ、誤操作等により意に反したマニュアル変速が行われて運転者に違和感を生じさせることを抑制することにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 運転者によってON操作されるマニュアル変速モード設定スイッチと、(b) そのマニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFに拘らずON操作可能に配設され、運転者によってON操作されることにより切換信号を出力するマニュアル変速スイッチと、を有し、(c) 自動的に変速が行われる変速範囲が異なる複数の変速レンジ、または変速比が異なる複数のギヤ段を、前記切換信号に基づいて切り換えるマニュアル変速を実行する車両用自動変速機の変速制御装置において、(d) 前記マニュアル変速モード設定スイッチがONの時には、前記切換信号に基づき前記変速レンジまたはギヤ段を連続的に切り換える連続切換が可能な予め定められた切換態様に従ってその変速レンジまたはギヤ段を切り換える一方、そのマニュアル変速モード設定スイッチがOFFの時には、前記切換信号に基づき前記予め定められた切換態様よりも前記変速レンジまたはギヤ段の連続切換が抑制される切換態様に従ってその変速レンジまたはギヤ段を切り換えるマニュアル変速手段を有することを特徴とする。
第2発明は、第1発明の車両用自動変速機の変速制御装置において、前記マニュアル変速手段は、前記マニュアル変速モード設定スイッチがONの時には前記マニュアル変速スイッチの長押しまたは短いインタバルの連続操作により前記連続切換を実行するが、そのマニュアル変速モード設定スイッチがOFFの時には前記マニュアル変速スイッチの長押しまたは短いインタバルの連続操作による前記連続切換を行わないことを特徴とする。
第3発明は、第1発明または第2発明の車両用自動変速機の変速制御装置において、前記マニュアル変速スイッチは、ステアリングホイールまたはそのステアリングホイールの近傍に配設されていることを特徴とする。
第4発明は、(a) 運転者によってシフトレバーを用いてON操作されるマニュアル変速モード設定スイッチと、(b) そのマニュアル変速モード設定スイッチがON操作された状態で前記シフトレバーを用いてON操作可能に配設され、運転者によってそのシフトレバーを用いてON操作されることにより切換信号を出力する第1マニュアル変速スイッチと、(c) 前記マニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFに拘らずON操作可能に前記シフトレバーと別個に配設され、運転者によってON操作されることにより切換信号を出力する第2マニュアル変速スイッチと、を有し、(d) 自動的に変速が行われる変速範囲が異なる複数の変速レンジ、または変速比が異なる複数のギヤ段を、前記切換信号に基づいて切り換えるマニュアル変速を実行する車両用自動変速機の変速制御装置において、(e) 前記第1マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいて前記マニュアル変速を実行する際には、前記変速レンジまたはギヤ段を連続的に切り換える連続切換が可能な予め定められた切換態様に従ってその変速レンジまたはギヤ段を切り換える一方、前記第2マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいて前記マニュアル変速を実行する際には、前記予め定められた切換態様よりも前記変速レンジまたはギヤ段の連続切換が抑制される切換態様に従ってその変速レンジまたはギヤ段を切り換えるマニュアル変速手段を有することを特徴とする。
第5発明は、第4発明の車両用自動変速機の変速制御装置において、前記マニュアル変速手段は、前記第1マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいて前記マニュアル変速を実行する際には、その第1マニュアル変速スイッチの長押しまたは短いインタバルの連続操作により前記連続切換を実行するが、前記第2マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいて前記マニュアル変速を実行する際には、その第2マニュアル変速スイッチの長押しまたは短いインタバルの連続操作による前記連続切換を行わないか、或いはその連続切換の切換時間が前記第1マニュアル変速スイッチの場合に比較して長いことを特徴とする。
第6発明は、(a) 運転者によってシフトレバーを用いてON操作されるマニュアル変速モード設定スイッチと、(b) そのマニュアル変速モード設定スイッチがON操作された状態で前記シフトレバーを用いてON操作可能に配設され、運転者によってそのシフトレバーを用いてON操作されることにより切換信号を出力する第1マニュアル変速スイッチと、(c) 前記マニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFに拘らずON操作可能に前記シフトレバーと別個に配設され、運転者によってON操作されることにより切換信号を出力する第2マニュアル変速スイッチと、を有し、(d) 自動的に変速が行われる変速範囲が異なる複数の変速レンジ、または変速比が異なる複数のギヤ段を、前記切換信号に基づいて切り換えるマニュアル変速を実行する車両用自動変速機の変速制御装置において、(e) 前記第1マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいて前記マニュアル変速を実行する際には、その切換信号が予め定められた第3切換実行時間以上継続した場合に前記変速レンジまたはギヤ段を切り換える一方、前記第2マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいて前記マニュアル変速を実行する際に、前記マニュアル変速モード設定スイッチがONの時には、その切換信号が前記第3切換実行時間よりも長い第2切換実行時間以上継続した場合に前記変速レンジまたはギヤ段を切り換え、そのマニュアル変速モード設定スイッチがOFFの時には、その切換信号がその第2切換実行時間よりも更に長い第1切換実行時間以上継続した場合に前記変速レンジまたはギヤ段を切り換えるマニュアル変速手段を有することを特徴とする。
第7発明は、第4発明〜第6発明の何れかの車両用自動変速機の変速制御装置において、前記第2マニュアル変速スイッチは、ステアリングホイールまたはそのステアリングホイールの近傍に配設されていることを特徴とする。
第1発明の変速制御装置においては、マニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFに拘らずマニュアル変速スイッチの切換信号に基づいてマニュアル変速が実行されるため、マニュアル変速スイッチの操作のみでマニュアル変速(変速レンジやギヤ段の切換)を行うことが可能で、マニュアル変速を容易且つ簡便に行うことができる。しかも、マニュアル変速モード設定スイッチがOFFの時には、ONの時に比べて変速レンジまたはギヤ段の連続切換が抑制される切換態様に従ってマニュアル変速が行われるため、例えば第2発明のようにマニュアル変速スイッチの長押しまたは短いインタバルの連続操作による連続切換が禁止されるなどマニュアル変速が行われ難くなり、誤操作等による意に反したマニュアル変速によって運転者に生じさせる違和感が軽減される一方、マニュアル変速モード設定スイッチがONの時には連続切換を行うことができて優れた変速操作性が得られる。
第3発明では、マニュアル変速スイッチがステアリングホイールまたはステアリングホイールの近傍に配設されているため、マニュアル変速操作を一層容易に行うことができる反面、ステアリングホイールの近傍には種々の操作スイッチや操作レバーが配設されており、運転操作中に誤ってマニュアル変速スイッチに接触する可能性が高いため、誤操作等による意に反したマニュアル変速によって運転者に生じさせる違和感を軽減するという第1発明、第2発明の効果が一層大きくなる。
第4発明では、マニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFに拘らず第2マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいてマニュアル変速が実行されるため、第2マニュアル変速スイッチの操作のみでマニュアル変速を行うことが可能で、マニュアル変速を容易且つ簡便に行うことができる。しかも、第2マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいてマニュアル変速を実行する際には、シフトレバーを用いてマニュアル変速モード設定スイッチがON操作されるとともに、そのシフトレバーを用いて更に第1マニュアル変速スイッチがON操作されることによって出力される切換信号に基づいてマニュアル変速を実行する場合に比較して、変速レンジまたはギヤ段の連続切換が抑制される切換態様に従ってマニュアル変速が行われるため、例えば第5発明のように第2マニュアル変速スイッチの長押しまたは短いインタバルの連続操作による連続切換が禁止されるなどマニュアル変速が行われ難くなり、誤操作等による意に反したマニュアル変速によって運転者に生じさせる違和感が軽減される一方、第1マニュアル変速スイッチを用いてマニュアル変速する場合には連続切換を行うことができて優れた変速操作性が得られる。
第6発明では、マニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFに拘らず、シフトレバーを用いることなくON操作可能な第2ニュアル変速スイッチの切換信号に基づいてマニュアル変速が実行されるため、第2マニュアル変速スイッチの操作のみでマニュアル変速を行うことが可能で、マニュアル変速を容易且つ簡便に行うことができる。しかも、第2マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいてマニュアル変速を実行する際には、マニュアル変速モード設定スイッチがONの時に第1マニュアル変速スイッチの切換信号に従ってマニュアル変速を実行する場合の第3切換実行時間よりも長い第2切換実行時間或いは第1切換実行時間以上第2マニュアル変速スイッチが継続してON操作された場合にマニュアル変速が行われるため、誤って第2マニュアル変速スイッチに接触しただけでマニュアル変速が行われる可能性は低く、誤操作等による運転者の意に反したマニュアル変速が抑制されて違和感が軽減される一方、第1マニュアル変速スイッチを用いてマニュアル変速する場合には短い第3切換実行時間に基づいてマニュアル変速が速やかに行われて優れた変速応答性が得られる。
また、マニュアル変速モード設定スイッチがOFFの時に第2マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいてマニュアル変速を実行する際の第1切換実行時間は、マニュアル変速モード設定スイッチがONの時に第2マニュアル変速スイッチの切換信号に基づいてマニュアル変速を実行する際の第2切換実行時間よりも長いため、マニュアル変速モード設定スイッチがOFFの時に誤って第2マニュアル変速スイッチに接触しただけでマニュアル変速が行われる可能性は低く、誤操作等による運転者の意に反したマニュアル変速が抑制されて違和感が軽減される一方、運転者がマニュアル変速を意図しているマニュアル変速モード設定スイッチがONの時に第2マニュアル変速スイッチでマニュアル変速を実行する際には、短い第2切換実行時間でマニュアル変速が速やかに行われて優れた変速応答性が得られる。
第7発明では、第2マニュアル変速スイッチがステアリングホイールまたはステアリングホイールの近傍に配設されているため、マニュアル変速操作を一層容易に行うことができる反面、ステアリングホイールの近傍には種々の操作スイッチや操作レバーが配設されており、運転操作中に誤って第2マニュアル変速スイッチに接触する可能性が高いため、誤操作等による意に反したマニュアル変速によって運転者に生じさせる違和感を軽減するという第4発明〜第6発明の効果が一層大きくなる。
本発明の車両用自動変速機の変速制御装置は、例えば遊星歯車式や平行軸式等の有段の自動変速機に好適に適用されるが、変速範囲が異なる複数の変速レンジを有するベルト式、トロイダル型等の無段変速機にも適用され得る。無段変速機については、有段変速機と同様に複数の前進ギヤ段で段階的に変速比を変化させる態様で使用することも可能である。自動的に変速が行なわれる変速レンジの変速範囲は、通常は変速比が最も大きい最低速前進ギヤ段や最低速変速比は同じで、最高速前進ギヤ段や最高速変速比が異なるだけである。
マニュアル変速モードとしては、変速レンジを切り換えるレンジ切換タイプと、ギヤ段を直接切り換えるギヤ段切換タイプがあるが、本発明はそのどちらの切換タイプにも適用され得る。レンジ切換タイプでも、マニュアル変速時には変速範囲の相違によりアップシフトやダウンシフトが行われる。マニュアル変速モード設定スイッチによってマニュアル変速モードが設定されていない時には、例えば車速およびスロットル弁開度(運転者の出力要求量)などの運転状態に基づいて定められた変速条件(変速マップなど)に従って変速比を自動的に切り換える自動変速モードが実行されるように構成され、その自動変速モードの実行中であっても、マニュアル変速スイッチのON操作でマニュアル変速モードに移行し、マニュアル変速が行われる。
変速レンジやギヤ段を切り換えるマニュアル変速手段は、切換後のエンジン回転速度や車両の挙動を安定させるように制御するVSC(Vehicle Stability Control)等の判断により、その切換或いは変速を制限する切換制限手段(ガード手段)を備えていることが望ましい。切換制限手段は、ギヤ段切換えやレンジ切換えを完全に中止するものでも良いが、可能な範囲でギヤ段切換えやレンジ切換えを行なうものが望ましい。車速が高い時には、ダウンシフトによる駆動力変化が大きいため、そのダウンシフトを制限することが望ましく、車速が低い場合には駆動力変化が小さいため、自由にダウンシフトできるようにすれば良いなど、車速に応じて切換制限を設けることもできる。
第1発明〜第3発明のマニュアル変速スイッチ、第4発明〜第7発明の第2マニュアル変速スイッチは、第3発明、第7発明のようにステアリングホイールやその近傍、例えばステアリングコラムやインストルメントパネル等に配設することが望ましいが、運転席横のセンターコンソール部分などステアリングホイールから離れた部分に設けることもできる。このマニュアル変速スイッチや第2マニュアル変速スイッチ、或いは第4発明〜第7発明の第1マニュアル変速スイッチは、何れも自動的にOFF状態に復帰する自動復帰型のものが好適に用いられ、押釦式やレバー式など種々の態様が可能で、例えば1回のON操作毎にアップシフトやダウンシフトが行われるが、第1発明〜第5発明ではON操作の連続操作回数やON操作の継続時間によって2段以上の多重変速や飛越し変速が行われる。
マニュアル変速スイッチや第1マニュアル変速スイッチ、第2マニュアル変速スイッチは、例えばON操作によって電気信号を出力するように構成されるが、ON操作によって電気信号の出力を停止する場合であっても良く、その場合は、電気信号の出力停止が切換信号の出力を意味する。
マニュアル変速モード設定スイッチは、例えばシフトレバーの操作ポジションとして、マニュアル変速モードで走行するM(マニュアル)ポジション等を設け、そのMポジションへシフトレバーが操作されることによりONとなるように配設されるが、第1発明〜第3発明では、シフトレバーとは別にセンターコンソール部分やインストルメントパネル等に設けることもできる。シフトレバーは、例えば運転席横のセンターコンソール部分やインストルメントパネル等に配設される。
シフトレバーがMポジションへ操作されることによってマニュアル変速モード設定スイッチがONとされる場合、第4発明〜第7発明の第1マニュアル変速スイッチは、そのMポジションに設けられてシフトレバーによりON操作されるように構成される。
マニュアル変速スイッチや第1マニュアル変速スイッチ、第2マニュアル変速スイッチは、例えばダウンシフト用およびアップシフト用の一対のスイッチが設けられるが、自動変速モードでは一般に総ての変速範囲で変速が行われるのに対し、マニュアル変速モードでは、変速比が小さい高速側の変速範囲が段階的に制限されるため、マニュアル変速モードでは、一般にダウンシフト用のスイッチによってダウンシフトが行われる場合が多い。したがって、マニュアル変速モード設定スイッチのOFFで自動変速モードへ戻るようになっている場合には、アップシフト用のスイッチは必ずしも必要なく、ダウンシフト用のスイッチだけであっても良い。
第1発明および第4発明の予め定められた切換態様は、例えばマニュアル変速スイッチや第1マニュアル変速スイッチが長押しされた場合に、予め定められた所定の切換実行時間毎に連続的に変速レンジやギヤ段を切り換えるように定められ、予め定められた切換態様よりも変速レンジまたはギヤ段の連続切換が抑制される切換態様は、その長押しによる連続切換が不可で、マニュアル変速スイッチや第2マニュアル変速スイッチの操作継続時間に拘らず1回のON操作毎に変速レンジやギヤ段を1つずつ切り換えるように定められる。
上記切換態様としては、長押しによる連続切換の可否の他、短いインタバルの連続操作による連続切換の可否などがあるが、切換実行時間の長さを設定することも可能である。
切換実行時間等の切換態様は、マニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFなどに応じて予め一定の条件が定められても良いが、例えば車速や操舵角、ブレーキのON、OFF等の走行状態や、路面のμ(摩擦係数)、勾配などの走行環境などに基づいて可変設定されるようにしても良い。
第4発明は、第1マニュアル変速スイッチによるマニュアル変速時の切換態様と、第2マニュアル変速スイッチによるマニュアル変速時の切換態様とを異ならせるもので、第2マニュアル変速スイッチの切換態様は、マニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFに拘らず同じであっても良いが、第1発明〜第3発明のようにマニュアル変速モード設定スイッチのON、OFFで切換態様を異ならせるようにしても良い。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1の(a) は、車両用自動変速機10の骨子図で、(b) は複数のギヤ段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の前後方向(縦置き)に搭載するFR車両に好適に用いられるもので、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力部材に相当するもので、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動されるトルクコンバータ32のタービン軸であり、出力軸24は出力部材に相当するもので、プロペラシャフトや差動歯車装置を介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、この自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1(a) では中心線の下半分が省略されている。
図2は、上記自動変速機10の第1変速部14および第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)の回転速度を直線で表すことができる共線図で、下の横線が回転速度「0」で、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸22と同じ回転速度であり、クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態(係合、解放)に応じて第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の8つの前進ギヤ段が成立させられるとともに、第1後進ギヤ段「Rev1」および第2後進ギヤ段「Rev2」の2つの後進ギヤ段が成立させられる。図1の(b) の作動表は、上記各ギヤ段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態との関係をまとめたもので、「○」は係合、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合を表している。第1速前進ギヤ段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無いのである。また、各ギヤ段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。なお、図1(a) の符号26はトランスミッションケースである。
図3は、上記自動変速機10やエンジン30などを制御するために車両に設けられた制御系統の概略を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ52により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン30の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によってアクセル操作量Accに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁56が設けられている。また、エンジン30の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットル弁開度センサ62、車速V(出力軸24の回転速度Nout に対応)を検出するための車速センサ64、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度Nin)を検出するためのタービン回転速度センサ66、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ68、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、Mモードスイッチ76、第1アップシフトスイッチ80、第1ダウンシフトスイッチ81、第2アップシフトスイッチ82、第2ダウンシフトスイッチ83などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、スロットル弁開度θTH、車速V、タービン回転速度NT、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、変速レンジを手動操作で切り換えることができるMモード(マニュアル変速モード)の選択の有無、第1アップ指令SUP1、第1ダウン指令SDN1、第2アップ指令SUP2、第2ダウン指令SDN2などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
前記電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。電子制御装置90にはまた、インストルメントパネル等に設けられたMモードインジケータ100、レンジインジケータ102、ギヤ段インジケータ104が接続されており、Mモードインジケータ100にマニュアル変速モードが選択されている旨を表示し、レンジインジケータ102に現在の変速レンジを表示し、ギヤ段インジケータ104に現在のギヤ段を表示する。
上記電子制御装置90によるエンジン30の出力制御は、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射装置92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば実際のアクセル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン30の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってエンジン30のクランク軸をクランキングする。
自動変速機10の変速制御は、図4に示す変速制御手段110によって実行される。変速制御手段110は、機能的に自動変速手段112、マニュアル変速手段114を備えており、シフトレバー72のレバーポジションPSHに応じて変速制御を行う。シフトレバー72は運転席の近傍(センターコンソール部分)に配設され、図5に示すシフトパターン120に従って移動操作されるようになっており、シフトパターン120は、それぞれ一列で形成された第1レバー通路122と第2レバー通路124とを備えており、第1レバー通路122には5つのレバーポジション「P(パーキング)」、「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、および「M(マニュアル)」が設けられて、シフトレバー72はその何れかのレバーポジションへ択一的に操作される。これ等のレバーポジション「P」〜「M」のうち「P」、「R」、「N」、および「D」は、レバーポジション「D」が車両の後方側となるように、車両の前後方向に沿って設けられており、レバーポジション「M」は、レバーポジション「D」から車両の幅方向であって運転席に近い側に設けられている。また、第2レバー通路124は、レバーポジション「M」において第1レバー通路122と略直角に交差するように、車両の前後方向に沿って形成されており、その前後方向の両端部すなわちレバーポジション「M」を挟んで互いに反対側に「+」位置および「−」位置が設けられている。
上記レバーポジション「P」は駐車位置で、自動変速機10は動力伝達遮断状態とされるとともに、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってパーキングロック機構などにより機械的に出力軸24、すなわち駆動輪が回転不能に固定される。レバーポジション「R」は後進走行を行なう後進走行位置で、例えばシフトレバー72の移動操作に従って油圧制御回路98(図3参照)のマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、自動変速機10は前記後進ギヤ段「Rev1」または「Rev2」が成立させられる。レバーポジション「N」は動力伝達遮断位置で、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、自動変速機10はクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の全部または一部が解放されて動力伝達遮断状態とされる。これらのレバーポジション「P」、「R」、「N」へシフトレバー72が操作されると、そのことがレバーポジションセンサ74によって検出され、レンジインジケータ102にそれ等のポジション「P」、「R」、「N」である旨が表示される。
レバーポジション「D」は、自動変速機10の前進ギヤ段を自動的に切り換えて前進走行する前進走行位置すなわち前進走行ポジションで、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、総ての前進ギヤ段「1st」〜「8th」を成立させることが可能とされ、自動変速手段112によりそれ等の総ての前進ギヤ段「1st」〜「8th」を用いて自動的に変速する最上位のDレンジ(自動変速モード)が成立させられる。すなわち、シフトレバー72がレバーポジション「D」へ操作されると、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断してDレンジを電気的に成立させ、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の総ての前進ギヤ段を用いて変速制御を行う。具体的には、油圧制御回路98に設けられた複数のソノレイド弁やリニアソレノイド弁のATソレノイド99の励磁、非励磁を制御することにより油圧回路を切り換え、図1(b) に示すようにクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の作動状態を変化させて、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の何れかの前進ギヤ段を成立させるのである。この変速制御は、例えば図7に示すように車速Vおよびアクセル操作量Accをパラメータとして予め記憶された変速マップ等の変速条件に従って行われ、車速Vが低くなったりアクセル操作量Accが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の前進ギヤ段を成立させる。このレバーポジション「D」では、レバーポジションセンサ74からの信号に基づいてDレンジであることがレンジインジケータ102に表示されるとともに、変速制御によって逐次切り換えられる実際の前進ギヤ段がギヤ段インジケータ104に表示される。
レバーポジション「M」はM(マニュアル)ポジションで、予め定められた複数の変速レンジを手動操作に従って電気的に切り換えるマニュアル変速モードが成立させられる。すなわち、Mポジションに設けられる「+」位置、「−」位置はそれぞれアップシフト位置、ダウンシフト位置であり、シフトレバー72がそれ等の「+」位置または「−」位置に操作されると、マニュアル変速手段114により変速レンジが切り換えられる。図8は、予め定められた変速レンジとその変速範囲を示す図で、ギヤ段の欄の数字「1」〜「8」は第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」を表しており、変速比が最も大きい最低速前進ギヤ段は何れも第1速前進ギヤ段「1st」で、最高速前進ギヤ段が1つずつ変化している。また、各変速レンジでは、第1速前進ギヤ段「1st」からその最高速前進ギヤ段までの範囲で、前記Dレンジと同じ変速条件に従って自動的に変速が行なわれる。
このマニュアル変速モードでは、シフトレバー72がMポジションに移動操作されたことを前記Mモードスイッチ76からのON信号によって判断し、マニュアル変速モードが選択されたことを前記Mモードインジケータ100に表示するとともに、現在の変速レンジをレンジインジケータ102に表示し、且つ変速制御によって逐次切り換えられる実際の前進ギヤ段をギヤ段インジケータ104に表示する。また、シフトレバー72が「+」位置または「−」位置に操作されたことは、前記第1アップシフトスイッチ80、第1ダウンシフトスイッチ81によって検出され、これ等の第1シフトスイッチ80、81から前記電子制御装置90に第1アップ指令SUP1や第1ダウン指令SDN1を表す切換信号が出力される。「+」位置および「−」位置は何れも不安定であり、シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により自動的にレバーポジション「M」に戻されるようになっている。第1アップシフトスイッチ80および第1ダウンシフトスイッチ81は何れもシフトレバー72を通じて運転者によりON操作される自動復帰型のマニュアル変速スイッチで、それぞれスプリング等の付勢手段により自動的にOFF状態に復帰する。本実施例では、Mモードスイッチ76がマニュアル変速モード設定スイッチに相当する。また、第1アップシフトスイッチ80および第1ダウンシフトスイッチ81は、マニュアル変速モード設定スイッチがONの時に有効とされるようにMポジションに配設されており、第1アップシフトスイッチ80および第1ダウンシフトスイッチ81が請求項4〜7の第1マニュアル変速スイッチに相当する。
マニュアル変速モードはまた、図6に示すようにステアリングホイール84の近傍のステアリングコラム86に配設された第2アップシフトスイッチ82および第2ダウンシフトスイッチ83が矢印で示すように回動操作(ON操作)されることによっても成立させられる。この場合、シフトレバー72が「D」ポジションに保持されている時であっても、第2ダウンシフトスイッチ83がON操作されると自動変速モードからマニュアル変速モードに切り換えられるようになっている。すなわち、Mモードスイッチ76のON、OFFに拘らず、第2アップシフトスイッチ82、第2ダウンシフトスイッチ83がON操作されると、これ等の第2シフトスイッチ82、83から前記電子制御装置90に第2アップ指令SUP2や第2ダウン指令SDN2を表す切換信号が出力され、変速レンジが切り換えられる。第2アップシフトスイッチ82および第2ダウンシフトスイッチ83は何れも運転者によりON操作される自動復帰型のマニュアル変速スイッチで、それぞれスプリング等の付勢手段により自動的に原位置(OFF状態)まで戻り回動させられる。そして、第2ダウンシフトスイッチ83がON操作され、自動変速モードからマニュアル変速モードに切り換えられた場合にも、マニュアル変速モードが選択されたことを前記Mモードインジケータ100に表示するとともに、現在の変速レンジをレンジインジケータ102に表示し、且つ変速制御によって逐次切り換えられる実際の前進ギヤ段をギヤ段インジケータ104に表示する。本実施例では、第2アップシフトスイッチ82および第2ダウンシフトスイッチ83が請求項1〜3のマニュアル変速スイッチ、請求項4〜7の第2マニュアル変速スイッチに相当する。
上記電子制御装置90に、例えば下り坂などでダウン指令SDN1またはSDN2が繰り返し供給されると、変速レンジが例えば「D」レンジから、「7」レンジ、「6」レンジ、「5」レンジ・・・へ切り換えられるとともに、前進ギヤ段が第8速前進ギヤ段「8th」から第7速前進ギヤ段「7th」、第6速前進ギヤ段「6th」、第5速前進ギヤ段「5th」・・・へ順次ダウンシフトされて、エンジンブレーキが増大させられる。
ここで、マニュアル変速手段114は、第1シフトスイッチ80、81によるマニュアル変速か、第2シフトスイッチ82、83によるマニュアル変速かによって、異なる切換態様に従って変速レンジを切り換えるようになっている。また、シフトレバー72が「D」ポジションに保持されている時に第2シフトスイッチ82、83がON操作された場合にも、更に異なる切換態様に従って変速レンジを切り換えるようになっている。
図9は、このように3つの異なる切換態様に従って変速レンジの切換制御が行われる部分を具体的に説明するフローチャートで、ステップS1では、シフトレバー72が前進走行ポジションである「D」ポジションまたは「M」ポジションへ操作されているか否かをレバーポジションPSHを表す信号によって判断し、「D」または「M」ポジションの場合にはステップS2を実行する。ステップS2では、ステアリングコラム86に設けられた第2シフトスイッチ82または83がON操作されて、第2アップ指令SUP2または第2ダウン指令SDN2が供給されたか否かを判断し、その第2シフトスイッチ82または83がON操作された場合にはステップS3以下を実行する。
ステップS3では、シフトレバー72が「M」ポジションに保持されているか否か、すなわちMモードスイッチ76がONか否かを判断し、シフトレバー72が「D」ポジションでMモードスイッチ76がOFFの場合には、ステップS4で、第2ダウンシフトスイッチ83の第2ダウン指令SDN2に基づいて変速レンジをダウン切換する際の切換実行時間TDon1、および第2アップシフトスイッチ82の第2アップ指令SUP2に基づいて変速レンジをアップ切換する際の切換実行時間TUonを設定する。また、ステップS5では、第2シフトスイッチ82、83の長押しによる変速レンジの連続切換を不可として、第2シフトスイッチ82、83の操作継続時間に拘らず、それぞれ上記切換実行時間TUon、TDon1以上の1回のON操作毎に変速レンジを1つずつアップ切換またはダウン切換する切換パターン1を設定する。切換パターン1はまた、一定時間α以下の短いインタバルの連続操作による変速レンジの連続切換も不可とするように定められている。上記切換実行時間TDon1は第1切換実行時間に相当する。
そして、次のステップS6では、これ等のステップS4、S5で設定された切換態様に従って変速レンジの切換制御を実行する。図10は、このようにステップS4、S5で設定された切換態様に従ってレンジ切換が行われた場合の第2ダウン指令SDN2、第2アップ指令SUP2、および変速レンジの変化を示すタイムチャートの一例で、(a) は第2ダウンシフトスイッチ83が2回目のON操作で長押しされた場合で、その長押しに拘らず変速レンジは「7」レンジから「6」レンジへ1つ下がるだけである。図10の(b) は、第2ダウンシフトスイッチ83の3回目のON操作の前のOFF時間TDoff が一定時間αよりも短い場合で、その3回目のON操作に拘らず変速レンジは変化しない。
前記ステップS3の判断がYES(肯定)の場合、すなわちシフトレバー72が「M」ポジションでMモードスイッチ76がONの場合には、ステップS7で、第2ダウンシフトスイッチ83の第2ダウン指令SDN2に基づいて変速レンジをダウン切換する際の切換実行時間TDon2、および第2アップシフトスイッチ82の第2アップ指令SUP2に基づいて変速レンジをアップ切換する際の切換実行時間TUonを設定する。この場合の切換実行時間TDon2は前記ステップS4の切換実行時間TDon1よりも短く、切換実行時間TUonはステップS4の切換実行時間TUonと同じである。また、ステップS8では、第2シフトスイッチ82、83の長押しによる変速レンジの連続切換を許容し、それぞれ上記切換実行時間TUon、TDon2毎に変速レンジを連続的にアップ切換またはダウン切換する切換パターン2を設定する。切換実行時間TUon、TDon2とは異なる連続切換時間を定めることもできるし、長押しによる時間経過と共に連続切換時間が短くなるようにしても良いなど、種々の態様が可能である。切換パターン2はまた、前記一定時間αよりも短いインタバルの連続操作による変速レンジの連続切換も許容するように定められている。上記切換実行時間TDon2は第2切換実行時間に相当する。
そして、次のステップS6では、上記ステップS7、S8で設定された切換態様に従って変速レンジの切換制御を実行する。図11は、このようにステップS7、S8で設定された切換態様に従ってレンジ切換が行われた場合の第2ダウン指令SDN2、第2アップ指令SUP2、および変速レンジの変化を示すタイムチャートの一例で、Mモードスイッチ76がOFFの場合に第2ダウンシフトスイッチ83のON操作に基づいてレンジ切換を行う前記図10に比べて短時間で変速レンジがダウン切換されるとともに、第2ダウンシフトスイッチ83が長押しされることにより、変速レンジは切換実行時間TDon2を経過する毎に連続的にダウン切換される。なお、ステップS6では、高車速など一定の条件下で急なダウンシフトによる大きな駆動力変化を回避するため、切換制限手段により一定以上のダウン切換を制限するようになっており、図11は「5」レンジより下へのダウン切換が制限された場合である。
前記ステップS2の判断がNO(否定)の場合、すなわちステアリングコラム86に設けられた第2シフトスイッチ82または83がON操作されていない場合には、ステップS9を実行し、シフトレバー72が「M」ポジションにおいて「+」位置または「−」位置へ操作されたか否かを判断する。「+」位置または「−」位置へ操作されて第1シフトスイッチ80または81から第1アップ指令SUP1または第1ダウン指令SDN1が供給された場合には、ステップS10で、第1ダウンシフトスイッチ81の第1ダウン指令SDN1に基づいて変速レンジを切り換える際の切換実行時間TDon3、および第1アップシフトスイッチ80の第1アップ指令SUP1に基づいて変速レンジを切り換える際の
切換実行時間TUonを設定する。この場合の切換実行時間TDon3は前記ステップS7の切換実行時間TDon2よりも更に短く、切換実行時間TUonはステップS4、S7の切換実行時間TUonと同じである。また、ステップS11では、第1シフトスイッチ80、81の長押し、すなわちシフトレバー72の「+」位置または「−」位置への長押しによる変速レンジの連続切換を許容し、それぞれ上記切換実行時間TUon、TDon3毎に変速レンジを連続的にアップ切換またはダウン切換する切換パターン3を設定する。切換実行時間TUon、TDon3とは異なる連続切換時間を定めることもできるし、長押しによる時間経過と共に連続切換時間が短くなるようにしても良いなど、種々の態様が可能である。切換パターン3はまた、前記一定時間αよりも短いインタバルの連続操作による変速レンジの連続切換も許容するように定められている。上記切換実行時間TDon3は第3切換実行時間に相当する。
そして、次のステップS6では、上記ステップS10、S11で設定された切換態様に従って変速レンジの切換制御を実行する。図12は、このようにステップS10、S11で設定された切換態様に従ってレンジ切換が行われた場合の第1ダウン指令SDN1、第1アップ指令SUP1、および変速レンジの変化を示すタイムチャートの一例で、Mモードスイッチ76がONの場合に第2ダウンシフトスイッチ83のON操作に基づいてレンジ切換を行う前記図11に比べて更に短時間で変速レンジがダウン切換されるとともに、第1ダウンシフトスイッチ81が長押しされることにより、変速レンジは切換実行時間TDon3を経過する毎に連続的にダウン切換される。この場合も、高車速等の一定の条件下で切換制限手段によりダウン切換が制限されるが、図12は低車速等でダウン切換が制限されていない場合である。
なお、前記図10〜図12は、それぞれ第1シフトスイッチ80、81、および第2シフトスイッチ82、83の何れか一方を用いてレンジ切換が行われた場合であるが、それ等の第1シフトスイッチ80、81、および第2シフトスイッチ82、83を任意に使い分けてON操作しても、それ等を区別することなく継続してレンジ切換が行われる。図13は、シフトレバー72が「M」ポジションへ操作されてマニュアル変速モードが設定されている場合に、第1シフトスイッチ80、81、および第2シフトスイッチ82、83の両方を用いて変速レンジのアップダウン切換が行われた場合の一例で、第1シフトスイッチ80、81がON操作された場合にはステップS10、S11で設定される切換態様に従ってレンジ切換が行われ、第2シフトスイッチ82、83がON操作された場合にはステップS7、S8で設定される切換態様に従ってレンジ切換が行われる。「D」ポジションで第2シフトスイッチ82、83がON操作されてマニュアルのレンジ切換が行われた場合に、シフトレバー72を「M」ポジションへ操作して第1シフトスイッチ80、81、或いは第2シフトスイッチ82、83がON操作された場合も、同様に継続してレンジ切換が行われる。但し、シフトレバー72が「M」ポジションから「D」ポジションへ操作された場合には、「D」レンジに相当する自動変速モードへ戻される。
ここで、本実施例の変速制御装置においては、ステアリングコラム86に配設された第2シフトスイッチ82または83がON操作されると、ステップS3以下の各ステップが実行され、Mモードスイッチ76のON、OFFに拘らずレンジ切換が行われるため、第2シフトスイッチ82、83の操作のみでレンジ切換を行うことが可能で、マニュアルによる変速操作を容易且つ簡便に行うことができる。特に、本実施例では第2シフトスイッチ82、83がステアリングホイール84の近傍に配設されているため、マニュアルによる変速操作を一層容易に行うことができる。
一方、ステアリングホイール84の近傍には種々の操作スイッチや操作レバーが配設されているため、運転操作中に誤って第2シフトスイッチ82、83に接触し、運転者の意に反してマニュアル変速が行われる可能性があるが、本実施例ではMモードスイッチ76がOFFの時にステップS4で設定される切換実行時間TDon1はTDon2、TDon3よりも長いとともに、ステップS5で設定される切換パターン1は長押しや連続操作による変速レンジの連続切換が不可であるため、運転者がマニュアル変速を意図しているMモードスイッチ76がONの時に第2シフトスイッチ82、83がON操作された場合にステップS7、S8で設定される切換態様や、第1シフトスイッチ80、81がON操作された場合にステップS10、S11で設定される切換態様に比べて変速レンジのダウン切換が抑制され、運転操作中に誤って第2シフトスイッチ82、83に接触しただけでマニュアル変速が行われる可能性が低いとともに、連続ダウン切換が行われないため、誤操作等による運転者の意に反したマニュアル変速が抑制されて違和感が軽減される。言い換えれば、Mモードスイッチ76がONの時に第2シフトスイッチ82、83や第1シフトスイッチ80、81でマニュアル変速を行う場合には、短い切換実行時間TDon2、TDon3で速やかにレンジ切換を行うことができるとともに、長押しや連続操作によって変速レンジを連続切換することが可能で、優れた変速応答性や操作性が得られる。
また、Mモードスイッチ76がONの時に第2シフトスイッチ82、83がON操作された場合にステップS7で設定される切換実行時間TDon2はTDon3より長いとともに、ステップS8で設定される切換パターン2は長押しや連続操作によりその切換実行時間TDon2毎の連続ダウン切換を許容するものであるため、第1シフトスイッチ80、81がON操作された場合にステップS10、S11で設定される切換態様に比べて変速レンジのダウン切換が抑制され、運転操作中に誤って第2シフトスイッチ82、83に接触しただけでマニュアル変速が行われる可能性が低いとともに、連続ダウン切換の切換速度が遅いため、誤操作等による運転者の意に反したマニュアル変速が抑制されて違和感が軽減される。すなわち、Mモードスイッチ76がONの「M」ポジションにおいてシフトレバー72により第1シフトスイッチ80、81をON操作してマニュアル変速を行う場合には、最も短い切換実行時間TDon3で速やかにレンジ切換を行うことができるとともに、長押しや連続操作ではその切換実行時間TDon3毎に連続して変速レンジが切り換えられるため、最も優れた変速応答性、操作性が得られる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用自動変速機 72:シフトレバー 76:Mモードスイッチ(マニュアル変速モード設定スイッチ) 80:第1アップシフトスイッチ(第1マニュアル変速スイッチ) 81:第1ダウンシフトスイッチ(第1マニュアル変速スイッチ) 82:第2アップシフトスイッチ(マニュアル変速スイッチ、第2マニュアル変速スイッチ) 83:第2ダウンシフトスイッチ(マニュアル変速スイッチ、第2マニュアル変速スイッチ) 84:ステアリングホイール 86:ステアリングコラム 110:変速制御手段 112:自動変速手段 114:マニュアル変速手段 SUP1:第1アップ指令(切換信号) SDN1:第1ダウン指令(切換信号) SUP2:第2アップ指令(切換信号) SDN2:第2ダウン指令(切換信号) TDon1:第1切換実行時間 TDon2:第2切換実行時間 TDon3:第3切換実行時間 切換パターン1、2、3:切換態様