JP4236857B2 - セリウム系研摩材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セリウム系研摩材およびその製造方法に関し、特に分散状態が維持される性質に優れるセリウム系研摩材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セリウム系研摩材(以下、単に研摩材とも称する)には、乾燥した粉末状態で提供される研摩材粉末と、水などの分散媒と混合されたスラリー状態で提供される研摩材スラリーとがある。これらのうち、研摩材スラリーは、そのまま研摩に用いられる。他方、研摩材粉末は、通常、研摩作業前に、水等の分散媒と混合されて研摩材スラリーに調製された後、研摩に用いられる。例えば、研摩材スラリーは、研摩パッドと被研摩面との間に連続的あるいは断続的に供給されるようにして研摩に用いられる。そして、使用済みの研摩材スラリーは、通常、固液分離処理と称される後処理を経て廃棄される。この固液分離処理は、例えば、研摩材スラリー中に凝集剤を添加して固形分を沈降させる処理である。
【0003】
ところで、研摩に用いられる研摩材スラリーは、スラリー中の研摩材粒子(固形分)が分散した状態であるものが好ましい。例えば研摩材スラリーを連続的に供給しながら研摩を行う場合に、供給される研摩材スラリー中の研摩材粒子が分散していれば、研摩速度などの研摩特性が安定し、研摩により得られる面の品質が安定するなど、好都合だからである。研摩材粒子を分散させる手段としては、例えば、研摩材スラリーの撹拌がある。ただし、撹拌によって研摩材粒子を分散させたとしても、その後、研摩材スラリーを静置しておくと、研摩材粒子は次第に研摩材スラリーの下部に沈降し、研摩材粒子の分散状態は損なわれる。分散状態が損なわれた研摩材スラリーを用いると、研摩速度などの研摩特性がばらつくため好ましくない。例えば、セリウム系研摩材粒子の固形分濃度が多い部分の研摩材スラリーが供給されると、研摩傷が発生しやすくなるといった不具合が生ずるおそれがある。
【0004】
このような不具合を解消するために、近年、研摩材スラリー中の研摩材粒子の沈降を抑制するいわゆる分散剤を、研摩材スラリーに添加する方法が用いられている。この方法によれば、撹拌等によって分散された研摩材粒子の分散状態を、より長期間維持できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の分散剤、例えばヘキサメタリン酸ナトリウムやポリアクリル酸アンモニウムなどは、リンやアンモニアを含有している。したがって、分散剤を使用すると、研摩材スラリー中にこれらの成分が含まれることとなり、使用済み研摩材スラリーの後処理の手間が増える。つまり、研摩作業者は、分散剤を使用しない場合、後処理は上述した固液分離処理だけでよいが、分散剤を使用する場合、固液分離処理によって得られた液から、さらにリンや窒素化合物(アンモニア)を分離する必要が生ずる。なお、使用済み研摩材スラリー中の窒素成分を分離する方法には、例えばアンモニアストリッピング法や硝化脱窒法などの処理方法がある。
【0006】
また、近年、ハードディスク用あるいはLCD用のガラス基板の仕上げ研摩など、電子材料の製造分野において、より高精度の研摩の必要性が高まっている。これに伴い、より微粒の研摩材への需要が高まっている。粉体の場合、通常、これを十分に分散させることができれば、スラリー化したとき、粒径が小さいほど沈降しにくく分散状態を長時間維持できると考えられる。ところが、実際には、セリウム系研摩材は、粒径が小さいほど分散性が低くなり、凝集しやすくなった。つまり、粒径を小さくしても分散維持性は向上しないため、単に分散媒に混合し、撹拌するだけでは、やはり十分な分散維持性を確保できない。
【0007】
本発明は、以上のような背景の下になされたものであり、水などの分散媒と単に混合するだけで、研摩材粒子が分散している状態がより長い間維持されるセリウム系研摩材スラリーを調製でき、しかも使用済みの研摩材スラリーの後処理が簡単である、粉末状のセリウム系研摩材およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような課題に鑑み、発明者等は、セリウム系研摩材の分散について検討した。その結果、塩素(元素)を含有したセリウム系研摩材スラリーは、研摩材粒子の沈降が遅く、研摩材粒子の分散状態がより長期間維持される性質(以下、分散維持性)に優れることが解った。ところが、研摩材スラリーを調製する際に例えば塩酸や塩化アンモニウムなど、水溶性である塩素含有物質を単に添加しても、分散維持性は向上しないことが見出された。そこで、さらに検討した結果、次のような発明に想到するに至った。
【0009】
本発明は、塩素含有化合物を含むセリウム系研摩材であって、セリウム系研摩材に含まれる全希土酸化物(以下、TREOという)の質量の0.05%〜5.0%に相当する総質量の塩素(元素)が含まれているセリウム系研摩材である。
【0010】
本発明に係るセリウム系研摩材を固形分として含む研摩材スラリーは、従来の研摩材スラリーと比べて、研摩材粒子の分散維持性に優れる。研摩材粒子の分散状態が長期間維持されれば、安定した固形分濃度の研摩材スラリーを連続的あるいは断続的に供給できるため、研摩速度などの研摩特性が安定する。そして、再度分散させる作業が不要になるか、必要であっても極めて少ない回数で済むので、研摩作業時の手間が省け作業性が向上する。また、分散剤を使用する必要がないため、使用済み研摩材スラリーの後処理が簡単である。
【0011】
本発明に係る研摩材が分散維持性に優れている理由は必ずしも明らかでない。ただし、実験の結果、スラリー調製時(焙焼後)に塩酸などの水溶性塩素含有物質を添加しても研摩材の分散性が改善されないのに対し、研摩材の一部として、塩化ランタン水和物を焙焼して得たオキシ塩化ランタンのように、常温の水への溶解度が低い希土類元素の塩素含有化合物がある場合は分散性が改善されることが解った。この結果、次のように考えられることが解った。つまり、希土類元素の塩素含有化合物などのように乾燥状態で塩素(Cl)を含有している物質が研摩材中に含まれていると分散維持性が向上するということである。なお、本発明に係るセリウム系研摩材では、塩素は、主に希土類元素の塩素含有化合物(例えば、希土類元素のオキシ塩化物)の中に存在する。そして、希土類元素の塩素含有化合物を含む研摩材粒子は、従来の研摩材粒子とは表面状態などの性質が異なっており、その結果、研摩材スラリー状態での分散維持性が向上する、ということである。また、希土類元素の塩素含有化合物は、例えば、セリウム系研摩材製造の一工程である焙焼工程において、セリウム系研摩材の原料(以下、単に原料とも称する)を塩素含有物質と接触させつつ焙焼することで生成されると考えられる。
【0012】
なお、セリウム系研摩材中に含まれていると考えられる希土類元素のオキシ塩化物とは、具体的には、オキシ塩化ランタン(LaOCl等)や、オキシ塩化セリウム(CeOCl、CeOCl2等)など、ランタノイドのオキシ塩化物(LnOCl等)である。
【0013】
そして、研摩材に含まれる塩素(元素)の量は、上記したように、研摩材に含まれるTREO質量の0.05%〜5.0%相当質量であるのが好ましい。0.05%未満では分散維持性について効果的な改善が見られなかったからである。他方、5.0%を超えると、分散維持性は備えているものの、製造には不向きである。例えば、塩素含有物質によって研摩材製造時に用いられる焙焼炉(装置)が著しく劣化されるようなことが起こる。焙焼炉が劣化すると、焙焼炉の側壁等から、研摩傷の原因になる異物が脱落するなどして焙焼中の原料に混入するおそれが高まるからである。また、より分散維持性に優れ、工業的生産にもより好適であるとの理由から、塩素の総質量は、TREOの質量の0.2%〜3.0%に相当する質量がより好ましい。なお、焙焼炉の劣化が問題にならないのであれば、塩素をTREO質量の5.0%相当質量以上含み、しかも分散維持性を備える研摩材を提供することが可能であると考えられる。
【0014】
ところで、セリウム系研摩材に含まれる塩素(元素)の総質量とは、希土類元素の塩素含有化合物の一部として存在する塩素だけでなく、研摩材中に含まれる全塩素の質量の総和である。セリウム系研摩材は、通常、スラリー研摩材に調製された状態で研摩に用いられるので、スラリー状態における総質量を測定するのがよい。ただし、調製の前後で塩素の出入りはないと考えられることから、スラリーに調製される前の粉末状の研摩材あるいは研摩材スラリーを乾燥して得られる研摩材に基づいて、スラリー研摩材中の塩素の総質量を特定できる。そして、乾燥した研摩材を用いて特定する方がより容易である。
【0015】
また、「TREO(全希土酸化物)の質量」とは、存在する希土類元素を、その存在形態にかかわらず希土類酸化物であるとして質量換算して得られる総質量のことである。これは、TREOの測定方法としては次のような方法が一般的となってことに起因する。すなわち、TREOの測定方法は、一般的には、まず試料に対し必要に応じて溶解、希釈等の前処理を実施し、その後、全ての希土類元素をシュウ酸塩として沈殿させ、さらに濾過、乾燥、焙焼して希土類酸化物としてから質量を測定するという方法である。したがって、セリウム(Ce)やランタン(La)が、例えばオキシ塩化セリウムやオキシ塩化ランタン等の塩素含有化合物中に存在するような場合でも、TREOを上記方法にて測定すれば自動的に希土類酸化物に換算された値となる。
【0016】
上述したように、セリウム系研摩材の分散維持性の向上は、研摩材中に希土類元素のオキシ塩化物が存在していることと関係している、と考えられることが解った。そこで、セリウム系研摩材中に希土類元素が存在することと分散維持性との関係について、さらに検討した。
【0017】
その結果、セリウム系研摩材は、これに含まれるTREO中の酸化セリウムの割合が40.0質量%〜99.5質量%であり、TREO中の酸化ランタンの割合が、0.5質量%〜60.0質量%であるものが好ましいということが解った。
【0018】
検討の結果、TREO中の酸化ランタンの割合が0.5質量%未満のセリウム系研摩材は、必要な分散維持性を備えていない場合があるなど、品質が不安定だったからである。ただし、TREO中の酸化セリウムの割合が40.0質量%未満では、必要な研摩速度が得られない。このようなことから、TREO中の酸化ランタンの割合は0.5質量%〜60.0質量%が好ましく、TREO中の酸化セリウムの割合は40.0質量%〜99.5質量%が好ましいことが解った。なお、「TREO中の酸化セリウムの割合」という場合や「TREO中の酸化ランタンの割合」という場合のように、TREOという用語に関連して用いられる「酸化セリウム」や「酸化ランタン」という用語は、TREOの測定方法についての上述の記載からも解るように、セリウムやランタンのもともとの存在形態にかかわらずTREOの測定に伴い酸化物にされたものを表現している。したがって、この場合の「酸化セリウム」や「酸化ランタン」には、実際の研摩材中にあってはセリウムオキシ塩化物やランタンオキシ塩化物の形態として存在しているものが含まれている。また、上記範囲の上限値は、希土類元素の酸化物が酸化セリウムおよび酸化ランタンだけである場合の値であるが、これら以外の希土類元素の酸化物(塩化物を含む)を含む場合は、それらが含まれる分、酸化セリウムおよび酸化ランタンの割合の実質的な上限値は低い値になる。
【0019】
また、TREO中の酸化ランタンの割合が0.5質量%以上のセリウム系研摩材は、分散維持性に優れるという性質を安定して備えていることを先に説明したが、このような効果が得られる理由は次のように考えられる。つまり、このような研摩材では、必要量の希土類元素のオキシ塩化物が安定して含まれているということである。この結果、酸化ランタンなどに含まれるランタン(元素)が、研摩材中に希土類元素のオキシ塩化物を含ませる役割を果たしていると考えられることが解った。なお、前述したように、希土類元素のオキシ塩化物は焙焼工程において生成されると考えられる。ところで、ランタンは、通常、原料以外から供給されることはないので、TREO中の酸化ランタンの割合は、原料とその原料から製造された研摩材とではほぼ同じになる。したがって、製造された研摩材におけるTREO中の酸化ランタンの割合が0.5質量%以上であれば、原料においてもTREO中に相応量のランタンが含まれていることになる。したがって、研摩材中に所定量の酸化ランタンを含む研摩材は、焙焼工程等において、確実に希土類元素のオキシ塩化物が生成されたものであり、分散維持性に優れた研摩材である。
【0020】
また、セリウム系研摩材中のランタン(元素)のモル量に対する塩素(元素)のモル量(Cl/La)は、0.02〜1.0であるのが好ましい。
【0021】
ランタン(元素)および塩素(元素)のモル量(mol)の比率(Cl/La)が0.02未満のセリウム系研摩材は、酸化ランタンが水和されやすい物質であり、研摩材としての寿命が短いからである。また、上記モルの比率が1.0を超えるセリウム系研摩材を製造することは、その原料として希土類元素の塩素含有化合物(希土類元素の塩化物など)を使用すれば可能ではあるが、得られた研摩材は研摩速度などの品質にバラツキが生じ易いなど、品質が不安定であるという不具合を有する。
【0022】
ところで、このようなセリウム系研摩材について、その製造方法を検討した。ここでは、特に、セリウム系研摩材中に塩素(または塩素含有化合物)を含有させる工程について検討した。その結果、次のような研摩材の製造方法の発明に想到した。
【0023】
その発明は、セリウム系研摩材の原料の焙焼工程を有するセリウム系研摩材の製造方法において、焙焼工程にて、原料を塩素含有物質に接する状態で焙焼することを特徴とするものである。
【0024】
本発明のように、原料を、塩素含有物質に接する状態で焙焼すれば、セリウム系研摩材中に塩素を効果的に含有させることができる。原料と塩素含有物質とが接する状態で焙焼すると、オキシ塩化ランタンなどの希土類元素のオキシ塩化物が生成されるからであると考えられる。必要な量の塩素成分を含有した研摩材は、研摩材粒子の分散維持性に極めて優れる。つまり、研摩材スラリーに調整された状態で分散状態が長期間維持され、固形分濃度や研摩速度などの研摩特性が安定する。このような研摩材スラリーを用いて研摩を行うと、均質の研摩面が得られ、研摩傷の発生が防止される。また、研摩速度が安定するため、使い勝手がよいという利点がある。
【0025】
原料としては、特には限定されないが、バストネサイト精鉱や、バストネサイト精鉱、モナザイト精鉱あるいは中国複雑鉱等を精製して得られる希土類酸化物(以下、酸化希土という)、希土類炭酸塩(以下、炭酸希土という)、希土類水酸化物、希土類しゅう酸塩が、安価であるということもあり好ましい。
【0026】
そして、原料に接触させる塩素含有物質も限定されない。例えば、塩素や、塩酸、過塩素酸あるいは次亜塩素酸等の塩素含有酸、塩化アンモニウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物(含水塩を含む)、塩化アルミニウム(含水塩を含む)、希土類元素の塩化物(含水塩を含む)、塩化水素ガスなどの塩素化合物を挙げることができる。これらのうち、塩素は通常ガス状態で用いられるものであり、塩化アルミニウムは主として粉末状で用いられる。これらの中でも、塩素含有酸、塩化アンモニウム、希土類元素の塩化物、塩素ガス、塩化水素ガスは、焙焼時の異常な粒成長を促進する例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属などの金属を含んでいない点で好ましい。そして、さらにこの中でも、塩酸は、最も安価で、しかも窒素を含んでおらず、最も好ましい。
【0027】
ところで、研摩材製造では、最初の粉砕後の原料(焙焼前の原料)に対して、異常粒成長の原因となるナトリウム等のアルカリ金属を除去するために、必要に応じて鉱酸処理を行っている。この鉱酸処理は、粉砕後の原料を塩酸水溶液などの鉱酸溶液で洗浄することにより行われる。ところが、これまで原料中の塩素成分は不純物であると考えられており、鉱酸処理後の原料は、水等によって十分に洗浄された後に次の工程に送られている。したがって、焙焼に供される原料、さらには製造された研摩材中には、塩素(元素)はほとんど含まれていなかった。本発明は、このように、これまでアルカリ金属の除去手段であり、研摩材を製造する上では不純物と考えられていた塩素成分が研摩材の分散維持性の向上に役立つことを見出し、その結果なされたものである。
【0028】
ここで、セリウム系研摩材原料を塩素含有物質に接する状態で焙焼する方法について検討した内容を説明する。大別すると、塩素含有物質を含有する原料を焙焼する方法と、雰囲気ガス中に塩素含有物質のガスを含有させた状態で焙焼する方法とがある。
【0029】
まず、前者の焙焼方法、すなわち、塩素含有物質を含有する原料の焙焼方法について説明する。この焙焼方法を用いる場合は、焙焼対象の原料として、塩素含有物質を含有する原料を用意する必要がある。塩素含有物質を含有する原料を得る方法としては、原料と塩素含有物質を乾式または湿式にて混合する方法、セリウム含有希土類の塩化物を含む水溶液に沈殿剤を添加してセリウム含有希土類の沈殿を生成した後、固液分離する方法等がある。このような、原料を塩素含有物質に接触させる工程を、以後、塩素処理と総称する。
【0030】
塩素処理のうち、乾式混合による処理方法は、例えば原料に粉状の塩素含有物質を混合するような処理方法であり、この処理方法で用いるのに好ましい塩素含有物質としては、例えば希土類の塩化物、NH4Cl(塩化アンモニウム)、塩化アルミニウムがある。なお、乾式混合を用いる場合は、混合を乾式粉砕と同時に行っても良い。
【0031】
また、湿式混合による処理方法には、スラリー状で混合する処理方法と、粘土状で混練する処理方法とがある。より具体的には、例えば、原料、塩素含有物質および水等の分散媒を混合/混練する方法である。なお、これら3者の混合/混練の順番は任意であり、3者を同時に混合/混練してもよいし、まずいずれか2者を混合/混練した後、残りを混合/混練してもよい。また、塩素含有物質が水等の分散媒を含有している場合は分散媒を加えずに、他の2者だけを混合/混練することで塩素含有物質を含有する原料を得るようにしてもよい。このような湿式混合処理方法で用いるのに好ましい塩素含有物質としては、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム(NaCl)、KCl,CaCl2等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、塩酸、過塩素酸等の塩素含有酸等がある。なお、湿式混合を用いる場合は、混合を湿式粉砕と同時に行っても良い。
【0032】
湿式混合処理方法により得られた塩素含有物質を含有する原料中には、塩素含有物質が均一に存在していると考えられ、原料焙焼時、塩素含有物質をセリウム系研摩材全体に均一に接触させることができる。したがって、分散維持性について安定した品質を有する研摩材を製造できる。また、2種ある湿式混合処理方法のうち、スラリー状で混合する場合、高い塩素含有率を得るには、乾燥時、濾過等による固液分離手法を用いるよりも、これを用いずにスラリー全量を乾燥させる手法を用いる方が好ましい。固液分離を行うと、分離される液と共に液中の塩素が分離されてしまうからである。なお、好適な全量乾燥法としては噴霧乾燥法がある。そして、2種ある湿式混合処理方法のうちの他方、粘土状で混練する場合は、塩素が液中に残るということはない。
【0033】
そして、検討の結果、湿式混合の場合、上記塩素含有物質として、さらに希土類元素の塩化物の溶液が好ましいことが解った。TREO中の酸化ランタンの割合が0.5質量%未満のセリウム系研摩材であっても、焙焼工程前に湿式の塩素処理が行われており、その塩素処理工程において希土類元素の塩化物の溶液が用いられている研摩材は、必要な分散維持性を備えていたからである。したがって、焙焼工程の前に、希土類元素の塩化物の溶液を用いて湿式混合による塩素処理を行えば、原料中にランタン(元素)が含まれていると否とにかかわらず、研摩材中に希土類元素のオキシ塩化物を必要量、確実に含有させることができると考えられる。研摩材中に希土類元素のオキシ塩化物が確保されれば、安定した分散維持性が確保される。
【0034】
また、もう一つの塩素処理、すなわち、セリウム含有希土類の塩化物を含む水溶液に沈殿剤を添加してセリウム含有希土類の沈殿を生成した後、固液分離する方法について説明する。この処理方法で用いるのに好ましいセリウム含有希土類の塩化物を含む水溶液の濃度としては、TREO質量が5g〜400g/Lが好ましく、10g〜300g/Lがより好ましい。下限値未満では排水量が非常に多くなるという不具合があり、上限値を超えると撹拌やスラリーの移送が困難になるという不具合があるからである。沈殿剤としては、シュウ酸、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム等であり、生成される沈殿は希土類元素のシュウ酸塩、塩基性炭酸塩、炭酸塩、水酸化物等である。沈殿剤の添加量は、沈殿(希土類元素の難溶性塩)を生成するのに必要な理論量以上を添加する。また、セリウム含有希土類の塩化物水溶液の酸濃度が高い場合は酸を中和するためのアルカリを添加する。これはシュウ酸またはシュウ酸塩以外の上記沈殿剤であってもよいが、別のアルカリであってもよい。中和用のアルカリは、沈殿剤の添加前、同時、添加後のいずれの時期に添加してもよい。そして、生成した沈殿を濾過等によって固液分離することにより、塩素含有物質を含有する原料を得る。従来にあっては、ここで塩素成分を除去するために水等によって得られた原料を十分に洗浄するのであるが、本発明に係る研摩材の製造方法では洗浄しない。ただし、得られた原料中の塩素含有量が多い場合は、これを水等に浸漬させるなど適宜の方法で塩素含有量を調整し、目的の塩素含有量の原料を得る。
【0035】
また、焙焼工程の前に塩素処理により得られた、焙焼工程に供される塩素含有物質を含有する原料としては、全希土類酸化物(TREO)の質量の0.1%〜8.0%に相当する総質量の塩素(元素)を含有しているものが好ましいことが解った。
【0036】
まず、8.0%相当質量を超えると、焙焼炉の腐食が問題になりやすくなるからである。具体的には、装置寿命の短期化や、焙焼炉の劣化により脱落した物質の混入といった問題である。例えば、これらに対応するためには、メンテナンス頻度を高めるなどの手間がかかる。他方、0.1%相当質量未満では、焙焼後の原料に含まれる塩素(元素)の量が、全希土類酸化物質量(TREO)の0.05%相当質量未満になるおそれが高いからである。
【0037】
そして、特に、希土類元素の塩素含有化合物以外の塩素含有物質を用いて塩素処理を行う場合であって、かつ焙焼に供される原料のTREO中の酸化ランタン含有率が0.5質量%未満である場合、当該原料は、TREO質量の0.5%以上に相当する総質量の塩素(元素)を含有しているものがより好ましい。希土類元素の塩素含有化合物以外の塩素含有物質を塩素処理に用いた場合、その大部分は焙焼により分解され、塩素ガス等のガスとなって放出されるため、希土類元素のオキシ塩化物が生成されにくいからである。また、酸化ランタンなど、ランタン(元素)を含む物質の含有率が少ないと、希土類元素のオキシ塩化物が生成されにくいと考えられるからである。したがって、TREO質量の0.5%以上に相当する総質量の塩素(元素)を含有する原料のように塩素を多く含有させた原料を用いれば、希土類元素のオキシ塩化物の必要量の生成が確保され、分散維持性に優れる研摩材が製造される。
【0038】
なお、確認的な事項であるが、希土類元素の塩素含有化合物以外の塩素含有物質を塩素処理に用いる場合であっても、原料のTREO中の酸化ランタン含有率が0.5質量%以上(好ましくは5質量%以上)あれば、焙焼に供用する原料に含まれる塩素(元素)の総質量がTREO質量の0.1%相当質量以上0.5%相当質量未満であっても、希土類元素(特にランタン)のオキシ塩化物の必要量の生成が確保され、分散維持性に優れる研摩材が製造される。ランタン(元素)は、希土類元素の塩素含有物質以外の塩素含有物質、あるいは当該物質が焙焼により分解されて生成された塩素ガス等のガスと反応して、オキシ塩化物を生成する能力が高いためであると考えられる。
【0039】
また、先に説明した前者の焙焼方法に対応する後者の焙焼方法、すなわち、塩素含有ガス(塩素含有物質)を含む雰囲気ガス中で原料を焙焼する方法について説明する。検討の結果、焙焼工程において同時に塩素処理を行うの方法も好適であることが解った。この場合、焙焼工程において同時に塩素処理がなされる。焙焼している状態は、高温であるなど、希土類オキシ塩化物の生成条件として好適であり、この状態で塩素含有物質を供給して塩素処理を行えば、供給した塩素含有物質が有効に利用されて、効率的に希土類オキシ塩化物が生成されると考えられる。なお、雰囲気ガス中に塩素含有ガスを含める手段としては、たとえば、焙焼時の焙焼炉内に、塩素ガスなどの塩素含有ガスを流通させる方法がある。また、原料としては、TREO中の酸化ランタン含有率が0.5質量%以上(好ましくは5質量%以上)のものが好ましい。このような原料を用いれば、希土類元素(特にランタン)のオキシ塩化物の必要量の生成がより確保され、分散維持性に優れる研摩材が製造される。先に挙げた前者の焙焼方法のところで説明したように、ランタン(元素)は塩素成分と反応してオキシ塩化物を生成する能力が高いからである。
【0040】
ここで、雰囲気ガス中に含ませるのに好適な塩素含有ガスについて検討した。その結果、塩素ガスや塩化水素ガスなどの他、沸点が200℃以下(好ましくは100℃以下)の有機塩素物質であってガス化されたものであれば、用いることは可能であることが解った。そして、検討の結果、雰囲気ガス中に含ませる塩素含有ガスとしては、排ガス処理が比較的容易な塩素ガスや塩化水素ガスが好ましいことが解った。
【0041】
また、焙焼時の雰囲気ガス中における塩素含有ガスの濃度について検討した。その結果、焙焼時の雰囲気ガス中に含まれる塩素原子の量を増減させることで、結果的に製造される研摩材中の塩素原子の含有率が増減することが解った。そして、さらに検討した結果、塩素含有ガスの濃度には好適な範囲があることが解った。
【0042】
すなわち、雰囲気ガス中の塩素含有ガスの濃度は、当該塩素含有ガスの一分子を構成する塩素原子の数をn個とすると、0.01/n vol%〜20/n vol%であるのが好ましい。
【0043】
塩素含有ガスの濃度を上記範囲の上限値を超えて高めると、確実に研摩材中に塩素化合物を生成できるが、塩素成分の影響によって焙焼炉が著しく劣化するという問題が生ずる。
【0044】
他方、塩素含有ガスの濃度を低く設定すれば、装置の劣化等の問題は生じない。ところが、濃度が低くなると必要な塩素(元素)を確保できなくなるため、所定の濃度の塩素含有ガスを流通させるなどにより、塩素を焙焼雰囲気に供給する必要がある。ところが、上記範囲の下限値未満の塩素含有ガス濃度では、流通させるガス量自体が大量になる。ガスの流通量が多くなり過ぎると、流通に伴う熱交換量が多くなりすぎ、焙焼時の熱効率が極端に低くなってしまうという問題が生ずる。熱効率が低下すると、エネルギ消費量が増加するなどの不利益が生ずる。また、焙焼温度が不安定になるという問題が生じやすくなる。
【0045】
これらの問題点を検討した結果、雰囲気ガス中の塩素含有ガスの濃度は上記範囲が好ましいことが解った。上述したように、塩素含有ガスの濃度の範囲は、塩素原子の個数「n」の値に依存している。例えば、塩素ガスの分子式はCl2、すなわち「n」=2である。したがって、塩素ガスを用いる場合、雰囲気ガス中の塩素ガスの濃度は、0.005vol%〜10.0vol%が好ましい。また、塩化水素ガス(分子式はHCl、「n」=1)を用いる場合、雰囲気ガス中の塩化水素ガスの濃度は、0.01vol%〜20vol%が好ましい。そして、より焙焼温度の管理が容易で、しかも装置の劣化をより確実に抑制できるという点を考慮すると、雰囲気ガス中の塩素含有ガスの濃度は、0.1/n vol%〜10/n vol%であるのがより好ましい。
【0046】
また、複数種類の塩素含有ガスG1,G2,…を混合した混合ガスGを用いる場合は、まず混合される各塩素含有ガスG1,G2,…毎に、その塩素含有ガスを単独で用いた場合に適用される「n」と、実際に混合させた状態におけるその塩素含有ガスの割合(モル分率)m1,m2,…とを掛け合わせた数値n1(=n×m1),n2(=n×m2),…を算出する。そして、算出された値の総和(n1+n2+…)をその混合塩素含有ガスGの「n」の値として用いる。例えば、塩素ガスと塩化水素ガスとをモル分率の比が1:3になる割合で混合して用いる場合は、塩素ガス(「n」=2)について先の計算を行うと0.5(=2×1/4)という数値が得られ、塩化水素ガス(「n」=1)について先の計算を行うと0.75(=1×3/4)という数値が得られる。これらの値の総和1.25(=0.5+0.75)がこの混合ガスを用いる場合の、好適なガス濃度の範囲を定める際に用いられる「n」の値になる。
【0047】
なお、本発明に係る研摩材の製造方法の焙焼工程における焙焼温度は、600℃〜1200℃が好ましい。600℃未満では、必要な研摩速度を備えた研摩材が得られず、1200℃を超えると研摩傷を発生しやすい研摩材が得られるからである。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0049】
第1実施形態:セリウム系研摩材の原料として、中国複雑鉱を精製して得られた酸化希土原料を用意した。該原料の、TREOの割合は98質量%、TREO中の酸化セリウムの割合(CeO2/TREO)は60質量%、TREO中の酸化ランタンの割合(La2O3/TREO)は34.2質量%であった。なお、TREO中の成分割合は、途中で希土類物質が添加されない限り変化しないので、以後、その説明を省略する。この原料25kgと純水25kgとを混合して研摩材原料スラリー(以下、原料スラリーと称する)を得た。そして、この原料スラリーを、ボールミル(三井鉱山(株)製、砕王:SC220/70型)で湿式粉砕した。なお、ボールミルの粉砕容器は容量100L(リットル)であった。また、湿式粉砕に用いた粉砕媒体は、直径5mmのジルコニア(YTZ)ボール140kgであり、粉砕時間は5時間であった。
【0050】
続いて、湿式粉砕により得られた原料スラリーから分取した原料スラリー10kg(酸化希土原料5kg相当)に対して、次のようにして塩素処理を行った。まず、撹拌機付きの撹拌槽を用意した。次に、常温下(23℃)で、この撹拌槽に分取した原料スラリーと4.0mol/Lの塩酸水溶液0.5Lを入れて30分撹拌した。
【0051】
そして、塩素処理後の原料スラリーをフィルタープレス法によって濾過し、ケーキ状の原料を得た。このケーキ状の原料をPTFE製のパットに入れて静置乾燥した。なお、乾燥時の乾燥温度は130℃、乾燥時間は24時であった。乾燥後、得られた原料を、ロールクラッシャで乾式粉砕し、さらにサンプルミルで乾式粉砕した。そして粉砕後の原料を焙焼した。焙焼時の焙焼温度は900℃、焙焼時間は6時間であった。なお焙焼温度への昇温時間は6時間であった。焙焼後、得られた原料を、まずサンプルミルで粉砕し、次に分級装置(ターボクラシファイア、日清エンジニアリング社製)で分級してセリウム系研摩材を得た。なお、分級時の分級点は5μmであった。また、得られた研摩材は、TREOが99.0質量%、フッ素濃度が0.1質量%未満であった。
【0052】
第2実施形態、第3実施形態、比較例1:これらの実施形態および比較例は、塩素処理において使用する塩酸の投入量が、第1実施形態とは異なる。撹拌槽に入れた塩酸の量は、第2実施形態では1.0L、第3実施形態では1.5L、比較例1では0Lであった。つまり、比較例1では塩素処理を行わなかった。塩酸投入量以外の研摩材製造条件は、第1実施形態と同じであるので、その説明は省略する。なお、第2実施形態で得られた研摩材のTREOは98.6質量%であり、第3実施形態で得られた研摩材のTREOは98.4質量%であり、比較例1で得られた研摩材のTREOは99.1質量%であった。
【0053】
このようにして得られたセリウム系研摩材中に含まれる塩素(元素)の総質量の、TREO質量を基準とする含有率(以下、Cl含有率とも称する)、また研摩材製造時の焙焼に供用された原料中に含まれる塩素(元素)の、TREO質量を基準とする含有率を測定した。Cl含有率の測定方法は次のようなものである。
【0054】
Cl含有率の測定:まず、計量した乾燥状態の研摩材(または焙焼前原料)および純水を混合し、85℃程度(沸騰させない温度)に加熱した。その後、濾過を行い、得られた濾液について、ホルハルト(Volhard)滴定法により塩素イオンの量を測定した。また、別途TREOを測定し、研摩材(または焙焼対象の原料)のCl含有率をTREOに対する値に換算した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
また、得られたセリウム系研摩材について、ブレーン径、比表面積を測定すると共に、スラリー状態における研摩材の分散維持性、研摩特性(傷評価)の評価を行った。測定方法および評価方法を次に示し、結果を表2に示す。
【0057】
ブレーン径の測定:JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」の「7.1 比表面積試験」に記載された方法(ブレーン法)に準じて比表面積値を測定し、測定された値に基づいてブレーン径を測定した。測定法についての詳細な説明は省略するが、例えば、比表面積がS(m2/g)、セリウム系研摩材の密度がρ(g/cm3)の場合、ブレーン径d(μm)は6/(S×ρ)である。
【0058】
比表面積(BET値)の測定:JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」の「6.2 流動法」に記載される方法(具体的には「一点法」)に準じて測定した。
【0059】
分散維持性の測定:研摩材スラリーの分散性を測定するために、いわゆる沈降試験を行った。まず、研摩材粉末と純水とを混合して研摩材(固形分)の濃度が20質量%の研摩材スラリーを調製した。そして、この研摩材スラリーを撹拌分散させながら試験管に所定量入れた。その後、試験管を8時間静置して、研摩材スラリー中の研摩材の沈降状況を観察し評価(3段階)した。なお、各表中、「◎」は、全体が均一な懸濁層であり境目を確認できない状態、「○」は、試験管の底部に懸濁層と区別できる沈降ケーキ層を確認できるが、透明液層は確認できない状態、そして、「×」は、試験管の底部に懸濁層と区別できる沈降ケーキ層を確認できるだけでなく、上部に透明液層を確認できる状態であったことを示す。
【0060】
傷評価:各実施形態および比較例により得られたセリウム系研摩材を用いて、後述の条件で研摩試験を行い、研摩により得られたガラス表面(被研摩面)の傷の有無を基準として評価した。具体的には、研摩後のガラスの表面に30万ルクスのハロゲンランプを照射し、反射法にてガラス表面を観察して、大きな傷および微細な傷の数を点数化し、100点満点からの減点方式にて評価点を定めた。ハードディスク用あるいはLCD用のガラス基板の仕上げ研摩で用いるためには、90点以上が必要であり、好ましくは95点以上が必要であることから、ここでは評価点が90点以上を「○」と表示し、90点未満を「×」と表示した。なお、今回の場合、各実施形態についての評価点は後述する第4〜第10実施形態を含めてすべて95点以上であった。
【0061】
研摩試験には、オスカー型研摩試験機(台東精機(株)製、HSP−2I型)を用いた。そして、研摩材スラリーは、分散媒である純水と、試験対象の研摩材とを混合し、単に撹拌することにより調製された、固形分濃度が10質量%のものであった。この研摩材スラリーを5L用意し、循環させつつ500mL/minの割合で供給し、ポリウレタン製の研摩パッドによってφ60mmの平面パネル用のガラス板の表面(被研摩面)を5分間研摩した。また、研摩時の、研摩面に対する研摩パッドの圧力は49kPa(0.5kg/cm2)であり、研摩試験機の回転速度は1000rpmであった。そして、研摩によって得られたガラス板の表面を純水で洗浄し無塵状態で乾燥させて、傷評価の対象になるガラス板表面を得た。
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示されるように、各実施形態および比較例1を比較すると、研摩材のTREO、ブレーン径および比表面積については、ほとんど差がなかった。他方、Cl含有率は大きく異なっていた。そして、分散維持性や傷評価といった研摩材特性は、Clをほとんど含有していない(TREO質量の0.05%相当質量未満の)比較例1だけが劣っていた。そして、実施形態および比較例1のいずれの研摩材とも、研摩材中のランタン原子のモル量に対する塩素原子のモル量の比率(Cl/La)は1以下であった。ただし、比較例1の研摩材だけは、この比率が0.004未満と、極端に小さい値(0.02未満)であった。
【0064】
また、実施形態の研摩材を用いれば、スラリー調製の際、研摩材と水等の分散媒とを混合して単に撹拌するだけで、高い分散維持性を確保できた。そして、分散維持性に優れるからであると考えられるが、実施形態の研摩材が用いられた研摩材スラリーで研摩すれば、研摩された面における傷発生を抑制することができた。
【0065】
以上の結果、各実施形態の研摩材が分散維持性に優れ、傷を発生させ難いのは、研摩材中に所定の含有率でClを含有しているからであると考えられる。これらの実施形態によれば、少なくとも含有率はTREO質量の0.1〜1.0%相当質量であればよいことが解った。
【0066】
研摩材の寿命試験:傷評価の対象のガラス板(1枚目)の研摩終了後、研摩材スラリーを交換せず、同じ研摩試験条件で、2枚目、3枚目と研摩試験を行った(100枚まで)。そして、所定枚数目のガラス板について、研摩終了後、研摩値を測定し、研摩材の寿命を評価した。研摩値は次に説明するようにして求めた。なお、寿命試験の対象は、第1実施形態、第3実施形態および比較例1の研摩材である。試験結果を表3に示す。
【0067】
研摩値の評価:研摩前後のガラス板の重量を測定して、研摩によるガラス板の重量の減少量を求め、この値に基づいて研摩値を求めた。ここでは、比較例1の研摩材を用いた場合の、1枚目のガラス板の重量減少量を基準(100)とし、相対値で表した。
【0068】
【表3】
【0069】
表3に示されるように、両実施形態の研摩材の場合、研摩値は100枚目のガラス板においても80以上であり、高い研摩力が長期に亘って維持された。他方、比較例1の研摩材の場合、研摩値は、50枚目の時点で既に70近くまで低下しており、比較的短い使用期間で研摩力が低下した。この結果、研摩材中に所定の含有率でClを含有している実施形態の研摩材の方が寿命が長いことが解った。
【0070】
第4実施形態:第1実施形態と同じ原料25kgと、純水25kgとを混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、第1実施形態と同じボールミル、同じ条件で湿式粉砕した。そして、この湿式粉砕により得られた原料スラリーを、フィルタープレス法によって濾過し、ケーキ状の原料を得た。このケーキ状の原料32kgを得た。このケーキ状の原料から分取した6.4kg(酸化希土原料5kg相当)に対して塩素処理を行った。
【0071】
まず、塩化希土(TREOが47質量%)と純水とを混合して、塩素処理に用いる希土類元素の塩化物溶液を調製した。調製された塩素物溶液は、TREOが200g/L、CeO2/TEROが50質量%、La2O3/TEROが26質量%、塩素(元素)の量が125g/Lであった。この溶液0.24Lと、ケーキ状の原料から分取した6.4kg(酸化希土原料5kg相当)とを、混合撹拌機((株)ダルトン製、万能混合撹拌機5DM型)に入れて1時間混合した。
【0072】
混合後に得られた混合物をPTFE製のパットに入れて静置乾燥させた。乾燥時の乾燥温度は130℃、乾燥時間は24時であった。そして、乾燥後に得られた原料を、第1実施形態と同様の条件で乾式粉砕し、粉砕後の原料を焙焼し、焙焼後の原料を粉砕し、さらに分級してセリウム系研摩材を得た。得られた研摩材のフッ素濃度は0.1質量%未満であった。
【0073】
第5および第6実施形態:塩素処理に用いる塩化物溶液の添加量を第4実施形態とは異なる量にしたものである。添加量は、第5実施形態では0.8L、第6実施形態では1.6Lであった。これ以外の、塩素処理条件を含む研摩材製造条件は第1実施形態と同じであった。
【0074】
得られたセリウム系研摩材について、Cl含有率、ブレーン径、比表面積を測定すると共に、研摩特性の評価を行った。結果を表3および表4に示す。なお、測定方法および評価方法は先に説明した通りである。
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
表5に示されるように、各実施形態とも、研摩材のTREO、ブレーン径および比表面積については、ほとんど差がなかった。他方、Cl含有率は大きく異なっていた。研摩材製造時の塩素処理条件が異なるためであると考えられる。そして、分散維持性や傷評価といった研摩材特性は、いずれの実施形態の研摩材とも良好であった。以上の結果、各実施形態の研摩材が分散維持性に優れ、傷を発生させ難いのは、研摩材中に所定の含有率でClが含有しているからであると考えられる。また、これらの実施形態によれば、少なくとも含有率はTREO質量の0.3%〜3.0%相当質量であればよいことが解った。
【0078】
第7実施形態:セリウム系研摩材の原料として、バストネサイト精鉱を用意した。該原料のTREOの割合は70質量%、TREO中の酸化セリウムの割合は50質量%、そしてTREO中の酸化ランタンの割合は30.2質量%であった。この原料25kgと純水25kgとを混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、第1実施形態と同じボールミル、同じ条件で湿式粉砕した。そして、湿式粉砕後の原料スラリーを、PTFE製のパットに入れて静置乾燥させた。乾燥時の乾燥温度は130℃、乾燥時間は24時であった。乾燥後、得られた原料を第1実施形態と同様の条件で乾式粉砕した。
【0079】
そして、乾燥後の原料のうちの半分を次の条件で焙焼し、焙焼と同時に塩素処理した。焙焼条件は、焙焼温度が800℃、焙焼時間が6時間、焙焼温度までの昇温時間が6時間であった。焙焼温度を800℃としたのは、原料のバストネサイト精鉱はフッ素を含んでいるところ、このような原料を第1実施形態等と同じ900℃で焙焼すると、焼結が進行し、焙焼後の原料の粒径が第1実施形態等よりも大きくなってしまうからである。焙焼温度を800℃にすると、粒径がほぼ同じになるため、得られる研摩材の性能等の比較が容易になる。そして、焙焼時の雰囲気ガスは、空気が96.0vol%、塩素ガス(Cl2)が4.0vol%であった。このような成分のガスを、昇温開始時から焙焼終了までの12時間、5NL/minの流通量で焙焼炉内に供給し、流通させた。なお、「NL」とは、標準状態におけるガスの容積(リットル)である。
【0080】
焙焼後、得られた原料を、第1実施形態と同様の条件で、粉砕し、分級してセリウム系研摩材を得た。得られた研摩材のフッ素濃度は6.0質量%であった。
【0081】
比較例2:この比較例は、第7実施形態とは、焙焼炉内に供給する雰囲気ガスが異なる。この比較例2では、空気(空気100%)を焙焼炉内に供給し、流通させながら焙焼工程を行った。つまり、この比較例2では塩素処理を行わなかった。焙焼工程において流通させたガスが異なること以外の研摩材製造条件は、第7実施形態と同じであった。得られた研摩材のフッ素濃度は6.2質量%であった。
【0082】
得られたセリウム系研摩材について、Cl含有率、ブレーン径、比表面積を測定すると共に、研摩特性の評価を行った。結果を表6および表7に示す。なお、測定方法および評価方法は先に説明した通りである。
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
表7から解るように、第7実施形態と比較例2とを比較すると、研摩材のTREO、ブレーン径および比表面積については、ほとんど差がなかった。他方、Cl含有率は大きく異なっていた。研摩材製造時の塩素処理条件が異なるためであると考えられる。そして、分散維持性や傷評価といった研摩材特性は、Cl含有率がTREO質量の0.03%相当質量未満と、ほとんど含有していない(TREO質量の0.05%相当質量未満の)比較例2だけが劣っていた。この結果、原料がバストネサイト精鉱の場合であっても、塩素処理によって研摩材中にClを含有させることで、分散維持性が向上し、傷がつきにくくなることが解った。そして、これらの結果から、焙焼時に、塩素含有ガスを流通させて行う塩素処理方法が有効であることが解った。また、塩素含有ガスとして塩素ガスを用い場合、雰囲気ガス中に占める塩素ガスの割合が4.0vol%というのは、好適な値であることが解った。
【0086】
第8実施形態:セリウム系研摩材の原料として、酸化セリウムを用意した。該原料のTREOの割合は99.0質量%、TREO中の酸化セリウムの割合は99.9質量%以上、そしてTREO中の酸化ランタンの割合は0.05質量%以下であった。この原料25kgを用い、焙焼温度が異なること以外、第1実施形態と同じ製造条件でセリウム系研摩材を製造した。つまり、第1及び第8実施形態は、湿式粉砕により得られた原料スラリーを、塩酸を用いて塩素処理するものである。なお、焙焼温度は800℃であった。800℃としたのは、本実施形態における焙焼対象の原料はTREO中の酸化セリウムの割合が比較的高いところ、このような原料を第1実施形態等と同じ900℃で焙焼すると、焼結が進みすぎて、焙焼後の原料の粒径や比表面積が第1実施形態等よりも小さくなり、比較が難しくなるからである。焙焼温度を800℃にすると、粒径が同等になるため、得られる研摩材の性能等の比較が容易になる。得られた研摩材は、TREOが99.5質量%、フッ素濃度が0.1質量%未満であった。
【0087】
第9実施形態:この実施形態は、第8実施形態とは原料が異なる。ここで用いる原料は、第8実施形態で用いた原料に高純度の酸化ランタンの粉末を乾式混合したものであり、TREOの割合は99.0質量%、TREO中の酸化セリウムの割合は95.0質量%、そしてTREO中の酸化ランタンの割合は5.0質量%であった。この原料25kgを用い、焙焼温度以外の製造条件は第8実施形態と同じ製造条件で、セリウム系研摩材を製造した。なお、焙焼温度は830℃であった。得られた研摩材は、TREOが99.1質量%、フッ素濃度が0.1質量%未満であった。
【0088】
第10実施形態:第8実施形態と同じ原料を用い、塩化処理で用いる塩化物溶液および焙焼温度以外の製造条件は第4実施形態と同じ条件で、セリウム系研摩材を製造した。つまり、この実施形態は、湿式粉砕により得られた原料スラリーであってフィルタープレス法により濾過されたケーキ状の原料を、湿式処理の対象とするものである。異なる製造条件のうち、焙焼温度は800℃であった。また、塩化処理に用いた塩化物溶液は塩化セリウム溶液であり、当該塩化セリウム溶液は、TREOが200g/L、La2O3/TEROが0.05質量%以下、CeO2/TEROが99.9質量%以上、そして塩素(元素)の量が125g/Lであった。また、得られた研摩材は、TREOが99.0質量%、フッ素濃度が0.1質量%未満であった。
【0089】
比較例3:第8実施形態と同じ原料を用い、塩素処理を行わないこと以外の製造条件は、第8実施形態と同じ製造条件でセリウム系研摩材を製造した。つまり、この比較例は塩素処理を行わずに研摩材を製造するものである。得られた研摩材は、TREOが99.5質量%、フッ素濃度が0.1質量%未満であった。
【0090】
得られたセリウム系研摩材について、Cl含有率、ブレーン径、比表面積を測定し、研摩特性の評価を行った。結果を表8および表9に示す。なお、測定方法および評価方法は先に説明した通りである。
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
表9に示されるように、各実施形態および比較例3を比較すると、研摩材のTREO、ブレーン径および比表面積については、ほとんど差がなかった。他方、Cl含有率は異なっていた。そして、分散維持性や傷評価といった研摩材特性は、Clほとんど含有していない(TREO質量の0.05%相当質量未満の)比較例3だけが劣っていた。
【0094】
以上の結果、原料が酸化セリウムやこれに酸化ランタンを混合したものを用いたり、あるいは塩素処理の溶液として塩化セリウム溶液を用いる場合でも、塩素処理によって研摩材中にClを含有させることで、分散維持性が向上し、傷がつきにくくなることが解った。各実施形態の研摩材が分散維持性に優れ、傷を発生させ難いのは、研摩材中に所定の含有率でClを含有しているからであると考えられる。
【0095】
また、表9において、第1実施形態と第8実施形態との比較から解るように、塩素処理に用いた塩素含有物質が希土類の塩化物でない場合は、原料中のランタン(元素)の有無によって、焙焼時のCl保持率(Cl含有率)に大きな差が生ずることが解った。この結果、ランタン(元素)の含有率が5.0質量%以上の原料を用いるのがより好ましいことが解った。このような原料を用いれば、希土類の塩化物でない塩素含有物質を用いても塩素処理できる。なお、分散維持性は、第8実施形態に比べて第1実施形態の方が優れていることから、Cl含有率はTREO質量の0.2%相当質量以上がより好ましいことが解った。そして、第4実施形態と第9実施形態との比較から解るように、焙焼前の塩素処理に用いた塩素含有物質が希土類の塩化物である場合、原料中のLaの有無によっては、焙焼時のCl保持率にほとんど差は生じなかった。この結果、塩素処理に用いる塩素含有物質は、希土類の塩化物であるのがより好ましいことが解った。ランタン含有率に拘わらず、確実に塩素処理できるからである。
【0096】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、粉末状のセリウム系研摩材と水などの分散媒とを単に混合して研摩材スラリーを調製するだけで、研摩材粒子が分散している状態がより長い間維持されるセリウム系研摩材スラリーを調製でき、しかも研摩に使用した後の処理が簡単な粉末状のセリウム系研摩材およびその製造方法を提供できる。
Claims (4)
- 希土類元素の塩素含有化合物を含むセリウム系研摩材であって、
セリウム系研摩材に含まれる全希土酸化物中における酸化セリウムの割合が40.0質量%〜99.5質量%、酸化ランタンの割合が0.5質量%〜60.0質量%であり、
全希土酸化物の質量の0.05%〜5.0%に相当する総質量の塩素(元素)が含まれており、
セリウム系研摩材中のランタン(元素)のモル量に対する塩素(元素)のモル量の比率(Cl/La)は、0.02〜1.0であるセリウム系研摩材。 - 請求項1に記載のセリウム系研摩材を製造するための方法であって、
塩素含有物質を含有し、バストネサイト精鉱、酸化希土、炭酸希土、希土類水酸化物、希土類しゅう酸塩のいずれかからなる原料を焙焼する工程を有し、
前記原料は、全希土類酸化物の質量の0.1%〜8.0%に相当する総質量の塩素(元素)を含有しているセリウム系研摩材の製造方法。 - 前記原料は、バストネサイト精鉱、酸化希土、炭酸希土、希土類水酸化物、希土類しゅう酸塩のいずれかと、塩素含有物質を含む溶液とを湿式混合して得られるものである請求項2に記載のセリウム系研摩材の製造方法。
- 請求項1に記載のセリウム系研摩材を製造するための製造方法であって、
バストネサイト精鉱、酸化希土、炭酸希土、希土類水酸化物、希土類しゅう酸塩のいずれかからなる原料を焙焼する工程を有し、
焙焼工程は、0.005vol%〜10vol%の塩素ガスを含む雰囲気ガス中で前記原料を焙焼する工程であるセリウム系研摩材の製造方法。
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