JP4394848B2 - セリウム系研摩材の製造方法及びセリウム系研摩材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セリウム含有希土類を用いて、粗粒子の含有量を制御するセリウム系研摩材の製造方法、このセリウム系研摩材の製造方法により製造される研摩特性に優れたセリウム系研摩材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々な用途にガラス材料が用いられている。この中で特に光ディスクや磁気ディスク用ガラス基板、アクティブマトリックス型LCD、液晶TV用カラーフィルター、時計、電卓、カメラ用LCD、太陽電池等のディスプレイ用ガラス基板、LSIフォトマスク用ガラス基板、あるいは光学用レンズ等のガラス基板や光学用レンズ等においては、高精度に表面研摩することが要求されている。
【0003】
従来、これらのガラス基板の表面研摩に用いられている研摩材としては、希土類酸化物、特に酸化セリウムを主成分とするセリウム系研摩材が用いられている。その理由は、酸化セリウムは、ガラスの研摩において酸化ジルコニウムや二酸化ケイ素に比べて研摩特性が優れているからである。
これは、酸化セリウムは、酸化ジルコニウム、シリカ、アルミナ等に比べて研摩力が高く研摩速度が大きいことと、硬度があまり高くないために研摩後のガラス表面が滑らかに研摩されるためである。しかし、セリウム系研摩材としては、硬度の他に、粒径が研摩特性に大きく影響する。平均粒径が大きくなると研摩材の研摩速度は大きくなるために、所望の研摩速度を得るために平均粒径を最適化することが重要であるが、研摩表面に傷を発生させないためには、その傷の原因となる粗粒子の含有量を低減することが必要である。
【0004】
粗粒子を低減する方法としては、研摩材原料を十分粉砕すること、焙焼温度を必要以上に高くしないこと、分級を厳密に行うことが従来検討されてきた。
しかし、粗粒子を低減する目的のために、これらの工程を強化することは、研摩材を製造する上で、研摩材の品質の面からも含めて、様々な問題が生ずる。例えば、粉砕を強化しすぎると、粗粒子の粉砕だけが進むわけではないために、研摩材の粒子全体が微細化してしまうこと、粗粒子の粉砕によって粗粒子の含有量が低減するための小さい粉砕速度では生産性が低下するという問題、さらには、過剰粉砕によって発生した微粒子を焼結させるために焙焼温度を高くする必要があるためにコスト的な問題、さらには、焙焼が不十分で微粒子が存在する研摩材においては、研摩後の研摩表面に付着する研摩材が多くなるといった研摩材品質の問題が発生することが考えられる。
また、焙焼温度を低くすると、研摩材の生産性が低下するだけではなく、十分な研摩速度を有する研摩材が得られないという問題が発生する。
さらに、分級を厳密に行うことによって、分級に時間がかかるとともに、採取率の低下を招くために、生産性が低下するという問題が発生する。
【0005】
一方、セリウム系研摩材のフッ素含有量が研摩特性に大きく影響する。これは、研摩されたガラスの主成分である酸化ケイ素とフッ素が水和物を作り研摩表面から分離することで、常にあらたな表面を露出させ研摩を促進するからである。そのために、セリウム系研摩材としては、フッ素含有量が問題となる。また、セリウム系研摩材を製造するために焙焼工程が設けられているが、セリウム系研摩材原料中にフッ素が不均一に分布していると焙焼工程で、粗粒子が形成されるのを促進する。そのために、セリウム系研摩材原料中に均一に分布させて含有させ、かつセリウム系研摩材中に分布させることが必要である。
【0006】
例えば、特開平9−183966号公報では、フッ化水素により軽希土類を部分フッ素化し、又は、フッ化希土類を添加するセリウム系研摩材の製造方法で、さらに、フッ素含量として3〜9wt%のセリウム系研摩材の製造方法が提案されている。また、特開平11−269455号公報では、鉱酸処理された後、フッ化アンモニウムで処理するセリウム系研摩材の製造方法が提案されている。また、米国特許第3,262,766号では、希土類酸化物がほぼ90wt%、酸化ケイ素が0wt%以上5wt%以下で、フッ素が5wt%以上9wt%以下を含有するセリウム系研摩材が提案されている。
【0007】
しかし、上記提案の特開平9−183966号公報では、フッ化処理時に55%の高濃度のフッ化水素を用いるために、原料中の希土類成分が局部的に反応し均一なフッ化が難しく、セリウム系研摩材中の粗粒子が増加するという問題点がある。さらに、特開平11−269455号公報では、高切削性のセリウム系研摩材を得ることができるが、フッ化処理によるセリウム系研摩材の粒径の制御に関しては何ら示されていないという問題点がある。また、米国特許第3,262,766号公報では、30%に希釈したフッ化水素酸でフッ化処理を実施しているが、30%の濃度のフッ化水素酸では、均一なフッ化反応は難しく、フッ素の局在化により研摩材中の粗粒子が増加するという問題点がある。
また、いずれにおいてもフッ化処理によって粗粒子が低減することは触れられていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、上記のような過粉砕による弊害、焙焼や分級における生産性の問題等を解消しつつ、粗粒子含有量が少なく、研摩傷の発生が少ないセリウム系研摩材の製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を達成するために、本発明のセリウム系研摩材の製造方法は、セリウム系研摩材原料から粉砕工程によって粉砕品を得、この粉砕品をフッ化処理によってフッ化処理品を得、さらにこのフッ化処理品を焙焼することによって製造されるセリウム系研摩材の製造方法において、フッ化処理工程に供用される研摩材原料の粉砕品中に含まれる10μm以上の粗粒子の量が、固形分に対して5000ppm以下であり、さらに、フッ化水素の濃度が1wt%以上で30wt%未満のフッ化水素酸によるフッ化処理を行うことで、フッ化処理品中に含まれる10μm以上の粗粒子の量が、固形分に対して500ppm以下にすることを特徴とする。
また、本発明のセリウム系研摩材の製造方法は、さらに、前記フッ化処理工程は、常温以上で60℃以下であって、フッ化水素酸添加後10分以上で3時間以下の時間内で攪拌処理をすることを特徴とする。
また、本発明のセリウム系研摩材の製造方法は、さらに、前記フッ化処理は、全希土類酸化物換算量(TERO)1kg当たり、フッ素元素換算量で0.5以上20g/min.以下の速度で添加することを特徴とする。
また、本発明のセリウム系研摩材の製造方法は、さらに、フッ素処理後に、酸化性雰囲気中で、600℃以上1100℃以下の範囲で焙焼することを特徴とする。
以上
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のセリウム系研摩材を製造する製造方法を示すフローチャートである。図2は、本発明のセリウム含有希土類鉱石からセリウム系研摩材原料を製造する製造方法を示すフローチャートである。
セリウム系研摩材原料としては、図2に示すように、バストネサイト精鉱、セリウム系希土類炭酸塩(以下、「炭酸希土」という。)、セリウム系希土類水酸化物(以下、「水酸化希土」という。)、セリウム系希土類酸化物(以下、「酸化希土」という。)、水酸化セリウム、セリウムコンセントレート等がある。
【0011】
以下、これらのセリウム系研摩材原料の製造方法について概説する。
まず、バストネサイト鉱床、砂鉱床、鉄白雲石等の原鉱石を選鉱処理して、例えば、バストネサイト精鉱、モナザイト精鉱、中国複雑鉱精鉱等の希土類精鉱を製造する。ここで、モナザイト精鉱及び中国複雑鉱精鉱は、砂鉱床及び鉄白雲石処理の副産物として得られる。これらの希土類精鉱のうちバストネサイト精鉱は、モナザイト精鉱、中国複雑鉱精鉱等より放射性物質の含有量が少ないために、そのままでもセリウム系研摩材原料として使用される場合もある。
各種希土類精鉱は、アルカリ分解法、硫酸分解法等の分解処理、水酸化物分別沈殿処理、また、場合によっては溶媒抽出処理等の化学処理によって不純物を低減された希土類塩溶液(通常、「塩化希土液」という。)となる。低減される主な不純物としては、ウラン、トリウム等の放射性元素、ナトリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、鉄、チタン等の遷移金属元素、また、フッ素、リン等の非金属元素がある。さらに、必要によって行われる溶媒抽出法では、ネオジウム等の希土類金属を不純物として一部抽出して含有量を低下させる。
【0012】
希土類塩溶液(塩化希土液)は、そのまま使用される場合もあるが、濃縮・固化して塩化希土としてから処理場まで運搬して、水又は水と鉱酸にて再溶解して、再び希土類塩溶液(塩化希土液)としてから、処理する場合もある。この希土類塩溶液(塩化希土液)に炭酸水素ナトリウム、アンモニア水、蓚酸等を沈殿剤として加えて、炭酸希土、水酸化希土、蓚酸希土を得る。これらの希土類化合物は、そのままでもセリウム系研摩材原料として使用されるが、さらに、焙焼して、酸化希土として使用される場合もある。
また、希土類塩溶液(塩化希土液)の別の処理方法として、アルカリと酸化剤を添加して、水酸化希土よりもセリウム含有量を高めた水酸化セリウムを得る場合もある。また、バストネサイト精鉱を酸化焙焼して、セリウムを酸に溶解しにくくしてから塩酸浸出して、セリウム以外は大部分を溶解することによってセリウム含有量を高めたセリウムコンセントレートを得る場合もある。
上述したこれらのセリウム系研摩材原料の製造は、大部分が中国、アメリカ、インド等の海外にて実施されている。
【0013】
以上が、主なセリウム系研摩材原料およびその製造方法であるが、本発明はこれらに限定されず、例えば、CeO2/TREO(ここで、「TREO」は「全希土類酸化物換算量」をいう。)の比率が99wt%以上の酸化セリウム、炭酸セリウム等であっても本発明の原料として使用可能である。また、本発明に用いられるセリウム系研摩材原料は、酸化セリウム(CeO2)以外の希土類酸化物として、酸化ランタン(La2O3)、酸化ネオジウム(Nd2O3)、酸化プラセオジウム(Pr6O11)、酸化サマリウム(Sm2O3)等の希土類酸化物が含んでいてもよい。また、例えば、Si、Al、Na、K、Ca、Ba、P、S、Cl等が残留してもよい。CeO2含有量は、TREO中の30wt%以上99wt%以下含有されていることが好ましい。TREO中のCeO2含有量が30wt%未満では、得られる研摩材の研摩速度が低く、99wt%を越えると、得られる研摩材の研摩速度は高くなるが、原料が高価である。
また、TREOは、焙焼後、フッ素との合計量が、90wt%以上であることが好ましく、95wt%以上であることがさらに好ましい。焙焼後、TREOとフッ素の合計量が90wt%未満であるとその他の不純物が多すぎて、悪影響を及ぼすからである。例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属を多く含むと、焙焼時異常粒成長しやすく、研摩材中に粗粒子が多くなり研摩傷が発生しやすく、塩素を多く含むと研摩材のガラスへの付着力が大きくなってしまう。
【0014】
上述のセリウム系研摩材原料を用いて、図1に示すように、粉砕、鉱酸処理、フッ化処理、濾過、乾燥、焙焼、解砕、分級によりセリウム系研摩材を製造する。本発明は、フッ化処理後のセリウム系研摩材原料の含有する10μm以上の粗粒子を500ppm以下にするセリウム系研摩材の製造方法である。
フッ化処理後のセリウム系研摩材原料の10μm以上の粗粒子の含有量が500ppmを越えると、得られるセリウム系研摩材の研摩力が非常に大きく研摩速度は非常に速いが、研摩表面に大きな研摩傷が多数発生する。しかし、フッ化処理後のセリウム系研摩材原料の10μm以上の粗粒子の含有量が500ppm以下であれば、これを用いて製造して得られるセリウム系研摩材で研摩したとき大きな傷はほとんど発生しない。そこで、フッ化処理後のセリウム系研摩材原料の10μm以上の粗粒子を500ppm以下にすることで、研摩力が大きく研摩速度を速くして、かつ、研摩表面に研摩傷の発生の少ないセリウム系研摩材を得ることができる。
【0015】
また、セリウム系研摩材は、平均粒径(D50)を0.05μm以上3.0μm以下にする。セリウム系研摩材の粒子径が大きくなるにつれて、研摩力が大きくなるが、ガラス材料の研摩表面に研摩傷が発生する。従って、平均粒径が、0.05μm未満では、研摩表面が滑らかで研摩精度は高いが、研摩力が小さいために研摩速度が低い。3.0μmを越えると、研摩力が大きくて研摩速度が速いが、研摩表面の研摩傷が多くなる。さらに、セリウム系研摩材としては、特願2000−301791号公報に示されているように、10μm以上の粗粒子の含有量が1000ppm以下であれば、研摩傷の発生が少なくすることができる。
なお、ここで平均粒径(D50)は、積算分布曲線の50%に相当する粒子径はいう。
【0016】
また、フッ素の含有量は、0.5wt%以上15wt%以下の範囲にあることが好ましい。フッ素は、研摩中の研摩速度を促進する。フッ素の含有量が0.5wt%未満では研摩速度が小さく、含有させる効果がない。フッ素の含有量が、15wt%を越えると、研摩傷の発生が多くなる。これは、フッ化処理時にはLnF3(Lnは、ランタノイド系列の希土類元素を表す。)の化合物を形成するが、焙焼によりLnOFに変化する。しかし、フッ素含有量が、15wt%を越えると、高温で焙焼してもLnF3が残留し傷の原因となる。フッ素含有量は、セリウム系研摩材原料中のフッ素含有量を考慮して、フッ化処理の条件で制御することができる。
また、研摩材中にTREOとフッ素の合計量は、90wt%以上であることが好ましく、95wt%以上であることがさらに好ましい。TREOとフッ素の合計量が90wt%未満であると、不純物が多くなるため、研摩傷が発生し、ガラスに付着力しやすくなる等の悪影響が生ずる。
【0017】
セリウム系研摩材の製造方法の各処理・工程で、セリウム系研摩材原料の粒径、フッ素含有量等が変化するため、セリウム系研摩材の10μm以上の粗粒子の含有量を制御するには、各処理・工程ごとに制御しなければならない。
本発明のセリウム系研摩材の製造方法では、最初に、セリウム系研摩材原料を、粉砕する。粉砕は、湿式又は乾式のいずれでも良く、ボールミル、振動ミル、アトライター、ビーズミル等の粉砕機を用いる。この粉砕後におけるセリウム系研摩材原料の10μm以上の粗粒子の含有量を5000ppm以下にするのが好ましい。粉砕後に、後述するようにフッ化処理、焙焼、解砕等がされるが、10μm以上の粗粒子の含有量が5000ppm以下であれば、30wt%未満のフッ化水素酸又はフッ化アンモニウム溶液等を用いてフッ化処理すれば、ほぼ確実に、フッ化後に10μm以上の粗粒子が500ppm以下になるが、10μm以上の粗粒子が5000ppmを越えると、フッ素含有化合物の濃度、添加速度を調整してもフッ化処理後の10μm以上の粗粒子を500ppm以下にすることが非常に難しくなる。
フッ化処理後に10μm以上の粗粒子が500ppmを越えると、得られる研摩材の10μm以上の粗粒子含有量が1000ppmを越え、研摩すると研摩表面に大きな研摩傷が多数発生する。しかし、フッ化処理後に10μm以上の粗粒子が500ppm以下であれば、得られる研摩材の10μm以上の粗粒子含有量は1000ppm以下となり、研摩しても研摩表面に大きな傷はほとんど発生しない。そこで、フッ化処理後の10μm以下の粗粒子を500ppm以下にすることで、研摩表面に研摩傷の発生の少ないセリウム系研摩材を得ることができる。
【0018】
次に、セリウム系研摩材原料はフッ化処理がされるが、セリウム系研摩材原料がバストネサイトの場合には、フッ化処理の前に鉱酸処理が行われる場合が多い。これは、バストネサイト精鉱は、アルカリ金属、アルカリ土類金属の含有量が多いためである。鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等を用いることができる。特に、塩酸で処理することが好ましく、これは、硫酸ではアルカリ土類金属の溶解度が低く、硝酸では窒素を含むために、環境問題を考慮して鉱酸処理液の窒素除去処理を必要とするために生産コストが高くなるためである。この鉱酸処理で、焙焼工程で粒成長の原因となるカルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属等の不純物を溶解除去することで粗粒子の異常粒成長の原因となるアルカリ金属等を除去する。鉱酸処理は、バストネサイト精鉱に行うのが通常であるが、酸化希土等の原料で、成分としてアルカリ金属等が多ければ、フッ化処理の前に鉱酸処理をする場合がある。
【0019】
次に、粉砕後、あるいはさらに鉱酸処理を実施した後の酸化希土等の原料を含むスラリーにフッ素含有化合物又はフッ素を添加してフッ化処理を実施する。
フッ化処理をするには、1つには最終製品であるセリウム系研摩材にフッ素を含有させて研摩力を高めるためである。また、本発明により、粉砕されたセリウム系研摩材原料をさらに細かくしてフッ化処理後の10μm以上の粗粒子の含有量を500ppm以下まで低減することにより、研摩材の10μm以上の粗粒子含有量を1000ppm以下にすることができ、研摩傷が発生しにくいセリウム系研摩材が得られることができる。
【0020】
フッ化処理後のセリウム系研摩材原料の10μm以上の粗粒子の含有量は、500ppm以下であることが必要であるが、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは10ppm以下である。500ppm以下であれば、得られるセリウム系研摩材は研摩傷は大きいものがほとんど発生せず研摩材として使用可能である。200ppm以下であれば、得られるセリウム系研摩材は小さい研摩傷についても少ししか発生せず、精密研摩用として好適である。100ppm以下であれば、得られるセリウム系研摩材は小さい研摩傷についても極めてわずかしか発生せず精密研摩用として非常に好適である。さらに、10ppm以下であれば、得られるセリウム系研摩材は研摩傷が確認されず精密研摩用として最適である。本発明では、粗粒子の含有量は、試料が粉末の場合だけではなく、スラリーの場合であっても、固形分重量に対する10μm以上の粗粒子の量で表す。具体的な測定方法は実施例にて示す。
ここで、フッ素を含有するバストネサイト精鉱を原料とする場合でも、鉱酸処理後にさらにフッ化処理してフッ素含有量を高める場合があり、本発明が適用可能である。
【0021】
フッ化処理に使用するフッ素含有化合物又はフッ素としては特に限定されないが、例えば、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム等を用いてもよく、特に、30wt%未満のフッ化水素酸、150g/L以下のフッ化アンモニウムを含有する水溶液が好ましい。これは、30wt%未満のフッ化水素酸又は150g/L未満のフッ化アンモニウム水溶液を使用すればフッ化処理後の10μm以上の粗粒子の含有量を500ppm以下にすることが容易であるためである。
フッ化処理前のセリウム系研摩材原料のスラリー濃度は、TREO換算で、100g/L以上1000g/L以下が好ましい。スラリー濃度が、TREO換算で100g/L未満では、粘度が低くなり、均一な混合による均一なフッ化処理はできるが、生産性が低くなり実用的ではない。スラリー濃度が、TREO換算で1000g/Lを越えると、粘度が高くなり均一な混合が難しく、均一なフッ化処理ができなくなり、10μm以上の粗粒子が多く残りやすい。
【0022】
さらに、フッ化処理のフッ素含有化合物又はフッ素の添加方法としては、1箇所だけでなく、数箇所から添加することが望ましい。また、シャワー状に添加するものであってもよく、このように分散させて添加することで、さらに均一なフッ化処理をすることができ、粗粒子を低減しやすくなる。
フッ化処理する温度は、常温以上で60℃以下の範囲で行うことが好ましい。常温未満では冷却にコストがかかるために実用的ではなく、60℃を越えると、フッ化水素及びフッ化アンモニウムの蒸気圧が高くなり、スクラバー等で吸引するためにフッ素の損失が大きくなるとともに、フッ化処理の反応速度が速くなりすぎる。また、反応速度が速くなるとフッ化反応が均一に進みにくく、粗粒子が多く残留しやすくなる。
また、フッ化処理の攪拌時間は、添加終了後10分以上で3時間以下がよい。10分未満では、フッ化反応が不十分で、フッ化されなかった部分が生じ、フッ化による微粒化効果が得られないために、フッ化後も粗粒子が多く残ってしまう。3時間を超えるとフッ化反応が終了している。
【0023】
本発明のセリウム系研摩材の製造方法の好ましい一実施形態では、フッ化処理を、フッ化水素の濃度が1wt%以上で30wt%未満のフッ化水素酸により行う。好ましくは、1wt%以上で20wt%以下の範囲にあることがよい。フッ化水素濃度を低くして、フッ化反応を緩やかにして、原料全体を均一に反応をさせるためである。フッ化水素濃度が30wt%以上では、フッ化反応の局在化が生じるためにフッ化されなかった部分はフッ化による微粒化効果が得られないために、フッ化後も粗粒子が多く残ってしまう。また、フッ化反応の局在化のために、微粒のフッ化希土が局在化し、焙焼による異常焼結により粗粒子が発生しやすくなる。フッ化水素濃度が1wt%未満では、使用するフッ化水素酸の液量が多くなるために排水量が多くなり、後処理が必要となり生産性が低下する。従って、フッ化水素濃度が1wt%以上30wt%未満の低濃度のフッ化水素酸で処理することで、最終的なセリウム系研摩材に含有されるフッ素量を制御するとともに、粗粒子の発生を防止することができる。
【0024】
また、このときに、フッ化処理の溶液は、全希土類酸化物換算量(TREO)1kg当たり、フッ素元素換算量で0.5以上20g/min.以下の速度で添加することがよく、好ましくは1以上15g/min.以下の速度であり、さらに2以上10g/min.以下の速度が一層好ましい。フッ化処理の溶液の添加速度が速いと、フッ化反応の局在化が生じるためにフッ化処理後も粗粒子が多く残ってしまう。フッ化水素酸の添加速度が低いと、フッ化反応を緩やかにして、原料全体を均一に反応をさせることができるが、生産性が低く実用的ではない。
【0025】
また、本発明のセリウム系研摩材の製造方法の好ましい他の実施形態におけるフッ化処理では、5ないし150g/Lのフッ化アンモニウムを含有する水溶液により行うものであっても良い。また、10ないし100g/L以下のフッ化アンモニウムを含有する水溶液により行うものであればより好ましい。窒素を含むために、廃水処理を必要とするが、フッ化反応が緩やかで、均一な反応が得られるために、粗粒子の生成を抑制することができる。
フッ化アンモニウムを含有する水溶液が150g/Lを越えると、フッ化反応の局在化が生じるために微粒化効果が不十分で、フッ化後も粗粒子が多く残ってしまう。また、フッ化反応の局在化のために、微粒のフッ化希土が局在化し、焙焼による異常焼結により粗粒子が発生しやすくなる。フッ化アンモニウムを含有する水溶液が5g/L未満では、使用するフッ化水素酸の液量が多くなるために排水量が多くなり、後処理が必要となり生産性が低下する。従って、5g/L以上150g/L以下、より好ましくは10g/L以上100g/L以下の低濃度のフッ化アンモニウムを含有する水溶液で処理することで、最終的なセリウム系研摩材に含有されるフッ素量を制御するとともに、粗粒子の発生を防止することができる。
このフッ化アンモニウムを含有する水溶液によるフッ化処理前の原料のスラリー濃度は、フッ化水素酸の場合と同様である。
【0026】
しかし、フッ化アンモニウムを含有する水溶液は、全希土類酸化物換算量(TREO)1kg当たり、フッ素元素換算量で0.5g/min.以上50g/min.以下の速度で添加することがよく、好ましくは2g/min.以上30g/min.以下の速度であり、さらに5g/min.以上20g/min.以下の速度が一層好ましい。フッ化アンモニウムのフッ化反応が緩やかなので、添加する速度を高くしても、フッ化反応が均一で研摩精度のよいセリウム系研摩材を得ることができる。
【0027】
ここで、フッ化処理により粗粒子が低減するのは、はっきりと判明していないが、原料中に少量含まれるケイ素(Si)成分が関係しているものと考えられる。原料中の粗粒子はそれを構成する粒子が凝集しており、その凝集した粒子間にはバインダーとしてのSi成分が存在しており、フッ化処理によってバインダーとしてのSi成分が溶出するために粗粒子が低減する。フッ化処理に使用するフッ素含有化合物の濃度が高い場合や添加速度が速い場合はフッ素含有化合物が、原料粒子間に均一に行き渡らず、フッ化が不均一にしか起こらないため、Si成分の溶出も不均一にしか起こらず、粗粒子の低減が十分に行われないものと考えられる。
【0028】
次に、フッ化処理されたスラリーを濾過、乾燥する。濾過は、フィルタープレス、真空濾過機、ベルトフィルター等の濾過機を用いて、布等の濾材を通して溶液を抜き出して、フッ化処理された原料を濾材上に残す操作である。さらに、乾燥は、濾材上の原料(濾過ケーキ)の水分を大部分除去して、焙焼し易くする操作である。乾燥の方法としては、バッチ式、連続式のいずれでも良いが、連続式が好ましい。特に、焙焼炉の廃熱を利用した連続式の乾燥炉が好ましい。
また、濾過しないで、フッ化処理されたスラリーを必要に応じて洗浄した後、スプレードライヤーにて直接乾燥するものであってもよい。
得られた乾燥品は、焙焼する前に解砕すれば、さらに均一に焙焼することが可能になるために好ましい。
【0029】
その後に、焙焼する。焙焼では、セリウム含有希土類を溶融しない程度の温度で、雰囲気による化学反応を起こさせる。焙焼温度は、600℃以上1100℃以下で、好ましくは700℃以上1000℃以下の範囲であり、焙焼時間は、バッチ式では1時間以上48時間以下、連続式では0.2時間以上8時間以下が好ましい。焙焼は、電気炉、ロータリーキルン等を用いることができる。雰囲気は酸化性雰囲気がよく大気中で行う。この焙焼により、セリウム含有希土類原料が、炭酸塩、水酸化物等、酸化物以外の場合であっても、セリウム含有希土類を酸化して、酸化セリウムとなり、同様に他の希土類も酸化希土類になる。含有するフッ素は、大部分はLnOF又はLnF3(Lnは、La、Nd等のランタノイド系列の希土類金属を表す。)となって研摩材中に残留する。
【0030】
また、フッ化処理後のセリウム系研摩材原料に10μm以上の粗粒子が多いと、この粗粒子は凝集粒子であったとしても、焙焼により崩れることはほとんどなく、粗粒子のままである。
さらに、均一にフッ素処理がなされなかった場合は粗粒子が残留する。さらに、それだけではなく、フッ素が局在化した微粒子部分が生ずるが、この微粒子部分は、焙焼により非常に焼結しやすく異常粒成長を起こし粗粒子が大量に発生する。
焙焼後に存在する上述の2種類の粗粒子は、焼結により結合が非常に強固になっているために、次の解砕では一部しか解砕できない。また、解砕後も大量の粗粒子が残留するために、その次の分級でも粗粒子がセリウム系研摩材製品中に多く残留してしまい、研摩傷の原因となる。
フッ化処理後のセリウム系研摩材原料の10μm以上の粗粒子が500ppm以下であれば、フッ化処理が均一に行われ、焙焼時に大量の粗粒子が発生しないため、分級によって粗粒子を十分低減可能である。
【0031】
以上のように製造することにより、本発明のセリウム系研摩材は、10μm以上の粗粒子の含有量が少なく、研摩表面に発生する研摩傷を少なくすることができる。また、フッ素を適量、均一に含有しているため、研摩速度が大きく、しかも研摩傷が発生しにくいものである。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明の最適な実施例について説明する。
(実施例1)
フッ化水素酸でフッ化処理したセリウム系研摩材原料におけるフッ化処理前後の粗粒子の含有量と、セリウム系研摩材の研摩特性を評価した。用いたセリウム系研摩材原料の組成を表1に示す。
【表1】
<表1:原料の組成分析値(wt%)>
【0033】
セリウム系研摩材原料を、粉砕し、浸出槽に投入し、フッ化水素濃度がそれぞれ55wt%、30wt%、20wt%、5wt%の異なる4種類のフッ化水素酸(表中では、55wt%HF、30wt%HF、20wt%HF、5wt%HFと表す)でフッ化処理した。フッ化処理の条件としては、浸出槽中の原料のスラリー濃度は、TREO換算で400g/Lにし、浸出槽中にフッ化水素酸を、シャワー状に、TREO1kg当たりのフッ素量として6g/min.の速度で添加した。このとき、セリウム系研摩材にしたときにフッ素含有量が、2wt%、6wt%、12wt%になるように処理した。フッ化処理の温度は、常温で、フッ化水素酸の添加終了後、1時間攪拌した。ただし、セリウム系研摩材中のフッ素量は、焙焼により一部が揮発するために、それぞれ1.8wt%、5.2〜5.4wt%、10.6〜10.7wt%であった。
【0034】
フッ化水素酸の影響を見るために、フッ化水素酸によるフッ化処理前の粉砕後の10μm以上の粗粒子とフッ化水素酸によるフッ化処理後の10μm以上の粗粒子の含有量を測定する。
粗粒子の量は、固形分(105℃乾燥残留品)重量に対する10μm以上の粗粒子の含有量で表した。
固形分重量は以下のように測定する。セリウム系研摩材原料の試料を105℃で十分乾燥後デシケータ中で放冷し、重量(S3:g)を測定した容器にスラリーの適量を均一混合状態から採取して容器ごとの重量(S1:g)を測定し、105℃にて十分乾燥させる。乾燥後、デシケータ中にて放冷し、容器ごとの重量(S2:g)を測定する。これから、次式(1)を用いて、スラリーの固形分重量(W:g)を計算する。
W(wt%)={(S2−S3)/(S1−S3)}×100……式(1)
【0035】
また、10μm以上の粗粒子は以下のように測定する。容器の重量(T2:g)を測定し、スラリーの適量(固形分約200g相当)を均一混合状態から採取して、容器ごとの重量(T1:g)を測定する。採取したスラリーの全量を0.1wt%のヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液にて適宜に希釈し、目開き10μmの電成篩にて濾過する。篩に残留した粗粒子を再度0.1wt%のヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液にて再分散させ、電成篩にて濾過する。再分散、濾過を2回繰り返して、なお篩上として残留する粗粒子を乾燥させてその重量(C:g)を、0.1mg単位まで測定し、次式(2)を用いて、粗粒子含有量(ppm)を計算する。
粗粒子含有量(ppm)=C/{(T1−T2)×W/100}×106…式(2)
上記測定方法は、本実施例のように試料がスラリーの場合であるが、粉砕を乾式で行った場合には試料は粉末となる。粉末試料の場合は、後述の研摩材の場合の測定方法を適用すればよい。
【0036】
【表2】
<表2:粗粒子の量>
【0037】
表2に示すように、粉砕後の10μm以上の粗粒子の含有量は、実施例1に示すように、本発明のフッ化処理により試料1−1ないし試料1−12のいずれも10μm以上の粗粒子の含有量が低減していることがわかる。
粉砕後の10μm以上の粗粒子の含有量が5000ppm以下であれば、試料1−1ないし試料1−12に示すように、フッ化処理後の10μm以上の粗粒子の含有量を、容易に500ppm以下にすることができる。とくに、フッ素量が同一の添加速度であり、したがって、液量添加速度はフッ化水素濃度の低い方が速いにもかかわらず、フッ化水素の濃度が低い方が均一なフッ化反応で、粗粒子の含有量が低減できることがわかる。
【0038】
次に、これらのフッ化処理後の試料を、濾過・乾燥後、電気炉で、950℃で10時間焙焼する。焙焼後、アトマイザーにて粉砕し、風力分級機にて分級点を8μmに設定して分級し、平均粒径(マイクロトラック法累積50%粒径)0.9〜1.1μmのセリウム系研摩材とした。このセリウム系研摩材のTREOとフッ素含有量の合計は、酸化希土を原料とした場合で98wt%以上、バストネサイト精鉱を原料とした場合で約92wt%であった。また、このセリウム系研摩材の研摩特性のうち研摩値及び研摩傷を以下のように評価し、その結果をそれぞれ表3及び表4に示す。
研摩値は、セリウム系研摩材を水に分散させてスラリー濃度15wt%のセリウム系研摩材スラリーとして、高速研磨機(CMV社製)で、65mmφの平面パネル用ガラス材料を、ポリウレタン製の研摩パッドを用いて研摩した。研摩条件は、回転数3000rpmでガラス材料を回転させ、パッドを、圧力2.94MPa(30kg/cm2)で1分間研摩した。研摩前後の重量を測定し、研摩量を求め、これを、試料1−1の5wt%HFにてフッ化処理をした場合を100とした相対値に換算して表3に表わした。
研摩傷は、研摩後の平面パネル用ガラスの表面に、光源30万ルクスのハロゲンランプを照射して反射法により、傷の数と大きさを判別して、100点満点からの減点法にて評価した。100点満点であれば精密研摩用に最適であること、95点以上では精密研摩用に非常に好適であることを、90点以上では精密研摩用に好適であることを、80点以上では一般研摩用として使用可能であることを、80点未満では研摩材として不適であることを表4に表した。
【0039】
また、セリウム系研摩材についても、10μm以上の粗粒子の含有量を測定した。測定は、セリウム系研摩材を200.0gを量り取り、0.1wt%のヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液にて適宜に希釈し、以降は解砕後及びフッ化処理後のスラリーの粗粒子含有量と同様に操作し、粗粒子含有量(C’:g)を、0.1mg単位まで測定し、次式(3)を用いて、粗粒子含有量を計算する。
粗粒子含有量(ppm)=C‘/200×106……式(3)
【0040】
【表3】
<表3:セリウム系研摩材の研摩値>
表3から、フッ素含有量12wt%と高い試料1−2と1−3は、フッ素含有量が6wt%の試料1−1と1−3ないし1−6と1−8ないし1−12と比較すると、研摩値が高くなっている。これらに比べて、フッ素含有量が2wt%と低い試料1−7は、研摩値が最も低くなっている。フッ素含有量が6wt%の試料1−1等では、研摩値に大きな差が見られず、粗粒子の量は研摩値に関係ないことがわかる。
【0041】
【表4】
<表4:セリウム系研摩材の研摩傷>
表4から、表2と併せて考慮すると、フッ化処理後の10μm以上の粗粒子が少ないほど研摩傷の点数が高いことがわかる。特に、試料1−10ないし試料1−12に示すように、10μm以上の粗粒子の含有量が10ppm以下では、研摩傷が100点満点で、精密研摩用に最適であることがわかる。
また、試料1−1ないし1−4で、フッ化処理後の10μm以上の粗粒子が500ppm以上の試料では、研摩傷の点数がすべて80点以下と低く、研摩材として不適であることがわかる。
【0042】
(実施例2)
フッ化アンモニウムでフッ化処理したセリウム系研摩材原料におけるフッ化処理前後の粗粒子の含有量、セリウム系研摩材としての研摩特性を評価した。ここで、セリウム系研摩材原料として、表1に示した酸化希土を用いた。
酸化希土を、粉砕し、浸出槽に投入し、60g/Lのフッ化アンモニウム溶液でフッ化処理した。フッ化処理の条件としては、浸出槽中の原料のスラリー濃度は、TREO換算で400g/Lにし、浸出槽中にフッ化アンモニウム溶液を、シャワー状に、TREO1kg当たりのフッ素量として15g/min.の速度で添加した。このとき、セリウム系研摩材にしたときにフッ素含有量が、6wt%、12wt%になるように処理した。フッ化処理の温度は、常温で、フッ化水素酸の添加終了後、1時間攪拌した。ただし、セリウム系研摩材中のフッ素量は、焙焼により一部が揮発するために、それぞれ5.1〜5.4wt%、10.6〜10.8wt%であった。
フッ化アンモニウム溶液の影響を見るために、フッ化処理前の粉砕後の10μm以上の粗粒子とフッ化処理後の10μm以上の粗粒子の含有量を測定した。その結果を表5に示す。
【0043】
【表5】
<表5:粗粒子の量>
表5から、試料2−1、試料2−2では、フッ化処理前の粉砕後の10μm以上の粗粒子の含有量が5000ppmを越えていると、フッ化アンモニウム溶液でフッ化処理しても10μm以上の粗粒子の含有量が500ppm以下にならない場合がある。しかし、試料2−3ないし試料2−10では、フッ化処理前の粉砕後の10μm以上の粗粒子の含有量が5000ppm以下であり、フッ化アンモニウム溶液でフッ化処理しても10μm以上の粗粒子の含有量が500ppm以下になることがわかる。
【0044】
次に、これらのフッ化処理後の試料を実施例1と同じ条件にて処理してセリウム系研摩材を得た。これらの研摩材のTREOとフッ素の含有量の合計は98wt%以上であった。
また、これらの試料を用いて研摩傷及び研摩値の研摩特性を評価した。その結果を表6に示す。
【表6】
<表6:セリウム系研摩材の研摩特性>
表5から、研摩値はいずれも優れており問題はない。しかし、試料2−1、試料2−2のようにフッ化アンモニウム溶液でフッ化処理しても10μm以上の粗粒子の含有量が500ppmを越えていると、研摩傷が低く研摩材として不適であることがわかる。特に、試料2−2に示すように、粉砕後の10μm以上の粗粒子が5000ppmを越えている場合、フッ化処理のフッ素添加量が少ないと10μm以上の粗粒子の含有量が500ppmを越えるため、研摩傷も79点と研摩材としては不適な値を示している。試料2−3ないし試料2−10では、粉砕後の10μm以上の粗粒子が5000ppm以下であれば、フッ素処理のフッ素添加量によらずいずれも10μm以上の粗粒子が500ppm以下になり、研摩傷がいずれも80点以上で研摩材に適していることがわかる。
【0045】
(実施例3)
次に、フッ素添加速度をTREO1kg当たり25g/min.と大きくした以外は、実施例1の試料1−4(原料:酸化希土、原料粉砕後の10μm以上の粗粒子含有量:3500ppm、フッ化:6wt%)のフッ酸水素酸濃度20wt%の場合と同じ条件にて試験を実施して研摩材を得た。
本実施例の原料粉砕後、粉砕原料のフッ化処理後および研摩材の10μm以上の粗粒子の含有量および研摩材の研摩評価結果を試料1−4(フッ素添加速度6g/min.)のフッ化水素酸濃度20wt%の場合と比較して表7に示す。
【0046】
【表7】
<表7:粗粒子の含有量の推移及びセリウム系研摩材の研摩特性>
表7に示すように、試料3−1は、原料粉砕後の10μm以上の粗粒子の含有量が、3500ppmと5000ppmを下回っていたため、TREO1kg当たりのフッ素の添加速度を25g/min.と大きくしても、フッ化処理後の10μm以上の粗粒子の含有量は330ppmと500ppm以下であった。また、セリウム系研摩材としても、10μm以上の粗粒子の含有量は760ppmと1000ppm以下であった。
しかし、試料1−4と比較すると10μm以上の粗粒子の含有量はフッ化処理後および研摩材とも増えており、TREO1kg当たりのフッ素添加速度は低い方が好ましいことがわかった。
また、研摩試験の結果、試料1−4等は、研摩値にほとんど差がなく、研摩傷評価はいずれも80以上で研摩材に適している。
【0047】
(実施例4)
次に、フッ化アンモニウム水溶液の濃度および/またはTREO1kg当たりのフッ素添加速度を表8に示すように変えた以外は、実施例2の試料2−4(原料:酸化希土、原料粉砕後の10μm以上の粗粒子の含有量:3500ppm)の6wt%フッ化処理の場合と同一条件にて試験を実施して研摩材を得た。
【表8】
<表8:フッ化アンモニウムの濃度と添加速度>
また、10μm粗粒子含有量測定および研摩特性の評価も実施例2と同様に実施した。
本実施例の原料粉砕後、粉砕原料フッ化処理後および研摩材の10μm以上の粗粒子の含有量および研摩材の研摩評価結果を試料2−4の6wt%フッ化処理の場合と比較して表9に示す。
【0048】
【表9】
<表9:粗粒子の含有量の推移及びセリウム系研摩材の研摩特性>
表9より、本実施例は、粉砕後の粗粒子含有量が3500ppmと5000ppmを下回っているため、フッ化アンモニウム水溶液の濃度が150g/L以下であるか、または、TREO1kg当たりの添加速度が50g/min.の少なくともどちらか一方を満たしていれば、フッ化処理後の粗粒子が500ppm以下であり、研摩材の粗粒子が1000ppm以下であり、研摩傷の評価は80点以上になる。もちろん、試料2−4のように両方とも満たしていれば、フッ化処理後と研摩材の粗粒子はさらに少なく、研摩傷の評価もさらに高得点となり好ましい。
【0049】
ここで、フッ化処理後の10μm以上の粗粒子の含有量、セリウム系研摩材の10μm以上の粗粒子の含有量及び研摩傷の関係を整理した。結果を表10に示す。
【表10】
<表10:フッ化処理後の10μm以上の粗粒子の含有量、セリウム系研摩材の10μm以上の粗粒子の含有量及び研摩傷の関係>
表10からも明らかなように、フッ化処理後の10μm以上の粗粒子の含有量、セリウム系研摩材の10μm以上の粗粒子の含有量及び研摩傷とは相関関係が見られる。
したがって、研摩傷の発生が少ない研摩材とするには、セリウム系研摩材の粗粒子含有量を少なくすることが必要であり、そのためには、さらにフッ化処理後のセリウム系研摩材原料の粗粒子含有量を少なくすることが必要である。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のセリウム系研摩材の製造方法では、各工程における粗粒子の含有量を制御することで、セリウム系研摩材の10μm以上の粗粒子の含有量を500ppm以下にすることができる。
また、本発明のセリウム系研摩材では、研摩値が高く研摩速度の大きい、かつ研摩傷の発生の少ない優れた研摩材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセリウム系研摩材の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明のセリウム含有希土類鉱石からセリウム系研摩材原料を製造する製造方法を示すフローチャートである。
Claims (4)
- セリウム系研摩材原料から粉砕工程によって粉砕品を得、
この粉砕品をフッ化処理によってフッ化処理品を得、
さらにこのフッ化処理品を焙焼することによって製造されるセリウム系研摩材の製造方法において、
フッ化処理工程に供用される研摩材原料の粉砕品中に含まれる10μm以上の粗粒子の量が、固形分に対して5000ppm以下であり、
さらに、フッ化水素の濃度が1wt%以上で30wt%未満のフッ化水素酸によるフッ化処理を行うことで、フッ化処理品中に含まれる10μm以上の粗粒子の量が、固形分に対して500ppm以下にする
ことを特徴とするセリウム系研摩材の製造方法。 - 請求項1に記載のセリウム系研摩材の製造方法において、
前記フッ化処理工程は、常温以上で60℃以下であって、フッ化水素酸添加後10分以上で3時間以下の時間内で攪拌処理をする
ことを特徴とするセリウム系研摩材の製造方法。 - 請求項1又は2に記載のセリウム系研摩材の製造方法において、
前記フッ化処理は、全希土類酸化物換算量(TERO)1kg当たり、フッ素元素換算量で0.5以上20g/min.以下の速度で添加する
ことを特徴とするセリウム系研摩材の製造方法。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載のセリウム系研摩材の製造方法において、
前記セリウム系研摩材の製造方法は、フッ素処理後に、酸化性雰囲気中で、600℃以上1100℃以下の範囲で焙焼する
ことを特徴とするセリウム系研摩材の製造方法。
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