JP3838870B2 - セリウム系研摩材用原料の製造方法及びその方法により製造されるセリウム系研摩材用原料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化セリウムを主成分とするセリウム系研摩材の製造に用いられる原料の製造方法に関し、更に、この原料を用いた研摩特性に優れるセリウム系研摩材に関する。
【0002】
【従来の技術】
セリウム系研摩材は、種々のガラス材料の研摩に用いられており、特に近年では、ハードディスク等の磁気記録媒体用ガラス、液晶ディスプレイ(LCD)のガラス基板といった電気・電子機器で用いられているガラス材料の研摩にも用いられており、その応用分野が広がっている。
【0003】
このセリウム系研摩材は、主成分である酸化セリウム(CeO2)粒子と、他の希土類金属酸化物粒子とからなる研摩材粒子よりなり、酸化セリウムの全希土酸化物含有量(以下、TREOという。)に対する含有量により高セリウム研摩材と低セリウム研摩材とに分類されているが、その製造工程には大差はない。即ち、いずれのセリウム系研摩材も、まず、原料を粉砕後に化学処理(湿式処理)を施す。これは、セリウム系研摩材においてその高い切削性を確保するためにフッ素成分の添加を行ない、場合によってはこれに加えて、後の焙焼工程時に異常粒成長の原因となるナトリウム等のアルカリ金属を除去するためである。そして、湿式処理後の原料は、濾過、乾燥後高温加熱して焙焼することにより原料粒子同士を焼結し、これを再度粉砕して分級することで所望の粒径、粒度分布を有する研摩材が製造される。
【0004】
ここで、セリウム系研摩材の製造のために用いられる原料としては、従来は、バストネサイトと呼ばれる希土鉱石を選鉱したバストネサイト精鉱という天然原料を使用することが多かったが、最近ではバストネサイト鉱や比較的安価な中国産複雑鉱を化学処理することにより、希土類金属濃度を富化したセリウム系希土類炭酸塩(以下、炭酸希土と称する)、又は、この希土類炭酸塩について研摩材製造工程におく前に高温で仮焼することにより酸化物としたセリウム系希土類酸化物(以下、酸化希土と称する)を原料とすることが多くなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、研摩材として十分な切削性を確保するためには、焙焼工程において原料粒子を焼結させ適度な大きさの研摩粒子を製造することが重要である。そのため、上記炭酸希土及び酸化希土を原料として製造する場合においては、焙焼温度を1000℃近傍と比較的高温域に設定するのが通常である。これは、いずれの原料を適用するにしても、かかる温度範囲でなければ、原料粒子の十分な焼結を生じさせることができないことが経験的に明らかとなっているからである。
【0006】
しかしながら、焙焼温度を高くすることは、焼結を促進するという効果がある一方で異常粒成長の要因となる。そして、この異常粒成長により粗大粒子が生じ、場合によってはそれが最終製品となる研摩材中に混入することがある。そして、このような粗大粒子は、傷の原因となることからできるだけその含有率を低減させる必要がある。従来は、焙焼後の分級工程の調製により行なわれていたが、粗粒子濃度を低くしようとするあまり分級条件を厳密にすることは研摩材の生産効率を低下させそのコスト上昇の要因ともなる。
【0007】
従って、粗粒子の混入を抑制し、且つ、生産効率を確保するためには、焙焼工程において異常粒成長を抑制するため、できるだけ低い温度で焙焼させることができることが望ましいといえる。
【0008】
そこで、本発明は、研摩材製造において焙焼温度が比較的低温であっても焼結可能であり、異常粒成長のおそれのない研摩材用原料を製造する方法を提示することを目的とする。そして、この方法により製造される研摩材用原料及びこれにより製造される高品位の研摩面を形成可能なセリウム系研摩材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決すべく、本発明者らは、鋭意研究を行ない、上記した炭酸希土及び酸化希土を用いた際の焙焼時の焼結機構につき検討した。本発明者等によれば、炭酸希土及び酸化希土について高温での焙焼が必要な理由としては以下のようなものが考えられる。
【0010】
まず、炭酸希土については図1に示すようなものである。原料として搬入される炭酸希土は、希土類炭酸塩粒子が結束した粗大な凝集体よりなる。そして、炭酸希土を原料とした研摩材の製造工程では、まず、この原料を粉砕する工程におかれるが、この炭酸希土の凝集体は結束力が強く、また、この粉砕工程では原料をスラリー化して粉砕する湿式粉砕が適用されることが多いが、このスラリーの粘度は酸化希土の凝集力よりも高いため粉砕効率が低く、完全に微粒とすることが困難なため、粉砕後の微粒炭酸希土の中には部分的に粗大粒子が残留した状態となる。
【0011】
粉砕工程後の原料は、フッ化処理されるが、このフッ化処理においては、炭酸希土中の一部の炭酸成分がフッ素と交換され、炭酸希土はフッ化炭酸希土となり、これに伴い粗大粒子の破壊が生じる。しかし、フッ化処理で添加されるフッ素の量には最終製品のフッ素濃度との関係から制限があることから粗大粒子の破壊は十分にはなされない。
【0012】
そして、フッ化処理された炭酸希土は、焙焼されるが、炭酸希土中の大部分の炭酸成分はこの焙焼時にCO2として放出され、これにより炭酸希土粒子は密度の低い多孔質の形骸粒子となる。このような形骸粒子は焼結速度が遅いため高温でなければ焼結が進行しない。特に、炭酸希土は上述のように粗大粒子が多く残留していることから、この粗大粒子は粗大な形骸粒子を形成するが、この粗大な形骸粒子は焼結速度が極めて遅い。このような理由から炭酸希土を原料として研摩材を製造する際、焙焼温度を高温にする必要があるのである。
【0013】
一方、酸化希土についての焼結機構を図示すると、図2のようになる。上記したように、酸化希土は炭酸希土を高温で仮焼したものであるから、酸化希土の原料となる炭酸希土は、図1と同様に粗大粒子を形成している。しかし、この炭酸希土を仮焼することで、その炭酸成分の放出が生じて形骸粒子を形成するが、この形骸粒子は脆く仮焼工程中に受ける衝撃により崩壊し、ある程度微粒の炭酸希土粒子を形成する。そして、これら微粒の炭酸希土はその後の加熱により酸化し酸化希土となる。
【0014】
しかし、この高温での仮焼工程においては、生成した酸化希土粒子同士が焼結し凝集体を形成する。この酸化希土の凝集体は結束力が強くその後の粉砕工程によってもその一部がそのままの形状で残留する。これにより、このような凝集体については、フッ化処理を行なった際内部までフッ化されることなく中心部の酸化希土粒子は酸化物のままとなる。
【0015】
このようなフッ化の不均一はその後の焙焼時における焼結工程に対して悪影響を与える。即ち、かかるフッ化が不均一になされた凝集体は、焙焼工程下における加熱、衝撃により崩壊するがこれによりフッ化が十分なされた酸化希土粒子とフッ化されていない又はフッ素濃度の低い酸化希土粒子とが混在した状態となる。そして、前者は速やかに焼結するが、後者は焼結速度が遅く相当高温下でなければ十分な焼結速度が得られない。このような理由から酸化希土を原料として研摩材を製造する際には、焙焼温度を高温にする必要があるのである。
【0016】
本発明者等は、以上のような炭酸希土及び酸化希土の焼結機構を考慮し、焙焼時に形骸粒子を存在させず、且つ、フッ化処理を均一に行なうことができる原料を製造する方法として、酸化希土と同様に粉砕前の炭酸希土を仮焼しつつ、この仮焼による炭酸希土から酸化希土への変化が部分的に生じるようにすることで、上記課題を解決可能であると考えた。このような部分的仮焼の過程を図3に示す。
【0017】
この部分的仮焼においては、酸化希土の製造方法と同様、炭酸希土を仮焼するものであるから、仮焼初期において炭酸希土粒子に生じる変化は酸化希土と同様である。つまり、炭酸成分がCO2として放出され炭酸希土粒子が形骸粒子となり、崩壊し微粒の炭酸希土粒子を形成する。そして、これら炭酸希土粒子は酸化され加熱時間の経過にともない粒子中の酸化物の割合が増加していくことになる。本発明に係る部分的仮焼ではこの炭酸希土が完全に酸化希土となる前に仮焼を中止し、原料を構成する粒子を酸化物炭酸塩とからなる混合希土とするものである。
【0018】
この部分的仮焼により形成された混合希土粒子は、その後の粉砕工程及びフッ化処理により、残留した形骸粒子の破壊及び更なる微粒化が進行することとなる。また、フッ化処理においては、酸化希土の場合のように凝集粒子が存在していないので均一なフッ化がなされる。その結果、仮焼工程においては形骸粒子やフッ化の不十分な粒子のような焼結を妨げる要因がないので、比較的低温においても焼結が進行するのである。
【0019】
このように、本発明者らが提唱する部分的仮焼によれば、炭酸希土及び酸化希土が有する高温でなければ焼結が生じがたいという問題を生じさせることのない研摩材用原料が製造可能である。
【0020】
一方、この部分的仮焼においては、如何に炭酸希土を適度に酸化させて混合希土とするかが肝要である。加熱が過度であると炭酸希土が完全に酸化希土となり、上述のように不均一にフッ化されることとなるからであり、また、加熱が不足すると十分な形骸粒子の破壊が生じないから、いずれの場合も焼結性に問題がある原料となるからである。本発明者等は、このような部分的仮焼を行なって研摩材用原料を製造するにあたり差異的な条件を見出すべく鋭意検討を行なった結果、本願請求項1記載の発明を想到するに至った。
【0021】
即ち、本願請求項1記載の発明は、セリウム系希土類炭酸塩とセリウム系希土類酸化物との混合希土類塩を主成分とするセリウム系研摩材用原料の製造方法であって、セリウム系希土類炭酸塩を400℃〜800℃で仮焼することにより、一部のセリウム系希土類炭酸塩をセリウム系希土類酸化物に変化させるセリウム系研摩材用原料の製造方法である。
【0022】
この仮焼温度を、400〜800℃としたのは、かかる温度で仮焼することにより炭酸希土から適度に炭酸成分を放出させるためである。即ち、800℃を超えると酸化希土への変化が早くなり完全な酸化希土になってしまうと共に、400℃未満では、十分な炭酸成分の放出、粗大粒子の破壊が生じないからである。そして、同様に炭酸希土から適度に炭酸成分を放出させる観点からこの温度範囲で、部分的仮焼を行うにあたっては、請求項2記載のように仮焼時間を0.1〜48時間とするのが好ましい。
【0023】
そして、本発明により製造された原料は、従来のセリウム系研摩材の製造工程にそのまま適用することができ、粉砕及びフッ化処理を行うことにより、粗大粒子が少ない上に均一にフッ化することができる。これにより焙焼工程の焙焼温度を低減することができる。
【0024】
ここで、焙焼時の焼結性に加えて原料運搬の利便性そして最終製品である研摩材の生産性を考慮すれば、より好ましい原料としては、請求項4記載のようにこのセリウム系研摩材用原料を含むものであって、1000℃で1時間加熱した場合の強熱減量が乾燥重量基準で1.0〜20%であるセリウム系研摩材用原料が好ましい。
【0025】
強熱減量(以下、LOI(Loss On Ignition)と称する。)とは、対象物を強熱した際の重量減少率をいう。セリウム系研摩材用原料において、この強熱減量が高いということは、焙焼時に焙焼前の原料重量に対して最終製品の重量が低くなることから、生産性が悪いということを意味する。この強熱減量の値は炭酸希土は約30%と高く、高温で十分仮焼された酸化希土については約0.5%と低い値を示すことがわかっている。従って、本発明においてLOIの値は炭酸希土と酸化希土の存在比率を間接的に表示する指標ともいえる。尚、本発明において強熱減量の基準を1000℃で1時間加熱した場合としたのは、炭酸希土の場合、500℃以上の加熱で強熱減量の値が安定し始めることが実験的に確認されていることから、1000℃での加熱が最も安定的な指標として適用可能であるという考えに基づくものである。
【0026】
そして、本発明において強熱減量を1.0〜20%としたのは、本発明者らの試験結果から、かかる範囲であれば、比較的低温で焙焼しても焼結が十分にかつ均一に進行することから、研摩値がある程度高く傷がほとんど発生しない研摩材を得ることができるからである。ここで、強熱減量の範囲を1.0〜20%とするためには、本発明に係る方法により上記仮焼温度及び仮焼時間範囲において、所望の強熱減量となるように炭酸希土を加熱することで炭酸希土と酸化希土の配分を調整することによる。また、本発明により製造した原料に、酸化希土又は炭酸希土を適宜に混合することによっても調製可能である。
【0027】
上述のように本発明に係る研摩材用原料は比較的低温で焙焼しても十分な焼結速度にて焼結可能である。そこで、請求項5記載の発明は、この原料を粉砕しフッ化処理を行なった後、フッ化処理後のセリウム系研摩材用原料を700〜1000℃の温度範囲で焙焼する工程を含むセリウム系研摩材の製造方法とした。このように低温で焙焼することにより、異常粒成長を抑制し、傷発生のない高品位の研摩面が形成可能なセリウム系研摩材を製造することができる。
【0028】
尚、このセリウム系研摩材の製造方法においては、焙焼工程前にフッ化処理を行なうこととなるが、このフッ化処理はフッ化アンモニウムを用いて行なうのが好ましい。フッ化処理についてはフッ酸も適用可能であるが、フッ化アンモニウムはフッ化反応が緩やかに進行するので、原料中にフッ素を寄り均一に分布させることができるからである。そして、これによりより低温での焙焼が可能となるからである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を比較例と共に説明する。
【0030】
第1実施形態:TREO中の酸化セリウム含有量60%(TREO:70%(乾燥重量基準))の炭酸希土20kgをマッフル炉で、500℃で2時間仮焼することで研摩材用原料を製造した。そして、この際のLOIを測定した。
【0031】
LOIの測定は次のように行なった。予め重量を測定したるつぼに研摩材用原料を入れその重量を測定した後、電気炉中で1000℃、1時間加熱した後乾燥雰囲気下で放冷した。放冷後るつぼの重量を測定し、下記計算式に従いLOIの値を求めた。その結果、本実施形態により製造された研摩材用原料のLOIは5%であった。
【0032】
【数1】
(B:強熱減量(%)、W1:加熱前の研摩材用原料とるつぼの重量(g)、W2:加熱後の研摩材用原料とるつぼの重量(g)、W3:るつぼの重量)
【0033】
次に、この研摩材用原料2kgと純水2lとを直径5mmの鋼製の粉砕媒体12kgが充填された湿式ボールミル(容量5l)にて5時間粉砕し、平均粒径(マイクロトラック法D50(累積50%粒径))1μmの粉体からなるスラリーとした。その後、最終状態の研摩材中のフッ素濃度が6%となるようにすべく、粉砕スラリーに濃度1mol/lのフッ化アンモニウム溶液を添加した後に、純水で洗浄後濾過してケーキを得た。次に、このケーキを乾燥後、900℃で3時間焙焼し、再度粉砕した後分級してセリウム系研摩材を得た。
【0034】
第2〜第4実施形態:第1実施形態で製造した原料を用いて焙焼温度を変化させてセリウム系研摩材を製造した。焙焼温度は、850℃、950℃、1050℃とした。尚、焙焼温度以外の条件は第1実施形態と同様とした。
【0035】
第5実施形態:本実施形態では、炭酸希土の仮焼温度、仮焼時間を変えて研摩材用原料を製造し、LOIを測定後、セリウム系研摩材を製造した。この際の、研摩材用原料の製造条件は仮焼温度を400℃、仮焼時間を18時間とした以外は第1実施形態と同様とした。また、研摩材の製造条件は、焙焼温度を900℃とした以外は第1実施形態と同様とした。本実施形態で製造された研摩材用原料のLOIも5%であった。
【0036】
第6〜第8実施形態:第5実施形態で製造した原料を用いて焙焼温度を変化させてセリウム系研摩材を製造した。焙焼温度は、850℃、950℃、1050℃とした。尚、焙焼温度以外の条件は第5実施形態と同様とした。
【0037】
比較例1:第1〜第8実施形態で製造したセリウム系研摩材材に対する比較例として、炭酸希土を仮焼して酸化希土からなる研摩材用原料を製造し、この酸化希土からセリウム系研摩材を製造した。酸化希土の製造は、第1実施形態と同様の炭酸希土20kgをマッフル炉にて、900℃で3時間仮焼して酸化希土とした。また、セリウム系研摩材の製造は焙焼温度を980℃とした以外は、第1実施形態と同様の工程にて行なっている。
【0038】
比較例2〜比較例5:比較例1の酸化希土からセリウム系研摩材を製造する工程において、焙焼温度を850℃、900℃、950℃、1050℃と変化させてセリウム系研摩材を製造した。
【0039】
比較例6:次に、研摩材用原料として炭酸希土を用いてセリウム系研摩材を製造した。研摩材用原料としての炭酸希土は第1実施形態と同じものを用いた。また、この炭酸希土からセリウム系研摩材を製造する工程における製造条件は、焙焼温度も含めて比較例1と同様とした。
【0040】
比較例7〜比較例10:比較例1と同様研摩材用原料として炭酸希土を用い、焙焼温度を850℃、900℃、950℃、1050℃と変化させてセリウム系研摩材を製造した。
【0041】
そして、これらのセリウム系研摩材の内、第2〜第4実施形態及び第6〜第8実施形態、並びに、比較例2、4,5及び比較例7,9,10の焙焼温度を変化させて製造したセリウム系研摩材について、焙焼後の研摩粒子の大きさを検討すべく比表面積の測定を行なった。比表面積の測定はBET法にて行なった。この結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
この結果、酸化希土、炭酸希土を原料とした研摩材については、1050℃という相当高温でなければ比表面積が小さくなっていないこと、つまり焼結が生じていないことが確認された。一方、第2〜第4実施形態及び第6〜第8実施形態に係るセリウム系研摩材は、850℃程度の焙焼でも比表面積が小さくなっている。これは、これらの実施形態のように比較的低温での仮焼を行なった研摩材原料は焼結が容易であることを示している。
【0044】
次に、第1及び第5実施形態に係るセリウム系研摩材と比較例1、3、6、8に係るセリウム系研摩材について、研摩材中の粗粒子(粒径10μm以上の研摩粒子)の濃度を分析し、更にこれらのセリウム系研摩材を用いて、ガラス材料の研摩を行い、研摩値の測定及び研摩面の状態を比較評価した。
【0045】
粗粒子濃度の測定は、以下のようにして行なった、各セリウム系研摩材200gを秤量採取し、これを分散剤として0.1%のヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する水溶液に分散させ2分間攪拌しスラリーを製造した。このスラリーを孔径10μmのマイクロシーブで濾過し、篩上の残滓を回収した。回収した残滓を再度0.1%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液に分散させスラリー化した。このとき、分散は超音波攪拌を1分間行っている。そして、スラリーを孔径10μmのマイクロシーブで濾過した。この回収残滓の再スラリー化、濾過は2回行って粗粒子を回収した。その後、この粗粒子を十分乾燥させた後秤量し、この粗粒子重量から粗粒子濃度を求めた。
【0046】
また、研摩値の測定及び研摩面の状態の評価は、まず、各研摩材を水に分散させて10重量%の研摩材スラリーとした。この研摩材スラリーは研摩試験中、攪拌機にて常時攪拌し、研摩材が沈降しないようにした。そして、ガラス材料の研摩は、高速研摩機で65mmφの平面パネル用ガラスを被研摩材としてポリウレタン製の研摩パッドを用いて研摩した。研摩条件は、研摩材スラリーを5ml/minの速度で供給し、研摩面に対する圧力を15.7kg/cm2に設定して研摩機の回転速度を1000rpmとした。研摩後のガラス材料は、純水で洗浄し無塵状態で乾燥させた。
【0047】
この評価試験における研摩値の測定は、研摩前後のガラスの重量を測定することで研摩による重量減を求め、この重量減から研摩値を表すし、比較例8の研摩材による重量源を100として相対的に評価した。また、研摩面の表面仕上りの評価は、研摩表面の傷の有無及び研摩材粒子の研摩面への残存の有無を基準として評価した。具体的には、研摩後のガラスの表面に30万ルクスのハロゲンランプを照射し、反射法にてガラス表面を観察することにより行なった。この際、傷の評価については、傷の程度(大きさ)及びその大きさにより点数付けをし、100点満点からの減点方式にて評価した。この評価結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
この結果から、第1、第5実施形態に係るセリウム系研摩材は、研摩値も良好であり、また、研摩面にも傷発生がなく優れた研摩面を形成できることがわかった。一方、比較例である酸化希土及び炭酸希土を原料とするセリウム系研摩材は、焙焼温度が同じ場合には儀図の表かはほぼ同じであるが、焼結性が劣るために研摩値が低い。また、焼結温度を高くするとある程度は研摩値が上昇するが、傷の発生が見られ研摩面の評価が低くなった。この結果は、粗粒子濃度の測定結果に見られるように、比較例1及び6の研摩材中には400ppm以上の粗粒子が混入していることによるものと考えられるが、この粗粒子は酸化希土、炭酸希土については焙焼を高温で行なうことで焼結を生じさせていることから、異常粒成長が生じこれにより生成した粗粒子が最終製品である研摩材に残留したことによるものと考えられる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、炭酸希土を部分的に仮焼しこの炭酸希土が完全に酸化希土となる前に仮焼を中止し、原料を構成する粒子を酸化物炭酸塩とからなる混合希土としてこれを研摩材用原料とするものである。本発明によれば、研摩材製造において焙焼温度が比較的低温であっても焼結可能な研摩材用原料を製造することができる。そして、この研摩材用原料によれば、異常粒成長による粗大粒子の混入もなく高品位の研摩面を形成可能なセリウム系研摩材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】研摩材製造工程における炭酸希土粒子の変化を示す図。
【図2】研摩材製造工程における酸化希土粒子の変化を示す図。
【図3】本発明に係る部分的仮焼を行なった時の研摩材用原料粒子の変化を示す図。
Claims (1)
- セリウム系希土類炭酸塩とセリウム系希土類酸化物との混合希土類塩を主成分とし、1000℃で1時間加熱した場合の強熱減量が乾燥重量基準で1.0〜5.0%であるセリウム系研摩材用原料の製造方法であって、
セリウム系希土類炭酸塩を400℃〜500℃で、0.1〜48時間仮焼することにより、一部のセリウム系希土類炭酸塩をセリウム系希土類酸化物に変化させるセリウム系研摩材用原料の製造方法。
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