JP4232307B2 - バッチ式熱処理装置の運用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、縦型炉や横型炉のように一度に多数の半導体ウエハを熱処理することができるバッチ式熱処理装置の運用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、一度に多数枚の半導体ウエハに対して成膜処理、酸化処理、拡散処理等の熱処理を行なう処理装置として横型炉や縦型炉のようなバッチ式熱処理装置が知られている。
図11は一般的なバッチ式熱処理装置を示す概略構成図であり、このバッチ式熱処理装置2は内筒4と外筒6とよりなる2重管構造の処理容器8を有しており、内筒4内の処理空間Sには、その下方より挿脱自在になされたウエハボート10が収容されており、これに多数枚、例えば150枚程の製品ウエハWを所定のピッチで満載状態で載置して所定の熱処理、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)処理を行なうようになっている。
【0003】
成膜ガス等の各種のガスは処理容器8の下部から導入されて、内筒4内の処理空間Sを反応しつつ上昇した後、下方向へ折り返して、内筒4と外筒6との間の間隙を降下して外部へ排出される。尚、処理容器の外周には、ゾーン分割された図示しない加熱ヒータが設けられ、また、プロセス圧力は排気口12に設けた圧力センサP1により検出されている。
ここでウエハボート10にウエハを満載した状態で処理する時の、プロセス温度、圧力、ガス流量は予めプロセス目的に対応させて求められており、処理時にはこの処理条件に適合するようにプロセス温度、圧力、ガス流量等を制御することになる。尚、ウエハボート10には、一般的に、処理の再現性を上げるためのサイドウエハがウエハボート10の上下側に、それぞれ複数載置されており、また、処理結果を確認するためのモニタウエハが製品ウエハ中に散在させて載置されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近にあっては、多種多様な半導体デバイスが要求されることから小ロットで多品種のウエハ熱処理が必要とされる場合がある。例えば製品ウエハとして例えば150枚の処理が必要な時には、ウエハボート10は満載状態となるが、それよりも少ない枚数、例えば100枚、50枚或いは25枚の熱処理が必要な場合もある。
このような場合、ウエハボート10内にウエハ未載置の空き領域を設けると、部分的にウエハ温度やガス濃度が乱れたりして、熱処理のウエハ面内均一性、面間均一性及び処理速度が変わって熱処理の再現性が低下して好ましくないので、不足枚数だけダミーウエハを用いてウエハボート10を満載状態とし、ウエハ満載時の通常のプロセス条件で熱処理を行なうようにしていた。尚、満載時で150枚の製品ウエハを処理できるウエハボート10の支柱10Aには、例えば170個の支持溝が形成されており、上記サイドウエハが13枚、モニタウエハが7枚それぞれ載置できるようになっている。
【0005】
しかしながら、この場合には用いられるダミーウエハは複数回の処理毎に洗浄等が行われて繰り返し使用されるが、最終的には廃棄処分となり、従って、ランニングコストを高騰させる原因となっていた。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、被処理体未載置の空き領域があっても熱処理の面内、面間均一性及び再現性も高く維持することができるバッチ式熱処理装置の運用方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、満載時よりも少ない枚数の半導体ウエハでも、製品ウエハの載置位置、ダミーウエハの載置位置、プロセス温度等を適宜工夫することにより、熱処理の再現性を高く維持することができる、という知見を得ることにより、本発明に至ったものである。
請求項1に規定する発明は、複数枚の被処理体を保持した被処理体保持具を処理容器内へ挿入し、前記処理容器の一端側より他端側へ向けて処理ガスを流しつつ前記被処理体に対して所定の処理を施すようにしたバッチ式熱処理装置の運用方法において、前記被処理体保持具に保持し得る最大枚数よりも少ない枚数の被処理体を処理する時には、前記被処理体を前記処理ガスの流れ方向の上流側に寄せた状態で保持し、この被処理体群の直ぐ下流側にダミー被処理体を保持させるようにし、前記ダミー被処理体の直ぐ下流側に前記被処理体及び前記ダミー被処理体を載置していない未載置領域を設けるようにしている。
これにより、熱処理の面間、面内均一性及び再現性も満載処理時と同等にかなり高く維持することが可能となる。
【0007】
請求項2に規定するように、前記複数枚の被処理体の内、前記処理ガスの流れ方向の最下流側近傍に位置する被処理体の制御対象温度を、前記被処理体保持具に満載して処理を行なう時の基準温度よりも数度低い温度に設定するようにしてもよい。これによれば、特に、設定値よりも実際の温度が高くなって熱処理が促進される傾向にある処理ガスの流れ方向の最下流側に位置する被処理体の実際の温度を適正値にして熱処理を抑制でき、熱処理の面間均一性を一層向上させて、満載処理時と同等に維持することが可能となる。
【0008】
請求項3に規定するように、前記処理容器内の処理空間の圧力を、前記被処理体保持具に満載して処理を行なう時の圧力と同じ圧力になるように設定することにより、特に、熱処理速度も改善することができ、再現性も大幅に向上させることが可能となる。
請求項4に規定するように、前記処理容器内の温度は、前記処理ガスの流れ方向の上流側から下流側に行くに従って次第に高くなるようにチルト温度になされているようにしてもよい。
請求項5に規定するように、前記ダミー被処理体は、前記処理ガスの流れ方向の最下流側に位置する前記被処理体の隣から載置されるようにしてもよい。
請求項6に規定するように、前記被処理体保持具における処理ガスの流れ方向の最上流側と最下流側とにそれぞれ複数枚のサイド被処理体が載置されるようにしてもよい。
請求項7に規定するように、前記被処理体は、前記処理ガスの流れ方向の最上流側に位置するサイド被処理体群の内、前記処理ガスの流れ方向の最下流側に位置するサイド被処理体の隣から載置されるようにしてもよい。
請求項8に規定するように、前記被処理体群には、モニタ被処理体が含まれているようにしてもよい。
請求項9に規定するように、前記モニタ被処理体は、前記被処理体群の上部と、略中央部と、下部とにそれぞれ位置されているようにしてもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るバッチ式熱処理装置の運用方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明方法を実施するためのバッチ式熱処理装置を示す概略構成図、図2は被処理体保持具へ空き領域を残したまま被処理体を載置した時の一例を示す図である。ここでは、熱処理として、例えばSiNの成膜を施す場合を例にとって説明する。
まず、本発明方法を実施するバッチ式熱処理装置の一例について説明する。この熱処理装置2の構造は、図11を参照して説明したものと同じであり、内筒4と外筒6とよりなる石英製の2重管構造の処理容器8を有している。上記内筒4内の処理空間Sには、被処理体保持具としての石英製のウエハボート10が収容されている。このウエハボート10は、処理容器8の下方を開閉するキャップ16上に保温筒18を介して載置されており、昇降可能なエレベータ20により、処理容器8内へその下方から挿脱可能になされている。処理容器8の下端開口部は、例えばステンレス製のマニホールド22が接合されており、このマニホールド22には、処理ガスとして流量制御されたジクロルシランを導入する第1のノズル24や流量制御されたNH3 を導入する第2のノズル26が設けられる。
【0010】
従って、処理ガスは、第1及び第2のノズル24、26から供給された後に、内筒4内の処理空間Sを上昇し、天井部で下方へ折り返して内筒4と外筒6との間隙内を流下して排出されることになる。また、外筒6の底部側壁には、真空ポンプ等が接続される排気口12が設けられると共に、ここには圧力を検出する第1の圧力センサP1が設けられる。更に、上記マニホールド22には、処理空間Sに直結する空間の圧力を測定する第2の圧力センサP2が設けられている。
また、処理容器8の外周には、高さ方向に例えば5つのゾーンに区分された加熱ヒータ28が設けられており、各ゾーンには熱電対のような温度センサ30を設けて、ゾーン毎に個別に制御可能になされている。
【0011】
さて、このように熱処理装置2を用いて満載時の枚数よりも少ない枚数の半導体ウエハを処理する場合、例えば最大150枚(満載時)の製品ウエハを処理できるウエハボート10を用いて、それよりも少ない100枚、50枚或いは25枚のウエハを処理する場合には、図2に示すように、製品ウエハWを処理ガスの流れ方向32の上流側に寄せた状態でウエハボート10に支持させる。そして、更に、この製品ウエハ群の直ぐ下流側にダミーウエハDWを複数枚載置する。ここでは、処理ガスは下方から上方に向けてガスが流れる場合を想定しているので、上記製品ウエハWは、下方向へ完全に寄せて詰めた状態となっている。また、従来方法の場合と同様に、ウエハボート22の最下端部と最上端部には、それぞれ7枚及び6枚程のサイドウエハSWが載置されている。このサイドウエハSWの機能は、中央部に位置する製品ウエハに対して熱的に不平衡となりがちな上下端側に位置する製品ウエハの温度補償等を行なうものであり、これにより前述したように熱処理の再現性を高く維持するものである。
【0012】
尚、前述のように満載時で150枚の製品ウエハを処理できるウエハボート10の支柱10Aには、例えば170個の支持溝が形成されており、サイドウエハが最下端部及び最上端部合わせて13枚、モニタウエハが7枚それぞれ載置できるようになっている。
上述のように下詰めした結果、ウエハボート22の途中には、何らウエハを載置していない未載置領域34が発生することになる。
このように、各ウエハWを載置した状態で、ウエハ満載時と同じプロセス条件(基準プロセス条件)、すなわち同じ処理ガス量、同じプロセス圧力、同じプロセス温度で成膜処理することにより、ウエハに付着した膜の面内、面間均一性及び再現性を向上させることができる。
【0013】
また、この場合、処理ガスの最下流側近傍に位置する製品ウエハ、すなわち図2中ではダミーウエハDWと製品ウエハWとの境界部分に位置する複数枚の製品ウエハWaの温度は、後述するように上昇する傾向にあるので、この部分の温度をウエハ満載時のプロセス温度(基準温度)よりも数度、例えば1℃〜5℃程度低い温度に設定することにより、この部分の成膜を抑制して膜厚の面間均一性を一層向上させることができる。
更に、成膜速度には、プロセス圧力が大きく関与するが、内筒4内の処理空間S内の圧力を正確に測定し、この処理空間Sの圧力を、ウエハ満載時の基準圧力と精度良く同じ圧力になるように制御することにより、成膜速度を基準プロセス時と略同じにでき、再現性を一層向上させることができる。
ウエハ未満載状態で熱処理する場合、熱処理の面間、面内均一性及び再現性を高く維持するためには、製品ウエハの載置場所、ダミーウエハの存否及びその載置位置、プロセス圧力、プロセス温度等が複雑にからみあうが、以下に、上述したような結論に達した理由を詳述する。
【0014】
まず、製品ウエハWのウエハボート10に対する載置位置について検討する。図3はウエハボートに対する製品ウエハWの載置位置と膜厚の状態を示す図、図4は図3の結果を示すグラフである。尚、膜厚の測定に関しては、製品ウエハ間に適宜間隙で散在させた5枚のモニタウエハの膜厚を用いている。図3に示す場合には、100枚の製品ウエハWを処理する時の載置態様を示しており、下詰100枚処理は、100枚の製品ウエハWをウエハボートの下部に集中させて載置した状態を示し、上詰100枚処理は100枚の製品ウエハWをウエハボートの上部に集中させて載置した状態を示し、中詰100枚処理は製品ウエハWをウエハボートの中央部に集中させて載置した状態を示しており、図中”空”は何らウエハを載置していない未載置領域を示している。
【0015】
また、ウエハボート10の上下部には、前述のようにそれぞれ所定の枚数のサイドウエハSWを載置している。そして、製品ウエハ150枚を載置して熱処理を行なった満載150枚処理を、基準値として参考のために併記してある。尚、この時は7枚のモニタウエハを用いている。
図中には、各モニタウエハの膜厚及びその平均値膜厚の面内均一性及びその平均値、面間均一性、成膜レートをそれぞれ記している。図3中では、5枚のモニタウエハの内、製品ウエハ群の上部に位置させた”トップ”と、製品ウエハ群の略中央部に位置させた”センタ”と、製品ウエハ群の下部に位置させた”ボトム”との3枚のモニタウエハの値を代表として記載してある。
処理条件としては、以下の各プロセスも同じであるが、8インチウエハを用い、プロセス圧力は0.25Torr(33.25Pa)、プロセス温度は760℃(チルト温度:チルト温度ついては後述する)、処理ガスはジクロルシラン及びNH3 ガスがそれぞれ100sccm及び1000sccm、更に不活性ガスとしてN2 ガスを50sccm供給する。
【0016】
図3及び図4から明らかなように、上詰100枚処理の場合には、膜厚及びこの平均値、膜厚の面内均一性及びその平均値は共に、基準値である満載時150枚の場合よりもかなり大きくなっており、好ましくないことが判明する。
また、下詰100枚処理及び中詰100枚処理の場合は共に、トップ側の膜厚は異常に高くなっているが、膜厚平均値は下詰100枚処理の場合は151.24nmであって中詰100枚処理の162.90nmよりも小さく、基準値の152.27nmに最も近い。また、膜厚の面内均一性の平均値は下詰100枚処理の場合は2.31%であって、中詰100枚処理の場合の2.52%及び基準値の2.40%よりもかなり良く、良好な結果を示している。
【0017】
ただし、下詰100枚処理の場合及び中詰100枚処理の場合は、共に、面間均一性がそれぞれ8.75%と6.92%であり、基準値の0.77%よりもかなり劣化している。この理由は、トップの膜厚が共に異常に大きくなっているからである。従って、トップの膜厚が異常に大きい点を除けば、下詰100枚処理が、中詰100枚処理の場合よりも熱処理の均一性や再現性の維持の上から最も優れていることが判明する。
尚、製品ウエハの50枚処理、25枚処理についても上述した3つの載置状態で行なったところ上述した内容と略同様な結果となった。ただし、成膜レートは、50枚処理の場合は、2.08nm/min、25枚処理の場合は2.07nm/minであり、基準値の2.14nm/minに対してある程度、変動していた。この点、膜厚の再現性について少し問題はあるが、この改善方法については後述する。
【0018】
次に、図5及び図6を参照してダミーウエハを用いた時の製品ウエハのトップにおける膜厚の抑制について説明する。
図5はダミーウエハを用いた場合と用いない場合の膜厚の変化を説明するための図、図6は図5の結果を示すグラフである。ここで図5中において下詰100枚処理+DW5枚の態様は、100枚の製品ウエハ群の直上に、5枚のダミーウエハDWを載置した態様を示している。尚、図5中の下詰100枚処理及び満載150枚処理の数値は、図3に示す数値と同じである。
図5及び図6から明らかなように、トップの膜厚は、下詰100枚処理が170.99nmであるのに対して、下詰100枚+DW5枚処理は147.34nmであって基準値152.27nmにかなり近い値である。更に、下詰100枚+DW5枚処理の膜厚の面間均一性は、2.37%となり、下詰100枚処理の8.75%よりもかなり向上している。この結果、製品ウエハ群の直上に、すなわち成膜ガスの流れ方向の直ぐ下流側に、複数枚のダミーウエハDWを載置することにより、膜厚の面間均一性も改善できることが判明する。
【0019】
尚、載置されるこのダミーウエハDWの枚数は、多い程よいが、ダミーウエハDWの設置効果と経済性を考慮すれば5枚〜6枚の範囲内が適切である。
以上の結果を総括すると、定数(満載時)よりも少ない枚数の製品ウエハを熱処理する場合には、この製品ウエハW群を処理ガスの流れ方向の上流側に寄せた状態で載置し(図示例の場合には下方に寄せた状態で保持し)、更に、製品ウエハ群の直ぐ下流側に(図示例の場合は直上に)複数枚のダミーウエハDWを載置させる。そして、この状態で製品ウエハの満載時と同様なプロセス条件で成膜処理を行なうことにより、膜厚の面間及び面内均一性を、ウエハ満載時と同様な程度に高く維持することができる。
【0020】
次に、面間均一性を更に改善するために、プロセス温度について検討したので、この点について図7及び図8を参照して説明する。
図7はプロセス温度760℃のチルト温度制御時における処理容器内の実際の温度と載置状態との関係を示すグラフ、図8は図7に示す結果に基づいて温度補償を行なった時の膜厚の面間均一性、成膜レート及び再現性を表す図である。
図7においては、ウエハ170枚(サイドウエハ等を含む)載置可能なウエハボートにおける高さ方向の温度分布を示しており、ここではプロセス温度760℃のチルト温度制御を行なっている。チルト温度制御とは、従来において一般的に行なわれている温度制御の一種であり、主として膜厚の面間均一性等を改善する目的で行なわれており、処理ガスの流れ方向の上流側から下流側に行くに従って、図示例ではウエハボートの下側より上方へ行くに従って、プロセス温度760℃を中心として次第に温度が高くなるように傾斜をつけるようにした温度制御方法である。
【0021】
ここでは、下詰25枚処理、下詰50枚処理、下詰100枚処理及び満載150枚処理の4つの態様について行なっている。この図7に示すグラフから明らかなように、各処理態様において下詰め製品ウエハ群の最上端の近傍(処理ガス流れ方向の最下流側近傍)におけるウエハ温度がそれぞれ設定値(制御対象温度)よりもΔt1、Δt2、Δt3度ずつ高くなっていることが判明する。このΔt1〜Δt3は略1℃〜8℃程度の範囲内であり、このように僅かに温度が高い分だけこの部分における反応が促進されてしまい、この部分に位置する製品ウエハに対する成膜レートが高くなってしまう。そこで、ゾーン毎に個別に制御可能な加熱ヒータを用いて、上記対応する部分のみの温度を、基準温度(満載時)よりも数℃、例えば1℃〜8℃程度だけ低くなるように設定し、温度補償を行なって円滑な直線状のチルト温度変化となるようにする。
【0022】
このような温度補償を行なった時の結果を図8に示す。図中、TOP、C−T、CTR、C−B及びBTMは、図7中で設けた熱電対に対応している。図8に示すように、下詰100枚処理時には、C−T温度がその基準値(771.5℃)よりも7℃だけ低くなるように温度補償しており、下詰50枚処理時には、CTR温度がその基準値(760℃)よりも4.5℃だけ低くなるように温度補償しており、下詰25枚処理時には、CTR温度がその基準値(760℃)よりも7.5(=4.5+3.0)℃だけ低くなるように温度補償している。尚、下詰25枚処理時にもCTRの温度を制御する理由は、下詰25枚処理時の製品ウエハ群の上端部近傍に位置する製品ウエハは熱電対CTRのゾーンの加熱ヒータにより大きく影響を受けるからである。
【0023】
以上のような温度補償を行なった結果、各態様において膜厚の面間均一性は、基準値の0.77%と同等、若しくはそれよりも小さな値となっており、良好な結果を示している。ただし、成膜レートが基準値の2.14nm/minよりも少し変動しており、それがために成膜処理毎の再現性が少し劣化している。
そこで、更に再現性を改善するために、成膜レートに大きな影響を与えるプロセス圧力について検討したので、その結果について図9を参照して説明する。
ここで、一般に、処理空間Sの圧力を制御するためには図1に示した排気口12に圧力センサP1を設置して、この検出圧力値が所定のプロセス圧力を維持すれば処理空間Sの圧力も一定になるであろうという仮定の基に制御を行なっているが、満載時の枚数(150枚)よりも少ない枚数の製品ウエハを処理する場合には、製品ウエハを下詰めして未載置領域34(図2参照)が発生するので処理容器8内のコンダクタンスが変動する。従って、コンダクタンスの変動分だけ、処理空間Sの圧力が変動していることが判明した。換言すれば、排気口12における第1の圧力センサP1の検出値が一定となるように制御しても、製品ウエハの枚数が少なくなる程、処理空間Sの実際の圧力は変動して低下してしまう。
【0024】
図9(A)はこの時の状態を示しており、処理空間Sの圧力を略正確に検出する第2の圧力センサ(ガスIN側)P2と第1の圧力センサP1との関係を表している。図9(A)に示すように排気口12に設けた第1の圧力センサP1の検出値を0.250Torrに一定に維持しても、ガスIN側に設けた第2の圧力センサP2の検出値は、製品ウエハの枚数が小さくなる程、圧力が変動して小さくなっている。このため、成膜レートが基準値2.14nm/minより低下し、その結果、再現性も2.34%〜4.67%まで劣化している。
そこで、ガスIN側に設けた第2のセンサP2の検出値が、製品ウエハ満載処理時の圧力と同じになるように制御することにより、成膜レート及び再現性が劣化することを防止することが可能となる。この結果は図9(B)に示されており、載置態様に関係なくガスIN側の第2の圧力センサP2の検出値を0.385Torr(51.205Pa)に一定になるように制御すれば(第1の圧力センサP1の検出値は当然変動する)、成膜レートはそれ程変動せず、従って、再現性も0.93%程度となって1%以内に抑制することができ、良好な結果を示すことが判明する。換言すれば、第1の圧力センサP1の検出値に基づいて圧力制御する場合には、載置態様に従って、補正値分だけ圧力が大きくなるように制御すればよいことになる。
【0025】
このように、本実施例では、製品ウエハ群の処理ガス最下流側の近傍に位置する製品ウエハの温度を僅かに補償することにより、膜厚の面間均一性をさらに向上させることができる。また、処理空間Sの圧力を、満載処理時の圧力と精度良く同一となるように制御することにより、成膜レートを改善して再現性を高く維持することができる。
尚、上記実施例では、処理空間Sにおいては、下方向から上方に向かって処理ガスが流れる場合を例にとって説明したが、これに限定されず、例えば図10に示すように、処理容器8の下方より導入した処理ガスが内筒4と外筒6の間隙内を上昇し、天井部で下方向へ折り返して処理空間Sには、上方向から下方向へ流下するような形式の熱処理装置にも適用できる。この場合には、製品ウエハWは処理ガスの流れ方向の上流側、すなわち上詰めされることになり、下方に未載置領域34が形成されることになる。
【0026】
また、製品ウエハWの処理枚数も25、50、100枚に限定されず、またウエハボートの満載時のウエハ枚数も150枚に限定されないのは勿論である。また、2重管構造の熱処理装置のみならず、単管構造の熱処理装置にも適用することができる。更には、本発明は、SiNの成膜のみならず、他の膜種、例えばSiO2 等の成膜にも適用できる。
また、被処理体としては、半導体ウエハに限定されず、LCD基板、ガラス基板等にも適用できるのは勿論である。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のバッチ式熱処理装置の運用方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
請求項1、5〜9に規定するように、満載時よりも少ない数の被処理体を熱処理する際に、処理ガスの流れ方向の上流側に被処理体を寄せた状態で保持し、この被処理体群の直ぐ下流側にダミー被処理体を保持させた状態で熱処理を行なうことにより、満載時と同様に熱処理の面間、面内均一性及び再現性を維持することができる。従って、用いるダミー被処理体を少なくできる分だけランニングコストを削減することができる。
請求項2に規定するように、処理ガスの流れ方向の最下流側近傍に位置する被処理体の制御対象温度を基準温度よりも数度低く設定することにより、実際の温度は適正な温度値となり、熱処理の面間均一性を一層向上させることができる。 請求項3に規定するように、処理空間の圧力を満載処理時の圧力と実質的に同じになるように制御することにより、熱処理速度が略同じになって、再現性を一層向上させることができる。
請求項4に規定するように、チルト温度制御を行なうことにより、面間均一性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するためのバッチ式熱処理装置を示す概略構成図である。
【図2】被処理体保持具へ空き領域を残したまま被処理体を載置した時の一例を示す図である。
【図3】ウエハボートに対する製品ウエハWの載置位置と膜厚の状態を示す図である。
【図4】図3の結果を示すグラフである。
【図5】ダミーウエハを用いた場合と用いない場合の膜厚の変化を説明するための図である.
【図6】図5の結果を示すグラフである。
【図7】プロセス温度760℃のチルト温度制御時における処理容器内の実際の温度と載置状態との関係を示すグラフである。
【図8】図7に示す結果に基づいて温度補償を行なった時の膜厚の面間均一性、成膜レート及び再現性を表す図である。
【図9】処理空間の圧力を略正確に検出する第2の圧力センサ(ガスIN側)と第1の圧力センサと成膜レートと再現性との関係を表す図である。
【図10】ガス流の方向が異なる他の熱処理装置を示す図である。
【図11】一般的なバッチ式熱処理装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
2 熱処理装置
4 内筒
6 外筒
8 処理容器
10 ウエハボート(被処理体保持具)
34 未載置領域
P1 第1の圧力センサ
P2 第2の圧力センサ
S 処理空間
W 製品ウエハ(被処理体)
DW ダミーウエハ(ダミー被処理体)
SW サイドウエハ
Claims (9)
- 複数枚の被処理体を保持した被処理体保持具を処理容器内へ挿入し、前記処理容器の一端側より他端側へ向けて処理ガスを流しつつ前記被処理体に対して所定の処理を施すようにしたバッチ式熱処理装置の運用方法において、前記被処理体保持具に保持し得る最大枚数よりも少ない枚数の被処理体を処理する時には、前記被処理体を前記処理ガスの流れ方向の上流側に寄せた状態で保持し、この被処理体群の直ぐ下流側にダミー被処理体を保持させるようにし、前記ダミー被処理体の直ぐ下流側に前記被処理体及び前記ダミー被処理体を載置していない未載置領域を設けるようにしたことを特徴とするバッチ式熱処理装置の運用方法。
- 前記複数枚の被処理体の内、前記処理ガスの流れ方向の最下流側近傍に位置する被処理体の制御対象温度を、前記被処理体保持具に満載して処理を行なう時の基準温度よりも数度低い温度に設定するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバッチ式熱処理装置の運用方法。
- 前記処理容器内の処理空間の圧力を、前記被処理体保持具に満載して処理を行なう時の圧力と同じ圧力になるように設定するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載のバッチ式熱処理装置の運用方法。
- 前記処理容器内の温度は、前記処理ガスの流れ方向の上流側から下流側に行くに従って次第に高くなるようにチルト温度になされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理装置の運用方法。
- 前記ダミー被処理体は、前記処理ガスの流れ方向の最下流側に位置する前記被処理体の隣から載置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理装置の運用方法。
- 前記被処理体保持具における処理ガスの流れ方向の最上流側と最下流側とにそれぞれ複数枚のサイド被処理体が載置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理装置の運用方法。
- 前記被処理体は、前記処理ガスの流れ方向の最上流側に位置するサイド被処理体群の内、前記処理ガスの流れ方向の最下流側に位置するサイド被処理体の隣から載置されることを特徴とする請求項6記載のバッチ式熱処理装置の運用方法。
- 前記被処理体群には、モニタ被処理体が含まれていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理装置の運用方法。
- 前記モニタ被処理体は、前記被処理体群の上部と、略中央部と、下部とにそれぞれ位置されていることを特徴とする請求項8記載のバッチ式熱処理装置の運用方法。
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