JP4228791B2 - 真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体及びそれを用いた真空紫外線励起発光装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ベーキング輝度維持率及びVUV輝度維持率が良好な真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体及びそれを用いた真空紫外線励起発光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空紫外線励起蛍光体は、プラズマディスプレイパネル(以下PDPとする)、希ガス放電ランプ等の発光デバイス(真空紫外線励起発光装置)に用いられている。プラズマディスプレイパネルは、2枚のガラス板に挟まれた密閉ガス空間を隔壁で区切り、表示セルと呼ばれる微小な放電空間をマトリックス状に配置したものであり、各表示セルには赤、青、緑に発光する蛍光体が塗布されており、放電で発生する真空紫外線で励起され発光する。また、希ガス放電ランプは、ガラス管内壁に赤、青、緑に発光する蛍光体を混合した3色混合蛍光体が塗布されており、希ガス放電によって発生する真空紫外線で励起され発光する。
【0003】
このような発光デバイスは放電空間の近傍に蛍光体層を有しており、蛍光体と有機バインダーを混合した塗布組成物を調製し、所定の部位にスラリー法、印刷法等により塗布し乾燥した後、有機バインダーを揮散させるために空気中、400℃〜600℃の温度でベーキングすることにより形成されるが、このベーキング工程により、従来のアルミン酸塩蛍光体は発光輝度が低下するという問題があった。また、上記発光デバイスに使用される真空紫外線は光子エネルギーが大きいため、蛍光体に格子欠陥等が発生し、従来のアルミン酸塩蛍光体においては発光輝度が経時的に大きく低下するという問題があった。例えば、(H12照明学会研究会 MD−00−22 BAM系蛍光体の構造劣化)には、PDPやXe励起ランプなどの励起源であるXeの放射する真空紫外線により、BAM系蛍光体の発光輝度が低下することが報告されている。BaMgAl10O17:Eu蛍光体等のBAM系蛍光体を青色発光蛍光体としてPDPや希ガス放電ランプに使用した場合、他の発光色の蛍光体に比べ、真空紫外線励起による輝度の経時劣化が大きいことから、次のような問題があった。すなわち、PDPに使用した場合は、色度変化による色温度の低下や固定表示による焼き付けなどの問題があり、希ガス放電ランプに使用した場合は、点灯時、経時的に色度変化が起きる問題があった。
【0004】
【非特許文献1】
H12照明学会研究会 MD−00−22
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上述した問題を解決することを目的とし、ユーロピウムで付活した、又はユーロピウムとマンガンで共付活した真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体のベーキング輝度維持率及びVUV輝度維持率を改良することを目的とする。
【0006】
【発明を解決するための手段】
本発明者は上述した問題を解決するために鋭意検討した結果、一般式が次式で表される真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体において、蛍光体表面のM濃度を蛍光体内部のM濃度より小さくすることにより、上記課題を解決することができることを見いだし本発明を完成させるに至った。
(M1−m,Eum)a(Mg1−n,Mnn)bAl10O15+a+b
(ただし、MはBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、0.9≦a≦1.1、0.9≦b≦1.1、0.02≦m≦0.3、0≦n≦0.03である。)
【0007】
すなわち、本発明は次のような構成から成る。
【0008】
本発明の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体は、一般式が次式で表される真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体において、蛍光体表面のM濃度が蛍光体内部のM濃度より小さいことを特徴とする。
(M1−m,Eum)a(Mg1−n,Mnn)bAl10O15+a+b
(ただし、MはBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、0.9≦a≦1.1、0.9≦b≦1.1、0.02≦m≦0.3、0≦n≦0.03である。)
また、本発明の蛍光体は、蛍光体表面のMg濃度は蛍光体内部のMg濃度より小さく、蛍光体表面のEu濃度は蛍光体内部のEu濃度より大きい。
(2)本発明の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体は、一般式が次式で表される真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体において、蛍光体表面層のM/Alモル比が(1−m)a/10未満であることを特徴とする。
(M1−m,Eum)a(Mg1−n,Mnn)bAl10O15+a+b
(ただし、MはBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、0.9≦a≦1.1、0.9≦b≦1.1、0.02≦m≦0.3、0≦n≦0.03である。)
また、本発明の蛍光体は、蛍光体表面層のMg/Alモル比は(1−n)b/10未満であり、Eu/Alモル比はma/10より大きい。
【0009】
(3)本発明の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体は、(110)ベクトル方向の結晶子径が960Å以上で、且つ(114)ベクトル方向の結晶子径が770Å以上であることを特徴とする。好ましくは、(110)ベクトル方向の結晶子径が1000Å以上で、且つ(114)ベクトル方向の結晶子径が790Å以上である。
【0010】
(4)さらに、本発明の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体は、Zn、In及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有し、含有量は10〜500ppmの範囲が好ましい。また、該元素の濃度は蛍光体表面の方が蛍光体内部より大きい。
【0011】
(5)本発明の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体は、平均粒径が1.0〜4.0μmの範囲が好ましい。より好ましくは、1.5〜3.0μmの範囲である。平均粒径が1.0μmより小さいとVUV輝度維持率が低下し、4.0μmより大きいと発光輝度が低下するからである。
【0012】
(6)本発明の真空紫外線励起発光装置は、上記(1)乃至(5)に記載の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体を用いた真空紫外線励起発光装置である。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体の製造方法について詳細に説明する。ユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体の場合、Ba、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物又は熱分解により酸化物となるBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素の化合物と、酸化ユーロピウム又は熱分解により酸化物となるユーロピウム化合物と、酸化マグネシウム又は熱分解により酸化物となるマグネシウム化合物と、酸化アルミニウム又は熱分解により酸化物となるアルミニウム化合物と、Zn、In及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物又は熱分解により酸化物となるZn、In及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の元素の化合物に、フラックスを添加して混合する。また、ユーロピウムとマンガンで共付活したアルミン酸塩蛍光体の場合は、これらの原料に加えて酸化マンガン又は熱分解により酸化物となるマンガン化合物を混合する。ここで、熱分解により酸化物となる化合物としては、それぞれの元素の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の高温で容易に熱分解する化合物が好ましく用いられる。フラックスとしてフッ化マグネシウムを用い、添加量は蛍光体1モル当たり0.005〜0.05モルの範囲にする。
【0014】
このように混合して得られる原料混合物をルツボに充填し、還元性雰囲気で、1300〜1600℃で焼成する。還元性雰囲気としては、例えば窒素水素混合雰囲気のような一般的な方法を用いる。上述した方法で混合、焼成することにより、ベーキング輝度維持率及びVUV輝度維持率が改善された真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体を得ることができる。
【0015】
また、上記原料に加えて、Zn、In及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物又は熱分解により酸化物となるZn、In及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の元素の化合物を混合した原料混合物を還元性雰囲気で焼成することにより、さらにVUV輝度維持率が改善された真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体を得ることができる。
【0016】
このように焼成して得られる焼成品を湿式で分散処理した後、分離乾燥して本発明の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体を得る。
【0017】
また、本発明のアルミン酸塩蛍光体を用いて真空紫外線励起発光装置として面放電型PDPを作製する。先ず、背面基板にストライプ状の電極を形成し、この電極群に直交する方向にストライプ状の電極を形成し、この上に絶縁膜とMgOを形成する。さらに、対向基板上に本発明のアルミン酸塩蛍光体を形成する。この2枚の基板は約100μmのギャップを持たせて組み合わせる。このギャップ内に、放電によって真空紫外線を放射するHeとXeの混合ガスやNeとXeの混合ガスなどを670hPa程度封入して、面放電型PDPを得る。
【0018】
次に、本発明の(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17蛍光体について、焼成温度とフラックス(MgF2)量を変えて実施例2と同様に製造したときの、蛍光体表面層のBa/Alモル比とベーキング輝度維持率の関係を図1に示す。ここで、ベーキング輝度維持率は、蛍光体をそれぞれ500℃で1時間ベーキングし、ベーキング前後の蛍光体について、ウシオ電機製146nmKrエキシマ光照射装置とミノルタ製分光放射輝度計CS−1000を用いて、146nm真空紫外線励起時の相対輝度を測定し、ベーキング後の測定値をベーキング前の測定値で除した値の百分率を求めたものである。また、蛍光体表面層のBa/Alモル比は、Auger Micro Probe JAMP−7800F(JEOL)装置を用いて、プローブエネルギー10keV、プローブ電流1×10−7A、プローブ径0.1μmφ未満の条件で、オージェ電子分光法により求めたものであり、蛍光体表面から深さ約33Åまでを測定する。この図から、Ba/Alモル比の値が0.09未満でベーキング輝度維持率が高くなっていることがわかる。
【0019】
次に、上記蛍光体について、蛍光体表面層のBa/Alモル比とVUV輝度維持率の関係を図2に示す。ここで、VUV輝度維持率は、ウシオ電機製146nmKrエキシマ光照射装置を用いて、ベーキング後の蛍光体に146nm真空紫外(VUV)線を21hr照射し、VUV照射後の蛍光体について146nm真空紫外線励起時の相対輝度を測定し、VUV照射後の測定値をVUV照射前の測定値で除した値の百分率を求めたものである。なお、蛍光体表面層のBa/Alモル比は上述した方法で測定する。この図から、VUV輝度維持率もBa/Alモル比の値が0.09未満で高くなっていることがわかる。
【0020】
本発明では、焼成温度を1300〜1600℃の範囲、MgF2量を蛍光体1モル当たり0.005〜0.05モルの範囲にすることにより、平均粒径が1.0〜4.0μmの蛍光体が得られ、蛍光体表面層のBa/Alモル比は0.09未満となり、ベーキング輝度維持率及びVUV輝度維持率が向上する。これに対し、MgF2量が蛍光体1モル当たり0.005モルより少ない場合、蛍光体表面層のBa/Alモル比は0.09以上となり、ベーキング輝度維持率及びVUV輝度維持率は低下し、結晶性も悪くなる。また、MgF2量が蛍光体1モル当たり0.05モルより多いと、蛍光体の色純度が悪化し、平均粒径も4.0μmより大きくなってしまう。
【0021】
一般に、蛍光体励起に使用される紫外線は主として、高圧水銀灯からの365nm、低圧水銀蒸気放電から高効率に得られる253.7nm、同放電から一部放射されている184.9nm、キセノン放電から放射される146nmの紫外線があるが、紫外線の波長が短いほど、透過力が小さく、逆に紫外線の波長が長いほど透過力が大きくなる。すなわち、184.9nm或いは146nm等の真空紫外線で励起されるのは蛍光体の比較的表面付近である。従って、真空紫外線励起による発光特性は蛍光体表面層の影響を受けやすく、上述したように蛍光体表面層の組成によってベーキング輝度維持率やVUV輝度維持率が変わるものと考えられる。本発明では、蛍光体表面層のBa/Alモル比を0.09未満とすることで、ベーキング輝度維持率とVUV輝度維持率を改善することができる。
【0022】
また、本発明の(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17蛍光体について、ZnOの添加量を変えて実施例1と同様に製造したときの、蛍光体中のZn含有量(ppm)とVUV輝度維持率の関係を図3に示す。VUV輝度維持率の測定は前述した方法で行う。この図から、VUV輝度維持率は、Zn含有量が10〜500ppmの範囲において高く、特に100〜350ppmの範囲で非常に高いことがわかる。また、後述するように、Zn/Alモル比は、蛍光体全体よりも蛍光体表面層の方が大きく、VUV輝度維持率は蛍光体表面層のZn濃度の影響を受けているものと考えられる。
【0023】
ここでは(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17蛍光体について説明したが、一般式が次式で表される真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体においても、蛍光体表面層のM/Alモル比とベーキング輝度維持率やVUV輝度維持率との関係は、同様な傾向を示し、蛍光体表面層のM/Alモル比が(1−m)a/10未満においてベーキング輝度維持率及びVUV輝度維持率が高くなる。また、蛍光体中にZn、In及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する場合も、上述したZn含有の場合と同様に、Zn、In及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の元素の含有量が100〜500ppmの範囲においてVUV輝度維持率が高くなる。
(M1−m,Eum)a(Mg1−n,Mnn)bAl10O15+a+b
(ただし、MはBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、0.9≦a≦1.1、0.9≦b≦1.1、0.02≦m≦0.3、0≦n≦0.03である。)
【0024】
【実施例】
[実施例1]
Znを140ppm含有する(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17蛍光体を次のようにして作製する。先ず、原料として下記のものを秤量し、
BaCO3・・・・・・・・・・・・・・・・0.9モル(177.6g)
MgCO3・・・・・・・・・・・・・・・・1.0モル(84.3g)
Al2O3 ・・・・・・・・・・・・・・・・5.0モル(509.8g)
Eu2O3 ・・・・・・・・・・・・・・・・0.05モル(17.6g)
ZnO ・・・・・・・・・・・・・・・・・0.02モル(1.6g)
さらにフラックスとしてMgF2を0.01モル(0.8g)添加して混合した原料混合物をアルミナ坩堝に充填し、3体積%の水素を含有する窒素雰囲気中、1400℃で7時間焼成する。焼成品を湿式で分散処理した後、分離乾燥して、Znを140ppm含有する平均粒径が1.9μmの本発明のユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体を得る。ここで、平均粒径は空気透過法によるフィッシャー・サブ・シーブ・サイザー(F.S.S.S)を用いて測定する。この蛍光体は146nm真空紫外線励起により青色に発光し、主発光ピーク波長は449nmである。
【0025】
[実施例2]
原料として、ZnOを使用しない以外は実施例1と同様に行い、Znを含有しない平均粒径が2.1μmの本発明の(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17蛍光体を得る。
【0026】
[実施例3]
原料として、BaCO30.9モル使用する代わりに、BaCO30.8モル(157.9g)、SrCO30.1モル(14.8g)使用する以外は実施例1と同様に行い、Znを140ppm含有する平均粒径が1.8μmの(Ba0.8,Sr0.1,Eu0.1)MgAl10O17蛍光体を得る。
【0027】
[実施例4]
原料として、BaCO30.9モル、Eu2O30.05モル使用する代わりに、BaCO30.92モル(181.5g)、Eu2O30.04モル(14.1g)使用する以外は実施例1と同様に行い、Znを140ppm含有する平均粒径が1.9μmの(Ba0.92,Eu0.08)MgAl10O17蛍光体を得る。
【0028】
[実施例5]
原料として、ZnO0.02モル使用する代わりに、SnO20.0053モル(0.80g)使用する以外は実施例1と同様に行い、Snを30ppm含有する平均粒径が2.0μmの(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17蛍光体を得る。
【0029】
[実施例6]
原料として、ZnO0.02モル使用する代わりに、In2O30.0029モル(0.81g)使用する以外は実施例1と同様に行い、Inを50ppm含有する平均粒径が2.0μmの(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17蛍光体を得る。
【0030】
[比較例1]
フラックスとしてMgF2を0.003モル(0.2g)添加し、1400℃で7時間焼成する以外は実施例2と同様に行い、Znを含有しない平均粒径が1.6μmの(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17蛍光体を得る。
【0031】
実施例1〜6及び比較例1で得られるアルミン酸塩蛍光体について、前述した方法でベーキング輝度維持率及びVUV輝度維持率を測定した結果を表1に示す。この表から、本発明の実施例1〜6の蛍光体は、比較例1の蛍光体に比べ、ベーキング輝度維持率及びVUV輝度維持率が高いことがわかる。また、Zn、In、Snの元素を含有させることにより、さらにVUV輝度維持率が改善されることがわかる。
【0032】
【表1】
【0033】
次に、実施例1、2及び比較例1の蛍光体について、それぞれオージェ電子分光法と化学分析により、蛍光体表面層のBa/Alモル比を求めた結果を表2に示す。ここで、オージェ電子分光法については前述した方法で測定する。また、化学分析は、各蛍光体1gに純水10mlと6M塩酸10mlを加え、30分加熱し、蛍光体表面を溶解した液をICP発光分光分析法により分析する。溶解した蛍光体の割合は全体の約0.25%である。比較のため、過塩素酸を用いて各蛍光体を全溶解したときの分析結果も合わせて示した。この表から、オージェ電子分光法と化学分析のいずれの測定結果においても、蛍光体表面層のBa/Alモル比は、比較例1の蛍光体が0.09以上であるのに対し、本発明の実施例1、2の蛍光体は0.09未満であって、本発明の蛍光体は蛍光体表面のBa濃度が蛍光体内部のBa濃度より小さいことがわかる。また、各蛍光体とも蛍光体表面層のMg/Alモル比は0.1未満であり、Eu/Alモル比は0.01より大きくなっており、蛍光体表面のMg濃度は蛍光体内部のMg濃度より小さく、蛍光体表面のEu濃度は蛍光体内部のEu濃度より大きいことがわかる。また、Znを含有する実施例1の蛍光体の場合、Zn/Alモル比は、蛍光体全体よりも蛍光体表面層の方が大きく、蛍光体の内部よりも表面でZn濃度が大きいことがわかる。
【0034】
【表2】
【0035】
実施例1、2及び比較例1の蛍光体について、酸の種類、溶解時間を変えて溶解した液をICP発光分光分析法により分析し、溶解した蛍光体の割合(%)に対してBa/Alモル比をプロットしたのが図4である。この図から、実施例と比較例の蛍光体を比較すると、蛍光体の表面でBa/Alモル比の差が大きくなっていることがわかる。
【0036】
また、Znを含有する実施例1の蛍光体について、同様に分析し、溶解した蛍光体の割合(%)に対してZn/Alモル比をプロットしたのが図5である。この図から、Zn/Alモル比は蛍光体の表面で大きくなっており、蛍光体表面層でZn濃度が大きいことがわかる。
【0037】
実施例1、2及び比較例1の蛍光体について、X線回折の測定結果を表3にまとめる。測定条件は、ゴニオメータRINT2500(Rigaku)、管球CuKα、電圧50kV、電流200mA、ステップ間隔0.008deg.、計数時間1sec.で行う。2θ=31.7°での(110)面の回折線及び2θ=35.6°での(114)面の回折線の回折線幅よりScherrerの式を用いて結晶子径を求める。表から明らかなように、本発明の実施例1、2で得られる蛍光体は比較例1の蛍光体に比べ、結晶子径が大きく、結晶性が優れていることがわかる。そして、本発明の蛍光体は(110)ベクトル方向の結晶子径が960Å以上で、且つ(114)ベクトル方向の結晶子径が770Å以上であることがわかる。
【0038】
【表3】
【0039】
【発明の効果】
以上に述べたように、一般式が次式で表される真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体において、蛍光体表面のM濃度を蛍光体内部のM濃度より小さくすることで、ベーキング輝度維持率及びVUV輝度維持率が改善された真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体を得ることができ、Zn、In及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有させることで、さらにVUV輝度維持率が改善された真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体を得ることができる。
(M1−m,Eum)a(Mg1−n,Mnn)bAl10O15+a+b
(ただし、MはBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、0.9≦a≦1.1、0.9≦b≦1.1、0.02≦m≦0.3、0≦n≦0.03である。)
また、本発明の蛍光体は結晶性が良く、ベーキングによる輝度劣化及び真空紫外線による輝度劣化が非常に少ないことから、プラズマディスプレイパネル、高負荷蛍光ランプ、希ガス放電ランプ等の発光デバイス(真空紫外線励起発光装置)に用いることによって、発光特性の優れた発光デバイスの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】蛍光体表面層のBa/Alモル比とベーキング輝度維持率の関係を示すグラフ図
【図2】蛍光体表面層のBa/Alモル比とVUV輝度維持率の関係を示すグラフ図
【図3】蛍光体中のZn含有量(ppm)とVUV輝度維持率の関係示すグラフ図
【図4】溶解した蛍光体の割合(%)とBa/Alモル比の関係を示すグラフ図
【図5】溶解した蛍光体の割合(%)とZn/Alモル比の関係を示すグラフ図
Claims (6)
- 一般式が次式で表される真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体において、蛍光体表面のM濃度が蛍光体内部のM濃度より小さく、且つ蛍光体表面のEu濃度が蛍光体内部のEu濃度より大きいことを特徴とする真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体。
(M1−m,Eum)a(Mg1−n,Mnn)bAl10O15+a+b
(ただし、MはBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、0.9≦a≦1.1、0.9≦b≦1.1、0.02≦m≦0.3、0≦n≦0.03である。) - 一般式が次式で表される真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体において、蛍光体表面層のM/Alモル比が(1−m)a/10未満であり、且つ蛍光体表面層のEu/Alモル比はma/10より大きいことを特徴とする請求項1に記載の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体。
(M1−m,Eum)a(Mg1−n,Mnn)bAl10O15+a+b
(ただし、MはBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、0.9≦a≦1.1、0.9≦b≦1.1、0.02≦m≦0.3、0≦n≦0.03である。) - (110)ベクトル方向の結晶子径が960Å以上で、且つ(114)ベクトル方向の結晶子径が770Å以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体。
- Zn、In及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の元素の含有量が10〜500ppmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体。
- 蛍光体の平均粒径が1.0〜4.0μmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至4に記載の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体。
- 請求項1乃至5に記載の真空紫外線励起アルミン酸塩蛍光体を用いた真空紫外線励起発光装置。
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