JP4227003B2 - 自動車の床下整流構造 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車の床下整流構造に係り、特に、自動車の床下を流れる空気流を整流して、ダウンフォースを効果的に得るようにした床下整流構造に関するものである。
従来から、自動車において、車の走行安定性を高め、また乗り心地を良くする等の観点から、タイヤと路面との間の摩擦力を高めるべく、車両には、各種のエアロパーツが取り付けられて、車両を地面に押し付ける力、所謂ダウンフォースが発生せしめられるようになっている。車両フロントのリップスポイラー、サイドスポイラー、ルーフスポイラー、リアスポイラー等と称されているエアスポイラーが、それである。
また、そのようなダウンフォースを効果的に生じさせるために、特許文献1〜3等においては、整流板乃至は整流部材を車両の底面(下面)に設け、車両床下を流れる空気流を整流して、車両底面の空気流速を向上させるようにした構造が、知られている。なお、そのような整流板乃至は整流部材は、従来、専らレーシング車両に用いられていたのであるが、近年においては、一般車両にも、用いられるようになっている。
しかしながら、従来からの自動車の床下整流構造においては、整流板乃至は整流部材は、自動車の前輪間や前輪よりも前方の車両床下の整流を目的としたり、また、後輪間よりも後方の車両床下に配設されているに過ぎないものであった。これは、自動車の床下に流れ込む空気流を、自動車の床下前方部分にて整流したり、車両床下から後方に空気流をスムーズに排出しようとするものであったのである。
このため、そのような床下整流構造にあっては、車両床下と地面との間で生み出される、整流板乃至は整流部材を、流れる空気が乗り越えることによって生じる床下空気流の流速増大効果を充分に利用しておらず、従って、車両床下において、ダウンフォースを効果的に生じさせるものではなかったのであり、それ故に、より強力なダウンフォースを発生せしめて、自動車の走行安定性を図り得る技術の開発が、望まれている。
特開平5−193528号公報 特開平7−52836号公報 特開2000−302062号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、より強力なダウンフォースを発生せしめて、車両の走行安定性を高め、また、乗り心地を有利に高めることの出来る自動車の床下整流構造を提供することにある。
そして、そのような課題を解決するために、本発明者が、種々検討を加えた結果、一対の整流部材の配設位置に工夫を加えることにより、ダウンフォースの作用点を車両重心近くに設定することが出来ると共に、車両の床下中央部において強力な負圧域が形成され得ることととなり、以て、車両の挙動をより安定化させ易い利点が容易に享受され得ることを見出し、本発明に到達したのである。
すなわち、本発明による自動車の床下整流構造は、車両床下の左右に互いに離間して個別に設けられて車両床下構成部材よりも下方に突出した一対の整流部材が、車体重心を通る垂線よりも車両前方でかつ前輪の車軸よりも車両後方の範囲内において車両の前後方向に延長するように設けられて、車両後方に近い後端部と後端部との間が車両前方に近い先端部と先端部との間よりも広く形成され、各々の整流部材は、車両前方から後方に向かって傾斜する車両前方側の面を備えたことを特徴とする。
前記一対の整流部材が、車体中心線に対して対称的に八の字状に配設されていること特徴とする。
また、車両床下の左右に互いに離間して個別に設けられて車両床下構成部材よりも下方に突出した一対の整流部材が、車体重心を通る垂線よりも車両前方でかつ前輪の車軸よりも車両後方の範囲において車両中心線に対して直角な方向になるように車幅方向に延長して設置され、各々の整流部材は、車両前方から後方に向かって傾斜する車両前方側の面を備えたことも特徴とする。
前記整流部材が、ゴム弾性体により構成されていることも特徴とする。
本発明の自動車の床下整流構造によれば、車体重心を通る垂線の周囲に負圧域を形成でき、車両の走行状態における前後のバランス等が良好となって、車両の走行安定性及び車両の操縦安定性を向上できる。
一対の整流部材が車体中心線に対して対称的に八の字状に配設された場合には、車両の走行安定性及び車両の操縦安定性を更に向上できる。
整流部材をゴム弾性体により構成したので、整流部材が障害物に衝突した場合の衝撃、及び、整流部材の破損を回避できる。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1は、自動車の底面の一例をモデル的に示しており、そこでは、本発明に従う自動車の床下整流構造において用いられる一対の整流部材の配設形態が明らかにされている。即ち、板状乃至はブロック状を呈する整流部材10の2つが、一対とされて用いられており、自動車の前輪12と後輪14との間において、前輪12側に近接して固設せしめられている。より具体的には、そのような一対の整流部材10,10は、車体重心16を通る垂線に近接して、それを挟むように両側に位置し、それぞれ、車幅方向に延びるように、車体中心線に対して対称的に、八の字状に配設されている。そして、ここでは、そのような一対の整流部材10,10は、その互いに接近した先端部が、図において左側となる車両前方側に位置するように、八の字状に配置されていると共に、それら一対の整流部材10,10の互いに接近した先端部間に、車体重心16を通る垂線が位置するように、配置せしめられているのである。
従って、このような一対の整流部材10,10の配設構造によれば、自動車の前進に伴って、それら一対の整流部材10,10の存在によって、車両床下を流れる空気流が整流されて、その流速が効果的に高められることによって、そのような一対の整流部材10,10の後方側に、強力な負圧域18が形成されるようになる。そして、この負圧域18は、車両の床下中央部に位置すると共に、車体重心16にも近接して形成されるものであるところから、そのような負圧域18によって生み出される強力なダウンフォースも、その作用点を車両重心近くに設定することが出来ることとなるのであり、これにより、より強力なダウンフォースとして作用させることが出来るのである。
しかも、そのような負圧域18を形成する一対の整流部材10,10は、それらの互いに接近した先端部間に、車体重心16を通る垂線が位置するように、配設せしめられているところから、負圧域18が有利に形成されることとなり、そしてそれによるダウンフォースも、より効果的に発揮せしめられ得るようになっている。
また、それら一対の整流部材10,10が、図示の如く、八の字状に配設されていることによって、強力な負圧域18は、車両が直進走行せしめられている場合のみならず、車両が左右に旋回したり、曲路走行したりする場合においても、効果的に形成され得ることとなることに加えて、それら一対の整流部材10,10に沿った車両側部に向かう空気流が、前輪12の後方に導かれるようになるところから、整流部材10,10の前方で生じる正圧を前輪12直後の負圧域に効果的に誘導することが出来ることとなるのであり、これによって、そのような車両前半部の正圧によるダウンフォースへの影響も、有利に回避乃至は抑制することが出来るのである。
さらに、図2及び図3には、そのような一対の整流部材10,10の更に具体的な配設形態が示されている。そして、図4及び図5には、そこで用いられる整流部材10の具体的構造が、明らかにされている。それらの図において、整流部材10は、厚板状乃至は矩形ブロック状の細長なゴム部材にて構成されている一方、金属板である取付板20に対して一体的に加硫接着されて、固着せしめられている。そして、この取付板20が、車両のサスペンションメンバ22とフロアメンバ24との間を橋絡するようにして取り付けられていることにより、一対の整流部材10,10が、車体重心16を通る垂線に近接して、その両側に位置する形態において、八の字状に配設せしめられているのであり、また、それによって、車両床下において下方に所定長さ垂下するように、固設せしめられている。
このように、所定大きさの取付板20を用い、これに整流部材10を固着せしめた状態において、車両床下に固設するようにすれば、車種によって形状がまちまちで凹凸が激しい床下に対する整流部材10の取付けが、有利に実現され得ることとなるのであり、また、そのような整流部材10が、ゴム弾性体であるゴム部材にて構成されているところから、車両床下において露呈される整流部材10に対して、飛び石等の障害物が衝突した場合にあっても、そのような整流部材10の破損が効果的に抑制乃至は回避され得ることとなるのであり、また、そのような物体の衝突による衝撃に対する回避も、有利に為され得ることとなる。
また、そのような取付板20上に固着して設けられた整流部材10は、車両の泥除けの如き変形の容易なシート形状にて構成されると、ダウンフォースが低下するようになるところから、それには、車両床下を通る空気流によって容易に変形しない程度の剛性乃至は形状保持性のある板状乃至は矩形ブロック形状を呈するものが、有利に用いられることとなる。
そして、そのような一対の整流部材10,10は、車両床下において下方に所定長さ垂下するようにして設けられるものであって、その垂下長さとしては、目的とするダウンフォースの程度や車両の最低地上高等を勘案して、適宜に設定されることとなるが、一般に、1cm〜4cm程度の長さにおいて垂下せしめることにより、充分なダウンフォースを得ることが出来る。また、そのように垂下される整流部材10は、車両床下において、他の車両床下配設(構成)部材よりも下方に突出して垂下せしめられていることが望ましく、それによって、より一層有効な負圧域18の形成、ひいては、より強力なダウンフォースを生み出すことが可能となるのである。
ところで、本発明に従う自動車の床下整流構造は、上述した例示の構造のみに限定して解釈されるものでは決してなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、各種の変形を加えることが可能であり、その別の例が、図6に示されている。なお、かかる図6においては、上述の実施形態と同一の構造とされた部材及び部位については、図中それぞれ、上述の実施形態と同一の符号を付与することにより、その詳細な説明は、省略した。
すなわち、図6においても、一対の整流部材10,10は、車体重心26を通る垂線に近接して、その両側に位置し、それぞれ、車幅方向に延びるように、車体中心線に対して対称的に、八の字状に配設されているのであるが、ここでは、一対の整流部材10,10は、その互いに近接した先端部よりも、車両後方側に、車体重心26を通る垂線が位置するように、より具体的には、かかる一対の整流部材10,10の後方側に形成される強力な負圧域18の領域内に、該車体重心26を通る垂線が位置するように、配置せしめられている。このように、一対の整流部材10,10を、車体重心26を通る垂線よりも車両前方側に位置せしめて、車体重心26を通る垂線を、負圧域18の領域内に入れると、負圧域18によって生み出される強力なダウンフォースの作用点を、より一層車両の重心近くに設定することが出来、これにて、車両の走行状態における前後の重量バランス等が良好となって、車両の走行安定性及び車両の操縦安定性を更に効果的に向上せしめることが可能となる。
なお、負圧域18は、一般に、整流部材10,10の先端部の直後からではなく、先端部より10〜20cm程度離れた後方部位から発生する。このため、上述せるように、整流部材10,10を、車体重心26を通る垂線よりも車両前方側に位置せしめて、車体重心26を通る垂線の周囲に負圧域18を形成するには、整流部材10,10の先端部を、車体重心26を通る垂線から前方に30〜130cm、より好ましくは70〜120cmのところに位置せしめることが、望ましい。更に、整流部材10,10の先端部は、前輪の車軸よりも後方に位置せしめられることが、望ましい。つまり、図6に示されるように、整流部材10,10の先端部は、前輪の車軸と車体重心26を通る垂線との間の領域(D1 )内に配置され、且つ、該整流部材10,10の先端部から車体重心26を通る垂線までの距離(D2 )が30〜130cm、より好ましくは70〜120cmとされることが、望ましいのである。
さらに、図7の(a)及び(b)には、本発明において有利に採用され得る、上記整流部材10とは異なる形状を有する整流部材の具体例が、それぞれ、示されている。これらの整流部材28,30にあっては、車両前方側の面が、車両前方から後方に向かって緩やかに傾斜しているところから、空気の流動性が向上し、流速が早くなるのである。
また、本発明は、図示しないその他の態様も採用され得るのであって、例えば、前記の具体例では、整流部材10が取付板20を介して車両床下に取り付けられるようになっているが、そのような整流部材(10)を、サスペンションメンバ等の車両床下配設部材に対して直接に取り付けられていても、何等差し支えなく、また、ボデー強化部品の如き車両床下配設部材と一体に構成して、一体成形品の如き形態において、配設することも可能である。そして、そのような整流部材(10)は、一般に、直線的な形態において配設されるのが望ましいが、また、有効な負圧域18を形成し得る限りにおいて、ある程度の湾曲配置も可能である。
また、整流部材10の材質としても、例示の如きゴム弾性体であることが、最も望ましいのであるが、それに限定されるものでは決してなく、その他、樹脂製やFRP製のものとしたり、金属製のものとすることも可能である。
加えて、一対の整流部材10,10は、例示の如き八の字形態において車幅方向に設けられる他、車両中心線に対して直角な方向になるように、車幅方向に延びるように設けることも、可能であり、所望とするダウンフォースが得られるように、或いは、所定の領域に負圧域18が形成され得るように、一対の整流部材10,10同士の為す角(ハの字状に開く角度)が適宜に設定され得る。また、同様に整流部材10,10の長さにあっても、所望とするダウンフォース等が得られるように、適宜に設定され得るのである。
さらに、車両の床下には、本発明に従う一対の整流部材10,10の配設に加えて、従来からの整流構造も併せて採用することが、車両全体のダウンフォースをより高める上において、有効である。従って、本発明にあっては、そのような一対の整流部材10,10の配設と共に、車両前部におけるリップスポイラーの配設、前輪12や後輪14の直前に整流部材を設け、車輪の回転による渦を抑制したり、更には、車両後部の床下において有効な負圧域が形成され得るように、適当な整流部材を設けて、床下の空気流を整流する等の構造も、適宜に組み合わされて、採用されることとなる。なお、リップスポイラー等、他の整流部材を組み合わせて用いる場合には、本発明に従って装着される整流部材10,10に空気が有効に導入され得るように、整流部材10,10間の離間距離が適宜に設定され得ることは、勿論、言うまでもないところである。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
本発明に従う床下整流構造を採用する自動車の底面の一例を示す平面説明図である。 本発明に従う一対の整流部材の具体的配設例を示す車両底面の拡大部分説明図である。 図2における一対の整流部材の配設形態において、車両の底面を車両の前方側から後方側に向かって見た状態の斜視説明図である。 図2及び図3に示される床下整流構造において用いられる一対の整流部材の平面説明図である。 図4におけるA−A断面説明図である。 本発明に従う床下整流構造を採用する自動車の底面の別の一例を示す平面説明図である。 (a)及び(b)は、それぞれ、本発明に用いられる整流部材の他の一例を示す断面説明図である。
符号の説明
10,28,30 整流部材
12 前輪
14 後輪
16,26 車体重心
18 負圧域
20 取付板
22 サスペンションメンバ
24 フロアメンバ

Claims (4)

  1. 車両床下の左右に互いに離間して個別に設けられて車両床下構成部材よりも下方に突出した一対の整流部材が、車体重心を通る垂線よりも車両前方でかつ前輪の車軸よりも車両後方の範囲内において車両の前後方向に延長するように設けられて、車両後方に近い後端部と後端部との間が車両前方に近い先端部と先端部との間よりも広く形成され、各々の整流部材は、車両前方から後方に向かって傾斜する車両前方側の面を備えたことを特徴とする自動車の床下整流構造。
  2. 前記一対の整流部材が、車体中心線に対して対称的に八の字状に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車の床下整流構造。
  3. 車両床下の左右に互いに離間して個別に設けられて車両床下構成部材よりも下方に突出した一対の整流部材が、車体重心を通る垂線よりも車両前方でかつ前輪の車軸よりも車両後方の範囲において車両中心線に対して直角な方向になるように車幅方向に延長して設置され、各々の整流部材は、車両前方から後方に向かって傾斜する車両前方側の面を備えたことを特徴とする自動車の床下整流構造。
  4. 前記整流部材が、ゴム弾性体により構成されていること特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の自動車の床下整流構造。
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