JP4103443B2 - 車両前部の下部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両前部の下部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両前部の下部には、走行時に下方を流れる空気を利用して車両の揚力値を低減させる構造が設けられており、例えば図5に示すような車両前部の下部構造が知られている。
【0003】
この構造は、車両100前部の下部の前端部を形成するフロントバンパー101と、フロントバンパー101の後側にクリップ等で取り付けられて下方に突出形成されたチンスポイラ102と、チンスポイラ102の後側に設けられて車両100前部内に形成されているエンジンルーム103の下側を覆い、エンジン等が地面や障害物等に干渉するのを防ぐアンダーカバー104とを備えている。
【0004】
そして走行時には、車両100前方からフロントバンパー101の下側に沿って流れてきた空気流110がチンスポイラ102に当たることにより下方へ導かれて後方へ流れる。
【0005】
このときにチンスポイラ102の後側の空間Eには、空気流110より剥離された分流111により空気流110よりも低圧の渦112が発生する。これにより車両100に対する圧力が下がる負圧領域を形成するので揚力値を低減させることが可能となっている。
【0006】
また、図6に示すような車両前部の下部構造も知られている。この構造は、車両200前部の下部の前端部を形成するフロントバンパー201と、フロントバンパー201の後側に取り付けられて車両200前部内に形成されているエンジンルーム202の下側を覆うアンダーカバー203とを備えている。
【0007】
そしてフロントバンパー201の下端部204には、後方に突出した凹部205が形成されており、凹部205の下端がシャープに形成されてエアスポイラ部206が形成されている。
【0008】
そして走行時には、車両200前方からフロントバンパー201の下側に沿って流れてきた空気流210がエアスポイラ部206に当たることにより下方へ導かれて後方へ流れる。
【0009】
このときにエアスポイラ部206より後側の空間Fには、空気流210より剥離された分流211により空気流210よりも低圧の渦212が発生する。これにより、車両200に対する圧力が下がる負圧領域を形成するので揚力値を低減させることが可能となっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5で示した構造においては、車両100の揚力値を低減させる部材であるチンスポイラ102はアンダーカバー104と別部材であることから部品点数が多くなりコスト高となっていた。
【0011】
一方、図6で示した構造においては、車両200の揚力値を低減させる部材である凹部205がフロントバンパー201に形成されていることから図5の構造に比べて部品点数が少なくコスト高になるのを抑えている。しかしながら、この凹部205はフロントバンパー201の下端部204に設けられていることから、フロントバンパー201におけるデザインが規制されるので、フロントバンパー201に対するデザインの自由度が得られなくなる。
【0012】
また、両構造においては、前記空気流110、210が、チンスポイラ102、エアスポイラ部206から離れるにつれてアンダーカバー104、203の下側に付着して渦112、212が徐々に消滅するので、車両100、200への圧力を下げる負圧領域に限度があり、揚力値を十分に低減させることが困難であった。
【0013】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、揚力値をさらに低減できるとともにコスト高を抑えてフロントバンパーに対するデザインの自由度を広げることができる車両前部の下部構造を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明の請求項1記載の車両前部の下部構造においては、車両前部内に形成されているエンジンルームの下側を覆うアンダーカバーが設けられ、このアンダーカバーには、車幅方向に延在するとともにフロントバンパーの下端よりも下方に突出した突出部と、この突出部の後方に連続して車幅方向に延在するとともに上方に向かって凹んだ凹部と、前記凹部よりも後方において後方に向かって下方に傾斜した流線型の凹部後方部と、が形成されたものとしている。
【0015】
かかる構成においては、走行時に突出部で下方へ導かれて後方に流れる空気流により凹部および凹部の後方に渦が発生するため、圧力が大きく低下した負圧領域を形成することができる。
【0016】
また、突出部で下方へ導かれた空気流が、凹部の負圧により上方に吸引されて下方に大きく離れることが防止でき、空気流を後方へスムーズに導くことができる。従って、走行時における空気抵抗値の悪化が防止できる。
【0017】
また、車両の揚力値を低減する突出部がアンダーカバーに形成されていることにより、アンダーカバーに揚力値を低減する別部材のチンスポイラを設けた場合と比べて部品点数が少なくなる。
【0018】
さらに、突出部はフロントバンパーに形成されていないので、フロントバンパーに対するデザインの自由度が拡大できる。
【0019】
また、請求項2記載の車両前部の下部構造においては、前記アンダーカバーの凹部後方部には、前記突出部よりも地面からの高さが低く設定された低位置部が形成されたものとしている。
【0020】
かかる構成においては、凹部後方部の下方を空気流がスムーズに流れていくとともに低位置部の下方では流路が狭くなっていることから流れが加速されて負圧領域が新たに形成されるため、負圧領域を広げることができる。
【0021】
また、請求項3記載の車両前部の下部構造においては、前記突出部は、その下端が前記凹部後方部よりも上側に位置するように前記アンダーカバーに形成されたものとしている。
【0022】
かかる構成においては、突出部の下端をアプローチアングルラインよりも上側に位置させることが可能となる。
【0023】
また、請求項4記載の車両前部の下部構造においては、前記アンダーカバーよりも後方へ設けられた車軸に前輪が支持され、前記突出部及び前記凹部は前記車軸よりも前方側に位置する前記アンダーカバーの前端部に形成されたものとしている。
【0024】
かかる構成においては、凹部後方部に低位置部を車両前後方向に長く形成することが可能になり、凹部から低位置部にかけての負圧領域を広げることができる。
【0025】
また、負圧領域を車軸から前方へ離れ部位に形成できるので、車軸を中心にして車両前方を下げることが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図にしたがって説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す車両1前部の中央部を断面で示した下部構造の模式図であり、図2は車両1前部の下部構造の概略平面図である。この構造は、車両1前部の下部の前端部を構成するフロントバンパー2と、フロントバンパー2の下縁にボルト3で取り付けられ、車両1前部内に形成されているエンジンルーム4の下側を覆うアンダーカバー5と、アンダーカバー5よりも後方の左右側に設けられた車軸61により支持された前輪6とを備えている。
【0028】
アンダーカバー5には、前輪6の車軸61より前方側に位置するアンダーカバー5の前端部51に、フロントバンパー2側で車幅方向Xに延在するとともに下方に向かって突出した突出部52と、突出部52の後方に連続して車幅方向Xに延在するとともに上方に向かって凹んだ凹部53とが形成されている。
【0029】
また、アンダーカバー5は、凹部53より後方に位置する凹部後方部54が後方に向かって下方に傾斜した流線型に形成されており、前記突出部52は、その下端521がこの凹部後方部54よりも上側に位置するようにアンダーカバー5に形成されている。
【0030】
また、凹部後方部54には低位置部55が形成されており、この低位置部55は地面Gからの高さ55hが、突出部52における地面Gからの高さ2hよりも低く設定されている。
【0031】
また、図3は、車両1前部の下側において前輪6の車軸61(図1参照)を原点として車軸61から前方側における圧力の変化を示した図である。図3において、横軸は前輪6の車軸61から前方側への各位置を示しており、縦軸が圧力係数を示している。
【0032】
そして、M線(実線)は本発明の構造による圧力の変化を示しており、N線(点線)は図5や図6で示したような本発明の突出部に相当するチンスポイラ102、エンスポイラ部206のみの従来構造(ここでは図5の構造)による圧力の変化を示している。
【0033】
かかる構成においては、走行時に車両1の前方からフロントバンパー2の下側に沿って流れてきた空気流10が、突出部52に当たることにより下方へ導かれて後方へ流れ、図3のP点からQ点の前側近傍にかけて示すように車両1に対する圧力が急激に下がっていく。
【0034】
そして、空気流10より剥離された分流11により、突出部52の後側の凹部53および凹部後方部54の下側空間Aにかけて空気流10よりも低圧の渦12、13が発生する。
【0035】
このときに、従来の構造にはない凹部53による渦12が発生し、凹部53に負圧領域を形成されることにより、図3のQ点前後近傍(凹部53から下側空間Aに対応した位置)で示すように、渦13とで従来よりも圧力が大きく低下した負圧領域を形成することができる。
【0036】
また、凹部後方部54は流線型に形成されていることから、凹部後方部54の下方を空気流10は後方に向かってスムーズに流れていくとともに、低位置部55では空気流10の流路が狭くなっていることから、低位置部55の後部の下方空間Bでは空気流10の流れが加速される。このため、下方空間Bに対応する図3のR点の前後近傍ではさらに圧力が低下した負圧領域が形成されるので負圧領域を広げることができる。
【0037】
さらに、突出部52及び凹部53をアンダーカバー5の前端部51に設けたことにより凹部後方部54に低位置部55を車両前後方向Yに長く形成することが可能になるので凹部53から低位置部55にかけての負圧領域を広げることができる。
【0038】
このように本実施の形態の構造では、車両1に対して従来よりも圧力が大きく低下した負圧領域が形成されるとともに負圧領域が広がるので、車両1の揚力値を従来の構造に比べてさらに低減できる。
【0039】
また、突出部52で下方へ導かれた空気流10が、凹部53の負圧により上方に吸引されて下方に大きく離れることが防止でき、空気流10を後方へスムーズに導くことができる。従って、走行時における空気抵抗値の悪化が防止できる。
【0040】
また、負圧領域を車軸61から前方へ離れ部位に形成できるので、車軸61を中心にして車両1前方を下げることが可能となる。この結果、走行時における空気抵抗の悪化を防止できるとともに、高速走行時における車両1の安定性および快適性を向上させることができる。
【0041】
また、車両1の揚力値を低減させる突出部52はアンダーカバー5に形成されているため、アンダーカバー5に揚力値を低減させる別部材のチンスポイラを設けた場合と比べて部品点数が少なくなる。よって、コスト高を抑えることができる。
【0042】
さらに、突出部52はフロントバンパー2に形成されていないので、フロントバンパー2に対するデザインの自由度を広げることができる。
【0043】
また突出部52は、その下端を凹部後方部54よりも上側に位置するようにアンダーカバー5に形成されていることから、アプローチアングルラインL(図1参照)よりも上側に位置させることが可能となる。よって、アプローチアングルラインを確保しつつ揚力値の低減化を図ることができる。
【0044】
また、第2の実施の形態として図4に示すように、アンダーカバー151に第一の実施の形態と同様に下方に向かって突出した突出部152と上方に向かって凹んだ凹部153を形成するとともに、突出部152の突出量152hよりも、凹部153の凹み量153hを大きく設定されている。
【0045】
これにより、走行時には、突出部152で下方へ導かれて後方に流れる空気流160により凹部153および凹部153の後側に渦154、155が発生する。このとき凹部153には第1の実施の形態の渦12よりも大きい渦154が発生するため、凹部153から凹部153の後側にかけて圧力がさらに大きく低下した負圧領域を形成することができる。よって、揚力値をさらに低減できる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1記載の車両前部の下部構造においては、走行時に突出部で下方へ導かれて後方に流れる空気流により凹部および凹部の後側に渦が発生するため、圧力が大きく低下した負圧領域を形成することができる。よって、揚力値をさらに低減できる。
【0047】
また、突出部で下方へ導かれた空気流が、凹部の負圧により上方に吸引されて下方に大きく離れることが防止でき、空気流を後方へスムーズに導くことができる。従って、走行時における空気抵抗値の悪化が防止できる。
【0048】
また、車両の揚力値を低減する突出部がアンダーカバーに形成されていることにより、アンダーカバーに揚力値を低減する別部材のチンスポイラを設けた場合と比べて部品点数が少なくなる。よって、コスト高を抑えることができる。
【0049】
さらに、突出部はフロントバンパーに形成されていないので、フロントバンパーに対するデザインの自由度が拡大できる。
【0050】
また、請求項2記載の車両前部の下部構造においては、凹部後方部の下方を空気流がスムーズに流れていくとともに低位置部の下方では流路が狭くなっていることから流れが加速されて負圧領域が新たに形成されるため、負圧領域を広げることができる。よって、揚力値をさらに低減できる。
【0051】
また、請求項3記載の車両前部の下部構造においては、突出部の下端をアプローチアングルラインよりも上側に位置させることが可能となる。よって、アプローチアングルラインを確保しつつ揚力値の低減化を図ることができる。
【0052】
また、請求項4記載の車両前部の下部構造においては、凹部後方部に低位置部を車両前後方向に長く形成することが可能になり、凹部から低位置部にかけての負圧領域を広げることができる。よって、揚力値をさらに低減できる。
【0053】
また、負圧領域を車軸から前方へ離れ部位に形成できるので、車軸を中心にして車両前方を下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す車両前部の下部構造の模式図である。
【図2】車両前部の下部構造の概略平面図である。
【図3】車両前部の下側において前輪の車軸から前方側の圧力変化を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す車両前部の下部構造の要部模式図である。
【図5】従来の車両前部の下部構造を示す模式図である。
【図6】図5とは別の従来の車両前部の下部構造を示す模式図である。
【符号の説明】
1 車両
2 フロントバンパー
4 エンジンルーム
5 アンダーカバー
6 前輪
51 前端部
52 突出部
53 凹部
54 凹部後方部
55 低位置部
61 車軸
151 アンダーカバー
152 突出部
153 凹部
X 車幅方向
Claims (4)
- 車両前部内に形成されているエンジンルームの下側を覆うアンダーカバーが設けられ、
このアンダーカバーには、車幅方向に延在するとともにフロントバンパーの下端よりも下方に突出した突出部と、この突出部の後方に連続して車幅方向に延在するとともに上方に向かって凹んだ凹部と、前記凹部より後方において後方に向かって下方に傾斜した流線型の凹部後方部と、が形成されたことを特徴とする車両前部の下部構造。 - 前記アンダーカバーの凹部後方部には、前記突出部よりも地面からの高さが低く設定された低位置部が形成されたことを特徴とする請求項1記載の車両前部の下部構造。
- 前記突出部は、その下端が前記凹部後方部よりも上側に位置するように前記アンダーカバーに形成されたことを特徴とする請求項2記載の車両前部の下部構造。
- 前記アンダーカバーよりも後方へ設けられた車軸に前輪が支持され、前記突出部及び前記凹部は前記車軸よりも前方側に位置する前記アンダーカバーの前端部に形成されたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の車両前部の下部構造。
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