JP4225970B2 - フォトクロミック性を有する積層体の製造方法 - Google Patents

フォトクロミック性を有する積層体の製造方法 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック性を有する高分子膜を有する積層体を製造する方法に関するものであり、より詳細には、フォトクロミック眼鏡レンズ等のフォトクロミック性を有する光学物品として使用される積層体の製造方法、並びに該製造方法によって得られる光学物品として好適な積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミズムとは、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻る可逆作用のことであり、様々な用途に応用されている。
【0003】
例えば、眼鏡レンズの分野においてもフォトクロミズムが応用されており、上記のような性質を有する各種フォトクロミック化合物を添加した重合性単量体を硬化させることによりフォトクロミック性を有するプラスチックレンズが得られている。このような用途に好適に使用できるフォトクロミック化合物としては、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等が見出されている。
【0004】
フォトクロミック性を有するプラスチックレンズの製法としては、
(イ)レンズ(フォトクロミック性を有していない)の表面にフォトクロミック化合物を含浸させる方法(含浸法);
(ロ)モノマーにフォトクロミック化合物を溶解させ、該モノマーを重合させることにより直接フォトクロミックレンズを得る方法(練り混み法);及び
(ハ)レンズ表面にフォトクロミック性を有する層を設ける方法(コーティング法);
が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記(イ)の含浸法または上記(ロ)の練り込み法によって良好なフォトクロ特性を得るためには、レンズ基材をフォトクロミック性が良好になるよう設計する必要があり、使用可能なレンズ基材が制限されている。例えば、フォトクロミック化合物分子の運動を高分子中でも動きやすくする、又は高分子中の自由空間を広げてフォトクロミック化合物分子の動きをしやすくするという設計指針に基づいて、レンズ基材のガラス転移温度(Tg)を下げるように工夫されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、レンズ基材形成用のモノマーとして、特定の長鎖のアルキレングリコールジメタクリレートと3個以上のラジカル重合性基を有する多官能メタクリレートとを組み合わせて使用することが開示されている。この方法によれば、発色濃度や退色速度が比較的優れたフォトクロミックレンズを得ることができる。しかしながら、この方法では、フォトクロミック特性やフォトクロミック化合物の基材に対する含浸性を向上させるために基材のTgを下げている。この結果、基材の柔軟性があまりにも高くなり、基材の硬度の低下、耐熱性の低下がおこり、光学歪みが多く存在するなどといった新たな問題を生じている。このような問題は、基材となるプラスチックレンズを得るためのモノマー系やフォトクロミック材料を工夫することにより、解決可能であるが(例えば特許文献2)、(イ)又は(ロ)の方法を採用する限り、基材について何らかの制約を受けることは避けられない。
【0007】
これに対し、上記(ハ)のコーティング法では、基材の制約を受けることなく、一般的に使用されているレンズ等の基材にフォトクロミック性を付与することができる。しかしながら、コーティング法においては、基材の物性に悪影響を与えないような薄く且つ均一な厚みを有しているとともに、十分な表面硬度を有し、しかも良好なフォトクロミック特性を有するコーティング膜を形成する技術は未だ確立されていない。
【0008】
例えば、特許文献3には、ウレタンオリゴマー中にフォトクロミック化合物を溶解させたコーティング液をレンズ表面に塗布、硬化する手法が提案されている。しかしながら、ウレタンオリゴマーを硬化させた樹脂は架橋密度が低いため、フォトクロミック特性の温度依存性が大きくなる上、フォトクロミックコート層上にハードコートを施す際に、ハードコート液中にフォトクロミック化合物が溶出するなどといった欠点を有する。
【0009】
また、特許文献4には、単官能、2官能および多官能ラジカル重合性単量体を含有する重合性組成物に、フォトクロミック化合物を溶解せしめ、エラストマーガスケットまたはスペーサーで保持されているプラスチックレンズとガラスモールド間の隙間に流し込み、重合させることで一般レンズの凸面にフォトクロミック性を有する高分子膜が積層されたフォトクロミックレンズを得る方法が提案されている。しかしながら、この方法では、得られるフォトクロミック性高分子膜(コーティング膜)の厚さが200〜500μmと厚くなり、該高分子膜の強度特性が、プラスチックレンズに反映されてしまう。即ち、このような高分子膜が形成されていない一般レンズの強度と比較すると、このフォトクロミックレンズの強度は低い。また、この方法では、プラスチックレンズとガラスモールド間の空隙の幅を小さく且つ一定にすることが困難であるため、膜厚が薄く且つ均一な厚みの高分子膜を形成することが困難であり、この傾向は、レンズの面が複雑な形状を有するものである時には特に顕著である。
【0010】
さらに特許文献5には、2種類以上の2官能(メタ)アクリルモノマーのみの組み合わせからなる重合性組成物に、5〜10重量部のフォトクロミック化合物を溶解させ、それをレンズ凸面にスピンコートで塗布し、塗布後のレンズを窒素雰囲気下にて置換して光重合することで、一般レンズの凸面に厚さ約20μmのフォトクロミック性を有する高分子膜が積層されたフォトクロミックレンズを得る方法が提案されている。この方法によれば、基材物性に悪影響を与えないような厚さ(20μm程度)で十分に濃く発色するフォトクロミックコーティング膜をレンズ表面に形成することができる。しかしながら、上記特許文献では、得られたコーティング膜の厚さの均一性や均質性、得られたレンズの光学特性などについて検討されていない。
【0011】
一般に、光重合開始剤とフォトクロミック化合物は共に紫外線で励起されるため、これらが共存する条件下で光照射を行うと、光重合開始剤の分解が起こりにくく重合が開始され難い傾向がある。そこで、本発明者らは、フォトクロミック化合物及び光重合開始剤を含む重合硬化性組成物を用い、コート膜を形成させる際の条件がコート膜に及ぼす影響について検討を行った。その結果、このようなコーティング法においては、以下のような問題があることが判明した。
(i)重合に長時間を要すると、特にコート膜を形成する基材の面が平面ではなく、眼鏡レンズのように曲面を有する場合にはコーティング剤の垂れが起こってしまい均一な厚さの膜が得られない。
(ii)重合が十分に進まない状況で長時間紫外線を照射し続けると、窒素置換を行ったとしてもその雰囲気中に微量含まれる酸素の影響によりラジカル反応が停止されてしまい、特に表面近傍に未重合層が形成され、十分な表面硬度を有する膜が得られない。
(iii)重合が十分に進まない状況での長時間の紫外線照射は、フォトクロミック化合物の光酸化劣化を引き起こす。
(iv)光照射を短時間にして重合を促進するために強度の強い紫外線を含む活性エネルギー線を照射した場合には、光源からの発熱の影響と赤外線の影響を受け、硬化の際にレンズの表面温度が高くなってしまい(例えば120℃以上、さらには200℃以上)、耐熱性の低いプラスチックレンズ基材を用いた場合には、レンズ自体が熱変形を起こす。
(v)コーティング膜の表面と内部で重合速度差による重合収縮の差が生じ、均一な高分子膜が得られにくい。
【0012】
特許文献1
米国特許第5739243号
特許文献2
WO01/05854号
特許文献3
WO98/37115号
特許文献4
米国特許第5914174号
特許文献5
WO01/02449号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、コーティング法はどのような基材についてもフォトクロミック性を付与できる優れた方法であるが、曲面を有する基材上に、基材の特性(特に機械的特性及び光学的特性)を損なわないような薄く且つ均一な厚みを有し、均質で高い表面硬度を有し、しかも優れたフォトクロミック特性を有するコーティング膜を形成するという点で未だ満足し得ない。そこで、本発明は、上記のようなコーティング膜を形成することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、曲面を有する基材上にフォトクロミック化合物を高濃度で含有する光重合硬化性組成物を塗布し、基材温度を特定の温度以下に保ったまま、特定の相対強度分布(各波長成分の相対的な強度分布)を有する活性エネルギー線を照射してこれを硬化させた場合には、従来技術では達成できない高い均一性を有するフォトクロミックコーティング膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明によれば、
(A)ラジカル重合性単量体、(B)フォトクロミック化合物及び(C)光重合開始剤成分からなり、該フォトクロミック化合物(B)を0.2〜20重量%の量で含み、且つ光重合開始剤成分(C)としてリン系光重合開始剤をラジカル重合性単量体(A)100重量部当り、0.01〜10重量部含有している光重合硬化性組成物と、曲面を有する基材とを用意し、
当該基材の曲面上に、フォトクロミック化合物及びリン系光重合開始剤を含有する光重合硬化性組成物を塗布し、
前記基材を100℃以下に保持しながら、400nm以上500nm以下の波長成分が25〜75%、300nm以上400nm未満の波長成分が25〜75%、200nm以上300nm未満の波長成分が0〜5%である相対強度分布を有する活性エネルギー線を前記光重合硬化性組成物に照射して硬化させること、
を特徴とする積層体の製造方法が提供される。
【0016】
上記本発明の製造方法では、前記光重合硬化性組成物の硬化を、モールドを使用せずに、気体雰囲気中(即ち、開放系)で行うことができ、生産性を高めることができる。モールドを使用する場合には、専用のモールドが必要となるばかりでなく、1〜100μm、特に1〜50μmの薄い膜を精度よく形成することは困難である。
【0017】
また、本発明においては、フォトクロミック化合物を含有する光重合硬化性組成物中には、光重合開始剤としてリン系光重合開始剤が配合されており、この結果として、相対強度が上記のような分布を示すように調整された活性エネルギー線を照射して硬化を行うことにより、該硬化性組成物中に多量に含まれるフォトクロミック化合物の光劣化を有効に抑制しながら短時間で硬化を完結させ、均一な高分子膜を基材の曲面上に形成することが可能となるのである。即ち、リン系光重合開始剤は、一般的に紫外線領域ばかりでなく、400nm以上の可視光領域の波長の活性エネルギー線にも反応して開裂し、ラジカル重合反応を開始させる。従って、光重合硬化性組成物中に高濃度のフォトクロミック化合物が配合されている場合においても、上記のような相対強度の分布調整によってフォトクロミック化合物の励起波長である紫外線領域の相対強度が低下している活性エネルギー線の照射により、フォトクロミック化合物の影響を受けることなく、ラジカル重合反応が開始し、該光重合硬化性組成物のコーティング層の内部まで迅速に重合硬化させることができ、しかもフォトクロミック化合物の光劣化を有効に回避することができるのである。また、リン系光重合開始剤は、自身のフォトブリーチング効果に基づき、開裂後は、可視光を吸収しなくなるため、コーティング層の深さ方向に対しても順次開始反応を起こすことが可能となり、コーティング層の内部まで均一に硬化を進行させることが可能となる。
【0018】
尚、活性エネルギー線の相対強度とは、200〜500nm領域の活性エネルギー線の全面積強度を100%とした場合の、各波長領域の活性エネルギー線の面積強度の比を示すものである。活性エネルギー線の相対強度分布の調整は、例えば、紫外線を含む活性エネルギー線を300nm未満の波長成分を減少させるフィルター(例えば硬質ソーダガラス)を通過させることにより容易に行うことができる。
【0019】
このように、本発明の製造方法によれば、フォトクロミック化合物の光劣化を有効に回避できるとともに、迅速に且つ内部まで均一に硬化を行うことができるため、基材に塗布された硬化性組成物の垂れなどを有効に回避することができ、シワなどがなく、厚みが均一で且つ薄く、しかも高濃度のフォトクロミック化合物を含有するフォトクロミック高分子膜を基材表面に形成することができる。
【0020】
また、本発明においては、リン系光重合開始剤と共に、リン系光重合開始剤以外の光重合開始剤を併用することが好ましい。即ち、上述したリン系光重合開始剤は、内部硬化性の重合開始剤として働くが、その他の光重合開始剤は、一般に、紫外線により開始反応を起こすため、硬化性組成物のコーティング層の表面近傍では、酸素の影響を受けにくく、表面硬化性の重合開始剤として働く。例えば、酸素が僅かに(数十〜数百ppm)含まれるような雰囲気下で硬化を行う場合でも、リン系光重合開始剤とその他の光重合開始剤との併用により、表面から内部まで均一に硬化したフォトクロミック高分子膜を形成させることができる。換言すると、重合硬化が行われる雰囲気中の酸素濃度の許容範囲が拡大し、この結果、窒素置換などの雰囲気調整をマイルドな条件で行うことができ、短時間で重合硬化を完結させ、基材に塗布された硬化性組成物の垂れなどを有効に回避してフォトクロミック高分子膜の厚みムラやシワの発生を防止する上で極めて有利となり、しかも該高分子膜の表面硬度を高め、且つ該高分子膜と基材やハードコート層との密着性を高める上でも有利となる。
【0021】
なお、本発明において、リン系光重合開始剤を使用せず、その他の光重合開始剤のみを用いた場合には、硬化性組成物中に高濃度のフォトクロミック化合物が存在すると、そのコーティング層内部では硬化はほとんど生ぜず、内部まで硬化させるためには、その他の光重合開始剤を大量に使用しなければならず、この結果、フォトクロミック化合物の劣化を生じてしまうこととなる。
【0022】
本発明においては、また、基材の温度を100℃以下に保持しながら硬化が行われるため、基材の熱変形を有効に防止し且つ均一な厚みのフォトクロミック高分子膜を形成することができる。例えば、その曲面の曲率中心での厚みが2mm以下の薄肉の基材(例えば薄肉レンズ)を用いた場合にも、変形を生じることなく、フォトクロミック高分子膜を形成することができる。尚、基材の温度を100℃以下に保持するためには、活性エネルギー線の相対強度分布を調整した後、更に、熱線カットフィルターを通過させることが好適である。
【0023】
本発明においては、上記のようなフォトクロミック性積層体の製造に用いる光重合硬化性組成物は、光重合開始剤成分(C)として、リン系光重合開始剤以外の光重合開始剤を、ラジカル重合性単量体(A)100重量部当り0.01〜10重量部を含有していることが好適である。
【0024】
本発明によれば、上記のような製造方法によって、曲面を有する基材と、該基材の曲面上に形成されたフォトクロミック化合物を0.2〜20重量%含有する厚さ1〜100μmの高分子膜とからなり、該高分子膜層が積層される前の前記基材の曲面での球面屈折力(以下、単に、基材の球面屈折率と呼ぶ)と、該積層体の高分子膜層が形成する曲面での球面屈折力(以下、単に、積層体の球面屈折率と呼ぶ)との差が±0.5ジオプトリー未満であり、且つ前記高分子膜層の周縁部を除く領域の最大膜厚(wmax)及び最小膜厚(wmin)と平均膜厚(wav)との差(Δw=wmax−wav or wav−wmin)が何れも平均膜厚の7%以下(Δw/wav≦0.07)であることを特徴とする積層体を得ることができる。
【0025】
即ち、本発明の製造方法によれば、短時間で硬化が行われ、硬化中の液垂れや不均一な重合が有効に抑制されているため、均一な厚みを有し且つ均質のフォトクロミックコーティング膜を基材の曲面上に形成することができる。従って、基材の球面屈折率と積層体の球面屈折力との差は、±0.5ジオプトリー未満となる。このことは、基材が有している高い光学特性が殆ど損なわれることなく維持され、しかも、高分子膜は、曲面上に形成されているにもかかわらず、その全体にわたって均一な厚みを有していることを意味する。そして、その膜厚の均一性の程度も平均膜厚±7%以下(Δw/wav≦0.07)ときわめて高い。平面上に均一な厚みの高分子膜を形成することは比較的容易であるが、従来公知のコーティング剤を用いた製膜技術では、曲面上にこのような均一でしかも薄い厚みの高分子膜を形成することはできない。
【0026】
尚、上記の球面屈折力とは、眼鏡レンズの光学特性評価の指標として用いられる眼鏡レンズの一方の面の屈折力(例えばAutomation & Robotics社製 反射型曲率測定機 FOCOVISION SR-1により測定される)を意味する。例えば、空気中(屈折率1とする)におかれたレンズ(基材)について、その光学中心部分での球面屈折力Fは、下記式で表わされる。
F=(n−1)/r1
式中、r1はレンズの一方の面の曲率半径(m)である、
nはレンズの屈折率を示す。
【0027】
この球面屈折力Fは凸面では正、凹面では負の値で、単位はジオプトリーである。従って、積層体の球面、屈折力は、形成された高分子膜の曲面の曲率半径を測定することにより、上記式から算出することができる。ただし、この高分子膜の厚みはレンズに比して薄く、無視できるため、屈折率nはレンズの屈折率を用いる。
【0028】
又、球面屈折力Fは、レンズ等の基材の曲面が完全に球面でないことに起因して誤差を含んでいるため、実際の基材の曲面の球面形状からのズレを考慮した「平均面屈折力」で表しても良い。この平均面屈折力は、下記式:
(球面屈折力+円柱屈折力)×1/2
で算出され、球面屈折力及び円柱屈折力の何れも、上記の反射型曲率測定機で測定することができる。本発明によって得られる上記積層体の平均面屈折力での許容ジオプトリー値は、球面屈折力の許容ジオプトリー値と同等(±0.5ジオプトリー未満)である。
なお、基材表面に形成された高分子膜に目視で観察できるような皺が存在する場合には、球面屈折力の測定は不能となる。すなわち、表面屈折力が測定できるということは、表面に目視で観測できる皺が存在しないことも意味する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1は、本発明の製造方法において、基材の曲面上に例えば10μm以上の膜厚のフォトクロミックコート膜を形成する場合に好適な光重合性組成物の塗布方法を説明するための図である。また、図2は、図1の部分拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(基材)
本発明において用いるフォトクロミック高分子膜を積層する基材は、曲面を有するものであり、この曲面上に当該高分子膜が積層される。かかる基材における曲面は、一定の曲率を有しているという意味であり、その曲率等は特に限定されないが、好適な曲率を球面曲率1/Rで表せば、1/R=1/0.05〜1/1(Rの単位:m)である。このような曲面は、基材の一方の面に形成されていてもよいし、基材の両面に形成されていてもよい。また、基材の両面が曲面となっている場合には、その両方の曲面のそれぞれに高分子膜を積層することもできる。このような曲面を有する基材の具体例としては、両面が同じ曲率をもったレンズ、両凸型レンズ、平凸型レンズ、凸メニスカスレンズ、両凹型レンズ及び凹メニスカスレンズなどを挙げることができ、特に、現在眼鏡レンズとして多く使われている、両面が同じ曲率をもったレンズ、凸メニスカスレンズ及び凹メニスカスレンズ等を好適に用いることができる。また、本発明の製造方法では、基材の熱変形を有効に防止することができるため、曲面の曲率中心での厚みが2mm以下の薄肉の基材を用いることが最も効果的である。
【0031】
上記基材を形成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、チオエポキシ系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ四フッ化エチレン、シリコーン樹脂などのプラスチック樹脂;ステンレススチール(SUS)、アルミニウム、銅、鉄などの金属類;スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴムなどのゴム類;半導体、木材、無機ガラス、石英ガラス、紙類、セラミックス等、公知の材質をなんら制限なく使用できる。しかしながら、フォトクロミック性を付与するという観点からすれば、透明性を有する基材を用いるのが好適である。例えば、フォトクロミックレンズ等の光学物品を製造する場合、上記基材としては、通常レンズとして使用されているガラス又は樹脂製のものが好適に使用できる。一般に、プラスチック眼鏡レンズは曲面を有しており、近年の光学設計の進歩によりその凸面は複雑な曲面形状をしているものが多いが、本発明においてはこのような眼鏡レンズをなんら問題なく、基材として使用することができる。
【0032】
(光重合硬化性組成物)
本発明において、上記基材の曲面上にフォトクロミック高分子膜を形成するために使用する光重合硬化性組成物は、(A)ラジカル重合性単量体、(B)フォトクロミック化合物及び(C)光重合開始剤成分からなる。
【0033】
(A)ラジカル重合性単量体:
ラジカル重合性単量体(A)は特に限定されず、例えば(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基のごときラジカル重合性基を有する公知の化合物が何ら制限なく使用できる。これらのなかでも、入手のしやすさ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合性基として有する化合物が好ましい。
【0034】
また、硬化物の耐溶剤性、硬度、耐熱性等の化学的・機械的特性、あるいは発色濃度や退色速度等のフォトクロミック特性を良好なものとするため、ラジカル重合性単量体としては、高硬度モノマーと低硬度モノマーとを併用することが好ましい。
【0035】
尚、高硬度モノマーとは、該モノマーの単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上を示すものであり、低硬度モノマーとは、該モノマーの単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40以下を示すものである。また、Lスケールロックウェル硬度とは、JIS−B7726に従って測定され、各モノマーの単独重合体についてLスケールロックウェル硬度を測定することにより、高硬度モノマーであるか或いは低硬度モノマーであるかを簡単に判定することができる。具体的には、モノマーを単独で重合させて厚さ2mmの硬化体を得、これを25℃の室内で1日保持した後にロックウェル硬度計を用いて、Lスケールロックウェル硬度を測定することにより容易に確認することができる。ただし、上記Lスケールロックウェル硬度の測定に供する重合体においては、仕込んだ単量体が有する重合性基の90%以上が重合している必要がある。重合性基の90%以上が重合していれば、通常硬化体のLスケールロックウェル硬度は、ほぼ一定の値として測定される。
【0036】
前記高硬度モノマーは、硬化物(高分子膜)の耐溶剤性、硬度、耐熱性等を向上させる効果を有する。これらの効果をより効果的なものとするためには、単独重合体でのLスケールロックウェル硬度が65〜130を示す高硬度モノマーが好ましい。
【0037】
このような高硬度モノマーは、分子中に、好ましくは2〜15個、より好ましくは2〜6個のラジカル重合性基を有する化合物であり、その具体例として、下記式(1)〜(5)で示される化合物を挙げることができる。なお、これら式で示される化合物において、主鎖中の繰返し単位の採り得る繰返し数に幅がある場合には、異なる繰返し数を持つ複数の分子の混合物を高硬度モノマーとして使用することができる。
【0038】
【化1】
Figure 0004225970
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは3〜6価の有機残基であり、fは0〜3の整数であり、f’は0〜3の整数であり、gは3〜6の整数である。)
【0039】
【化2】
Figure 0004225970
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Bは3価の有機残基であり、Dは2価の有機残基であり、hは1〜10の整数である。)
【0040】
【化3】
Figure 0004225970
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはヒドロキシル基であり、Eは環を有する2価の有機残基であり、iおよびjは、i+jの平均値が0〜6となる正の整数または0である。)
【0041】
【化4】
Figure 0004225970
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Fは側鎖を有していてもよい主鎖の炭素数2〜9のアルキレン基である。)
【0042】
【化5】
Figure 0004225970
(式中、Rは水素原子、メチル基またはエチル基であり、kは1〜6の整数である。)
【0043】
上記式(1)〜(5)において、R、R、RおよびRはいずれも水素原子またはメチル基であることから明らかな通り、これらの式で示される化合物は、2〜6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。なお、1分子中にこれら基が複数ある場合、当該複数の基は互いに異なっていてもよいが、入手の容易さから同種であるのが好適である(この点は後述するR11およびR14においても同じである)。
【0044】
上記式(1)において、Rは水素原子またはメチル基、エチル基であり、また、Rは3〜6価の有機残基である。当該有機残基は特に限定されるものではなく、また、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素−炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上を示すためには、当該Rは、好ましくは炭素数1〜30の有機残基であり、より好ましくはエーテル結合および/またはウレタン結合を含んでいてもよい炭素数1〜15の有機残基である。
【0045】
また、式(1)において、fおよびf’は各々独立に0〜3の整数である。f或いはf’が3より大きい場合には、これらモノマーの単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60より小さくなる傾向がある。またLスケールロックウェル硬度を60以上とするためには、fおよびf’の合計は0〜3であることが最も好ましい。
【0046】
式(1)で示される高硬度モノマーの具体的としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等を挙げることができる。
【0047】
式(2)において、Bは3価の有機残基であり、Dは2価の有機残基である。BおよびDは特に限定されるものではなく、また、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素−炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上であるためには、Bは、炭素数3〜10の直鎖または分岐状の炭化水素から誘導される有機残基であることが好ましく、Dは、炭素数1〜10の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素、または炭素数6〜10の芳香族炭化水素から誘導される有機残基であることが好ましい。
さらに、式(2)の化合物において、単独重合体のLスケールロックウェル硬度を60以上とするために、hは1〜10の整数、特に1〜6の整数であることが好ましい。
【0048】
このような式(2)で示される高硬度モノマーの具体例としては、分子量が2,500〜3,500の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB80等)、分子量が6,000〜8,000の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB450等)、分子量が45,000〜55,000の6官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB1830等)、分子量が10,000の4官能ポリエステルオリゴマー(第一工業製薬社、GX8488B等)等が挙げられる。
【0049】
前記式(3)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基またはヒドロキシル基であり、Eは、環を有する2価の有機残基である。この有機残基Eは、環を有するものであれば特に限定されるものではなく、また、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素−炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。当該有機残基Eが有している環としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環あるいは以下に示す環等が例示される。
【0050】
【化6】
Figure 0004225970
【0051】
本発明において、有機残基Eが有する環は、ベンゼン環であることが好ましく、例えば、好適な有機残基Eは、下記式で表わされる。
【化7】
Figure 0004225970
(Gは、酸素原子、硫黄原子、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−および−C(CH)(C)−から選ばれるいずれかの基であり、RおよびR10は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子であり、lおよびl’は各々独立に0〜4の整数である。)
【0052】
本発明において、最も好適な有機残基Eは、下記式で表される。
【化8】
Figure 0004225970
【0053】
式(3)において、iおよびjは、i+jの平均値が0〜6となる正の整数または0である。なお、式(3)で示される化合物は、iおよびjの双方が0である場合を除き、通常iおよびjの異なる複数の化合物の混合物として得られる。これら複数の化合物の単離は困難であるため、iおよびjはi+jの平均値で示される。i+jの平均値は2〜6であることがより好ましい。
【0054】
式(3)で示される化合物としては、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等が具体的に例示される。
【0055】
式(4)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Fは側鎖を有していてもよい主鎖炭素数が2〜9のアルキレン基である。主鎖の炭素数が2〜9のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、ノニリレン基等が例示される。鎖長が炭素数9を超えると単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上とならない傾向がある。
式(4)で示される化合物の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,9−ノニレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジアクリレート等を挙げることができる。
【0056】
式(5)において、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、kは1〜6の整数である。kが6を超えると単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上とならない傾向があり、好ましくはkが3または4である。
式(5)で示される化合物の具体例としては、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0057】
単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上を示すこれらのラジカル重合性単量体(高硬度モノマー)は、単独で用いても、数種以上混合して用いてもよい。
なお、上記式(1)〜(5)で示される化合物でも、置換基の組合せによっては単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60未満のものがあるが、その場合には、これらの化合物は、後述する低硬度モノマーまたは中硬度モノマーに分類される。
また上記式(1)〜(5)示される化合物以外の高硬度モノマーもあり、その代表例としては、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0058】
上述した高硬度モノマーと併用される低硬度モノマー(単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40以下を示すもの)は、硬化体(高分子膜)を強靭なものとし、また高分子膜中に存在するフォトクロミック化合物の退色速度を向上させる効果を有する。
【0059】
このような低硬度モノマーとしては、下記式(6)、(7)で示される2官能モノマーや、下記式(8)、(9)で表わされる単官能モノマーを例示することができる。
【0060】
【化9】
Figure 0004225970
(式中、R11は水素原子またはメチル基であり、R12およびR13は各々独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、Zは酸素原子または硫黄原子であり、mは、R11が水素原子の場合は1〜70の整数であり、R11がメチル基の場合は7〜70の整数であり、m’は0〜70の整数である。)
【0061】
【化10】
Figure 0004225970
(式中、R14は水素原子またはメチル基であり、R15およびR16は各々独立に水素原子、メチル基、エチル基またはヒドロキシル基であり、Iは環を有する2価の有機残基であり、i’およびj’は、i’+j’の平均値が8〜40となる整数である。)
【0062】
【化11】
Figure 0004225970
(式中、R17は水素原子またはメチル基であり、R18およびR19は各々独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、R20は水素原子、炭素数1〜25のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、あるいは炭素数2〜25のアシル基[(メタ)アクリロイル基を除く]であり、Zは酸素原子または硫黄原子であり、m”は、R17が水素原子の場合は1〜70の整数であり、R17がメチル基の場合は4〜70の整数であり、m'''は0〜70の整数である。)
【0063】
【化12】
Figure 0004225970
(式中、R21は水素原子またはメチル基であり、R22は、R21が水素原子の場合には炭素数1〜20のアルキル基であり、R21がメチル基の場合には炭素数8〜40のアルキル基である。)
【0064】
上記式(6)〜(9)において、R11、R14、R17およびR21は、水素原子またはメチル基である。すなわち、低硬度モノマーは、重合性基として、通常2個以下の(メタ)アクリロイルオキシ基または(メタ)アクリロイルチオ基を有する。
【0065】
また、式(6)において、R12およびR13は、各々独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、Zは酸素原子または硫黄原子である。
式(6)の化合物においては、R11が水素原子の場合、すなわち重合性基としてアクリロイルオキシ基またはアクリロイルチオ基を有する場合には、mは7〜70の整数であり、一方、R13がメチル基である場合、すなわち重合性基としてメタクリロイルオキシ基またはメタクリロイルチオ基を有する場合には、mは1〜70の整数である。また、m’は0〜70の整数である。
式(6)で示される低硬度モノマーの具体例としては、トリアルキレングリコールジアクリレート、テトラアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0066】
式(7)において、R14は水素原子、メチル基またはエチル基であり、Iは環を有する2価の有機残基である。この有機残基Iとしては、前記式(3)中の環を有する2価の有機残基Eと同様のものを挙げることができる。また、式(7)におけるi’およびj’は、i’+j’の平均値が8〜40、好ましくは9〜30となる整数である。当該i’およびj’も、前記した式(3)におけるiおよびjと同様の理由で通常は平均値で示される。
式(7)で示される低硬度モノマーの具体例としては、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン等を挙げることができる。
【0067】
式(8)において、R17は水素原子またはメチル基であり、R18およびR19は各々独立に水素原子、メチル基またはエチル基である。R20は水素原子、炭素数1〜25のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、あるいは炭素数2〜25のアクリロイル基以外のアシル基である。
炭素数1〜25のアルキル基またはアルケニル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ノニル基等が例示される。また、これらアルキル基またはアルケニル基は直鎖状でも分岐状でもよく、さらには、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アリール基、エポキシ基等の置換基を有していてもよい。
炭素数1〜25のアルコキシアルキル基としては、メトキシブチル基、エトキシブチル基、ブトキシブチル基、メトキシノニル基等が例示される。
炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、アントラニル基、オクチルフェニル基等が例示される。(メタ)アクリロイル基以外のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、オレイル基等が例示される。
また式(8)の化合物において、R17が水素原子の場合、すなわちアクリロイルオキシ基またはアクリロイルチオ基を重合性基として有する場合には、m”は、1〜70の整数であり、R17がメチル基の場合、すなわちメタクリロイルオキシ基またはメタクリロイルチオ基を重合性基として有する場合にはm”は4〜70の整数であり、またm'''は0〜70の整数である。
【0068】
式(8)で示される低硬度モノマーの具体例としては、平均分子量526のポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量360のポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量1,000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量375のポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量430のポリプロピレンメタアクリレート、平均分子量622のポリプロピレンメタアクリレート、平均分子量620のメチルエーテルポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量566のポリテトラメチレングリコールメタアクリレート、平均分子量2,034のオクチルフェニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量610のノニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量640のメチルエーテルポリエチレンチオグリコールメタクリレート、平均分子量498のパーフルオロヘプチルエチレングリコールメタクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
式(9)において、R21は水素原子またはメチル基であり、R21が水素原子の場合には、R22は炭素数1〜20のアルキル基であり、R21がメチル基の場合には、R22は炭素数8〜40のアルキル基である。
上記のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、エポキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0070】
式(9)で示される低硬度モノマーの具体例としては、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート等を挙げることができる。
本発明においては、上述した単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40以下を示す低硬度モノマーは、1種単独で前述した高硬度モノマーと併用することもできるし、2種以上を組み合わせて高硬度モノマーと併用することもできる。また、上記式(6)〜(9)で表される低硬度モノマーの中でも、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量1,000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、トリアルキレングリコールジアクリレート、テトラアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレートが特に好ましい。
尚、上記式(6)〜(9)で示される化合物の中には、置換基の組合せによっては単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40以上を示すものがあるが、そのような化合物は、前述した高硬度モノマーまたは後述する中硬度モノマーに分類される。
【0071】
本発明で用いる光重合硬化性組成物においては、ラジカル重合性単量体として、上記高硬度モノマーや低硬度モノマー以外のモノマー、すなわち、単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40より高く且つ60未満の中硬度モノマーを、高硬度モノマー及び低硬度モノマーと併用することもできる。このような中硬度モノマーとしては、例えば、平均分子量650のポリテトラメチレングリコールジメタアクリレート、平均分子量1,400のポリテトラメチレングリコールジメタアクリレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィドのごとき2官能(メタ)アクリレート;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、アリルジグリコールカーボネートのごとき多価アリル化合物;1,2−ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2−アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4−ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼンのごとき多価チオアクリル酸および多価チオメタクリル酸エステル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸のごとき不飽和カルボン酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸ビフェニルのごときアクリル酸およびメタクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニルのごときフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレートのごときチオアクリル酸およびチオメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルピロリドンのごときビニル化合物;オレイルメタクリレート、ネロールメタクリレート、ゲラニオールメタクリレート、リナロールメタクリレート、ファルネソールメタクリレートのごとき分子中に不飽和結合を有する炭化水素鎖の炭素数が6〜25の(メタ)アクリレートなどのラジカル重合性単官能単量体等が挙げられる。
【0072】
本発明においては、硬化体(フォトクロミック性高分子膜)の耐溶剤性や硬度、耐熱性等の特性、あるいは発色濃度や退色速度等のフォトクロミック特性のバランスを良好なものとするため、ラジカル重合性単量体(A)中、低硬度モノマーは5〜70重量%、高硬度モノマーは5〜95重量%であることが好ましい。さらに、配合される高硬度モノマーとして、ラジカル重合性基を3つ以上有する単量体が、ラジカル重合性単量体中少なくとも5重量%以上配合されていることが特に好ましい。
【0073】
また、用いるラジカル重合性単量体(A)中には、上記のごとき硬度により分類されたモノマーとは別に、分子中に少なくとも一つのエポキシ基と少なくとも一つのラジカル重合性基を有するラジカル重合性単量体(以下、単にエポキシ系モノマーと称す場合がある)が、さらに配合されていることが好ましい。このようなエポキシ系モノマーを使用することにより、フォトクロミック化合物の耐久性をより向上させることができ、さらに基材とフォトクロミック高分子膜(コーティング層)との密着性を向上させることができる。尚、このエポキシ系モノマーは、その構造により、単独硬化体のLスケールロック硬度が60以上を示すものもあれば、40以下を示すものもある。単独重合体の硬度で分類すると、硬度に応じ高硬度モノマー、低硬度モノマー、中硬度モノマーのいずれかに分類されることになる。
【0074】
このようなエポキシ系モノマーとしては、公知の化合物を使用できるが、ラジカル重合性基として(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が好ましく、その具体例としては、下記式(10)で表されるものを例示することができる。
【0075】
【化13】
Figure 0004225970
上記式(10)において、R23およびR26は、各々独立に水素原子またはメチル基であり、R24およびR25は、各々独立に炭素数1〜4のアルキレン基、または、下記式
【化14】
Figure 0004225970
(G’は、酸素原子、硫黄原子、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、
−CH=CH−、−C(CH−および−C(CH)(C)−から選ば れるいずれかの基であり、
27およびR28は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子
であり、
l”およびl'''は各々独立に0〜4の整数である。)
で示される基であり、sおよびtは各々独立に0〜20の整数である。
【0076】
式(10)において、R24およびR25で示される炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基等が挙げられる。またこれらアルキレン基は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等を置換基として有していてもよい。
【0077】
またR24或いはR25が前記式(10a)で表される基の場合において、G’は、酸素原子、硫黄原子、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、或いは−C(CH)(C)−であり、式(10a)において、R27およびR28は各々独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のごとき炭素数1〜4のアルキル基、または塩素原子、臭素原子のごときハロゲン原子であり、ℓ”およびℓ'''は各々独立に0〜4の整数である。
式(10a)で表わされる基としては、下記式
【化15】
Figure 0004225970
で示される基であることが最も好ましい。
【0078】
上記式(10)で示されるエポキシ系モノマーの具体例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、4−グリシジルオキシメタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、平均分子量540のグリシジルオキシポリエチレングリコールメタアクリレート等が挙げられる。これらの中でもグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよび平均分子量540のグリシジルオキシポリエチレングリコールメタアクリレートが特に好ましい。
【0079】
これらエポキシ系モノマーの配合割合は、ラジカル重合性単量体(A)中、0.01〜30重量%、特に0.1〜20重量%であるのが好適である。
【0080】
また、フォトクロミック性高分子膜のハードコート性の向上或いは眼鏡レンズ等の基材に対する密着性を高いものとするために、シラノール基または加水分解によりシラノール基を生成する基を有するラジカル重合性単量体(以下、シリルモノマーと称す場合がある)、或いはイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(以下、イソシアネートモノマーと称す場合がある)を、前述した高硬度モノマーや低硬度モノマーと共に使用することができる。
【0081】
上記のシリルモノマーとしては、シラノール基(≡Si−OH)または加水分解によりシラノール基を生成する基と、ラジカル重合性基を有する化合物であれば、公知の化合物を何ら制限することなく使用できる。
【0082】
かかるシリルモノマーにおいて、加水分解によりシラノール基を生成する基の具体例としては、アルコキシシリル基(≡Si−O−R;Rはアルキル基)、アリールオキシシリル基(≡Si−O−Ar;Arは置換されていてもよいアリール基)、ハロゲン化シリル基(≡Si−X;Xはハロゲン原子)、シリルオキシシリル基(ジシロキサン結合;≡Si−O−Si≡)等が挙げられる。シラノール基の生成のしやすさ、合成や保存の容易さ、反応によりケイ素原子から脱離した基が硬化体の物性に与える影響の少なさ等から、アルコキシシリル基またはシリルオキシシリル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルコキシル基を含むアルコキシシリル基であることがより好ましく、メトキシシリル基またはエトキシシリル基であることが最も好ましい。
【0083】
シリルモノマーが有するラジカル重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基;(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基のごとき(メタ)アクリロイル基の誘導体基;ビニル基、アリル基、スチリル基のごとき公知のラジカル重合性基;が挙げられる。なお、ラジカル重合性基がビニル基、アリル基またはスチリル基である場合には、当該ラジカル重合性基は置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基のごとき炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基並びに水酸基が例示される。また、ラジカル重合性基が(メタ)アクリロイルアミノ基である場合には、当該基のアミド窒素原子には、(メタ)アクリロイル基;前記シラノール基;加水分解によりシラノール基を生成する基;置換または非置換のアルキル基、アリール基、アリル基のごとき各種有機基;が結合していてもよい。
これらラジカル重合性基のなかでも、入手の容易さや重合性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0084】
本発明において、好適なシリルモノマーとしては、下記式(11)〜(13)で表されるものを例示することができる。
【0085】
【化16】
Figure 0004225970
(式中、R29は、アルキル基またはアリール基であり、R30およびR31は、各々独立にアルキル基、アリール基またはアシル基であり、Aは2〜4価の有機残基であり、Yはラジカル重合性基であり、aは1〜3、bは0〜2、cは0〜2、dは1〜3、eは1〜3の整数である。ただしa+b+c+d=4である。)
【0086】
【化17】
Figure 0004225970
(式中、R30およびR31は、各々独立にアルキル基、アリール基またはアシル基であり、Aは2〜4価の有機残基であり、Yはラジカル重合性基であり、bは0〜2、cは0〜2、dは1〜3、eは1〜3の整数である。ただしb+c+d=3である。)
【0087】
【化18】
Figure 0004225970
(式中、R29は、アルキル基またはアリール基であり、R30およびR31は、各々独立にアルキル基、アリール基またはアシル基であり、R32は、ビニル基であり、aは1〜3、bは0〜2、cは0〜2、dは1〜3の整数である。ただしa+b+c+d=4である。)
【0088】
式(11)および(13)において、R29は、アルキル基またはアリール基であり、加水分解によるシラノール基の発生のしやすさおよび保存安定性の点から主鎖の炭素数が1〜10の未置換もしくは置換アルキル基、または環の炭素数が6〜10の未置換もしくは置換アリール基であることが好ましい。このアルキル基またはアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基のごとき炭素数1〜10のアルキル基;クロロメチル基、トリフルオロメチル基のごとき炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基のごとき炭素数1〜10のアルコキシル基;アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基のごとき炭素数2〜10のアシル基;アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基のごとき炭素数1〜10のアルキル置換アミノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子のごときハロゲン原子;ヒドロキシル基;カルボキシル基;メルカプト基;シアノ基;ニトロ基等が挙げられる。本発明において、基R29として好適なものは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、クロロメチル基、フェニル基、トルイル基、キシリル基であり、加水分解によるシラノール基の発生のしやすさおよび保存安定性の点から、最も好ましいものは、炭素数1〜4のアルキル基、特にメチル基またはエチル基である。
【0089】
式(11)〜(13)において、R30およびR31は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはアシル基である。アルキル基およびアリール基としては、前記R29で説明したものと同一の基が例示され、好ましいアルキル基およびアリール基もR29と同様である。またアシル基は、脂肪族系のものでも芳香族系のものでもよく、特に炭素数が2〜10のもの、例えばアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が好適である。
【0090】
また、式(11)および(12)において、Aは2〜4価の有機残基であり、この有機残基Aの構造は特に限定されるものではなく、側鎖や置換基を有していてもよい。またその構造中に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホニル結合等の炭素−炭素結合以外の結合を有していてもよく、さらにはオキソ基(ケトン炭素)が含まれていてもよい。有機残基Aが有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基等が例示される。
【0091】
式(11)及び式(12)における有機残基Aは、1〜30、特に1〜10の炭素原子を有するものが好ましい。好適な有機残基Aの具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基のごとき炭素数1〜10のアルキレン基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基、ブチレンジオキシ基のごとき炭素数1〜10のアルキレンジオキシ基、あるいは下記式で表されるものを例示することができる。
【0092】
【化19】
Figure 0004225970
(上記式中、nは1〜5の整数であり、そしてn’およびn”は各々1〜3の整数である。)
【0093】
また、上記で例示した好適な有機残基Aは、前述した置換基を有していてもよい。
式(11)および(12)において、Yは、ラジカル重合性基であり、前述した通り、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基のごとき(メタ)アクリロイル基の誘導体基、置換または非置換のビニル基、置換または非置換のアリル基、置換または非置換のスチリル基等が例示される。好ましくは、(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基である。
【0094】
前記式(11)〜(13)で表されるシリルモノマーの具体例としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、4−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、3−(3−アミノプロポキシ)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、ジエトキシビニルシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、ドコセニルトリエトキシシラン、o−(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシエトキシトリメチルシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、1,3―ビス(メタクリロキシ)−2−トリメチルシロキシプロパン、テトラキス(2−メタクリロキシエトキシ)シラン、トリビニルエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、o−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ビニロキシトリメチルシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシランビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等を挙げることができ、これらのシリルモノマーは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0095】
本発明においては、上述したシリルモノマーの中でも式(11)で表されるシリルモノマーが好ましく、その中でも下記式(14)として表されるシリルモノマーが特に好適に使用できる。
【0096】
【化20】
Figure 0004225970
(式中、R33は水素原子またはメチル基であり、R34は炭素数1〜10のアルキレン基であり、R35は炭素数1〜4のアルコキシル基であり、R36は炭素数1〜4のアルキル基であり、a’は1〜3、b’は0〜2の整数である。ただしa’+b’=3である。)
【0097】
上記式(14)中のR33における炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基等が挙げられる。またR35における炭素数1〜4のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が例示される。R36における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示される。
【0098】
このような式(14)で表されるシリルモノマーの具体例としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシランを挙げることができる。
【0099】
本発明においては、上記シリルモノマーに替えて或いは上記シリルモノマーと共に、イソシアネートモノマーを用いることにより、基材およびハードコート材料との密着性を高くすることが可能である。
このようなイソシアネートモノマーとしては、イソシアネート基(−NCO)とラジカル重合性基を有する化合物であれば公知のものが何ら制限なく使用でき、例えば下記式(15)または(16)で示されるものを例示することができる。
【0100】
【化21】
Figure 0004225970
(式中、R37は水素原子またはメチル基であり、R38はアルキレン基である。)
【0101】
【化22】
Figure 0004225970
(式中、R39は水素原子またはメチル基であり、そしてR40はアルキレン基である。)
【0102】
上記式(15)および(16)において、基R38、R40は共にアルキレン基を示し、特に炭素数1〜10のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基等が好適である。
【0103】
本発明において、好適に使用できるイソシアネートモノマーの具体例としては、2−イソシアナトエトキシメタアクリレート、4−(2−イソシアナトイソプロピル)スチレンが挙げることができ、このようなイソシアネートモノマーは、1種単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0104】
上述したシリルモノマーまたはイソシアネートモノマーの配合量は特に制限されるものではないが、眼鏡レンズ等の基材や高分子膜上に形成されるハードコート層との密着性を良好なものとするためには、該シリルモノマーまたはイソシアネートモノマーの配合量は、両者の合計量が、全ラジカル重合性単量体の0.5〜20重量%、特に1〜10重量%の範囲であることが好ましい。その使用量があまり少ないと、基材やハードコート層に対する高分子膜の密着性を高めることが困難となり、また、あまり多量に使用されると、高分子膜上にハードコート層を形成したときの耐擦傷性が低下したり、或いは発色濃度や退色速度等の高分子膜のフォトクロミック特性が低下したりするおそれがあるからである。
【0105】
尚、本発明において、上述したシリルモノマーまたはイソシアネートモノマーをラジカル重合性単量体として使用する場合には、触媒としてアミン化合物を光重合硬化性組成物中に配合することが好ましい。アミン化合物を配合することにより、当該組成物の硬化体よりなる高分子膜と基材との密着性、さらには当該高分子膜とハードコート層との密着性を大きく向上させることができる。
【0106】
このようなアミン化合物としては、前記したシリルモノマーまたはイソシアネートモノマーの縮合もしくは付加触媒として機能する塩基性の化合物であれば、公知のアミン化合物が何ら制限なく使用できる。なお、例えば下記式;
【化23】
Figure 0004225970
(上記式中、R41は水素原子およびアルキル基であり、R42、R43、R44およびR45はそれぞれ同一もしくは異なるアルキル基である)
で表される基のみをアミノ基として有するヒンダードアミン化合物は、上記触媒作用を有しないので、ここでいうアミン化合物からは除外される。
【0107】
本発明において好適に使用できるアミン化合物の具体例としては、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、ジアザビシクロオクタンのごとき非重合性低分子系アミン化合物、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタアクリレートのごとき重合性基を有するアミン化合物、n−(ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシフェニル−2−ピペリジノエトキシシラン、N,N−ジエチルアミノメチルトリメチルシラン、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシランのごときシリル基を有するアミン化合物を挙げることでき、これらのアミン化合物は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0108】
上記のアミン化合物の中でも、特に好適に使用されるものは、密着性向上の観点より、水酸基を有するものか、あるいはラジカル重合性基として(メタ)アクリロイルオキシ基を有するもの、あるいは加水分解によりシラノール基を生成可能な基を有するアミン化合物が好ましい。このようなアミン化合物は、例えば下記式(17)で表わされる。
【0109】
【化24】
Figure 0004225970
(式中、R46は水素原子あるいは炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であり、R47は水酸基、(メタ)アクリロイルオキシ基または加水分解によりシラノール基を生成可能な基であり、R48は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、(メタ)アクリロイルオキシ基または加水分解によりシラノール基を生成可能な基であり、A’は炭素数2〜6のアルキレン基、A”はR48が水素原子またはアルキル基の場合には炭素数1〜6のアルキレン基、R48が水酸基、(メタ)アクリロイルオキシ基または加水分解によりシラノール基を生成可能な基である場合には炭素数2〜6のアルキレン基を示す。)
【0110】
上記のアミン化合物は、塩基性が強く、密着性向上効果が最も高く、本発明には特に好適である。尚、R47およびR48における加水分解によりシラノール基を生成可能な基とは、前述したシリルモノマーで定義した基と同義である。
【0111】
上述したアミン化合物の配合量は、全ラジカル重合性単量体(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは1〜10重量部の範囲である。0.01重量部を下回るとき、あるいは20重量部を超えるときは、フォトクロミック高分子膜と基材との密着性の向上効果が得られ難い。さらに20重量部を超えるときは、フォトクロミック高分子膜の黄変を生じやすくなり好ましくない。
【0112】
(B)フォトクロミック化合物
本発明においては、基材の曲面上に形成される高分子膜にフォトクロミック性を付与するために、光重合性硬化性組成物中に0.2〜20重量%の量でフォトクロミック化合物を配合することが必要である。即ち、光重合性硬化性組成物を硬化させることにより形成される高分子膜の厚みは、眼鏡レンズ等の基材の物性(特にロックウェル硬度等の機械的物性や光学特性)が損なわれないように、例えば1〜100μmと極めて薄く設定される。高分子膜の膜厚が厚いと、当該高分子膜によって基材の物性が損なわれてしまうからである。本発明では、この高分子膜中のフォトクロミック化合物の濃度が0.2〜20重量%と多いので、膜厚が薄くても十分なフォトクロミック性を(基材に)付与することが可能となる。フォトクロミック化合物の濃度を20重量%以上とした場合には、フォトクロミック化合物の凝集或いはブリードアウトを招き、得られる積層体(高分子膜)のフォトクロミック特性が低下する。また、0.2重量%未満の濃度とした場合には、膜厚100μmにおいても十分なフォトクロミック特性が得られない。
【0113】
尚、上記フォトクロミック化合物の濃度は、基材の曲面上に形成する高分子膜の厚みに応じて、上記範囲内(0.2〜20重量%)で適宜決定することができる。この点については、後述する。
【0114】
本発明において、フォトクロミック化合物としては、公知のフォトクロミック化合物、例えばフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等を何ら制限されることなく使用することができる。このようなフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物は、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書などに記載されている。また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として、特開2001-114775号、特開2001-031670号、特開2001-011067号、特開2001-011066号、特開2000-347346号、特開2000-344762号、特開2000-344761号、特開2000-327676号、特開2000-327675号、特開2000-256347号、特開2000-229976号、特開2000-229975号、特開2000-229974号、特開2000-229973号、特開2000-229972号、特開2000-219687号、特開2000-219686号、特開2000-219685号、特開平11-322739号、特開平11-286484号、特開平11-279171号、特開平10-298176号、特開平09-218301号、特開平09-124645号、特開平08-295690号、特開平08-176139号、特開平08-157467号等に記載された化合物も好適に使用することができる。
【0115】
また、本発明においては、上述したフォトクロミック化合物の中でも、耐久性、発色濃度、退色速度等のフォトクロミック特性が優れているという点で、クロメン化合物が特に好適である。特に下記式(18)で表わされるクロメン化合物は、フォトクロミック特性が特に良好である。
【0116】
【化25】
Figure 0004225970
式中、下記式(19);
【化26】
Figure 0004225970
で示される基は、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは非置換の不飽和複素環基であり、
51、R52およびR53は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、置換もしくは非置換のアリール基、ハロゲン原子、アラルキル基、ヒドロキシル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、窒素原子をヘテロ原子として有する置換もしくは非置換の複素環基(但し、該窒素原子がピラン環もしくは前記式(19)で示される基の環に結合する)、または該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であり、
oは0〜6の整数であり、
49およびR50は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、アルキル基、下記式(20)または下記式(21);
【化27】
Figure 0004225970
(式中、R54は、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘ
テロアリール基であり、R55は、水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子
であり、pは1〜3の整数である、)
【化28】
Figure 0004225970
(式中、R56は、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘ
テロアリール基であり、p’は1〜3の整数である、)
で示される基であり、R49とR50とは一緒になって、脂肪族炭化水素環もしくは芳香族炭化水素環を構成していてもよい。
【0117】
なお、上記式(20)、上記式(21)、R49およびR50において、置換アリール基、置換ヘテロアリール基における置換基としては、基R51〜R52と同義の基が適用される。
【0118】
本発明においては、上記式(18)で示されるクロメン化合物のなかでも、耐久性、発色濃度、退色速度等のフォトクロミック特性の点から、次の式(22)〜(27)で示される化合物が特に好適である。
【0119】
【化29】
Figure 0004225970
式中、R57、R58は、それぞれ前記式(18)におけるR49およびR50と同義
であり、R59、R60は、前記式(18)におけるR53と同義であり、q
およびq’はそれぞれ1〜2の整数である。
【0120】
【化30】
Figure 0004225970
式中、R61、R62は、前記式(18)におけるR49およびR50と同義であり、
63、R64は、前記式(18)におけるR53と同義であり、Lは、下記式、
【化31】
Figure 0004225970
(上記式中、Pは、酸素原子または硫黄原子であり、R57は、炭素数1〜6のア ルキレン基であり、s’、s”およびs'''は、いずれも1〜4の整数である。)
で示されるいずれかの基であり、
rおよびr’は各々独立に1または2である。
【0121】
【化32】
Figure 0004225970
式中、R66、R67は、式(18)におけるR49およびR50と同義であり、
68、R69およびR70は、式(18)におけるR53と同義であり、
vは1又は2である。
【0122】
【化33】
Figure 0004225970
式中、R71、R72は、式(18)におけるR49およびR50と同義であり、
73およびR74は、式(18)におけるR53と同義であり、
wおよびw’は、各々独立に1または2である。
【0123】
【化34】
Figure 0004225970
式中、R75、R76は、式(18)におけるR49およびR50と同義であり、
77、R78、R79およびR80は、式(18)におけるR53と同義であ
り、
xおよびx’は、各々独立に1または2である。
【0124】
【化35】
Figure 0004225970
式中、R81、R82は、前記式(18)におけるR49およびR50と同義であり、
83、R84およびR85は、前記式(18)におけるR53と同義であり、
環Qは、脂肪族炭化水素環であり、y、y’およびy”は各々独立に1または2
である。
【0125】
本発明において、上記式(22)〜(27)で示されるクロメン化合物の中でも、下記構造のクロメン化合物が最も好適である。
【0126】
【化36】
Figure 0004225970
【0127】
【化37】
Figure 0004225970
【0128】
【化38】
Figure 0004225970
【0129】
【化39】
Figure 0004225970
【0130】
【化40】
Figure 0004225970
【0131】
【化41】
Figure 0004225970
【0132】
【化42】
Figure 0004225970
【0133】
【化43】
Figure 0004225970
【0134】
【化44】
Figure 0004225970
【0135】
【化45】
Figure 0004225970
【0136】
【化46】
Figure 0004225970
【0137】
【化47】
Figure 0004225970
【0138】
【化48】
Figure 0004225970
【0139】
上述したフォトクロミック化合物は、適切な発色色調を発現させるため、複数の種類のものを適宜混合して使用することができる。
また、本発明で用いる光重合硬化性組成物中に配合されるフォトクロミック化合物は、高濃度に溶解させる観点より、前述したラジカル重合性単量体(A)に対して溶解性の良いものを選択する必要がある。しかし、フォトクロミック化合物の分子構造によって溶解性が異なるため、溶解性の点で、好適なフォトクロミック化合物を一概に特定することは困難である。一般に、ラジカル重合性単量体に対するフォトクロミック化合物の溶解度は、約1%程度であるのが通常であるため、フォトクロミック化合物を更に高濃度に溶解させるためには、何らかの溶解操作が必要となる。
【0140】
本発明において、光重合硬化性組成物(ラジカル重合性単量体)中に高濃度にフォトクロミック化合物を溶解させる方法としては、例えば、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒にフォトクロミック化合物を高濃度に溶解させた後に、ラジカル重合性単量体と混合する方法;ジクロロメタン、THF等の低沸点の溶媒に、一旦高濃度にフォトクロミック化合物を溶解した後に重合性単量体と混合し、この後に低沸点溶媒を留去する方法等を採用することができる。
【0141】
また、高濃度のフォトクロミック化合物を含有する硬化性組成物を得るために、特定のクロメン化合物と芳香族化合物とを構成成分とする分子化合物を、フォトクロミック化合物として用いることもできる。ここで、分子化合物とは、同種または異種の安定な分子が一定の割合で直接に結合してできる化合物であり、分子化合物を構成する各構成分子間の結合は緩やかで各構成分子の元の(本来の)構造や結合の性質はあまり変化せず、また比較的容易にもとの構成分子に解離できる化合物を意味する。通常、分子化合物は、各構成分子が一定の割合で配列した固体であり、分子化合物とその構成分子とを比較すると、融点、沸点および溶解性などの物性値において、両者は異なった値を示す。
【0142】
本発明で使用できる上記分子化合物は、特定のクロメン化合物と芳香族化合物とを構成成分とする分子化合物であれば特に限定されず、数種のクロメン化合物と数種の芳香族化合物であってもよい。また、各構成分子どうしの結合はいかなる結合様式であってもよく、構成分子の組成比も制限されない。組成比については、用いるクロメン化合物と芳香族化合物との組合せ毎に特定の比をとるが、フォトクロミック化合物となり得る分子化合物(フォトクロミック性分子化合物)においては、通常、クロメン化合物:芳香族化合物=5:1〜1:10(モル比)の範囲である。
【0143】
本発明のフォトクロミック化合物となる得る分子化合物の構成分子の一つであるクロメン化合物は、芳香族化合物と分子化合物を形成し得るものであれば特に限定されないが、芳香族化合物と分子化合物を形成しやすいという観点から、置換もしくは非置換のフェニル基を少なくとも1つ有するものが好適である。このようなクロメン化合物においては、恐らくクロメン化合物の置換フェニル基と、芳香族化合物との間のπ電子−π電子相互作用により分子化合物が形成されやすくなっているものと思われる。
【0144】
本発明においては、このような置換もしくは非置換のフェニル基を少なくとも1つ有するクロメン化合物の中でも、良好なフォトクロミック特性を示すことから、下記式(28)で示されるものが特に好適である。
【化49】
Figure 0004225970
式中、R86およびR87は、それぞれ置換若しくは非置換のアリール基、
または置換もしくは非置換の芳香族複素環基であり、下記式(29)
【化50】
Figure 0004225970
で示される基は、置換基を有していてもよい2価の縮合多環式有機基であり、且つ前 記式(28)中の2H―ピラン環に縮合するベンゼン環を有している基である。
【0145】
式(28)において、基R86またはR87における非置換アリール基および非置換の芳香族複素環基としては、フェニル基、1−または2−ナフチル基、2−または3−フリル基、2−または3−チエニル基、2−または3−ピロリジル基等を挙げることができる。
また、基R86またはR87におけるアリール基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基は、1個に限定されず、2個以上であってもよく、またその種類も特に限定されないが、好適な置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、置換若しくは非置換のアミノ基、シアノ基、置換もしくは非置換のアリール基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子、アラルキル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シアノメチル基、アリールスルホニル基、およびアルキルスルホニル基を例示することができる。また、上記例示中の置換アリール基の置換基としては、上記で例示されている置換基から置換アリール基を除くものが挙げられる。また上記例示中の置換アミノ基の置換基としては、上記で例示されている置換基に加え、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子でフェニル基と結合する置換もしくは非置換の複素環基、或いは該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基を挙げることができる。なお、該複素環内にはフェニル環に結合する窒素原子の他にさらに酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が存在していてもよい。
【0146】
さらに、フォトクロミック性の観点から、式(28)中のR86およびR87のどちらか一方は、置換若しくは非置換のアミノ基を置換基として有するフェニル基であるのが好適である。この置換もしくは非置換のアミノ基としては、アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジ−i−プロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基等のアリールアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基等が好適である。さらに、窒素原子をヘテロ原子として有し且つ該窒素原子で前記フェニル基に結合する置換もしくは非置換の複素環基、または該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基、特に複素環基を構成している炭素原子の数が2〜10、好ましくは2〜6の複素環基もしくは縮合複素環基、例えばモルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N−メチルピペラジノ基、インドリニル基等も、上記の置換もしくは非置換のアミノ基の好適例として挙げることができる。
【0147】
また、前記式(28)において、式(29)で示される2価の基は、置換基を有していてもよい縮合多環式有機基であって、前記式(28)中の2H−ピラン環に縮合するベンゼン環を含む基である。このような縮合多環式有機基は、特に限定されないが、フォトクロミック性が優れるという点で、下記式(30)、(31)、(32)および(33)で示される基であるのが好適である。
【0148】
【化51】
Figure 0004225970
【化52】
Figure 0004225970
【化53】
Figure 0004225970
【化54】
Figure 0004225970
【0149】
ただし、上記式(30)において、R88およびR89は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アラルキル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で前記縮合多環式有機基の環に結合する複素環基(置換基を有していてもよい)、或いは該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基である。さらに、R88の結合数を表す“aa”は0〜3の整数であり、R89の結合数を表す“ll”は0〜2の整数であり、“aa”または“ll”がそれぞれ2以上であるとき、複数存在するR88またはR89は、互いに同一でも異なっていてもよい。なお、上記R88およびR89における置換基とは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基が好適である。
【0150】
また、上記式(31)において、R90およびR91は、それぞれ上記式(30)中のR88およびR89と同義であり、R90の結合数を表す“mm”は0〜2の整数であり、R91の結合数を表す“bb”は0〜3の整数であり、“mm”または“bb”がそれぞれ2以上であるときに複数存在するR90またはR91は互いに異なっていてもよい。
【0151】
上記式(32)において、R92およびR93は、それぞれ上記式(30)中のR88およびR89と同義であり、R92およびR93の結合数を表す“cc”および“dd”はそれぞれ0〜3の整数であり、“cc”または“dd”がそれぞれ2以上であるときに複数存在するR92またはR93は互いに異なっていてもよい。
【0152】
さらに、上記式(33)において、下記式(34)
【化55】
Figure 0004225970
で示される環は、芳香族炭化水素環、または不飽和複素環であり、R94およびR95は、それぞれ上記式(30)中のR88およびR89と同義である。R94およびR95の結合数を表す“ee”および“ff”はそれぞれ0〜3の整数であり、“ee”または“ff”がそれぞれ2以上であるときに複数存在するR94またはR95は互いに異なっていてもよい。R96およびR97は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アラルキル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、置換あるいは非置換のアミノ基、シアノ基、ニトロ基、置換あるいは非置換のアリール基である。また、R96とR97とは、互いに結合して、オキソ基、置換基を有していてもよいビニレン基、置換基を有していてもよい酸素原子を1あるいは2個含む複素環基、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環基、または下記式(35)で表わされる基を形成していてもよい。
【0153】
【化56】
Figure 0004225970
式中、−Y−で示される基は、下記式
【化57】
Figure 0004225970
(ZおよびZは、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子であり、
98、R99、R100およびR101はアルキレン基であり、
gg、hh、iiおよびjjは、それぞれ1〜4の整数である。)
で示される基である。
【0154】
本発明において、上述した分子化合物の形成に好適なクロメン化合物(即ち、置換もしくは非置換のフェニル基を少なくとも1つ有するクロメン化合物)の具体例としては、次のような化合物を挙げることができる。
【化58】
Figure 0004225970
【化59】
Figure 0004225970
【化60】
Figure 0004225970
【0155】
また、分子化合物のもう一方の構成分子である芳香族化合物は、上記したようなクロメン化合物と分子化合物を形成し得る化合物であれば特に限定されないが、分子化合物を形成しやすいという観点から、分子量300〜800のクロメン化合物に対しては、特に70〜150の分子量を有しているものが好適である。これは、芳香族化合物が小さいほど立体障害が少なく前記したπ電子−π電子相互作用を起こしやすい場所に位置することができるためであると考えられる。このような芳香族化合物としては、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ナフタレン、チオフェン、ピロール等を挙げることができる。
【0156】
上述した説明から理解されるように、本発明において、フォトクロミック化合物として使用する分子化合物としては、フォトクロミック特性および合成の容易さの観点から、置換もしくは非置換のフェニル基を少なくとも1つ有するクロメン化合物、特に前記式(28)で示される分子量300〜800のクロメン化合物と、分子量70〜150の芳香族化合物との分子化合物を用いるのが好適である。
【0157】
(C)光重合開始剤:
本発明においては、前述したラジカル重合性単量体(A)を重合硬化させて高分子膜を形成するために、光重合開始剤(C)が配合されるが、この光重合開始剤としては、リン系光重合開始剤が使用される。
【0158】
既に述べた通り、リン系光重合開始剤は、紫外線領域に加え、400nm以上の可視光領域の波長の活性エネルギー線にも反応して開裂し、ラジカル重合反応を開始させる。この結果、相対強度分布が調整され、紫外線領域の相対強度を低下させた活性エネルギー線を照射することにより、高濃度のフォトクロミック化合物を含有する重合性組成物のコーティング層について、フォトクロミック化合物を劣化させることなく、その内部まで均一に重合硬化させることが可能となるのである。また、リン系光重合開始剤は、自身のフォトブリーチング効果に基づき、開裂後は、可視光を吸収しなくなるという特性を有しており、コーティング層の深さ方向に対しても順次開始反応を起こすことが可能となり、この点においても、内部まで均一に硬化させる上で極めて有利である。
【0159】
本発明において、このようなリン系光重合開始剤としては、それ自体公知のものを使用することができるが、特に内部硬化性に優れているという点で、モノアシルフォスフィンオキシド系化合物、ビスアシルフォスフィンオキサイド系化合物の少なくとも一種類を用いることが好ましい。
【0160】
モノアシルフォスフィンオキシド系化合物としては、下記式(36)
【化61】
Figure 0004225970
式中、R102は同一もしくは異なっていてもよく、メチル基、メトキシ基
または塩素原子であり、a’は2または3であり、
103はフェニル基またはメトキシ基である、
で表わされるもの、例えば、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0161】
また、ビスアシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、下記式(37)
【化62】
Figure 0004225970
式中、R104は同一もしくは異なっていてもよく、メチル基、メトキシ基または塩素
原子であり、b’は2または3であり、
105は2,4,4−トリメチルペンチル基である、
で表されるもの、例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメトキシベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0162】
本発明において、上述したリン系光重合開始剤は、1種単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができ、また、その配合量は、前述したフォトクロミック化合物が高濃度で配合されていることから、前記ラジカル重合性単量体(A)100重量部当たり、0.01〜10重量部、特に0.05〜5重量部、最も好ましくは0.1〜1重量部の範囲とするのがよい。
【0163】
また、本発明においては、上述したリン系光重合開始剤と共に、リン系光重合開始剤以外のその他の光重合開始剤を併用することもできる。即ち、その他の光重合開始剤は、紫外線により開始反応を起こすため、酸素を微量(数十〜数百ppm)含む雰囲気下で硬化が行われる場合でも、酸素の影響を受けることなく、硬化性組成物のコーティング層表面を有効に硬化させることができる。従って、リン系光重合開始剤とその他の光重合開始剤との併用により、表面から内部まで均一に硬化したフォトクロミック高分子膜を形成させることができる。この結果、重合硬化が行われる雰囲気中の酸素濃度の許容範囲が拡大し、窒素置換などの雰囲気調整をマイルドな条件で行うことができ、短時間で重合硬化を完結させ、基材に塗布された硬化性組成物の垂れなどを有効に回避してフォトクロミック高分子膜の厚みムラやシワの発生を防止する上で極めて有利である。また、高分子膜の表面硬度や、高分子膜と基材やハードコート層との密着性を高める上でも有利である。
【0164】
このようなリン系光重合開始剤以外のその他の光重合開始剤としては、例えば下記一般式(38)
【化63】
Figure 0004225970
式中、R106は、水素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ
基、エトキシ基、フェニル基、メチルエステル基、メチルチオ基、モルホリノ基、
または2−ヒドロキシエトキシ基であり、
107は置換基を有してもよいフェニル基、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル 基、もしくは下記式(39)
【化64】
Figure 0004225970
(式中、R108、R109およびR110は、互いに独立に、水素原子、塩素原
子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロ
ポキシ基、ブトキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい
ベンジル基、ヒドロキシル基、モルホリノ基、N,N−ジメチルアミノ基、メチル
エステル基、またはエチルエステル基)
で示される基である、
で表される化合物を挙げることができる。
【0165】
上記式(38)で表されるその他の光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、オルソベンゾイル安息香酸、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等を挙げることができ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0166】
また、前記一般式(38)で示されるもの以外にも、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、9,10−フェナンスレンキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(O−エトキシカルボニル)オキシム等を、前述したその他の光重合開始剤として使用することができ、これらも1種単独で或いは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0167】
上記のリン系光重合開始剤以外のその他の光重合開始剤の配合量は、一般に、前述したラジカル重合性単量体(A)100重量部当たり、0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜4重量部、更に好ましくは0.05〜4重量部、最も好適には0.1〜1重量部の範囲とするのがよい。また、リン系光重合開始剤とその他の光重合開始剤との配合比は、重合性組成物中のフォトクロミック化合物の濃度によって異なり、一該には規定できないが、リン系光重合開始剤がその他の光重合開始剤に比して高感度、高活性であることに由来して、
リン系光重合開始剤/その他の光重合開始剤(重量比)
=1/1〜1/20、好ましくは、1/1〜1/4
の範囲とするのが好ましく、且つリン系光重合開始剤とその他の光重合開始剤との合計量は、フォトクロミック化合物(B)100重量部当たり、5重量部〜50重量部、特に5〜20重量部の範囲とするのが、フォトクロミック化合物の劣化を防ぐため有効である。
【0168】
その他の配合剤;
本発明で用いる光重合硬化性組成物中には、上述した(A)〜(C)の成分以外にも、例えばフォトクロミック化合物(B)の濃度が前述した範囲内となることを条件として、種々の添加剤を適宜添加することができる。例えば、フォトクロミック高分子膜の黄変防止や成形性の向上、さらにはフォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上等のために、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。
【0169】
例えば、界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、ラジカル重合性単量体(A)への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適なノニオン系界面活性剤の具体例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができ、これらの界面活性剤は、1種単独或いは2種以上の組合せで使用することができる。このような界面活性剤の添加量は、ラジカル重合性単量体(A)100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲が好適である。
【0170】
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を、単独で或いは併用することができる。また、これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤の添加量は、全重合性単量体100重量部に対しそれぞれ0.001〜20重量部の範囲が好ましい。
【0171】
また、光重合硬化性組成物を硬化させる際のフォトクロミック化合物の劣化を防止するため、あるいはその硬化体(フォトクロミック高分子膜)の耐久性を向上させるためには、上述した種々の添加剤の中で、ヒンダードアミン光安定剤を使用するのが好適である。特にフォトクロミック化合物の劣化防止効果が高いヒンダードアミン光安定剤には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、旭電化工業(株)製アデカスタブLA−52、LA−62、LA−77、LA−82等があり、このようなヒンダードアミン光安定剤は、ラジカル重合性単量体(A)100重量部に対し、0.001〜20重量部、特に0.1〜10重量部、最も好適には1〜10重量部の範囲がよい。
【0172】
本発明においては、前述した光重合開始剤とは異なり、熱によってラジカルを発生することができるラジカル重合開始剤(熱ラジカル重合開始剤)も配合することができる。このような熱ラジカル重合開始剤としては、前述した基板の熱変形が生じない程度の温度でラジカル重合を開始させるものが好適であり、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができ、これらは1種単独或いは2種以上の組合せで使用することができる。
【0173】
これらの熱ラジカル重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、ラジカル重合性単量体の種類や組成、または開始剤として併用する光重合開始剤の種類、添加量または組成等によって異なり、一概に限定できないが、一般には、ラジカル重合性単量体(A)100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。
【0174】
(光重合硬化性組成物の調製)
上述した光重合硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、所定量の各成分を秤取り混合することにより容易に調製することができる。なお、各成分の添加順序は特に限定されず、全ての成分を同時に添加しても良いし、ラジカル重合性単量体(A)成分のみを予め混合し、後で(例えば重合させる直前)、フォトクロミック化合物(B)や他の添加剤を添加混合しても良い。
【0175】
また、光重合硬化性組成物中に、エポキシ系モノマー、シリルモノマー及びイソシアネートモノマーのうちの少なくとも一種類の化合物と、アミン化合物とを含む場合には、保存安定性の観点から、該エポキシ系モノマー、シリルモノマー及びイソシアネートモノマーのうちの少なくとも一種類を含む光重合性組成物とアミン化合物は別個の包装とし、使用時に混合して用いるのが好ましい。この場合には、他の成分は上記2包装に適宜分配すればよい。
【0176】
(基材の前処理)
本発明においては、上記の光重合硬化性組成物を、前述した基材の曲面上に塗布してコーティング層を形成し、これを重合硬化させることによってフォトクロミック高分子膜を形成するが、塗布に先立って、基材の前処理を行い、基材に対する前記光重合硬化性組成物の塗れ性および密着性を向上させることが好ましい。
【0177】
このような前処理としては、塩基性水溶液又は酸性水溶液による化学的処理、研磨剤を用いた研磨処理、大気圧プラズマ及び低圧プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、またはUVオゾン処理等を挙げることができるが、基材とコーティング層の密着性の観点から、大気圧プラズマ処理が好適である。ここでいう大気圧プラズマ処理とは、一般的には低圧プラズマ処理より高圧の条件下で行われるプラズマ処理方法であり、低圧プラズマ処理が約1torrの圧力で行われるのに対し、大気圧プラズマ処理では、それよりも高圧でプラズマ処理が行われる。
【0178】
大気圧プラズマ処理は、例えば空気、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アンモニア、塩素、一酸化窒素、二酸化窒素、CFやC等のフロン系ガス等のガス雰囲気中で行なわれるが、取り扱いの容易さ、コスト等の観点から、空気または窒素雰囲気中で行なうのがよい。また、大気圧プラズマ処理による密着性向上効果を高めるためには、用いるガスの相対湿度は、24℃で80%RH以下、特に40%RH以下であることが好適である。
大気圧プラズマ処理での雰囲気温度は、特に制限されないが、好適には−5℃〜100℃の範囲であり、より好適には5℃〜60℃の範囲である。
【0179】
大気圧プラズマ処理におけるプラズマ照射の方法は、特に制限されることはないが、以下に示すような方法を用いるのが好適である。
(1)基材をスピンコート装置に設置し、該基材を回転させながらプラズマ照射を行う。
(2)基材を固定されたプラズマ照射部位の下に設置し、該基材を自動もしくは手動で前後左右に移動させることにより、該基材表面を均一にプラズマ処理する。
(3)基材を固定し、プラズマ照射部位を自動もしくは手動で前後左右に移動させることにより、該基材表面を均一にプラズマ処理する。
【0180】
また大気圧プラズマ処理においては、基材とプラズマ照射部位との間に、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス(SUS)等の金属乃至合金から成るメッシュ状シート等を挿入することも可能である。該メッシュ状シートを使用することにより、大気圧プラズマ処理に用いた基材表面の放電または熱による劣化を低減させることができ、基材表面を劣化させることなく効率良く大気圧プラズマ処理することが可能である。特に、このメッシュを用いる方法は、プラスチック樹脂製の基材を用いた場合に効果的である。さらには、該メッシュ状シートを用いた場合、後述する大気圧プラズマ処理をした後の水や有機溶媒による洗浄の工程を行わずに比較的高い密着性を得ることが可能となる。
【0181】
上記大気圧プラズマ処理を行なったのち、そのまま光重合硬化性組成物のコーティングを行なってもよいが、好ましくは、大気圧プラズマ処理された基材表面(曲面)を、溶剤(以下、洗浄溶剤という)で洗浄した後にコーティングを行なうことが好ましい。この洗浄により、基材表面とコーティング層との密着性を確固たるものとすることがより容易になる。この洗浄溶剤による洗浄は、大気圧プラズマ処理に際し、前記金属製メッシュ状シートを使用しない場合に特に効果的である。
【0182】
洗浄溶剤としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコールのごときアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルのごときエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトニトリル、アセトン、ヘキサン、トルエンのごときその他の有機溶媒等を、単独で、或いは2種以上を混合して使用することができる。密着性向上の効果の点から、水或いは水と有機溶媒との混合溶媒が好適であり、特に、密着性向上効果が極めて再現性良く得られかつ排水処理等も極めて容易である点で、水を使用することが最も好ましい。
【0183】
水と有機溶媒との混合溶媒では、有機溶媒と水とが均一に混合された状態であるものが、特に好適である。水と有機溶媒とを均一に混合するためには、有機溶媒として、常温で水と任意の割合で混合する水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトン等が使用することが好適である。また、水/有機溶媒との質量比で100/0〜1/99の範囲であるのが好ましく、100/0〜15/85の範囲であるのがより好ましい。
洗浄溶剤として使用する有機溶媒は市販の工業用溶剤を特に精製することなく使用でき、また、水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、純水等が使用できる。
洗浄溶剤の温度は、使用する基材や洗浄に用いる水または有機溶媒の種類、あるいはそれらの混合比によって異なるが、好ましくは−5〜100℃の範囲が好適であり、より好適には5〜80℃である。
【0184】
上述した洗浄溶剤を用いてのプラズマ処理後の基材の洗浄は、それ自体公知の方法によって行うことができ、例えば、以下の方法で行なうことができる。
(1)適量の洗浄溶剤を布にしみ込ませ、この布を用いて大気圧プラズマ処理された基材表面を拭くことにより洗浄する。
(2)容器に洗浄溶剤を注ぎ、その中に大気圧プラズマ処理された基材を浸し超音波で洗浄する。
(3)大気圧プラズマ処理された基材をスピンコート装置に設置し、適量の洗浄溶剤を樹脂製基材表面に塗布(滴下)した後、基材を回転する。
【0185】
洗浄の回数は、特に制限されないが、10回以下が好適であり、生産性等の観点から1〜5回の範囲であるのがより好ましい。また、上記(1)〜(3)の洗浄方法を、大気圧プラズマ処理された一つの基材に対して、2種類以上実施することもできる。複数回洗浄を実施する場合には、洗浄を実施する毎に異なる洗浄溶媒を用いて洗浄することも可能である。洗浄時間は、使用する基材や洗浄溶剤の種類、量および温度、さらには洗浄方法によっても異なるが、通常は1秒〜30分の範囲が好適であり、より好適には3秒〜10分の範囲である。
【0186】
尚、本発明においては、前記したような各種前処理を組み合わせて行うこともでき、中でもアルカリ処理との併用は、基材とコーティング層との密着性をさらに向上させるための前処理として特に有効である。好適な前処理の組合せとしては、プラズマ処理或いはコロナ放電処理の前あるいは後又は研磨剤を用いた研磨処理の前あるいは後に基材をアルカリ溶液で処理する方法を挙げることができるが、アルカリ処理は、プラズマ処理、コロナ放電又は研磨処理を行なった後にするのが好適である。アルカリ溶液としては、好ましくは、水酸化ナトリウム水溶液、あるいは水酸化カリウム水溶液が用いられる。該水酸化物の濃度としては、5〜30重量%が好適である。また、処理温度は、用いる基材の耐熱性を勘案して適宜決定すればよいが、好ましくは20〜60℃の範囲である。また、その処理は、アルカリ溶液に基材を含浸するか、あるいは基材をアルカリ溶液に含浸したまま超音波洗浄することにより行なわれる。その処理時間は、処理条件により異なるが、好ましくは1分〜1時間、より好ましくは5〜15分の範囲である。また、アルカリ溶液としては、水溶液以外に、例えば水、アルコール溶媒の混合溶液、アルコール溶液であってもよい。用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールまたさらに少量の添加剤として、1−メチル−2−ピロリドン等の有機塩基をアルカリ溶液100重量部に対して、1〜10重量部加えてもよい。また、アルカリ処理後は、純水、イオン交換水、蒸留水などの水を用いてすすいだ後、乾燥すればよい。
【0187】
(光重合硬化性組成物の塗布及び硬化)
上述した基材の前処理の後、この基材の曲面上に前述した光重合硬化性組成物が塗布してコーティング層を形成するが、その塗布は、公知の手段、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ディップ−スピンコーティング等の方法で行うことができる。また、塗布量、即ち光重合硬化性組成物のコーティング層の厚みは、硬化後の厚み、即ち、目的とするフォトクロミック高分子膜の厚みに応じて適宜決定すればよい。また、コーティング層の厚みを厚くする場合(例えば、10μm以上の)には、ラジカル重合性単量体等の重合成分の配合比率を適宜選択して、光重合硬化性組成物の粘度(25℃)を20〜500cp、特に50〜300cp、より好適には60〜200cpの範囲とするのがよい。粘度が低いと、均一に塗布することが難しく、且つ垂れ等を生じやすくなるからである。このような粘度の光重合硬化性組成物を基材に塗布して例えば10μm以上の厚さの塗膜を得る場合には、スピンコート法を採用するのが好適であるが、その場合には、基材周縁部の塗膜の厚さが厚くなってしまう傾向があるため、図1に示すようにヘラ等を用いてスピンコート中に基材周縁部に生じる前記光重合硬化性組成物の液溜まりを除去するのが好適である。このような液溜まりの除去を行なうことにより、硬化膜の周縁部の均一性を増し、周縁部以外の領域の膜厚の均一性をより高くすることができ、該領域のΔw/wavの値を0.03以下とすることが可能となる。また、このことと関連して、膜厚の均一性がΔw/wavで表して0.07以下となる領域の面積を拡大することも可能となる(別言すればΔw/wav>0.07となる周縁部領域を縮小できる)。
【0188】
なお、図1は、基材3(当該基材は曲面を有するものであるが図1においては簡略化するため円盤状ものとして記載している)を回転させながらその端部に溜まった液(光重合硬化性組成物)にヘラ1の下端部2を当接せしめて該液を基材3上から除去する様子を模式的に示したものである。
【0189】
この場合に使用する上記ヘラの形状は、それぞれスピンコーティング後に基材周縁部における光重合硬化性組成物の液溜まりを除去、もしくは減少するような構造であれば特に制限はないが、好適な形状を例示すれば、図2に示すようなものを挙げることができる。図2は図1の部分拡大図であり、図1のヘラ1の下端部2の構造を説明するためのものである。図2に示すヘラ4(図1のヘラ1に対応する)は、その下端部に基材8の周縁部に対応する形状のノッチを有し、当該ノッチの辺5は基材8の曲面(図2では簡略化のため平面で表している)に適合する形状となっており、当該ノッチの辺6は基材8の縁の形状に適合する形状となっている。このような形状のノッチを設けることにより、基材周縁から一定の幅で基材表面の液溜りを除去することが可能となり、さらには、基材側面に付着する光重合硬化性組成物をも掻き取ることが可能なため、基材の仕上がり外観をより向上させることができる。また、ヘラ4における下端部7は、直接基材に接触することはないが、基材回転時におけるヘラ4の強度維持などを考慮して適宜採用すればよい。
【0190】
上記ヘラ4の大きさは特に制限されず、装置の構造上もしくは操作や運転上、問題にならない大きさであれば構わない。好適な大きさを示せば、ヘラ4本体の長さが1〜30cm、より好適には3〜20cmである。また、ヘラ4におけるノッチ部の大きさも特に制限されないが、辺5の長さ(l)は液溜まりを除去する範囲を決定することになるため、一般には0.5〜5mmであることが好ましく、0.8〜3mmであることがより好ましい。辺6の長さ(m)についても特に制限されないが、基材の側面の高さ(厚さ)と同程度以下の長さであれば構わない。具体的には、1〜15mmが好ましく、より好ましくは1〜10mmの範囲である。さらに、ヘラ4における下端部7の長さ(n)に関しても特に制限されないが、過剰コーティング液除去時のヘラ4の機械的強度及びに操作性等の観点から0〜50mmであることが好ましく、0〜30mmであることがより好ましい。
【0191】
ヘラの材質は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、(発泡)ポリスチレン、(発泡)ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリ四フッ化エチレン、シリコーン樹脂などのプラスチック樹脂類;ステンレススチール、アルミニウム、銅、鉄などの金属類;スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴムまたはアクリルゴムなどのゴム類などを使用することができる。これらの中でも基材とヘラとの接触部の密着しやすさ、基材表面に傷をつけないという観点から、柔軟性を有するプラスチック樹脂類およびゴム類が特に好ましい。
【0192】
上記ヘラの使用方法としては、光重合硬化性組成物を基材表面上に塗布した後、基材を回転させてスピンコートしている際に、光重合硬化性組成物を塗布した基材表面の周縁部にヘラの一部を接触させるか、または、光重合硬化性組成物を塗布した基材表面の周縁から適当な距離、例えば5mm以内までの基材表面全体にヘラを接触させる方法を挙げることができる。ヘラを基材から離すタイミングに関しては、基材周縁部への光重合硬化性組成物の液溜まりをより低減させるために、できるだけ基材の回転が終了する直前まで基材とヘラを当接させていることが好ましい。また、図示しないが、基材の側面にもヘラを接触させる場合には、スピンコートにより基材側面に付着する余剰の光重合硬化性組成物も除去することが可能なため、コーティング層を光重合等により硬化させた後の外観がより向上する。
【0193】
光重合硬化性組成物のコーティング層の重合硬化は、特定の相対強度分布に調整された活性エネルギー線の照射により行われるが、酸素による重合阻害を防止し、均一に硬化した膜を形成するために、気体雰囲気下、好ましくは、分子状酸素の濃度が10,000ppm以下、特に1,000ppm以下に調整された雰囲気で実施するのがよい。このような雰囲気中の酸素濃度の調整は、雰囲気を不活性ガスで置換することにより行うことができる。不活性ガスとしては、酸素を含有しないラジカルに対して不活性なものであればよく、安価な窒素、または置換効果の高いアルゴンガスを用いることができる。尚、雰囲気中の酸素濃度は少ない程、重合阻害を受けにくいため好ましいが、大気から置換する場合、酸素を完全に除くことができず、僅かな量の分子状酸素が混入することは避けられない。しかるに、本発明では、特定の光重合開始剤を使用しているため、酸素の許容濃度が拡大しており、大気から不活性ガスへの置換によって容易に酸素濃度を許容濃度範囲内に調整することができるという利点がある。即ち、雰囲気の置換を短時間で行うことができ、製造時間の短縮、コーティング層のたれ防止などの点で極めて有利である。
【0194】
重合開始のための活性エネルギー線としては、紫外線、紫外線領域を含む可視光が使用されるが、均一な厚みを有し且つ均質なフォトクロミックコーティング膜を形成するために、本発明においては特定の相対強度分布を有する活性エネルギー線を照射する必要がある。即ち、本発明の製造方法では、200nm以上300nm未満の波長成分が0〜5%であり、300nm以上400nm未満の波長成分が25〜75%であり、且つ400nm以上500nm以下の波長成分が25〜75%である相対強度分布を有する活性エネルギー線を前記光重合硬化性組成物に照射して硬化させる。なお、活性エネルギー線の相対強度とは、既に述べた通り、200〜500nmの波長領域の活性エネルギー線の全面積強度を100%とした場合の、特定波長領域の活性エネルギー線の面積強度の比を示すものである。
【0195】
活性エネルギー線の相対強度を、200nm〜500nmの波長領域において、200nm以上300nm未満(A領域)、300nm以上400nm未満(B領域)、および400nm以上500nm以下(C領域)と、3つの波長領域に分割して比較する。この場合、フォトクロミック化合物の劣化抑制および得られる積層体の光学的均一性の観点からA領域は低強度であることが好ましい。また、光重合開始剤の高分解及びラジカル重合性単量体の高重合率の観点から、B領域は高強度であることが好ましい。更に、リン系光重合開始剤の高分解の観点から、C領域は中程度の強度を示すことが好ましい。これらのなかで、特にA領域の強度が低いことが、特に重要である。A領域の強度が高い活性エネルギー線を照射して重合硬化を行うと、コーティング層の表面近傍に存在する光重合開始剤の分解がより促進され、コーティング層の表面と内部とで重合速度に差が生じるため、光学的に不均一なフォトクロミック高分子膜ができやすくなってしまうからである。
【0196】
従って、本発明では、活性エネルギー線の相対強度分布を、A領域において0〜5%、B領域において25〜75%、特に50〜75%、C領域において25〜75%、特に25〜50%となるように調整する。
また、B領域においては、特に360nm以上〜400nm未満(B’領域)の相対強度が高いことが、コーティング層の表面と内部とで光重合開始剤の分解を均一化し、均一な重合を促進するため特に好ましい。具体的には、B’領域の相対強度が、B領域全体の相対強度の70%以上を示し、また200nm〜500nmの全領域の相対強度(100%)に対し、B’領域の相対強度が35%以上を示すことが特に好ましい。
【0197】
本発明において、重合開始のために照射する活性エネルギー線の光源としては、200nm以上の活性エネルギー線を放射するものであれば、有電極放電光源、無電極放電光源の何れも採用することができる。
有電極放電光源は、電極に電圧を加えることによりランプが発光するものであり、オゾンレス高圧水銀ランプ、オゾンあり高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲン化鉄またはハロゲン化ガリウム等のハロゲン化メタルを入れた高圧水銀ランプ、殺菌ランプ、クリプトンアークランプ、カーボンアークランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、メタルハライドランプ、インジウムランプ、タリウムランプ等を例示することができる。また、無電極放電光源は、電極を必要とせず、マイクロ波のエネルギー制御でランプを発光させるものであり、Hバブル,Hプラスバブル,Dバブル,Vバブル、Mバルブ、Qバルブ等を例示することができる。
【0198】
本発明においては、光源から発生する活性エネルギー線の相対強度分布が前記条件を満足するものである場合には光源からの光をそのまま照射すればよい。また光源から発生する活性エネルギー線が前記相対強度分布とならない場合には、2種以上を組合せて使用することにより、或いはフィルターを用いてその相対強度分布を前記のように調整して照射すればよい。
【0199】
通常、上記のような光源から発生する活性エネルギー線は、200nm以上300nm未満の波長成分が10〜50%、300nm以上400nm未満の波長成分が30〜70%、400nm以上500nm以下の波長成分が20〜60%という相対強度分布を有するので、これら光源からの活性エネルギー線の相対強度を、前述した範囲に制御するには、A領域の活性エネルギー線を減少させることが有効である。A領域の活性エネルギー線を減少させるには、光源から放射された活性エネルギー線を、フィルターを介して照射するのがよい。このようなフィルターとしては、光源から放射された活性エネルギー線を、特定波長以下の活性エネルギー線を無処理の場合の60%以下、好ましくは30%以下の強度に低減させる材料であれば、特に制限なく用いることが出来る。例えば紫外線カットフィルター、硬質ソーダガラス、紫外線カットコーティングを施したガラスまたは樹脂からなる透明材料などを挙げることができる。これらフィルターは、必要に応じて、片面または両面ともスリ状にしてもよい。例えば、300nm未満または360nm未満の活性エネルギー線を減少させるには、フィルターガラスUV−30(紫外線透過用透過限界波長300nm)またはフィルターガラスUV−36(紫外線透過用透過限界波長360nm)を用いることが出来る。ここで透過限界波長とは、JISB7113に定められた用語であり、光線透過率が72%に相当する波長Aと5%に相当する波長Bとの中央に該当する波長のことを示す。
【0200】
一般に、光重合に用いる光源は、用いる重合開始剤の活性波長等を勘案して選択されるが、本発明においては、前述したA領域の活性エネルギー線の相対強度が低く、入手が容易なフィルターによって簡単に波長分布を前記範囲に調整できるという観点から、前述した種々の光源のうち、メタルハライドランプ、オゾンレス高圧水銀ランプ等の有電極光源、Dバルブ、Vバルブ、Mバルブ、Qバルブ等の無電極ランプが好ましい。さらにA領域の活性エネルギー線の相対強度が低くかつB領域の活性エネルギー線の相対強度が高い(光源の主スペクトルが300nm以上〜400nm未満)という観点から、メタルハライドランプ、オゾンレス高圧水銀ランプ、Dバルブを用いることが特に好ましい。
【0201】
また、本発明において光学的に均一な積層体を得るためには、前記活性エネルギー線の相対強度を一定範囲に制御するとともに、硬化処理時の基材の表面温度の上昇を防ぐことが必要であり、基材表面温度を100℃以下、特に80℃以下に制御する。即ち、基材の表面温度を一定温度以下に抑制しながら活性エネルギー線を照射することにより、基材の変形を抑え、高分子膜形成層前後における基材曲面の球面度数の変化を小さくし、光学物性の低下を防ぐことが可能となる。特にポリウレタン樹脂、ポリメタクリル樹脂等のTgが低い材料からなる基材を用いる場合、或いは曲面の曲率中心での厚みが薄い(例えば2mm以下)の薄肉の基材を用いる場合に極めて効果的である。
【0202】
基材表面温度を上記範囲に保持するためには、光源から発生する熱線を効率的に取り除くことが必要である。そのような方法としては、水冷ジャケット方式のように、光源の外回りに二重管のジャケットを取り付け、ジャケット内に純水を流す方法、コールドミラー方式のように、光源を金属薄膜を多層蒸着したパイレックス(登録商標)ガラスで囲んで赤外線を透過させ、かつ反射した紫外線を基材に照射する方法、熱線カットフィルターを用いる方式等がある。これらの方式の中で、簡便性の点から特に熱線カットフィルターを用いる方式が好ましい。
【0203】
熱線カットフィルターとは、一般に、可視光線および赤外線を吸収または反射することにより、熱線の透過を抑える機能を有する光学フィルターのことを示す。本発明においては、熱線カットフィルターを、光源と基材との間に配置することにより、簡便かつ効率的に、硬化時の基材表面温度の上昇を抑えることが出来る。熱線カットフィルターとしては、波長0.8〜1μmまたは波長3〜5μmのいずれかの領域における平均透光率が60%以下、好ましくは30%以下を示すものを用いることが出来る。
【0204】
該熱線カットフィルターの材質としては、無機材料,有機材料または無機−有機複合材料からなる公知の材料を制限なく用いることが出来る。これらのなかで耐熱性の点から特に無機材料を用いることが好ましい。無機材料としては、例えばコールドフィルター、アルミミラー、石英板、着色ガラス等を挙げることが出来る。ここでコールドフィルターとは金属酸化物を多層蒸着させた石英等のガラス板を示し、アルミミラーとは高反射率を示す鏡面の高輝度アルミ製のミラーを示し、着色ガラスとは鉄を含むリン酸塩ガラスまたはソーダ灰ガラスの組成中に微量の鉄、ニッケル、コバルト、セレンなどを含む着色透明ガラスのことを示す。これら熱線カットフィルターは、単独又は複数種組み合わせて用いることが出来る。これらの熱線カットフィルターの中で、特にレンズ等の基材の表面の温度上昇を抑える効果が高く、300nm以上の活性エネルギー線の透光率が高いことから、着色ガラスが特に好ましい。
【0205】
熱線カットフィルターの厚さは、熱線カットの効率および紫外、可視光領域の透光率等を勘案し適宜選択すれば良いが,一般に0.01mm〜10mm、好ましくは0.1〜5mmである。
【0206】
本発明において、活性エネルギー線の照射時間は、光源の波長や強度およびランプ形状に応じて適宜選択すればよいが、一般に1秒から10分であり、好ましくは10秒から5分である。照射強度、即ち基材に照射する活性エネルギー線の強度については、特に制限はないが、重合効率の点から、波長315nmにおいて30mW/cm以下、特に15mW/cm以下、波長365nmにおいて30〜90mW/cm、特に30〜70mW/cm、波長405nmにおいて、50〜200mW/cm、特に70〜150mW/cmであることが好ましい。また照射距離は、照射強度および照射時間に応じて適宜選択すれば良いが、一般には10cm〜80cmが好ましい。又、光源からの距離を離した方が、光源から発する熱を基材に受けなくても済むため、光源からの熱を、ファンにより系外に拡散し更に、できるだけ照射強度の大きい光源を用いて、照射距離40〜80cmで照射するのがより好ましい。さらに照射時には、基材を静置するか、またはベルトラインに基材を乗せ1回以上照射しても良い。
【0207】
上記のようにしての活性エネルギー線の照射によって基材の曲面上に形成されたコーティング層を重合硬化させることにより、フォトクロミック高分子膜を形成するが、光重合硬化性組成物中に熱重合開始剤又は前記したエポキシ系モノマー、シリルモノマー及びイソシアネートモノマーとアミン化合物の如き縮重合により硬化する成分が配合されている場合には、活性エネルギー線の照射後、必要により熱重合を行って硬化を完結させることもできる。熱重合の際は、基材と高分子膜の熱的に化学結合が起こり良好な密着性が得られるという理由から、基材全体の温度が均一に加熱されるような条件下(このような加熱は例えばバッチ式のオーブンを用いることにより行なうことができる)で110〜130℃の温度、特に110〜120℃の温度で、30分〜3時間、より好適には、1〜2時間の加熱するのが好適である。活性エネルギー線照射による光硬化中には、表面近傍に局所的に熱がかかるばかりでなく重合収縮に伴う応力も大きいため、基材の変形を防止するためには基材温度を100℃以下に保つ必要があるが、熱重合に際してはこのようなことがないため基材温度を100℃以上としても問題はない。
【0208】
(積層体)
かくして本発明によれば、基材の曲面上にフォトクロミック高分子膜が積層された積層体を得ることができる。
この積層体は、フォトクロミック高分子膜の形成前における基材曲面の球面度と、該積層体での曲面(高分子膜表面)の球面度との差が小さく、優れた光学物性を示す。具体的には、上記曲面での球面屈折力の差が±0.5ジオプトリー未満、好ましくは±0.1ジオプトリー未満、更に好ましくは±0.03ジオプトリー未満の範囲内とすることができる。即ち、本発明の積層体は、基材(例えばレンズ)が本来有する高い光学特性が殆ど損なわれることなく維持されていることを意味し、表面に形成されている高分子膜の厚さは勿論、高分子膜全体にわたって均一性が極めて高く、高分子膜の形成前後で曲面が実質的に変化していないことを意味する。即ち、前記高分子膜の積層面の周縁部を除く(中心)領域全体にわたって均一な膜となっており、その最大膜厚(wmax)及び最小膜厚(wmin)と平均膜厚(wav)との差(Δw=wmax−wav or wav−wmin)が何れも平均膜厚の7%以下(Δw/wav≦0.07)、好ましくは5%以下(Δw/wav≦0.05)、最も好ましくは3%以下(Δw/wav≦0.03)となっており、特に曲面の曲率中心での厚みが薄い(例えば2mm以下)薄肉の基材においても、均一な高分子膜が形成されている。
【0209】
ここで高分子膜層の周縁部を除く(中心)領域とは、高分子膜の周縁から所定の距離内側の領域(部分)であって、その領域(部分)の面積が積層面全体の面積の少なくとも70%、特に少なくとも85%となる領域(部分)を意味する。例えば基材が円形若しくは略円形であり、その大きさが例えば眼鏡レンズで一般的に用いられる直径60mm〜80mmである場合には、周縁から6.5〜4.9mm内側の部分、特に3.1〜2.3mm内側の部分に相当する。また、上記最大膜厚(wmax)、最小膜厚(wmin)および平均膜厚(wav)とは、互いに異なる任意の少なくとも5点(個所)の膜厚を測定したときの最大膜厚、最小膜厚および平均膜厚を意味する。
【0210】
なお、基材の周縁部の高分子膜は、特に周縁から所定の上記Δw/wavで表して0.07を超えるような厚さで厚くなることがあるが、一般に眼鏡レンズにおいては、周縁部は眼鏡フレームの形状に合わせて加工する際に除去されるので実用上は全く問題がない。
【0211】
また、上述した方法によって製造される本発明の積層体は、基材の曲面上のフォトクロミック高分子膜が1〜100μmと極めて薄い。このため、当該高分子膜を形成することによって基材の物性(特にロックウェル硬度等の機械的物性や光学特性)が損なわれることがない。また、フォトクロミック高分子膜は、膜厚が非常に薄いにもかかわらず、フォトクロミック化合物を0.2〜20重量%と高濃度で含有しているため、十分なフォトクロミック性が基材に付与されている。
【0212】
なお、高分子膜のフォトクロミック化合物の濃度を20重量%よりも高くした場合には、フォトクロミック化合物の凝集或いはブリードアウトを招き、得られる積層体のフォトクロミック特性が低下する。また、0.2重量%未満の濃度とした場合には、膜厚100μmにおいても十分なフォトクロミック特性が得られない。
また、高分子膜中のフォトクロミック化合物の好適な濃度は、膜厚と関連しており、フォトクロミック性(発色濃度、耐久性及び初期の着色)を考慮して、上気範囲内で調整するのがよい。例えば、膜厚に比して濃度が薄すぎると耐久性、発色濃度が低下し、逆に膜厚に比して濃度が濃すぎると、初期の着色が増大する傾向がある。従って、フォトクロミック眼鏡レンズの用途などにおいては、膜厚及びフォトクロミック化合物濃度は、20〜50μm及び2〜7重量%、好ましくは30〜50μm及び3〜7重量%とするのがよい。
【0213】
フォトクロミック性を有する本発明の積層体は、透明フィルム、眼鏡レンズ、家屋や自動車の窓ガラス等、公知の光学部品として各種の用途に適用される。
尚、本発明の積層体を眼鏡レンズとして使用する場合(即ち、眼鏡レンズを基材として用い、その表面にフォトクロミック高分子膜を形成する場合)、その高分子膜の屈折率が当該眼鏡レンズの屈折率とほぼ等しくなるようにすることがコ好ましい。このような屈折率の調整は、光重合硬化性組成物中のラジカル重合性単量体(A)の配合割合を調整することによって行うことができ、一般に、その硬化物(高分子膜)の屈折率が1.48〜1.75程度に調節される。
【0214】
また、上記の光重合硬化性組成物中に、前述したシリルモノマーおよび/またはイソシアネートモノマー、並びにアミン化合物が配合されている場合には、眼鏡レンズ(特にプラスチック系の眼鏡レンズ)表面に形成される高分子膜は、機材である眼鏡レンズに対して極めて高い密着性を有する。
【0215】
また、フォトクロミック高分子膜を有する本発明の積層体は、そのままフォトクロミック光学材料として使用することが可能であるが、より好ましくは、該高分子膜をハードコート材で被覆することが好ましい。ハードコート材で被覆することにより、フォトクロミック光学材料の耐擦傷性を向上させることができる。
当該ハードコート材としては公知のものがなんら制限なく使用でき、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム等の酸化物のゾルを主成分とするハードコート材や、有機高分子体を主成分とするハードコート材が使用できる。
更にハードコート材で被覆した表面に、SiO、TiO、ZrO等の金属酸化物から成る薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工及び2次処理を施すことも可能である。
【実施例】
【0216】
本発明を、以下、実施例により説明する。
以下に使用した化合物の略号と名称を示す。
【0217】
(1)フォトクロミック化合物
PC1:下記化合物(A)とトルエンのモル比1:1分子化合物
【化65】
Figure 0004225970
【0218】
(PC1の調製方法)
上記化合物(A)の緑色結晶を10容積倍のトルエンに加熱して溶解して、室温下24時間攪拌し、再結晶を行い濾過した。採取物を重量減少がなくなるまで、80℃で減圧乾燥を行い、黄色粉末状の分子化合物を得た。融点測定を行ったところ、(A)は273℃であったのに対し、得られた分子化合物PC1は、162℃でり、分子化合物を形成していることを確認できた。トルエンとのモル比は、H−NMRより求めた。
【0219】
PC2:下記化合物とトルエンのモル比1:1分子化合物
【化66】
Figure 0004225970
【0220】
(PC2の調製方法)
上記化合物(B)の赤色結晶を10容積倍のトルエンに加熱して溶解して、室温下24時間攪拌し、再結晶を行い濾過した。採取物を重量減少がなくなるまで、80℃で減圧乾燥を行い、黄色粉末状の分子化合物を得た。融点測定を行ったところ、(B)は185℃であったのに対し、得られた分子化合物PC2は、113℃であり、分子化合物を形成していることを確認できた。トルエンとのモル比は、H−NMRより求めた。
【0221】
PC3:
【化67】
Figure 0004225970
【0222】
PC4:
【化68】
Figure 0004225970
【0223】
(2)ラジカル重合性単量体
M1:平均分子量776の2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン
M2:ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量532)
M3:トリメチロールプロパントリメタクリレート
M4:ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセルユーシービー社、EB−1830)
M5:GMA:グリシジルメタアクリレート
M6:DPEHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
M7:ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート(新中村化学社:U−6HA)
M8:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン。
【0224】
(3)光重合開始剤
IN1:CGI184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
IN2:ビス(2,6−トリメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド。
【0225】
(4)アミン化合物
NMDEA:N−メチルジエタノールアミン
DMEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート。
【0226】
(5)安定剤
LS765:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート。
【0227】
(6)光学材料
CR39(アリル樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.50)
MR(チオウレタン系樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.60)
【0228】
実施例1
重合性組成物として、上記のラジカル重合性単量体を表1に記載した配合割合で配合した。
このラジカル重合性単量体の混合物100重量部に対してフォトクロミック化合物PC1を2.7重量部、PC2を1.5重量部、PC3を0.3重量部及びPC4を0.3重量部加え、さらに光重合開始剤IN1を0.375重量部、IN2を0.125重量部加えた。さらにその他の添加物として、光安定剤であるLS765(5重量部)、およびNMDEA(3重量部)をそれぞれ加え、十分に混合した。この混合液の動粘度を、キャノン−フェンスケ粘度計を用いて測定した。測定はJISK2283に準拠し、25℃で行った。得られた動粘度とあらかじめ測定した試料の比重より、下記式:
〔粘度(cP)=動粘度(cSt)×比重(g/cm)〕
を用いて試料の粘度を算出したところ110cpであった。
【0229】
続いて上記方法で得られた混合液の約2gを、MIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、中心厚1mm、コバ厚7mm、直径75mmのプラスチックレンズ:MRの表面にスピンコートした。この際、図2に示した形状のポリウレタン樹脂製のヘラをスピンコートの最中は終始レンズに接触させることにより、プラスチックレンズ周縁部に溜まる過剰のコーティング液の除去を行った。この時のヘラの形状は、図2における辺5の長さℓが3mm、辺6の長さmが5mm、下端部7の長さnが10mmのものを使用した。
スピンコート後の塗膜を表2に示す条件で光重合により硬化させた。すなわち、表面がコートされたレンズを、窒素ガス雰囲気中(酸素濃度:800ppm)で、レンズ表面の405nmの照射強度80mW/cmの下記の無電極Dバルブランプ(レンズ基材と光源の距離:60cm)を用いて、紫外線カットフィルターとして硬質ソーダガラスを介して2分間照射し、塗膜を硬化させた。
無電極Dバルブランプ:
Fusion UV Systems Japan KK製: Model F300SQ-6
200〜500nmの光源の強度分布;
200〜300nm:16%
300〜400nm:56%
400〜500nm:28%
硬質ソーダガラス透過後の200〜500nmの光源の強度分布;
200〜300nm:2%
300〜400nm:64%
400〜500nm:34%
【0230】
硬化終了後、熱電対にてレンズの表面温度を計測したところ、最高温度は80℃であった。さらに110℃のオーブンにて1時間加熱処理を行うことでフォトクロミック高分子薄膜の積層されたレンズを得た。なお、用いたプラスチックレンズは、あらかじめその表面をキーエンス(株)製プラズマ照射機(ST−7000)により大気圧プラズマ処理(プラズマ生成ガス:窒素)し、その後50℃の温水で洗浄し表面状態を改質したものを用いた。
得られたフォトクロ高分子膜を有するレンズを試料とし、以下の方法で各項目を評価した。
【0231】
(1)発色濃度(Abs.):120秒間光照射した後の、最大吸収波長における吸光度{ε(120)}と、光照射していない状態の硬化体の該波長における吸光度{ε(0)}との差{ε(120)−ε(0)}を求めこれを発色濃度とした。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0232】
(2)退色速度(min.):120秒間光照射した後、光の照射を止め、該硬化体の最大波長における吸光度が前記{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間{t1/2(min)}を測定した。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0233】
(3)発色色調:屋外の太陽光にて発色させ、目視で発色色調を確認した。
【0234】
(4)耐久性:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られたフォトクロコーティング層を有すレンズをスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により200時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A200)を測定し、
{(A200/A0)×100}の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0235】
(5)黄色さ(YI):レンズ試料の発色前の黄色さを、スガ試験機(株)製の色差計(SM−4)を用いて測定した。なおYI値が高いほど、黄色さが強いことを示す。
【0236】
(6)外観:フォトクロミック高分子膜が積層したレンズの外観を目視にて次の項目別に評価した。以下の検査を行い、すべて良好なものは○、下記異常が見られるものは、表3にその異常を示した。
(a)熱変形不良:レンズに蛍光灯をあてレンズ表面を注視した時、蛍光灯の反射光が歪んで見える。
(b)硬化不良:未重合単量体が多く、レンズをアセトン拭きすると、拭きムラを生じる。
(c)形状不良:膜の表面形状が、明らかに異常をきたしている。
【0237】
(7)密着性:フォトクロ高分子膜が積層されたレンズの、コーティング層側の表面に、先端が鋭利なカッターナイフで1mm×1mmのマス目を100個つけた。続いて、市販のセロテープ(登録商標)を貼り付けて、次いでそのセロテープ(登録商標)を素早く剥がした時のコーティング層(コート膜)の剥がれ状態を目視により確認した。評価は全くないものを◎、マス目90以上が剥がれずに残存しているものを○、マス目50〜90が剥がれずに残存しているものを△、マス目50以上が剥がれたものを×とした。
【0238】
(8)フォトクロミック高分子層の膜厚:フィルメトリクス社製薄膜測定装置を用いて測定を行った。膜厚の測定は、基材中心を通る線に沿って中心から周縁より5mm内側なでをほぼ等間隔に5つに区切った場合の、中心点、周縁より5mm内側の点、及びこれら間の当該区切りの個所4点の計6点について行い、wavおよびΔw/wavを求めた。表3にその結果を示す。
なお表3において、Δw/wavは、wmax及びwminの両方に基づいて求めたものの内大きい値を%で表したもの{(Δw/wav)×100}を記載している。フォトクロミック高分子層に目視で確認できる皺がある場合、又はフォトクロミック高分子膜の硬化が不十分である場合には上記装置での測定は不能となる。
【0239】
(9)光学特性:Automation & RobOtics社製 反射型曲率測定機FOCOVISION SR−1を用いて、フォトクロミック高分子膜を積層する前のレンズと積層後のレンズの球面屈折力の差を測定した。その差が±0.03ジオプトリー未満のものを◎、その差が±0.03ジオプトリー以上〜±0.1ジオプトリー未満のものを○、その差が±0.1ジオプトリー以上〜±0.5ジオプトリー未満のものを△、その差が0.5ジオプトリー以上のものを×とした。該差が少ない程、フォトクロミック高分子膜を形成した前後で、レンズの光学特性に変化がないと言える。なお、フォトクロミック高分子層に目視で確認できる皺がある場合、又はフォトクロミック高分子膜の硬化が不十分である場合には上記装置での測定は不能となる。
結果を表3に示した。
【0240】
実施例2〜6
重合性単量体を下記表1のように配合し、表2に示す照射条件を実施例1と変更した以外、実施例1と同様の方法を用いて、フォトクロ高分子膜を有するレンズ試料を作成し、表3に示す各物性を評価した。結果を表3に示した。
【0241】
比較例1〜3
重合性単量体を下記表1のように配合し、表2に示す照射条件を実施例1と変更した以外、実施例1と同様の方法を用いて、フォトクロ高分子層を有するレンズ試料を作成し、表3に示す各物性を評価した。結果を表3に示した。
表3に示した、光学特性が×のもの以外、本発明の積層体に相当する。表3に示した実施例1と比較例をそれぞれ対比すると、比較例1では、光照射時にレンズの表面温度が高すぎるため、熱変形不良を起こし、フォトクロミック高分子膜及び基材が変形している。又、比較例2では、本発明の紫外線カットフィルターを用いておらず、表面の重合が促進され内部の重合速度がそれに追いつかなかったため、表面に皺を生じている。又比較例3では、リン系光重合開始剤を用いなかったため、表面のみ僅かに重合し内部は未重合なため、硬化不良を起こしている。
【0242】
【表1】
Figure 0004225970
【0243】
【表2】
Figure 0004225970
【0244】
【表3】
Figure 0004225970
【0245】
本発明の製造方法によれば、一般的に入手可能な眼鏡レンズ等の曲面を有する基材上に、フォトクロミック化合物を高濃度で含有する均質で均一な厚さを有する薄い被膜を形成することができ、基材の優れた機械的、光学的特性を維持しつつフォトクロミック性を付与することができる。
また、上記方法により得られる本発明の積層体は、優れたフォトクロミック性を有するばかりでなく、そのフォトクロミックコーティング層は従来のフォトクロミック層と比べて、薄さ、膜厚の均一性、物性の均質性の点で優れている。さらに、本発明の製造方法で好適に使用できる光重合硬化性組成物は、基材の表面に塗布してモールドを使用せずに気体雰囲気中(即ち、開放系)で重合硬化させたときに、該雰囲気中に酸素ガスが僅かに含まれていても、また重合時に使用する光を吸収するフォトクロミック化合物が高濃度で存在しているにもかかわらず、照射光の波長分布を適度に調整すれば、これらの影響を受けずに短時間で均一に硬化することができる。

Claims (11)

  1. (A)ラジカル重合性単量体、(B)フォトクロミック化合物及び(C)光重合開始剤成分からなり、該フォトクロミック化合物(B)を0.2〜20重量%の量で含み、且つ光重合開始剤成分(C)としてリン系光重合開始剤をラジカル重合性単量体(A)100重量部当り、0.01〜10重量部含有している光重合硬化性組成物と、曲面を有する基材とを用意し、
    当該基材の曲面上に、前記光重合硬化性組成物を塗布し、
    前記基材を100℃以下に保持しながら、400nm以上500nm以下の波長成分が25〜75%、300nm以上400nm未満の波長成分が25〜75%、200nm以上300nm未満の波長成分が0〜5%である相対強度分布を有する活性エネルギー線を前記光重合硬化性組成物に照射して硬化させる、
    ことを特徴とする積層体の製造方法。
  2. 前記光重合硬化性組成物は、光重合開始剤成分(C)として、さらにリン系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤をラジカル重合性単量体(A)100重量部当り0.01〜10重量部含有している請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記重合硬化性組成物の硬化を、気体雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  4. 紫外線を含む活性エネルギー線を300nm未満の波長成分を減少させるフィルターを通過させた後に、前記光重合硬化性組成物に照射する請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記フィルターとして硬質ソーダガラスを使用する請求項4に記載の製造方法。
  6. 紫外線を含む活性エネルギー線を、前記フィルターを通過させた後、さらに熱線カットフィルターを通過させてから、前記光重合硬化性組成物に照射する請求項4に記載の製造方法。
  7. 前記基材として、前記曲面の曲率中心での厚みが2mm以下の薄肉基材を使用する請求項1に記載の製造方法。
  8. 基材の曲面上にフォトクロミック化合物及びリン系光重合開始剤を含有する光重合硬化性組成物を塗布する方法としてスピンコーティング法を採用し、且つスピンコート中に基材周縁部に生じる前記光重合硬化性組成物の液溜まりを除去することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  9. 曲面を有する基材と、該基材の曲面上に形成されたフォトクロミック化合物を0.2〜20重量%含有する厚さ1〜100μmの高分子膜とからなる請求項1に記載の方法によって得られる積層体であって、該高分子膜層が積層される前の前記基材の曲面での球面屈折力と、該積層体の高分子膜層が形成する曲面での球面屈折力との差が±0.5ジオプトリー未満であり、且つ前記高分子膜層の周縁部を除く領域の最大膜厚及び最小膜厚と平均膜厚との差が何れも平均膜厚の7%以下であることを特徴とする前記積層体。
  10. 前記基材が、該基材の曲面における曲率中心での厚みが2mm以下の薄肉の光学部材である請求項9に記載の積層体。
  11. 前記基材がプラスチックレンズである請求項9に記載の積層体。
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