JP4890326B2 - フォトクロミックレンズの製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本願出願人は、上記知見に基づき、少なくとも一方の面の超微小押し込み硬さが800nm以上であり適度な柔軟性を有するフォトクロミック膜について、先に特許出願した(特願2007−020484号)。
例えば特許文献1、2に記載されているように、フォトクロミック膜の原料液には、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤が必要により添加される。一方、本願出願人が開発した前述のフォトクロミック膜は最表面に柔軟性を付与するために、通常、フォトクロミック膜が完全に硬化するまでは硬化処理を行わずに形成される。そのためフォトクロミック膜最表面には未重合の部分が含まれる。このようなフォトクロミック膜を大気中で長時間保存すると、フォトクロミック膜の原料液中に添加されている添加剤が、その外表面側(空気と接触する側)に染み出し(本発明においては、添加剤または添加剤由来の成分がフォトクロミック膜表面側に出てくることを「染み出す」と表現する)、染み出した成分がコーティング液中の成分と反応することが、曇りや着色などの光学的欠陥の原因となっていると考えられる。そして本発明者らは、上記知見に基づき更に検討を重ね、フォトクロミック膜形成後のフォトクロミックレンズ表面が、空気中の酸素や水分と接触することが上記染み出しの原因となることを新たに見出した。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
[1]レンズの一方の面を形成するための第一モールドの成形面にフォトクロミック色素、硬化性成分、および添加剤を含有するフォトクロミック液を塗布するフォトクロミック液塗布工程と、
前記フォトクロミック液に、該フォトクロミック液の硬化が完全に進まない程度に硬化処理を施し第一モールドの前記成形面上にフォトクロミック膜を形成するフォトクロミック液硬化処理工程と、
前記第一モールドとレンズの他方の面を形成するための第二モールドを、前記第一モールド上に形成されたフォトクロミック膜の最表面が第二モールドの成形面と対向するように配置し、かつ前記2つのモールドの周囲を密閉して、前記フォトクロミック膜が内部に位置するキャビティを備えたレンズ鋳型を形成するレンズ鋳型形成工程と、
前記キャビティに硬化性成分を含むレンズ原料液を注入し、該キャビティで前記硬化性成分の硬化反応を行う注型重合工程と、
前記レンズ鋳型を取り除き、前記フォトクロミック膜がレンズ基材上に形成されたレンズを得る離型工程と、
得られたレンズを真空雰囲気中、または脱酸素剤および/もしくは乾燥剤を含む密閉雰囲気中に保存することにより、前記添加剤が前記フォトクロミック膜から染み出すことを抑制する保存工程と、
保存後のレンズのフォトクロック膜最表面にコーティングを形成する成膜工程と、
を含むことを特徴とするフォトクロミックレンズの製造方法。
[2]前記保存工程を脱酸素剤および乾燥剤を含む密閉雰囲気中で行う、[1]に記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
[3]前記添加剤はヒンダードアミン系光安定剤である、[1]または[2]に記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
[4]前記フォトクロミック液硬化処理工程における硬化処理により、第一モールドと対向する面側が最表面側よりも未硬化の硬化性成分を多く含むフォトクロミック膜を得る、[1]〜[3]のいずれかに記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
[5]前記硬化処理を、第一モールドのフォトクロミック液塗布面に対する光照射により行う、[1]〜[4]のいずれかに記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
[6]前記脱酸素剤および/もしくは乾燥剤を含む密閉雰囲気をガスバリア性の包装袋を用いて形成し、該雰囲気中で前記保存工程を行う、[1]〜[5]のいずれかに記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
レンズの一方の面を形成するための第一モールドの成形面にフォトクロミック色素、硬化性成分、および添加剤を含有するフォトクロミック液を塗布するフォトクロミック液塗布工程と、
前記フォトクロミック液に、該フォトクロミック液の硬化が完全に進まない程度に硬化処理を施し第一モールドの前記片面上にフォトクロミック膜を形成するフォトクロミック液硬化処理工程と、
前記第一モールドとレンズの他方の面を形成するための第二モールドを、前記第一モールド上に形成されたフォトクロミック膜の最表面が第二モールドの成形面と対向するように配置し、かつ前記2つのモールドの周囲を密閉して、前記フォトクロミック膜が内部に位置するキャビティを備えたレンズ鋳型を形成するレンズ鋳型形成工程と
前記キャビティに硬化性成分を含むレンズ原料液を注入し、該キャビティで前記硬化性成分の硬化反応を行う注型重合工程と、
前記レンズ鋳型を取り除き、前記フォトクロミック膜がレンズ基材上に形成されたレンズを得る離型工程と、
得られたレンズを真空雰囲気中、または脱酸素剤を含む密閉雰囲気中に保存することにより、前記添加剤が前記フォトクロミック膜から染み出すことを抑制する保存工程と、
保存後のレンズのフォトクロック膜最表面にコーティングを形成する成膜工程と、
を含むことを特徴とするフォトクロミックレンズの製造方法
に関する。なお、本発明において、「フォトクロミック膜」とは、少なくともフォトクロミック色素を含有し、所定波長の光の照射および遮断に伴い透過率変化を起こし得る膜をいうものとする。
以下に、本発明のフォトクロミックレンズの製造方法について更に詳細に説明する。
フォトクロミックレンズは、一般に、前面(眼鏡レンズとして装用者に装用されたときの物体側の面)と後面(眼鏡レンズとして装用者に装用されたときの眼球側の面)に光学面を備えたレンズ基材と、そのレンズ基材の前面に形成されたフォトクロミック膜と、フォトクロミック膜の上に形成されたハードコートなどのコーティング膜とを備えている。コーティング膜としてはその他に反射防止膜、撥水膜、防汚膜、ミラーコート膜など各種コーティングを必要に応じて積層して形成することができる。
前述のように、フォトクロミック膜を完全に硬化させずに適度な柔軟性(流動性)を持たせれば、フォトクロミック膜中でフォトクロミック色素が動きやすくなり発退色の反応速度および発色濃度が大きく向上させることができる。しかし、フォトクロミック膜全体の柔軟性(流動性)を高めると、例えば後述する注型重合法によってフォトクロミック膜を形成する場合には、注型重合時にレンズ原料液とフォトクロミック膜の未硬化部分との混ざり合いが生じ、光学特性が低下するおそれがある。そこで、フォトクロミックレンズにおける光応答性が主として光が入射する側のフォトクロミック膜表層部において発現されることに着目し、フォトクロミック膜のレンズ前面側表層部に存在する色素を動きやすい状態としておき、レンズ後面側表層部は、注型重合時にレンズ原料液との混ざり合いが生じないように硬化させることが好ましい。このようなフォトクロミック膜を得る方法としては、フォトクロミック膜の硬化の程度を評価できる指標(例えば硬度や重合度)をフォトクロミック膜の物体側と眼球側とで測定し、その結果を基に硬化条件を設定するとよい。以上の観点から、フォトクロミック膜のレンズ基材と対向する表面の超微小押し込み硬さは、少なくとも最表面より高い値とすることが好ましい。その好ましい範囲は、500〜5000nmの範囲である。レンズ基材と対向する面の超微小押し込み硬さが500nm以上であれば、基材とフォトクロミック膜との密着性を確保することができ、5000nm以下であれば、注型重合法において生じ得る基材とフォトクロミック膜との界面での混ざり合いを防ぎ、良好な光学特性を確保することができる。その下限は、より好ましくは600nm、更に好ましくは1000nm、特に好ましくは2500nmであり、その上限は、より好ましくは3500nmである。
まず、レンズ基材上のフォトクロミック膜を基材から剥がし、測定対象面(面Aまたは面B)が最表面に位置するようにモニターガラス上に固定する。次いで、測定対象面に三角錐形状のダイヤモンド圧子(稜間隔115度)を用いて荷重100mgfをかけて垂直に押し込み、その際の膜の変位量(nm)を測定する。本発明では、この変位量(nm)を超微小押し込み硬さとする。数値が小さいほど硬度が高いことを意味し、数値が大きいほど硬度が低く柔軟であることを意味する。
また、自力反応型脱酸素剤としては、例えば特公昭57−31449号公報に記載されたものがある。この脱酸素剤は、脱酸素剤中に水分供与体を存在させて、そこから脱酸素に必要な水分を供給するようにしたものである。
自力反応型の脱酸素剤を使用した場合は、脱酸素剤中の水分供与体から生じた水蒸気が密閉された包装材内に蒸散し、レンズに影響を与えるおそれがある。そのような場合は、自力反応型の脱酸素剤とともに乾燥剤(例えばシリカゲルなど)を包装材中に同封すると良い。また、脱酸素機能と乾燥機能を合わせ持つ脱酸素剤を用いても良い(例えば三菱ガス化学株式会社製ファーマキープ(KD、KCタイプ))。また、水分供与体を必要とせずに乾燥雰囲気中で脱酸素機能を発揮する脱酸素剤を用いてもよい。そのような脱酸素剤としては、炭素−炭素不飽和結合を有する架橋高分子からなる脱酸素成分を有する脱酸素剤(例えば特開平11−70331号公報参照)や、遷移金属を担体に担持して活性化してなる金属を主剤とする脱酸素剤(例えば特開平8−38883号公報参照)や、マグネシウム化合物を担体に担持後、還元することにより得られる活性化マグネシウムを主剤とする脱酸素剤(例えば特開2001−37457号公報参照)、不飽和基を有した液状炭化水素オリゴマーを主剤とし酸素吸収促進物質を含むものを担体に担持した酸素吸収組成物を有する脱酸素剤(例えば特開平10−113555号公報参照)等がある。市販されている製品としては、三菱ガス化学株式会社製ファーマキープ(KHタイプ)を挙げることができる。脱酸素剤の種類と封入量は、保存雰囲気内の酸素量と、保存期間等を考慮して決定すると良い。
(フォトクロミック液塗布工程)
レンズの一方の面を形成するための第一モールドの片面(成形面)に、フォトクロミック液(フォトクロミック色素、硬化性成分、および必要に応じて各種添加剤を含む)を塗布する。
(フォトクロミック液硬化処理工程)
前記第一モールド成形面上に塗布されたフォトクロミック液が完全に硬化が進まない程度に硬化処理を施して、第一モールド成形面にフォトクロミック膜を形成する。
(レンズ鋳型形成工程)
前記第一モールドとレンズの他方の面を形成するための第二モールドを、前記第一モールドのフォトクロミック膜の最表面が第二モールドの成形面と対向するように配置し、かつ前記2つのモールドの周囲を密閉して、フォトクロミック膜が内部に位置するキャビティを備えたレンズ鋳型を形成する。
(注型重合工程)
前記キャビティに硬化性成分を含むレンズ原料液を注入し、該キャビティで前記硬化性成分の硬化反応を行う。
(離型工程)
前記レンズ鋳型を取り除き、成形されたレンズを得る。この得られたレンズには、前記フォトクロミック液硬化処理工程により前記第一モールド成形面に形成されていたフォトクロミック膜が第一モールド成形面から剥がれてレンズ基材上に形成されている。
以下に、各工程の詳細を順次説明する。
本工程では、レンズの一方の面を形成するためのモールド(第一モールド)の片面(成形面)に、フォトクロミック液を塗布する。
フォトクロミック液としては、少なくともフォトクロミック色素、硬化性成分をふくみ、必要に応じて各種添加剤を含むフォトクロミック液を用いることができる。各成分の詳細は後述する。
本工程では、第一モールド上に塗布されたフォトクロミック液に硬化処理を施すことにより、第一モールド上にフォトクロミック膜を形成する。
(i)硬化性成分
フォトクロミック膜形成のために使用可能な硬化性成分は、特に限定されず、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の光重合性モノマーやオリゴマー、それらのプレポリマーを用いることができる。これらのなかでも、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合性基として有する化合物が好ましい。なお、前記(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの両方を示す。
Lスケールロックウェル硬度とは、JIS−B7726に従って測定される硬度を意味する。各モノマーの単独重合体についてこの測定を行うことにより、前記硬度条件を満足するかどうかを簡単に判断することができる。具体的には、モノマーを重合させて厚さ2mmの硬化体を得、これを25℃の室内で1日保持した後にロックウェル硬度計を用いて、Lスケールロックウェル硬度を測定することにより容易に確認することができる。
前記高硬度モノマーは、硬化後の硬化体の耐溶剤性、硬度、耐熱性等を向上させる効果を有する。これらの効果をより効果的なものとするためには、単独重合体のLスケールロックウェル硬度が65〜130を示すラジカル重合性単量体が好ましい。
このような高硬度モノマーは、通常2〜15個、好ましくは2〜6個のラジカル重合性基を有する化合物であり、好ましい具体例としては、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物が挙げられる。
前記一般式(1)におけるR14は水素原子、メチル基またはエチル基である。
一般式(1)におけるR15は3〜6価の有機基である。この有機基は特に限定されるものではなく、また、その主鎖中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、ウレタン結合等の炭素一炭素結合以外の結合を含んでいてもよい。
単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上を示すためには、R15は、好ましくは炭素数1〜30の有機基であり、より好ましくはエーテル結合および/またはウレタン結合を含んでいてもよい炭素数1〜15の有機基である。
また、fおよびf’は、それぞれ独立に0〜3の範囲の整数である。また、Lスケールロックウェル硬度を60以上とするためには、fおよびf’の合計が0〜3であることが好ましい。
また単独重合体のLスケールロックウェル硬度を60以上とするために、hは1〜10の範囲の整数であり、好ましくは1〜6の範囲の整数である。
前記一般式(2)で示される高硬度モノマーの具体的としては、分子量2,500〜3,500の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB80等)、分子量6,000〜8,000の4官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB450等)、分子量45,000〜55,000の6官能ポリエステルオリゴマー(ダイセルユーシービー社、EB1830等)、分子量10,000の4官能ポリエステルオリゴマー(第一工業製薬社、GX8488B等)等が挙げられる。
一般式(3)で示される高硬度モノマーの具体的としては、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
一般式(4)で示される高硬度モノマーの具体的としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,9−ノニレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
一般式(5)で示される高硬度モノマーの具体的としては、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
なお、前記一般式(1)〜(5)で示される化合物でも、置換基の組み合わせによっては単独重合体のLスケールロックウェル硬度が60未満のものがあるが、その場合には、これらの化合物は後述する低硬度モノマーまたは中硬度モノマーに分類される。
また、前記一般式(1)〜(5)で示されない高硬度モノマーもあり、その代表的化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
このような低硬度モノマーとしては、下記一般式(6):
で示される2官能モノマーや、下記一般式(8):
で示される単官能のモノマーが例示される。
前記一般式(6)におけるR24およびR25は、それぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、Zは酸素原子または硫黄原子である。
一般式(6)においては、R23が水素原子の場合、すなわち重合性基としてアクリロイルオキシ基またはアクリロイルチオ基を有する場合には、mは1〜70の整数であり、一方、R23がメチル基である場合、すなわち重合性基としてメタクリロイルオキシ基またはメタクリロイルチオ基を有する場合には、mは7〜70の整数である。また、m’は0〜70の範囲の整数である。
一般式(6)で示される低硬度モノマーの具体的としては、トリアルキレングリコールジアクリレート、テトラアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アタリレート類が挙げられる。
また、Iは環状の基を含む2価の有機基である。このIとしては前記式(9)に含まれる環状の基であるEとして例示されたものと同様である。式(7)におけるi’およびj’は、i’+j’の平均値が8〜40となる整数、好ましくは9〜30となる整数である。このi’およびj’も前記した式(3)におけるiおよびjと同様の理由で通常は平均値で示される。
一般式(7)で示される低硬度モノマーの具体的としては、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン等を挙げることができる。
炭素数1〜25のアルキル基またはアルケニル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ノニル基等が挙げられる。また、これらアルキル基またはアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、さらには、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アリール基、エポキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
炭素数1〜25のアルコキシアルキル基としては、メトキシブチル基、エトキシブチル基、ブトキシブチル基、メトキシノニル基等が挙げられる。
炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、アントラニル基、オクチルフェニル基等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基以外のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、オレイル基等が挙げられる。
一般式(8)におけるm’’は、R29が水素原子の場合、すなわちアクリロイルオキシ基またはアクリロイルチオ基を重合性基として有する場合には1〜70の範囲の整数であり、R29がメチル基の場合、すなわちメタクリロイルオキシ基またはメタクリロイルチオ基を重合性基として有する場合にはm’’は4〜70の整数であり、またm’’’は0〜70の範囲の整数である。
一般式(9)で示される低硬度モノマーの具体的としては、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアタリレート、ブチルアタリレート、ラウリルアクリレート等を挙げることができる。
これら式(6)〜(9)で表される低硬度モノマーの中でも、平均分子量475のメチルエテルポリエチレングリコールメタアクリレート、平均分子量1,000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタアクリレート、トリアルキレングリコールジアクリレート、テトラアルキレングリコールジアクリレート、ノニルアルキレングリコールジアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレートが特に好ましい。
前記式(6)〜(9)で示される化合物でも、置換基の組み合わせによっては単独重合体のLスケールロックウェル硬度が40以上を示すものがあるが、その場合には、これらの化合物は前述した高硬度モノマーまたは後述する中硬度モノマーに分類される。
フォトクロミック液に添加し得るフォトクロミック色素としては、公知のものを使用することができ、例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック化合物が挙げられ、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を特に制限なく使用することができる。
前記フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物としては、例えば、特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書などに記載されている化合物が好適に使用できる。
また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として、例えば、特開2001−114775号公報、特開2001−031670号公報、特開2001−011067号公報、特開2001−011066号公報、特開2000−347346号公報、特開2000−34476号公報、特開2000−3044761号公報、特開2000−327676号公報、特開2000−327675号公報、特開2000−256347号公報、特開2000−229976号公報、特開2000−229975号公報、特開2000−229974号公報、特開2000−229973号公報、特開2000−229972号公報、特開2000−219687号公報、特開2000−219686号公報、特開2000−219685号公報、特開平11−322739号公報、特開平11−286484号公報、特開平11−279171号公報、特開平10−298176号公報、特開平09−218301号公報、特開平09−124645号公報、特開平08−295690号公報、特開平08−176139号公報、特開平08−157467号公報等に開示された化合物も好適に使用することができる。
R41およびR42は、それぞれ独立に、下記一般式(14)、
なお、前記一般式(14)、(15)、前記R41およびR42にて説明した置換アリール基および置換ヘテロアリール基における置換基としては、前記R43〜R44と同様の基が挙げられる。
フォトクロミック液に添加する重合開始剤は、重合方法に応じて、公知の熱重合開始剤および光重合開始剤から適宜選択することができる。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイドが好ましい。
これら光重合開始剤は、複数の種類のものを適宜混合して使用することができる。光重合開始剤のフォトクロミック液全量に対する配合量としては、前記重合性成分100質量部(ラジカル重合性単量体等)に対して、通常0.001〜5質量部であり、0.1〜1質量部であると好ましい。
これら熱重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性単量体の種類や組成によって異なるが、通常、前記重合性成分100質量部に対して0,01〜10質量部の範囲とすることが好適である。上記熱重合開始剤は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
フォトクロミック液には、フォトクロミック色素の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。これら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
前記フォトクロミック液は、25℃での粘度が20〜500cpであることが好ましく、50〜300cpであることがより好ましく、60〜200cpであることが特に好ましい。この粘度範囲とすることにより、フォトクロミック液の塗布が容易となり、所望の厚さのフォトクロミック膜を容易に得ることができる。
フォトクロミック膜の硬化処理は、光重合、熱重合のいずれによって行ってもよいが、両面で異なる硬度を有するフォトクロミック膜を得るためには、硬化状態の部分的制御が容易な光重合を用いることが好ましい。光重合を用いる場合、第一モールドのフォトクロミック液塗布面に対して光照射を行うことにより、光照射側の面(フォトクロミック膜最表面)近傍は硬化し、かつ内部が未硬化状態であって、一方の面に適度な柔軟性が付与されたフォトクロミック膜を得ることができる。硬化状態は、光源とモールド表面(フォトクロミック液塗布面)との距離、照度、照射量、照射時間を調整することによって制御することができる。なお、硬化効率を上げるために、光照射を不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
フォトクロミック膜の硬化状態は、フォトクロミック膜の厚さによっても調整することができる。フォトクロミック膜が過度に薄いと、照射した光の大部分が膜を透過し、膜全体の重合が進行するため、第一モールドと対向する面に適度な柔軟性を付与することが困難となる。また、フォトクロミック膜において色素が動き易い部分が少なくなるため、発退色の反応速度や発色濃度を向上することが困難となる。以上の点から、フォトクロミック膜の厚さは、10μm以上であることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。
レンズ鋳型形成工程では、前記フォトクロミック液硬化処理工程において成形面にフォトクロミック膜を形成した第一モールドを、第ニモールドの他方の面と対向するように配置するとともに、これら2つのモールドの周囲に環状のガスケットを配置することにより、2つのモールドとガスケットによってキャビティを形成する。ここで、第一モールドは、フォトクロミック膜の最表面が第二モールド表面と対向するように配置される。これにより、フォトクロミック膜はキャビティ内部に位置することになる。
注型重合工程は、前記レンズ鋳型形成工程において形成されたキャビティ内へレンズ原料液を注入し、レンズ基材の重合とレンズ基材上へのフォトクロミック膜の形成を行う工程である。
キャビティ内へ注入されるレンズ原料液は、レンズ基材を構成する各種ポリマーの原料モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーを含むことができ、共重合体を形成するために2種以上のモノマーの混合物を含むこともできる。レンズ原料液には、必要があればモノマーの種類に応じて選択した触媒を添加することもできる。また、レンズ原料液には、通常使用される各種添加剤を含むこともできる。
重合が完了した後に、ガスケット、第一モールド、第二モールドを取り除き、フォトクロミック膜がレンズ基材上に形成されたフォトクロミックレンズを得る。離型工程は、通常の注型重合における離型工程と同様に行うことができる。
以下に、成膜工程について説明する。
成膜工程は、前記保存工程において酸素濃度および/または湿度が低下した雰囲気中で保存されていたフォトクロミックレンズのフォトクロミック膜最表面にコーティングを形成する。コーティングとしては、ハードコート層、反射防止膜等を挙げることができる。また、ハードコート層を形成した後、その上に反射防止膜等の各種コーティングを設けることも可能である。
前記有機ケイ素化合物としては、例えば下記一般式(III)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物が挙げられる。
(R91)a'(R93)b'Si(OR92)4-(a'+b') ・・・(III)
(式中、R91は、グリシドキシ基、エポキシ基、ビニル基、メタアクリルオキシ基、アクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、フェニル基等を有する有機基、R92は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシル基または炭素数6〜10のアリール基、R93は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基、a’およびb’はそれぞれ0または1を示す。)
前記R92の炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
前記R92の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
前記R93の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖または分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
前記R93の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
この無機酸化物としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ニオブ(Nb2O5)酸化イットリウム(Y2O3)等が挙げられる
1.フォトクロミック液の調製
プラスチック製容器にトリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性単量体100質量部に、フォトクロミック色素として下記クロメン1を3質量部、酸化防止剤としてはヒンダードアミン系光安定剤である三共ライフテック社製サノールLS765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI−184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を0.4質量部、CGI403(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド)を0.1質量部添加した。その液を自転公転方式攪拌脱泡装置((株)シンキー製AR−250)にて2分間脱泡することで、フォトクロミック液を得た。得られた液の粘度は200mpa/sであった。
上記1.で得たフォトクロミック液を用いて、以下の工程によりモールド上にフォトクロミック膜を形成した。
(1)フォトクロミック液を約2g程度、清浄に洗浄されたガラスモールドの凹面側に滴下し、スピンコート法にて600回転で20秒間、コーティングを行った。
(2)その後、窒素雰囲気中で東芝ライラック製UVランプにてモールドの凹面側から紫外線を照射し、フォトクロミック液の硬化処理を行った。紫外線照射は、照射距離330mm、照射時間165秒で行った。
(3)モールド上に形成されたフォトクロミック膜の膜厚を測定すると30ミクロンであった。
(4)次にフォトクロミック膜が付いたガラスモールドを110℃×100分の加熱処理(アニール)をした後、180秒間のUVオゾン処理(メーカー:アイグラフィック社製)を行った。
フォトクロミック膜の形成が終了したモールドを使用し、以下の工程によりフォトクロミックレンズを成形した。
(1)フォトクロミック膜を形成したモールドをレンズ凸面となるよう筒状のガスケットに押し込み、レンズ凹面となる面にはフォトクロミック膜が形成されていないモールドを所定量押し込み組み付けをしてキャビティを形成した。
(2)次に、(1)にて形成されたキャビティ内に熱硬化性ウレタン系モノマーを含むレンズ原料を注入し所定の重合プログラムにて加熱重合しモノマーを硬化させた。
(3)重合が終了し硬化したレンズからモールドを離型した。このときモールドに形成されたフォトクロミック膜がレンズに転写された。
(4)フォトクロミック膜が転写されたレンズは外周部を切削後洗浄し、所定のプログラムでアニール処理をした。
以上の工程により、凸面上にフォトクロミック膜を有するメニスカス形状のフォトクロミックレンズを得た。
得られたフォトクロミックレンズを、レンズ保護シートでレンズの両光学面を覆うようにして挟み、レンズの凹面側のレンズ保護シートの外側に脱酸素剤と乾燥剤を配置した状態で、酸素と水分の透過を抑えたレンズ包装袋に開口部より挿入した。そして、大気中でレンズ包装袋の開口部を熱圧着により接着して包装袋を密閉した。
レンズ保護シートとしては、和紙製のシートを使用した。
レンズ包装袋は、酸素透過度がほぼ0ml/m2・atm・24hであり、水蒸気透過度がほぼ0g/m2・24hであるガスバリア性フィルムを用いて袋状に形成した。ガスバリア性フィルムとしては、レンズ包装袋として形成されたときに最も内側に位置する第1層が低密度ポリエチレン(30μm)、第2層がポリエチレン(20μm)、第3層がアルミニウム箔(7μm)、第4層がポリエチレン(13μm)、第5層がポリエチレンテレフタレート(12μm)からなる複合フィルムを使用した。密閉された状態の包装袋内のレンズを除いた容積は約30〜40mlであった。
また、脱酸素剤としては、酸素吸収量が約20mlの脱酸素剤(製造元:三菱ガス化学株式会社、商品名:エージレス、型番:Z−20PK)を使用した。
また、乾燥剤としてはシリカゲル(製造元:旭硝子エスアイテック株式会社製。成分:二酸化ケイ素98%以上、塩化コバルト0.09%)が和紙製袋に分包された物を使用した。前記脱酸素剤は自力反応型で有るため脱酸素剤中の水分供与体から水蒸気が包装袋内に蒸散するが、この蒸散される水分量および包装袋内容積から計算した必要量より過剰のシリカゲルを包装袋内に封入した。
1.フォトクロミック液の調製
実施例1と同じとした。
2.フォトクロミック膜の形成
実施例1と同じとした。
3.注型重合
実施例1と同じとした。
4.酸素・水分低減雰囲気中保存工程
得られたフォトクロミックレンズを、ロータリーポンプで10-1Paの圧力にした真空デシケータ中保存した。
1.フォトクロミック液の調製
実施例1と同じとした。
2.フォトクロミック膜の形成
実施例1と同じとした。
3.注型重合
実施例1と同じとした。
4.酸素・水分低減雰囲気中保存工程
得られたフォトクロミックレンズを、窒素ガスで置換されたガス置換型デシケータ中に設置し、窒素ガスを流しながら保存した。窒素ガスは、純度99.999vol%以上、酸素1volppm以下、水分(露点−70℃以下)のものを使用した。また、デシケータ中の酸素濃度は、0.06%以下であった。
1.フォトクロミック液の調製
実施例1と同じとした。
2.フォトクロミック膜の形成
実施例1と同じとした。
3.注型重合
実施例1と同じとした。
4.酸素・水分低減雰囲気中保管工程
レンズ包装袋中に脱酸素剤を入れずに乾燥剤だけを封入した以外は、実施例1と同じとした。
1.フォトクロミック液の調製
実施例1と同じとした。
2.フォトクロミック膜の形成
実施例1と同じとした。
3.注型重合
実施例1と同じとした。
4.酸素・水分低減雰囲気中保管工程
レンズ包装袋中に乾燥剤を入れずに脱酸素剤だけを封入した以外は、実施例1と同じとした。
1.フォトクロミック液の調製
実施例1と同じとした。
2.フォトクロミック膜の形成
実施例1の2.の(1)〜(2)までは同じとした。その後、窒素雰囲気中で東芝ライラック製UVランプにてモールドの凸面側から紫外線を照射し、フォトクロミック液の硬化処理を行った。紫外線照射は、照射距離330mm、照射時間40秒で行った。モールド上に形成されたフォトクロミック膜の膜厚を測定すると30ミクロンであった。
次にフォトクロミック膜が付いたガラスモールドを110℃×100分の加熱処理(アニール)をした後、180秒間のUVオゾン処理(メーカー:アイグラフィック社製)を行った。
3.注型重合
実施例1と同じとした。
4.酸素・水分低減雰囲気中保管工程
実施例1と同じとした。
フォトクロミック膜の形成を実施例6の2.と同様に両面からUV照射した以外は、実施例2と同じとした。
フォトクロミック膜の形成を実施例6の2.と同様に両面からUV照射した以外は、参考例1と同じとした。
フォトクロミック膜の形成を実施例6の2.と同様に両面からUV照射した以外は、実施例4と同じとした。
フォトクロミック膜の形成を実施例6の2.と同様に両面からUV照射した以外は、実施例5と同じとした。
実施例1の1.〜3.の工程により形成したフォトクロミックレンズを空気中の暗所に保存した。保存中の温度は20℃〜25℃の範囲内、相対湿度は30〜50%の範囲内であった。
実施例6の1.〜3.の工程により形成したフォトクロミックレンズを空気中の暗所に保存した。保存中の温度は20℃〜25℃の範囲内、相対湿度は30〜50%の範囲内であった。
実施例および参考例の保存開始から2日後のレンズに対して、下記4〜6の処理を行い、ハードコート層および反射防止膜を形成した。
5℃雰囲気下、変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム−酸化タングステン−酸化珪素複合体メタノールゾル45質量部とγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン15質量部およびテトラエトキシシラン3質量部とを混合し、1時間攪拌した。その後、0.001モル/L濃度の塩酸4.5質量部を添加し、50時間攪拌した。その後、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)25質量部、ダイアセトンアルコール(DAA)9質量部および(C)成分であるアルミニウムトリスアセチルアセトネート(AL−AA)1.8質量部、過塩素酸アルミニウム0.05質量部を順次添加し、150時間攪拌した。得られた溶液を0.5μmのフィルターでろ過したものをコーティング組成物とした。
実施例1で形成したフォトクロミックレンズのフォトクロミック膜表面に対して30秒間のUVオゾン処理を実施した。その後、60℃、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液にて5分間浸漬処理して十分に純水洗浄/乾燥を行った後、前記4.で調製されたハードコーティング組成物を用いて、ディッピング法(引き上げ速度20cm/分)でコーティングを行い、110℃、60分加熱硬化することでハードコート層を形成した。
前記5.にてハードコート層を形成したプラスチックレンズを蒸着装置に入れ、排気しながら85℃に加熱し、2.7mPa(2×10-5torr)まで排気した後、電子ビーム加熱法にて蒸着原料を蒸着させて、SiO2からなる膜厚0.6λの下地層、この下地層の上にTa2O5、ZrO2、Y2O3からなる混合層(nd=2.05、nλ=0.075λ)とSiO2層(nd=1.46、nλ=0.056λ)からなる第一屈折層、Ta2O5、ZrO2、Y2O3からからなる混合層(nd=2.05、nλ=0.075λ)とSiO2層からなる第2低屈折率層(nd=1.46、nλ=0.25λ)を形成して反射防止膜を施した。
(1)外観検査
実施例1、2、4〜7、9、10、参考例1、2、および比較例1、2において、それぞれ保存開始から2日後、5日後、10日後、20日後、30日後に、レンズ表面を光学顕微鏡(ニコン社製OPTIPHOT2)を使って外観検査した。外観検査は、微分干渉モード200倍、観察エリア425μm×325μm内において、染み出しが生じている箇所の数を目視によりカウントした。実施例1、2、4、5、参考例1、および比較例1の結果を表1に、実施例6、7、9、10、参考例2、および比較例2の結果を表2に示す。なお、これら表において、染み出し箇所の数が0〜50個の場合を記号○、51〜100個の場合を記号△、101個以上の場合を記号×で表示している。また、光学顕微鏡の微分干渉モード200倍の写真を図7に示す。
また、実施例11では、何れのレンズもコーティング後に曇りや着色などの光学欠陥は観察されず、光学特性は良好であった。
得られたフォトクロミックレンズ上のフォトクロミック膜に対し、キセノンランプを用い、エアロマスフィルターを介して15分間(900秒)、フォトクロミック膜表面(レンズ基材と対向する面とは反対の面)に対して光照射し、フォトクロミック膜を発色させた。この時の発色濃度について大塚電子工業製の分光光度計により550nmの透過率を測定した。上記光照射は、JIS T7333に規定されているように放射照度および放射照度の許容差が下記表3に示す値となるように行った。この数値が、小さいほどフォトクロミック性が優れていることを示す。退色速度は同様に15分間(900秒)光照射し、照射を止めた時点からの透過率(550nm)を測定した。時間と共に透過率が元に戻る速度が速いほど、フォトクロミック性が優れている。図8は、照射(0〜900秒)、照射終了(900秒)、照射終了後(900秒)のフォトクロミックレンズの光透過率(550nm)を示す。図8からわかるように、実施例1のレンズに上記コーティングを形成して得られたレンズは発退色の反応速度および発色濃度が高く、優れた光応答性を有していた。
比較例1、2で保存開始から10日後のレンズ、および、参考例1、実施例4,5で保管開始から30日後のレンズについて、それぞれフォトクロミック膜表面に染みだしている物質をマイクロニードルを用いて採取し、その採取した物質をダイヤモンドセルに載せ、フーリエ変換型顕微赤外分光光度計(島津製作所製μ−IR8000)を用いて透過法によりスペクトルを測定した。その結果、ヒンダードアミン系光安定剤であるLS765のスペクトルと一致した。この結果から、上記比較例、参考例および実施例における染み出し物質にはLS765が含まれていると考えられる。
Claims (6)
- レンズの一方の面を形成するための第一モールドの成形面にフォトクロミック色素、硬化性成分、および添加剤を含有するフォトクロミック液を塗布するフォトクロミック液塗布工程と、
前記フォトクロミック液に、該フォトクロミック液の硬化が完全に進まない程度に硬化処理を施し第一モールドの前記成形面上にフォトクロミック膜を形成するフォトクロミック液硬化処理工程と、
前記第一モールドとレンズの他方の面を形成するための第二モールドを、前記第一モールド上に形成されたフォトクロミック膜の最表面が第二モールドの成形面と対向するように配置し、かつ前記2つのモールドの周囲を密閉して、前記フォトクロミック膜が内部に位置するキャビティを備えたレンズ鋳型を形成するレンズ鋳型形成工程と、
前記キャビティに硬化性成分を含むレンズ原料液を注入し、該キャビティで前記硬化性成分の硬化反応を行う注型重合工程と、
前記レンズ鋳型を取り除き、前記フォトクロミック膜がレンズ基材上に形成されたレンズを得る離型工程と、
得られたレンズを真空雰囲気中、または脱酸素剤および/もしくは乾燥剤を含む密閉雰囲気中に保存することにより、前記添加剤が前記フォトクロミック膜から染み出すことを抑制する保存工程と、
保存後のレンズのフォトクロック膜最表面にコーティングを形成する成膜工程と、
を含むことを特徴とするフォトクロミックレンズの製造方法。 - 前記保存工程を脱酸素剤および乾燥剤を含む密閉雰囲気中で行う、請求項1に記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
- 前記添加剤はヒンダードアミン系光安定剤である、請求項1または2に記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
- 前記フォトクロミック液硬化処理工程における硬化処理により、第一モールドと対向する面側が最表面側よりも未硬化の硬化性成分を多く含むフォトクロミック膜を得る、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
- 前記硬化処理を、第一モールドのフォトクロミック液塗布面に対する光照射により行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
- 前記脱酸素剤および/もしくは乾燥剤を含む密閉雰囲気をガスバリア性の包装袋を用いて形成し、該雰囲気中で前記保存工程を行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフォトクロミックレンズの製造方法。
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