JP4222058B2 - 防汚性積層体の製造方法及びそれを用いた偏光板と画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規の防汚性積層体の製造方法及びそれを用いた偏光板と画像表示装置に関し、詳しくは、撥水性のみならず汚れ防止性、汚れ除去容易性に優れた防汚性積層体の製造方法及びそれを用いた偏光板と画像表示装置を提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネルなどのフラットパネルディスプレイやCRTのような画像表示装置の多くは、室内外を問わず外光などが入射するような環境下で使用されるため、視認性向上のための外光映り込み防止、すなわち反射防止に対する要求が強くなっている。そこで、ディスプレイ表面に、より見やすくするための反射防止膜を設けることが増えてきた。しかし、従来の反射防止膜では、人が使用することによって指紋、皮脂、汗、化粧品などの汚れが付着し、付着した汚れが容易には除去できないという問題があり、美観や視界を損なったり光学的機能を十分に発揮できないこともあった。そのため、これらの汚れを付着し難くし、さらには付着した汚れが容易に除去できるような汚れ防止機能が求められている。このような汚れ付着防止の手段として、汚れが付着しにくく、付着しても拭き取りやすい性能を有する防汚層を反射防止膜の最表面に設ける技術が数多く開示されている。例えば、特開昭64−86101号には、有機珪素化合物で表面を処理する方法が提案されている。また、特開2000−144097号や特開2001−48590号には、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物で表面を処理する方法が提案されている。しかしながら、このような塗布方式によって作製される防汚層の場合、基材の形状や材質によって均一に塗布できない、溶剤によって基材が損なわれる、あるいは基材が塗布溶液を弾いてしまうなどの問題から作製が困難であったり、高価で環境安全面に問題を抱えているフッ素含有溶剤を使用しなければならないなど、製造上の課題が多く存在する。そのため、最近では溶剤を使用しないで済むようプラズマCVD法で防汚層を形成する方法も提案されており、例えば、有機珪素化合物を用いたプラズマCVD法によって表面を処理する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、プラズマCVD法を用いた場合では、基材へのプラズマ照射によるダメージが生じてしまい、透明性が損なわれるなどの問題を引き起こし、その結果、所望の特性が得られなかったり、撥水性には優れるものの指紋や化粧品などの汚れ防止性能には劣っている、あるいは繰り返し耐久性に劣っていたり、均一性に劣るなどの問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−129382号公報 (特許請求の範囲)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、撥水性のみならず汚れ防止性、汚れ除去容易性の繰り返し耐久性に優れ、かつ大面積でも均一な防汚性が得られる防汚性積層体とその製造方法及びそれを用いた偏光板と画像表示装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0008】
1.基材上に、直接または他の層を介して、主に窒素を主成分とする大気圧またはその近傍の圧力下でプラズマ処理Aにより金属化合物層を形成した後、該金属酸化物層の上に更に大気圧またはその近傍の圧力下でプラズマ処理Bにより珪素化合物層を形成する防汚性積層体の製造方法であって、該プラズマ処理Bが、窒素またはアルゴンと、還元性ガスと、アルキル基を有する有機珪素化合物を含有する放電ガスとを電極間に供給し、該放電ガス中への該有機珪素化合物の供給量Yが0.1≦Y<20(mg/min・cm2)、前記電極間に印加する高周波電圧の電力密度Xが0.5≦X<5.0(W/cm2)である条件で、珪素化合物層を形成することを特徴とする防汚性積層体の製造方法。
【0009】
2.前記プラズマ処理Aが、対向する第1電極と第2電極の間に窒素を主成分とするガスを供給し、該第1電極と該第2電極の間に高周波電圧を印加することにより該ガスを励起し、基材を励起した該ガスに晒すことによって該基材上に金属化合物層を形成する方法であって、該高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、該第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分を有することを特徴とする前記1項記載の防汚性積層体の製造方法。
【0011】
3.前記1または2項に記載の防汚性積層体の製造方法により製造された防汚性積層体を有することを特徴とする偏光板。
【0013】
4.前記1または2項に記載の防汚性積層体の製造方法により製造された防汚性積層体を有することを特徴とする画像表示装置。
【0015】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を進めた結果、基材上に、直接または他の層を介して、主に窒素を主成分とする大気圧またはその近傍の圧力下でプラズマ処理Aにより金属化合物層を形成した後、該金属酸化物層の上に更に大気圧またはその近傍の圧力下でプラズマ処理Bにより珪素化合物層を形成する防汚性積層体の製造方法であって、該プラズマ処理Bが、窒素またはアルゴンと、還元性ガスと、アルキル基を有する有機珪素化合物を含有する放電ガスとを電極間に供給し、該放電ガス中への該有機珪素化合物の供給量Yが0.1≦Y<20mg/min・cm2、前記電極間に印加する高周波電圧の電力密度Xが0.5≦X<5.0W/cm2である条件で、珪素化合物層を形成する防汚性積層体の製造方法により、汚れ防止性、汚れ除去容易性の繰り返し耐久性に優れ、特には、大面積でも均一な防汚性が得られる防汚性積層体の製造方法を見出したものであり、上記構成に加えて、プラズマ処理Aが、対向する第1電極と第2電極の間に窒素を主成分とするガスを供給し、該第1電極と該第2電極の間に高周波電圧を印加することにより該ガスを励起し、基材を励起した該ガスに晒すことによって該基材上に金属化合物層を形成する方法であって、該高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、該第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分を有することにより、その特性がより一層発揮されることを見出したものである。
【0016】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明に係る防汚性積層体は、基材上に、主に窒素を主成分とする大気圧またはその近傍の圧力下でプラズマ処理により形成された金属化合物層の上に、珪素(Si)、酸素(O)、炭素(C)の比率(Si:O:C)が1.0:(1.0〜1.5):(1.1〜20)であり、かつ静的二次イオン質量分析法による表面の質量分析によるI43.00/I44.98が4.5を超える層を設けたことが好ましい。
【0017】
はじめに、本発明の防汚性積層体に用いられる基材について説明する。
本発明で用いることのできる基材としては、透明樹脂フィルムであれば特に制限はなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテート等のセルロースエステルフィルム、あるいはセルロース誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、環状ポリオレフィン樹脂、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができ、あるいはこれらの樹脂を混合して使用することができる。本発明には、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルムなどのセルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム及びポリスルホン系フィルムが透明性、機械的性質、光学的異方性がない等の点で好ましい。本発明において好ましく用いることのできるセルロースエステルフィルムは、一般的な溶液流延成膜法により形成されるが、その他に、例えば、特開2000−352620号公報に記載の溶融流延成膜法によっても形成することができる。また、これらの基材は市販品として入手することも可能であり、例えば、環状オレフィン樹脂フィルム(例えば、アートン(JSR社製)、ゼオネクス、ゼオノア(日本ゼオン社製))、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカ(株)製のKC4UX2MW、KC8UX2MW、KC8UN、KC5UN、KC4UY、KC12UR、KC10UBR等)が好ましく用いられる。
【0018】
本発明に係る基材の厚みは、特に制限はないが、偏光板等に用いる防汚性積層体としての機能を考慮すると、0.01〜5.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5mmである。
【0019】
次いで、本発明に係る金属化合物層の形成方法(プラズマ処理A)の詳細について説明する。
【0020】
以下に、プラズマ放電処理により金属化合物層を形成する方法を図1、図2を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【0022】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電圧印加手段の他に、図1では図示していない(後述の図2に図示してある)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0023】
プラズマ放電処理装置310は、第1電極311と第2電極312から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極311からは第1電源321からの第1の周波数ω1の高周波電圧V1が印加され、また第2電極312からは第2電源322からの第2の周波数ω2の高周波電圧V2が印加されるようになっている。
【0024】
本発明に係るプラズマ処理Aにおいては、対向する第1電極と第2電極の間に窒素を主成分とするガスを供給し、該第1電極と該第2電極の間に高周波電圧を印加することにより該ガスを励起し、基材を励起した該ガスに晒すことによって該基材上に金属化合物層を形成する方法であって、該高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、該第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分を有することが好ましい態様である。
【0025】
第1電源321は、第2電源322より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加できる能力を有していればよく、また第1電源321の第1の周波数ω1と第2電源322の第2の周波数ω2の関係はω1<ω2である。
【0026】
第1電極311と第1電源321との間には、第1電源321からの電流I1が第1電極311に向かって流れるように第1フィルター323が設置されており、第1電源321からの電流I1をアース側へ通過しにくくし、第2電源322からの電流I2がアース側へ通過し易くするように設計されている。
【0027】
また、第2電極312と第2電源322との間には、第2電源322からの電流I2が第2電極312に向かって流れるように第2フィルター324が設置されており、第2電源322からの電流I2をアース側へ通過しにくくし、第1電源321からの電流I1をアース側へ通過し易くするように設計されている。
【0028】
第1電極311と第2電極312との対向電極間(放電空間)313に、ガス供給手段からガスGを導入し、第1電極311と第2電極312に高周波電圧を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にし対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、基材シートFに施したハードコート層等の上に、処理位置314付近で薄膜を形成させる。プラズマ放電処理の際の基材シートFの温度によっては、得られる薄膜の物性や組成が変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないように電極の表面の温度や基材シート表面の温度を均一に調節することが望まれる。
【0029】
また、図1に前述の高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧の測定に使用する測定器を示した。325及び326は高周波プローブであり、327及び328はオシロスコープである。
【0030】
ジェット方式の該大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べることで連続的に高速で処理することもできる。また各装置が異なったガスをジェット噴射すれば、異なった層の積層薄膜を形成することもできる。
【0031】
図2は本発明に有用な別の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0032】
この大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置330、二つの電源を有する電圧印加手段340、ガス供給手段350、電極温度調節手段360を有している。
【0033】
ロール回転電極(第1電極)335と角筒型固定電極群(第2電極)336との対向電極間(放電空間)332で、基材シートF上にプラズマ放電処理によって金属化合物の薄膜を形成することができる。
【0034】
ロール回転電極(第1電極)335には第1電源341から周波数ω1の高周波電圧V1を、また角筒型固定電極群(第2電極)336には第2電源342から周波数ω2の高周波電圧V2を印加することができる。
【0035】
ロール回転電極(第1電極)335と第1電源341との間には、第1電源341からの電流I1がロール回転電極(第1電極)335に向かって流れるように第1フィルター343が設置されており、該第1フィルターは第1電源341からの電流I1をアース側へ通過しにくくし、第2電源342からの電流I2をアース側へ通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)336と第2電源342との間には、第2電源からの電流I2が第2電極に向かって流れるように第2フィルター344が設置されており、第2フィルター344は、第2電源342からの電流I2をアース側へ通過しにくくし、第1電源341からの電流I1をアース側へ通過し易くするように設計されている。
【0036】
なお、ロール回転電極335を第2電極、また角筒型固定電極群336を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加できる能力を有しており、また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0037】
本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V1及び第2の高周波電圧V2を重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
V1≧IV>V2
または V1>IV≧V2
を満たす。更に好ましくは、
V1>IV>V2
を満たすことである。
【0038】
本発明において、放電開始電圧とは、実際の薄膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成など)および反応条件(ガス条件など)において放電を起こすことの出来る最低電圧のことを指す。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種などによって多少変動するが、放電ガス単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
【0039】
高周波および放電開始電圧の定義、また、上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、上述したものと同様である。
【0040】
ここで、本発明でいう高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0041】
高周波電圧V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
【0042】
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、該電極間の電圧を増大させていき、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。
【0043】
高い電圧をかけるような放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電圧が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持出来、高性能な薄膜形成を行うことが出来るのである。
【0044】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることが出来る。
【0045】
ガス供給手段350のガス供給装置351で発生させたガスGは、流量を制御して給気口352より、固定電極336の間から対向電極間332に供給される。また対向電極間より排ガスG’が排気される。図では省略しているが、ガス供給口352とガス排気口353は固定電極336の間に交互に設けることが好ましい。
【0046】
ハードコート層が形成された基材シートFを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール364を経てニップロール365で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極335に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群336との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)335と角筒型固定電極群(第2電極)336との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)332で放電プラズマを発生させる。ハードコート層が形成された基材シートFはロール回転電極335に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。前記基材シートFは、ニップロール366、ガイドロール367を経て、図示していない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0047】
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)335及び角筒型固定電極群(第2電極)336を加熱または冷却するために、電極温度調節手段360で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管361を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。ロール回転電極335と固定電極群336はそれぞれ独立に温度調節することができる。また、固定電極群336は、1つのロール電極335に対して1〜50個程度設けることが好ましく、特に2〜30個設けることが好ましい。なお、368及び369はプラズマ放電処理容器331と外界とを仕切る仕切板である。
【0048】
図3は、図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0049】
図3において、ロール電極335aは導電性の金属質母材335Aとその上に誘電体335Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて温度調節用媒体を循環させて温度調節できるようになっている。
【0050】
図4は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0051】
図4において、角筒型電極336aは、導電性の金属質母材336Aに対し、図3同様の誘電体336Bの被覆を有し、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0052】
なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、該電極の放電面積はロール回転電極335に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0053】
図2に示した角筒型電極336は、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0054】
図3及び図4において、ロール電極335a及び角筒型電極336aは、それぞれ導電性の金属質母材335A、336Aの上に誘電体335B、336Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体の膜厚は0.1〜5mm、好ましくは1〜3mmである。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0055】
導電性の金属質母材335A及び336Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料等を挙げることができるが、後述の理由から、チタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0056】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1nm〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5nm〜2mmである。
【0057】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0058】
プラズマ放電処理容器331はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図1において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0059】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、周波数が1〜200kHzのものが好ましく用いられる、
等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0060】
また、第2電源(高周波電源)としては、周波数800kHz以上のものが好ましく用いられ、
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
【0061】
このような電圧を印加して、グロー放電状態を保つことができる。
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給することが好ましく、これにより放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え薄膜を形成させる。供給する電力は1〜50W/cm2が好ましい。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0062】
ここで高周波電圧の印加法としては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モード0と、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0063】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0064】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、更に好ましくは5×10-6/℃以下、更に好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0065】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(a)または(b)および(e)〜(h)が好ましく、特に、(a)が好ましい。
【0066】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
【0067】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることができ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0068】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0069】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーター、例えば、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定することができる。誘電体が低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることができる。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0070】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることができる。
【0071】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0072】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0073】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0074】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極ができる。
【0075】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPS(X線光電子スペクトル)により誘電体層の断層を分析することにより測定できる。
【0076】
本発明の防汚性積層体の製造方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが好ましいが、更に好ましくは、8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。
【0077】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0078】
次いで、本発明に係る金属化合物層の形成に用いる反応ガスについて説明する。
【0079】
本発明に係る金属化合物層の形成に用いる反応ガスは、主に窒素を含むガスである。すなわち、窒素ガスが50体積%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは70体積%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは90体積%〜99.99体積%であることが望ましい。反応ガスには窒素のほかに希ガスが含有していてもよい。
【0080】
ここで、希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等であり、本発明では、ヘリウム、アルゴン等が窒素に添加されて用いられてもよい。
【0081】
窒素ガスは、安定したプラズマ放電を発生させるために用いられ、反応ガスには薄膜を形成するための原料として、反応性ガス(原料ガス)が添加される。該プラズマ放電中で反応性ガスはイオン化あるいはラジカル化され、基材表面に堆積あるいは付着するなどして薄膜が形成される。
【0082】
更に、反応ガス中に酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素、水、過酸化水素、オゾン、メタン、4フッ化メタン等を0.1体積%〜10体積%含有させることにより薄膜層の硬度、密度等の物性を制御することができる。
【0083】
本発明に有用な反応ガスは、様々な物質の原料ガスを添加したものを用いることによって、様々な機能を持った薄膜をセルロースエステルフィルム等の基材上に形成することができる。ここでいう原料ガスとは、プラズマ処理により薄膜を形成するためのガスであり、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物等の金属化合物層を形成する金属化合物のガスを意味する。
【0084】
本発明に有用な原料ガスとしての有機金属化合物としては、特に限定されないが、Al、As、Au、B、Bi、Sb、Ca、Cd、Cr、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Pt、Rh、Se、Si、Sn、Ti、Zr、Y、V、W、Zn、Ta等の金属酸化物を形成するための金属化合物を挙げることができる。
【0085】
例えば、Ti、Zr、In、Sn、Zn、Ge、Si、Taあるいはその他の金属を含有する有機金属化合物、金属水素化合物、金属ハロゲン化物、金属錯体を用いて、これらの金属酸化物層(ここでいう金属酸化物層には、金属酸化物窒化物層も含む)または金属窒化物層等を形成することができ、これらの層は反射防止層の中屈折率層または高屈折率層としたり、あるいは透明導電層または帯電防止層とすることもできる。
【0086】
また、フッ素含有有機化合物で低屈折率層を形成することもでき、珪素化合物でガスバリア層や低屈折率層を形成することもできる。本発明では、高、中屈折率層と低屈折率層を交互に多層を積層して形成される反射防止層の形成に特に好ましく用いられる。
【0087】
本発明において、反応ガスとして有機金属化合物を用いるが、プラズマ放電処理によりセルロースエステルフィルム等の基材シートの上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の原料ガスとしての金属化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0088】
原料ガスについて、更に詳細に説明する。
反射防止層の高屈折率層を形成するには、チタン化合物、ジルコニウム化合物、タンタル化合物が好ましく、具体的には、例えば、テトラジメチルアミノチタンなどの有機アミノ金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタルなどの金属アルコキシドなどを挙げることができ、これらを用いて金属酸化物層を形成することができる。
【0089】
亜鉛化合物としては、ジンクアセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛などがあげられ、すず化合物としては、テトラエチルすず、テトラメチルすず、二酢酸ジ−n−ブチルすず、ビス(2−エチルヘキサン酸)ジブチルすず、二酢酸ジブチルすず、酸化ジブチルすず、二ラウリン酸ジブチルすず、テトラメチルすず、テトラエチルすず、テトラブチルすず、テトラプロピルすず、テトラオクチルすず等の有機すず化合物が好ましく用いられ、インジウム化合物としてはトリエチルインジウム、トリメチルインジウムなどが好ましく用いられる。
【0090】
大気圧プラズマ処理では、原料ガスにフッ素含有有機化合物を用いることでフッ素化合物含有層を形成することもできる。
【0091】
フッ素含有有機化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましい。具体的には、フッ素含有有機化合物としては、例えば、四フッ化炭素、六フッ化炭素、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭素化合物;二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物;更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物、アルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体等を挙げることができる。
【0092】
これらは単独でも混合して用いてもよい。上記のフッ化炭化水素ガスとしては、二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン等の各ガスを挙げることができる。
【0093】
更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0094】
また、これらの化合物は、分子内にエチレン性不飽和基を有していても良い。また、上記の化合物は混合して用いても良い。
【0095】
本発明に有用な反応ガスにフッ素含有有機化合物を用いる場合、プラズマ放電処理によりセルロースエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応ガスとしてのフッ素含有有機化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいく、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0096】
また、本発明に好ましく用いられるフッ素含有、有機化合物が常温常圧で気体である場合は、反応ガスの成分としてそのまま使用できる。
【0097】
また、フッ素含有有機化合物が常温常圧で液体または固体である場合には、気化手段により、例えば、加熱、減圧等により気化して使用すればよく、適切な有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0098】
本発明に有用な反応ガスとしての珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シラン、四フッ化珪素などの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、などのアルコキシシラン、テトラメチルシラン、ヘキサメチルジシロキサン、オルガノシラン等、3,3,3−トリフルオロメチルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン類を用いることが好ましいがこれらに限定されない。
【0099】
また、これらは適宜組み合わせて用いることができる。あるいは別の有機化合物を添加して膜の物性を変化あるいは制御することもできる。
【0100】
また、珪素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、タンタル化合物等の金属化合物を放電部へ導入するには、両者は常温常圧で気体、液体または固体いずれの状態であっても使用し得る。
【0101】
気体の場合は、そのまま放電部に導入できるが、液体や固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の気化手段により気化させて使用することができる。この目的のため、市販の気化器が好ましく用いられる。
【0102】
珪素化合物、チタン化合物等の金属化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタンなどのように常温で液体で、且つ、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが本発明の金属酸化物薄膜層の形成する方法に好適である。上記金属アルコキシドは、有機溶媒によって希釈して使用しても良く、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、アセトンなどの有機溶媒またはこれらの混合有機溶媒を使用することができる。
【0103】
本発明に係る金属化合物層として、上記化合物の中でも、チタンまたは珪素の酸化物、炭化物、窒化物もしくはこれらの混合物を含有することが好ましい。
【0104】
本発明に係る金属化合物層の膜厚としては、1nm〜1000nmの範囲のものが好ましく用いられる。
【0105】
本発明において、プラズマ放電装置を複数設けることによって、多層の薄膜を連続的に設けることができ、薄膜のムラもなく多層の積層体を形成することができる。例えば、1つの層を形成した後1分以内に次の層を形成することが好ましい。複数の層を1パスで連続的に形成するためには、各層が所定の薄膜形成速度となるように調整されることが必要である。そのため、各層形成後膜厚を測定するか、反射スペクトルを測定し、その結果に基づいて薄膜形成速度をフィードバック制御することが好ましい。これによって、一定の速度で搬送される基材フィルム上に異なる組成あるいは異なる膜厚の薄膜を1パスで連続的に形成することができる。各層の薄膜形成速度を制御する方法としては、特に限定はないが、放電の印加電圧、電流、周波数、パルス条件等の放電条件、反応ガス中の各成分の比率(窒素濃度、酸素あるいは水素等の添加ガス濃度、種類、原料ガス濃度)、反応ガス供給量、電極間距離、放電部の気圧、基材温度、電極温度、反応ガス温度、放電部の温度、放電面積の変更等があげられるが、これらのみに限定されるものではない。これらの1つ以上の条件を適宜組み合わせることによって、製膜される薄膜の膜質を大きく変えることなく、薄膜形成速度を制御することができる。
【0106】
例えば、セルロースエステルフィルム上に反射防止層を有する光学フィルムを作製する場合、屈折率1.6〜2.3の高屈折率層及び屈折率1.3〜1.5の低屈折率層をセルロースエステルフィルム表面に連続して積層し、効率的に作製することができる。
【0107】
低屈折率層としては、含フッ素有機化合物を含むガスをプラズマ放電処理により形成された含フッ素化合物層、あるいはアルコキシシラン等の有機珪素化合物を用いてプラズマ放電処理により形成された主に酸化ケイ素を有する層が好ましく、高屈折率層としては、有機金属化合物を含むガスをプラズマ放電処理により形成された金属酸化物層、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタルを主として有する層が好ましい。これらの層は原料ガス内の炭素又は炭素化合物を含有していても良い。
【0108】
本発明に係る金属化合物層は、基材上に直接設けられても、あるいは他の層を介して設けられていても良い。
【0109】
基材と金属化合物層との間に設ける層として、特に制限はなく、例えば、ハードコート層、帯電防止層を適宜設けることができる。
【0110】
本発明に用いられハードコート層、好ましくは活性線硬化樹脂層は、種々の機能を有していてもよく、例えば、防眩層やクリアハードコート層であってもよい。ハードコート層(活性線硬化樹脂層)はエチレン性不飽和モノマーを1種以上含む成分を重合させて形成した層であることが好ましい。
【0111】
エチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層としては、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を硬化させて形成された層が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは活性線硬化樹脂層である。
【0112】
ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。
【0113】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0114】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0115】
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0116】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることができる。
【0117】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
【0118】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
【0119】
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
【0120】
上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
【0121】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0122】
本発明において使用することができる紫外線硬化樹脂としては、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−501、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製);アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等の市販品から適宜選択して利用できる。
【0123】
これらの活性線硬化樹脂層は、公知の方法で塗設することができる。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって効率よく形成することができる。
【0124】
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止するために、また耐擦り傷性等を高めるために、或いは防眩性を付与するために、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子を加えることもでき、それらの種類としては、公知のマット剤の微粒子を挙げることができる。
【0125】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005μm〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。粒径や材質(屈折率)の異なる粒子を2種以上含有することが好ましい。
【0126】
紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、該樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0127】
紫外線硬化樹脂層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1〜1μmの防眩層であってもよい。また、ハードコート層は、1層でも、あるいは2層以上を重ねて塗設されていても良い。
【0128】
また、本発明の防汚性積層体で設けることのできる帯電防止層としては、その構成に特に制限はなく、例えば、特開平9−203810号公報の段落番号0038〜同0055に記載の一般式(I)〜(V)で表されるアイオネン導電性ポリマーや、同公報の段落番号0056〜同0145に記載の一般式(1)または(2)で表されるポリマー分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオンポリマーを含含有する帯電防止層を挙げることができる。
【0129】
また、下記に記載の導電性を有する金属酸化物粉体を含む帯電防止層を挙げることができる。
【0130】
金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V2O5等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、またSnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
【0131】
また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は1×107Ωcm特に1×105Ωcm以下であって、一次粒子径が100Å以上、0.2μm以下で、高次構造の長径が300Å以上、6μm以下である特定の構造を有する粉体を導電層に体積分率で0.01%以上、20%以下含んでいることが好ましい。
【0132】
本発明において帯電防止層の形成は、導電性微粒子をバインダーに分散させて基体上に設けてもよいし、基体上に下引処理を施し、その上に導電性微粒子を被着させてもよい。
【0133】
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、金属酸化物からなる帯電防止層中に耐熱剤、耐候剤、無機粒子、水溶性樹脂、エマルジョン等をマット化、膜質改良のために添加しても良い。
【0134】
帯電防止層で使用するバインダーは、フィルム形成能を有する物であれば特に限定されるものではないが、例えば、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、デンプン誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸等の合成ポリマー等を挙げる事ができる。
【0135】
特に、ゼラチン(石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酸素分解ゼラチン、フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン等)、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリルアミド、デキストラン等が好ましい。
【0136】
次いで、上記金属化合物層の上に設ける層、詳しくは珪素化合物層(防汚層)について説明する。
【0137】
本発明の防汚性積層体の製造方法においては、前述の金属化合物層の上に更に大気圧またはその近傍の圧力下で、窒素またはアルゴンと、還元性ガスと、アルキル基を有する有機珪素化合物を含有する放電ガスとを電極間に供給し、該放電ガス中への該有機珪素化合物の供給量Yが0.1≦Y<20mg/min・cm2、前記電極間に印加する高周波電圧の電力密度Xが0.5≦X<5.0W/cm2である条件で行うプラズマ処理Bにより、珪素化合物層を形成することが特徴である。
【0138】
基本的なプラズマ処理装置の構成としては、前述のプラズマ処理Aで説明した構成(図1〜図4)と同様の形態を用いることができるが、高周波電源としては、単一でも、あるいは図2に記載の様に複数より構成されていても良い。
【0139】
はじめに、本発明に係るアルキル基を有する有機珪素化合物について説明する。
【0140】
防汚性を発現するためには、特に膜の最表面にアルキル基を存在させることが有効であり、原材料にアルキル基を有したものを使用することによって本目的は達成される。アルキル基としては、フルオロアルキル基もしくは炭素と水素のみで構成されたアルキル基いずれでもよいが、分解後の環境適性から炭素と水素のみで構成されたアルキル基が好ましい。またアルキル基については、低価であること、膜の硬度を保ち得ることが重要であり、この意味で好ましくはエチル基またはメチル基、さらにはメチル基であることが好ましい。また、上記の官能基が付与されていれば、化合物中に珪素原子が複数含まれていてもよい。
【0141】
また、より好ましくは、加水分解性基とアルキル基を共に有する有機珪素化合物を用いることである。本発明でいう加水分解性基とは、水と水素を添加することによって重合を行うことのできる官能基のことをいい、本発明においては特に限定されないが、好ましくはアルコキシ基、アセチル基が挙げられる。好ましくはアルコキシ基であり、さらにはエトキシ基を有することが、反応性や原料の物性において好ましい。しかしながら、このような加水分解性基により重合するのみでは酸化珪素が形成されるのみで、このような膜では防汚性が発現されない。
【0142】
この有機珪素化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン、トリアシルオキシシラン、トリフェノキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシレン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン、ジフェノキシシラン、ジアシルオキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、フルオロアルキルシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシロキサン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、単独で使用しても異なる2種以上を同時に使用することもできる。また、上記の各化合物以外の有機珪素化合物を併用することもできる。
【0143】
上記化合物の中でも、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシランなど好ましく、更には珪素に対してアルキル基を2つ有する化合物が好ましく、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどが、特に好ましい例として挙げられる。
【0144】
本発明においては、珪素化合物層における珪素(Si)、酸素(O)、炭素(C)の比率(Si:O:C)が1.0:(1.0〜1.5):(1.1〜20)であることが好ましく、より好ましくは1.0:(1.0〜1.5):(1.1〜10)であり、更に好ましくはSi:O:C=1.0:(1.0〜1.5):(1.1〜5.0)であり、Si:O:C=1.0:(1.0〜1.5):(1.1〜2.0)が特に好ましい。炭素含有量が多い場合には防汚性が向上するが、膜硬度が低下してしまう。また、酸素含有量が多いと膜の透過率が向上し、かつ膜硬度も向上するが、繰り返し防汚性が低下する。
【0145】
本発明に係る珪素化合物層の珪素、酸素、炭素含有量は、XPS表面分析装置を用いてその値を測定する。
【0146】
以下に、その測定方法の詳細について説明する。
XPS表面分析装置を下記の条件にセットする。
【0147】
X線アノード:Mg
分解能:1.5〜1.7ev(分解能は清浄なAg3d5/2の半値幅で規定した。)
光電子取り出し角度:90度
XPS表面分析装置は、VGサイエンティフィックス社製のESCALAB−200Rを用いた。
【0148】
以下の測定範囲でナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定した。このとき、データの取り込み間隔は0.2eVとし、目的とするピークは以下に示す最低カウント以上のカウントが得られるまで積算することが必要である。
【0149】
得られたスペクトルに対して、C1sのピーク位置が284.6eVになるようにエネルギー位置を補正する。
【0150】
次に、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM Ver.2.3以降(以下、VAMASソフトと称する)上で処理を行うために、前記のスペクトルを各装置メーカーが提供するソフトを用いて、VAMASソフトを使用することができるコンピューターに転送する。そして、VAMASソフトを用い、転送されたスペクトルをVAMASフォーマットに転換した後、データ処理を行う。
【0151】
定量処理に入る前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行う。各元素のピーク位置を中心として、次表に示す定量範囲でピークエリア強度(cps×eV)を求める。以下に示した感度係数を使用し、珪素の原子数を1.0とした各元素の原子数比(原子数%)を求める。
【0152】
元素 ピーク位置 定量範囲 感度係数
(B.E.:ev) (B.E.:ev)
C 284.6付近 高B.E.側6eV、 1.00
低B.E.側5eV
Si 104.2付近 高B.E.側7eV、 0.87
低B.E.側5eV
O 532.0付近 高B.E.側6eV、 2.85
低B.E.側5eV
本発明に係る防汚性積層体においては、珪素化合物層が静的二次イオン質量分析法による表面の質量分析によるI43.00/I44.98が、4.5を超えることが好ましく、より好ましくはI43.00/I44.98が4.5〜30であり、更に好ましくは5.0〜25であり、特に好ましくは5.5〜20であり、最も好ましくは5.7〜15である。I43.00/I44.98が30を超えると膜が弱くなる傾向にあり、4.5未満であると防汚性の繰り返し耐久性が劣るため好ましくない。
【0153】
本発明でいうI43.00、I44.98とは、質量数44.98に現れるSi−OHからなるイオン種のピークの積分値がI44.98、43.00に現れるSi−CH3からなるイオン種のピークの積分値がI43.00である。
【0154】
本発明において、上記で規定するI43.00/I44.98を達成する手段として特に制限はないが、大気圧プラズマ処理により珪素化合物層を形成する際の放電密度と原料供給量を同時に制御することにより、所望のI43.00/I44.98を得ることができる。これにより、接触角が高く防汚性を有するものであっても、I43.00/I44.98が本発明で規定する範囲であれば、繰り返しの耐久性が向上し、長時間の使用においても汚れ防止効果を維持することができる。
【0155】
表面の化学組成を測定する方法としては、いわゆる電子分光法、特にX線光電子分光法(XPS法 X線光電子スペクトル)、オージェ電子分光法(以下、AESと略す)、あるいは飛行時間形二次イオン質量分析法(以下、ToF−SIMSと略す)、フーリエ変換赤外吸収分光法(以下、FT−IRと称す)などが知られている。
【0156】
このうち、AESはプローブとして電子を用いるため、本発明のような絶縁物の測定には不向きであり、またFT−IRは分析できる深さがμmオーダーである。また、XPSは試料の導電性を問わず、分析深さも数nmであるが、Si−OHとSi−CH3のケミカルシフトが大きくないため、本発明の測定法としては不向きである。
【0157】
これに対し、ToF−SIMSは、一次イオンの量、エネルギーを適切に選択することにより、試料最表面の損傷を無視できる条件で最表面に存在する化学種の質量を求めることができる。よって、防汚性能に対する寄与が大きな最表面の化学組成を求める方法としては、ToF−SIMSが最も適している。本発明においても、最表面の化学組成を求める方法としてToF−SIMSを用いる。
【0158】
ToF−SIMSの詳細については、日本表面科学会編の二次イオン質量分析法(丸善 1999年)等を参照することができる。
【0159】
ToF−SIMS測定において、一次イオンとしては、一般にはガリウム、インジウム、セシウム等を用いた液体金属イオン源が用いられている。本発明においては、インジウムを液体金属イオン源として用いる。これは、Si−OH、Si−CH3の検出感度が高いためである。また、一次イオンの加速電圧は15kVで行う。これは、質量分解能が高いためであり、15kVより高くても低くても分解能が低下するため、目的の分析結果が得られにくくなる。一次イオン電流は、0.5〜2.0nAが好ましい。測定領域は特に限定はないが、40〜120μm角の領域をラスタースキャンして測定することが好ましい。測定質量範囲は、0〜1000amu.が好ましい。測定に際しては、チャージアップを防止するため、適宜電子銃による帯電中和、帯電補正用のメッシュを用いても良い。
【0160】
ToF−SIMSでは、質量数44.98に現れるSi−OHからなるイオン種と、43.00に現れるSi−CH3からなるイオン種のピークの積分値I44.98とI43.00の比I43.00/I44.98を求める。近接した質量数にピークが出現し、完全に分離できない場合には、隣接ピークとの谷と谷の間のピーク強度を採用する。
【0161】
本発明に係るプラズマ処理Bにおいて、還元性ガスとしては、例えば、水素、メタン等の炭化水素、水等を用いることができる。
【0162】
本発明に係るプラズマ処理Bにおいて用いることのできる大気圧プラズマ処理装置について説明する。
【0163】
図5は、プラズマ放電処理装置10に用いられるプラズマ放電処理容器20の一例を示す概略図であり、また別の実施の形態においては、図6に示すプラズマ放電処理容器20を用いている。
【0164】
図5において、長尺フィルム状の金属化合物層を設けた基材Fは、搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極21に巻回されながら搬送される。固定電極22は複数の円筒から構成され、ロール電極21に対向させて設置される。ロール電極21に巻回された金属化合物層を設けた基材Fは、ニップローラ23a、23bで押圧され、ガイドローラ24で規制されてプラズマ放電処理容器20によって確保された放電処理空間に搬送され、放電プラズマ処理され、次いで、ガイドローラ25を介して次工程に搬送される。また、仕切板26は前記ニップローラ23bに近接して配置され、金属化合物層を設けた基材Fに同伴する空気がプラズマ放電処理容器20内に進入するのを抑制する。
【0165】
この同伴される空気は、プラズマ放電処理容器20内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、前記ニップローラ23bにより、それを達成することが可能である。
【0166】
尚、放電プラズマ処理に用いられる混合ガスは、給気口27からプラズマ放電処理容器20に導入され、処理後のガスは排気口28から排気される。
【0167】
図6は、上述のように、プラズマ放電処理容器20の他の例を示す概略図であり、図5のプラズマ放電処理容器20では円柱型の固定電極22を用いているのに対し、図6に示すプラズマ放電処理容器20では角柱型の固定電極29を用いている。
【0168】
図5に示した円柱型の固定電極22に比べて、図6に示した角柱型の固定電極29は本発明の薄膜形成方法に好ましく用いられる。
【0169】
円柱型の固定電極22及び角柱型の固定電極29は、図3、4で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0170】
印加電極に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、プラズマ処理Aで説明したパール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)等が使用できる。
【0171】
図7は、本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0172】
図7において、プラズマ放電処理容器20の部分は図6の記載と同様であるが、更に、ガス発生装置40、電源50、電極恒温ユニット70等が装置構成として配置されている。電極恒温ユニット70の恒温剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が用いられる。
【0173】
図7に記載の電極は、図3、図4に示したものと同様であり、対向する電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
【0174】
上記電極間の距離は、電極の母材に設置した固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の最短距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。
【0175】
前記プラズマ放電処理容器20内にロール電極21、固定電極29を所定位置に配置し、ガス発生装置40で発生させた混合ガスを流量制御し、ガス充填手段41を介して給気口27よりプラズマ放電処理容器20内に入れ、前記プラズマ放電処理容器20内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し排気口28より排気する。次に電源50により電極に電圧を印加し、ロール電極21はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の金属化合物層を設けた基材60より金属化合物層を設けた基材Fを供給し、ガイドローラ24を介して、プラズマ放電処理容器20内の電極間を片面接触(ロール電極21に接触している)の状態で搬送される。そして、金属化合物層を設けた基材Fは搬送中に放電プラズマにより表面が製膜され、表面に混合ガス中の反応ガス由来の化合物を含有した薄膜が形成された後、ガイドローラ25を介して、次工程に搬送される。ここで、金属化合物層を設けた基材Fはロール電極21に接触していない面のみ製膜がなされる。
【0176】
電源50より固定電極29に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5〜10kV程度で、電源周波数は1kHzを越えて150MHz以下に調整される。ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良い。
【0177】
又、表面の珪素化合物層(防汚層)を形成する際の放電出力Xについては、0.5≦X<5.0W/cm2の放電密度がよい。
【0178】
また、プラズマ処理Bでは、プラズマ処理Aで用いた図1あるいは図2に示されているプラズマ処理装置を用いることもできる。特に、窒素を放電ガスとして用いる時に好ましく用いられ、アルゴン等を使用する場合には、例えば、図2の電源341をOFFにして、薄膜を形成させることができる。
【0179】
また、放電プラズマ処理時の基材への影響を最小限に抑制するために、プラズマ処理装置A、プラズマ処理装置Bともに、放電プラズマ処理時の基材の温度を常温(15℃〜25℃)〜200℃未満の温度に調整することが好ましく、更に好ましくは常温〜110℃に調整することである。ただし、これらの条件は基材の物性、特にガラス転移温度に依存して温度の上限が決定されるため、この範囲の限りではない。上記の温度範囲に調整する為、必要に応じて電極、基材は冷却手段で冷却しながら放電プラズマ処理される。
【0180】
本発明の実施の形態においては、上記のプラズマ処理が大気圧または大気圧近傍で行われる。なお、大気圧近傍とは、20kPa〜200kPaの圧力を表すが、特に、93kPa〜110kPaが好ましい。
【0181】
本発明に係るプラズマ処理Bにおいては、出力密度と原料供給量の関係として、汚れ拭き取り性能の繰り返し耐久性の観点から、放電密度をX(W/cm2)、有機珪素化合物の供給量をY(mg/min・cm2)としたとき、0.5≦X<5、かつ0.1≦Y<20を満たす条件でのプラズマ処理が特徴であるが、好ましくは0.5≦X<4、かつ0.1≦Y<10を満たすプラズマ処理であり、特に好ましくは0.5≦X<4、かつ0.1≦Y<5で、更にX−3≦Y≦X+3を満たすプラズマ処理である。これにより、均一な防汚性を有する珪素化合物層を形成することができる。また、好ましい還元ガス性の供給量は0.1〜30ml/min・cm2で、好ましいアルゴンもしくは窒素の供給量は30〜2000ml/min・cm2である。
【0182】
本発明においては、本発明に係るプラズマ処理Aを行った後、一端加工した基材を巻き取った後、再び本発明に係るプラズマ処理Bを行っても、あるいは本発明に係るプラズマ処理Aを行った後、巻き取らずに連続して本発明に係るプラズマ処理Bを行ってもよい。
【0183】
本発明の偏光板は、本発明の防汚性積層体を用いて、一般的な方法で作製することができる。例えば、セルロースエステルフィルムと防汚性積層体をアルカリケン化処理し水洗し乾燥しておく、一方、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、長さ方向に一軸延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて上記フィルムの鹸化された面を貼り合わせることによって偏光板を得ることが出来る。
【0184】
この偏光板を作製する過程において、鹸化処理したセルロースエステルフィルムの何れかの面、また防汚性積層体の反射防止層等のある面の反対面を貼り合わせる際、セルロースエステルフィルム及び本発明の防汚性積層体を使用することによって、貼り合わせが良好に行うことができ、また貼り合わせたフィルムが剥離することもなく安定した偏光板を得ることができる。
【0185】
本発明の防汚性積層体は、偏光板用保護フィルムとして液晶ディスプレイに用いられる他、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種表示装置や、携帯端末用表示装置に好ましく用いることができる。
【0186】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0187】
実施例1
《防汚性積層体の作製》
[試料1の作製]
〔バックコート層、帯電防止層及びハードコート層の塗設〕
膜厚80μmのセルロースエステルフィルムである8UX(コニカタックKC8UX2MW コニカ(株)製)の幅両端部にそれぞれに加熱したエンボスロールを押し当てながら搬送し、高さ10μm幅1cmのナーリング部を設けた。下記の方法に準じて、セルロースエステルフィルムの一方の面にバックコート層1を、もう一方の面に帯電防止層1を設け、更に帯電防止層1の上にハードコート層1を巻き取ることなく連続的に設けた。
【0188】
(バックコート層1の塗設)
下記の組成からなるバックコート層1塗布液を、セルロースエステルフィルムのA面にウエット膜厚13μmとなるようにダイコータを用いて塗布し、乾燥温度90℃にて乾燥させバックコート層1を塗設した。
【0189】
(帯電防止層1の塗設)
下記の組成からなる帯電防止層1塗布液を、セルロースエステルフィルムの上記バックコート層1を塗設したのとは反対側の面に、ウエット膜厚12μmとなるようにダイコータを用いて塗布した後、80℃で5分間乾燥して帯電防止層1を設けた。帯電防止層1の表面比抵抗は1×108Ω/cm2(23℃、55%RH)であった。
【0190】
(ハードコート層1の塗設)
上記帯電防止層1の上に、紫外線硬化樹脂を含むハードコート層1塗布液をダイコータで塗布して80℃で5分間乾燥した後、160mJ/cm2の紫外線を照射し、乾燥膜厚7μmのハードコート層1を設けた。
【0191】
ハードコート層1表面の鉛筆硬度を測定したところ、3Hの硬度を示し、耐擦傷性効果を示した。
【0192】
〔反射防止層1の形成〕
下記のプラズマ処理Aにより、上記ハードコート層1上に下記の特性からなる高屈折率層1、低屈折率層1、高屈折率層2、低屈折率層2に順に設けて反射防止層1を形成した。
【0193】
高屈折率層1:チタン酸化物層 膜厚23nm 屈折率2.00
低屈折率層1:珪素酸化物層 膜厚29nm 屈折率1.46
高屈折率層2:チタン酸化物層 膜厚77nm 屈折率2.00
低屈折率層2:珪素酸化物層 膜厚85nm 屈折率1.46
(プラズマ処理A)
〈大気圧プラズマ放電処理装置〉
図2に示した大気圧プラズマ放電処理装置において、誘電体で被覆したロール電極及び同様に誘電体で被覆した複数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
【0194】
各層毎に、各1台のプラズマ放電処理装置を使用し、これらを連結して1パスで各層を連続して形成させた。
【0195】
第1電極となるロール電極(図3)は、冷媒を循環させることによる電極表面温度の制御手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、アルミナ溶射膜を被覆し、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax1μmとなるように加工した。最終的な誘電体の膜厚は1mm、誘電体の比誘電率は10であった。更に導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差は1.7×10-4で、耐熱温度は260℃であった。ロール電極には電極表面温度を制御するための温度制御された冷媒を循環できるようにし、80℃の温水を供給し、電極温度を制御した。
【0196】
一方、第2電極の角筒型電極(図4)は、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する角筒型固定電極群とした。この角筒型電極の誘電体については上記ロール電極のものと同じである。角筒型電極内部にはそれぞれ電極表面温度を制御するための温度制御された冷媒を循環できるようにし90℃の温水を供給し、電極温度を制御した。
【0197】
このロール電極のまわりに角筒型電極を配置した。角筒型固定電極群の放電総面積は、130cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×最大20本(電極の数)であった。
【0198】
ロール電極のまわりに配置した複数の角筒型固定電極の間隙より、反応ガスの導入と使用済みガスの排気を交互に行った。1つの間隙に対して下記の流量で窒素を主成分とする反応ガスを導入した。
【0199】
プラズマ放電処理装置には、固定電極(角筒型電極)側に、連続周波数13.56MHz、電界強度0.8kV/mm(1/2Vp-p)の高周波電圧(パール工業社製高周波電源 CF−5000−13M)を供給し、ロール電極側には、連続周波数100kHz、電界強度10kV/mm(1/2Vp-p)の高周波電圧(ハイデン研究所製高周波電源 PHK−6k 連続モード)を供給した。また、ロール電極は、ドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。
【0200】
ここでいう高周波の電界強度(印加電界強度 1/2Vp-p)とは、下記の方法に従って求めることができる。すなわち、高周波電界強度(単位:kV/m)は、各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、この高周波プローブをオシロスコープ(例えば、Tektronix社製 TDS3012B)に接続して測定した。
【0201】
なお、固定電極とロール電極の間隙は0.5mm、反応ガスの圧力は大気圧下で行った。プラズマ放電処理に用いた反応ガスの組成を以下に記す。尚、反応ガス中の液体成分は気化器によって蒸気とし、ガス供給系の配管は原料ガスが凝結するのを防止するため保温しながらロール電極のまわりに配置された隣接する角筒型電極の間隙(1mm)より放電部に供給し、1箇所の間隙あたり下記に示したガスの割合で放電部に供給した。
【0202】
〈放電条件〉
ロール電極側:100kHz 10W/cm2
固定電極(角筒型電極)側:13.56MHz 5W/cm2
〈低屈折層形成用の反応ガス組成〉
窒素:300L/min
酸素:15L/min
テトラエトキシシラン(蒸気):0.3g/min(リンテック社製の気化器にて気化させた)
ガス温度:90〜100℃
〈高屈折率層形成用の反応ガス組成〉
窒素:300L/min
水素:2L/min
テトライソプロポキシチタン(蒸気):0.2g/min(リンテック社製の気化器にて気化させた)
ガス温度:90〜100℃
〔防汚層1の形成〕
下記のプラズマ処理Bにより、上記反射防止層1上に下記の特性からなる防汚層1を形成して、試料1を作製した。
【0203】
(プラズマ処理B)
〈大気圧プラズマ放電処理装置〉
図7に記載の大気圧プラズマ処理装置を使用して、上記プラズマ処理Aで反射防止層1を形成した基材を、連続してプラズマ処理Bを施し、膜厚10nmの防汚層1を形成した。
【0204】
〈放電条件〉
高周波電源:13.56MHz
放電密度(W/cm2):2.9
〈防汚層形成用の反応ガス組成〉
アルゴン:300L/min
水素:2L/min
原料:ジメチルジエトキシシラン(蒸気)
供給量(mg/min・cm2):1.5
[試料2〜37の作製]
上記試料1の作製において、基材の種類と、バックコート層、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層及び防汚層の組成及び形成条件(放電密度、原料供給量)を変更した各層を、表1、2に記載のような組み合わせに変更した以外は同様にして、試料2〜37を作製した。
【0205】
〔反射防止層〕
(反射防止層2)
試料1の反射防止層1の形成において、ハードコート層上に下記の特性を有する高屈折率層3、低屈折率層3を形成した以外は同様にして、反射防止層2を形成した。
【0206】
高屈折率層3:チタン酸化物層 膜厚23nm 屈折率2.00
低屈折率層3:珪素酸化物層 膜厚111nm 屈折率1.46
(反射防止層3)
図5に記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、下記の条件(プラズマ処理Cと称す)にて各屈折率層を形成して反射防止層3を設けた。
【0207】
〈屈折率層の構成〉
高屈折率層4:チタン酸化物層 膜厚23nm 屈折率2.00
低屈折率層4:珪素酸化物層 膜厚29nm 屈折率1.46
高屈折率層5:チタン酸化物層 膜厚77nm 屈折率2.00
低屈折率層5:珪素酸化物層 膜厚85nm 屈折率1.46
〈放電条件〉
高周波電源(パール工業社製):連続周波数を13.56MHz(サイン波)、5W/m2
電極間隙:2mm
放電部:大気圧
〈低屈折層形成用の反応ガス組成〉
ヘリウム:300L/min
酸素:15L/min
テトラエトキシシラン(蒸気):0.3g/min(リンテック社製の気化器にて気化させた)
ガス温度:90〜100℃
〈高屈折率層形成用の反応ガス組成〉
ヘリウム:300L/min
水素:2L/min
テトライソプロポキシチタン(蒸気):0.2g/min(リンテック社製の気化器にて気化させた)
ガス温度:90〜100℃
〔防汚層〕
(防汚層2)
上記防汚層1の作製において、プラズマ処理Bの反応ガス中の水素ガスに代えて酸素ガスを用いた以外は同様にして、防汚層2を形成した。
【0208】
[試料38の作製]
上記試料1において、プラズマ処理Bの放電ガス条件を下記に変更した以外は同様にして、防汚層3を形成して試料38を作製した。なお、その他の放電条件等は、防汚層1と同条件で行った。
【0209】
【0210】
【表1】
【0211】
【表2】
【0212】
《防汚性積層体の評価》
上記作製した防汚性積層体である試料1〜38について、下記の方法に従って、防汚層中の組成比率測定と結合状態の確認、接触角の測定及び防汚性の評価を行った。
【0213】
〔防汚層中の組成比率の測定〕
各試料の防汚層中の珪素、炭素及び炭素の組成比率を、下記の方法に従ってXPS表面分析装置を用いて測定した。
【0214】
XPS表面分析装置を下記の条件にセットした。
X線アノード:Mg
分解能:1.5〜1.7ev(分解能は清浄なAg3d5/2の半値幅で規定した。)
光電子取り出し角度:90度
XPS表面分析装置は、VGサイエンティフィックス社製のESCALAB−200Rを用いた。
【0215】
以下の測定範囲でナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定した。このとき、データの取り込み間隔は0.2eVとし、目的とするピークは以下に示す最低カウント以上のカウントが得られるまで積算した。
【0216】
得られたスペクトルに対して、C1sのピーク位置が284.6eVになるようにエネルギー位置を補正した。
【0217】
次に、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM Ver.2.3(以下、VAMASソフトと称する)上で処理を行うために、前記のスペクトルを各装置メーカーが提供するソフトを用いて、VAMASソフトを使用することができるコンピューターに転送した。そして、VAMASソフトを用い、転送されたスペクトルをVAMASフォーマットに転換した後、データ処理を行った。
【0218】
定量処理に入る前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行った。各元素のピーク位置を中心として、次表に示す定量範囲でピークエリア強度(cps×eV)を求めた。以下に示した感度係数を使用し、珪素の原子数を1.0とした各元素の原子数比(原子数%)を求めた。
【0219】
〔防汚層中の結合状態の確認〕
下記の方法に従って、防汚層中の結合状態(I43.00/I44.98)を求めた。
【0220】
前記の方法に従って、ToF−SIMS測定により、質量数44.98に現れるSi−OHからなるイオン種と、43.00に現れるSi−CH3からなるイオン種のピークの積分値I44.98とI43.00の比I43.00/I44.98を求めた。
【0221】
なお、算出に際しては、各試料について3回の測定を行い、その平均値を使用した。この方法では、メチル基よりも大きなアルキル基(R)を有するシラン化合物から形成された珪素化合物層であっても、Si−R由来のSi−CH3のピークが現れるので、ピーク強度比を求めることができる。
【0222】
ToF−SIMS測定装置:Physicl Electronics社製ToF−SIMS2100
一次イオン:In
一次イオン加速電圧:15kV
一次イオンパルス幅:740ps
一次イオン電流:1.0nA
測定質量範囲:0.5〜1000amu.
装置付属の帯電補正メッシュ及び帯電補正用電子銃を使用
測定時間:3分
上記測定において、Si−CH3のピークの質量分解能(M/ΔM)が4000以上となるように、試料ステージ電圧などの測定パラメータを調整した。
【0223】
以上の条件にて各試料の測定を行い、CH3−Si(43.00amu.)及びSi−OH(44.98amu.)のピーク強度比を算出した。
【0224】
〔接触角の測定〕
23℃、55%RHの環境下で、協和界面化学株式会社製の接触角計CA−X型を用いて純水、ヘキサデカンの接触角を液滴径1.5mmにて測定した。
【0225】
〔防汚性の評価〕
試料表面に黒の油性マジック(ZEBRA社製 マッキー極細)で書いた後、ベンコット(旭化成(株)BEMCOT M−3)を用いてきれいになるまで拭き取った。これを同一箇所で複数回繰り返し、下記の基準に則り繰り返しの防汚性の評価を行った。
【0226】
◎:50回以上繰り返し軽く拭き取れる
○○:30回繰り返し軽く拭き取れる
○:20回繰り返し軽く拭き取れる
△:10回繰り返し軽く拭き取れる
△×:1回しか拭き取れない
×:拭き取れない
〔防汚性のばらつき評価〕
各試料1m×1mの範囲において、任意の測定点25点を選択して繰り返し拭き取り性の評価を行い、下記の基準に則り防汚性のばらつきの評価を行った。
【0227】
◎:25点共に、同等の拭き取り回数であり、繰り返し拭き取り性に優れている
○:25点のうち、1〜2点で繰り返し拭き取り可能回数が少ない部分がある
△:25点のうち、3〜5点で繰り返し拭き取り可能回数が少ない部分がある
×:25点のうち、2〜3点で拭き取れずに残る部分がある
以上により得られた結果を、表3、4に示す。
【0228】
【表3】
【0229】
【表4】
【0230】
表3、4より明らかなように、防汚層を0.5≦X(電極間に印加する高周波電圧の電力密度)<5、0.1≦Y(放電ガス中への有機珪素化合物の供給量)<20の範囲の放電条件で作製した試料22〜26は、接触角が良好で、防汚性は繰り返し10回拭き取ることができた。また、防汚層を0.5≦X<4、0.1≦Y<10の範囲の放電条件で作製した試料17〜21については、接触角が良好で、防汚性は繰り返し20回拭き取れることができることを確認することができた。更に、防汚層を0.5≦X<4、0.1≦Y<5、X−3≦Y≦X+3の条件を満たす放電条件で作製した試料1〜16については、接触角が良好で、防汚性も繰り返し30回拭き取れることを確認することができた。その中でも、特に1.0≦X<2.5、0.9≦Y<2.3の条件内である試料14〜16については、防汚性が特に良好で、かつ50回以上繰り返し拭き取り可能であった。
【0231】
防汚層を本発明で規定する0.5≦X<5、0.1≦Y<20の条件外の放電条件で作製した試料27〜31については、試料27〜29では接触角は良好であるが、防汚性が1回または2回しか拭き取りができなかった。また、試料30、31は膜中の炭素比率が少なくなったために接触角が低く、拭き取りもできなかった。
【0232】
防汚層をプラズマ処理Cで作製した反射防止層3の上に形成した試料32〜36については、接触角は良好であるものの、防汚性に繰り返し耐性がなく、1回しか拭き取れなかった。
【0233】
試料37については、プラズマ処理B中の添加ガスを酸素に変えたことで、放電空間が酸化雰囲気となり、原料の有機珪素化合物の分解がより促進された結果、膜中の炭素含有量が減少し、接触角が低く、防汚性も発現しなかった。また、試料38については、防汚層を有していないために、接触角が低く、防汚性も発現していない。
【0234】
また、Xが0.5W/cm2未満の条件では成膜速度が極めて遅く、プラズマ処理時間が長くなってしまい、結果基材の変形が認められた。また、Yが20を超えると反応が不十分な膜になり、繰り返し拭き取り性が悪化し、耐溶剤性にも劣っていた。これに対し、0.5≦X<5、かつ0.1≦Y<20の範囲内では拭き取り可能な回数のばらつきが少なく、0.5≦X<4、かつ0.1≦Y<10の範囲内ではさらにばらつきが少なく、特に0.5≦X<4、0.1≦Y<5、かつX−3≦Y≦X+3の範囲内では、フィルム1×1m内で任意の25点について拭き取り性評価を実施した結果、25点とも同程度(30回以上のふき取りが可能)の優れた拭き取り性であることが確認された。それに対して、0.5≦X<5、かつ0.1≦Y<20の範囲外では防汚性にむらが認められ、25点中2〜3点の割合で部分的に防汚性に劣る場所が認められた。
【0235】
実施例2
実施例1で作製した防汚性積層体である試料1〜38を用いて、偏光板及び画像表示装置を作製した。
【0236】
a)偏光膜の作製
厚さ120μmの長尺のポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺の偏光膜を得た。
【0237】
b)偏光板の作製
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光膜と偏光板用保護フィルムとを貼り合わせて偏光板を作製した。
【0238】
工程1:長尺のセルロースエステルフィルムと各防汚性積層体(試料1〜38)とを2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。防眩フィルムの反射防止層を設けた面にはあらかじめ剥離性の保護フィルム(ポリエチレン製)を張り付けて保護した。
【0239】
同様に長尺のセルロースエステルフィルムを2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。
【0240】
工程2:前述の長尺の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
【0241】
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、それを工程1でアルカリ処理したセルロースエステルフィルムと防汚性積層体で挟み込んで、積層配置した。
【0242】
工程4:2つの回転するローラにて20〜30N/cm2の圧力で約2m/minの速度で張り合わせた。このとき気泡が入らないように注意して実施した。
【0243】
工程5:80℃の乾燥機中にて工程4で作製した試料を2分間乾燥処理して、偏光板1〜38を作製した。
【0244】
次いで、市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J:型名 LA−1529HM)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏光方向を合わせた偏光板1〜38を張り付けた。
【0245】
上記のようにして得られた液晶パネルを床から80cmの高さの机上に配置し、床から3mの高さの天井部に昼色光直管蛍光灯(FLR40S・D/M−X 松下電器産業(株)製)40W×2本を1セットとして1.5m間隔で10セット配置した。このとき評価者が液晶パネル表示面正面にいるときに、評価者の頭上より後方に向けて天井部に前記蛍光灯がくるように配置した。液晶パネルは机に対する垂直方向から25°傾けて蛍光灯が写り込むようにして画面の見易さ(視認性)と、液晶パネル表面を指で触れた後、ふき取りを繰り返しての汚れ除去容易性について評価を行った結果、本発明の防汚性積層体を用いた画像表示装置は、比較例に対し、視認性に優れ、表面に汚れ(指の皮脂等)が付着しても容易にふき取ることができることを確認することができた。
【0246】
【発明の効果】
本発明により、撥水性のみならず汚れ防止性、汚れ除去容易性に優れた防汚性積層体とその製造方法及びそれを用いた偏光板と画像表示装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図2】本発明に有用な別の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図3】ロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図4】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図5】プラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図6】プラズマ放電処理容器の他の例を示す概略図である。
【図7】本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
F 基材
10 プラズマ放電処理装置
20 プラズマ放電処理容器
21 ロール電極
21a、21A 導電性母材
21b、21B セラミック被覆処理誘電体
22、29 固定電極
23a、23b ニップローラ
24、25 ガイドローラ
26 仕切板
27 給気口
28 排気口
40 ガス発生装置
50 電源
70 電極恒温ユニット
311 第1電極
312 第2電極
325、326 高周波プローブ
330 プラズマ放電処理装置
Claims (4)
- 基材上に、直接または他の層を介して、主に窒素を主成分とする大気圧またはその近傍の圧力下でプラズマ処理Aにより金属化合物層を形成した後、該金属酸化物層の上に更に大気圧またはその近傍の圧力下でプラズマ処理Bにより珪素化合物層を形成する防汚性積層体の製造方法であって、該プラズマ処理Bが、窒素またはアルゴンと、還元性ガスと、アルキル基を有する有機珪素化合物を含有する放電ガスとを電極間に供給し、該放電ガス中への該有機珪素化合物の供給量Yが0.1≦Y<20(mg/min・cm 2 )、前記電極間に印加する高周波電圧の電力密度Xが0.5≦X<5.0(W/cm 2 )である条件で、珪素化合物層を形成することを特徴とする防汚性積層体の製造方法。
- 前記プラズマ処理Aが、対向する第1電極と第2電極の間に窒素を主成分とするガスを供給し、該第1電極と該第2電極の間に高周波電圧を印加することにより該ガスを励起し、基材を励起した該ガスに晒すことによって該基材上に金属化合物層を形成する方法であって、該高周波電圧が、第1の周波数ω 1 の電圧成分と、該第1の周波数ω 1 より高い第2の周波数ω 2 の電圧成分とを重ね合わせた成分を有することを特徴とする請求項1記載の防汚性積層体の製造方法。
- 請求項1または2に記載の防汚性積層体の製造方法により製造された防汚性積層体を有することを特徴とする偏光板。
- 請求項1または2に記載の防汚性積層体の製造方法により製造された防汚性積層体を有することを特徴とする画像表示装置。
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