JP2004233515A - 反射防止層、反射防止層の作製方法、光学フィルム、偏光板及び画像表示装置 - Google Patents

反射防止層、反射防止層の作製方法、光学フィルム、偏光板及び画像表示装置 Download PDF

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Hiroto Ito
博人 伊藤
Yuji Nishikawa
雄司 西川
Shigeki Oka
繁樹 岡
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Abstract

【課題】透過率、反射率、防汚性、耐屈曲性等に優れた特性を示す反射防止層、前記反射防止層の作製方法、前記反射層を有する光学フィルム及び、前記光学フィルムを有する偏光板を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの低屈折率層と少なくとも1つの高屈折率層を有する反射防止層において、すくなくとも1層の赤外吸収スペクトルの、−CH逆対称伸縮振動の吸光度Aに対する−CH−逆対称伸縮振動の吸光度Bの吸光度比(A/B)が0.5〜2であることを特徴とする反射防止層。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射防止層、反射防止層の作製方法、光学フィルム、偏光板及び画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、カーブミラー、バックミラー、ゴーグル、窓ガラス、パソコン、ワープロ等のディスプレイ、その他種々の商業ディスプレイ等には、ガラスやプラスチック等の透明基板が使用されている。そして、これらの透明基板を通して物体や文字、図形等の視覚情報、或いはミラーからの像を透明基板を通して反射層からの像を観察する場合に、これら透明基板の表面が光を反射して、内部の必要な視覚情報が判読し難いという問題点があった。
【0003】
上記のような光の反射を防止する技術には、ガラスやプラスチックの表面に反射防止塗料を塗工する方法、ガラス等の透明基板の表面に厚み0.1μm程度のMgF等の極薄膜や金属蒸着膜を設ける方法、プラスチックレンズ等の表面に電離放射線硬化型樹脂を塗工し、更にその上に蒸着によりSiOやMgFの膜を形成する方法、電離放射線硬化型樹脂の硬化膜の上に更に低屈折率の塗膜を形成する方法等があった。
【0004】
上記のような、透明基板に透明無機薄膜を積層して反射防止機能を付与してなる反射防止フィルムでは、反射防止性には優れているが、特に基材が透明プラスチックシート(ハードコート層、防眩層等が形成されている場合もある)の場合、基材に対する反射防止層の密着性が十分ではないという問題点があり、また、基材と反射防止層との可撓性との違いから、反射防止層に微細クラックが発生しやすいという問題があった。
【0005】
このような問題点を克服する目的から、透明基材シート上に、ハードコート層を介して高屈折率層及び低屈折率層が、空気側から下記の順序及び厚みに交互に積層され、前記低屈折率層が、プラズマCVD法によって形成され、層内にメチル基を含むシリカからなり、高屈折率層がプラズマCVD法によって形成された金属酸化物からなる反射防止フィルム(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記の低屈折層を有する反射防止層では、屈折率制御、膜強度において良好な特性を示したが、例えば、最表層に用いるような場合、防汚性が低いという問題点があった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−338307号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、透過率が高く、低反射率であり、防汚性に優れ、また、耐屈曲性等の物理特性にも優れている反射防止層、前記反射防止層の作製方法、前記反射層を有する光学フィルム、前記光学フィルムを有する偏光板及び画像表示装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記の構成1〜18により達成された。
【0010】
1.少なくとも1つの低屈折率層と少なくとも1つの高屈折率層を有する反射防止層において、
すくなくとも1層の赤外吸収スペクトルの、−CH逆対称伸縮振動の吸光度Aに対する−CH−逆対称伸縮振動の吸光度Bの吸光度比(A/B)が0.5〜2であることを特徴とする反射防止層。
【0011】
2.前記少なくとも1層が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ及び錫からなる元素群から選択される少なくとも1種類の元素を有することを特徴とする前記1に記載の反射防止層。
【0012】
3.前記元素の総含有量が5原子%以上であることを特徴とする前記2に記載の反射防止層。
【0013】
4.前記少なくとも1層が、ケイ素、チタン及び錫からなる元素群から選択される、少なくとも1種類の元素を有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の反射防止層。
【0014】
5.ケイ素、チタン及び錫からなる元素群から選択される少なくとも1種の元素の総含有量が5原子%〜98原子%であることを特徴とする前記4に記載の反射防止層。
【0015】
6.前記少なくとも1層が、最表層であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の反射防止層。
【0016】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の反射防止層を製造するに当たり、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種類以上の不活性ガスと、少なくとも1種類以上の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を該プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、該基材上に薄膜を形成する工程を有することを特徴とする反射防止層の作製方法。
【0017】
8.前記不活性ガスがアルゴンまたはヘリウムを含有することを特徴とする前記7に記載の反射防止層の作製方法。
【0018】
9.前記放電空間に印加する電界が、周波数100kHzを越える高周波電圧で、且つ、1W/cm以上の電力を供給しながら放電させることを特徴とする前記7または8に記載の反射防止層の作製方法。
【0019】
10.前記高周波電圧が、連続したサイン波であることを特徴とする前記9に記載の反射防止層の作製方法。
【0020】
11.前記放電空間が互いに対向する電極から構成され、該電極の少なくとも一方が、誘電体で被覆されていることを特徴とする前記7〜10のいずれか1項に記載の反射防止層の作製方法。
【0021】
12.前記誘電体が、比誘電率が6〜45の無機物を含むことを特徴とする前記11に記載の反射防止層の作製方法。
【0022】
13.前記電極の、JIS B 0601で規定される表面粗さ(Rmax)が10μm以下であることを特徴とする前記11または12に記載の反射防止層の作製方法。
【0023】
14.前記1〜6のいずれか1項に記載の反射防止層が、基材上に直接または、その他の層を介して設けられていることを特徴とする光学フィルム。
【0024】
15.前記基材が、セルロースエステルフィルムを有することを特徴とする前記14に記載の光学フィルム。
【0025】
16.前記基材が、長尺セルロースエステルフィルムを有することを特徴とする前記14または15に記載の光学フィルム。
【0026】
17.前記14〜16のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【0027】
18.前記1〜6のいずれか1項に記載の反射防止層、前記14〜16のいずれか1項に記載の光学フィルムまたは前記17に記載の偏光板を有することを特徴とする画像表示装置。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は上記の問題点を種々検討した結果、反射防止層の赤外吸収スペクトル分析を行った際、アルキル基やアルキレン基に由来する吸収が観測される反射防止層(反射防止膜ともいう)の中に、防汚性に優れていると同時に、高透過率、低反射率を示すものが見いだされ、更には、耐屈曲性にも優れた特性を示す反射防止層の存在を見出した。
【0029】
そこで更に検討を進めた結果、請求項1に記載のように、少なくとも1つの低屈折率層と少なくとも1つの高屈折率層を有する反射防止層において、すくなくとも1層の赤外吸収スペクトルの、−CH逆対称伸縮振動の吸光度Aに対する−CH−逆対称伸縮振動の吸光度Bの吸光度比(A/B)が0.5〜2の範囲になるように調製することにより、透過率が高く、低反射率であり、防汚性に優れ、また、耐屈曲性等の物理特性にも優れている反射防止層が得られることが判った。
【0030】
本発明に記載の効果を更に好ましく得る観点からは、反射防止層を構成する、低屈折率層または高屈折率層の前記吸光度比(A/B)を0.5〜2の範囲になるように調製することが好ましく、更に好ましくは、低屈折率層の吸光度比(A/B)を0.5〜2の範囲なるように調製することである。
【0031】
更に、特に防汚性に優れた反射防止層を得る観点からは、反射防止層を構成する低屈折率層を最表面に配設し、且つ、前記吸光度比(A/B)を0.5〜2の範囲になるように調製することが好ましい。
【0032】
また、本発明では、反射防止層を構成する、低屈折率層や高屈折率層の作製を後述する大気圧プラズマ法を適用して行うことが好ましい。
【0033】
《赤外吸収スペクトル測定》:偏光減衰全反射赤外分光法測定法
本発明に係る赤外吸収スペクトルの測定について説明する。
【0034】
本発明に係る赤外吸収スペクトルは、測定対象である反射防止層が基材上に作製された薄膜であるため、通常の透過法による測定では評価可能なスペクトルを得ることが困難である。
【0035】
そこで、本発明では、以下に述べる偏光減衰全反射赤外分光法(ATR−IR法)を用いて、測定対象である、反射防止層の赤外吸収スペクトルを測定し、メチル基(−CH)の逆対称伸縮振動に由来するピークの吸光度Bやアルキレン基(−CH−)の逆対称伸縮振動に由来するピークの吸光度Aを測定し、上記の吸光度比(A/B)を得た。
【0036】
測定時には、プリズムとしてゲルマニウムを用い、入射角を45°に設定、振動面が入射角に対して平行な偏光をワイヤーグリッド偏光子を用いて入射し、これに振動面が入射面に対して平行な偏光をワイヤーグリッド偏光子を用いて入射し、赤外(IR)スペクトルを測定した。測定に際して、下層の吸収の影響が強い場合は、下層の基準スペクトルを同様に測定し差スペクトルを行い、下層の影響を消去する操作を行い、吸光度(A/B)を求めた。
【0037】
(吸光度A、Bの測定及び吸光度比(A/B)の算出)
以下、図5により、偏光減衰全反射赤外分光法(ATR−IR法)を用いて得られた赤外スペクトルの一例を用いて、メチル基(−CH)の逆対称伸縮振動に由来する吸光度Bやアルキレン基(−CH−)の逆対称伸縮振動に由来する吸光度Aに由来する吸収を測定し、吸光度比(A/B)を算出、評価の工程を具体的に説明する。
【0038】
図5において、1は、−CH(メチル基)の逆対称伸縮振動に由来するピーク(2965cm−1〜2985cm−1の間に現れる最も強いピーク)を表し、(a)はピーク1の強度であり、これを吸光度Aとする。
【0039】
ピーク1の強度測定を具体的に説明すると、例えば、ピークトップの波数が2978cm−1だとすると、3000cm−1〜3050cm−1の中の最も吸光度の小さな点3aと2800cm−1〜2750cm−1の中の最も吸光度の小さな点3bを結びこれをベースライン3とし、ベースライン3からピーク1までの高さをピーク強度(a)として求める。
【0040】
また、2は、−CH−(アルキレン基:メチレン鎖ともいう)の逆対称伸縮振動に由来するピーク(2925cm−1〜2935cm−1の間に現れる最も強いピーク)を表し、(b)はピーク2の強度であり、これを吸光度Bとする。
【0041】
吸光度Bの算出は、吸光度Aの算出と同様にして行う。
偏光減衰全反射赤外分光法(ATR−IR法)による赤外スペクトルの測定に使用する機器名、測定条件の詳細は、実施例に記載する。
【0042】
《反射防止層》
本発明の反射防止層、また、前記反射防止層に係る、低屈折率層、高屈折率層や、本発明に用いられる中屈折率層について説明する。
【0043】
本発明の反射防止層は、少なくとも1つの低屈折率層と少なくとも1つの高屈折率層を有している等、複数層から構成されている。反射防止層の態様としては、具体的には、支持体、透明支持体または基材フィルム等の基材上に、屈折率、膜厚と層数、層順を調整し、目的とする光学特性(例えば、透過率や反射率等の各物性)を満たすように配設されているようなものが挙げられる。
【0044】
本発明の反射防止層の構成の例としては、基材側から高屈折率層と低屈折率層の2層から成る構成や、中屈折率層(低屈折率層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)、高屈折率層、低屈折率層の順に3層を積層する等の構成が好ましい態様の一例として挙げられるが、その他、多くの層を積層してもよい。
【0045】
本発明の反射防止層に、更なる耐久性や優れた光学特性を付与し、且つ、コスト低減や生産性向上の効果を得る観点から、後述するクリアハードコート層(CHC層)を有する基材上に、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を設ける構成や、クリアハードコート層(CHC層)上に、順に、防眩層、高屈折率層、低屈折率を設ける構成が好ましい。
【0046】
また、反射防止層の配設時、必要に応じて、帯電防止層(ANS層)、クリアハードコート層(CHC層)、防眩層等、任意の構成を選択して、前記基材((支持体、透明支持体、基材フィルム等)に設けても良い。
【0047】
(屈折率)
本発明の反射防止層は、少なくとも1つの低屈折率層と少なくとも1つの高屈折率層を有するが、ここで、低屈折率、高屈折率とは、互いに屈折率の異なる層を表す。
【0048】
本発明では、前記低屈折率層の屈折率としては、1.10〜1.60の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、1.30〜1.50であり、且つ、前記高屈折率層の屈折率としては、1.60〜2.40の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、1.80〜2.30の範囲である。
【0049】
低屈折率層、高屈折率層の各々の屈折率は市販のエリプソメータ等を用いて測定することが出来る。
【0050】
また、中屈折率層の屈折率は、層構成時、上記の低屈折率層よりも屈折率が大きく、上記の高屈折率層よりも屈折率が小さくなるように配設されるが、好ましい範囲は、1.55〜1.80である。
【0051】
(膜厚)
本発明の反射防止層を構成する低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層の膜厚については、反射防止の効果を奏する程度の厚さであれば特に限定されないが、1nm〜1000nmの範囲が好ましく、特に好ましくは、10nm〜150nmの範囲である。
【0052】
(反射防止層作製に用いられる素材)
以下、本発明の反射防止層の作製に用いられる素材について説明する。
【0053】
本発明の反射防止層に係る低屈折率層、高屈折率層や本発明に用いられる中屈折率層等やその他、反射防止層を構成する層を構成する素材は、ケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ及び錫からなる元素群から選択される少なくとも1種類の元素を含むことが好ましく、更には、ケイ素、チタン及び錫からなる元素群から選択される少なくとも1種の元素を有することが好ましい。
【0054】
本発明では、反射防止層を構成する少なくとも1層中における上記元素の総含有量が5原子%以上であることが好ましく、更に好ましくは、10原子%〜60原子%であり、特に好ましくは、20原子%〜40原子%である。
【0055】
また、上記の中でも、特に好ましい態様としては、ケイ素、チタン及び錫からなる元素群から選択される少なくとも1種の元素の総含有量が5原子%〜98原子%であることが好ましく、且つ、その他の元素としては、炭素含有率が0.2原子%〜5原子%であることが好ましい。
【0056】
ここで、元素の総含有量とは、上記の金属元素の他に、酸素、炭素、水素等の元素を加えて合計量を表す。また、上記元素の層中の含有量は、X線光電子分光法(XPS)により求めることができる。
【0057】
上記の元素を反射防止層の構成層に付与するために用いられる化合物については後述する。
【0058】
(反射防止層への帯電防止能付与)
また、本発明の反射防止層は反射防止機能を有すると同時に帯電防止能をも併せて有することが好ましく、表面比抵抗が1010Ω/cm以下であることが好ましい。
【0059】
従って、反射防止層を構成する上記の複数の金属酸化物の薄膜の1つは、帯電防止のために導電膜であることが好ましく、例えば、導電膜である酸化スズ或いは酸化亜鉛等の薄膜を高屈折率層もしくは中屈折率層とし、この上に本発明に係わる有機基を有する珪素酸化物の薄膜を低屈折率層として形成した積層膜とすること等が好ましい。
【0060】
《反射防止層の作製方法》
本発明の反射防止層を構成する、低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層及びその他の構成層の作製には、塗布、スパッタ、蒸着、プラズマCVD法等、従来公知の方法を用いて形成することができるが、生産性向上、環境適正及び、優れた防汚性を反射防止層に付与する観点から、特に後述する大気圧プラズマCVD法(単に大気圧プラズマ法ともいう)によって形成されたものが好ましい。
【0061】
大気圧プラズマCVD法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下にある対向電極間の間隙に反応ガス(反応性ガスともいう)を供給して放電することにより発生させたプラズマによって、基材フィルム上に金属酸化物からなる膜を形成させるものである。
【0062】
本発明の反射防止層の作製方法に係る大気圧プラズマ法としては、特開平11−133205号公報、特開2000−185362号公報、特開平11−61406号公報、特開2000−147209号公報、同2000−121804号公報等に開示されている技術を適用してもよい。
【0063】
これら公報に開示される大気圧プラズマ法は、対向する電極間に、パルス化され、周波数が0.5kHz〜100kHzであり、且つ、電界の強さが1V/cm〜100V/cmの電界を印加し、放電プラズマを発生させるものである。
【0064】
ここで、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20kPa〜200kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜110kPaが好ましい。
【0065】
《大気圧プラズマ法(大気圧プラズマCVD法ともいう)》
本発明に係る大気圧プラズマ法について説明する。
【0066】
以下に、プラズマ放電処理により金属酸化物層を形成する方法を図1、2を用いて説明する。
【0067】
図1は本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【0068】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電圧印加手段の他に、図1では図示してない(後述の図2に図示してある)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0069】
プラズマ放電処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの第1の周波数ωの高周波電圧Vが印加され、また第2電極12からは第2電源22からの第2の周波数ωの高周波電圧Vが印加される。
【0070】
第1電源21は第2電源22より大きな高周波電圧(V>V)を印加出来る能力を有していればよく、また第1電源21の第1の周波数ωと第2電源22の第2の周波数ωは、ω<ωの関係にある。
【0071】
第1電極11と第1電源21との間には、第1電源21からの、実線の矢印で示す電流が第1電極11に向かって流れるように第1フィルター23が設置されており、第1電源21からの電流をアース側へと通過しにくくし、第2電源22からの電流が点線で示したようにアース側へと通過し易くするように設計されている。
【0072】
また、第2電極12と第2電源22との間には、第2電源22からの電流22が点線で示しているように、第2電極12に向かって流れるように第2フィルター24が設置されており、第2電源22からの電流をアース側へと通過しにくくし、第1電源21からの実線で示される電流をアース側へと通過し易くするように設計されている。
【0073】
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、ここでは図示してない(後述の図2に図示してあるような)ガス供給手段からガスGを導入し、第1電極11と第2電極12から高周波電圧を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置14付近で薄膜を形成させる。また、基材Fは矢印の方向に搬送される。
【0074】
薄膜形成中、ここでは図示してない(後述の図2に図示してあるような)電極温度調節手段から配管を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラが出来るだけ生じないように電極の表面の温度を均等に調節することが望まれる。
【0075】
また、図1に前述の高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧の測定に使用する測定器を示した。25及び26は高周波プローブであり、27及び28はオシロスコープである。
【0076】
ジェット方式の該大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることが出来るので、何回も処理され高速で処理することも出来る。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層の積層薄膜を形成することも出来る。
【0077】
図2は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0078】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電圧印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0079】
図2は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。ここで、基材Fは矢印の方向に搬送される。
【0080】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ωであって高周波電圧Vを、また角筒型固定電極群(第2電極)36には第2電源42から周波数ωであって高周波電圧Vをかけるようになっている。
【0081】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1電源41からの電流がロール回転電極(第1電極)35に向かって流れるように第1フィルター43が設置されている。該第1フィルターは第1電源41からの電流をアース側へと通過しにくくし、第2電源42からの電流をアース側へと通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター44が設置されている。第2フィルター44は、第2電源42からの電流をアース側へと通過しにくくし、第1電源41からの電流をアース側へと通過し易くするように設計されている。
【0082】
なお、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V>V)を印加出来る能力を有しており、また、周波数はω<ωとなる能力を有している。
【0083】
ガス供給手段50のガス供給装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。放電空間32及びプラズマ放電処理容器31内をガスGで満たす。
【0084】
図2では、給気口52の設置は、プラズマ放電処理容器31の左斜め上に設けられているが、ガス供給に支障がない限りにおいて給気口52の設置位置はプラズマ放電処理容器31の任意の位置に設置することができる。
【0085】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0086】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。図2では省略しているが、角筒型固定電極群36の間にはガスGの供給口または排ガスG′の排出口が設けられている。
【0087】
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て実線の矢印で示しているように両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、65及び66はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0088】
図3は、図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0089】
図3において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて温度調節が行われるようになっている。即ち、放電中の電極表面の温度を制御するための媒体(水、シリコンオイル等)を循環できるようになっている。
【0090】
図4は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0091】
図4において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図3同様の誘電体36Bの被覆を有し、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、内部に温度制御された媒体(水、シリコンオイル等)を循環出来るようになっている。放電中の電極表面の温度調節が行えるようになっている。
【0092】
なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されていおり、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0093】
図2に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0094】
図3及び4において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0095】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料等を挙げることが出来るが、後述の理由から、チタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0096】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1nm〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5nm〜2mmである。
【0097】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0098】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図1において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0099】
大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
Figure 2004233515
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0100】
また、第2電源(高周波電源)としては、
Figure 2004233515
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0101】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0102】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え薄膜を形成させる。供給する電力は、好ましくは1W/cm〜50W/cmであり、更に好ましくは、1.2W/cm〜20W/cmである。なお、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0103】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0104】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0105】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、更に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0106】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
Figure 2004233515
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(a)または(b)および(e)〜(h)が好ましく、特に、(a)が好ましい。
【0107】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0108】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることが出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0109】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0110】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することが出来る。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることが出来る。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0111】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることが出来る。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することが出来る。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることが出来る。
【0112】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0113】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiO)を主成分として含有するものが好ましい。
【0114】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0115】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0116】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiO(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiO含有量は、XPS(X線光電子分光法)により誘電体層の断層を分析することにより測定できる。
【0117】
本発明の反射防止層の作製方法に用いられる電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが好ましいが、更に好ましくは、8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことが出来、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。
【0118】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0119】
大気圧プラズマで本発明の範囲となる膜を作製するには、反応ガスとして、好ましくは、ケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、錫の有機金属化合物を用いることが好ましく、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、金属錯体から選ばれるものが好ましい。反応性ガスに用いられる珪素化合物、チタン化合物、錫化合物等の金属化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れ等も少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。
【0120】
また、上記の珪素化合物、チタン化合物等の金属化合物を放電空間である電極間に導入するには、これらは常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物等を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタンなど、常温で液体で、沸点が300℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。
【0121】
混合ガス中に上記の金属化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の金属化合物の含有率は、0.1体積%〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1体積%〜5体積%である。また、混合ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01体積%〜5体積%含有させることにより、反応が促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0122】
本発明の反射防止層の形成において、低屈折率層形成用原料ガスとしては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることが出来、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジアセトアセトナート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。
【0123】
本発明の反射防止層の形成において、中屈折率層もしくは高屈折率層形成用反応ガスにもちいられる金属化合物として錫化合物があるが、好ましい錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることが出来、何れも本発明において、好ましく用いることが出来る。又、これらの反応性ガスを2種以上同時に混合して使用してもよい。尚、このようにして、形成された酸化錫層は表面比抵抗値を1010Ω/cm以下、更に好ましくは10Ω/cm以下に下げることが出来るため、帯電防止層としても有用である。
【0124】
また、反射防止層において、高屈折率層形成用反応ガスに原料ガスとして使用するチタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエチルチタン、トリメチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジアセトアセトナート、エチルチタントリアセトアセトナート等、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることが出来る。或いは、高屈折率層としてテトライソプロポキシタンタル等のアルコキシタンタル類が酸化タンタル層を形成する原料ガスとしてあげられ、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。又これらの原料ガスを2種以上を同時に混合して使用することが出来るがこれらに限定されない。
【0125】
本発明に有用な、有機基を有する酸化珪素の膜を形成するための有機珪素化合物の例としては、例えば、オルガノシラン類があり、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0126】
一般式(1) R11Si(OR)(OR)(OR
一般式(2) R1112Si(OR)(OR
一般式(3) R111213Si(OR
−OR,−ORは置換基を有してもよいアルコキシ基であり、R11,R13は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、水素原子、ハロゲン原子から選択される置換基であり、それぞれ異なっていても同じでもよい。
【0127】
この有機珪素化合物の具体例としてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン、トリアシルオキシシラン、トリフェノキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシレン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン、ジフェノキシシラン、ジアシルオキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、フルオロアルキルシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシロキサン類等が挙げられる。また、有機シリコーン類等も好ましい。
【0128】
上述したように、本発明に係わる有機基を有する酸化珪素の膜は、ケイ素原子(Si)と酸素原子(O)に加え、有機物(炭素(C))が結合されている構造となっていることに特徴を有している。本発明は、前記結合されている有機物の構造を限定するものではなく、酸化珪素の膜全体として屈折率が1.40〜1.46の範囲内であればいかなる構造を有する有機物であってもよい。
【0129】
これらのアルキル基やアリール基を有するオルガノシラン或いは有機シリコーン等の様な有機珪素化合物を膜形成性ガスとして用い、形成された酸化珪素の膜は、公知のIRスペクトル透過法により赤外線吸収を測定したところ、C−H結合のストレッチング振動が、波長2800cm−1〜3100cm−1の吸収スペクトル領域に、また、O−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収については、波長3000cm−1〜3800cm−1の領域に吸収スペクトルがみられ、酸化珪素の膜内のC−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収、及びO−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収がそれぞれ上記範囲内にあることから、有機基が結合していることが明らかであり、低屈折率で、かつ耐湿熱性を有する二酸化珪素の膜ということができる。有機基例えば、用いた原料ガスに由来する有機基(例えば、アルキル基やフェニル基等の)が含まれていると考えられる。
【0130】
《基材(基材フィルムともいう)》
本発明に係る基材(基材フィルムともいう)について説明する。
【0131】
本発明に係る基材(基材フィルム)としては、樹脂フィルムや前記樹脂フィルムを有するもの(ここで、基材フィルムが樹脂フィルムを有するとは、前記樹脂フィルム単独ではなく、樹脂フィルム中に後述する可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有する場合や、前記セルロースエステルフィルム上に、後述する帯電防止層(ANS層)、バックコート層、クリアハードコート層(CHC層)、防眩層等を有する場合を示す)が好ましく用いられる。
【0132】
(樹脂フィルム)
本発明に係る基材に用いられる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースナイトレートフィルム等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0133】
中でも、セルロースエステルフィルムが好ましく用いられるが、セルロースエステルフィルムとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテートが好ましく用いられる。また、上記セルロースエステルフィルムの製造方法としては、公知の溶液流延法が特に好ましい。更には、生産性向上の観点から長尺(ここで、長尺とは約1000m〜3000m程度のものを示す)のセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0134】
樹脂フィルムとしては、上記素材を単独で使用してもよく、または、適宜混合して使用してもよい。中でもゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を好ましく使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより、得ることが出来る。また、本発明に係る支持体は、上記の記載に限定されない。膜厚としては10μm〜1000μmの樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0135】
更にこれらの上にゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル系樹脂、光硬化性硬化樹脂(ここで、光とは、紫外線、電子線、X線、アルファ線、中性子線等のエネルギー線を表す)、熱硬化性樹脂等を使用することが出来る。
【0136】
(樹脂フィルム中の添加剤)
上記樹脂フィルム中には、20℃で液体の添加剤を1質量%〜30質量%含有することが好ましい。これにより、異物故障の少ない、緻密で、膜厚均一性の高い高機能性の薄膜を、生産効率高く得ることができる。
【0137】
ここで、20℃で液体の添加剤とは、溶媒を含まない状態でも20℃で液状を示す添加剤である。ここで溶媒とは、ドープに含まれる溶媒のことである。例えば、融点が20℃以下の添加剤のほか、2種以上の添加剤の混合物が液状を示しているものであってもよい。例えば、混合によって凝固点降下し、20℃で液状を示している添加剤であってもよい。
【0138】
樹脂フィルムに添加する20℃で液体の添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、可塑剤、リターデーション調整剤から選択されるものが挙げられる。これらのうち20℃で液体の添加剤の合計が1質量%〜30質量%含有しているものであり、好ましくは2質量%〜25質量%であり、更に好ましくは5質量%〜20質量%である。特に紫外線吸収剤、可塑剤にそれぞれ液体のものが少なくとも1種使用されていることが好ましい。
【0139】
本発明では、20℃で液体の紫外線吸収剤は、融点が20℃よりも高い紫外線吸収剤を併用することもできる。同様に分子内にエステル基を有する紫外線吸収剤と分子内にエステル基を有しない紫外線吸収剤とを併用することもできる。
【0140】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は20℃で液体の紫外線吸収剤であればよいが、具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物が挙げられ、ベンゾトリアゾール系化合物が特に好ましい。更に、紫外線吸収剤は、セルロースエステルとの相溶性の点から炭素数8以上のアルキル鎖、アルケニル鎖、アルキレン鎖又はアルキレンオキシド鎖を有することが好ましい。
【0141】
又、20℃で液体の紫外線吸収剤と併用できる紫外線吸収化合物としては一般的に使用されている紫外線吸収剤を用いることができるが、具体的には例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物が挙げられる。中でも好ましいのはベンゾトリアゾール系化合物である。
【0142】
上記紫外線吸収剤の含有量は、樹脂フィルムに対して0.01〜10質量%が好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜5質量%である。
【0143】
本発明に用いられる可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系ではトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系ではジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を単独或いは併用してして用いることができる。
【0144】
このうち、20℃で液体の可塑剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ビジフェニルビフェニルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来る。本発明では特に20℃で液体の可塑剤を含用するのが好ましい。これらの可塑剤は20℃で固体の可塑剤を併用するのも好ましい。
【0145】
上記可塑剤の含有量は、フィルムの性能、加工性等の点で樹脂フィルムに対して1質量%〜20質量%が好ましく、寸法安定性の点で液晶表示部材用としては2質量%〜18質量%であることが更に好ましく、特に好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0146】
本発明において、リターデーション調整剤は膜厚方向のリターデーションRtを増加させる、或いは低減させる作用を有する添加剤であり、紫外線吸収性を有していても、可塑剤としての性質を併せ持っていてもよい。
【0147】
20℃で液体であるリターデーション調整剤としては、低分子量のポリマーが挙げられる。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート或いはこれらのモノマー成分を含む共重合体等で重量平均分子量1万以下のものが挙げられる。特に重量平均分子量500〜3000のものが好ましく用いられる。これらを添加することによって膜厚方向のリターデーションを低減することができる。
リタデーション調整剤としては特開2000−111914、特開2001−166144に記載のリタデーション上昇剤なども挙げられる。これらは添加量によってリタデーションを上昇させたり、逆に低減させたりすることができる。
【0148】
《帯電防止層(ANS層)》
本発明に用いられる帯電防止層について説明する。
【0149】
帯電防止層に用いられる導電性材料としては、イオン性高分子化合物、金属酸化物等が好ましく用いられる。
【0150】
イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号などにみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853、同62−9346にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー;等を挙げることができる。
【0151】
帯電防止層(ANS層)の表面比抵抗は、1011Ω/□(25℃、55%RH)以下に調整されることが好ましく、更に好ましくは、1010Ω/□(25℃、55%RH)以下であり、特に好ましくは、10Ω/□(25℃、55%RH)以下である。ここで、表面比抵抗値の測定の詳細は、川口電機株式会社製テラオームメーターモデルVE−30を用いて測定した。また、帯電防止層(ANS層)上に更にその他の層が設けられた場合、または、帯電防止層(ANS層)上にカール防止等の処理が行われた場合には、表面比抵抗値の測定は、帯電防止層(ANS層)が設けられている側の最表面層における表面比抵抗値を実質的に帯電防止層(ANS層)の表面比抵抗値として定義する。
【0152】
《クリアハードコート層》
基材フィルムに用いられるクリアハードコート層について説明する。
【0153】
本発明に用いられるクリアハードコート層(樹脂コート層等ともいう)はエチレン性不飽和モノマーを1種以上含む成分を重合させて形成した層であることが好ましい。
【0154】
エチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層としては、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を硬化させて形成された層が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは活性線硬化樹脂層である。
【0155】
ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。
【0156】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0157】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0158】
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0159】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることができる。
【0160】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
【0161】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
【0162】
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
【0163】
上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
【0164】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0165】
本発明において使用し得る市販品として、紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−501、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
【0166】
これらの活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することができる。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm〜10000mJ/cm程度あればよく、好ましくは、50mJ/cm〜2000mJ/cmである。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって効率よく形成することができる。
【0167】
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0168】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることができる。塗布量はウェット膜厚として0.1μm〜30μmが適当で、好ましくは、0.5μm〜15μmである。また、ドライ膜厚としては1μm〜15μmが好ましく、特に好ましくは、5μm〜10μmである。
【0169】
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、照射時間としては0.5秒〜5分が好ましく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から3秒〜2分がより好ましい。
【0170】
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止するために、また対擦り傷性等を高めるために、或いは防眩性を付与するために、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子を加えることもでき、それらの種類としては、前述のマット剤の微粒子とほぼ同様である。
【0171】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005μm〜5μmが好ましく0.01μm〜1μmであることが特に好ましい。
【0172】
紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、該樹脂組成物100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部であることが好ましい。
【0173】
紫外線硬化樹脂層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1nm〜50nmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1μm〜1μmの防眩層であってもよい。
【0174】
また、紫外線硬化樹脂層は2層以上を重ねて塗設することもでき、より硬度や耐摩擦性に優れたハードコート層を形成することができる。ハードコート層は鉛筆硬度で2H以上であることが好ましく、特に3H〜6Hであることが好ましい。又、必要に応じてセルロースエステルフィルムの両面にハードコート層を塗設することもできる。
【0175】
《防眩層》
本発明に用いられる防眩層について説明する。
【0176】
本発明に用いられる防眩層は、少なくとも支持体の一方の面に設けられる。本発明においては、前記防眩層上に、反射防止層(高屈折率層、低屈折率層等)が設けられ本発明の防眩性低反射フィルムを構成する。
【0177】
本発明に係る防眩層は表面に微細な凹凸を有することが好ましく、前記凹凸は、下記に記載のような平均粒径0.01μm〜4μmの粒子を防眩層中に含有させることが好ましい。また、後述するように、表面粗さとして、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.08μm〜0.5μmの範囲で調整されることが好ましい。
【0178】
(防眩層に含有される粒子)
防眩層中に含有される粒子としては、例えば、無機または有機の微粒子が用いられることが好ましい。
【0179】
無機微粒子としては酸化けい素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることができる。
【0180】
また、有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂微粒子、アクリルスチレン系樹脂微粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子、シリコン系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子、メラミン系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド系樹脂微粒子、ポリイミド系樹脂微粒子、またはポリ弗化エチレン系樹脂微粒子等を挙げることができる。
【0181】
上記記載の無機または有機の微粒子は、防眩層の作製に用いられる樹脂等を含む塗布組成物に加えて用いることが好ましい。また、これらの微粒子の平均粒径としては、0.01μm〜4μmであることが必要であるが、好ましくは、0.01μm〜3μmである。
【0182】
防眩層に防眩性を付与するためには、無機または有機微粒子の含有量は、防眩層作製用の樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、更に好ましくは、0.1質量部〜20質量部となるように配合することである。より好ましい防眩効果を付与するには、平均粒径0.1μm〜1μmの微粒子を防眩層作製用の樹脂100質量部に対して1質量部〜15質量部を用いるのが好ましい。又、異なる平均粒径の微粒子を2種以上用いることも好ましい。
【0183】
(防眩層の中心線平均粗さ(Ra))
本発明に係る防眩層はその表面が微細な凹凸を有することが好ましいが、前記の凹凸を得るためには、上記記載のような微粒子を添加し、JIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さRaを0.08μm〜0.5μmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは0.1μm〜0.3μmの範囲である。
【0184】
(防眩層の屈折率)
本発明に係る防眩層の屈折率は、低反射性フィルムを得るための光学設計上から屈折率が1.45〜1.65の範囲にあることが好ましい。
【0185】
(防眩層の膜厚)
充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、防眩層の膜厚は0.5μm〜15μmの範囲が好ましく、更に好ましくは、1.0μm〜7μmである。
【0186】
《光学フィルム》
本発明の光学フィルムは、上記の基材フィルム上に直接またはその他の層を介して、本発明の反射防止層を配設し作製されたものである。
【0187】
《偏光板及びそれを用いる画像表示装置》
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルムとして有用であり、これを用いて公知の方法で偏光板を作製することができる。
【0188】
本発明の偏光板は優れた防汚性を示した。また、本発明の偏光板を用いて作製した画像表示装置は視認性に優れており、過酷な環境下でも優れた視認性を提供することができた。
【0189】
本発明の偏光板は、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置あるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等の各種表示装置にも好ましく用いられる。
【0190】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、以下に示す「部」は「質量部」を表す。
【0191】
実施例1
《基材フィルム試料101の作製》
下記のようにして作製したセルロースエステルフィルムのB面上に、帯電防止層(ANS層)、クリアハードコート層(CHC層)、次いで、防眩層(AG層)を設けた基材フィルム試料101を作製した。
【0192】
ここで、下記のセルロースエステルフィルムの作製時に用いたドープ1の流延製膜時において、流延膜とステンレスバンド支持体に接していた側のフィルム面(ウェブ面ともいう)をB面として、その反対側の面をA面とする。
【0193】
《セルロースエステルフィルムの作製》
下記のドープ1を濾過した後、市販のベルト流延装置を用い、ドープ温度34℃で33℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。前記ステンレスバンド支持体上で60秒間乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からウェブを剥離した。剥離した後、70℃の雰囲気でロール搬送し縦方向に搬送張力をかけながら乾燥させた後、テンターを用いて、残留溶媒量10%のとき80℃の雰囲気内で幅方向に1.06倍延伸した後、幅保持を解放して、ロール搬送しながら120℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ8μmのナーリング加工を施して、膜厚50μmのセルロースエステルフィルムを作製した。作製に当たり、フィルム幅は、各々1300mm、巻き取り長は2000mになるように調整した。
【0194】
《ドープ1の調製》
以下に記載の素材を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過し、ドープを調製した。
【0195】
(ドープ1の組成)
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.88) 100部
トリフェニルホスフェート 8部
エチルフタリルエチルグリコレート 2部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 0.4部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 0.4部
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 0.3部
メチレンクロライド 418部
エタノール 23部
《帯電防止層(ANS層)の塗設》
上記セルロースエステルフィルムのB面に下記の塗布組成物(1)をウェット膜厚13μmとなるように押し出し塗布を行い、乾燥温度90℃にて乾燥させ帯電防止層(ANS層)を塗設した。
【0196】
塗布組成物(1)(帯電防止層用塗布組成物)
アクリペットMD(三菱レーヨン(株)製) 0.5部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 60部
メチルエチルケトン 16部
乳酸エチル 5部
メタノール 8部
導電性ポリマー樹脂P−1(平均粒径0.1μm粒子) 0.5部
【0197】
【化1】
Figure 2004233515
【0198】
《クリアハードコート層(CHC層)の塗設》
下記の塗布組成物(3)を上記帯電防止層(ANS層)上にグラビアコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、118mJ/cmで紫外線照射し、乾燥膜厚で3μmの中心線平均粗さ(Ra)10nmのクリアハードコート層(CHC層)を設けた。
【0199】
ここで、上記の中心線平均粗さ(Ra(μm))は、JIS B 0601で規定される値である。
【0200】
(塗布組成物(3)の組成)
Figure 2004233515
《防眩層の塗設》
上記で得られたクリアハードコート層(CHC層)上に、下記の塗布組成物(4)をグラビアコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、118mJ/cmで紫外線照射し、乾燥膜厚で4μmの防眩層(中心線平均粗さ(Ra)0.25μm)を設けた。
【0201】
ここで、上記の中心線平均粗さ(Ra(μm))は、JIS B 0601で規定される値である。
【0202】
(塗布組成物(4)の組成)
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
アエロジルR972V(1次粒子平均粒径16nm)
(日本アエロジル(株)製)) 5質量部
以上を高速攪拌機(TKホモミキサー、特殊機化工業(株)製)で攪拌し、その後衝突型分散機(マントンゴーリン、ゴーリン(株)製)で分散した後、下記の成分を添加し、塗布組成物(4)を調製した。
【0203】
Figure 2004233515
《光学フィルム試料101の作製》
上記の基材フィルム試料101の防眩層(AG層)上に、反射防止層として、下記に示すようにして、高屈折率層(酸化チタン層)、次いで、低屈折率層(酸化珪素層)を設けて、光学フィルム試料101を作製した。
【0204】
ここで、反射防止層である、高屈折率層、低屈折率層の作製は、図1または、図2に示すようなプラズマ放電処理装置を用い、下記の放電条件、反応性ガス組成を用い、連続的に大気圧プラズマ処理を行った。
【0205】
《放電条件》
放電出力を12W/cmとした。電極間隔は1mmとした。
【0206】
《反応性ガス》
プラズマ処理に用いた混合ガス(反応性ガス)の組成を以下に記す。気圧は1.0気圧とした。混合ガスの流量は2L/秒とした。
【0207】
(高屈折率層(酸化チタン層)形成用ガスの組成)
不活性ガス:アルゴン 98.75体積%
反応ガス1:水素ガス(混合ガス全体に対し1体積%)
反応ガス2:テトライソプロポキシチタン蒸気(150℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング)、反応ガス全体に対し0.25体積%
得られた高屈折率層の物性は下記の通りである。
【0208】
酸化チタン層、屈折率2.21、膜厚92nm、炭素含有量0.4%
(低屈折率層(酸化珪素層)形成用ガスの組成)
不活性ガス:アルゴン 98.50体積%
反応ガス1:酸素ガス(混合ガス全体に対し1%)
反応ガス2:テトラエトキシシラン蒸気(加熱した液体にアルゴンガスをバブリング)、反応ガス全体に対し0.50体積%
《光学フィルム試料102〜113の作製》
上記光学フィルム試料101の低屈折率層の作製において、混合ガス流量、反応ガス1、反応ガス2の種類、濃度を表1に記載のように変更した以外は、同様にして、光学フィルム試料102〜113を各々作製した。
【0209】
《光学フィルム試料114の作製》
上記光学フィルム試料101の低屈折率層の作製において、下記低屈折率層組成物1をバーコーターで塗布し、80℃で30分間乾燥させ低屈折率層を作製した以外は同様にして、光学フィルム試料114を作製した。
【0210】
《テトラエトキシシラン加水分解物の調製》
テトラエトキシシラン250質量部にエタノール380質量部を加え、この溶液に3質量部の濃塩酸(conc塩酸ともいう)を235質量部の水で希釈した塩酸水溶液を室温で、ゆっくり滴下した。滴下後、3時間室温で攪拌してテトラエトキシシラン加水分解物を調製した。
【0211】
(低屈折率層組成物1の調製)
テトラエトキシシラン加水分解物 180質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 5質量部
シクロヘキサノン 3200質量部
《光学フィルム試料115の作製》
上記光学フィルム試料101の低屈折率層の作製において、市販の真空プラズマCVD装置を用いて高屈折率層の上に低屈折率層を作製した(特開2000−336196号公報参照)以外は同様にして、光学フィルム試料115を作製した。尚、高周波電源として13.56MHzのRF電源を用いた。製膜条件は以下の通りである。
【0212】
印加電力 30kW
圧力 6.66Pa
HMDSO流量 4slm
酸素ガス流量 10slm
成膜用ドラム表面温度(成膜温度) −20℃
上記のガス流量単位slmは、standard liter per minuteのことである。
【0213】
得られた光学フィルム試料101〜115の各々について、反射防止層(反射防止膜ともいう)の評価は以下のように行った。
【0214】
《透過率》
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
【0215】
《反射率》
各層の屈折率と膜厚は分光反射率の測定より計算して算出した。反射光学特性は分光光度計(日立製作所製U−4000型)を用い、5度正反射の条件にて反射率の測定を行った。この測定法において、反射防止層が作製されていない側の基板面を粗面化した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、フィルム裏面での光の反射を防止し、反射率の測定を行った。
【0216】
《吸光度比(A/B)の測定》
光学フィルム試料101〜115の各々の低屈折率層の−CH(メチル基)逆対称伸縮振動の吸光度Aに対する−CH−(メチレン基)逆対称伸縮振動の吸光度Bの吸光度比(A/B)は、上記の偏光減衰全反射赤外分光法(ATR−IR法)により測定した。
【0217】
本発明では、下記の装置を用い、測定条件を下記に示す。
装置名:Mmagna860(ニコレー社製)
測定条件:下記に示す。
【0218】
スキャン回数 :256回(試料、バックグラウンド共に)
測定領域 :2600cm−1〜3800cm−1
分解能 :4cm−1
ゲイン :4
ミラー速度 :1.8988mm/秒
アパーチャ :100.0
ATRプリズム:ゲルマニウム
入射角 :45°
《防汚性評価:指紋付着性評価ともいう》
表面の防汚性の評価として、反射防止膜を25℃、60%RH(相対湿度)で2時間調湿した後、試料表面に指紋を付着させてから、それをクリーニングクロスで拭き取ったときの状態を目視観察し、指紋付着性を以下のようにランク評価した。
【0219】
◎:軽く拭くだけで指紋が完全に拭き取れる
○:指紋が完全に拭き取れる
△:指紋がやや残る
×:指紋がほとんど拭き取れない
本発明では、△、○、◎を実用可と判断した。
【0220】
《膜組成、ケイ素含有量(ケイ素含有率、ケイ素量ともいう)》
膜組成、ケイ素含有率は、XPS表面分析装置を用いてその値を測定する。XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定した。測定をおこなう前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去する必要がある。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He、Ne、Ar、Xe、Krなどが利用できる。本測定おいては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。
【0221】
先ず、結合エネルギー0eVから1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
【0222】
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピューターの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、ケイ素含有率の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。錫とインジウムの比も、上記結果から得られた原子数濃度の比とした。
【0223】
定量処理をおこなう前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションをおこない、5ポイントのスムージング処理をおこなった。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。
Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
【0224】
ここで、述べた分析手法は、表2のチタン含有率にも適用することが出来る。
得られた結果を表1に示す。
【0225】
【表1】
Figure 2004233515
【0226】
表1から、比較に比べて本発明の試料は、透過率、反射率及び防汚性のすべての項目において優れた特性を示すことが明らかである。
【0227】
実施例2
《光学フィルム試料201の作製》
実施例1の光学フィルム試料101の作製において、低屈折率層の作製を下記の条件にて酸化けい素(炭素含有率0.3原子%)からなる低屈折率層を作製した以外は同様にして、光学フィルム試料201を作製した。
【0228】
(低屈折率層(酸化珪素層)形成用ガスの組成)
不活性ガス:アルゴン 98.75体積%
反応ガス1:酸素ガス(混合ガス全体に対し1%)
反応ガス2:テトラエトキシシラン蒸気(加熱した液体にアルゴンガスをバブリング)、反応ガス全体に対し0.25体積%
《光学フィルム試料202〜205の作製》
光学フィルム試料201の作製において、低屈折率層形成用ガスの組成を表2に記載のように変更した以外は同様にして、光学フィルム試料202〜205を各々作製した。
【0229】
得られた光学フィルム試料201〜205の各々について、反射防止層の透過率、反射率、吸光度比(A/B)の測定、高屈折率層のチタン含有率(チタン量、チタン含有量ともいう)を測定した。更に、以下の試験を行った。
【0230】
《密着性》
光学フィルム試料201〜205の各々について、50℃、95%RH(相対湿度)の環境下に48時間放置した後、各々の反射防止層についてセロハンテープ剥離試験を行なった。セロハンテープ剥離試験は、ニチバン(株)製のセロテープ(R)を用いて、10×10クロスカットで5回の剥離試験を行ないその平均値を求めた。
【0231】
《耐屈曲性試験》
光学フィルム試料201〜205の各々について、JIS K 5400に規定の方法に準じて耐屈曲性を評価した。耐屈曲性評価にあたり、光学フィルム試料の巻き付けには直径10mmのステンレス棒を用いた。
【0232】
試験の結果、下記のようにランク評価を行った。
○:何らの変化もなかった
×:反射防止層に微細なクラックが発生した
得られた結果を表2に示す。
【0233】
【表2】
Figure 2004233515
【0234】
表2から、比較に比べて本発明の試料は、透過率、反射率、密着性及び耐屈曲性試験のすべての項目において優れた特性を示すことが明らかである。
【0235】
実施例3
《偏光板101の作製》:本発明
下記のように、偏光膜と実施例1の光学フィルム試料101、前記光学フィルム試料101の作製時に使用した基材フィルム試料101とを貼合して本発明の偏光板101を作製した。
【0236】
1.長尺の偏光膜作製
厚さ120μmの長尺(約2000m)のポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺(約2000m)の偏光膜を得た。
【0237】
2.偏光板作製工程
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光膜と光学フィルム試料101とを貼り合わせて偏光板を作製した。
【0238】
工程1:実施例1で作製した長尺(巻き取り長2000m)の光学フィルム試料101を、2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に45℃で50秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。同様に長尺(約2000m)のセルロースエステルフィルム(光学フィルム試料101作製時に用いたセルロースエステルフィルム)を2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に45℃、50秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。
【0239】
工程2:前記長尺の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1秒間〜2秒間浸漬した。
【0240】
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、それを工程1でアルカリ処理した光学フィルム試料101とセルロースエステルフィルムで挟み込んで、積層配置した。
【0241】
工程4:2つの回転するローラにて20N/cm〜30N/cmの圧力で約2m/分の速度で張り合わせた。このとき気泡が入らないように注意して実施した。
【0242】
工程5:80℃の乾燥機中にて工程4で作製した試料を2分間乾燥処理し、本発明の偏光板101を作製した。
【0243】
《偏光板102〜104、108〜111、114、115の作製》:本発明偏光板101の作製において、光学フィルム試料101の代わりに、実施例1で作製した、光学フィルム試料102〜104、108〜111、114、115を各々用いる以外は同様にして、本発明の偏光板102〜104、108〜111、114、115を各々作製した。
【0244】
《偏光板105〜107、112、113の作製》:比較例
偏光板101の作製において、光学フィルム試料101の代わりに、実施例1で作製した、光学フィルム試料105〜107、112、113を各々用いる以外は同様にして、偏光板105〜107、112、113を各々作製した。
【0245】
《偏光板101〜115の評価》
得られた、偏光板101〜115を各々下記のように液晶表示パネルを組み立て、諸特性を評価した。
【0246】
市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J:型名LA−1529HM)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏光方向を合わせた、上記で作製した偏光板101〜115を各々貼合して、液晶表示パネル101〜115を各々作製した。
【0247】
得られた液晶表示パネル101〜115について、目視にて観察した結果、比較の液晶表示パネル105〜107、112、113に比べて、本発明の液晶表示パネルは、いずれも、異物による欠陥もなく、液晶表示パネルに対し反射光のムラもなく、表示性能に優れていることが確認された。又、指紋が付着しても容易にふき取りが可能であり、優れた表示性能を維持出来ることが判った。
【0248】
【発明の効果】
本発明により、透過率、反射率、防汚性、耐屈曲性等に優れた特性を示す反射防止層、前記反射防止層の作製方法、前記反射層を有する光学フィルム、光学フィルムを有する偏光板及び画像表示装置を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図2】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図3】図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図4】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図5】偏光減衰全反射赤外分光法測定法を用いて得られた赤外スペクトルチャートの一例である。
【符号の説明】
10 プラズマ放電処理装置
11 第1電極
12 第2電極
20 電圧印加手段
21 第1電源
22 第2電源

Claims (18)

  1. 少なくとも1つの低屈折率層と少なくとも1つの高屈折率層を有する反射防止層において、
    すくなくとも1層の赤外吸収スペクトルの、−CH逆対称伸縮振動の吸光度Aに対する−CH−逆対称伸縮振動の吸光度Bの吸光度比(A/B)が0.5〜2であることを特徴とする反射防止層。
  2. 前記少なくとも1層が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ及び錫からなる元素群から選択される少なくとも1種類の元素を有することを特徴とする請求項1に記載の反射防止層。
  3. 前記元素の総含有量が5原子%以上であることを特徴とする請求項2に記載の反射防止層。
  4. 前記少なくとも1層が、ケイ素、チタン及び錫からなる元素群から選択される、少なくとも1種類の元素を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止層。
  5. ケイ素、チタン及び錫からなる元素群から選択される少なくとも1種の元素の総含有量が5原子%〜98原子%であることを特徴とする請求項4に記載の反射防止層。
  6. 前記少なくとも1層が、最表層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射防止層。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止層を製造するに当たり、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種類以上の不活性ガスと、少なくとも1種類以上の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を該プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、該基材上に薄膜を形成する工程を有することを特徴とする反射防止層の作製方法。
  8. 前記不活性ガスがアルゴンまたはヘリウムを含有することを特徴とする請求項7に記載の反射防止層の作製方法。
  9. 前記放電空間に印加する電界が、周波数100kHzを越える高周波電圧で、且つ、1W/cm以上の電力を供給しながら放電させることを特徴とする請求項7または8に記載の反射防止層の作製方法。
  10. 前記高周波電圧が、連続したサイン波であることを特徴とする請求項9に記載の反射防止層の作製方法。
  11. 前記放電空間が互いに対向する電極から構成され、該電極の少なくとも一方が、誘電体で被覆されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の反射防止層の作製方法。
  12. 前記誘電体が、比誘電率が6〜45の無機物を含むことを特徴とする請求項11に記載の反射防止層の作製方法。
  13. 前記電極の、JIS B 0601で規定される表面粗さ(Rmax)が10μm以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の反射防止層の作製方法。
  14. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止層が、基材上に直接または、その他の層を介して設けられていることを特徴とする光学フィルム。
  15. 前記基材が、セルロースエステルフィルムを有することを特徴とする請求項14に記載の光学フィルム。
  16. 前記基材が、長尺セルロースエステルフィルムを有することを特徴とする請求項14または15に記載の光学フィルム。
  17. 請求項14〜16のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
  18. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止層、請求項14〜16のいずれか1項に記載の光学フィルムまたは請求項17に記載の偏光板を有することを特徴とする画像表示装置。
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