JP4214366B2 - 消臭方法および消臭剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃水中や廃水を処理する際に発生する生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、凝集汚泥等、または洗浄装置の洗浄水やそれらの混合物より発生する臭気を迅速にかつ効率よく除去できる消臭方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の都市及び近郊への人口の密集は、大量の水資源の消費につながっている。そこで使用された水資源は様々な有機、無機物を含有する廃水となって公共下水道やビル中の滞留槽等へ排出される。さらにこれらは下水処理場にて処理される過程で、大量の生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥を産出する。これら廃水や汚泥の中には、硫酸塩や多量のBOD成分が含まれる。また廃水や汚泥中には通常硫酸還元菌が存在し汚泥中の硫酸塩を硫化水素に還元して生産活動を行っている。
【0003】
生成された硫化水素は常温では気体であるため気相へ拡散される。この硫化水素は、毒性のある不快な臭気を持つため、下水道設備のマンホールやビルの地下から漏洩し、周辺住民への悪臭問題の原因となったり、汚泥の処理時には作業者に対する危険性が危惧される。また、硫化水素はコンクリート施設中に付着する硫黄酸化菌および空気により酸化を受け、ミスト中に溶け込み硫酸を生成する。こうして生成した硫酸はアルカリ性であるコンクリートや金属を腐食し建築物の構造に致命的な欠陥をもたらす原因となっている。さらに硫化水素と同様に廃水および汚泥の腐敗の過程でメルカプタン類を産出し悪臭問題の原因となっている。
【0004】
これら臭気の発生や構造物の腐食を防止する手段としては、苛性ソーダ等を用いてpHをアルカリ性にし硫化水素の放散を抑制する方法もあるが、これは硫化水素そのものを分解もしくは除去するわけではないので、中和した際、硫化水素が再発生したり、アルカリスケールが発生するなど十分な処理とは言えない。また悪臭成分を酸化する方法として過酸化水素などの酸化剤を添加する方法がある。この方法は硫化水素、メルカプタン類の除去が出来るが、添加量が少量であると汚泥を長時間放置しておく場合などは酸化された硫黄もしくは硫酸イオンが、バクテリアにより再び硫化水素を生成してしまうという問題がある。硫化水素を金属塩として固定化してしまう方法として金属塩を添加する方法がある。この方法は硫化水素と金属イオンが反応し、金属硫化物として硫化水素を固定する方法があるが、スラッジが大量生成するという欠点があった。またこれら汚泥から得られる脱水ケーキには金属塩が残留しているため、コンポスト原料としての再利用には適さないという問題もあった。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術における上記のような課題を解決し、廃水、汚泥または洗浄水等の硫化水素、メルカプタン類等の硫黄系臭気物質を迅速にかつ効率よく除去し、悪臭の拡散及び施設の腐食を防止する消臭方法を提供することにある。さらには金属塩を含まず、コンポストなどへの再利用が可能となる廃水、汚泥または洗浄水等の消臭方法を提供することにある。
【0006】
【本発明が解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、硫化水素及びメルカプタン類等の硫黄系臭気物質を含む廃水または汚泥を過酸化物、硝酸イオンおよびヒドロキシルアミン類を添加することにより硫黄系臭気を迅速にかつ効率よく除去でき、なおかつ硫黄系臭気物質の発生を長時間にわたって抑制しうることを見い出し本発明に到達した。すなわち、本発明は硫化水素及びメルカプタン類等の硫黄系臭気物質を含む廃水または汚泥を過酸化物、硝酸イオンおよびヒドロキシルアミン類で処理することを特徴とする消臭方法に関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法を具体的に説明する。本発明が適用される媒体としては、家庭からの一般廃水または工場などの廃水、また洗浄装置等に含まれる洗浄水が含まれる。さらに汚泥として下水、し尿または工場廃水を処理する際に発生する生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、凝集汚泥やそれらの混合物及び汚泥を脱水して生じた脱水ケーキが含まれる
【0008】
本発明で使用される過酸化物としては、過酸化水素、過酢酸、過硫酸塩、過炭酸、過ホウ素酸塩、その他無機、有機の過酸化物が使用し得るが、好ましくは過酸化水素が使用される。過酸化物の使用量は、過酸化水素100%換算で媒体に対して1〜2000mg/L、好ましくは2〜1000mg/Lである。過酸化水素は35重量%、60重量%の濃度のものが市販されているが、これをそのまま使用しても良く、また媒体と混合しやすいように希釈して使用しても良い。
【0009】
本発明で使用される硝酸イオンとしては、硝酸および硝酸塩で供給される。硝酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩が例示されるが特にこれらに限定されない。硝酸塩は無水塩でも含水塩でも良い。硝酸イオンの使用量としては媒体に対して1〜2000mg/L、好ましくは2〜1000mg/Lである。
【0010】
本発明で使用されるヒドロキシルアミン類としては、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、硝酸ヒドロキシルアミン、その他の無機塩、有機ヒドロキシルアミン類が使用しうるが、好ましくは硫酸ヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンが使用される。ヒドロキシルアミン類の使用量は、媒体に対して1〜2000mg/L、好ましくは2〜1000mg/Lである。
【0011】
過酸化物と硝酸塩、及びヒドロキシルアミン類は各々を同時に添加しても良いし、いずれか二種類または三種類を予め混合した物を添加しても良い。過酸化物に対する硝酸イオンおよびヒドロキシルアミン類の量は特に限定されないが、通常は過酸化物100%換算に対して硝酸イオンおよびヒドロキシルアミン類を1〜300重量%程度使用される。
【0012】
過酸化物と予め混合する場合は、安定剤としてカルボン酸基を2個以上有するキレート剤及びその塩、並びにホスホン酸基を2個以上有するキレート剤及びその塩から選ばれる少なくとも1種が用いられる。カルボン酸基を2個以上有するキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ポリヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。ホスホン酸基を2個以上有するキレート剤としては、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、トリアミノトリエチルアミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、グリコールエーテルジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、テトラエチレンへプタ(メチレンホスホン酸)等が挙げられる。これらのキレート剤は、遊離酸でも良く、塩の形でも良い。塩の形で使用する場合は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等が使用できるが、ナトリウム塩、アンモニウム塩が好適に使用される。キレート剤の使用量は、硝酸イオンおよびヒドロキシルアミン類の量に依存するが混合液に対し1〜50,000ppm程度が好適に使用される。また、必要に応じてリン酸等の他の安定剤を使用しても良い。
【0013】
過酸化物とヒドロキシルアミン類を予め混合した場合には混合物のpH低下傾向が観られるが、pHを予め下げておくことにより低下傾向を抑制することが出来る。pH調整剤としては、特に限定はないが、硫酸や硝酸等無機の鉱酸や有機酸などが好適に使用される。pH調整剤の使用量は混合物に対し1〜50,000ppm程度が好適に使用される。また、さらに硝酸塩を混合することも出来る。
【0014】
また本発明は、過酸化物、硝酸塩およびヒドロキシルアミン類に防菌剤を組み合わせることにより、特に脱水ケーキの消臭持続効果において顕著な効果を示すものである。本発明において併用される防菌剤としては、例えば2,2−ジブロモー3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモー2−ニトロー1,3−プロパンジオールやジブロモー2−ニトローエタノール等の有機ハロゲン化合物、2−メチルー4−イソチアゾリンー3−オンや5−クロロー2−メチルー4−イソチアゾリンー3−オン等のチアゾリン類、2−メルカプトピリジンーNーオキシドナトリウムや(2−ピリジルチオー1−オキシド)ナトリウム等のピリジン類が挙げられる。防菌剤は、過酸化物、硝酸塩およびヒドロキシルアミン類と同時に添加しても良いし何れかと予め混合して使用しても良い。なお添加順序はいずれを先にしてもかまわないが、予め過酸化物と硝酸塩およびヒドロキシルアミン類で媒体を処理し、しかる後に防菌剤を添加することが好ましい。
【0015】
本発明による方法を効率的に行うために、薬剤を添加する際、媒体との混合のために攪拌することが好ましい。攪拌方法としては、攪拌混合槽、攪拌翼、インラインミキサーなどのいずれの方法でも良い。また防菌剤が粉体状の場合には、廃水や汚泥、脱水ケーキに散布する方法でも良い。
【0016】
薬剤の添加方法としては、ダイヤフラム式、プランジャー式の定量ポンプ等の薬品を正確に供給できる方式であれば良い。薬剤を添加する場所としては、下水、廃水や汚泥と混合できる場所であれば何れの場所でも良く、ビルの廃水ピット、下水ポンプ場のピットやし渣除去槽、下水処理場の汚泥濃縮槽、汚泥混合槽、汚泥貯留槽や凝集剤混合槽、また下水、廃水や汚泥の移送配管中に直接投入しても良い。また、媒体の移送を検知して、これに連動して消臭剤を添加するポンプの起動および停止を行うのが好ましい。媒体の移送の検知は、媒体の移送ポンプの起動信号、移送配管のバルブの開閉状態を示す信号、または媒体の流量指示等による。
【0017】
【実施例】
次に本発明の方法を実施例により更に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、%は重量%である。
【0018】
実施例1
下水処理場の濃縮槽から採取した生汚泥(TS:2.0%)1000mlに、100%過酸化水素濃度として20重量%、硝酸ナトリウム27.4重量%(硝酸イオンとして20重量%)、硫酸ヒドロキシルアミン(HAS)10重量%よりなる消臭剤を500mg添加混合し、処理後5、24、48、72時間後の硫化水素、全メルカプタン類についてガステック社製ガス検知管を用いてヘッドスペース法により測定した。結果を表1に示す。表中のN.D.は検出限界以下、tr.は痕跡を示す。
【0019】
実施例2
100%過酸化水素濃度として20重量%、硝酸ナトリウム27.4重量%(硝酸イオンとして20重量%)、硫酸ヒドロキシルアミン20重量%とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0020】
比較例1
消臭剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0021】
比較例2
100%過酸化水素濃度として20重量%とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0022】
比較例3
100%過酸化水素濃度として20重量%、硝酸ナトリウム27.4重量%(硝酸イオンとして20重量%)とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0023】
比較例4
硫酸ヒドロキシルアミン20重量%とした以外は、実施例2と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
表1. 下水汚泥の消臭処理における臭気濃度(単位:ppm)
Figure 0004214366
【0025】
実施例3
下水処理場の濃縮槽から採取した生汚泥(TS:2.0%)1000mlに、100%過酸化水素濃度として20重量%、硝酸ナトリウム27.4重量%(硝酸イオンとして20重量%)、硫酸ヒドロキシルアミン10重量%よりなる消臭剤を500mg添加混合し、次に1重量%のポリアミジン水溶液を凝集剤として20g添加し攪拌混合した後に、遠心分離機で汚泥の脱水を行った。その後、生成した脱水ケーキを処理後24、48時間後の硫化水素、全メルカプタン類についてガステック社製ガス検知管を用いてヘッドスペース法により測定した。結果を表2に示す。表中のN.D.は検出限界以下、tr.は痕跡を示す。
【0026】
実施例4
100%過酸化水素濃度として20重量%、硝酸ナトリウム27.4重量%(硝酸イオンとして20重量%)、硫酸ヒドロキシルアミン20重量%とした以外は、実施例3と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
【0027】
実施例5
2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウム(NPT)を5mg/L併用した以外は、実施例3と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
【0028】
実施例6
2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウムを5mg/L併用した以外は、実施例4と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
【0029】
比較例4
消臭剤を添加しなかった以外は、実施例3と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
【0030】
比較例5
100%過酸化水素濃度として20重量%とした以外は、実施例3と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
【0031】
比較例6
100%過酸化水素濃度として20重量%、硝酸ナトリウム27.4重量%(硝酸イオンとして20重量%)とした以外は、実施例3と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
【0032】
比較例7
2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウムを5mg/L併用した以外は、比較例6と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
【0033】
比較例8
硫酸ヒドロキシルアミン20重量%とした以外は、実施例4と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
【0034】
【表2】
表2. 脱水ケーキの消臭処理における臭気濃度(単位:ppm)
Figure 0004214366
【0035】
実施例10
60%過酸化水素33.3重量%(100%過酸化水素濃度を20重量%)、硝酸ナトリウムを27.4重量%(硝酸イオンとして20重量%)、硫酸ヒドロキシルアミンを5重量%、安定剤として1−ヒドロキシエチリデンー1,1−ジホスホン酸を2000ppm、一次イオン交換水を34.1重量%よりなる消臭剤を50℃で一週間及び一ヶ月間放置した後の過酸化水素濃度を測定し、次式により過酸化水素の安定性を算出した。またpHについても併せて測定した。安定性の結果を表3に示す。
【0036】
【数1】
Figure 0004214366
【0037】
実施例7
硫酸ヒドロキシルアミンを10重量%添加し、一次イオン交換水を29.1重量%とした以外は実施例10と同様の組成とし安定性試験を行った。安定性の結果を表3に示す。
【0038】
実施例8
硝酸を1重量%添加し一次イオン交換水を28.1重量%とした以外は実施例10と同様の組成とし安定性試験を行った。安定性の結果を表3に示す。
【0039】
実施例9
硝酸を1重量%添加し、一次イオン交換水を33.1重量%とした以外は実施例10と同様の組成とし安定性試験を行った。安定性の結果を表3に示す。
【0040】
比較例9
60%過酸化水素33.3重量%(100%過酸化水素濃度を20重量%)、、硫酸ヒドロキシルアミンを10重量%、一次イオン交換水を56.7重量%のみとし、安定性試験を行った。安定性の結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
Figure 0004214366
表3のように過酸化水素、硫酸ヒドロキシルアミンの溶液に硝酸ナトリウム、安定剤及び鉱酸を添加することにより、過酸化水素濃度、pHの安定性は向上する。
【0042】
【発明の効果】
本発明の消臭剤は、少ない添加量で硫化水素、メルカプタン類の臭気を迅速に、さらに持続性を持って除去することができその結果、有害で不快臭を持つ硫化水素、メルカプタン類の拡散は大幅に抑えられ、更にセメント、金属等の腐食を防止するための実用的な方法を提供できる。

Claims (3)

  1. 硫化水素およびメルカプタン類を含有する廃水または汚泥に、(1)過酸化水素を1〜2000mg/L、(2)硝酸、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、および硝酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の硝酸イオンを1〜2000mg/L、並びに、(3)硫酸ヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンを1〜2000mg/L、を添加混合することを特徴とする廃水または汚泥の消臭方法。
  2. さらに、2,2−ジブロモー3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモー2−ニトロー1,3−プロパンジオール、ジブロモー2−ニトローエタノール、2−メチルー4−イソチアゾリンー3−オンや5−クロロー2−メチルー4−イソチアゾリンー3−オン等のチアゾリン類、2−メルカプトピリジンーNーオキシドナトリウム、及び(2−ピリジルチオー1−オキシド)ナトリウムから選ばれる少なくとも1種の防菌剤を、廃水または汚泥に添加する請求項1記載の廃水または汚泥の消臭方法。
  3. (1)過酸化水素(2)硝酸、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、および硝酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の硝酸イオン、並びに、(3)硫酸ヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンを含有する、硫化水素及びメルカプタン類を含有する廃水または汚泥の消臭剤。
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