JP4209218B2 - 防汚塗料組成物及び防汚塗膜 - Google Patents
防汚塗料組成物及び防汚塗膜 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚塗料組成物及び防汚塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
キチン/キトサンは、手術用縫合糸、創傷被覆用不織布等の医薬品;化粧品等の生活用品等の原料として使用されているだけでなく、生分解性プラスチック、フィルム等の工業用製品;カチオン系活性汚泥凝集剤等の土木関連薬剤等の材料としても汎用されている。
【0003】
キチン/キトサンは、N−アセチルグルコサミン及びグルコサミンがβ−1,4グルコシド結合で連なった多糖類であり、エビ、カニ等の甲殻類;昆虫類等の殼等に多く含まれている。キチン/キトサンは、そのままではセルロースと類似の性質を有しており、生体適合性がよく、また、これを分解することができる酵素は、多くの動物、植物、微生物が有しており、自然界に広く存在している。キチン/キトサンは、これらの酵素の作用等によって、生態系に対して安全なN−アセチルグルコサミンモノマー、グルコサミンモノマー、これらからなるオリゴマー等にまで分解される。
【0004】
近年、環境保護の点から、海中構造物等に適用する防汚塗料組成物のバインダー成分としてキチン/キトサンを利用することが試みられている。例えば、生分解性ポリマーを配合した防汚塗料組成物が開示されており、生分解性ポリマーとして、キチン/キトサンを使用することが可能であるとしている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、キチン/キトサンは、汎用の塗料用溶剤には不溶であるので、そのままでは非常に造膜性が悪く、塗料用のバインダー成分としては好ましいものではなかった。
【0005】
平均重合度が10〜100であるキチン/キトサンからなるバインダー成分と、防汚剤とを配合してなる防汚塗料組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。これは、平均重合度を規定することによって、汎用の塗料用溶剤への溶解性を改善したものであり、塗装作業性に優れているものであるが、これにより形成される塗膜は、耐久性、密着性が満足できるものではなかった。
【0006】
このような問題を改善する方法として硬化剤を併用する方法が考えられる。しかし、キトサンは、酸によってアミノ基が塩を形成すると、水に可溶となるが、酸性条件下では、硬化剤との硬化反応が進行しにくい等の問題も生じていた。また、アルカリ性や中性条件下で可溶なキトサン化合物も開示されている(例えば、特許文献3参照。)が、これを塗料に使用することは知られていない。
【0007】
更に、防汚塗料組成物により得られる塗膜としては、船舶の航行燃費低減や省エネルギー化、液体輸送の効率化等の観点から、形成される塗膜と液体との摩擦抵抗をより低減させることも望まれている。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−120183号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平10−259347号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2002−308901号公報(第2頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、環境保護の点から好ましい材料であるキトサン誘導体をバインダーとして含有し、効率的に硬化塗膜を得ることができるものであり、また、得られる防汚塗膜が耐久性及び密着性に優れ、液体との摩擦抵抗を低減することができる防汚塗料組成物を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式(1);
【0011】
【化6】
【0012】
[式中、R1は、同一又は異なって、
【0013】
【化7】
【0014】
(式中、R2は、水素又はメチル基で表される。jは、1又は2で表される。kは、2〜20の整数で表される。)で表される基である。Aは、同一又は異なって、下記式(a1)、下記式(a2)又は下記式(a3);
【0015】
【化8】
【0016】
【化9】
【0017】
【化10】
【0018】
(式中、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素基で表される。)で表される基である。x、y及びzは、正数であって、0≦x≦0.7、0.15≦y≦0.85、0≦z≦0.84、0.5<x+y+z≦1.0の関係を満たす。]で表されるキトサン誘導体と、硬化剤と、防汚剤とからなることを特徴とする防汚塗料組成物である。
【0019】
上記硬化剤は、多官能アルデヒド化合物及び/又は多官能エポキシ化合物であることが好ましい。
上記多官能アルデヒド化合物は、グルタルアルデヒドであることが好ましい。
【0020】
本発明はまた、上記防汚塗料組成物を塗布することにより得られることを特徴とする防汚塗膜でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の防汚塗料組成物は、船舶、海洋構築物、養殖用漁網、浮標等及び工業用水系設備等の海中構造物に塗布することにより防汚塗膜を形成することができるものである。このような防汚塗膜を海中構造物上に形成させることによって、バクテリア等の微生物、これを食料とするフジツボ、イガイ、アオサ、珪藻等の動植物等による構造物の汚染を抑制することができる。
【0022】
本発明の防汚塗料組成物は、上記式(1)で表されるキトサン誘導体を含有するものである。キトサンは、酸に可溶であるが、中性やアルカリ性の溶液に溶解しない。このため、例えば、塗料中の硬化剤として、多官能アルデヒド化合物を使用し、酸性条件下で反応を進行させた場合には、反応生成物の酸性条件下での安定性が悪く、逆反応が起こってしまい、硬化反応を効率的に進行させることができない。また、硬化剤として、多官能エポキシ化合物を使用し、酸性条件下で反応させた場合には、反応が進行しにくい。一方、本発明における上記式(1)で表されるキトサン誘導体は、酸性条件下だけでなく、中性、アルカリ性条件下でも可溶である。このため、上記式(1)で表されるキトサン誘導体をバインダーとして用い、塗料中の硬化剤として、例えば、多官能アルデヒド化合物、多官能エポキシ化合物を使用した場合には、硬化反応が効率よく進行し、逆反応も充分に抑制される。従って、上記式(1)で表されるキトサン誘導体を防汚塗料組成物中に含有させることにより、硬化反応を効率的に進行させることができ、好適な防汚塗膜を得ることができる。
【0023】
また、上記式(1)で表されるキトサン誘導体のうち、x+y+z=1.0以外の誘導体は、親水性、疎水性等の性質を付与されたものである。x+y+z=1.0以外のキトサン誘導体を用いることによって、得られる塗膜の摩擦抵抗を低減させる等の効果を生じる。
【0024】
即ち、上記式(1)で表されるキトサン誘導体のうち、x+y+z=1.0以外の誘導体は、酸性条件下でしか溶解しないキトサン化合物を原料に用いた場合には導入することが困難な上記式(a1)〜(a3)のような官能基を容易に導入することによって得られる化合物であり、なおかつ、中性、アルカリ性への溶解性も維持している化合物でもある。従って、所望の性質が付与されたx+y+z=1.0以外のキトサン誘導体を含有させることにより、得られる塗膜と液体との摩擦抵抗を大幅に低減させることができる。このため、本発明の防汚塗料組成物を船舶に対して適用すると、船舶の航行燃費を抑制させることができ、省エネルギー化、輸送の効率化の観点から好ましい。
【0025】
また、上記式(1)で表されるキトサン誘導体のなかでも、x+y+z=1.0以外の誘導体は、上記式(a1)、上記式(a2)及び上記式(a3)で表される基を有する化合物であるため、得られる塗膜の水溶性をより抑制することができる。また、海水等の弱アルカリ性雰囲気下で、これらの基が加水分解されて徐々に水溶化し、かつ、放出される化合物が水棲生物の付着に対して防汚作用活性を有するために防汚性においてもより優れた性質を有する塗膜を得ることができる。
【0026】
上記式(1)で表されるキトサン誘導体において、上記R1は、同一又は異なって、
【0027】
【化11】
【0028】
で表される基である。このような構造を有する基を有する化合物であることにより、上記キトサン誘導体の水溶性を向上させることができる。上記R2は、同一又は異なって、水素又はメチル基である。上記jは、1又は2である。2を超えると、アルカリ水溶液に対する溶解性が不充分である。上記kは、下限2、上限20の整数である。2未満である場合、20を超える場合には、アルカリ水溶液に対する溶解性が不充分である。
【0029】
上記式(1)で表されるキトサン誘導体において、上記Aは、同一又は異なって、上記式(a1)、上記式(a2)又は上記式(a3)で表される基である。このような構造で表される基を有することにより、上記キトサン誘導体に親水性、疎水性等の性質を付与することができる。即ち、上記式(a1)、上記式(a2)又は上記式(a3)におけるR3、R4、R5が親水性基である場合には、上記キトサン誘導体に親水性を付与することができ、疎水性基である場合には、上記キトサン誘導体に疎水性を付与することができる。適宜選択したR3、R4、R5を導入することによって、得られる塗膜の水等の液体に対する摩擦抵抗を低減させることができる。
【0030】
上記式(a1)、上記式(a2)、上記式(a3)において、上記R3、上記R4及び上記R5は、同一又は異なって、炭素数が下限1、上限20の炭化水素基で表される。上記R3、上記R4、上記R5は、下限1、上限20の炭化水素基であれば特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。また、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれであってもよい。また、炭化水素基中に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを含んでいてもよい。
【0031】
上記式(1)において、上記xは、正数であって、0≦x≦0.7の関係を満たす。0.7を超えると、キチンの性質が強くなって酸性溶剤に溶解しなくなるおそれがある。
【0032】
上記式(1)において、上記yは、正数であって、0.15≦y≦0.85の関係を満たす。0.15未満であると、アルカリ水溶液に対する溶解性が不充分である。
【0033】
上記式(1)において、上記zは、正数であって、0≦z≦0.84の関係を満たす。
【0034】
上記式(1)において、0.5<x+y+z≦1.0の関係を満たす。0.5未満であると、中性、アルカリ性水溶液に対する溶解性の改善が充分でないおそれがある。所望の親水性、疎水性を付与できること、摩擦抵抗を低減させる効果をより発揮できること、得られる塗膜の防汚性能をより向上させることができる点から、0.5<x+y+z<0.99であることが好ましい。
【0035】
上記キトサン誘導体は、数平均分子量が、下限2000、上限1000000であることが好ましい。2000未満であると、充分な機械的強度を有する膜を形成するのが困難となるおそれがある。1000000を超えると、均一に溶解することが困難となるおそれがある。上記下限は、3000であることがより好ましく、上記上限は、800000であることがより好ましい。
【0036】
上記式(1)で表されるキトサン誘導体のうち、下記式(2)で表されるアルカリ可溶性キトサン誘導体(即ち、上記式(1)において、x+y+z=1.0の場合)は、アクリル酸又はその誘導体をキトサンに反応させることによって得ることができる。
【0037】
【化12】
【0038】
上記アクリル酸又はその誘導体は、水に溶解するものであれば特に限定されず、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシイソプロピル、アクリル酸ヒドロキシイソブチル、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。なかでも、アルカリ性水溶液に対する溶解性に優れることから、アクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルが好ましい。
【0039】
上記キトサンは、セルロースに類似した構造を有し、例えば、カニ、エビ等の甲殻類、キノコ、昆虫類等から抽出されるキチンを完全に又は部分的に脱アセチル化することにより得られるものである。従って、このようなキトサンは、アミノ基を有している。キチンの脱アセチル化は、例えば、キチンをアルカリで処理することにより行うことができる。用いられるアルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を挙げることができる。また、キトサンは、市販品を用いることもできる。
【0040】
上記キトサンは、数平均分子量が、下限2000、上限1000000であることが好ましい。2000未満であると、充分な機械的強度を有する膜を形成するのが困難となるおそれがある。1000000を超えると、均一な膜を形成することが困難となるおそれがある。上記下限は、3000であることがより好ましく、上記上限は、800000であることがより好ましい。
【0041】
上記キトサンの脱アセチル化度としては特に限定されないが、下限30%、上限100%であることが好ましい。30%未満であると、キチンの性質が強くなって酸性溶剤に溶解しなくなるおそれがある。なお、脱アセチル化度は、キチンを脱アセチル化する際に用いるアルカリの濃度、処理温度又は処理時間を適宜調整することにより所望の値に調節できる。
【0042】
上記アクリル酸又はその誘導体と上記キトサンとの反応において、上記キトサンと上記アクリル酸又はその誘導体との量比は、キトサンの目的とするN−アルキル化の度合(即ち、N−アルキル基の置換度)等によって適宜決めればよい。反応温度は、通常、35〜90℃とすればよい。反応終了後、精製し、目的物が得られる。反応生成物の同定はプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルによって行うことができる。また、反応終了後に精製しなくても構わない。この場合、反応終了後、精製せずに単官能アルデヒド化合物、単官能エポキシ化合物、アクリル酸エステルと反応させ、親水性、疎水性等の性質を有するキトサン誘導体を得ることができる。
【0043】
例えば、上記アルカリ可溶性キトサン誘導体中の化合物1(R1がr1−1である場合)及び化合物2(R1がr1−2である場合)のキトサン誘導体を得るには、キトサンをアクリル酸の水溶液に溶解し、35℃以上にて2日間以上攪拌し、化合物1の場合は反応液をそのまま、化合物2の場合は反応溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和し、脱イオン水に対して2日間透析によって精製後、凍結乾燥して得られる。得られる化合物1及び化合物2のキトサン誘導体は、pH1〜13におけるすべてのpH範囲で溶解するものである。
【0044】
また、上記アルカリ可溶性キトサン誘導体中の化合物3(R1がr1−3である場合)、化合物4(R1がr1−4である場合)、化合物5(R1がr1−5である場合)のキトサン誘導体を得るには、キトサンを酢酸、ギ酸、乳酸等の水溶液に溶解し、各種のアクリル酸エステルを添加後、35℃以上にて2日間以上攪拌し、反応溶液を炭酸水素ナトリウムで中和し、脱イオン水に対して2日間透析によって精製後、凍結乾燥して得られる。得られる化合物3〜5のキトサン誘導体はpH1〜13におけるすべてのpH範囲で溶解するものである。
【0045】
上記式(1)で表されるキトサン誘導体のうち、上記式(2)で表されるアルカリ可溶性キトサン誘導体以外のキトサン誘導体(即ち、上記式(1)において、x+y+zが1.0以外の場合)の製造方法としては特に限定されず、例えば、上述した方法により得られる上記式(2)で表されるアルカリ可溶性キトサン誘導体と、単官能アルデヒド化合物、単官能エポキシ化合物及びアクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種とを、pHが下限6.5、上限12の条件下で反応させることによって得ることができる。上記単官能アルデヒド化合物、上記単官能エポキシ化合物、上記アクリル酸エステルを適宜選択することによって、親水性、疎水性等の性質を有するキトサン誘導体を得ることができる。また、好適な単官能アルデヒド化合物、単官能エポキシ化合物、アクリル酸エステルを選択することによって、得られる塗膜の水等の液体に対する摩擦抵抗を大幅に低減させることができ、優れた防汚性能を付与することができる。
【0046】
上記アルカリ可溶性キトサン誘導体と、上記単官能アルデヒド化合物、上記単官能エポキシ化合物及び上記アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種とを反応させる方法としては特に限定されず、例えば、以下の方法で得ることができる。反応温度は、通常、20〜90℃、反応時間は1〜72時間とすればよい。反応終了後、精製し、目的物が得られる。反応生成物の同定はプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルによって行うことができる。また、反応において、例えば、溶媒としては水の他に、メタノール、エタノール等を添加してもよい。
【0047】
上記反応における反応液のpHは、下限6.5、上限12の範囲内である。6.5未満であると、反応が遅かったり、進行しない。12を超えると、当該官能基が切断される。
【0048】
具体的には、アルカリ可溶性キトサン誘導体を水に溶解し、更に必要に応じてメタノール、エタノール等を添加した後、単官能アルデヒド化合物、単官能エポキシ化合物、アクリル酸エステルと反応させ、次いで、必要に応じて炭酸水素ナトリウムを添加して所定のpHにすることよってキトサン誘導体を得ることができる。
【0049】
また、上述したような方法でのアクリル酸又はその誘導体とキトサンとの反応の終了後に精製せず、更に必要に応じてメタノール、エタノール等を添加した後、単官能アルデヒド化合物、単官能エポキシ化合物、アクリル酸エステルと反応させ、次いで、必要に応じて炭酸水素ナトリウムを添加して所定のpHにすることよってキトサン誘導体を得ることもできる。
【0050】
上記単官能アルデヒド化合物は、アルデヒド基を1個有する化合物であれば特に限定されず、例えば、カプロンアルデヒド、カプリルアルデヒド、カプリンアルデヒド、ラウリンアルデヒド、ステアリンアルデヒド、オレインアルデヒド等の脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド、p−n−ヘキシルベンズアルデヒド、p−オクチルベンズアルデヒド、p−オレイルベンズアルデヒド、バニリン、ピペロナール等のベンズアルデヒド誘導体;サリチルアルデヒド、桂皮アルデヒド等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記単官能エポキシ化合物は、オキシラン環を1個有するエポキシ化合物であれば特に限定されず、例えば、カチオン重合による開環反応によって重合可能なオキシラン環を1個有する脂肪族化合物又は芳香族化合物であって、その形態としてはモノマーからなるものであってもよく、オリゴマーやポリマーからなるものであってもよい。また、上記単官能エポキシ化合物は、窒素、硫黄、リン等の原子を分子内に含有するものであってもよい。
【0052】
上記単官能エポキシ化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アルキルモノグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、バーサティック酸モノグリシジルエステル、直鎖アルコールモノグリシジルエーテル、グリセロールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
上記アクリル酸エステルとしては特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタジエニル、アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシイソプロピル、アクリル酸ヒドロキシイソブチル、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記単官能アルデヒド化合物、上記単官能エポキシ化合物及び上記アクリル酸エステルの配合量としては特に限定されないが、上記式(1)で表されるキトサン誘導体を得ることができるように適宜配合することが好ましい。
【0055】
上記防汚塗料組成物において、上記式(1)で表されるキトサン誘導体の含有量は、塗料固形分中、下限30質量%、上限99質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、好適な硬化塗膜を得ることができないおそれ、防汚性能が低下するおそれがあり、また、摩擦抵抗の低減効果が少ないおそれもある。99質量%を超えると、硬化剤の含有量が少ないため、得られる塗膜の耐久性、密着性の向上が見られないおそれがある。
【0056】
本発明の防汚塗料組成物は、硬化剤を含有するものである。上記硬化剤は、本発明の防汚塗料組成物を塗布して得られる塗膜を硬化させる効果を有するものであり、これを含有させることにより、得られる塗膜の耐久性、密着性を向上させることができる。
【0057】
上記防汚塗料組成物における硬化剤は、上記式(1)で表されるキトサン誘導体を硬化させることができる化合物であれば特に限定されないが、より耐久性、密着性に優れた塗膜を得ることができる観点から、多官能アルデヒド化合物、多官能エポキシ化合物であることが好ましい。
【0058】
上記多官能アルデヒド化合物としては、1分子中に2個以上のアルデヒド基含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ジアルデヒド澱粉、グルタルアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、アジピンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド等を挙げることができる。なかでも、得られる塗膜の耐久性、密着性をより向上させることができる観点から、グルタルアルデヒドが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
上記多官能エポキシ化合物としては、エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルエーテル、ソルビトールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルアミン、ジグリシジルベンジルアミン、フタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ブタジエンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキセンカルボン酸とエチレングリコールとのジエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンオールエポキシドグリシジルエーテル、ジペンテンジオキサイド、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とエチレンオキサイドとの付加物等を挙げることができる。なかでも、得られる塗膜の耐久性、密着性をより向上させることができる観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
また、上記多官能エポキシ化合物の市販品としては、エポリードGT300(商品名、ダイセル化学工業社製、3官能脂環式エポキシ化合物)、エポリードGT400(ダイセル化学工業社製、4官能脂環式エポキシ化合物);エポリードGT301、同GT302、同GT303(以上、いずれもダイセル化学工業社製、開環ε−カプロラクトン鎖含有3官能脂環式エポキシ化合物);エポリードGT401、同GT402、同GT403(以上、いずれもダイセル化学工業社製、開環ε−カプロラクトン鎖含有4官能脂環式エポキシ化合物);エピコート828、同834、同1001、(以上、いずれも油化シェルエポキシ社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂);エピコート154(油化シェルエポキシ社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、セロキサイド2081、同2082、同2083(以上、いずれもダイセル化学工業社製);デナコールEX−411(ナガセ化成社製、商品名)等を挙げることができる。
【0061】
上記防汚塗料組成物において、上記硬化剤の含有量は、塗料固形分中、下限0.5質量%、上限50質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、キトサン誘導体との架橋点も少なくて充分な架橋効果が得られず、そのため、得られる塗膜における耐久性、密着性の向上が見られないおそれがある。50質量%を超えても、耐久性、密着性の向上は見られず、経済的に不利となるおそれがある。上記下限は、1質量%であることがより好ましく、上記上限は、30質量%であることがより好ましい。
【0062】
本発明の防汚塗料組成物は、防汚剤を含有するものである。上記防汚剤を含有するものであることにより、得られる塗膜の防汚性能をより向上させることができる。
【0063】
上記防汚塗料組成物における防汚剤としては特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、無機化合物、金属を含む有機化合物及び金属を含まない有機化合物等を挙げることができる。
【0064】
上記防汚剤としては特に限定されず、例えば、亜酸化銅、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート、ジンクジメチルカーバーメート、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、ジンクエチレンビスジチオカーバーメート、ロダン銅、4,5,−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾロン、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N′−ジメチル−N′−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩及び銅塩、テトラメチルチウラムジサルファイド、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、3−ヨード−2−プロピルブチルカーバーメート、ジヨードメチルパラトリスルホン、フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、トリフェニルボロンピリジン塩、ステアリルアミン−トリフェニルボロン、ラウリルアミン−トリフェニルボロン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記防汚塗料組成物において、上記防汚剤の含有量は、塗料固形分中、下限0.1質量%、上限80質量%が好ましい。0.1質量%未満では防汚効果を期待することができず、80質量%を越えると塗膜にクラック、剥離等の欠陥が生じることがある。下限1質量%、上限60質量%であることがより好ましい。
【0066】
本発明の防汚塗料組成物は、上述の成分以外に、可塑剤、顔料、溶剤等の慣用の添加剤を添加することができる。
上記可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル系可塑剤;トリクレンジリン酸、トリクロロエチルリン酸等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ系可塑剤;ジオクチルスズラウリレート、ジブチルスズラウリレート等の有機スズ系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
上記顔料としては、例えば、沈降性バリウム、タルク、クレー、白亜、シリカホワイト、アルミナホワイト、ベントナイト等の体質顔料;酸化チタン、酸化ジルコン、塩基性硫酸鉛、酸化スズ、カーボンブラック、黒鉛、ベンガラ、クロムイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドン等の着色顔料等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロペンタン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ホワイトスピリット等の炭化水素類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−ブタノール、プロピルアルコール等のアルコール等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
上記のほか、その他の添加剤としては特に限定されず、例えば、フタル酸モノブチル、コハク酸モノオクチル等の一塩基有機酸、樟脳、ひまし油等;水結合剤、タレ止め剤;色分かれ防止剤;沈降防止剤;消泡剤等を挙げることができる。
【0070】
本発明の防汚塗料組成物は、例えば、上記キトサン誘導体、及び、上記硬化剤に、防汚剤、可塑剤、塗膜消耗調整剤、顔料、溶剤等の慣用の添加剤を添加し、ボールミル、ペブルミル、ロールミル、サンドグラインドミル等の混合機を用いて混合することにより、調製することができる。
【0071】
上記防汚塗料組成物は、常法に従って被塗物の表面に塗布した後、常温下又は加熱下で溶剤を揮散除去することによって乾燥塗膜を形成することができる。このようにして得られる防汚塗膜は、海中構造物の汚染を抑制する効果を有するものである。また、液体との摩擦抵抗を低減する効果を有するものであるため、船舶の航行燃費を抑制させることができる。このような上記防汚塗料組成物を塗布することにより得られる防汚塗膜も本発明の1つである。
【0072】
上記防汚塗膜を得るための硬化条件としては、硬化塗膜を形成することができる条件であれば特に限定されないが、加熱温度は、20〜100℃であることが好ましく、加熱時間は、1〜24時間であることが好ましい。これらの下限未満であると、好適な硬化塗膜を得ることができないおそれがあり、これらの上限を超えると、経済的に不利となるおそれがある。
【0073】
本発明の防汚塗料組成物は、上記式(1)で表されるキトサン誘導体と上記硬化剤と上記防汚剤とからなるものであることから、効率的に硬化反応を進行させることができるため、好適な硬化塗膜を得ることができる。また、塗布して得られる塗膜は、耐久性及び密着性に優れるものであり、優れた防汚性を有するものでもある。更に、得られる塗膜は、液体との摩擦抵抗が大幅に低減される。また、海水等の弱アルカリ性雰囲気下で、塗膜が徐々に水溶化し、放出されるものであるため、優れた防汚性を有するものである。
【0074】
従って、本発明の防汚塗料組成物は、船舶、海洋構築物、養殖用漁網、浮標等及び工業用水系設備等の海中構造物に塗布することにより優れた防汚性を有する好適な硬化塗膜を得ることができる。また、得られる塗膜と液体との摩擦抵抗を大幅に低減することができるため、船舶に対して適用すると、船舶の航行燃費を抑制させることができる。更に、上記キトサン誘導体は、キトサンの基本化学構造を維持する化合物であり、キトサンが本来有する生理活性、生体親和性等も保持するものであるため、本発明の防汚塗料組成物は、環境保護の観点から好ましいものでもある。
【0075】
【実施例】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0076】
製造例1〔N−カルボキシエチルキトサン(1)の合成〕
キトサン2g(甲陽ケミカル、SK−10、数平均分子量4.2万、重量平均分子量8.0万、脱アセチル化度85%、アミノ基10mmol)をアクリル酸0.69mL(アミノ基に対して1当量)を含む蒸留水100mLに溶解し、50℃にて2日間攪拌した。反応物を脱イオン水に対して2日間透析(分画分子量12000の透析膜を使用)し、凍結乾燥により生成物(化合物1)を得た。キトサンからの生成物の回収率は95%、カルボキシエチル基の置換度は0.2であった。
化合物1は、下記式で表されるアルカリ可溶性キトサン誘導体である。
【0077】
【化13】
【0078】
製造例2〔N−カルボキシエチルキトサンナトリウム塩(2)の合成〕
キトサン(SK−10)2gをアクリル酸0.69mL(アミノ基に対して1当量)を含む蒸留水100mLに溶解し、50℃にて2日間攪拌した。反応溶液に1M NaOHを反応溶液のpHが10以上になるまで添加し、脱イオン水に対して2日間透析後、凍結乾燥により生成物(化合物2)を得た。キトサンからの生成物の回収率は92%であった。
生成物の構造、置換度は1H NMRにより確認した。生成物の構造はδ=2.06(N−アセチル基,0.45 H),2.90(メチレン基b:−CH 2 −COONa,2x),3.31(未置換グルコサミン残基(GlcN)及びN−アルキル基置換(N−GlcN)の2位,0.85H),3.4−4.1(メチレン基a:−NH−CH 2−、N−アセチルグルコサミン残基(GlcNAc)の2−6位、GlcN, N−GlcNの3−6位),4.87(GlcNの1位),5.00(N−GlcNの1位)。生成物の置換度(x)はδ=2.06ppmにあるN−アセチル基のシグナル(0.45H)に対する2.90ppmのメチレン基bのシグナル(2x)の比より求め、0.18であった。
化合物2は、下記式で表されるアルカリ可溶性キトサン誘導体である。
【0079】
【化14】
【0080】
製造例3〔N−カルボキシエチルキトサン(1)のラウリル化〕
製造例1で得たN−カルボキシエチルキトサン(1)1gを蒸留水20mLに溶解し、更にメタノール20 mLで希釈後、ラウリルアルデヒドをアミノ基に対して0.4当量(0.26g)添加し、室温にて1日間攪拌した。反応物を脱イオン水に対して2日間透析(分画分子量12000の透析膜を使用)し、凍結乾燥により生成物を得た。化合物1からの生成物の回収率は96%であった。ラウリル基の置換度は0.05であった。
【0081】
製造例4〔N−カルボキシエチルキトサンナトリウム塩(2)のラウリル化〕
製造例2で得たN−カルボキシエチルキトサンナトリウム塩(2)1gを蒸留水20mLに溶解し、更にメタノール20 mLで希釈後、ラウリルアルデヒドをアミノ基に対して0.4当量(0.26g)添加し、室温にて1日間攪拌した。反応溶液に飽和炭酸ナトリウム水溶液を反応溶液のpHが9以上になるまで添加した。この混合物を脱イオン水に対して1日透析した後、凍結乾燥した。乾燥物をメタノール50mLで3回洗浄し、真空乾燥して生成物を得た。化合物2からの生成物の回収率は97%であった。生成物の構造、置換度は1H NMRにより確認した。
生成物の構造はδ=0.87 (ラウリルのメチル基,3y)、1.27−1.57(ラウリルのメチレン基,18y)、2.06(N−アセチル基,0.45H),2.19−2.32(ラウリルのメチレン基:−N=CH−CH 2 −,2y)、2.90(メチレン基b,2x),3.31(未置換グルコサミン残基(GlcN)及びN−アルキル基置換(N−GlcN)の2位,0.85 H),3.4−4.1(メチレン基a、N−アセチルグルコサミン残基(GlcNAc)の2−6位、GlcN,N−GlcNの3−6位),4.87(GlcNの1位),5.00(N−GlcNの1位)。生成物の置換度(x)はδ=2.06ppmにあるN−アセチル基のシグナル(0.45H)に対する2.90ppmのメチレン基bのシグナル(2x)及びメチル基のシグナル(3y)の比より求めた。ラウリル基の置換度は0.14であった。
【0082】
製造例5〔N−カルボキシエチルキトサンナトリウム塩(2)のマイケル付加〕製造例2で得たN−カルボキシエチルキトサンナトリウム塩(2)1gを蒸留水20mLに溶解し、ポリエチレングリコールアクリレート(Mn=375)をアミノ基に対して2当量(2.68g)添加し、50℃にて1日間攪拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を反応溶液のpHが8〜9になるまで添加した。この混合物を脱イオン水に対して1日透析した後、凍結乾燥した。乾燥物をメタノール50mLで3回洗浄し、真空乾燥して生成物を得た。化合物2からの生成物の回収率は97%であった。置換度は0.26であった。
【0083】
製造例6〔N−カルボキシエチルキトサンナトリウム塩(2)エポキシとの反応〕
製造例2で得たN−カルボキシエチルキトサンナトリウム塩(2)1gを蒸留水20mLに溶解し、フェノキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル(Mn=370)をアミノ基に対して1当量(1.32g)添加し、室温にて1日間攪拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を反応溶液のpHが8〜9になるまで添加した。この混合物を脱イオン水に対して1日透析した後、凍結乾燥した。乾燥物をメタノール50mLで3回洗浄し、真空乾燥して生成物を得た。化合物2からの生成物の回収率は97%であった。
【0084】
製造例7
キトサン(SK−10)1gをアクリル酸0.35mL(アミノ基に対して1当量)を含む蒸留水20mLに溶解し、50℃にて2日間攪拌した。反応液をメタノール20mLで希釈し、ラウリルアルデヒドをキトサンのアミノ基に対して0.4当量(0.38g)添加し、室温にて1日間攪拌した。反応溶液に飽和炭酸ナトリウム水溶液又を反応溶液のpH が10以上になるまで添加した。この混合物を脱イオン水に対して2日透析した後、凍結乾燥した。乾燥物をメタノール50mLで3回洗浄し、真空乾燥して生成物を得た。キトサンからの生成物の回収率は98%であった。生成物の置換度はカルボキシエチル基が0.28、ラウリル基が0.04であった。
【0085】
製造例8
キトサン(SK−10)1gをアクリル酸0.35 mL(アミノ基に対して1当量)を含む蒸留水20mLに溶解し、50℃にて2日間攪拌した。反応液にラウリルアルデヒドをキトサンのアミノ基に対して0.4当量(0.38g)添加し、室温にて1日間攪拌した。反応溶液に飽和炭酸ナトリウム水溶液を反応溶液のpHが10以上になるまで添加した。この混合物を脱イオン水に対して2日透析した後、凍結乾燥した。乾燥物をメタノール50mLで3回洗浄し、真空乾燥して生成物を得た。キトサンからの生成物の回収率は98%であった。生成物の置換度はカルボキシエチル基が0.25、ラウリル基が0.01であった。
【0086】
製造例9
キトサン(SK−10)1gをアクリル酸0.35 mL(アミノ基に対して1当量)を含む蒸留水20mLに溶解し、50℃にて2日間攪拌した。反応液にポリエチレングリコールアクリレート(Mn=375)をアミノ基に対して2当量(3.81g)添加し、50℃にて1日間攪拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を反応溶液のpHが8〜9になるまで添加した。この混合物を脱イオン水に対して1日透析した後、凍結乾燥した。乾燥物をメタノール50mLで3回洗浄し、真空乾燥して生成物を得た。キトサンからの生成物の回収率は98%であった。生成物の置換度はカルボキシエチル基が0.25、カルボキシポリエチレングリコール基が0.16であった。
【0087】
製造例10
窒素導入管、攪拌機を備えた4つ口フラスコにキシレン40g、n−ブタノール40gを加え100℃に加熱する。この溶液中に重合性単量体としてメタクリル酸メチル50g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル50g、及び開始剤としてt−ブチル2−エチルヘキサノエート1.5gの混合液を3時間にわたり滴下する。滴下終了後、t−ブチル2−エチルヘキサノエート0.5g、キシレン10g、n−ブタノール10gの混合液を30分にわたり滴下した。その後2時間保温し、樹脂溶液を得た。
【0088】
実施例1〜16及び比較例1
製造例で得られたキトサン誘導体、硬化剤及び防汚剤を表1に示した配合に調製した防汚塗料組成物をそれぞれ下記評価方法により評価した。
【0089】
(摩擦抵抗試験)
得られた試験ドラムを7日間海水に浸漬し、海水(25±2℃)を充填した回転円筒試験装置を用いて300rpm、350rpm、400rpmの各回転速度でのドラム軸にかかるトルク値を計測した。結果を表1に示した。
【0090】
(長期防汚性)
得られた防汚塗料組成物を、予め防錆塗料を塗布してあるブラスト板に乾燥膜厚300μmになるように塗布し、2昼夜室内に放置し乾燥させて試験板を得た。得られた試験板を岡山県玉野市にある日本ペイント社臨海研究所設置の実験用筏で生物付着試験を行い防汚性を評価し、結果を表1に示した。表1中の月数は筏浸漬期間を示し、数値は付着性物の塗膜面積に占める割合を示す。
【0091】
(塗膜状態)
上記によって6ヶ月後の試験板の塗膜状態を目視で観察し、塗膜状態を評価した。結果を表1に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
表1の結果より、実施例で調製された防汚塗料組成物を塗布することにより得られる塗膜は、防汚性に優れるものであり、摩擦抵抗も比較的小さいものであった。従って、実施例で調製された防汚塗料組成物は、船舶等の海中構造物に好適に適用することができるものであることが明らかとなった。
【0094】
【発明の効果】
本発明の防汚塗料組成物は、上述の構成よりなるので、効率的に硬化塗膜を得ることができ、塗布することにより得られる防汚塗膜が耐久性及び密着性に優れるものであり、液体との摩擦抵抗も比較的小さいものである。また、優れた防汚性能を有する防汚塗膜である。更に、環境保護の点から好ましい材料であるキトサン誘導体をバインダーとして含有するものである。従って、上記防汚塗料組成物は、船舶等の海中構造物に対して好適に適用することができるものである。
Claims (4)
- 硬化剤は、多官能アルデヒド化合物及び/又は多官能エポキシ化合物である請求項1記載の防汚塗料組成物。
- 多官能アルデヒド化合物は、グルタルアルデヒドである請求項2記載の防汚塗料組成物。
- 請求項1、2又は3記載の防汚塗料組成物を塗布することにより得られることを特徴とする防汚塗膜。
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