JP3574059B2 - ポリマー粒子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は繊維処理に有用なポリマー粒子、このポリマー粒子を含有する繊維処理剤、このポリマー粒子が表面に存在してなる繊維及びその処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
最近、衣料、寝具等、人体と直接接触する繊維材料の分野において、消臭加工、抗菌防臭加工などの、より快適で人の健康に寄与するための特殊加工が行われている。
【0003】
一方、疎水性皮膚及び/又は毛髪保護剤、特にセラミドは、皮膚、毛髪の改善及び/又は治癒効果に優れるため、従来から化粧品分野において用いられているが、これらの疎水性保護剤を、水系の加工に用いるのは難しく、通常このまま繊維を処理しても、充分な効果が得られるだけの量を、繊維上に残存させにくく、更に洗濯耐久性も低い。
【0004】
本発明の課題は、これらの疎水性皮膚及び/又は毛髪保護剤を、安定的に保持出来るポリマー粒子とそれによる繊維の処理方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記条件(イ)又は(ロ)を満足する、体積平均粒径0.001〜30μmのポリマー粒子、及び芯物質として、さらに疎水性モノマーの重合体(d)を含有する、条件(イ)を満足するポリマー粒子を提供する。
条件(イ):
膜壁としてキトサンと反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩の重合体(a)を有し、芯物質として下記(I)及び (II) からなる群から選ばれる1種以上の疎水性皮膚及び/又は毛髪保護剤(以下、保護剤という)(b)を含有する。
(I):セラミド及び/又はセラミド類似構造物質
(II) :総炭素数が24〜44のジアルキルエーテル
条件(ロ):
膜壁として、(メタ)アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、キチン及びキトサンから選ばれる少なくとも1種の有機系高分子重合体(c)を有し、芯物質として下記(I)及び(II)からなる群から選ばれる1種以上を含有する。
(I):セラミド及び/又はセラミド類似構造物質
(II) :総炭素数が24〜44のジアルキルエーテル
更に本発明は、上記ポリマー粒子を含有する繊維処理剤、上記ポリマー粒子が、連続的又は不連続的に繊維表面に存在してなる繊維、上記ポリマー粒子と繊維を接触させるか、又は上記繊維処理剤と繊維を、接触させる繊維の処理方法を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
[条件(イ)の膜壁]
<キトサン>
本発明に使用されるキトサンとは(1→4)−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するキチンの脱アセチル化物であって、(1→4)−2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するもので、本発明においては脱アセチル化されたアミノ基の一部、又は同一分子内にある水酸基の一部がアシル化反応、エーテル化反応、エステル化反応、その他反応によって化学修飾されたキトサン誘導体も含まれる。一般に、天然に存在するキチンは、アセトアミド基の一部がアセチル化されていないアミノ基となっているため、本発明で用いるキトサンとは脱アセチル化度が30%以上のものを示す。
【0007】
<反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩の重合体(a)>
本発明に使用される反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩の重合体は、キトサンを溶解し水溶液とすることが可能な、分子内に反応性ビニル基を1個以上かつ酸性基を1個以上有する水溶性の有機酸(以下、酸性モノマーという)及び/又はその塩の重合体である。 酸性モノマーの具体例として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸モノマーや、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビス(3−スルホプロピル)イタコン酸エステル、ビニルスルホン酸等の不飽和スルホン酸モノマーや、ビニルホスフェート、ビス((メタ)アクリロイロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等の不飽和リン酸モノマー等が挙げられ、これらは1種単独でも、2種以上を併用しても良い。また、これらの酸性モノマーの中では、酸性度の比較的低い不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、特にポリマーの酸性度が低いメタクリル酸が最も好ましい。また、その塩としては、アルカリ金属(Na,K等)塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0008】
尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」等は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0009】
キトサンと反応性ビニル基を有する有機酸又はその塩の配合割合は、キトサンの単糖ユニット当たりに換算して、反応性ビニル基を有する有機酸又はその塩を0.75〜10倍モルの範囲で配合するのが望ましい。
【0010】
また、これらの反応性ビニル基を有する有機酸と共に、種々の酸を任意に混合することも可能である。この際混合される酸の種類としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、シュウ酸、グリコール酸、ジクロル酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸が挙げられる。
【0011】
[条件(イ)の芯物質]
<疎水性皮膚及び/又は毛髪保護剤(b)>
芯物質としての疎水性皮膚及び/又は毛髪保護剤は、疎水性であれば限定されないが、好ましくは水100gに対する溶解度が20℃において1g未満である。
【0012】
本発明に用いられる保護剤は、皮膚上のエモリエントとして働く保湿剤、皮膚及び毛髪上の保護膜として働く剤、角層及びキューティクルに浸透し、フリーラジカルをトラップする剤、構造的保水作用を持つ剤、キューティクルの強化及び補修作用を持つ剤、抗酸化剤等が挙げられる。
【0013】
本発明の保護剤の例としては、スクワラン、スクワレン、ミンク油、ホホバ油、カルナバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、ラノリン等の天然物、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、石油ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、イソステアリルアルコール、コレステロール等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチン、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリミリスチン酸グリセリン、イソステアリン酸コレステリル等のエステル、ビタミンA,ビタミンE、パンテノール、パントテニルエチルエーテル等のビタミン類、その他パラフィン、シリコーン及びその誘導体、セラミド及びその類似構造物質、総炭素数が24〜60の分岐鎖又は直鎖状の固体アルキルエーテル、炭素数が12〜22のアルキル基を有するアルカノイルタウリンカルシウム塩等が挙げられる。
【0014】
これらの中で、セラミド及びその類似構造物質、スクワラン、スクワレン、総炭素数が24〜44のジアルキルエーテル、ラウロイルタウリンカルシウム塩が好ましく用いられ、更に、下記(I)及び(II)
(I):セラミド及び/又はセラミド類似構造物質
(II) :総炭素数が24〜44のジアルキルエーテル
からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、セラミド及び/又はセラミド類似構造物質、及びジステアリルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることが特に好ましい。
【0015】
本発明に使用されるセラミド及びその類似構造物質は、特開平5−213731号公報に記載されている、次の一般式(1)及び(2)で表わされるものが特に好ましい。
【0016】
【化1】
Figure 0003574059
【0017】
(式中、R及びRは同一又は異なって、1個以上の水酸基が置換してもよい炭素数8〜26の直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)
【0018】
【化2】
Figure 0003574059
【0019】
(式中、Rは炭素数10〜26の直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Rは炭素数9〜25の直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)
これらのセラミド及びその類似構造物質は、特開平5−213731号公報に記載の一般式(3)で表わされるコレステロール誘導体の1種又は2種以上を、セラミド及びその類似構造物質/コレステロール誘導体(重量比)=95/5〜5/95の割合で混合した後、ポリマー粒子の製造に使用することが好ましい。
【0020】
【化3】
Figure 0003574059
【0021】
[式中、Rは、−(CH−(nは2〜10の整数を示す)又は−CH−CHR−(Rは炭素数3〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す)を示し、Rはコレステロール類の水酸基プロトンを除く残基を示す。]
これらの保護剤は、皮膚や毛髪の良好な保護効果を得、ポリマー粒子の安定性を向上させる観点から、ポリマー粒子中に好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%配合される。
【0022】
<疎水性モノマーの重合体(d)>
本発明の条件(イ)を満足するポリマー粒子には、疎水性モノマーの重合体を、さらに疎水性芯物質として使用することが好ましい。疎水性とは、好ましくは水100gに対する溶解度が20℃において0.1g以下のものである。
【0023】
そのような疎水性モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデセニル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデセニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、トリフルオロエチルメタクリレート等のフッ素系単量体、シリコーンマクロマー等が挙げられる。これらの中で、(メタ)アクリル酸ドデシルと(メタ)アクリル酸オクタデシルが、好ましい。
【0024】
疎水性モノマーと疎水性皮膚及び/又は毛髪保護剤の両成分を疎水性物質とした時、この疎水性物質とキトサンの配合割合は、キトサンの性能を充分に発揮させ、ポリマー粒子の安定性を向上させる観点から、疎水性物質100重量部に対して、キトサン1〜5000重量部が好ましく、2〜300重量部が更に好ましい。
【0025】
[条件(ロ)の膜壁]
<有機系高分子重合体(c)>
本発明に使用される有機系高分子重合体には、合成高分子重合体、半合成高分子重合体、天然高分子重合体があげられ、後述する界面重合法、in situ重合法、液中乾燥法等の種々の重合技術により調製される。
【0026】
合成高分子重合体としては、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニール、テトラフルオロエチレン、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。このような合成高分子重合体を合成するには、単量体として、(1)(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、(2)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル、(3)(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド、(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルラウレート等の脂肪族カルボン酸のビニルエステル、(5)ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−オクチルエーテル等のアルコールのビニルエーテル、(6)N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム、(7)塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン化合物、(8)スチレン、ビニルナフタリン等のアリールビニル及びアリールビニリデン化合物、(9)アクリロニトリル等のビニルニトリルやシアノビニリデン化合物、(10)ビニルピロリドン、ビニルピリジン等の窒素複素環式化合物、(11)ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、イソブチレン、プロピレン、ブチレン等のエチレン系不飽和化合物等を、単独あるいは組み合わせて使用することが出来る。また架橋剤も使用することが出来、架橋剤には、ジビニル系のジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート系のエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能性架橋剤、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートやテトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性架橋剤が挙げられる。これらの中で好ましい架橋剤は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0027】
半合成高分子重合体の例としては、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系高分子、カルボキシメチルデンプン等のデンプン系高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0028】
天然高分子重合体の例としては、寒天、アラビアゴム等の植物系高分子、ゼラチン、コラーゲン等の動物系高分子、天然多糖類、ポリアミノ酸等が挙げられる。
【0029】
これらの中で好ましい有機系高分子重合体は、合成高分子重合体と半合成高分子重合体であり、合成高分子重合体として、(メタ)アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体が更に好ましく、半合成高分子重合体として、キチン、キトサンが更に好ましい。 特に好ましい有機系高分子重合体は、キトサンである。キトサンは分子間の強い水素結合のため、酸性水溶液以外には単独ではほとんど溶解しないため、他の反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩の重合体と共に用いられ、膜壁が、キトサンと、反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩の重合体であることが好ましい。
【0030】
[条件(ロ)の芯物質]
前述の[条件(イ)の芯物質]の項記載のものが使用されるが、下記(I)及び(II)
(I):セラミド及び/又はセラミド類似構造物質
(II) :総炭素数が24〜44のジアルキルエーテル
からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、セラミド及び/又はセラミド類似構造物質、及びジステアリルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることが特に好ましい。
【0031】
[ポリマー粒子の製造法]
本発明のポリマー粒子の製造法としては、 in situ重合法、界面重合法、液中乾燥法、液中硬化被覆法、相分離法、融解分散冷却法、スプレードライング法、パンコーティング法等の一般的な方法を使用することができる。これらの中から、使用する有機系高分子重合体に合わせて、製造法を選択出来る。 好ましくは、in situ重合法、液中乾燥法、界面重合法である。
【0032】
<有機系高分子重合体として、(メタ)アクリル共重合体を用いる場合>
(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸又はその塩、スルホン酸基もしくはリン酸基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー又はその塩等を、アルコール系、ケトン系、エーテル系等の親水性を主体とする溶剤中、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(通称:AIBN)類の油溶性ラジカル開始剤を全モノマーに対して0.1〜30mol%加え、必要に応じて連鎖移動剤を使用し、窒素ガス気流下、50〜300℃で溶剤還流させ溶液重合等の公知の重合法で、(メタ)アクリル共重合体を調製する。
【0033】
次に、この(メタ)アクリル共重合体を、保護剤と共にトルエン等の溶剤に溶解させ、次いで該溶液を界面活性剤もしくは高分子保護コロイドを含む水溶液中に分散した後、超音波分散機を用いて、好ましくは平均粒径が10μm以下のポリマー粒子となるように分散する。この該分散液から、溶剤を留去することで、ポリマー粒子を調製する。
【0034】
<有機系高分子重合体として、キトサンと、反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩の重合体を用いる場合>
本発明のポリマー粒子は下記製造法1又は2により製造することが出来る。
【0035】
<製造法1>
キトサン、反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩、保護剤、場合により疎水性モノマー,油溶性重合開始剤、更に必要により非重合性疎水性物質と界面活性剤を、イオン交換水と混合し、乳化装置を用いて機械的撹拌により乳化させることで、好ましくは平均粒径が10μm以下のモノマー液滴を含むO/Wエマルジョンを調製する。乳化装置としては超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、マイルダー、アトライター、(超)高圧ホモジナイザー、ナノマイザーシステム、膜乳化装置等を用いることができる。尚、乳化時の固形分濃度は1〜60重量%の範囲が好ましい。
【0036】
次に、上記のようにして調製したO/Wエマルジョンを加温し、重合を行い、ポリマー粒子を得る。重合温度は開始剤の種類によっても異なるが、約40〜90℃の範囲が適当である。また重合時間はモノマー、重合開始剤種、反応温度により異なるが一般に1〜24時間が適当である。また、水中の反応性ビニル基を有する有機酸又はその塩を重合させるため少量の水溶性重合開始剤を重合中に加えても良い。また、キトサン含有量を上げるために重合中に更にキトサンと反応性ビニル基含有有機酸塩水溶液を添加しても良い。
【0037】
<製造法2>
キトサン、反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩、場合により疎水性モノマー,油溶性重合開始剤、更に必要により非重合性疎水性物質と界面活性剤を、イオン交換水と混合し、乳化装置を用いて機械的撹拌により乳化させることで、好ましくは平均粒径が10μm以下のモノマー液滴を含むO/Wエマルジョンを調製する。その後、上記製造法1と同様に、加熱、重合しポリマー粒子を調整する。このポリマー粒子の水分散液に、保護剤の水分散体を加え、ポリマー粒子に保護剤を吸収させる。
【0038】
製造法1又は2により得られたポリマー粒子は、塩基を用いて中和することも出来る。ここで用いられる塩基として、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、アミノ変性シリコーン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等が挙げられる。塩基の添加量はエマルジョン中の有機酸重合体に対して0.1〜2.0モル%が好ましく、0.6〜1.2モル%が特に好ましい。
【0039】
<油溶性重合開始剤>
上記製造法に用いられる油溶性重合開始剤としては、熱又は還元性物質存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるもので、油溶性の過酸化物、アゾビス化合物等が一般的に用いられる。例えば、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの油溶性重合開始剤は単独又は2種以上併用して使用することができる。これらの油溶性重合開始剤は疎水性モノマー100重量部に対し0.05〜10.0重量部の範囲で用いられるのが好ましい。
【0040】
<水溶性重合開始剤>
上記製造法に、必要に応じて用いられる水溶性重合開始剤とは、熱又は還元物質の存在下でラジカル分解し、モノマーの付加重合を開始させるもので、水溶性のペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が一般的に用いられる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等のペルオキソ二硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩類(v−50)、4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノン酸等のアゾ化合物が挙げられる。必要に応じて還元剤と組み合わせて、レドックス系開始剤としても使用することが出来る。
【0041】
<非重合性疎水性物質>
上記製造法において、乳化の際に用いられる非重合性疎水性物質としては、ワックス、香料、可塑剤、連鎖移動剤等が挙げられる。
【0042】
<界面活性剤等>
上記製造法において、必要により用いられる界面活性剤としては、一般のアニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の界面活性剤が挙げられる。例えばアニオン性界面活性剤として、ドデシル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのサルフェート塩等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤として、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテル、ポリエチレンオキサイドアルキルフェニルエーテル、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロックコポリマー等が挙げられる。カチオン性界面活性剤として、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。両性界面活性剤として、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。但し、ポリマー粒子内に両性イオンが存在することから、粒子の安定性などを考慮すると、ノニオン性界面活性剤が望ましい。界面活性剤の使用量は特に限定されないが、疎水性モノマーに対して0.1〜20重量%の範囲で使用することが望ましい。
【0043】
上記製造法には、さらに水溶性高分子を乳化剤として用いることもできる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、セルロース誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤及び水溶性高分子は、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
【0044】
[ポリマー粒子の平均粒径]
本発明のポリマー粒子は、経時的に沈降せず良好な安定性を得る観点から、その体積平均粒径が、0.001〜30μmであり、好ましくは0.01〜30μm、さらに好ましくは0.05〜10μmである。ここで体積平均粒径は、レーザー回折型粒径分布測定装置(LA−910、HORIBA製)により求めた、体積平均粒径値である。
【0045】
本発明のポリマー粒子は、芯物質として保護剤を含むものであるが、その一部は、膜外及び/又は膜壁内に担持していてもよい。
【0046】
[繊維]
本発明で使用される繊維としては、木綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維や、レーヨン、キュプラ、テンセル等の再生繊維、アセテート、ジアセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維が例示される。また、繊維の形態は、ステープルファイバー、糸、不織布、ニット布、織布等、種々のものが挙げられる。
【0047】
またこれらの繊維からなる好ましい衣料の例として、パンティーストッキング、ランジェリー、ペチコート、キャミソール、ショーツ、シャツ、トランクス、ブリーフ等の肌着、ガードル、ブラジャー、ボディースーツ等のファンデーション、ナイトドレス、パジャマ、バスローブ等のナイトウエア、さらにはレオタード、ソックス、腹巻、手袋、マフラー、マスク、タオル、帽子、枕カバー、敷布等の寝具等、直接肌、毛に接触して着用するものが挙げられる。
【0048】
[繊維処理剤]
本発明に係わるポリマー粒子を、水及び/又は有機溶媒中に、分散させることで繊維処理剤を調製する。繊維処理剤中のポリマー粒子の配合割合は、0.1〜10重量%が好ましい。
【0049】
有機溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール類や、アセトン、アセトニトリル、テトラヒトロフラン、ジオキサン、酢酸エチル等の極性溶媒、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の非極性溶媒等が好ましく用いられる。このような溶媒は、水と任意の比率で混合して使用することも出来る。
【0050】
[繊維処理方法]
本発明において、繊維を処理する方法として、ポリマー粒子と繊維を直接接触させる方法、又は繊維処理剤と繊維を接触させる方法がある。ポリマー粒子と繊維を直接接触させる方法には、繊維にポリマー粒子を練り込む等の方法があり、繊維処理剤と繊維を接触させる方法には、繊維処理剤中ヘ繊維を浸漬した後、乾燥させる方法、繊維処理剤を繊維に噴霧し、次いで乾燥させる方法等が挙げられる。このような処理により、繊維表面にポリマー粒子を連続的又は不連続的に存在させた繊維を得ることができる。
【0051】
具体的な繊維の処理方法は、マングル、ドライヤーを用いたパッド・ドライ法や、ウインス、チーズ染色機、液流染色機等を用いた浸漬法、スプレー法、コーティング法、捺染法や、レーヨン、アクリル繊維等の練り込み法等が挙げられる。
【0052】
本発明の繊維処理方法において、ポリマー粒子又は繊維処理剤は、繊維重量に対して保護剤が、0.05〜5重量%となるように処理することが好ましい。
【0053】
また繊維を処理するにあたり、バインダーを使用しても、しなくてもよいが、耐洗濯性の点でバインダーを使用することが好ましい。バインダーとして、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が例示される。またこの場合、併用する薬剤としてバインダー以外にも、柔軟仕上げ剤、硬仕上げ剤、可縫性向上剤、防炎剤、帯電防止剤、防汚加工剤、抗菌防臭加工剤、起毛剤、スリップ防止剤、保湿加工剤、撥水剤、吸水剤、蛍光染料、グリオキザール等の防縮剤、フィックス剤等が目的に応じ利用可能である。
【0054】
バインダーの使用量は、良好な洗濯耐久性及び繊維処理効果を得る観点から、ポリマー粒子重量に対して、バインダー固形分として10〜500重量%が好ましく、50〜300重量%がより好ましい。
【0055】
【実施例】
実施例1
市販のキトサン(大日精化工業(株)製ダイキトサンP(VL)、脱アセチル化度85〜88%)20gに640gの水を加え、これにメタクリル酸20gを加え、室温で攪拌しながら溶解させ、キトサン/メタクリル酸水溶液を調製した。
【0056】
次に下記式(A)で表されるセラミドA(一般式(2)のセラミド類似構造物質でR=炭素数16の直鎖飽和炭化水素基、R=炭素数15の直鎖飽和炭化水素基のもの)1.0gと、下記式(B)で表されるコレステリルヘミヘキサデセニルコハク酸エステル(一般式(3)のコレステロール誘導体でRが−CH−CHR−で、Rがヘキサデセニル基のもの(以下化合物Bという))4.0gとメタクリル酸ラウリル15gを、加熱溶解した後、室温に冷却後に過酸化ラウロイル0.23gを加えて溶解した。これに、先に調製したキトサン/メタクリル酸水溶液680gを加え、液温30〜40℃にて攪拌を行いながら超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)で15分処理し、平均粒径2.1μmの乳化物を得た。この乳化物を攪拌機、冷却器、窒素導入管を備えた1Lのガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、攪拌しながら昇温し、内温を75℃にした。攪拌下にて2時間重合を行った後、過硫酸アンモニウム0.2gを水20gに溶解したものを添加し、その後更に75℃にて2時間攪拌を行い、平均粒径3.9μmのセラミド内包ポリマーエマルジョンを得た。偏光顕微鏡観察にてセラミドが結晶化することなくポリマーに内包化されていることを確認した。
【0057】
【化4】
Figure 0003574059
【0058】
実施例2
市販のキトサン(大日精化工業(株)製ダイキトサンP(VL)、脱アセチル化度85〜88%)25gに898gの水を加え、これにメタクリル酸13g、アクリル酸14gを加え、室温で攪拌しながら溶解させ、キトサン/メタクリル酸/アクリル酸水溶液を調製した。次にセラミドA5gと化合物B20gとメタクリル酸ラウリル25gを加熱溶解した後、室温に冷却後に過酸化ラウロイル0.23gを加えて溶解した。これに、先に調製したキトサン/メタクリル酸/アクリル酸水溶液950gを加え、液温30〜40℃にて攪拌を行いながら超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)で15分処理し、平均粒径4.2μmの乳化物を得た。この乳化物を攪拌機、冷却器、窒素導入管を備えた1Lのガラス製反応器に移し、窒素置換を行った後、攪拌しながら昇温し、内温を75℃にした。攪拌下にて2時間重合を行った後、過硫酸ナトリウム0.2gを水20gに溶解したものを添加し、その後更に75℃にて2時間攪拌を行い、平均粒径4.7μmのセラミド内包ポリマーエマルジョンを得た。偏光顕微鏡観察にてセラミドが結晶化することなくポリマーに内包化されていることを確認した。
【0059】
実施例3
実施例1においてセラミドA及び化合物Bのかわりにジステアリルエーテルを用いたところ、平均粒径1.2μmのジステアリルエーテル内包ポリマーエマルジョンを得た。偏光顕微鏡観察にてジステアリルエーテルが結晶化することなくポリマーに内包化されていることを確認した。
【0060】
実施例4
実施例2においてセラミドA及び化合物Bのかわりにスクワランを用いたところ、平均粒径5.2μmのスクワラン内包ポリマーエマルジョンを得た。
尚、本例は参考例として示す。
【0061】
実施例5
500mlのビーカーに、セラミドA5gと化合物B20gと予め合成したメタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(重量比:95/5、重量平均分子量:8.5万)20gとトルエン300gを仕込み溶解した。次いで該溶液を1%ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセノールGH−17)水溶液1500g中に加えて、超音波分散機を用いて分散した(平均粒径5.2μm)。次いで、該分散液を2000mlのセパラブルフラスコに仕込み、200rpmで攪拌しながら、減圧下にて加熱することにより、トルエンを留去し、平均粒径5.5μmのセラミド内包ポリマーエマルジョンを得た。偏光顕微鏡観察にてセラミドが結晶化することなくポリマーに内包化されていることを確認した。
【0062】
比較例1
実施例1においてキトサン/メタクリル酸水溶液の代わりに5%ポリビニルアルコール水溶液を用い、セラミドA及び化合物Bの混合物の代わりにセラミドAのみを使用したところ、乳化の過程においてセラミドAの結晶の激しい凝集物が浮遊してきたため、目的とするセラミドのエマルジョンは得られなかった。
【0063】
比較例2
実施例3においてキトサン/メタクリル酸水溶液の代わりに5%ポリビニルアルコール水溶液を用いところ、平均粒径2.7μmのジステアリルエーテルのエマルジョンを得た。
【0064】
比較例3
スクワランを1%ドデシルスルホン酸ソーダ水溶液中に超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)で処理することで、平均粒径0.8μmのスクワランのエマルジョンを得た。
【0065】
試験例1
実施例1〜5及び比較例2〜3で得られた各エマルジョン水溶液に木綿繊維を浸積した後、保護剤が、処理前乾燥繊維重量に対して0.05重量%になるように木綿繊維をマングルで絞った後、90℃、1分間乾燥して、本発明の処理繊維及び比較の処理繊維を得た。
【0066】
10人の被験者により、この処理繊維を手に触った感触を、表1の評価スコアで判定してもらい、その平均値を算出した。コントロールとして、未処理木綿繊維を使用した。結果を表2に示す。
【0067】
【表1】
Figure 0003574059
【0068】
【表2】
Figure 0003574059
【0069】
試験例2
試験例1で得た各処理繊維100gに対して、更にシリコーン系繊維定着剤(北広ケミカル販売、TF3500)を50倍に水希釈したものを100g定着するように処理した後、90℃、1分間、乾燥して目的とする処理繊維を得た。被験者10人により、この処理繊維を手で触った感触を、表1の評価スコアで判定してもらい、その平均値を、算出した。さらに、この処理繊維を中性洗剤にて、10回繰り返し洗濯した処理繊維について、同様に判定してもらい、その平均値を算出した。コントロールとして、未処理木綿繊維を、同様に洗濯処理したものを用いた。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
Figure 0003574059
【0071】
【発明の効果】
本発明のポリマー粒子は、クリームや乳液等通常の乳化系では不安定な保護剤を内包することで、皮膚又は毛髪への安定的な剤の供給手段として用いることが出来る。
【0072】
また、このポリマー粒子で処理された繊維は、保護剤がポリマー粒子から繊維にしみ出て、繊維上に拡散することで、しっとり感、すべすべ感、ふっくら感、柔らかさ、手のケア感といった触感に優れたものとなり、その繊維を繰り返し洗濯しても、その触感は維持される。この繊維を着用することにより、保護剤が皮膚及び/又は毛髪上に拡散し、その防御、改善、治癒等の効果を得ることが出来る。

Claims (6)

  1. 下記条件(イ)を満足する、体積平均粒径0.001〜30μmのポリマー粒子。
    条件(イ):
    膜壁としてキトサンと反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩の重合体(a)を有し、芯物質として下記(I)及び (II) からなる群から選ばれる1種以上の疎水性皮膚及び/又は毛髪保護剤(以下、保護剤という)(b)を含有する。
    (I):セラミド及び/又はセラミド類似構造物質
    (II):総炭素数が24〜44のジアルキルエーテル
  2. 下記条件(ロ)を満足する、体積平均粒径0.001〜30μ m のポリマー粒子。
    条件(ロ):
    膜壁として、(メタ)アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、キチン及びキトサンから選ばれる少なくとも1種の有機系高分子重合体(c)を有し、芯物質として下記(I)及び (II) からなる群から選ばれる1種以上を含有する。
    (I):セラミド及び/又はセラミド類似構造物質
    (II) :総炭素数が24〜44のジアルキルエーテル
  3. 膜壁としてキトサンと反応性ビニル基を有する有機酸及び/又はその塩の重合体(a)を有し、芯物質として保護剤(b)と疎水性モノマーの重合体(d)を含有する請求項1記載のポリマー粒子。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載のポリマー粒子を含有する繊維処理剤。
  5. 請求項1〜3いずれかに記載のポリマー粒子が、連続的又は不連続的に繊維表面に存在してなる繊維。
  6. 請求項1〜3いずれかに記載のポリマー粒子と繊維を接触させるか、又は請求項記載の繊維処理剤と繊維を、接触させる繊維の処理方法。
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