JP4206069B2 - 制振壁及びこれを備えた架構の補強構造 - Google Patents
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Description
ここで、本発明に係る架構の補強構造とは、左右の柱と上下の梁とから形成された梁柱架構に、地震に対する安全性を付与するものであって、その適用は、既設構造物の梁柱架構、新規に構築される構造物の梁柱架構を問わない。また、梁柱架構と制振壁の一体化とは、少なくとも制振壁と上下の梁部材とが水平力の伝達が可能に固定されていればよく、例えば、いわゆる袖壁や方立壁のように制振壁とその左右の柱のいずれか一方または両方との間に間隔を有していてもよく、必ずしも制振壁の四辺全てが梁柱架構に接している必要はない。
また、当該制振壁を上下のスラブに一体的に固定し、該スラブの強度や剛性に応じて、建物に作用する力を負担することにより、間仕切りとしての機能しか有していなかった従来の間仕切り壁に、制振壁としての建物の応答を低減する機能を付加することが可能となり、よりすぐれた建物構造を構築することが可能となる。さらに、いわゆるキャンティスラブのように梁部材から張り出した上下のスラブに、外壁として当該制振壁を固定する構成とすれば、建物の外観に梁部材が露出されることがなく、ガラスブロックからなる外壁面の面積が広がるため、優れた制振性とともに採光性、開放感及び美観性に優れた建物の構築が可能となる。
ここで、図1は、第1の実施の形態に係る架構の補強構造を示す正面図であり、図2は当該架構の補強構造1の既設梁柱架構10と支持枠30との接合部を示した水平断面図、図3は架構補強壁20の詳細を示す拡大正面図である。また、図4は、第1の実施の形態に係る補強構造の変形例を示した水平断面図である。また、図5は第2の実施の形態に係る制振壁の減衰装置を示す図であり、(a)は断面図、(b)は斜視図である。また、図6は第3の実施の形態に係る制振壁の減衰装置を示す図であり、(a)は断面図、(b)は斜視図である。さらに、図7は、その他の実施の形態を示す図である。
第1の実施の形態(以下、単に「第1実施形態」という場合がある)では、既設構造物の地震等の振動に対する安全性を増加させることを目的として、当該既設構造物の梁柱架構10(以下、単に「既設梁柱架構」という)の内面に、当該既設梁柱架構10を補強するための制振壁である架構補強壁20を設置する場合について述べる。
支持枠30は、H形鋼を口字形状(正面視)となるように組み立てることにより形成されており、図2に示すように、当該H形鋼のフランジ面が前後方向に向くように、該フランジの端部が既設梁柱架構10の内面に当接するように配置されている。また、支持枠30は、四隅が補強される(図示せず)ことにより、剛性が高められている。この支持枠30は、充填材(例えば、グラウト材)31で既設梁柱架構10に固定されており、相互にせん断力を伝達できるようになっている。なお、支持枠は、ブロック取付枠を支持できる構造であればよく、H形断面以外にも矩形や溝形断面の部材等を用いることができる。この場合、図4に示すように、溝形鋼のウェブ面が梁柱架構内面に当接するように、支持枠を形成すればよい。
ここでは、架構補強壁(制振壁)20に通気のための開口50を2箇所設けたが、当該開口50の外周には、目地材に固着される枠材51が設置されている。なお、枠材51を構成する材料は限定されるものではなく、例えばアクリル、プラスチック、アルミ、鋼等、所定の強度と剛性を有する材料であればよい。また、開口50は、必要に応じて設置するものとし、通気等の必要がない場合には設けなくてもよい。
第1実施形態に係る架構の補強構造Kの構築方法について説明する。
第1実施形態に係る架構の補強構造Kの構築方法は、(1)ガラスブロック嵌装工程と、(2)支持枠設置工程と、(3)ブロック取付枠設置工程と、から成り立っている。
本工程は、予めブロック取付枠40の嵌装部41にガラスブロック45を嵌め込む作業を行う工程である。この際、必要に応じて、開口50を設ける。
本工程は、既設梁柱架構10に充填材31を用いて、支持枠30を取り付ける作業を行う工程である(図2参照)。
本工程は、支持枠30の内面に接着剤(図示せず)を用いて、嵌装部41にガラスブロック45が嵌め込まれたブロック取付枠40を取り付ける作業を行うことにより、架構補強壁20を完成する工程である。
さらに、第1実施形態によれば、ブロック取付枠40の嵌装部41の周囲の突縁部42が形成されており、当該突縁部42が目地材の役割を果たしている。そして、このブロック取付枠40の各嵌装部41にガラスブロック45が嵌め込まれていることから、目地材が変形してエネルギーを消費するとともに、隣接するガラスブロック45同士の干渉による破壊を防止することができる。
第2の実施の形態(以下、単に「第2実施形態」という場合がある)では、既設構造物の地震等の振動に対する安全性を向上させることを目的として、図1に示すように、当該既設構造物の梁柱架構10(以下、単に「既設梁柱架構」という)の内面に、当該既設梁柱架構10を補強するための制振壁である架構補強壁20を設置する場合について述べる。
なお、減衰装置60は、上部部材61と下部部材62とを有しており、上部部材61と下部部材62との接合部には、減衰材料である粘弾性材63が介在されている。ここで、粘弾性材63は、ポリマー、アクリル、シリコン、ウレタン、ジエン等の高分子化合物を用い、水平力に対して変形してその変位を吸収するものを使用するものとする。また、第2実施形態における目地71としては、ガラスブロック同士の連結に適し、気密性に優れたガラスブロック積層体70の構築が可能であれば、あらゆる目地材が使用可能であり、例えば、セメント系目地材、樹脂系目地材等が適用可能である。
また、たて板61bの下部内側面のガラスブロック積層体70及び下部部材62の下端との設置面には、低摩擦材66が介在されている。また、ガラスブロック積層体70とその左右のたて枠(支持枠30)との設置面にも同様に低摩擦材66が介在されている(図示せず)。このため、減衰装置60の摩擦面64にすべりが発生し、地震時や強風時の過大な入力の防止が可能となっている。なお、ガラスブロック積層体70の下端と下側の横枠(支持枠30)とは、一体的に固定されている。
第3の実施の形態(以下、単に「第3実施形態」という場合がある)では、地震等の振動に対する安全性を向上させることを目的として、図6に示すように、上下のスラブ(図6では上側のスラブのみ)の間に当該構造物を補強するための制振壁である架構補強壁20を設置する場合について述べる。
また、第3実施形態に係る架構補強壁20は、設置階の上下のスラブに一体的に固定し、該スラブの強度や剛性に応じて建物に作用する力を負担するため、制震壁としての建物の応答を低減する機能を付加した間仕切り壁や、優れた制振性とともに採光性、開放感及び美観性に優れた外壁等の構築を可能とする。
減衰装置60の構成は、第2実施形態や第3実施形態で示した構成に限定されるものではなく、粘弾性材63が、水平力の減衰に必要な面積を確保することができ、必要な摩擦面64を確保することが可能であれば、さまざまな構成により構築することが可能である。図7(a)〜(d)にその他の実施の形態の例を示す。
図7(a)に示した減衰装置60のその他の細部の構成や、作用効果は、第2実施形態または第3実施形態に示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
図7(b)に示した減衰装置60のその他の細部の構成や、作用効果は、第2実施形態または第3実施形態に示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
図7(c)に示した減衰装置60のその他の細部の構成や、作用効果は、第2実施形態または第3実施形態に示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
図7(d)に示した減衰装置60のその他の細部の構成や、作用効果は、第2実施形態または第3実施形態に示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
例えば、前記実施の形態は、既設の建造物の補強として、本発明の架構の補強構造を用いるものとしたが、同様に、新築の建造物の梁柱架構の内側空間に、ガラスブロックを速度依存性のある減衰材料からなる目地材を介して積層した制振壁を構築してもよい。
また、鉄骨造のように目地材を躯体に直接止められる場合には、支持枠を介することなくガラスブロックと速度依存性のある減衰材料(例えば粘弾性材)からなる目地材により制振壁を構築するものとしてもよい。
また、前記実施の形態では、H形鋼のフランジ面が梁柱架構の前後方向に向くように配置するものとしたが、これに限定されるものではなく、一方のフランジ面が、梁柱架構の内面に当接する構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、支持枠としてH形鋼を使用するものとしたが、支持枠を構成する部材の材質は鋼材に限定されるものではなく、例えば、アルミ材、プラスチック材、樹脂、木材、目地材よりも剛性の高い硬質ゴムからなる部材等を使用してもよい。
また、ガラスブロックは、ブロック取付枠に嵌装されているが、当該ブロック取付枠を用いることなく、所定の弾性を有するゴムやウレタン樹脂等を目地材として用いて、当該ガラスブロックを支持枠の内側空間部に積層してもよい。
また、目地材として、採光性を有する材料を使用するものとしたが、これに限定されるものではなく、当該構造物のデザイン性を考慮して、通常の採光性を有していない目地材を使用してもよいことはいうまでもない。
また、減衰装置の各部材は、想定される外力に対して十分な耐力を有するものであれば、鋼材に限定されるものではないことは、いうまでもない。
11,12 柱部材
13,14 梁部材
13’ スラブ
20 架構補強壁(制振壁)
30 支持枠
40 ブロック取付枠
42 突縁部
45 ガラスブロック
60 減衰装置
61 上部部材
62 下部部材
63 粘弾性材(減衰材料)
64 摩擦面
65 ルーズホール
70 ガラスブロック積層体
K 架構の補強構造
Claims (7)
- 両側に立設した柱部材と当該両側の柱部材に横設されている上下の梁部材とから形成されている梁柱架構と、前記梁柱架構の内面に設置される制振壁と、が一体化されている架構の補強構造において、
前記制振壁は、前記梁柱架構の内側空間に速度依存性のある減衰材料からなる目地材を介して積層された複数のガラスブロックを備えており、
隣接する前記ガラスブロック同士の間に介在する前記目地材が、最低限の目地厚を保持しながら圧縮力を伝達する弾性材と、粘性材又は粘弾性材とを組み合わせて形成されていることを特徴とする架構の補強構造。 - 前記制振壁は、前記梁柱架構に固定されている支持枠を介して前記梁柱架構の内面に設置されており、
前記支持枠は、H形又は溝形断面の部材からなり、前記柱部材に沿って固定される垂直枠部材と前記梁部材に沿って固定される水平枠部材とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の架構の補強構造。 - 前記支持枠には、複数に区画されており、かつ、境界部が目地材を形成する、前記ガラスブロックを嵌装するための嵌装部を有するブロック取付枠が取り付けられており、
前記各ガラスブロックは、前記嵌装部に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の架構の補強構造。 - 速度依存性のある減衰材料からなる目地材と、
前記目地材を介して積層された複数のガラスブロックと、を備えた制振壁であって、
設置階の上下のスラブに一体的に固定されていることを特徴とする制振壁。 - 前記制振壁は、開口を有しており、当該開口の外周には、前記目地材と固着される枠材を備え、
当該枠材は、前記目地材の最大抵抗力以上の強度を有していることを特徴とする請求項4に記載の制振壁。 - 複数のガラスブロックが積層されてなるガラスブロック積層体と、
前記ガラスブロック積層体に水平に取り付けられた減衰装置と、を備えた制振壁であって、
前記減衰装置は、上部部材と下部部材とを有し、前記上部部材と前記下部部材との接合面には速度依存性のある減衰材料が介在されているとともに、
前記上部部材または前記下部部材に鋼材を重ね合わせた摩擦面が形成されており、前記摩擦面にすべりが発生することで地震時や強風時の過大な入力を防止することを特徴とする制振壁。 - 前記減衰装置が、水平力の入力制限機能を有していることを特徴とする、請求項6に記載の制振壁。
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