JP5003936B2 - 補強構造 - Google Patents
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そこで、これらの問題に対応する工法として、アンカー筋を施工せずに既存建物の柱梁架構の構面内にコンクリートやFRP製のブロックを積んで耐震壁を構築する工法が行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
このようなブロック耐震壁では、互いに隣接するブロック同士の接合と、ブロック耐震壁とその外周に位置する建物躯体との接合とは接着剤などで固着されている。
また、上記隙間寸法が大きくなることは充填材による連結領域が増大することになり、この部分での強度や剛性を確保することが困難になるといった問題があった。
本発明では、建物の躯体とブロック耐震壁との間の隙間において、凸状介装部材を凹溝部に挿入させ、その状態で凹溝部に硬化材を充填硬化させ、さらにブロック耐震壁と躯体とが接する部分を例えば接着剤などで固定することで、躯体とブロック耐震壁とを一体化させることができる。複数のブロックからなるブロック耐震壁は耐震壁として作用することから、高いせん断剛性と耐力を発揮できる補強構造を構築することができる。また、凹溝部の深さ寸法と、凸状部の突出長さ寸法を任意に設定することで、建物の躯体とブロック耐震壁との間の隙間寸法に対応して調整設置できることから、隙間寸法の大きさにかかわらず躯体とブロック耐震壁を確実に接合できる構造となっている。
本発明では、凸状部と溝底部との間に隙間部を設けることで、その隙間部の寸法範囲内で、凸状介装部材の凸状部と凹溝部との相対位置を変えることができ、建物の躯体とブロック耐震壁との間の隙間の誤差に対応することができる。そのため、凸状介装部材とブロック耐震壁との接合時の取り合いにおいて、精度の高い位置決めが不要となるため、施工手間を少なくすることができる。
本発明では、例えば無収縮モルタルなどの無機系の硬化材や、エポキシ樹脂など有機系の硬化材を凹溝部に充填し硬化させることで、凹溝部に挿入させた凸状介装部材とブロック耐震壁とを一体化させることができる。
本発明では、凹溝部に充填硬化してなる粘弾性体は、凹溝部に挿入された凸状介装部材とブロック耐震壁とを接合させることができる。このとき凸状介装部材は弾性を有する粘弾性体内に埋設された状態となることから、粘弾性体に減衰機能が働き、この接合箇所において制震機能を働かせることができる。
また、本補強構造では、凹溝部の深さと凸状介装部材の突出長さを変えることで、ブロック耐震壁と躯体との間の隙間寸法に対応して調整設置できることから、隙間寸法の大きさにかかわらず躯体とブロック耐震壁とを確実に一体化させることができ、強度や剛性を確保することができる。
図1は本発明の第一の実施の形態による補強構造を示す図であって、(a)はその立面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図、図2は凸状介装部材とブロック耐震壁との接合部を示す拡大図、図3は図2のB−B線断面図である。
柱梁架構10は、横設されている上下の鉄筋コンクリート造などの梁11A、11Bと、左右に立設した鉄筋コンクリート造などの柱12A、12Bとから形成されており、内側に正面視長方形状の空間部(構面2)が設けられている。そして、本ブロック耐震壁20は、柱梁架構10の構面2内に配置されている。
そして、ブロック耐震壁20は、その左右両端面20b、20cと下端面20d(第一の実施の形態では、本発明の「所定の端面」に相当する)が構面2において柱梁架構10の右側柱12A、左側柱12B、及び下梁11Bに接着剤25によって固定されている。このとき、ブロック耐震壁20と柱梁架構10の上梁11Aとの間には、上側隙間S1が形成された状態となっている。なお、接着剤25は、有機系あるいは無機系の接着剤を使用できる。
図3に示すように、凹溝部22の溝深さ寸法は、後述する凸状介装部材23のウエブ23Bが差し込まれた状態で、ウエブ23Bの下端23bが溝底部22aに当接しないように配置される寸法とされる。すなわち、ウエブ23Bと凹溝部22の溝底部22aとの間には、所定の隙間部(これを「調整隙間D」(図3参照)とする)が設けられた状態となっている。
また、凸状介装部材23は、上側隙間S1の寸法に応じてウエブ23Bの突出長さを設定することで、上側隙間S1の寸法に対応して調整設置できることから、上側隙間S1の大きさにかかわらず柱梁架構10とブロック耐震壁20とを接合できる構造となっている。
そして、補強構造1では、凹溝部22の深さ寸法と、ウエブ23Bの突出長さ寸法、さらに調整隙間Dの大きさを任意に設定することで、上側隙間S1に対応して調整設置できる構造となっている。すなわち、柱梁架構10とブロック耐震壁20との間の上側隙間S1の誤差に対応することができる。そのため、凸状介装部材23とブロック耐震壁20との接合時の取り合いにおいて、精度の高い位置決めが不要となるため、施工手間を少なくすることができる。
また、本補強構造1では、ブロック耐震壁20を、アンカー筋を用いずに接着剤25によって柱梁架構10と一体化できる構造であるため、従来のようにアンカー筋の施工時に生じる騒音、振動、粉塵の発生のない施工を実現することができる構成となっている。
図1(a)及び(b)に示すように、先ず、構面2内において柱梁架構10のコンクリート面の表面処理を例えばサンダー掛け程度で行う。その後、上梁11Aの下面11aに凸状介装部材23の平板23Aを接着剤25(図2参照)によって固定させる。次いで、構面2内で複数のブロック21、21、…を下方より順に積み上げ、最上段に凹溝部22を上方に向けた状態で接合用ブロック21Aを配置する。
図2及び図3に示すように、最上段の接合用ブロック21Aの設置方法は、例えば引き戸を敷居に建て込むのと同じ要領で、接合用ブロック21Aの凹溝部22をウエブ23Bに差し込みながら接合用ブロック21Aを持ち上げ、その直下のブロック21の上に接着剤25を介して積み重ねる。
また、本補強構造1では、凹溝部22の深さと凸状介装部材23のウエブ23Bの突出長さを変えることで、ブロック耐震壁20と柱梁架構10との間の隙間寸法に対応して調整設置できることから、この隙間寸法の大きさにかかわらず柱梁架構10とブロック耐震壁20とを確実に一体化させることができ、強度や剛性を確保することができる。
図4は第二の実施の形態による補強構造を示す図であって、(a)はその立面図、(b)は(a)に示すC−C線断面図である。
図4(a)及び(b)に示すように、第二の実施の形態による補強構造1では、第一の実施の形態の凸状介装部材23に加えて、第二の凸状介装部材26を設けたものである。第二の実施の形態では、ブロック耐震壁20は、構面2において左右の一方側(ここでは右側)の右側柱12Aと下梁11Bとに接着剤25によって固定されている。そして、ブロック耐震壁20の左側端面20cには凹溝部27が形成され、ブロック耐震壁20と左側柱12Bとの間には側部隙間S2が形成されている。
そして、側部隙間S2において、ブロック耐震壁20の左端面20cと左側柱12Bとが、第一の実施の形態の凸部介装部材23と同形状、すなわち断面視T型をなす第二の凸状介装部材26によって接続されている。すなわち、第二の実施の形態では、ブロック耐震壁20の右端面20bと下端面20dが本発明の「所定の端面」に相当し、上端面20aと左端面20cが本発明の「ブロック耐震壁20の他の端面」に相当している。
第二の凸状介装部材26は、平板26Aが左側柱12Bに接着剤によって固定され、ウエブ26Bが凹溝部27に差し込まれた状態で挿入され、ウエブ26Bと凹溝部27との間に硬化材24(図4(b)参照))が充填された構造となっている。
第二の実施の形態では、両隙間S1、S2とブロック耐震壁20とを接合する施工を簡略化できることから、第一の実施の形態と同様に設置時の作業手間を少なくすることができる。
図5に示すように、本変形例では、凹溝部22に加えて、凸状介装部材23の平板23Aとブロック耐震壁20の端部との間の隙間Sにも硬化材24を充填する構成となっている。その硬化材24として、無機系、または有機系の硬化材が使用され、無機系の硬化材には無収縮モルタルなどが考えられ、有機系の硬化材にはエポキシ樹脂などの材料が考えられる。本変形例による補強構造1では、上記隙間Sにも硬化材24が充填されることから、柱梁架構10(凸状介装部材23)とブロック耐震壁20とが一体に接合され、その接合部分が補強された状態となり、補強構造1の耐力を高めることができる。
例えば、本第一及び第二の実施の形態では硬化材24として接着剤を使用し、変形例では無機系或いは有機系の硬化材を使用しているが、このほかに、例えばシリコン系粘弾性体、合成ゴム系ブロック共重合体、アクリル系粘弾性体などの弾性を有する材料を凹溝部22に充填し硬化してなる粘弾性体であってもよい。この場合、凸状介装部材23、26は弾性を有する粘弾性体内に埋設された状態となり、粘弾性体が減衰機能を作用させ、この接合箇所において制震機能を働かせることができる。
そして、第一の実施の形態では上側隙間S1に、第二の実施の形態では上側隙間S1及び側部隙間S2にそれぞれ凸状介装部材23、26を設けて柱梁架構10とブロック耐震壁20とを接合する構造としているが、このような配置に限定されることはない。要は、柱梁架構10とブロック耐震壁20との間に形成される全ての隙間に対応することができ、柱梁架構10とブロック耐震壁20とが接する部分は接着剤25によって固定されていればよいのである。
また、本補強構造1を用いる既存建物の構造形式としては、例えば鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、木造、れんが造、石造など耐震壁の増設或いは打ち増しにより耐震補強できるものであればとくに限定されることはない。
また、各ブロック21の形状は、直方体形状であることに限定されることはなく、具体的な形状、寸法、数量に関する制限はなく、例えば横長或いは縦長形状のものであってもかまわない。
そして、ブロック21、21同士、ブロック21と柱梁架構10、凸状介装部材23、26と柱梁架構10とを固定する接着剤25は、有機系接着剤あるいは無機系接着剤など、接着剤であればとくに限定されるものではない。
2 構面
10 柱梁架構
11A、11B 梁
12A、12B 柱
20 ブロック耐震壁
21 ブロック
22、27 凹溝部
23 凸状介装部材
23B、26B ウエブ(凸状部)
24 硬化材
25 接着剤
26 第二の凸状介装部材
S 隙間
S1 上側隙間
S2 側部隙間
D 調整隙間(隙間部)
Claims (4)
- 建物の躯体に耐震壁を構築する補強構造であって、
複数のブロックを積み上げて形成され、所定の端面が前記躯体に固定されてなるブロック耐震壁と、
前記躯体に固定されていない前記ブロック耐震壁の他の端面のうち少なくとも一端面の全長にわたって形成された凹溝部と、
一端が前記躯体に固定され、他端が前記凹溝部に挿入されてなる凸状介装部材と、
前記凹溝部に充填された硬化材と、
を備えていることを特徴とする補強構造。 - 前記凸状介装部材は、前記凹溝部に挿入される凸状部を有し、
前記凸状部が前記凹溝部に挿入した状態で、前記凸状部と前記凹溝部の溝底部との間に隙間部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の補強構造。 - 前記硬化材は、無機系、又は有機系の硬化材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の補強構造。
- 前記硬化材は、弾性を有する粘弾性体であることにより制震機能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の補強構造。
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