JP4205890B2 - インクジェット記録用インク、並びに該インクを備えたインクカートリッジ及び記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録に好適なインクジェット記録用インク、インクカートリッジ及び記録装置に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インクジェット記録に用いられるインクとして、色材(染料又は顔料)と、保湿剤と、水とを含有したものがよく知られている。ところが、色材を含有したインクにより記録紙等の記録媒体上に画像を形成すると、その画像の耐水性、すなわち画像が水に濡れると色材が水中に染み出してしまうことが問題となる。特に普通紙(広範な市販の紙で、とりわけ電子写真方式の複写機に用いられる紙であって、インクジェット記録用として最適な構造、組成、特性等を有するように意図して製造されてはいない紙)に記録した場合は、耐水性が非常に悪くなる。
【0003】
そこで、従来、例えば特開平10−212439号公報、特開平11−293167号公報及び特開平11−315231号公報に示されているように、インクに、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物(有機ケイ素化合物)を含有させることにより、記録媒体上の画像の耐水性を向上させるようにすることが提案されている。このようにインクにシラン化合物を含有させることによって、インク滴が記録媒体上に付着して水分(溶媒)が蒸発したり記録媒体内に浸透したりしたときには、上記記録媒体上に残ったシラン化合物が縮重合反応し、この縮重合反応したシラン化合物が色材を取り囲むことになる。その結果、記録媒体上の画像が水に濡れても、色材がその水中に染み出すことを防止するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記公報に記載のインクでは画像の耐水性が十分ではなく、記録媒体上の画像が水に濡れたときに色材がその水中に染み出すことがあった。特に、色材がマジェンタ染料であるときには、インクの耐水性が大幅に低下してしまうことが確認された。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクにおいて、耐水性のさらなる向上を図ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明は、色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクに係り、上記水溶性物質を、アミノ基を有する化合物、及び4級アンモニウム基を有する化合物を成分とする混合物とする。
【0007】
こうすることで、このインクにより形成した画像の耐水性が大幅に向上する。
【0008】
つまり、従来のインクでは、水溶性物質がアミノ基を有する化合物であるのに対し、第1の発明に係るインクでは、水溶性物質をアミノ基を有する化合物及び4級アンモニウム基を有する化合物を成分とする混合物とする。ここで、アミノ基と色材との相互作用は比較的弱いため、従来のインクでは、水溶性物質の縮重合反応が行われたときに、一部の色材(染料又は顔料)が上記水溶性物質の縮重合物に取り囲まれない場合があったものと考えられる。これに対し、4級アンモニウム基はイオン化されていることで、色材との相互作用がアミノ基よりも強い。このため、第1の発明に係るインクでは、4級アンモニウム基を有する化合物がインク中において色材の近傍に位置することで、水溶性物質の縮重合反応が行われたときには、アミノ基を有する化合物の縮重合物には取り囲まれなかった色材が、4級アンモニウム基を有する化合物の縮重合物に取り囲まれるようになると考えられる。その結果、全ての色材が上記水溶性物質の縮重合物に取り囲まれることとなり、十分な耐水性が得られるものと考えられる。
【0009】
ここで、上述したメカニズムであれば、水溶性物質を、4級アンモニウム基を有する化合物とすれば、耐水性の更なる向上が期待できる。しかしながら、4級アンモニウム基と色材との相互作用が強いことから、水溶性物質を4級アンモニウム基を有する化合物単独としてしまうと、インク中に、色材と4級アンモニウム基を有する化合物との凝集物が発生してしまう。このため、水溶性物質は、アミノ基を有する化合物及び4級アンモニウム基を有する化合物を成分とする混合物とするのが好ましい。
【0010】
また、水溶性物質を、アミノ基を有する化合物及び4級アンモニウム基を有する化合物を成分とする混合物としても、色材と4級アンモニウム基を有する化合物との凝集物が発生してしまう虞はある。
【0011】
そこで、インクの安定性の観点からは、第2の発明の如く、水溶性物質を、アミノ基及び4級アンモニウム基が導入された化合物とするのがよい。
【0012】
具体的に、第2の発明に係るインクジェット記録用インクは、水溶性物質を、アミノ基及び4級アンモニウム基が導入された化合物とする。
【0013】
こうすることで、水溶性物質がアミノ基及び4級アンモニウム基が導入された化合物であることから、インク中において、その水溶性物質と色材との相互作用は、4級アンモニウム基を有する化合物単独に比べて弱くなり、凝集物が発生してしまうことが防止される。
【0014】
一方、水溶性物質が4級アンモニウム基を含有することで、この水溶性物質がインク中において色材の近傍に位置することになる。その結果、水溶性物質の縮重合反応が行われたときには、全ての色材が上記水溶性物質の縮重合物に取り囲まれることとなり、十分な耐水性が得られるものと考えられる。
【0015】
従って、第2の発明に係るインクジェット記録用インクでは、十分な耐水性と、インクの安定性とが両立する。
【0016】
第3の発明に係るインクジェット記録用インクは、水溶性物質を、アミノ基を有する化合物、4級アンモニウム基を有する化合物、並びにアミノ基及び4級アンモニウム基が導入された化合物を成分とする混合物とする。
【0017】
こうすることでも、上述したように、十分な耐水性とインクの安定性とが両立する。
【0018】
ここで、水溶性物質をアミノ基を有する化合物及び4級アンモニウム基を有する化合物を成分とする混合物とした場合、水溶性物質をアミノ基及び4級アンモニウム基が導入された化合物とした場合、並びに、水溶性物質をアミノ基を有する化合物、4級アンモニウム基を有する化合物、及びアミノ基及び4級アンモニウム基が導入された化合物を成分とする混合物とした場合のいずれにおいても、インク中における4級アンモニウム基の含有割合が多すぎるときには、上述したように、凝集物が発生する虞がある。そこで、上記4級アンモニウム基の含有量は、水溶性物質をアミノ基を有する化合物とした従来のインクにおいて、縮重合物に取り囲まれない色材の量に相当する量とするのが好ましい。こうすることで、十分な耐水性が得られる一方、凝集物の発生が防止される。具体的に、インク中におけるアミノ基と4級アンモニウム基との割合は、モル比で1:1〜1:0.01程度とするのが好ましい。アミノ基に対する4級アンモニウム基のモル比が、1よりも大きいときには凝集物が発生してしまう虞があるためである。また、アミノ基に対する4級アンモニウム基のモル比が、0.01よりも小さいときには、耐水性の向上効果が得られない虞があるためである。尚、アミノ基に対する4級アンモニウム基のモル比は、0.1〜0.2程度とするのがより好ましい。
【0019】
ここで、第1の発明においては、水溶性物質を、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物、及び4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物を成分とする混合物とするのがよい。
【0020】
また、第2の発明においては、水溶性物質を、アミノ基及び4級アンモニウム基が導入された加水分解性シラン化合物とするのがよい。
【0021】
さらに、第3の発明においては、水溶性物質を、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物、4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物、並びにアミノ基及び4級アンモニウム基が導入された加水分解性シラン化合物を成分とする混合物とするのがよい。
【0022】
すなわち、シラン化合物は耐水性を向上させる点で非常に好ましく、第1〜第3の発明の作用効果を有効に発揮させることができる。
【0023】
また、上記インクには、浸透剤をさらに含有させることが好ましい。
【0024】
こうすることで、保湿剤と浸透剤と水とからなるインクの溶媒は、インクが記録媒体(例えば紙)上に付着した後、速やかに該記録媒体内に浸透するようになる。これにより、水溶性物質の縮重合反応が速やかに行われて色材を確実に取り囲む。その結果、画像の耐水性がより一層向上する。
【0025】
第4の発明は、色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクに係り、上記水溶性物質を、アミノ基及び4級アンモニウム基を含有する物質とするものである。
【0026】
この第4の発明においても、上記第1〜第3の発明と同様に、水溶性物質に4級アンモニウム基が含有されることで、水溶性物質の縮重合反応が行われたときには全ての色材がその縮重合物に取り囲まれ、これにより、十分な耐水性が得られるようになると考えられる。
【0027】
また、第5の発明は、色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクに係り、上記水溶性物質を、アミノ基、及び該アミノ基よりも上記色材との相互作用の強い基を含有する物質とするものである。
【0028】
このように、水溶性物質に、アミノ基よりも色材との相互作用の強い基(官能基)を含有させることにより、この水溶性物質は、上述したように、インク中において色材の近傍に位置するようになる。これにより、水溶性物質の縮重合反応が行われたときには、全ての色材がその縮重合物に確実に取り囲まれるようになると考えられる。その結果、上記第1〜第3の発明と同様に、十分な耐水性が得られるものと考えられる。
【0029】
第6の発明は、色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを備えたインクカートリッジに係り、上記水溶性物質を、アミノ基及び4級アンモニウム基を含有する物質とする。これにより、上記第1〜第3の発明と同様の作用効果が得られる。
【0030】
第6の発明においても、インクには浸透剤をさらに含有させることによって、保湿剤と浸透剤と水とからなるインクの溶媒を速やかに記録媒体内に浸透させて、耐水性をさらに向上させることが好ましい。
【0031】
また、第7の発明は、色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを備え、該インクを記録媒体に吐出して記録を行う記録装置に係り、上記水溶性物質を、アミノ基及び4級アンモニウム基を含有する物質とする。これにより、上記第1〜第3の発明と同様の作用効果が得られる。
【0032】
この第7の発明においても、インクには浸透剤をさらに含有させることによって、保湿剤と浸透剤と水とからなるインクの溶媒を速やかに記録媒体内に浸透させて、耐水性をさらに向上させることが好ましい。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明におけるインクジェット記録用インク、並びに該インクを備えたインクカートリッジ及び記録装置によれば、インク成分である水溶性物質に、アミノ基よりも色材との相互作用の強い官能基、例えば4級アンモニウム基を含有させることで、耐水性を飛躍的に向上させることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクを備えたインクジェット式記録装置Aの概略を示し、この記録装置Aは、上面に上記インクを有するインクカートリッジ35が装着されかつ該インクを後述の如く記録媒体としての記録紙41に吐出するインクジェットヘッド1を備えている。このインクジェットヘッド1はキャリッジ31に支持固定され、このキャリッジ31には、図示を省略するキャリッジモータが設けられ、このキャリッジモータにより上記インクジェットヘッド1及びキャリッジ31が主走査方向(図1及び図2に示すX方向)に延びるキャリッジ軸32にガイドされてその方向に往復動するようになっている。
【0035】
上記記録紙41は、図示を省略する搬送モータによって回転駆動される2つの搬送ローラ42に挟まれていて、この搬送モータ及び各搬送ローラ42により、上記インクジェットヘッド1の下側において上記主走査方向と垂直な副走査方向(図1及び図2に示すY方向)に搬送されるようになっている。
【0036】
このように、上記キャリッジ31、キャリッジ軸32及びキャリッジモータ、並びに各搬送ローラ42及び搬送モータにより、インクジェットヘッド1と記録紙41とを相対移動させるようにしている。
【0037】
上記インクジェットヘッド1は、図2〜図4に示すように、インクを供給するための供給口3a及びインクを吐出するための吐出口3bを有する複数の圧力室用凹部3が形成されたヘッド本体2を備えている。このヘッド本体2の各凹部3は、該ヘッド本体2の上面に上記主走査方向に延びるように開口されていて、互いに上記副走査方向に略等間隔をあけた状態で並設されている。上記各凹部3の開口の全長は約1250μmに、幅は約130μmにそれぞれ設定されている。尚、上記各凹部3の開口の両端部は、略半円形状をなしている。
【0038】
上記ヘッド本体2の各凹部3の側壁部は、約200μm厚の感光性ガラス製の圧力室部品6で構成され、各凹部3の底壁部は、この圧力室部品6の下面に接着固定されかつ6枚のステンレス鋼薄板を積層してなるインク流路部品7で構成されている。このインク流路部品7内には、上記各凹部3の供給口3aとそれぞれ接続された複数のオリフィス8と、この各オリフィス8と接続されかつ上記副走査方向に延びる1つの供給用インク流路11と、上記吐出口3bとそれぞれ接続された複数の吐出用インク流路12とが形成されている。
【0039】
上記各オリフィス8は、インク流路部品7において板厚が他よりも小さい上から2番目のステンレス鋼薄板に形成されており、その径は約38μmに設定されている。また、上記供給用インク流路11は上記インクカートリッジ35と接続されており、このインクカートリッジ35より供給用インク流路11内にインクが供給されるようになっている。
【0040】
上記インク流路部品7の下面には、インク滴を上記記録紙41に向けて吐出するための複数のノズル14が形成されたステンレス鋼からなるノズル板9が接着固定されている。このノズル板9の下面は、撥水膜9aで被覆されている。上記各ノズル14は、上記吐出用インク流路12とそれぞれ接続されていて、この吐出用インク流路12を介して上記各凹部3の吐出口3bにそれぞれ連通されており、インクジェットヘッド1の下面において、上記副走査方向に列状に並ぶように設けられている。尚、上記各ノズル14は、ノズル径がノズル先端側に向かって小さくなるテーパ部と、該テーパ部のノズル先端側に連続して設けられたストレート部とからなり、このストレート部のノズル径は約20μmに設定されている。
【0041】
上記ヘッド本体2の各凹部3の上側には、圧電アクチュエータ21がそれぞれ設けられている。この各圧電アクチュエータ21は、上記ヘッド本体2の上面に接着固定された状態で該ヘッド本体2の各凹部3を塞いで該凹部3と共に圧力室4を構成するCr製振動板22を有している。この振動板22は、全ての圧電アクチュエータ21に共通の1つのものからなっていて、後述の全圧電素子23に共通の共通電極としての役割をも果たしている。
【0042】
また、上記各圧電アクチュエータ21は、上記振動板22の上記圧力室4と反対側面(上面)において圧力室4に対応する部分(凹部3開口に対向する部分)にCu製の中間層25を介してそれぞれ設けられかつチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電素子23と、この各圧電素子23の上記振動板22と反対側面(上面)にそれぞれ接合され、該振動板22と共に各圧電素子23に電圧(駆動電圧)をそれぞれ印加するためのPt製個別電極24とを有している。
【0043】
上記振動板22,各圧電素子23、各個別電極24及び各中間層25は、全て薄膜で形成されてなっており、振動板22の厚みは約6μmに、各圧電素子23の厚みは8μm以下(例えば約3μm)に、各個別電極24の厚みは約0.2μmに、各中間層25の厚みは約3μmにそれぞれ設定されている。
【0044】
上記各圧電アクチュエータ21は、その振動板22と各個別電極24とを介して各圧電素子23に駆動電圧を印加することにより該振動板22の圧力室4に対応する部分(凹部3開口部分)を変形させることで、該圧力室4内のインクを吐出口3bないしノズル14から吐出させるようになっている。すなわち、振動板22と個別電極24との間にパルス状の電圧を印加すると、そのパルス電圧の立ち上がりにより圧電素子23が圧電効果によりその厚み方向と垂直な幅方向に収縮するのに対し、振動板22、個別電極24及び中間層25は収縮しないので、いわゆるバイメタル効果により振動板22の圧力室4に対応する部分が圧力室4側へ凸状に撓んで変形する。この撓み変形により圧力室4内の圧力が高まり、この圧力で圧力室4内のインクが吐出口3b及び吐出用インク流路12を経由してノズル14から押し出される。そして、上記パルス電圧の立ち下がりにより圧電素子23が伸長して振動板22の圧力室4に対応する部分が元の状態に復帰し、このとき、上記ノズル14から押し出されていたインクがインク流路12内のインクから引きちぎられて、インク滴(例えば3pl)として記録紙41へ吐出され、該記録紙41面にドット状に付着することとなる。また、上記振動板22が凸状に撓んで変形した状態から元の状態に復帰する際に、圧力室4内には上記インクカートリッジ35より供給用インク流路11及び供給口3aを介してインクが充填される。尚、各圧電素子23に印加するパルス電圧としては、上記のように押し引きタイプのものでなくても、第1の電圧から該第1の電圧よりも低い第2の電圧まで立ち下がった後に上記第1の電圧まで立ち上がる引き押しタイプのものであってもよい。
【0045】
上記各圧電素子23への駆動電圧の印加は、インクジェットヘッド1及びキャリッジ31を主走査方向において記録紙41の一端から他端まで略一定速度で移動させているときに所定時間(例えば50μs程度:駆動周波数20kHz)毎に行われ(但し、インクジェットヘッド1が記録紙41におけるインク滴を着弾させない箇所に達したときには電圧が印加されない)、このことで、記録紙41の所定位置にインク滴を着弾させる。そして、1走査分の記録が終了すると、搬送モータ及び各搬送ローラ42により記録紙41を副走査方向に所定量搬送し、再度、インクジェットヘッド1及びキャリッジ31を主走査方向に移動させながらインク滴を吐出させて、新たな1走査分の記録を行う。この動作を繰り返すことによって、記録紙41全体に所望の画像が形成される。
【0046】
上記記録装置Aに用いるインクは、色材と、上記インクジェットヘッド1のノズル14等での乾きを抑制する保湿剤と、該インク(溶媒)の記録紙41内への浸透性を高める浸透剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有している。
【0047】
上記色材としての染料は、どのようなものであってもよいが、水溶性の酸性染料又は直接染料であることが好ましい。
【0048】
一方、色材としての顔料は、次のものが好ましい。つまり、黒顔料としては、カーボンブラック表面をジアゾニウム塩で処理したものや、ポリマーをグラフト重合して表面処理したものが好適である。
【0049】
また、カラー顔料としては、顔料を、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、リグニスルホン酸、ジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、又は脂肪酸エステル等の界面活性剤で処理したものが好ましい。具体的には、シアン顔料では、例えばピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、又はアルミニウムフタロシアニン等が挙げられる。また、マジェンタ顔料では、例えばピグメントレッド122、又はピグメントバイオレット19等が挙げられる。さらに、イエロー顔料としては、例えばピグメントイエロー74、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、又はピグメントイエロー128等が挙げられる。
【0050】
上記保湿剤は、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール、又は2−ピロリドンやN−メチル−2−ピロリドンのような水溶性の窒素複素環化合物であることが望ましい。
【0051】
上記浸透剤は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ブトキシエタノール等のような、多価アルコールのモノアルキルエーテルであることが好ましい。
【0052】
上記水溶性物質は、上記インクジェットヘッド1のノズル14から吐出されたインク滴が記録紙41上に付着して、水分(溶媒)が蒸発したり記録紙41内に浸透したりしたときに上記記録紙41上で縮重合反応をし、このときに色材を取り囲むことにより、記録紙41上の画像が水に濡れても、色材がその水中に染み出すのを防止して、その画像の耐水性を向上させる働きをするものである。具体的には、加水分解性シラン化合物や、加水分解性チタン化合物等が一例として挙げられる。この内でも、安定性の観点から、加水分解性シラン化合物が特に好ましい。
【0053】
また、上記水溶性物質は、アミノ基と4級アンモニウム基とが導入された加水分解性シラン化合物とするのがよい。具体的には、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物及び4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物の混合物と、窒素原子を有しない加水分解性シランとを加水分解することにより得られる有機ケイ素化合物とするのがよい。
【0054】
ここで、4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物としては、具体的に以下の「化1」〜「化7」の化合物が一例として挙げられる。尚、これらの化合物は一般に販売されているものであり、容易に入手可能である。
【0055】
【化1】
【0056】
【化2】
【0057】
【化3】
【0058】
【化4】
【0059】
【化5】
【0060】
【化6】
【0061】
【化7】
【0062】
また、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物としては、具体的に以下の「化8」〜「化19」の化合物が一例として挙げられる。尚、これらの化合物は一般に販売されているものであり、容易に入手可能である。
【0063】
【化8】
【0064】
【化9】
【0065】
【化10】
【0066】
【化11】
【0067】
【化12】
【0068】
【化13】
【0069】
【化14】
【0070】
【化15】
【0071】
【化16】
【0072】
【化17】
【0073】
【化18】
【0074】
【化19】
【0075】
このように、上記実施形態においては、インクジェット記録用インクが、色材と、保湿剤と、浸透剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質としての加水分解性シラン化合物とを含有しているため、このインクを用いて記録装置Aにより記録紙41に画像を形成した場合には、インク滴が記録紙41上に付着したときに、保湿剤と浸透剤と水とからなる溶媒がこの記録紙41内に浸透するようになる。これにより、シラン化合物が縮重合反応してこの縮重合反応したシラン化合物が色材を取り囲むことになり、記録紙41上の画像が水に濡れても、色材がその水中に染み出すことが防止される。
【0076】
そして、本実施形態に係るインクでは、上記シラン化合物に、アミノ基及び4級アンモニウム基が導入されていることで、耐水性を大幅に向上させることができる。これは、4級アンモニウム基はイオン化されていることから、色材との相互作用が比較的強い。このことにより、上記シラン化合物がインク中において色材の近傍に位置するようになると考えられ、シラン化合物が縮重合反応したときに、色材が確実に取り込まれるものと考えられる。その結果、全ての色材が上記シラン化合物の縮重合物に取り囲まれることとなり、十分な耐水性が得られると考えられる。
【0077】
また、水溶性物質をアミノ基を有するシラン化合物とする従来のインクでは、色材がマジェンタ染料(酸性染料)であるときに、インクの耐水性が大幅に低下してしまったが、本実施形態の如く、シラン化合物に4級アンモニウム基を導入させることによって、色材がマジェンタ染料であるときにも十分な耐水性が得られることになる。尚、色材がマジェンタ染料以外の色の染料や、顔料の場合においても、十分な耐水性が得られることは勿論である。
【0078】
ここで、上記シラン化合物における、アミノ基と4級アンモニウム基との含有割合は、モル比で1:1〜1:0.01程度とするのが好ましい。これは、アミノ基に対する4級アンモニウム基のモル比が、1よりも大きいときには、4級アンモニウム基と色材との相互作用が強いことに起因して、インク中において(インクが記録紙41に付着する前の状態において)、色材と上記シラン化合物との凝集物が発生してしまう虞があるためである。一方、アミノ基に対する4級アンモニウム基のモル比が0.01よりも小さいときには、耐水性の向上効果が得られない虞があるためである。尚、アミノ基に対する4級アンモニウム基のモル比は、0.1〜0.2程度とするのがより好ましい。こうしたシラン化合物におけるアミノ基と4級アンモニウム基との含有割合は、シラン化合物(有機ケイ素化合物)を生成する際に、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物の量と4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物の量とを調節することによって、任意に設定可能である。
【0079】
尚、上記実施形態では、水がない状態で縮重合反応する水溶性物質を、アミノ基と4級アンモニウム基とが導入された加水分解性シラン化合物としたが、上記水溶性物質は、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物と、4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物とを成分とする混合物であってもよい。
【0080】
この場合でも、インクの耐水性を大幅に向上させることができる。つまり、上述したように、4級アンモニウム基と色材との相互作用が比較的強いことから、インク中において、アミノ基を有するシラン化合物は必ずしも色材の近傍に位置しないが、4級アンモニウム基を有するシラン化合物は色材の近傍に位置するようになると考えられる。このため、水溶性物質の縮重合反応が行われたときには、アミノ基を有するシラン化合物の縮重合物に取り囲まれなかった色材が、4級アンモニウム基を有するシラン化合物の縮重合物に取り囲まれるようになると考えられる。その結果、全ての色材が上記シラン化合物の縮重合物に取り囲まれることとなり、十分な耐水性が得られると考えられる。
【0081】
このように、水溶性物質を、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物と、4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物とを成分とする混合物としたときにおいても、インク中における4級アンモニウム基の含有割合が多すぎるときには、上述したように凝集物が発生する虞があるため、インク中におけるアミノ基と4級アンモニウム基との含有割合がモル比で1:1〜1:0.01程度となるように、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物の量と4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物の量とを調整することが好ましい。
【0082】
但し、水溶性物質を混合物としたときには、インク中において、色材と4級アンモニウム基を有するシラン化合物との凝集物が発生してしまう可能性は残される。このため、本実施形態のように、水溶性物質をアミノ基と4級アンモニウム基とが導入されたシラン化合物とした方が、凝集物の発生を確実に防止する一方で耐水性も向上させることができ、より好ましい。
【0083】
また、水がない状態で縮重合反応する水溶性物質は、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物と、4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物と、アミノ基と4級アンモニウム基とが導入された加水分解性シラン化合物とを成分とする混合物であってもよい。
【0084】
上記実施形態では、加水分解性シラン化合物に、4級アンモニウム基を導入させることとしたが、4級アンモニウム基に限らず、少なくともアミノ基よりも色材との相互作用の強い官能基であれば、どのような官能基であってもよい。例えば、スルホニウム基、ホスホニウム基、イオドニウム基、ジアゼピニウム基等が上げられる。
【0085】
これは、水溶性物質を混合物とした場合においても同様である。つまり、水溶性物質を、少なくともアミノ基を有する加水分解性シラン化合物と、アミノ基よりも色材との相互作用の強い官能基を有する加水分解性シラン化合物とを成分とする混合物としてもよい。
【0086】
さらに、上記実施形態では、水がない状態で縮重合反応する水溶性物質として、加水分解性シラン化合物を含有させたが、インクジェットヘッド1のノズル14から吐出されたインク滴が記録紙41上に付着して水分(溶媒)が蒸発したり記録紙41内に浸透したりしたときに縮重合反応して色材を取り囲むものであれば、どのようなものであってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、インクに浸透剤を含有させたが、浸透剤は本実施形態に係るインクの必須の成分ではない。但し、インクに浸透剤を含有させた方が、インクの溶媒が速やかに記録紙41内に浸透するようになり、これにより、画像の耐水性をより一層向上させることができる。
【0088】
【実施例】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0089】
先ず、以下の組成(各組成物の含有量は質量百分率である)からなる35種類のインクジェット記録用インクを作製した(実施例1〜実施例35)。
【0090】
尚、上記実施例1〜実施例35の全てにおいて、保湿剤としてグリセリンを含有させた。
【0091】
また、色材としては、実施例1〜28、34,35においては染料を含有させる一方、実施例29〜33においては顔料を含有させた。尚、染料としては、基本的にC.I.アシッドレッド289を含有させ、実施例26〜28においては異なる色の染料を含有させた。
【0092】
さらに、水がない状態で縮重合反応する水溶性物質として、実施例1〜33においては、アミノ基及び4級アンモニウム基が導入された有機ケイ素化合物(A)とする一方、実施例34,35においては、アミノ基を有する有機ケイ素化合物(B)及び4級アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物(C)を成分とする混合物とした。
【0093】
(実施例1)
実施例1における有機ケイ素化合物(A1)は、次の製法により作成したものである。つまり、冷却器を取り付けた反応容器内に、120g(6.67モル)の水を入れ、これを撹拌しながら、7.7g(0.02モル)の「化1」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物と、35g(0.20モル)の「化8」で表されるアミノ基を有するシラン化合物と、16.7g(0.11モル)のテトラメトキシシランとの混合物を一滴ずつ加えた。その全量滴下後に、反応容器の温度を60℃に高めて1時間撹拌を続け、その後、反応容器の温度を90℃に高めた上で、2時間撹拌しながら反応を継続させた。反応後に、生成したメタノールを蒸留により除いた。こうして生成したアミノ基と4級アンモニウム基とが導入された有機ケイ素化合物が、実施例1における有機ケイ素化合物(A1)である。尚、有機ケイ素化合物におけるアミノ基と4級アンモニウム基とのモル比は1:0.1である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …78%。
【0094】
(実施例2)
実施例1において、「化8」で表されるアミノ基を有するシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化9」で表されるアミノ基を有するシラン化合物34.8g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例2における有機ケイ素化合物(A2)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A2) …5%
純水 …78%。
【0095】
(実施例3)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化10」で表されるアミノ基を有するシラン化合物40.0g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例3における有機ケイ素化合物(A3)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A3) …5%
純水 …78%。
【0096】
(実施例4)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化11」で表されるアミノ基を有するシラン化合物50.1g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例4における有機ケイ素化合物(A4)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A4) …5%
純水 …78%。
【0097】
(実施例5)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化12」で表されるアミノ基を有するシラン化合物34.8g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例5における有機ケイ素化合物(A5)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A5) …5%
純水 …78%。
【0098】
(実施例6)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化13」で表されるアミノ基を有するシラン化合物37.3g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例6における有機ケイ素化合物(A6)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A6) …5%
純水 …78%。
【0099】
(実施例7)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化14」で表されるアミノ基を有するシラン化合物47.8g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例7における有機ケイ素化合物(A7)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A7) …5%
純水 …78%。
【0100】
(実施例8)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化15」で表されるアミノ基を有するシラン化合物42.4g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例8における有機ケイ素化合物(A8)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A8) …5%
純水 …78%。
【0101】
(実施例9)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化16」で表されるアミノ基を有するシラン化合物40.0g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例9における有機ケイ素化合物(A9)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A9) …5%
純水 …78%。
【0102】
(実施例10)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化17」で表されるアミノ基を有するシラン化合物48.8g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例10における有機ケイ素化合物(A10)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A10) …5%
純水 …78%。
【0103】
(実施例11)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化18」で表されるアミノ基を有するシラン化合物38.4g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例11における有機ケイ素化合物(A11)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A11) …5%
純水 …78%。
【0104】
(実施例12)
実施例1において、「化8」で表されるシラン化合物31.5g(0.18モル)を、「化19」で表されるアミノ基を有するシラン化合物53.7g(0.18モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例12における有機ケイ素化合物(A12)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A12) …5%
純水 …78%。
【0105】
(実施例13)
実施例1において、「化1」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物7.7g(0.02モル)を、「化2」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物5.4g(0.02モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例13における有機ケイ素化合物(A13)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A13) …5%
純水 …78%。
【0106】
(実施例14)
実施例1において、「化1」で表されるシラン化合物7.7g(0.02モル)を、「化3」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物5.7g(0.02モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例14における有機ケイ素化合物(A14)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A14) …5%
純水 …78%。
【0107】
(実施例15)
実施例1において、「化1」で表されるシラン化合物7.7g(0.02モル)を、「化4」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物6.0g(0.02モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例15における有機ケイ素化合物(A15)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A15) …5%
純水 …78%。
【0108】
(実施例16)
実施例1において、「化1」で表されるシラン化合物7.7g(0.02モル)を、「化5」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物7.0g(0.02モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例16における有機ケイ素化合物(A16)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A16) …5%
純水 …78%。
【0109】
(実施例17)
実施例1において、「化1」で表されるシラン化合物7.7g(0.02モル)を、「化6」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物7.7g(0.02モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例17における有機ケイ素化合物(A17)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A17) …5%
純水 …78%。
【0110】
(実施例18)
実施例1において、「化1」で表されるシラン化合物7.7g(0.02モル)を、「化7」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物8.6g(0.02モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例18における有機ケイ素化合物(A18)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A18) …5%
純水 …78%。
【0111】
(実施例19)
実施例1において、「化1」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物7.7g(0.02モル)を3.9g(0.01モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例19における有機ケイ素化合物(A19)である。尚、有機ケイ素化合物におけるアミノ基と4級アンモニウム基とのモル比は1:0.05である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A19) …5%
純水 …78%。
【0112】
(実施例20)
実施例1において、「化1」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物7.7g(0.02モル)を0.77g(0.002モル)に代えて、上記の製法により生成したものが、実施例20における有機ケイ素化合物(A20)である。尚、有機ケイ素化合物におけるアミノ基と4級アンモニウム基とのモル比は1:0.01である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A20) …5%
純水 …78%。
【0113】
(実施例21)
実施例1において、「化1」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物7.7g(0.02モル)を38.5g(0.10モル)に、テトラメトキシシラン16.7g(0.11モル)を22.7g(0.15モル)にそれぞれ代えて、上記の製法により生成したものが、実施例21における有機ケイ素化合物(A21)である。尚、有機ケイ素化合物におけるアミノ基と4級アンモニウム基とのモル比は1:0.5である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A21) …5%
純水 …78%。
【0114】
(実施例22)
実施例1において、「化1」で表される4級アンモニウム基を有する化合物7.7g(0.02モル)を77g(0.20モル)に、テトラメトキシシラン16.7g(0.11モル)を30.4g(0.20モル)にそれぞれ代えて、上記の製法により生成したものが、実施例22における有機ケイ素化合物(A22)である。尚、有機ケイ素化合物におけるアミノ基と4級アンモニウム基とのモル比は1:1である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A22) …5%
純水 …78%。
【0115】
(実施例23)
実施例1のインク組成に対して、浸透剤としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルを5g添加すると共に、純水78gを73gに代えた。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …73%。
【0116】
(実施例24)
実施例1のインク組成に対して、浸透剤としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルを10g添加すると共に、純水78gを68gに代えた。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル …10%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …68%。
【0117】
(実施例25)
実施例1のインク組成に対して、浸透剤としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルを15g添加すると共に、純水78gを63gに代えた。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル …15%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …63%。
【0118】
(実施例26)
実施例1のインク組成においてC.I.アシッドレッド289を、C.I.ダイレクトブラック154に代えた。
C.I.ダイレクトブラック154 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …78%。
【0119】
(実施例27)
実施例1のインク組成においてC.I.アシッドレッド289を、C.I.ダイレクトイエロー132に代えた。
C.I.ダイレクトイエロー132 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …78%。
【0120】
(実施例28)
実施例1のインク組成においてC.I.アシッドレッド289を、C.I.ダイレクトブルー199に代えた。
C.I.ダイレクトブルー199 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …78%。
【0121】
(実施例29)
実施例1のインク組成においてC.I.アシッドレッド289を、カーボンブラック(商品名「CAB-O-JETTM-200」:キャボット社製)に代えた。
カーボンブラック …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …78%。
【0122】
(実施例30)
実施例1のインク組成においてC.I.アシッドレッド289を、カーボンブラック(商品名「CAB-O-JETTM-300」:キャボット社製)に代えた。
カーボンブラック …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …78%。
【0123】
(実施例31)
実施例1のインク組成においてC.I.アシッドレッド289を、イエロー顔料(商品名「FUJI SP YELLOW 4223」:富士色素社製)に代えた。
イエロー顔料 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …78%。
【0124】
(実施例32)
実施例1のインク組成においてC.I.アシッドレッド289を、マジェンタ顔料(商品名「FUJI SP MAGENTA 9338」:富士色素社製)に代えた。
マジェンタ顔料 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …78%。
【0125】
(実施例33)
実施例1のインク組成においてC.I.アシッドレッド289を、シアン顔料(商品名「FUJI SP BULE 6403」:富士色素社製)に代えた。
シアン顔料 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(A1) …5%
純水 …78%。
【0126】
(実施例34)
実施例34では、上述したように、水溶性物質を、アミノ基を有する有機ケイ素化合物(B)及び4級アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物(C)を成分とする混合物とした。
【0127】
この内、アミノ基を有する有機ケイ素化合物(B)は、次の製法により作成したものである。つまり、冷却器を取り付けた反応容器内に、120g(6.67モル)の水を入れ、これを撹拌しながら、35g(0.20モル)の「化8」で表されるアミノ基を有するシラン化合物と、15.2g(0.10モル)のテトラメトキシシランとの混合物を一滴ずつ加えた。その全量滴下後に、反応容器の温度を60℃に高めて1時間撹拌を続け、その後、反応容器の温度を90℃に高めた上で、2時間撹拌しながら反応を継続させた。反応後に、生成したメタノールを蒸留により除いた。こうして生成したものが、アミノ基を有する有機ケイ素化合物(B)である。
【0128】
また、4級アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物(C)は、次の製法により作成したものである。つまり、冷却器を取り付けた反応容器内に120g(6.67モル)の水を入れ、これを撹拌しながら、77g(0.20モル)の「化1」で表される4級アンモニウム基を有するシラン化合物と、15.2g(0.10モル)のテトラメトキシシランとの混合物を一滴ずつ加えた。その全量滴下後に、反応容器の温度を60℃に高めて1時間撹拌を続け、その後、反応容器の温度を90℃に高めた上で2時間撹拌しながら反応を継続させた。反応後に、生成したメタノールを蒸留により除いた。こうして生成したものが、実施例34における4級アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物(C)である。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(B) …5%
有機ケイ素化合物(C) …0.5%
純水 …77.5%
アミノ基と4級アンモニウム基とのモル比 …1:0.1。
【0129】
(実施例35)
実施例34のインク組成に対して、アミノ基を有する有機ケイ素化合物(B)と、4級アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物(C)との含有比率を変更した。
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(B) …5%
有機ケイ素化合物(C) …0.1%
純水 …77.9%
アミノ基と4級アンモニウム基とのモル比 …1:0.02。
【0130】
続いて、比較のために、以下の組成(各組成物の含有量は質量百分率である)からなる2種類のインクを作製した(比較例1及び比較例2)。尚、比較例1は、有機ケイ素化合物として、アミノ基を有する有機ケイ素化合物(B)を含有させたものであり、比較例2は、有機ケイ素化合物として、4級アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物(C)を含有させたものである。
【0131】
(比較例1)
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(B) …5%
純水 …78%
(比較例2)
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
有機ケイ素化合物(C) …5%
純水 …78%。
【0132】
次に、上記各実施例1〜35及び各比較例1,2のインクによる耐水試験を行った。この耐水試験に用いた印字サンプルは、上記の各インクを用いて、市販のプリンタ(上記実施形態と同様の圧電アクチュエータ(但し、圧電素子の厚みは上記実施形態のものよりもかなり大きい)によりインクを吐出させるもの)で普通紙(商品名「Xerox4024」:ゼロックス社製)に15mm角のベタ印字を行ったものである。
【0133】
耐水試験は、上記各印字サンプルの印字面を下にして、蒸留水に5分間浸漬することにより行った。耐水性の評価は、OD(Optical Density)値(印字濃度)によって行うこととし、浸漬前に測定した各印字サンプルのOD値と、浸漬後、30分間自然乾燥させた後に測定した各印字サンプルのOD値との比を、耐水性(%)とした。尚、OD値はマクベス濃度計により測定した。表1に、耐水試験の結果を示す。
【0134】
【表1】
【0135】
表1より、実施例1〜35の各インクは、耐水性が90%以上であるのに対し、比較例1のインクは、耐水性が90%以下であった。尚、有機ケイ素化合物を含有しないインクでは、耐水性は60〜70%程度である。この結果から、各実施例のインクでは十分な耐水性が得られることが判る。特に、従来のインク(比較例1のインク)では耐水性が低下したマジェンタ染料のインクにおいても、十分な耐水性が得られている。
【0136】
また、比較例2のインクは、インク中に凝集物が発生してしまい、耐水性の評価が不可能であった。従って、4級アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物のみを含有させたインクは、不適当であることが判る。
【0137】
次に、上記実施例1〜35及び比較例1,2の各インクを用いて、市販のプリンターで普通紙(商品名「Xerox4024」:ゼロックス社製)に画像を形成し、この画像を形成した用紙を純水に浸漬した後、室温で放置して乾燥させ、画像のにじみ程度を調べた。
【0138】
この結果、比較例1のインクで形成した画像では、染料が流れ出て画像全体ににじみが観察された。これに対して、各実施例のインクで形成した画像では、色材が流れ出すことがなく、また、画像のにじみもほとんど観察されなかった。
【0139】
従って、色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクにおいて、上記水溶性物質をアミノ基及び4級アンモニウム基が導入された化合物とする、または、上記水溶性物質をアミノ基を有する化合物及び4級アンモニウム基を有する化合物を成分とする混合物とすることによって、画像の耐水性を飛躍的に向上することができることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクを備えたインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
【図2】インクジェット式記録装置のインクジェットヘッドの部分底面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
14 ノズル
21 圧電アクチュエータ
23 圧電素子
35 インクカートリッジ
41 記録紙(記録媒体)
A インクジェット式記録装置
Claims (12)
- 色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクであって、
上記水溶性物質は、アミノ基を有する化合物、及び4級アンモニウム基を有する化合物を成分とする混合物である
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクであって、
上記水溶性物質は、アミノ基及び4級アンモニウム基が導入された化合物である
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクであって、
上記水溶性物質は、アミノ基を有する化合物、4級アンモニウム基を有する化合物、並びにアミノ基及び4級アンモニウム基が導入された化合物を成分とする混合物である
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 請求項1において、
水溶性物質は、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物、及び4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物を成分とする混合物である
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 請求項2において、
水溶性物質は、アミノ基及び4級アンモニウム基が導入された加水分解性シラン化合物である
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 請求項3において、
水溶性物質は、アミノ基を有する加水分解性シラン化合物、4級アンモニウム基を有する加水分解性シラン化合物、並びにアミノ基及び4級アンモニウム基が導入された加水分解性シラン化合物を成分とする混合物である
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
浸透剤を含有している
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクであって、
上記水溶性物質は、アミノ基、及び該アミノ基よりも上記色材との相互作用の強い基を含有する物質である
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを備えたインクカートリッジであって、
上記水溶性物質は、アミノ基及び4級アンモニウム基を含有する物質である
ことを特徴とするインクカートリッジ。 - 請求項9において、
インクは、浸透剤を含有している
ことを特徴とするインクカートリッジ。 - 色材と、保湿剤と、水と、この水がない状態で縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを備え、該インクを記録媒体に吐出して記録を行う記録装置であって、
上記水溶性物質は、アミノ基及び4級アンモニウム基を含有する物質である
ことを特徴とする記録装置。 - 請求項11において、
インクは、浸透剤を含有している
ことを特徴とする記録装置。
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