JP2004010815A - 画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ノズルよりインクジェット記録用インクを吐出して、被プリント材41に画像を形成する画像形成方法において、被プリント材41の表面を酸性とし、インクジェット記録用インクを、色材と、保湿剤と、水と、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質とを含有するインクとする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆるインクジェット記録による画像形成方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録に用いられるインクとして、色材(染料又は顔料)と、保湿剤と、水とを含有したものがよく知られている。ところが、色材を含有したインクにより記録紙等の記録媒体上に画像を形成すると、その画像の耐水性、すなわち画像が水に濡れると色材が水中に染み出してしまうことが問題となる。特に普通紙(広範な市販の紙で、とりわけ電子写真方式の複写機に用いられる紙であって、インクジェット記録用として最適な構造、組成、特性等を有するように意図して製造されてはいない紙)に記録した場合は、耐水性が非常に悪くなる。
【0003】
そこで、従来、例えば特開平10−212439号公報、特開平11−293167号公報及び特開平11−315231号公報に示されているように、インクに加水分解性シラン化合物(有機ケイ素化合物)を含有させることにより、記録媒体上の画像の耐水性を向上させるようにすることが提案されている。このものでは、インク滴が記録媒体上に付着して水分(溶媒)が蒸発したり記録媒体内に浸透したりしたときに、上記記録媒体上に残った上記シラン化合物が縮重合反応し、この縮重合反応したシラン化合物が色材を取り囲むため、記録媒体上の画像が水に濡れても、色材がその水中に染み出すことはなく、その画像の耐水性が向上する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案例のように加水分解性シラン化合物を含有したインクをインクジェット記録法により吐出させ、そのまま被プリント材に画像を形成させたのでは、インク滴が被プリント材上に付着したとき、加水分解性シラン化合物の縮重合反応があまり速やかに進まないので、加水分解性シラン化合物による色材の取り囲みが不十分となる。この傾向は、マジェンタ染料において顕著に見られる。このため、シラン化合物による高耐水性の効果が十分に得られず、改良の余地がある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記加水分解性シラン化合物のような、水が蒸発するに伴い縮重合反応する水溶性物質を含有するインクをインクジェット記録法により吐出させて、被プリント材に画像を形成させる方法に改良を施すことによって、水が蒸発するに伴い縮重合反応する水溶性物質による画像の高耐水性の効果がより確実に得られるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明では、ノズルから被プリント材にインクジェット記録用インクを吐出することにより、該被プリント材に画像を形成する画像形成方法を対象とする。そして、上記被プリント材を、その表面が酸性のものとし、上記インクジェット記録用インクを、色材と、保湿剤と、水と、この水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質とを含有するインクとする。
【0007】
このことにより、インク滴が上記被プリント材上に付着したときには、酸の触媒効果により水溶性物質の縮重合反応が促進され完結し、この水溶性物質は色材を確実に取り囲む。よって、水溶性物質による画像の高耐水性の効果がより確実に得られる。
【0008】
ここで、被プリント材は普通紙としてもよい。普通紙とは、広範な市販の紙で、とりわけ電子写真方式の複写機に用いられる紙であって、インクジェット記録用として最適な構造、組成、特性等を有するように意図して製造されてはいない紙である。
【0009】
つまり、被プリント材が普通紙であるときには、従来、水性インクによる耐水性の記録画像を得るのが困難であったところ、本発明に係る画像形成方法では、被プリント材が普通紙であっても、容易に耐水性の記録画像が得られるようになるのである。
【0010】
また、上記被プリント材の表面のpHは、1〜6とすればよい。これは、被プリント材の表面のpHが6より高い場合には、酸による、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質の縮重合反応の促進が期待できないためである。また反対に、pHが1より低い場合には、被プリント材そのものが、酸で劣化したり、インクジェット記録装置において、被プリント材と接触する部材が劣化したりするので好ましくないためである。
【0011】
上記水溶性物質は、例えば請求項4記載の如く、加水分解性シラン化合物としてもよい。すなわち、シラン化合物は耐水性を向上させる点で非常に好ましく、請求項1〜請求項3記載の発明の作用効果を有効に発揮させることができる。
【0012】
請求項5の発明は、色材と、保湿剤と、水と、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを用いた画像形成方法を対象とし、上記インクジェット記録用インクを、ノズルから被プリント材に吐出することにより、該被プリント材に画像を形成する工程と、上記工程の後に、上記被プリント材上の画像を酸に接触させる工程とを含むものとする。
【0013】
このことにより、インク滴が上記被プリント材上に付着した後、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質の縮重合反応が、酸の触媒効果により促進されて完結し、上記水溶性物質は色材を確実に取り囲む。よって、水溶性物質による画像の高耐水性の効果がより確実に得られる。
【0014】
請求項6の発明では、色材と、保湿剤と、水と、この水が蒸発するに伴い縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを用いた画像形成方法を対象とし、上記インクジェット記録用インクを吐出する被プリント材に、予め酸を接触させる工程と、上記工程の後に、ノズルから上記被プリント材に、インクジェット記録用インクを吐出することにより、該被プリント材に画像を形成する工程とを含むものとする。
【0015】
このことにより、インク滴が上記被プリント材上に付着したときには、酸の触媒効果により水溶性物質の縮重合反応が促進され完結し、水溶性物質は色材を確実に取り囲む。よって、水溶性物質による画像の高耐水性の効果がより確実に得られる。
【0016】
以上説明したように、本発明の、色材と、保湿剤と、水と、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクをノズルより吐出して、被プリント材に画像を形成する画像形成方法において、上記被プリント材の表面を酸性としておくことにより、インク滴が上記被プリント材上に付着したときには、酸の触媒効果により水溶性物質の縮重合反応が促進され完結し、水溶性物質は色材を確実に取り囲む。このことによって、水溶性物質による画像の耐水性が向上できる。
【0017】
また、色材と、保湿剤と、水と、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを用いる画像形成方法において、ノズルよりインクジェット記録用インクを吐出して、被プリント材に、画像形成した後、上記画像を酸に接触させることにより上記と同様の作用効果が得られる。
【0018】
さらにまた、色材と、保湿剤と、水と、この水が蒸発するに伴い縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクをノズルより吐出して画像を形成する画像形成方法において、被プリント材にあらかじめ酸を接触させておくことにより、この被プリント材に画像を形成したときには、上記と同様の作用効果が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態は、表面が酸性である被プリント材を用いた画像形成方法に係る実施形態である。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクを備えたインクジェット式記録装置Aを概略的に示し、この記録装置Aは、上面に上記インクを有するインクカートリッジ35が装着されかつ該インクを後述の如く被プリント材41に吐出するインクジェットヘッド1を備えている。このインクジェットヘッド1はキャリッジ31に支持固定され、このキャリッジ31には、図示を省略するキャリッジモータが設けられ、このキャリッジモータにより上記インクジェットヘッド1及びキャリッジ31が主走査方向(図1及び図2に示すX方向)に延びるキャリッジ軸32にガイドされてその方向に往復動するようになっている。このキャリッジ31、キャリッジ軸32及びキャリッジモータにより、インクジェットヘッド1と被プリント材41とを主走査方向に相対移動させる相対移動手段が構成されている。
【0022】
上記被プリント材41は、図示を省略する搬送モータによって回転駆動される2つの搬送ローラ42に挟まれていて、この搬送モータ及び各搬送ローラ42により、上記インクジェットヘッド1の下側において上記主走査方向と垂直な副走査方向(図1及び図2に示すY方向)に搬送されるようになっている。この搬送モータ及び各搬送ローラ42により、インクジェットヘッド1と被プリント材41とを副走査方向に相対移動させる相対移動手段が構成されている。
【0023】
上記インクジェットヘッド1は、図2〜図4に示すように、インクを供給するための供給口3a及びインクを吐出するための吐出口3bを有する複数の圧力室用凹部3が形成されたヘッド本体2を備えている。このヘッド本体2の各凹部3は、該ヘッド本体2の上面に上記主走査方向に延びるように開口されていて、互いに上記副走査方向に略等間隔をあけた状態で並設されている。上記各凹部3開口の全長は約1250μmに、幅は約130μmにそれぞれ設定されている。尚、上記各凹部3の開口の両端部は、略半円形状をなしている。
【0024】
上記ヘッド本体2の各凹部3の側壁部は、約200μm厚の感光性ガラス製の圧力室部品6で構成され、各凹部3の底壁部は、この圧力室部品6の下面に接着固定されかつ6枚のステンレス鋼薄板を積層してなるインク流路部品7で構成されている。このインク流路部品7内には、上記各凹部3の供給口3aとそれぞれ接続された複数のオリフィス8と、この各オリフィス8と接続されかつ上記副走査方向に延びる1つの供給用インク流路11と、上記吐出口3bとそれぞれ接続された複数の吐出用インク流路12とが形成されている。
【0025】
上記各オリフィス8は、インク流路部品7において板厚が他よりも小さい上から2番目のステンレス鋼薄板に形成されており、その径は約38μmに設定されている。また、上記供給用インク流路11は上記インクカートリッジ35と接続されており、このインクカートリッジ35より供給用インク流路11内にインクが供給されるようになっている。
【0026】
上記インク流路部品7の下面には、インク滴を上記被プリント材41に向けて吐出するための複数のノズル14が形成されたステンレス鋼製のノズル板9が接着固定されている。このノズル板9の下面は、撥水膜9aで被覆されている。上記各ノズル14は、上記吐出用インク流路12とそれぞれ接続されていて、この吐出用インク流路12を介して上記各凹部3の吐出口3bにそれぞれ連通されており、インクジェットヘッド1の下面において、上記副走査方向に列状に並ぶように設けられている。尚、上記各ノズル14は、ノズル径がノズル先端側に向かって小さくなるテーパ部と、該テーパ部のノズル先端側に設けられたストレート部とからなり、このストレート部のノズル径は約20μmに設定されている。
【0027】
上記ヘッド本体2の各凹部3の上側には、圧電アクチュエータ21がそれぞれ設けられている。この各圧電アクチュエータ21は、上記ヘッド本体2の上面に接着固定された状態で該ヘッド本体2の各凹部3を塞いで該凹部3と共に圧力室4を構成するCr製振動板22を有している。この振動板22は、全ての圧電アクチュエータ21に共通の1つのものからなっていて、後述の全圧電素子23に共通の共通電極としての役割をも果たしている。 また、上記各圧電アクチュエータ21は、上記振動板22の上記圧力室4と反対側面(上面)において圧力室4に対応する部分(凹部3開口に対向する部分)にCu製の中間層25を介してそれぞれ設けられかつチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電素子23と、この各圧電素子23の上記振動板22と反対側面(上面)にそれぞれ設けられ、該振動板22と共に各圧電素子23に電圧(駆動電圧)をそれぞれ印加するためのPt製個別電極24とを有している。
【0028】
上記振動板22、各圧電素子23、各個別電極24及び各中間層25は、全て薄膜で形成されてなっており、振動板22の厚みは約6μmに、各圧電素子23の厚みは8μm以下(例えば約3μm)に、各個別電極24の厚みは約0.2μmに、各中間層25の厚みは約3μmにそれぞれ設定されている。
【0029】
上記各圧電アクチュエータ21は、その振動板22ないし各中間層25と各個別電極24とを介して各圧電素子23に駆動電圧を印加することにより該振動板22の圧力室4に対応する部分を変形させることで、該圧力室4内のインクを吐出口3bないしノズル14から吐出させるようになっている。すなわち、振動板22と個別電極24との間にパルス状の電圧を印加すると、そのパルス電圧の立ち上がりにより圧電素子23が圧電効果によりその厚み方向と垂直な幅方向に収縮するのに対し、振動板22、個別電極24及び中間層25は収縮しないので、いわゆるバイメタル効果により振動板22の圧力室4に対応する部分が圧力室4側へ凸状に撓んで変形する。この撓み変形により圧力室4内に圧力が生じ、この圧力で圧力室4内のインクが吐出口3b及び吐出用インク流路12を経由してノズル14よりインク滴として被プリント材41へ吐出されて、該被プリント材41上にドット状に付着することとなる。そして、上記パルス電圧の立ち下がりにより圧電素子23が伸長して振動板22の圧力室4に対応する部分が元の状態に復帰し、このとき、圧力室4内には上記インクカートリッジ35より供給用インク流路11及び供給口3aを介してインクが充填される。尚、各圧電素子23に印加するパルス電圧としては、上記のように押し引きタイプのものでなくても、第1の電圧から該第1の電圧よりも低い第2の電圧まで立ち下がった後に上記第1の電圧まで立ち上がる引き押しタイプのものであってもよい。
【0030】
上記各圧電素子23への駆動電圧の印加は、インクジェットヘッド1及びキャリッジ31を主走査方向において被プリント材41の一端から他端まで略一定速度で移動させているときに所定時間(例えば50μs程度:駆動周波数20kHz)毎に行われ(但し、インクジェットヘッド1が被プリント材41においてインク滴を着弾させない箇所に達したときには電圧が印加されない)、このことで、被プリント材41の所定位置にインク滴を着弾させる。そして、1走査分の記録が終了すると、搬送モータ及び各搬送ローラ42により被プリント材41を副走査方向に所定量搬送し、再度、インクジェットヘッド1及びキャリッジ31を主走査方向に移動させながらインク滴を吐出させて、新たな1走査分の記録を行う。この動作を繰り返すことによって、被プリント材41全体に所望の画像が形成される。
【0031】
上記記録装置Aに用いるインクは、色材と、上記インクジェットヘッド1のノズル14等での乾きを抑制する保湿剤と、浸透剤と、水と、この水が蒸発するに伴い縮重合反応する水溶性物質(水がない状態で縮重合反応する水溶性物質)としての加水分解性シラン化合物とを含有している。
【0032】
上記加水分解性シラン化合物は、上記インクジェットヘッド1のノズル14から吐出されたインク滴が被プリント材41上に付着してそのインク滴中の水が蒸発したり被プリント材41内に浸透したりしたときに縮重合反応し、このときに色材を取り囲むことにより、被プリント材41上の画像が水に濡れても、色材がその水中に染み出すのを防止して、その画像の耐水性を向上させる働きをするものであって、アミノ基を有する有機基を含有するアルコキシシランとアミノ基を含有しないアルコキシシランとの加水分解反応物、又は、アミノ基を含有する加水分解性シランに有機モノエポキシ化合物を反応させた加水分解性シランと窒素原子を含有しない加水分解性シランとを加水分解することにより得られる有機ケイ素化合物であることが望ましい。
【0033】
上記色材は、染料又は顔料であることが望ましく、染料は、どのようなものであってもよいが、水溶性の酸性染料又は直接染料であることが好ましい。また、黒顔料としては、カーボンブラック表面をジアゾニウム塩で表面処理したものやポリマーをグラフト重合して表面処理したものが挙げられ、カラー顔料としては、顔料をナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、リグニスルホン酸、ジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸エステル等の界面活性剤で処理したものが挙げられる。カラー顔料の具体例としては、シアン顔料ではピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、アルミニウムフタロシアニン等が挙げられ、マゼンタ顔料ではピグメントレッド122、ピグメントバイオレット19等が挙げられ、イエロー顔料ではピグメントイエロー74、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー128等が挙げられる。
【0034】
上記保湿剤は、グリセリン等の多価アルコール又は2−ピロリドンやN−メチル−2−ピロリドンのような水溶性の窒素複素環化合物であることが望ましい。
【0035】
上記浸透剤は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のような、多価アルコールのモノアルキルエーテルであることが好ましい。尚、浸透剤はインクの必須成分ではないが、浸透剤のインクに対する含有量を調整することによってインク(又は溶媒)の表面張力を適宜設定することにより、インク滴が記録紙41上に付着した後上記溶媒が記録紙41内に速やかに浸透することができるようになる。こうすることとで、インク滴が記録紙41上に付着した後に、シラン化合物の縮重合反応が速やかにかつ十分に行われて、このシラン化合物によって色材が速やかにかつ確実に取り囲まれる。こうして、画像の形成直後においても高レベルな画像の耐水性を得ることができるようになる。
【0036】
また、浸透剤の補助剤としてアニオン界面活性剤又は非イオン活性剤を添加してもよい。
【0037】
そして、本実施形態に係る被プリント材41は、その表面が酸性にされている。こうすることで、上記インクが被プリント材41上に付着すると、インク滴中の水(溶媒)が蒸発したり、被プリント材41内に浸透したりして、加水分解性シラン化合物が縮重合反応を開始する。この時、被プリント材41上の酸が触媒の働きをする。その結果、加水分解性シラン化合物の縮重合反応は速やかに進み、完結する。このときに色材を取り囲むことにより、被プリント材41上の画像が水に濡れても、色材がその水中に染み出すのを防止して、その画像の耐水性を向上させる。
【0038】
ここで、被プリント材41の例としては、普通紙、コート紙、フィルム等が例として挙げられる。この中でも、普通紙の場合は、安価で汎用性があり、本発明の画像形成方法と組合わせることにより、記録画質が高い耐水性を示すようになるので、付加価値を飛躍的に高めることができる。
【0039】
また、上記被プリント材41の表面のpHは1〜6が望ましい。被プリント材の表面のpHが6より高い場合には、酸触媒の効果はほとんど発揮されない。また、被プリント材41の表面のpHが1より低い場合は、酸触媒の効果は発揮されるが、酸の影響で被プリント材41自身が劣化したり、被プリント材41と接触する記録装置Aの部材を劣化させるので、実用的でない。
【0040】
紙のpHは、サイズ定着剤として用いる硫酸アルミニウムの含有量を制御したり、中性普通紙または、酸性紙に0.001N〜1Nの酸性水溶液を塗布することにより、容易に調整することができる。
【0041】
こうして、第1実施形態においては、表面が酸性である被プリント材41に、水が蒸発するに伴い縮重合反応する水溶性物質を含有したインクで画像を形成することにより、その被プリント材41上に形成した画像の耐水性を向上させることができる。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態は、ノズルよりインクを吐出して被プリント材41上に画像を形成する工程と、上記画像形成後に上記画像に酸を作用させる工程とからなる画像形成方法に係る実施形態である。
【0043】
すなわち、上記記録装置Aにより、色材と、保湿剤と、浸透剤と、水と、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質として加水分解性シラン化合物とを含有するインクジェット記録用インクを吐出して、被プリント材41に画像を形成する。これにより、インク滴中の水(溶媒)が蒸発したり、被プリント材41内に浸透したりして、加水分解性シラン化合物の縮重合反応が起こり、色材を取り囲むことにより、被プリント材41上の画像が水に濡れても、色材がその水中に染み出すのを防止して、その画像の耐水性を向上させる。
【0044】
しかしながら、実際は、被プリント材41上で、加水分解性シラン化合物の縮重合反応は完結しない。反応が完結しないので、加水分解性シラン化合物が色材を取り囲む割合が少なくなる。この傾向は、マジェンタ染料において顕著に見られる。その結果、画像が水に濡れた場合には、色材が水中に染み出してしまう。
【0045】
これに対して、第2実施形態では、被プリント材41に画像を形成した後、上記画像を酸に接触させる。これにより、酸の触媒効果により、加水分解性シラン化合物の縮重合反応が速やかに進行し、完結する。この結果、色材は加水分解性シラン化合物に効果的に取り囲まれるようになり、画像の耐水性が飛躍的に向上することになる。
【0046】
ここで、画像を酸に接触させる方法としては、気相、液相および固相で接触させる方法がある。この中で、気相で接触させる方法が、印字した画質に影響を与える可能性が少ないので、実用的で好ましい。気相で酸に接触させる方法としては、ビーカー等の容器に高濃度の酸の溶液を入れ、酸の蒸気に画像を形成した被プリント材を暴露する方法、あるいは密閉容器中に酸の溶液を入れ、容器内を酸の蒸気で充満させておき、その中に画像を形成した被プリント材を入れて、酸の蒸気に暴露させる方法、あるいは密閉容器中にあらかじめ画像を形成した被プリント材を入れておき、さらに酸を入れて、酸の蒸気を発生させて、被プリント材を酸の蒸気の暴露させる方法などが例として挙げられる。
【0047】
液相で酸に接触させる方法としては、被プリント材41が浸漬できる大きさの容器に酸を入れておき、その中に画像を形成した被プリント材41を浸漬し、直ちに取り出し乾燥させる。あるいは、画像を形成した被プリント材41にスプレーにより酸を霧状にして吹き付ける方法が例として挙げられる。
【0048】
固相で酸に接触させる方法としては、シリカゲルやアルミナに塩酸、硫酸、リン酸などを付着させたものに画像を形成した被プリント材41を接触させる方法が例として挙げられる。
【0049】
本発明で用いる酸の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機の強酸が望ましい。
【0050】
<第3実施形態>
第3実施形態は、被プリント材41にあらかじめ酸を接触させる工程と、上記酸を接触した後の被プリント材41に、ノズルよりインクを吐出して画像を形成する工程からなる画像形成方法に係る実施形態である。
【0051】
被プリント材41にあらかじめ酸を接触させる方法としては、液相、気相および固相で接触させる方法がある。この中で、液相で接触させる方法が酸を被プリント材の中に浸透させやすいので、好ましい。
【0052】
このように、あらかじめ酸と接触させた被プリント材41に対して、記録装置Aにより、色材と、保湿剤と、浸透剤と、水と、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質として加水分解性シラン化合物とを含有するインクジェット記録用インクを吐出して画像を形成すると、インク滴中の水(溶媒)が蒸発したり、被プリント材41内に浸透したりして、加水分解性シラン化合物の縮重合反応が起こる。このとき、被プリント材41中の酸が触媒の働きをするので、加水分解性シラン化合物の縮重合反応が速やかに進行し、完結する。この結果、加水分解性シラン化合物は色材を効果的に取り囲み、被プリント材41上の画像が水に濡れても、色材がその水中に染み出すのが防止され、画像の耐水性が飛躍的に向上することになる。
【0053】
【実施例】
<第1実施例>
次に、上記第1実施形態に係る画像形成方法について、具体的に実施した実施例について説明する。
【0054】
先ず、以下の組成(各組成物の含有量は質量百分率である)のインクジェット記録用インクを作製した。
【0055】
尚、染料としてはC.Iアシッドレッド289を、保湿剤としてグリセリンおよびジエチレングリコールを、浸透剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する加水分解性シラン化合物として有機ケイ素化合物をそれぞれ含有させた。
【0056】
上記有機ケイ素化合物は、反応容器に入れた180g(10モル)の水に、100g(0.56モル)のH2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3と166g(1.1モル)のSi(OCH3)4との混合物を室温で一滴一滴加えて、その全量滴下後に60℃で1時間攪拌することにより得たもの(有機ケイ素化合物(A)という)を用いた。
【0057】
(インク)
C.I.アシッドレッド289 …5%
グリセリン …7%
ジエチレングリコール …5%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル …5%
有機ケイ素化合物(A) …5%
純水 …73%。
【0058】
(実施例1−1)
記録装置Aにより、被プリント材として表面のpHが1に調整されたA4サイズの普通紙を用い、インクAを吐出して、15mm角のベタ印字して画像を作製した。
【0059】
(実施例1−2)
実施例1−1の被プリント材を、表面のpHが2に調整された普通紙に変えて、同様の実験をした。
【0060】
(実施例1−3)
実施例1−1の被プリント材を、表面のpHが3に調整された普通紙(HK原紙、大昭和製紙製)に変えて、同様の実験をした。
【0061】
(実施例1−4)
実施例1−1の被プリント材を、表面のpHが4に調整された普通紙に変えて、同様の実験をした。
【0062】
(実施例1−5)
実施例1−1の被プリント材を、表面のpHが5に調整された普通紙に変えて、同様の実験をした。
【0063】
(実施例1−6)
実施例1−1の被プリント材を、表面のpHが6に調整された普通紙(ファイン再生紙、紀州製紙製)に変えて、同様の実験をした。
【0064】
<第2実施例>
次に、上記第2実施形態に係る画像形成方法について、具体的に実施した実施例について説明する。実施例2−1〜実施例2−3は気相で酸と接触させる方法、実施例2−4は液相で酸を接触させる方法、実施例2−5および2−6は固相で酸素と接触させる方法の実施例である。
【0065】
(実施例2−1)
記録装置Aにより、被プリント材としてA4サイズの普通紙(商品名「Xerox4024」:ゼロックス社製、pH6.8)を用い、インクAを吐出して、15mm角のベタ印字して画像を作製した。ホーローバットに10Nの塩酸を入れ、前記画像を形成した普通紙の画像面を塩酸の蒸気に室温で5分間暴露させた。
【0066】
(実施例2−2)
実施例2−1において、塩酸を硝酸に変えて、同様の実験をした。
【0067】
(実施例2−3)
密閉ガラス容器に10Nの塩酸を入れ、室温で1時間放置し、内部を塩酸の蒸気で飽和させておき、その中へ、実施例2−1において作製した画像を入れ、5分間放置した。
【0068】
(実施例2−4)
実施例2−1において作製した被プリント材の画像面に、市販のスプレー発生器を用いて、0.1Nの塩酸1mlを塗布した。
【0069】
(実施例2−5)
シリカ微粒子をコートしたA4サイズのガラス板(市販の薄層クロマト用ガラス板)を1Nの塩酸に1分間浸漬した後、取り出し、5分間自然乾燥した。実施例2−1において作製した被プリント材の画像面を上記シリカコート面に向けて置き、さらに同じ大きさのガラス板を重ね合わせ、5分間放置した。
【0070】
(実施例2−6)
実施例2−5において、シリカ微粒子コートガラス板をアルミナ微粒子コートガラスに変えて、同様の実験をした。
【0071】
<第3実施例>
次に、上記第3実施形態に係る画像形成方法について、具体的に実施した実施例について説明する。
【0072】
(実施例3−1)
被プリント材としてA4サイズの普通紙(商品名「Xerox4024」:ゼロックス社製、pH6.8)の表面に、10Nの塩酸1mlをスプレーコートし、5分間自然乾燥させた後、記録装置Aにより、インクAを吐出して、15mm角のベタ印字して画像を作製した。
【0073】
(実施例3−2)
実施例3−1において、10Nの塩酸を1Nの塩酸に変えて、同様の実験をした。
【0074】
(実施例3−3)
実施例3−1の変えて、10Nの塩酸を0.1Nの塩酸に変えて同様の実験をした。
【0075】
(実施例3−4)
実施例3−1の変えて、10Nの塩酸を0.01Nの塩酸に変えて同様の実験をした。
【0076】
(実施例3−5)
実施例3−1の変えて、10Nの塩酸を0.1Nの硝酸に変えて同様の実験をした。
【0077】
(実施例3−6)
被プリント材としてA4サイズの普通紙(商品名「Xerox4024」:ゼロックス社製、pH6.8)を実施例2−1と同じ条件で、10Nの塩酸の蒸気に暴露した後、記録装置Aにより、インクAを吐出して、15mm角のベタ印字して画像を作製した。
【0078】
(比較例)
実施例1−1において、被プリント材を表面のpHが1に調整された普通紙から、中性普通紙紙(商品名「Xerox4024」:ゼロックス社製、pH6.8)に変えて、同様の実験を行った。
【0079】
次に、実施例1−1〜6、2−1〜6、3−1〜6および比較例の画像サンプルの耐水性を評価した。耐水性は印字サンプルの耐水試験前のOD値に対する耐水試験後のOD値の比(%)から求めた。耐水試験は、印字物の印字面を下にして、蒸留水に5分間浸漬して行った。浸漬後、30分間自然乾燥させた後、OD値を測定した。その結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1によると、比較例のインクは、耐水性が85%と低かったのに対して、実施例1−1〜6、2−1〜6、3−1〜6の方法で形成した画像の耐水性が92%以上と比較例に比べて7〜10%高い値を示した。
【0082】
また、実施例および比較例の画像形成方法により、市販プリンター(商品名「EM−930C」:セイコーエプソン製)で中性普通紙(商品名「Xerox4024」:ゼロックス社製)で画像を形成し、この画像を形成した直後の用紙を純水に浸漬した後、室温で放置して乾燥させ、画像のにじみが生じるか否かを調べた。
【0083】
この結果、比較例の画像形成方法で形成した画像では、画像のエッジ部分でにじみが見られたのに対し、実施例の画像形成方法で形成した画像では、にじみはほとんど見られなかった。従って、色材と、保湿剤と、水と、この水が蒸発するに伴い縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを用いて本発明の方法で、画像を形成することにより、画像の耐水性を飛躍的に向上させられることが判る。
【0084】
本実施例では、マジェンタ染料で耐水性向上の効果を示したが、色材が他の染料や顔料でも、同様に耐水性の向上が見られた。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明における画像形成方法によれば、色材と、保湿剤と、水と、この水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクをノズルより吐出して、被プリント材に画像を形成する画像形成方法において、表面が酸性である上記被プリント材を用いることにより、また被プリント材に画像を形成した後、酸と接触させることにより、あるいは、被プリント材に酸を接触させた後、画像を形成することにより、水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質が記録媒体上で速やかに縮重合反応を完結して、色材を速やかにかつ確実に取り囲むことができる。このことにより、上記被プリント材上に形成した画像が水に濡れても、色材がその水中に染み出すことが防止されて、画像の耐水性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成方法に用いたインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
【図2】インクジェット式記録装置のインクジェットヘッドの部分底面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【符号の説明】
A インクジェット式記録装置
1 インクジェットヘッド
14 ノズル
21 圧電アクチュエータ
23 圧電素子
35 インクカートリッジ
41 被プリント材
Claims (6)
- ノズルから被プリント材にインクジェット記録用インクを吐出することにより、該被プリント材に画像を形成する画像形成方法であって、
上記被プリント材は、その表面が酸性のものであり、
上記インクジェット記録用インクは、色材と、保湿剤と、水と、この水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質とを含有するインクであることを特徴とする画像形成方法。 - 被プリント材が普通紙であることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
- 被プリント材の表面のpHが1〜6であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
- 水溶性物質が、加水分解性シラン化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像形成方法。
- 色材と、保湿剤と、水と、この水が蒸発するに伴い縮重合反応を開始する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを用いた画像形成方法であって、
上記インクジェット記録用インクを、ノズルから被プリント材に吐出することにより、該被プリント材に画像を形成する工程と、
上記工程の後に、上記被プリント材上の画像を酸に接触させる工程とを含むことを特徴とする画像形成方法。 - 色材と、保湿剤と、水と、この水が蒸発するに伴い縮重合反応する水溶性物質とを含有するインクジェット記録用インクを用いた画像形成方法であって、
上記インクジェット記録用インクを吐出する被プリント材に、予め酸を接触させる工程と、
上記工程の後に、インクジェット記録用インクを、ノズルから上記被プリント材に吐出することにより、該被プリント材に画像を形成する工程とを含むことを特徴とする画像形成方法。
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