JP4204871B2 - ダンパ及びボックス体開閉装置 - Google Patents

ダンパ及びボックス体開閉装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝撃を弱めたり振動や運動を減衰させたりするダンパ及びこのダンパが組み込まれたボックス体開閉装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、衝撃を弱めたり振動や運動を減衰させたりするダンパ(緩衝装置または振動減衰装置)が各種の機械や装置に広く使用されている。このようなダンパの一例として、自動車のグローブボックスを開閉する際に使用されるダンパが知られている。このダンパとして、エアーを利用したエアーシリンダ式のダンパが知られている。エアーシリンダ式のダンパには、ばねやパッキンを組み込んだタイプ(例えば、特許文献1参照。)と、ばねを用いずにエアーオリフィスを利用したタイプ(例えば、特許文献2参照。)の2種類がある。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−146872号公報(第3頁、図4等)
【特許文献2】
特開2000−65116号公報(第3−4頁、図1、図6等)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した2つのタイプのダンパのうち、ばねやパッキンを組み込んだタイプのダンパは、強い減衰力を得易いが、その構造が複雑である。このため、生産性が良くなく、またコストも高い、という問題がある。
【0005】
一方、ばねを用いずにエアーオリフィスを利用したタイプのダンパは、簡易な構造である。しかし、強い減衰力を得るためにはエアーの容量が大きくなり、このためにサイズの大きなダンパとなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、簡易な構造でコンパクトであっても減衰力の強いダンパ及びこのダンパが組み込まれたボックス体開閉装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のダンパは、
(1)内部に空間が形成された合成樹脂製のケースと、
(2)前記空間を通って前記ケースを貫通した、所定方向に延びる合成樹脂製のロッドと、
(3)該ロッドの外周面のうち前記空間に位置する部分を締め付けることにより該ロッドとの間で摩擦力を発生させる、前記空間に収容された摩擦力発生部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、
(4)前記ケースは、
(4−1)前記ロッドの前記外周面の周方向に並行に延びる溝が、前記空間を取り囲む内壁に、前記ロッドの長手方向に複数並んで形成されたものであり、
(5)前記摩擦力発生部材は、
(5−1)前記複数の溝のうちの少なくとも一つの溝に収容されたリング状の弾性部材と、
(5−2)前記ロッドの外周面のうち前記空間に位置する部分を包み込むと共に前記ロッドの長手方向に延びるスリットが形成された、前記弾性部材で締め付けられる合成樹脂製のスリーブとからなるものであってもよい。
【0009】
また、
(6)前記弾性部材は、その横断面がO状のOリング、X状のXリング、若しくはY状のYリングのうちのいずれかであってもよい。
【0010】
さらに、
(7)前記弾性部材と前記スリーブは、同じ材質で一体に形成されたものであってもよい。
【0011】
さらにまた、
(8)前記ケースは、同一形状の半ケースを2つ合体させることにより形成されたものであってもよい。
【0012】
さらにまた、
(9)前記半ケースは、互いに合体する他方の半ケースに接触する接触面に形成された凸部を有したものであり、
(10)一方の半ケースの凸部を他方の半ケースの前記接触面に接触させると共に、一方の半ケースの前記接触面に他方の半ケースの凸部を接触させて、これら2つの半ケースそれぞれの凸部を溶着させることにより、これら2つの半ケースを合体させるものであってもよい。
【0013】
さらにまた、
(11)前記半ケースは、
(11−1)互いに合体する他方の半ケースに接触する接触面から突出した爪と、
(11−2)この爪と同形状の爪が引っ掛けられて固定される固定用突起とを有するものであり、
(12)一方の半ケースの爪を他方の半ケースの固定用突起に引っ掛けて固定する共に、一方の半ケースの固定用突起に他方の半ケースの爪を引っ掛けて固定することにより、これら2つの半ケースを合体させるものであってもよい。
【0014】
さらにまた、
(13)前記ロッドは、その長手方向における位置によって外径が異なるものであってもよい。
【0015】
また、上記目的を達成するための本発明のボックス体開閉装置は、
(14)上記したダンパが有するロッドの長手方向一端部が回動自在に固定されると共に、前記ロッドが移動するに伴って開閉されるボックス体と、
(15)前記ロッドが貫通しているケースが回動自在に固定されると共に、前記ボックス体を開閉自在に支持する支持体とを備え、
(16)前記ボックス体を開閉する際の外力が前記ダンパによって減衰されることを特徴とするものである。
【0016】
ここで、
(17)前記ロッドは、その長手方向に交差する方向に曲がった屈曲部がその長手方向一端部に形成されたものであり、
(18)前記ボックス体は、屈曲部を回動自在に保持する保持部が該ボックス体の側壁に形成されたものであってもよい。
【0017】
上記のケースに使用される合成樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。
【0018】
また、スリーブに使用される合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらを主成分とする共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のふっ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0019】
また、ロッドに使用される樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポロアミド樹脂などが挙げられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
【0021】
図1から図5までを参照して、本発明のダンパの第1実施形態を説明する。
【0022】
図1(a)は、超音波溶着で合体したケースを備えたダンパを示す平面図であり、(b)は、(a)に示すダンパの側面図であり、(c)は(b)に示すダンパのB―B断面図である。図2(a)は、半ケースの平面図であり、(b)は、(a)を右から見たときの右側面図であり、(c)は、(a)を左から見たときの左側面図である。図3(a)は、図2に示す半ケースの内部を示す正面図であり、(b)は、(a)に示す半ケースのB―B断面図であり、(c)は、(a)に示す半ケースのC―C断面図である。図4(a)は、スリーブを示す側面図であり、(b)は、(a)に示すスリーブのB―B断面図である。図5(a)は、ロッドを示す平面図であり、(b)は、(a)に示すロッドの正面図であり、(c)は、長手方向における位置によって外径の異なるロッドを示す正面図である。
【0023】
ダンパ10は、図1に示すように、内部に空間12aが形成された円筒状で合成樹脂製のケース12と、この空間12aを通ってケース12を貫通する合成樹脂製のロッド40と、ロッド40の外周面のうちケース12の空間12aに位置する部分を締め付けることによりロッド40との間で摩擦力を発生させる摩擦力発生部材50とから構成されている。ロッド40は、矢印R方向(本発明にいう所定方向の一例である)に延びる細長い円柱状のものである。また、摩擦力発生部材50は、ケース12の空間12aに収容されている。
【0024】
ダンパ10のサイズの一例を説明する。
【0025】
図1に示すように、ケース12の長さL1は40mmであり、高さHは27.5mmである。また、ロッド40の長さL2は約110mmであり、外径(太さ)φは約5mmである。また、ロッド40の中心からケース12の固定部14の中央までの距離L3は14mmである。このようにダンパ10はコンパクトなものであり、大別して3つの部材(ケース12、ロッド40、摩擦力発生部材50)からなる簡易な構造である。後述するように、摩擦力発生部材50がロッド40の外周面を締め付ける締付力を変更できるので、小型であっても減衰力の強いダンパ10となる。
【0026】
ケース12は、同一形状の半ケース20を2つ合体させることにより形成されたものである。半ケース20は、図2や図3に示すように、半円筒状のものであり、その内部には、上記の空間12aの半分を構成する半円柱状の凹所20aが形成されている。半ケース20の長手方向一端部にはリング状の固定部22が形成されている。この固定部22は、ダンパ10をドアなどに固定する際に使用されるものである。半ケース20には、互いに合体する他方の半ケース20に接触する接触面24が形成されている。この接触面24には、三角錐状の凸部26が形成されている。この凸部の長さL4は7mmであり、高さhは1mmである。
【0027】
2つの半ケース20を合体させてケース12を作製するときは、一方の半ケース20の凸部26を他方の半ケース20の接触面24に接触させると共に、一方の半ケース20の接触面24に他方の半ケース20の凸部26を接触させて、これら2つの半ケース20,20それぞれの凸部26,26を超音波溶着させる。従って、2つの半ケース20,20を容易且つ強固に合体してケース12を作製できる。
【0028】
半ケース20の凹所20aを取り囲む内壁には、図3に示すように、半円弧状の3つの溝28、28,28が形成されている。各溝28は、ロッド40の外周面の周方向に並行に延びている。また、3つの溝28、28,28は、ロッド40の長手方向(半ケース20の長手方向)に並んで形成されている。従って、2つの半ケース20,20を合体させることによって、3つのリング状の溝が形成されることとなる。これら3つのリング状の溝のうちの少なくとも一つの溝には、Oリング32(図1参照)のようなリング状の弾性部材が収容される。図1では、2つの溝にOリング32を収容している。幾つの溝に弾性部材を収容するかによって、後述するように、ロッド40を締め付ける締付力が変わり、この結果、ダンパ10の減衰力も変わる。なお、ここでは、3つの溝28,28,28を形成したが、2つの溝でも良いし、4つ以上の溝でもよい。また、半ケース20の長手方向両側壁には、ロッド40を通すための半円状の孔30が形成されている。
【0029】
上記した摩擦力発生部材50は、上記したOリング32と円筒状のスリーブ60とから構成されている。上記したOリング32に代えて、横断面がX状のXリング、若しくはY状のYリング等を用いてもよい。このように、断面形状の異なるリング状の弾性部材を適宜に使用することにより、ロッド40を締め付ける締付力が変わり、この結果、ダンパ10の減衰力も変わる。従って、リング状の弾性部材を適宜に選択することにより、ダンパ10の減衰力を所望の値に容易にできる。
【0030】
合成樹脂製のスリーブ60は、図4に示すように円筒状のものであり、ケース12の空間12aのうち溝28よりも内部側の部分に収容される(図1参照)。また、スリーブ60の外周面にはOリング32が接触して押し付けられており、スリーブ60はOリング32で締め付けられている。また、スリーブ60の内面62には、図1に示すように、ロッド40が嵌まり込んでいる。従って、スリーブ60は、ロッド40の外周面のうちケース12の空間12aに位置する部分を包み込んでいる。このため、ロッド40の外周面のうちケース12の空間12aに位置する部分は、Oリング32とスリーブ60で締め付けられている。この締付力は、Oリング32のようなリング状弾性部材の形状や材質を変えたり、スリーブ60の材質や内径を変えたりすることにより、適宜に変更される。
【0031】
また、スリーブ60には、ロッド40の長手方向(スリーブ40の長手方向)に延びるスリット64が形成されている。このスリット64の幅は、Oリング32がスリーブ60を締め付ける締付力によって変わる。なお、スリット64の幅は、ここでは1mm程度とした。
【0032】
上記の例ではOリング32とスリーブ60とを別部材としたが、これらを同じ材質で一体に形成してもよい。この場合は、Oリング32のようなリング状弾性部材とスリーブ60とからなる摩擦力発生部材を一体に形成できるので、その分、部品点数を減らせる。
【0033】
合成樹脂製のロッド40は、図5に示すように、長さL2が約110mmであり、外径φが約5mmの太さの一様な細長い円柱状のものである。ロッド40の長手方向一端部にはリング状の固定部42が形成されている。この固定部42は、通常、衝撃や運動を生じさせる部品・部材に固定される。
【0034】
ロッド40の外径は一様でなくてもよく、その長手方向における位置によって外径が異なるものであってもよい。例えば図5(c)に示すように、固定部42から遠ざかるにしたがって、外径が徐々に大きくなるようにロッド40を形成してもよい。このようにロッド40を形成した場合は、ロッド40の外径が大きい部分(太い部分)がOリング32とスリーブ60とで締め付けられているときはダンパ10の減衰力が強まり、この逆にロッド40の外径が小さい部分(細い部分)がOリング32とスリーブ60とで締め付けられているときはダンパ10の減衰力が弱まる。従って、ロッド40の外径をその長手方向で適宜に変えることによりその減衰力を適宜に変えられることとなる。
【0035】
上記した半ケース20とロッド40はポリアセタール樹脂製であり、スリーブ60はポリエチレン樹脂製であり、Oリング32はNBR(ニトリルブタジエンラバー)製である。しかし、これらの材質に限定されることはなく、ダンパ10の使用環境等に応じて材質は適宜に決められる。
【0036】
上記した半ケース20、Oリング32、ロッド40、スリーブ60を組み立ててダンパ10を製造する手順を説明する。
【0037】
先ず、スリーブ60に2つのOリング32を嵌め込む。この際、Oリング32の位置が溝28の位置に対応するように嵌め込む。また、所望する減衰力によっては、嵌め込むOリング32の数を増減させる。続いて、Oリング32が嵌め込まれたスリーブ60を半ケース20に収める。これにより、半ケース20の溝28に収容される。スリーブ60が収められた半ケース20に他の半ケース20を組み付ける。その後、超音波を利用した溶着よって2つの半ケース20,20を合体させて、Oリング32とスリーブ60が空間12aに収容されたケース12を作製する。その後、ロッド40をスリーブ60の内部空間62に差し込む。以上によりダンパ10が製造される。
【0038】
上記のようにして製造したダンパ10では、ロッド40の長手方向に外力(例えば衝撃や振動)が作用してロッド40がその長手方向に移動する場合、ロッド40とスリーブ60との間に発生する摩擦力は、ロッド40が移動する際の抵抗力となる。このため、ロッド40がその長手方向に移動する運動が減衰する。このように、ロッド40とスリーブ60との間に発生する摩擦力のみで運動を減衰させているので、ダンパ10の部品点数が少なくて済み、簡易な構造のダンパ10が得られる。
【0039】
また、Oリング32とスリーブ60とでロッド40を締め付ける力(締付力)を強めてロッド40とスリーブ60との間に発生する摩擦力を強めたときは、ロッド40の運動(その長手方向への動き)を減衰させる力(減衰力)も強まる。一方、上記の締付力を弱めてロッド40とスリーブ60との間に発生する摩擦力を弱めたときは、上記の減衰力も弱まる。
【0040】
このように、Oリング32とスリーブ60とでロッド40を締め付ける力を適宜に変えることによりロッド40とスリーブ60との間に発生する摩擦力も変わるので、Oリング32やスリーブ60のサイズを大きくしなくても減衰力の強いダンパ10が得られる。また、ロッド40及びスリーブ60の材質の組み合わせを適宜に変えることにより両者間で発生する摩擦力も変わるので、これらのサイズを大きくしなくても減衰力の強いダンパ10が得られる。従って、減衰力の大小に拘わらずにコンパクトなダンパ10が得られる。なお、空気を利用しないので環境温度によって減衰力が変わらない。
[第2実施形態]
【0041】
図6から図8までを参照して、本発明のダンパの第2実施形態を説明する。
【0042】
図6(a)は、弾力性をもつ爪を用いて合体したケースを備えたダンパを示す平面図であり、(b)は、(a)に示すダンパの側面図であり、(c)は(b)に示すダンパのB―B断面図である。図7(a)は、半ケースの平面図であり、(b)は、(a)を右から見たときの右側面図であり、(c)は、(a)を左から見たときの左側面図である。図8(a)は、図7に示す半ケースの内部を示す正面図であり、(b)は、(a)に示す半ケースのB―B断面図であり、(c)は、(a)に示す半ケースのC―C断面図である。これらの図では、図1から図3までに示された構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0043】
ダンパ100が上記のダンパ10とは相違する主な点は、2つの半ケース120を合体させる技術にある。半ケース120には、互いに合体する他方の半ケース120に接触する接触面130から突出した爪122と、この爪122と同形状の爪が引っ掛けられて固定される固定用突起124とが形成されている。半ケース120の接触面130のうち長手方向一端部からは、可撓性を有する一対の爪122が突出しており、この長手方向一端部とは反対側の他端部には、一対の固定用突起124が形成されている。2つの半ケース120,120を合体させる際には、一方の半ケース120の爪122を他方の半ケース120の固定用突起124に引っ掛けて固定すると共に、一方の半ケース120の固定用突起124に他方の半ケース120の爪122を引っ掛けて固定する。
【0044】
また、半ケース120の接触面130のうち長手方向一端部には一対の凸部132が形成されており、この長手方向一端部とは反対側の他端部には、凸部132と同じ形状の凸部が差し込まれる凹部134が形成されている。2つの半ケース120,120を合体させる際には、一方の半ケース120の凸部132を他方の半ケース120の凹部134に差し込むと共に、一方の半ケース120の凹部134に他方の半ケース120の突起132を差し込む。これにより、合体した2つの半ケース120,120がその長手方向にずれることを防止できる。また、凸部132と凹部134は、2つの半ケース120,120を合体させる際の位置決めにもなる。なお、ダンパ120には、ダンパ10の溝28と同様の溝28や、ダンパ10の空間20aと同様の空間20aなども形成されている。
【0045】
ダンパ100の組み立て手順は、ダンパ10の組み立て手順とほぼ同様である。しかし、超音波溶着をせずに、爪122を固定用突起124に引っ掛けるだけなので、その分、組み立て作業は容易になる。また、爪122を固定用突起124から外すことにより、ダンパ100を容易に分解できる。なお、ダンパ100が減衰力を発生する原理は、ダンパ10の場合と同じである。
[第3実施形態]
【0046】
図9と図10を参照して、ダンパ10が組み込まれたボックス体開閉装置について説明する。
【0047】
図9は、本発明のボックス体開閉装置の一例を示す斜視図である。図10は、ボックス体の開閉動作を模式的に示す側面図であり、グローブボックスの開閉動作が二点鎖線で示されている。これらの図では、図1に示された構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0048】
ここでは、ボックス体の一例として自動車のグローブボックスを挙げる。グローブボックス150は、回転軸152を中心にして矢印D方向に開閉するものである。この開閉動作を緩やかに行わせるために、グローブボックス150の側壁の外側にはダンパ10が配置されている。グローブボックス150の側壁の外面には、ロッド40の固定部42が回動自在に固定されている。また、ケース12の固定部14Aは、インストルメントパネル154(本発明にいう支持体の一例である)のうち図10の紙面の手前側の部分)に回動自在に固定されている。グローブボックス150は、インストルメントパネル154に開閉自在に支持されている。
【0049】
グローブボックス150が閉じられているとき(実線で示す位置にあるとき)は、ダンパ10も実線で示す位置に存在している。グローブボックス150が開けられることにより、ダンパ10は固定部14Aを中心にして矢印E方向に回動すると共に、グローブボックス150の動きに連動してロッド40がその長手方向に移動してロッド40の固定部42Aが二点鎖線で示す位置に移動する。グローブボックス150が完全に開いたときは、ロッド40の固定部42Bが二点鎖線で示す位置に移動する。グローブボックス150が閉じるときは、上記の逆の動作となる。即ち、ロッド40がその長手方向に移動するに伴ってグローブボックス150が開閉されるので、グローブボックス150を開閉する際の外力がダンパ10によって減衰される。
【0050】
上記のように、グローブボックス150を開閉する際の外力がダンパ10によって減衰されるので、コンパクトなダンパ10を用いてこのダンパ10が占有するスペースを狭くしても十分な減衰力を確保できる。このため、限られたスペースにグローブボックス150とダンパ10を収容する場合、大きいサイズのグローブボックス150を収容できる。
【0051】
図11を参照して、グローブボックス150の側壁の外面にロッド40の固定部42を回動自在に固定する技術の一例を説明する。
【0052】
図11(a)は、ロッドの長手方向一端部を拡大して示す平面図であり、(b)は、グローブボックスの保持部を示す斜視図である。
【0053】
ロッド40の長手方向(矢印R方向)一端部は、この長手方向に直交する方向に曲がった屈曲部44が形成されている。この屈曲部44は、ロッド40の太さとほぼ同じ太さで円柱状のものである。屈曲部44の先端には、円板状の鍔46が形成されている。
【0054】
グローブボックス150の側壁の外面には、ロッド40の屈曲部44を回動自在に保持する保持部160が形成されている。保持部160は、薄い箱状のものであり、その内部には鍔46が回動自在に嵌め込まれる。保持部160の上部は開口162になっており、鍔46はこの開口162を通って保持部160の内部に嵌め込まれる。開口162の近傍の側壁には傾斜面164が形成されており、屈曲部44を下方に案内する。傾斜面164は、屈曲部44の太さよりもやや広い案内通路166につながっている。この案内通路166の下方には、屈曲部44が回動自在に保持される円形の保持孔168が形成されている。この保持孔168の直径は、鍔46の外径よりも小さい。従って、鍔46がこの保持孔168から抜け出ることはない。
【0055】
ロッド40の屈曲部44を保持部160に回動自在に保持する際は、鍔46を開口162から内部に嵌め込むと共に屈曲部44を案内通路166に嵌め込む。続いて、屈曲部44を保持孔168に嵌め込むことにより鍔46が保持部160の内部に回動自在に嵌め込まれる。これにより、グローブボックス150の側壁の外面にロッド40の固定部42(長手方向一端部)が回動自在に固定される。
【0056】
上記のように、グローブボックス150に保持部160を形成しておき、この保持部160にロッド40の固定部42(長手方向一端部)を回動自在に保持した場合は、限られたスペースにグローブボックス150とダンパ10を収容する場合、いっそう大きいサイズのグローブボックス150をこのスペースに収容できる。
【0057】
上記した例ではグローブボックス150の開閉にダンパ10を用いたが、このダンパ10は、家電、家具、建具等にも用いることができる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のダンパでは、ロッドの長手方向(上記の所定方向)に外力(例えば衝撃や振動)が作用してロッドがその長手方向に移動する場合、ロッドと摩擦力発生部材との間に発生する摩擦力は、ロッドが移動する際の抵抗力となる。このため、ロッドがその長手方向に移動する運動が減衰する。このように、ロッドと摩擦力発生部材との間に発生する摩擦力のみで運動を減衰させているので、ダンパの部品点数が少なくて済み、簡易な構造のダンパが得られる。また、摩擦力発生部材がロッドの外周面を締め付ける力(締付力)を強めてロッドと摩擦力発生部材との間に発生する摩擦力を強めたときは、ロッドの運動(その長手方向への動き)を減衰させる力(減衰力)も強まる。一方、上記の締付力を弱めてロッドと摩擦力発生部材との間に発生する摩擦力を弱めたときは、上記の減衰力も弱まる。このように、摩擦力発生部材がロッドの外周面を締め付ける力を適宜に変えることによりロッドと摩擦力発生部材との間に発生する摩擦力も変わるので、摩擦力発生部材のサイズを大きくしなくても減衰力の強いダンパが得られる。また、ロッド及び摩擦力発生部材の材質の組み合わせを適宜に変えることにより両者間で発生する摩擦力も変わるので、これらのサイズを大きくしなくても減衰力の強いダンパが得られる。従って、減衰力の大小に拘わらずにコンパクトなダンパが得られる。なお、空気を利用しないので環境温度によって減衰力が変わらない。
【0059】
ここで、前記ケースは、前記ロッドの前記外周面の周方向に並行に延びる溝が、前記空間を取り囲む内壁に、前記ロッドの長手方向に複数並んで形成されたものであり、前記摩擦力発生部材は、前記複数の溝のうちの少なくとも一つの溝に収容されたリング状の弾性部材と、前記ロッドの外周面のうち前記空間に位置する部分を包み込むと共に前記ロッドの長手方向に延びるスリットが形成された、前記弾性部材で締め付けられる合成樹脂製のスリーブとからなるものである場合は、摩擦力発生部材が弾性部材とスリーブとからなるので、簡易な構成の摩擦力発生部材が得られる。また、複数の溝のうちの幾つの溝に弾性部材を収容するかによってスリーブを締め付ける締付力を適宜にしかも容易に変更できる。なお、この締付力が変更されても、スリーブにはスリットが形成されているのでスリーブは締付力に応じて変形できる。
【0060】
また、前記弾性部材は、その横断面がO状のOリング、X状のXリング、若しくはY状のYリングのうちのいずれかである場合は、弾性部材としてOリング、Xリング、及びYリングを適宜に使用することにより、ダンパの減衰力を容易に変更できる
【0061】
さらに、前記弾性部材と前記スリーブは、同じ材質で一体に形成されたものである場合は、摩擦力発生部材を一体に形成できるので、その分、部品点数を減らせる。
【0062】
さらにまた、前記ケースは、同一形状の半ケースを2つ合体させることにより形成されたものである場合は、作製し易いダンパが得られる。
【0063】
さらにまた、前記半ケースは、互いに合体する他方の半ケースに接触する接触面に形成された凸部を有したものであり、一方の半ケースの凸部を他方の半ケースの前記接触面に接触させると共に、一方の半ケースの前記接触面に他方の半ケースの凸部を接触させて、これら2つの半ケースそれぞれの凸部を溶着させることにより、これら2つの半ケースを合体させるものである場合は、2つの半ケースを強固に合体できる。
【0064】
さらにまた、前記半ケースは、互いに合体する他方の半ケースに接触する接触面から突出した爪と、この爪と同形状の爪が引っ掛けられて固定される固定用突起とを有するものであり、一方の半ケースの爪を他方の半ケースの固定用突起に引っ掛けて固定する共に、一方の半ケースの固定用突起に他方の半ケースの爪を引っ掛けて固定することにより、これら2つの半ケースを合体させるものである場合は、2つの半ケースを容易に合体できる。
【0065】
さらにまた、前記ロッドは、その長手方向における位置によって外径が異なるものである場合は、ロッドの外径が大きい部分が前記摩擦力発生部材で締め付けられているときはダンパの減衰力が強まり、この逆にロッドの外径が小さい部分が前記摩擦力発生部材で締め付けられているときはダンパの減衰力が弱まるので、ロッドの外径をその長手方向で適宜に変えることによりその減衰力を適宜に変えられる。
【0066】
また、本発明のボックス体開閉装置では、ボックス体を開閉する際の外力が上記のダンパによって減衰されるので、コンパクトなダンパを用いてこのダンパが占有するスペースを狭くしても十分な減衰力を確保できる。このため、限られたスペースにボックス体とダンパを収容する場合、大きいサイズのボックス体を収容できる。
【0067】
ここで、前記ロッドは、その長手方向に交差する方向に曲がった屈曲部がその長手方向一端部に形成されたものであり、前記ボックス体は、屈曲部を回動自在に保持する保持部が該ボックス体の側壁に形成されたものである場合は、ロッドの屈曲部がボックス体の保持部に保持されるので、限られたスペースにボックス体とダンパを収容する場合、いっそう大きいサイズのボックス体を収容できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、超音波溶着で合体したケースを備えたダンパを示す平面図であり、(b)は、(a)に示すダンパの側面図であり、(c)は(b)に示すダンパのB―B断面図である。
【図2】(a)は、半ケースの平面図であり、(b)は、(a)を右から見たときの右側面図であり、(c)は、(a)を左から見たときの左側面図である。
【図3】(a)は、図2に示す半ケースの内部を示す正面図であり、(b)は、(a)に示す半ケースのB―B断面図であり、(c)は、(a)に示す半ケースのC―C断面図である。
【図4】(a)は、スリーブを示す側面図であり、(b)は、(a)に示すスリーブのB―B断面図である。
【図5】(a)は、ロッドを示す平面図であり、(b)は、(a)に示すロッドの正面図であり、(c)は、長手方向における位置によって外径の異なるロッドを示す正面図である。
【図6】(a)は、弾力性をもつ爪を用いて合体したケースを備えたダンパを示す平面図であり、(b)は、(a)に示すダンパの側面図であり、(c)は(b)に示すダンパのB―B断面図である。
【図7】(a)は、半ケースの平面図であり、(b)は、(a)を右から見たときの右側面図であり、(c)は、(a)を左から見たときの左側面図である。
【図8】(a)は、図7に示す半ケースの内部を示す正面図であり、(b)は、(a)に示す半ケースのB―B断面図であり、(c)は、(a)に示す半ケースのC―C断面図である。
【図9】本発明のボックス体開閉装置の一例を示す斜視図である。
【図10】ボックス体の開閉動作を模式的に示す側面図であり、グローブボックスの開閉動作が二点鎖線で示されている。
【図11】(a)は、ロッドの長手方向一端部を拡大して示す平面図であり、(b)は、グローブボックスの保持部を示す斜視図である。
【符号の説明】
10,100 ダンパ
12,120 ケース
12a ケースの内部空間
20 半ケース
26 半ケースの凸部
28 半ケースの溝
32 Oリング
40 ロッド
44 屈曲部
46 鍔
50 摩擦力発生部材
60 スリーブ
122 爪
124 固定用突起
150 グローブボックス
154 インストルメントパネル

Claims (9)

  1. 衝撃を弱めたり振動や運動を減衰させたりするダンパにおいて
    内部に空間が形成された合成樹脂製のケースと、
    前記空間を通って前記ケースを貫通した、所定方向に延びる合成樹脂製のロッドと、
    該ロッドの外周面のうち前記空間に位置する部分を締め付けることにより該ロッドとの間で摩擦力を発生させる、前記空間に収容された摩擦力発生部材とを備え、
    前記ケースは、
    前記ロッドの前記外周面の周方向に並行に延びるリング状の溝が、前記空間を取り囲む内壁に、前記ロッドの長手方向に複数並んで形成されたものであり、
    前記摩擦力発生部材は、
    前記複数の溝のうちの少なくとも一つの溝に収容されたリング状の弾性部材と、
    前記ロッドの外周面のうち前記空間に位置する部分を包み込むと共に前記ロッドの長手方向に延びるスリットが形成された、前記弾性部材で締め付けられる合成樹脂製のスリーブとからなるものであることを特徴とする記載のダンパ。
  2. 前記弾性部材は、
    その横断面がO状のOリング、X状のXリング、若しくはY状のYリングのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のダンパ。
  3. 前記弾性部材と前記スリーブは、
    同じ材質で一体に形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のダンパ。
  4. 前記ケースは、
    同一形状の半ケースを2つ合体させることにより形成されたものであることを特徴とする請求項1,2,又は3に記載のダンパ。
  5. 前記半ケースは、互いに合体する他方の半ケースに接触する接触面に形成された凸部を有したものであり、
    一方の半ケースの凸部を他方の半ケースの前記接触面に接触させると共に、一方の半ケースの前記接触面に他方の半ケースの凸部を接触させて、これら2つの半ケースそれぞれの凸部を溶着させることにより、これら2つの半ケースを合体させるものであることを特徴とする請求項4に記載のダンパ。
  6. 前記半ケースは、
    互いに合体する他方の半ケースに接触する接触面から突出した爪と、この爪と同形状の爪が引っ掛けられて固定される固定用突起とを有するものであり、
    一方の半ケースの爪を他方の半ケースの固定用突起に引っ掛けて固定する共に、一方の半ケースの固定用突起に他方の半ケースの爪を引っ掛けて固定することにより、これら2つの半ケースを合体させるものであることを特徴とする請求項4に記載のダンパ。
  7. 前記ロッドは、
    その長手方向における位置によって外径が異なるものであることを特徴とする請求項1から6までのうちのいずれか一項に記載のダンパ。
  8. 請求項1から7までのうちのいずれか一項に記載されたダンパが有するロッドの長手方向一端部が回動自在に固定されると共に、前記ロッドが移動するに伴って開閉されるボックス体と、
    前記ロッドが貫通しているケースが回動自在に固定されると共に、前記ボックス体を開閉自在に支持する支持体とを備え、
    前記ボックス体を開閉する際の外力が前記ダンパによって減衰されることを特徴とするボックス体開閉装置。
  9. 前記ロッドは、
    その長手方向に交差する方向に曲がった屈曲部がその長手方向一端部に形成されたものであり、
    前記ボックス体は、
    屈曲部を回動自在に保持する保持部が該ボックス体の側壁に形成されたものであることを特徴とする請求項8に記載のボックス体開閉装置。
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