JP4203220B2 - 積層フィルム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、接着層を有する積層フィルムに関し、特に、ラミネートまたは熱プレス等によって加熱接着される積層フィルム、例えば、電気機器や電子機器等の配線用電線等の芯線を被覆するために用いられる積層フィルムに関する。
【0002】
【従来技術】
熱溶融して接着する接着層を有する積層フィルムは、一般に基材と接着層とからなるが、機械的強度および電気絶縁性を考慮して、基材として2軸延伸ポリエステルフィルムが用いられている。例えば、積層フィルムに難燃性を付与する必要がある場合には、接着層に難燃剤が添加され、隠蔽性を付与する必要がある場合には、接着層に顔料または染料等が添加される。
【0003】
積層フィルムは、電気機器、電子機器等の配線に用いられるフラット電線等の構成部材として有用であり、芯線を被覆して絶縁保護するために用いられる。 フラット電線等は、通常、加熱ロールまたは加熱プレス機を用いて被覆される被覆体と積層フィルムとを熱圧着することにより一体化して得られる。このため、積層フィルムには、加熱により溶融して一体化しうる接着層が必要である。接着層を構成する材料としては、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などを主成分とするホットメルト系接着剤が使用されている。
【0004】
接着層を構成するために一般的に使用されているポリエステル系樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が0℃以上のものであり、室温近辺のものが多く使用されてきた。ところが、ガラス転移温度を境にして接着性が著しく低下することが認められており、冬季や低温度域での使用等において、積層フィルムが被着体から剥離してしまうことがあった。特に、近年においては品質上の観点から、低温時の接着性が要求されるようになってきた。
【0005】
また、積層フィルムの用途は広がりつつあり、例えば100℃での使用のように高温環境下での使用も要求されるようになってきた。従来の積層フィルムでは、高温環境下におかれると、接着層における接着剤の凝集力が低下したり、接着剤が流動化しやすくなったりした。そのため、信号線やICカードに埋め込まれたチップ等が所定位置を保持できなかったり、被覆用積層フィルムの基材から接着剤等がはみ出したり、場合によっては信号線の短絡が生じたり、積層フィルムが剥離した。
【0006】
高温環境下での使用を考慮すると、接着層に熱硬化型接着剤を用いることが考えられるが、かかる熱硬化型の接着剤を用いると、ハンドリング等が困難で、加工特性、生産性等に問題があった。すなわち、100℃での使用に耐える積層フィルムの場合には、130℃以上の融点を有する接着剤材料であれば使用可能であるが、加工温度条件を高くしなければならず、基材として2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)等を使用する場合には、基材の変形が生じる等の問題が発生した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、耐熱性および加工特性に優れ、かつ低温環境下においても優れた接着性能等を有する積層フィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層フィルムは、基材の少なくとも一方の面に熱溶融して接着する接着層を有する積層フィルムであって、前記接着層が低温接着性を発揮することを特徴とする。
本発明の別の態様の積層フィルムは、基材の少なくとも一方の面に熱溶融して接着する接着層を有する積層フィルムであって、前記接着層はガラス転移温度(Tg)が−22℃以上、0℃以下の範囲内で、融点(Tm)が100℃以上、130℃以下の範囲内であるポリエステル系ホットメルト樹脂を使用して形成されていることを特徴とする。
ここで、前記接着層は、耐ブロッキング性をさらに有することができる。
本発明のさらに別の態様の積層フィルムは、基材の少なくとも一方の面に熱溶融して接着する接着層を有する積層フィルムであって、接着層を構成する接着剤が、ポリエステル系ホットメルト樹脂とポリオレフィン系重合体とを重量比で、51:49〜99:1の割合で含有する樹脂を主成分とすることを特徴とする。ここで、前記接着層を構成する接着剤は、ポリエステル系ホットメルト樹脂とポリオレフィン系重合体とを重量比で、60:40〜90:10の割合で含有する樹脂を主成分とすることができる。
また、前記ポリエステル系ホットメルト樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が−30〜40℃の範囲内であることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の積層フィルムは、基材となるプラスチックフィルムに接着層を設けた積層フィルムである。
本発明において、接着層は低温で接着性を発揮する機能を有する。接着層は、特定のホットメルト接着剤、すなわち二塩基酸とグリコールとの重縮合ポリマーであるポリエステル系ホットメルト樹脂を主成分として含有する。
【0010】
接着層を構成する接着剤がポリエステル系ホットメルト樹脂のみを有効成分とする場合には、ポリエステル系ホットメルト樹脂のガラス転移温度(Tg)が−22℃〜0℃の範囲であることが必要であるが、−20℃〜−10℃の範囲内にあることが好ましい。また、かかるポリエステル系ホットメルト樹脂は、融点(Tm)が100℃以上、130℃以下の範囲内にあることが必要であり、105℃以上、120℃以下の範囲内にあることが好ましい。ガラス転移温度が−22℃未満であると、通常、融点が低下して耐熱性が低下する。又、ブロッキングを生じやすく、取り扱い不良であり、0℃より高いと、低温域での接着性能が低下する。また、融点が100℃未満であると、耐熱性が低下し、130℃より高いと貼り合わせが難しい。
【0011】
ポリエステル系ホットメルト樹脂にポリオレフィン系重合体を含有する樹脂を有効成分とすることもできる。
すなわち、接着剤のガラス転移温度以上の環境下では、ハンドリング特性が低下し、ブロッキングが発生してフィルム同士が付着することがある。低温時の接着性能等を確保するため、ガラス転移温度の低い接着剤を用いる場合にはガラス転移温度以上の温度で加工等を施すことが多くなり、使用時にブロッキングが発生しやすくなる。ところが、ポリエステル系ホットメルト樹脂にポリオレフィン系重合体を49〜1重量%の割合で含有する樹脂を有効成分とすることにより、ハンドリング特性の低下をおさえることができる。ただし、ポリエステル系ホットメルト樹脂とポリオレフィン系重合体の合計が100重量%となるものとする。
本発明においては、ポリエステル系ホットメルト樹脂:ポリオレフィン系重合体が重量比で60:40〜90:10の割合であることがより好ましい。
【0012】
ポリオレフィン系重合体を配合する接着剤の場合には、ガラス転移温度(Tg)が−30℃〜40℃の範囲内のポリエステル系ホットメルト樹脂を使用することができる。ただし、非晶性材料では0〜40℃の範囲内のものが好適である。また、かかる構成、すなわちポリオレフィン系重合体を配合する場合には、ガラス転移温度が40℃を超えるものでも使用することはできるが、40℃を超える状態での材料の保管や使用は現実的ではなく、実際問題としてガラス転移温度が40℃を超えるものを使用することは稀であろう。また、ガラス転移温度の高いポリエステル系ホットメルト樹脂を使用した場合には低温時の接着性に問題が発生することもあるので、使用には注意を要する。
【0013】
ポリエステル系ホットメルト樹脂の原料モノマーとして用いられる、二塩基酸の具体例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ポリオキシレングリコール等が挙げられる。
本発明に用いられるポリエステル系ホットメルト樹脂は、例えば市販のものを入手することができ、具体的には、旭化成工業(株)製の商品名「ハーディックA5300」、東洋紡績(株)製の商品名「バイロンGM990」、「バイロンGM900」、東亜合成(株)製の商品名「アロンメルトPES111」、「アロンメルトPES120E」、「アロンメルトPES120H」、富士写真フィルム(株)製の商品名「スタフィックス−PLC」、東レ(株)製の商品名「ケミットR248」等を商業的に入手することができる。
【0014】
接着層がポリエステル系ホットメルト樹脂の他にポリオレフィン系樹脂を有効成分として含有する態様では、本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂として、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体等を単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。また、酸変性等の接着性機能を付与したものを使用することもできる。
【0015】
本発明の積層フィルムを被覆した製品等には難燃性が要求される場合が多い。従って、積層フィルム自体が自己消火性となるように、積層フィルムの接着層に難燃剤が配合されていることが好ましい。配合される難燃剤としては臭素系、塩素系等のハロゲン系の化合物を主体とした化合物が特に好ましく用いられるが、燐系、窒素系、金属水酸化物系等の公知の添加型難燃剤を主体とする混合物を単独でまたはそれらの混合で、接着剤の物性に悪影響を与えない範囲内の添加量で用いることができる。
【0016】
上記接着剤は加工の際、適度な流動性を示すことが加工性の点から好ましい。適度な流動性を示す接着剤の溶融粘度値は、測定温度160℃、剪断速度10sec−1での高架式フローテスターによる測定値が3,000〜50,000ポイズの範囲内のものが好ましい。接着剤の溶融粘度が3,000ポイズ以上であれば、加熱加圧して加工する際、基板となるプラスチックフィルムから接着剤がはみ出すこともないので、製造中にトラブルが発生する危険性がない。また、溶融粘度が50,000ポイズ以下であれば、流動性も十分であるので、被覆体と積層フィルムとの間に空隙が生ずる等の不具合が生じることもない。
【0017】
本発明において、基材となるプラスチックフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルペンテン(三井石油化学工業社製、商品名「TPX」)、延伸されたポリプロピレン(OPP)、未延伸のポリプロピレン(CPP)等から製造されるフィルムが挙げられるが、機械的強度および耐熱性の点からポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)からなる積層フィルムが好ましく、特に2軸延伸されたPETフィルムまたは2軸延伸されたPENフィルムが好ましい。
【0018】
本発明において、基材の厚さは特に制限されるわけではないが、例えば12〜250μmであることが好ましい。
【0019】
なお、一般的にフィルムとシートとの境界は定かでなく明確に区別することは困難であり、本発明において「フィルム」または「シート」という場合には、フィルムおよびシートの両方を含むものとする。
【0020】
以下に本発明の積層フィルムの製造方法を説明する。
本発明の積層フィルムは、基材上に接着層が設けられている。接着層を設ける方法としては、樹脂等を溶剤に分散して基材上に塗布して製造する、いわゆる溶媒コート法と、溶剤を介在させない、いわゆる無溶媒コート法とがあるが、本発明においては、いわゆる無溶媒コート法により製造することが好ましい。
【0021】
本発明に好ましく用いられる無溶媒コート法には、通常のコーティング方法が適用可能であり、接着剤の溶融粘度や熱安定性などに応じていかなるコーティング方法を適用するか決定すればよい。例えば、押出機やニーダー等で接着剤の各材料を均一に混練し、その後いったん冷却する。これをホットメルトアプリケーター等で再加熱し、リップコーター等で均一に混練しつつ同時に基材上にコーティングする方法等が挙げられる。または、接着剤の各材料を均一に混練してフィルム状に製膜した後、このフィルムの膜と基材とを貼り合わせて積層フィルムを形成することもできる。貼り合わせは、例えば加熱圧着等により行うことができる。
【0022】
基材と接着層との接着性を改良するため、基材の接着層側の面にコロナ放電処理を施してもよく、必要に応じて基材上にアンカーコート層を設けることもできる。アンカーコート層に用いられるアンカーコート用接着剤としては、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル糸、PVC−酢酸ビニル共重合体系等の接着剤が挙げられる。また、アンカーコート用接着剤の塗布にはロールコート法、グラビアコート法等が好ましく用いられる。本発明においては、基材を延伸する前にアンカーコート用接着剤の層を積層して、基材とアンカーコート用接着剤の層を同時に延伸することによりアンカーコート層を形成することもできる。アンカーコート層の厚さは一般に約0.1〜5μmの範囲であることが好ましい。本発明において接着層の厚さは、基材および積層フィルムが適用される対象物の厚さを考慮すると、基材の厚さの0.5〜5.0倍の範囲内であることが好ましい。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例等で使用されるポリエステル系ホットメルト樹脂のガラス転移温度と融点は以下のようにして測定した。
ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)の測定
ポリエステル系ホットメルト樹脂のガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)を示差走査熱量計(パーキンエルマー製)を用いて、温度−40℃〜200℃、走査速度10℃/minで測定した。
【0024】
実施例I−1
接着層の材料として、表1に示すような、ガラス転移温度(Tg)が−4℃、融点(Tm)が113℃のポリエステル系ホットメルト樹脂、商品名「ハーディックA5300」(旭化成工業(株)製)を押し出し機に投入してシート状に押し出した後、キャストロールで冷却して、厚さ200μmの接着層用フィルムを形成した。
ポリウレタン系アンカーコートを施した基材(100μm厚の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)と形成された接着層用フィルムとを、接着剤の融点より20℃高い温度に設定されたラミネータロールを用いて貼り合わせて、接着層を有する積層フィルムを作製した。
得られた積層フィルムについて、以下に示す評価を行った。その結果を表1に示す。なお、得られた低温接着性1、低温接着性2、耐熱性および貼り合わせ性の評価結果について更に総合判定も行い、これらの評価の全てが、良好なレベル以上であるものを記号「○」、やや良好なレベル以上であるものを「△」、実用不可能なレベルのものを「×」で示した。
【0025】
低温接着性1,低温接着性2,耐熱性の評価
得られた積層フィルム2枚を接着層同士が向かい合うように重ねて、一本が加熱した金属ロールであり他の一本が加熱してないゴムロールからなる一組のロール(金属ロール/ゴムロール)の間に挟み込み、ロールニツプ圧力が10kg/cm(線圧)、貼り合わせ速度が0.5m/分の条件下で貼り合わせて、評価用サンプル1を作成した。ただし貼り合わせ温度が接着剤の融点(Tm)より20℃高い温度条件で貼り合わせた。
【0026】
(1)低温接着性1の評価
作成した評価用サンプル1を10mm幅に切断し、これについて、−20℃の雰囲気下で引張試験機(恒温槽付き材料試験機「201X」、(株)インテスコ製)を用い、剥離速度10mm/minで、180度剥離を行った。
ただし、測定結果を下記に示す評価基準に基づいて記号で示した。本発明においては、測定値が200g/cm以上であれば実用上問題のないレベルである。
評価基準:
300g/cm以上 「A」
200g/cm以上、300g/cm未満 「B」
200g/cm未満 「C」
(2)低温接着性2の評価
作成した評価用サンプル1を10mm幅に切断し、このサンプルについて、0℃の雰囲気下で引張試験機(恒温槽付き材料試験機「201X」、(株)インテスコ製)を用い、剥離速度10mm/minで、180度剥離を行った。
ただし、測定結果を下記に示す評価基準に基づいて記号で示した。本発明においては、測定値が200g/cm以上であれば実用上問題のないレベルである。
評価基準:
500g/cm以上 「A」
300g/cm以上、500g/cm未満 「B」
200g/cm以上、300g/cm未満 「C」
200g/cm未満 「D」
(3)耐熱性の評価
作成した評価用サンプル1を60mm×90mmの大きさに切り出し、100℃のオーブン中に斜め45度の角度で立てかけて、接着剤のフロー、サンプルの反りがあるか否かを調べた。この場合、接着剤のフローおよびサンプルの反りのいずれも認められなかったときを「良好」、接着剤のフローまたはサンプルの反りのいずれか1つでも認められたときには、「不良」と評価した。
【0027】
貼り合わせ特性の評価
得られた積層フィルムを幅30cm、長さ40cmに切断した。切断された積層フィルムを2枚、接着層同士が向き合うように重ね合わせて、プレス温度120℃、圧力30kg/cm2の加圧下で5分間保持した後、室温まで冷却して評価用サンプル2を作成した。
得られた評価用サンプル2について、23℃の雰囲気下で引張試験機(恒温槽付き材料試験機「201X」、(株)インテスコ製)を用い、剥離速度10mm/minで、180度剥離を行った。
ただし、測定結果を下記に示す評価基準に基づいて示した。
評価基準:
接着面同士の剥離が凝集破壊となった場合 良好
1000g/cm以上 良好
500g/cm以上、1000g/cm未満 やや不良
500g/cm未満 不良
【0028】
実施例I−2〜5および比較例I−1〜3
実施例I−1において、接着層に用いられる接着剤の種類を表1に示すように変更した以外は実施例I−1と同様にして積層フィルムを作成した。
また、得られた積層フィルムについて実施例I−1と同様に評価を行った。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から明らかなように、実施例I−1〜I−5の積層フィルムは、0℃以下の低温度領域において優れた接着性を示し、100℃の高温度領域において接着剤のフローも基材の変形も生じず、かつ120℃の温度で良好に貼り合わせることができることが分かった。すなわち、これらの積層フィルムは、評価のいずれにおいても実用可能なレベル以上のものであり、総合判定において良好なレベル以上を示すことが分かった。
【0031】
実例II−1
接着層の材料として、表2に示すような、ガラス転移温度(Tg)が−17℃のポリエステル系ホットメルト樹脂である商品名「バイロンGM900」(東洋紡(株)製)と、低密度ポリエチレンとを80:20の重量比でプリブレンドしてから、これを押し出し機に投入してシート状に押し出した後、キャストロールで冷却して、厚さ50μmの接着層用フィルムを形成した。
ポリウレタン系アンカーコートを施した基材(100μm厚の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)と形成された接着層用フィルムとを、接着剤の融点より20℃高い温度に設定されたラミネータロールを用いて貼り合わせて、接着層を有する積層フィルムを作製した。
得られた積層フィルムについて、以下に示す評価を行った。その結果を表2に示す。なお、得られた室温における貼り合わせ性及びアンチブロッキング性の評価結果について更に総合判定も行い、これらの評価の全てがレベル「B」以上であるものを記号「○」、レベル「C」を含むものを「×」で示した。
【0032】
貼り合わせ特性a,bの評価
得られた積層フィルムを幅30cm、長さ40cmに切断した。切断された積層フィルムを2枚、接着層同士が向き合うように重ね合わせて、プレス温度120℃、圧力30kg/cm2の加圧下で5分間保持した後、室温まで冷却して評価用サンプルaを作成した。
また、得られた積層フィルムを幅30cm、長さ40cmに切断したものの接着層を、未処理のPETフィルム(100μm)に重ね合わせて、上記と同様のプレス温度、圧力で、5分間保持した後、室温まで冷却して評価用サンプルbを作製した。
得られた2種類の評価用サンプルa、bそれぞれについて、23℃の雰囲気下で引張試験機(恒温槽付き材料試験機「201X」、(株)インテスコ製)を用い、剥離速度10mm/minで、180度剥離を行い、貼り合わせ特性a,bの評価を行った。
ただし、測定結果を下記に示す評価基準に基づいて示した。
評価基準:
接着面同士の剥離が凝集破壊となった場合 A
800g/cm以上 A
400g/cm以上、800g/cm未満 B
400g/cm未満 C
【0033】
アンチブロッキング性c,d(耐ブロッキング性c,d)の評価:
得られた積層フィルムを幅5cm、長さ20cmに切断した。切断された積層フィルムを2枚、接着層面同士が向き合うように重ね合わせて、温度40℃のオーブン中に、5kgの荷重をかけて24時間保持した後、取り出して評価用サンプルcを作成した。
また、切断された積層フィルムの接着層面を未処理のPETフィルム(100μm)に重ねたものを、温度40℃のオーブン中に、5kgの荷重をかけて24時間保持した後、取り出して評価用サンプルdを作成した。
得られた2種類の評価用サンプルc、dについて、23℃の雰囲気下で引張試験機(恒温層付き材料試験機「201X」、(株)インテスコ製)を用い、剥離速度10mm/minで180度剥離を行い、アンチブロッキング性c,dの評価を行った。
ただし、アンチブロッキング性の評価は下記基準に基づいて示した。
評価基準:
100g/cm未満 A
100g/cm以上、300g/cm未満 B
300g/cm以上 C
【0034】
実例II−2〜8
実例II−1において、接着層に用いられる接着剤の種類を表2に示すように変更した以外は実例II−1と同様にして積層フィルムを作成した。
また、得られた積層フィルムについて実例II−1と同様に評価を行った。その結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2から明らかなように、実例II−1〜II−5の積層フィルムは、ガラス転移温度の低い材料を有する接着剤においてもアンチブロッキング性を維持しつつ、接着性能を有することが分かった。すなわち、これらの積層フィルムは、総合判定においても優れた結果を示すことが分かった。
一方、ポリオレフィン系重合体を50重量%以上配合した接着剤を用いた実例II−6および実例II−7は貼り合わせ性が劣っており、十分な接着強度が得られなかった。特に、貼り合わせ特性bにおいては、さらに接着強度の低下がみられた。ポリオレフィン系重合体を含有しない実例II−8は耐ブロッキング性が劣っていることが分かった。
【0037】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明の積層フィルムは低温接着性および耐熱性に優れているので、本発明の積層フィルムを適用した製品は低温条件下でも、高温条件下でも剥離や変形等を生じることなく好適に使用できる。また、本発明の積層フィルムは加工時の貼り合わせ特性に優れており、様々な分野で例えば被覆材料として用いられる。さらにまた、本発明によれば、耐ブロッキング性にも優れた積層フィルムを得ることができる。
Claims (4)
- 基材の少なくとも一方の面に熱溶融して接着する接着層を有する積層フィルムであって、前記接着層を構成する接着剤が、ポリエステル系ホットメルト樹脂と、ポリオレフィン系重合体とを重量比で、51:49〜99:1の割合で含有する樹脂を主成分とすることを特徴とする芯線被覆用積層フィルム。
- 前記接着層を構成する接着剤が、ポリエステル系ホットメルト樹脂とポリオレフィン系重合体とを重量比で、60:40〜90:10の割合で含有する樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の芯線被覆用積層フィルム。
- 前記ポリエステル系ホットメルト樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が−30℃〜40℃の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の芯線被覆用積層フィルム。
- 前記接着層が、耐ブロッキング性をさらに有することを特徴
とする請求項1から3のいずれか一項に記載の芯線被覆用積層フィルム。
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