JP4200537B2 - 高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉とそのオリゴ糖組成物及びそれらの製造方法 - Google Patents

高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉とそのオリゴ糖組成物及びそれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリン酸カルシウムの沈澱形成を阻害する作用、すなわちCa可溶化作用に優れたリン酸結合糖質、特にリン酸結合オリゴ糖を含みCa可溶化活性がCa可溶化係数として10以上であるオリゴ糖組成物及びそれらの製造方法、並びに前記リン酸結合オリゴ糖を生成するリン酸結合澱粉及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カルシウムの摂取不足による国民の健康問題がクローズアップされており、高齢化社会の出現に伴う骨粗鬆症などの罹患者が急増している。しかし、食品に含まれるカルシウムの腸内における吸収が低いこともよく知られている事実である。成人男子では牛乳、炭酸カルシウム、小魚、野菜のカルシウム吸収率は53%,42%,34%,18%と言われている。
カルシウムの吸収を高める物質としてカゼインホスホペプチド(CPP)が知られている。CPPはペプチドに結合したリン酸基がカルシウムと結合することにより、カルシウムを不溶性の塩に変えないで、腸内でのカルシウムの吸収を促進するとされている(特公平3-58718号公報,内藤博,化学と生物,18, 551-558, 1980)。
【0003】
釜阪らは結合リンを含む馬鈴薯澱粉に注目し、酵素分解によってリン酸の結合したオリゴ糖を分取し、得られたリン酸結合オリゴ糖 (Phosphorylated Oligosaccharides,以下「POS」ともいう) がリン酸カルシウムの沈澱形成を阻害する作用のあることを見出した(Biosci. Biotech. Biochem., 59(8), 1412-1416, 1995;特開平8-104696号公報)。
【0004】
馬鈴薯澱粉に結合リンが含まれていることは古くから知られており、檜作らは馬鈴薯澱粉をα−アミラーゼで分解して得たリミットデキストリンをOH型アニオン交換樹脂に吸着させてから溶出し、ホスホデキストリン(Phosphodextrin)を調製している。得られたホスホデキストリンはさらにグルコアミラーゼで分解してからDEAE- Sephadex A-25 のカラムに吸着させ、洗浄によってブドウ糖を除去した後、リン酸オリゴ糖(Phosphooligosaccharide,Die Starke, 22, 338-343, 1970)を溶出して単離している。
【0005】
POSは馬鈴薯澱粉のα−アミラーゼなどによる酵素分解物から得られることは公知の事実である。しかし、従来のPOSの生産法は実験室レベルの調製法であり、工業的な製造方法は全く確立されていなかった。本発明者らは安価で大量生産が可能なPOSの製造方法について鋭意研究し、先にPOSの工業的な製造方法を発明して特許出願を行なっている(特願平8-240827)。
【0006】
本発明者らによる先願発明の製造法は、純度の極めて高いPOSが工業的に安価で大量生産される利点を有している。しかしながら、植物原料から得られる天然の澱粉に含まれる結合リンは0.1%未満と少ないため、たとえば馬鈴薯澱粉から得られるPOSの収率は1%程度である。従って、大量のPOSを製造するには化学的に合成したリン含量の多いリン酸結合澱粉の方が収率を高くすることができる点で有利である。
本発明者らは各種POSのCa可溶化作用について詳細に調べる中で、リン酸結合澱粉をα−アミラーゼのみで分解処理して得られるオリゴ糖組成物が、先願発明の方法で得たPOSに比べて極めて強いカルシウム可溶化活性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らが開発した先願発明の製造方法では、馬鈴薯澱粉をα−アミラーゼで分解処理して得られるオリゴ糖組成物を脱色処理、脱塩分離、膜処理、脱色処理して純度の高いPOSの得られることが特徴である。
しかしながら、本発明者らによる先願発明の方法では馬鈴薯澱粉から得られるPOSの収率は1%未満である。しかも、得られる純度の高いPOSのCa可溶化活性を後に詳述する方法で測定すると、Ca可溶化係数として1〜2であった。
【0008】
一方、Ca吸収促進剤として市販されているCPP II及びIII(明治製菓製)のCa可溶化活性は、Ca可溶化係数としてそれぞれ19及び79である。
また、従来技術では、純度が高く、Ca可溶化活性の高いPOSを得るにはリン酸結合澱粉をα−アミラーゼで加水分解した後、さらにグルコアミラーゼやその他の澱粉分解酵素を加えて加水分解し、結合リンを含まないブドウ糖やオリゴ糖をイオン交換樹脂などで分離してPOSの純度を高めることが必要であった。
【0009】
本発明者らは、高いCa可溶化活性を持つPOSのより簡便な製造方法を得るべく検討を進めた結果、リン酸結合澱粉を原料として、一つの酵素、即ちα−アミラーゼのみで分解処理するだけで、本発明者らによる先願発明の方法で得た純度の高いPOSに比べて10倍以上もCa可溶化活性の高いPOSを含むオリゴ糖組成物が容易に得られることを見出した。
本発明は、リン酸結合澱粉をα−アミラーゼのみで処理して得られ、かつCPP IIと同等以上のCa可溶化活性を示すPOSを含むオリゴ糖組成物及びそれらの製造方法、並びに前記オリゴ糖組成物を生成するリン酸結合澱粉及びそれらの製造方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) リン酸結合澱粉であって、該澱粉にα−アミラーゼのみを作用させて得られるオリゴ糖組成物のCa可溶化活性がCa可溶化係数として10以上であるリン酸結合澱粉。
(2) 全固形分重量に対して結合リンを1重量%以上含むリン酸結合澱粉であって、該澱粉にα−アミラーゼのみを作用させて得られるオリゴ糖組成物のCa可溶化活性がCa可溶化係数として10以上であるリン酸結合澱粉。
【0011】
(3) リン酸結合澱粉がリン酸エステル澱粉または尿素リン酸エステル澱粉である(1)または(2)のリン酸結合澱粉。
(4) 澱粉にリン酸及び/またはその塩を混合し糊化してから乾燥し、焙焼して得られる(1)または(2)のリン酸結合澱粉。
(5) 澱粉にリン酸及び/またはその塩を混合し、その水分を10重量%未満となるまで乾燥してから焙焼して得られる(1)〜(4)のリン酸結合澱粉。
【0012】
(6) 澱粉にリン酸及び/またはその塩を混合し糊化してから乾燥し、焙焼する(4)のリン酸結合澱粉の製造方法。
(7) 澱粉にリン酸及び/またはその塩を混合し、その水分を10重量%未満となるまで乾燥してから焙焼することを含む(5)のリン酸結合澱粉の製造方法。
(8) リン酸結合オリゴ糖を含み、Ca可溶化活性がCa可溶化係数として10以上であるオリゴ糖組成物。
(9) 平均重合度が8〜50である(8)のオリゴ糖組成物。
【0013】
(10) (1)〜(5)のリン酸結合澱粉にα−アミラーゼを作用させて得られる(8)または(9)のオリゴ糖組成物。
(11) (1)〜(5)のリン酸結合澱粉にα−アミラーゼを作用させ、次いで澱粉分解酵素を少なくとも1種作用させて得られるリン酸結合オリゴ糖を含むオリゴ糖組成物。
(12) (1)〜(5)のリン酸結合澱粉にα−アミラーゼを作用させることを含む(8)
〜(10)のオリゴ糖組成物の製造方法。
【0014】
(13) (1)〜(5)のリン酸結合澱粉にα−アミラーゼを作用させ、次いで澱粉分解酵素を少なくとも1種作用させることを含む(11)のオリゴ糖組成物の製造方法。
(14)得られたオリゴ糖組成物を脱塩して全リンに対する結合リンの割合を80%以上とすることをさらに含む(12)または(13)の方法。
(15) (1)〜(5)のリン酸結合澱粉、及び/または(8)〜(11)のオリゴ糖組成物を含む食品、飲料、糊剤、混和剤、塗料、顔料、肥料またはそれらの添加用組成物。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明者らはすでに、馬鈴薯澱粉をα−アミラーゼで100℃以上の温度で分解した後、糖化酵素でリン酸が結合していないオリゴ糖を分解してPOSを生成させてから、塩基性アニオン交換樹脂やルーズRO膜、活性炭などの精製処理によって純度の高いPOS製品を製造する方法を開発し、特許出願している。
しかし、馬鈴薯澱粉に含まれる結合リンは0.05〜0.1%(全固形分重量に対するリン重量W/W%,以下同じ)でしかなく、馬鈴薯澱粉から得られるPOSの収率は1%程度である。従って、大量のPOSを製造するには化学的にリン酸基を結合したリン含量の多いリン酸結合澱粉が有利である。
【0016】
食品添加物として認可されているリン酸結合澱粉は、澱粉リン酸エステルナトリウムであり、結合リンとして0.2〜3重量%のリンを含み、遊離のリン、すなわち無機リンの含量は全体のリン(全リン)の20%以下と規定されている。本発明では、原料及びその製造方法の如何を問わず、α−アミラーゼのみで分解処理するだけでCa可溶化活性がCa可溶化係数として10以上であるPOSを含むオリゴ糖組成物及び前記オリゴ糖組成物を生成させるリン酸結合澱粉が全て対象となる。本発明で対象となるリン酸結合澱粉はリン酸エステル澱粉及び尿素リン酸エステル澱粉である。
【0017】
リン酸結合澱粉の原料となる澱粉はコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉など広く一般に利用されている植物起源の澱粉だけでなく、いずれの起源の澱粉でも使用することができる。
リン酸結合澱粉の合成方法は特に限定されないが、リン酸結合澱粉の合成には通常、澱粉スラリーにリン酸及び/またはその塩、及び尿素(尿素リン酸エステル澱粉合成の場合)を混合してから脱水し、乾燥・焙焼する方法、澱粉の脱水ケーキにリン酸及び/またはその塩、及び尿素(尿素リン酸エステル澱粉合成の場合)溶液を噴霧して乾燥・焙焼する方法や澱粉乾粉にリン酸及び/またはその塩、及び尿素(尿素リン酸エステル澱粉合成の場合)溶液を混合して乾燥・焙焼する方法が用いられる。
【0018】
澱粉のスラリー濃度は均一な流動性を維持する観点から、通常30〜50重量%、好ましくは35〜45重量%である。
リン酸及び/またはその塩としては、リン酸、及びリン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウムなどのリン酸ナトリウム塩やリン酸一カリウム、リン酸二カリウムなどのリン酸カリウム塩やリン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウムなどのリン酸アンモニウム塩など広くリン酸塩が使用できる。
【0019】
リン酸及び/またはその塩の添加量はその種類によって異なるが、澱粉の重量に対して通常0.5〜240重量%であり、好ましくは5〜40重量%である。なお、尿素リン酸エステル澱粉の合成にはリン酸塩の他に尿素の添加が必要である。尿素の添加量は澱粉の重量に対して通常0.5〜240重量%であり、好ましくは5〜60重量%である。
pHを調整するために、酸、アルカリを使用することができる。酸としては塩酸、硫酸、亜硫酸などの酸を、アルカリとしてはNaOH、KOH、Ca(OH)2などを用いることができる。
【0020】
澱粉とリン酸及び/またはその塩との混合物(尿素リン酸エステル澱粉の合成の場合には尿素も含む)は水分を除くため乾燥するのが望ましい。本発明者らは乾燥後の水分が重要であることを見出した。すなわち、乾燥後の水分が低い程、Ca可溶化活性の高いリン酸結合澱粉が得られる。実際的には、乾燥後の水分は10重量%未満であることが好ましい。
焙焼の条件としては、焙焼温度が高くなるほど、焙焼時間が長くなるほど結合リンは増加するが、焙焼品の色が赤褐色となり、Ca可溶化活性は結合リンの増加に比例するとは限らない。従って、焙焼の条件は温度としては、通常100〜250℃、好ましくは130〜200℃の温度で、焙焼時間としては、通常5分〜4時間、好ましくは10〜120分の範囲で加熱するのが好ましい。
【0021】
上述の合成法以外にも、本発明者らはリン酸エステル澱粉の合成法を種々検討し、澱粉とリン酸及び/またはその塩とを混合した後、糊化・乾燥してから焙焼する方法を開発した。糊化・乾燥法としては、たとえば、澱粉スラリーにリン酸及び/またはその塩を加えて溶解した後、ドラムドライヤーで糊化・乾燥する方法や、澱粉乾粉にリン酸及び/またはその塩を加えて必要に応じて水を加えながらエクストルーダー処理して糊化・乾燥する方法などがある。
【0022】
糊化・乾燥した澱粉のリン酸及び/またはその塩との混合物を焙焼したものと、糊化しない澱粉にリン酸及び/またはその塩を加えて乾燥し、同じ条件で焙焼したものを比較すると、糊化・乾燥後焙焼して得られるリン酸結合澱粉の方がα−アミラーゼ処理でより高いCa可溶化活性を示すことが認められた。
本発明のCa可溶化活性を示すPOSを含むオリゴ糖組成物は、上述のリン酸結合澱粉をα−アミラーゼで分解して低分子化することにより得られる。低分子化により粘度が低下するため、食品などへの利用用途が大きく拡大される。本来、分解に用いる酵素は澱粉をランダムに切断するα−アミラーゼであれば全て用いることができ、当然2種以上の酵素を混合して用いることもできる。
【0023】
α−アミラーゼとしては、工業的な澱粉の分解(以下、「液化」ともいう)に多用されている耐熱性液化型α−アミラーゼ、中温性液化型α−アミラーゼ、糖化型α−アミラーゼ、糖転移酵素のCGTase(Cyclomaltodextrin glucanotransferase)やTVA(Thermoactinomyces vulgarisのα−アミラーゼ)などが使用できる。しかし、工業生産に適応した酵素としては、耐熱性の液化型α−アミラーゼが分解能力及び澱粉の溶解力において優れている。
リン酸結合澱粉にα−アミラーゼを作用させる条件は、酵素の種類により大きく異なるが、通常用いられている条件で行うことができる。用いる酵素は80〜110℃で有効に作用する耐熱性液化型α−アミラーゼが好ましく、いずれの起源のものでも使用できる。
【0024】
具体的には、細菌起源の高耐熱性α−アミラーゼであるターマミル120L(ノボノルディスク バイオインダストリー製、Bacillus licheniformis由来)、ネオスピターゼPG2(ナガセ生化学工業製、Bacillus subtilis 由来)、クライスターゼT(大和化成製、Bacillus subtilis 由来)などの市販酵素を用いることができる。
基質となるリン酸結合澱粉は10〜40重量%濃度のスラリーとし、水酸化カルシウム及び/または水酸化ナトリウムを加えて、通常pH6.0〜6.3に調整する。耐熱性α−アミラーゼは安定剤として50ppm以上のカルシウムイオンを必要とするので、pH調整用アルカリとしては水酸化カルシウムが主に使用される。
【0025】
酵素添加量は使用する酵素によって大きく異なるが、通常0.001〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%(対澱粉)である。反応のpHも使用する酵素によって異なるが、通常pH4〜7である。
工業生産における澱粉分解反応(液化反応)では、通常、澱粉の再結晶化を防ぐため、α−アミラーゼ添加後の反応開始温度を100〜110℃に高めて2〜15分、加圧条件で処理した後、90〜100℃の高温で30分〜5時間程度酵素分解を進めて行なっている。
【0026】
α−アミラーゼによるリン酸結合澱粉の分解は工業生産における分解反応と異なり、必ずしも100〜110℃、加圧というような厳しい分解条件を必要とはしない。結合リンの多寡によって異なるものの、結合リンが澱粉の再結晶化を防ぐ役割を果たすことから、100℃以上の厳しい反応条件は必ずしも必要ではない。しかしながら、分解反応の高温処理は分解液の濾過性を良くして操業を容易にするなどの面から好ましい。
具体的には、最終濃度として10〜40重量%となるようにリン酸結合澱粉を採取し、2.8重量%の塩化カルシウムを全量の1/100量加え、1N−NaOH溶液でpHを6.3に調節する。これに、ターマミル120Lを0.1重量%(対リン酸結合澱粉)加えて耐圧容器に移す。105℃で5分間加熱後、95℃で1時間液化反応を継続する。
【0027】
なお、ターマミル120Lによる反応では酵素添加量0.1重量%で反応温度は90〜100℃、反応時間10〜70分の範囲ではCa可溶化活性値はほとんど同じ値を示すことが明らかとなった。さらに、この反応液の反応温度を60℃に下げて、24時間反応を継続しても、Ca可溶化活性は元の活性の80〜90%を維持しており、ターマミル120Lを0.05重量%追加添加して60℃で24時間追加反応すると70%前後まで低下することが明らかとなった。
【0028】
リン酸結合澱粉をα−アミラーゼのみで処理して得られるPOSを含むオリゴ糖組成物は極めて高いCa可溶化活性を有する混合液であり、そのまま濃縮して製品となる。しかし、リン酸結合澱粉のα−アミラーゼ処理のみで得られるオリゴ糖組成物の平均重合度は8〜50であり、オリゴ糖よりもデキストリンの範疇に入る重合度を有している。通常のオリゴ糖より分子量がかなり大きいため、そのまま製品として濃縮すれば、製品の粘度が高くなって食品としての使用に制限が起こる場合もある。
【0029】
製品の粘度をさらに下げるには、α−アミラーゼも含む各種澱粉分解酵素や糖転移酵素の1種または2種以上の酵素、さらにこれら各種酵素の1種以上の酵素にα−グルコシダーゼを加えた酵素群による追加分解反応(以下、「糖化反応」ともいう)を行うことができる。なかでも、グルコアミラーゼ、β−アミラーゼ、糖化型α−アミラーゼなどの澱粉分解酵素がオリゴ糖組成物の重合度の低下に有効性の高い酵素として推奨される。
他に、単独では重合度低下作用が少ないものの、グルコアミラーゼなどとの組み合わせにより効果を示す酵素として、液化型α−アミラーゼ、CGTase(Cyclomaltodextrin glucanotransferase)、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、TVAなどが挙げられる。
【0030】
従来技術ではPOSの低分子化を優先するため、追加分解にはグルコアミラーゼが主として使用され、さらに、枝切り酵素であるプルラナーゼやα−アミラーゼを同時に作用させている。本発明者らによる先願発明においても、耐熱性液化型α−アミラーゼで処理した後、グルコアミラーゼとプルラナーゼの混合酵素剤であるデキストロザイムを使用して低分子化を進めている。
合成したリン酸結合澱粉を液化型α−アミラーゼで分解処理して得られたオリゴ糖組成物をさらに各種澱粉分解酵素で追加分解する場合、グルコアミラーゼの市販酵素剤AMG(ノボノルディスク バイオインダストリー社製、Aspergillus niger 由来)で処理すると、オリゴ糖組成物のCa可溶化活性は追加分解前の半分程度に減少した。
【0031】
なお、試薬製剤のグルコアミラーゼ(Aspergillus niger 由来及びRhizopus niveus 由来)で処理したオリゴ糖組成物のCa可溶化活性は液化型α−アミラーゼ処理のみで得られるオリゴ糖組成物の活性の80%前後の値であった。
また、β−アミラーゼの市販酵素剤であるBBA(ジェネンコァ社製、大麦由来)や甘藷由来の試薬β−アミラーゼで処理したオリゴ糖組成物のCa可溶化活性は元の80%前後の活性が維持されていた。さらに、β−アミラーゼにα−アミラーゼを同時に作用させて低分子化反応を進めると、Ca可溶化活性は元の50%前後の活性に減少した。
【0032】
なお、β−アミラーゼで追加分解して得たオリゴ糖組成物の平均重合度は4〜8であり、グルコアミラーゼ処理で得られるものの平均重合度1〜4より大きい傾向が認められた。
澱粉分解酵素による追加分解反応は液化型α−アミラーゼ処理で得られたオリゴ糖組成物に各種酵素を1種または2種以上加えて、各酵素の最適反応条件で行われる。反応条件は酵素の種類によって大きく異なるが、通常、反応温度は40〜70℃、pHは4〜7、分解(糖化)時間は0.5〜96時間、酵素添加量はオリゴ糖組成物の固形分に対して0.0001〜1重量%である。なお、追加分解反応に用いる酵素は最初の分解で使用する液化型α−アミラーゼ処理と同時に用いることもできる。
【0033】
リン酸結合澱粉の酵素分解物には、添加酵素や分解反応で生成する凝集タンパク質や未分解澱粉など不溶性物質が含まれ、さらに中和に用いた塩類や無機リンなども不純物として含まれている。不溶性物質は濾過や膜処理で除去されるが、塩類や無機リンを除くにはイオン交換樹脂処理、ナノフィルトレーション(NF)膜処理、イオン交換膜処理などによる脱塩処理が必要である。
リン酸結合澱粉を酵素分解して得られるPOSを含むオリゴ糖組成物を脱塩処理することにより、全リンに対する無機リン比率を20%以下に減少させることができる。これにより、食品添加物として規定されているリン酸結合澱粉と同等の結合リン、無機リン含量のPOSを含むオリゴ糖組成物を得ることができる。
【0034】
以下、本発明におけるCa可溶化係数の定義と測定方法を示す。
(1)Ca可溶化活性測定試料液の調製
リン酸結合澱粉をα−アミラーゼなどの酵素で処理して得られるPOSを含むオリゴ糖組成物溶液(POS溶液、未精製)(2重量%、pH2に調整したもの)17.5gを試験管に採取し、水を加えて30gとする。5重量%のNaOH溶液でpH7.2〜7.3に合わせる。さらに、1重量%のNaOH溶液でpH7.36〜7.37に微調節してから水を加えて全量を35.0gとする。この時、pHが7.40±0.02であることを確認し、pHが外れている場合には再度、pH調整をやり直す。
【0035】
得られた1重量%のPOS溶液をCa可溶化活性測定試料液とする。
(2)リン酸カルシウム沈澱形成阻害反応
(1)で得た測定試料液を必要に応じて水で希釈してリン酸カルシウム沈澱形成阻害反応を行う。30℃の恒温槽で恒温にした15mM−リン酸緩衝液(pH7.4)1.5mlを試験管に採取し、適宜希釈した測定試料液0.3mlを加えて混合する。次いで、30℃の恒温槽で恒温にした12.5mM−CaCl2を1.2ml加えて混合し、30℃の恒温槽に入れて1時間保持する。1時間後、測定試料を15000rpmで1分間遠心分離して、上清のCa濃度を測定する。
Ca濃度はCa測定キット(和光純薬製)で測定した。対照として、希釈測定試料液の代わりに水を加えたもののCa濃度を測定し、リン酸カルシウムのみの上清Ca濃度を算出して対照1液とする。希釈測定試料液及びリン酸緩衝液の代わりに水を加えたもののCa濃度を測定して、全Ca濃度を算出して対照2液とする。
【0036】
(3)Ca可溶化係数の算出
まず、各希釈試料液のCa可溶化率を次式によって求める。
【0037】
【数1】
Figure 0004200537
【0038】
測定液中の試料濃度を横軸に取り、Ca可溶化率を縦軸に取ってグラフを作成し、Ca可溶化率が50%となる試料濃度を求める。この試料濃度(%)値の逆数をCa可溶化係数とする。
例えば、Ca可溶化活性測定時の試料の濃度が0.1%でCa可溶化率50%になった場合、Ca可溶化係数は10である。なお、Ca可溶化率は50%を挟んで50±30%の範囲で測定した試料濃度2点の直線とCa可溶化率50%の交点をCa可溶化係数算出の試料濃度とし、係数値は少数点1位以下を四捨五入して整数とする。
【0039】
表1に、各種リン酸結合澱粉の結合リン含量とCa可溶化係数を示す。
α−アミラーゼによる分解処理で高いCa可溶化活性を示すようなリン酸エステル澱粉を得るため、コーンスターチ及び馬鈴薯澱粉を原料として、反応条件を変えて結合リンが馬鈴薯澱粉の結合リン含量より多い0.5〜4重量%となるようにリン酸エステル澱粉を合成した。
表1から明らかなように、結合リン含量が1重量%以上のリン酸結合澱粉を酵素処理して得られるPOSを含むオリゴ糖組成物のCa可溶化係数は10以上である。
【0040】
【表1】
Figure 0004200537
【0041】
原料の澱粉がコーンスターチであれ、馬鈴薯澱粉であれ、結合リンが1重量%未満のリン酸エステル澱粉をα−アミラーゼで分解して生成したPOSを含む溶液のCa可溶化活性は、Ca可溶化係数として10未満であり、明治製菓製のCPP IIのCa可溶化係数19より低いものである。
結合リンの少ないリン酸エステル澱粉を原料としてα−アミラーゼ処理して得られるPOS溶液からPOS製品を得るには、生成したPOS以外の結合リン酸を持たないブドウ糖やオリゴ糖などの中性糖を除く精製操作を行わなければ、明治製菓製のCPP IIのようなCa可溶化活性の高いPOS製品を得ることはできない。
【0042】
これに対して、1重量%以上の結合リンを含むリン酸エステル澱粉のα−アミラーゼ処理により得られるオリゴ糖組成物はなんら精製純化操作をしなくとも、10〜50の高いCa可溶化係数の得られることが明らかである。
すなわち、α−アミラーゼによる酵素処理だけでCPP IIと同等以上の高いCa可溶化活性を持つオリゴ糖組成物が得られたこととなり、極めて簡便なPOSの製造方法が開発されたこととなる。
本発明で設定したCa可溶化活性測定法を用いてCa可溶化作用を有するとされる各種物質のCa可溶化係数を求めると表2のように算出された。
【0043】
【表2】
Figure 0004200537
【0044】
Ca可溶化活性の高いアルギン酸ナトリウムやペクチンは多糖であり、粘性物質であって食品としての使用に制限がある。単糖や二糖の一リン酸や二リン酸はCPP IIと同程度のCa可溶化活性を有するものの高価である。
これらに対して、リン酸エステル澱粉は食品添加物として認められており、そのまま食品に添加することができる。しかも、α−アミラーゼによって容易に低分子化されてPOSを含むオリゴ糖組成物に変換されるので、リン酸エステル澱粉をそのまま食品に加えて使用しても、加工工程中にα−アミラーゼが存在すれば高いCa可溶化活性を有するPOSを生成する。
【0045】
また、食品にα−アミラーゼが存在しなくとも、食品として咀嚼中に唾液のα−アミラーゼの作用によりリン酸エステル澱粉から高いCa可溶化活性を有するPOSが生成可能である。次いで、咀嚼だけでリン酸エステル澱粉の低分子化が不十分な場合でも、小腸では膵液のα−アミラーゼの作用により高いCa可溶化活性を有するPOSが生成する。すなわち、リン酸エステル澱粉を高分子のままで食品に添加しても、体内でPOSが生成し、高いCa可溶化活性を示すことが予想される。
【0046】
さらに、リン酸エステル澱粉を耐熱性液化型α−アミラーゼによって低分子化すれば、粘度が低く、Ca可溶化活性の高いPOSが安価に大量に生産され、食品への利用が大きく広げられることとなる。 本発明の高い活性を有するリン酸結合澱粉は食品、飲料、糊剤、混和剤、塗料、顔料、肥料などの成分として混合することができる。また、同じくリン酸結合澱粉は食品、飲料、糊剤、混和剤、塗料、顔料、肥料への添加用組成物として利用することができる。
さらに、本発明の高い活性を有するリン酸結合澱粉から得られるPOSを含むオリゴ糖組成物は食品、飲料、糊剤、混和剤、塗料、顔料、肥料などの成分として混合することができる。また、同じくPOSを含むオリゴ糖組成物は食品、飲料、糊剤、混和剤、塗料、顔料、肥料への添加用組成物として利用することができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例により、その技術的範囲が限定されるものではない。なお、実施例中、結合リン含量の測定、Ca可溶化係数の測定、及びオリゴ糖組成物の平均重合度の測定は、各々以下の方法によって行った。
【0048】
[結合リン含量の測定]
リン含量は澱粉・関連糖質実験法(学会出版センター、中村道徳ら)に記載の方法に準じて測定した。リン酸結合澱粉のリン含量を測定するため、試料にターマミル120L(耐熱性液化型α−アミラーゼ)0.1重量%を加えて95℃,15分間加熱分解して均一な溶液を調製し、無機リンを全てオルトリン酸とするため塩酸を添加してpH2に調整してからFiske-Subbarow法で無機リンを測定した。なお、これら一連の酵素分解反応では結合リンが無機リンとして遊離しないことを確認しており、元のリン酸結合澱粉も分解生成したオリゴ糖組成物も結合リンの含量に変化はない。また、発色時に濁りが認められるものは遠心分離(3000rpm,3分間)して上清の吸光度を測定した。
全リン含量は無機リン測定時にpH2に調整した試料を湿式灰化処理し、同様に測定した。結合リン含量(重量%,対試料固形分)は(全リン含量−無機リン含量)で算出した。
【0049】
[Ca可溶化係数の測定]
上述したように、Ca可溶化活性測定試料液を調製し、リン酸カルシウム沈殿形成阻害反応を行って式(I)よりCa可溶化率を求め、Ca可溶化係数を算出した。
【0050】
[オリゴ糖組成物の平均重合度の測定]
糖含量は澱粉・関連糖質実験法(学会出版センター、中村道徳ら)に記載の方法に準じて測定し、オリゴ糖組成物の平均重合度は全糖/還元糖から求めた。リン含量測定の場合と同様にpH2に調整した試料液を適宜希釈して、全糖はフェノール−硫酸法(Dubois ら,1956)で、還元糖は Somogyi-Nelson 法(Nelson, 1944)で測定した。測定値はブドウ糖換算重量%(対試料固形分)で表示し、平均重合度は全糖/還元糖で算出した。
【0051】
実施例1
コーンスターチを含むスラリー(澱粉重量濃度40%)10kgに無水リン酸一ナトリウム2.2kgと無水リン酸二ナトリウム2.0kgを加えて溶解し(pH6.0)、濾紙で濾過して澱粉ケーキを回収した。この澱粉ケーキの全リンは3.8重量%であった。これを棚段乾燥機で水分13重量%となるまで乾燥してから一定温度に設定したオーブンで1〜3時間焙焼した。
次いで、得られたリン酸エステル澱粉をα−アミラーゼで分解してオリゴ糖組成物とするため、合成したリン酸エステル澱粉を3〜4g採取し、105℃で4時間乾燥した。放冷後、乾燥試料2gを精秤して100mlの耐圧ガラス容器に入れ、水を70g加えて、均一になるまで攪拌した。これに2.8重量%の塩化カルシウム溶液を1ml加え、1N−NaOH溶液でpHを6.3に調節した。α−アミラーゼとして、ターマミル120Lを水で10倍に希釈した液を20mg加え、耐圧ガラス容器をガス加熱した沸騰水中に置いて、時々攪拌しながら15分間加熱した。加熱終了後、放冷してから1N−塩酸溶液を加えてpHを2に調節してから水を加えて全量を100gとした(濃度2重量%)。
得られたPOSを含むオリゴ糖組成物の結合リン含量とCa可溶化係数を測定した。結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
Figure 0004200537
【0053】
Ca可溶化係数18以上の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られた。
【0054】
実施例2
コーンスターチを含むスラリー(澱粉重量濃度40%)10kgに無水リン酸一ナトリウムと無水リン酸二ナトリウムを適宜加えてpH4.0及び2.5となるように溶解し、濾紙で濾過して澱粉ケーキを回収した。これらの澱粉ケーキの全リンは3.8重量%であった。次いで棚段乾燥機で水分13重量%となるまで乾燥してから一定温度に設定したオーブンで1時間焙焼した。
実施例1と同様に、合成したリン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、結合リンとCa可溶化係数を測定した。
【0055】
【表4】
Figure 0004200537
【0056】
Ca可溶化係数20以上の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られた。
【0057】
実施例3
コーンスターチを含むスラリー(澱粉重量濃度40%)10kgに無水リン酸一ナトリウムと無水リン酸二ナトリウムの添加量を変えて溶解し(pH6.0)、濾紙で濾過して澱粉ケーキを回収した。これらの澱粉ケーキの全リンは3.8,5.9,6.3重量%であった。次いで棚段乾燥機で水分13重量%となるまで乾燥してから一定温度に設定したオーブンで1時間焙焼した。
実施例1と同様に、合成したリン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、全リン、結合リンとCa可溶化係数を測定した。
【0058】
【表5】
Figure 0004200537
【0059】
Ca可溶化係数24以上の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られた。
【0060】
実施例4
馬鈴薯澱粉12.3kg(乾燥重量10.0kg)を混合機に入れ、無水リン酸一ナトリウム1.7kgと無水リン酸二ナトリウム1.2kgを溶解した液7.7kg(pH6.0)を加えて混合し、棚段乾燥機で水分15重量%となるまで乾燥した。これを一定温度に設定したオーブンで1時間焙焼した。
実施例1と同様に、合成したリン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、全リン、結合リンとCa可溶化係数を測定した。
【0061】
【表6】
Figure 0004200537
【0062】
Ca可溶化係数28以上の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られた。
【0063】
実施例5
▲1▼ コーンスターチ(乾粉、水分13重量%)を10kg/Hrの流速で混合機に導入し、同時にリン酸及び尿素の混合液(リン酸5重量%、尿素18重量%)を4.35kg/Hrの流速で添加して混合した。混合後、気流乾燥機で水分10重量%となるまで乾燥した。これを130℃に設定したオーブンで30分間焙焼した。
【0064】
▲2▼ コーンスターチ(乾粉、水分13重量%)を10kg/Hrの流速で混合機に導入し、同時にリン酸及び尿素の混合液(リン酸10重量%、尿素16重量%)を4.35kg/Hrの流速で添加して混合した。混合後、気流乾燥機で水分10重量%となるまで乾燥した。これを130℃に設定したオーブンで60分間焙焼した。
実施例1と同様に、合成した尿素リン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、全リン、結合リンとCa可溶化係数を測定した。
【0065】
【表7】
Figure 0004200537
【0066】
Ca可溶化係数15〜25の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られた。
【0067】
実施例6
コーンスターチ(乾粉、水分13重量%)10kgに無水リン酸一ナトリウム1.3kgと無水リン酸二ナトリウム1.1kgを加えて混合機で混合した。これを水分5重量%となるまで乾燥してから一定温度に設定したオーブンで1時間焙焼した。
実施例1と同様に、合成したリン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、全リン、結合リン、Ca可溶化係数と平均重合度を測定した。
【0068】
【表8】
Figure 0004200537
【0069】
Ca可溶化係数23〜33の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られ、オリゴ糖組成物の平均重合度は17〜21であった。
【0070】
実施例7
コーンスターチ(乾粉、水分13重量%)10kgを混合機に入れ、無水リン酸一ナトリウム0.96kgと無水リン酸二ナトリウム0.86kgを水に溶解した液を徐々に加えて混合した。これを水分13重量%となるまで乾燥してから一定温度に設定したオーブンで1時間焙焼した。
実施例1と同様に、合成したリン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、全リン、結合リン、Ca可溶化係数と平均重合度を測定した。
【0071】
【表9】
Figure 0004200537
【0072】
Ca可溶化係数27〜28の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られ、オリゴ糖組成物の平均重合度は10〜18であった。
【0073】
実施例8
コーンスターチ(乾粉、水分13重量%)10kgを混合機に入れ水を加えてスラリーとし、無水リン酸一ナトリウム0.88kgと無水リン酸二ナトリウム0.79kgを加えて溶解混合した。これをドラムドライヤーにかけて糊化し、水分13重量%となるまで乾燥した。次いで、一定温度に設定したオーブンで1時間焙焼した。
実施例1と同様に、合成したリン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、全リン、結合リン、Ca可溶化係数と平均重合度を測定した。
【0074】
【表10】
Figure 0004200537
【0075】
Ca可溶化係数27〜40の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られ、オリゴ糖組成物の平均重合度は11〜23であった。
【0076】
実施例9
コーンスターチ(乾粉、水分13重量%)10kgを混合機に入れ水を加えてスラリーとし、無水リン酸一ナトリウム1.0kgと無水リン酸二ナトリウム0.93kgを加えて溶解混合した。これをドラムドライヤーにかけて糊化し、水分5重量%となるまで乾燥した。次いで、一定温度に設定したオーブンで1時間焙焼した。
実施例1と同様に、合成したリン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、全リン、結合リン、Ca可溶化係数と平均重合度を測定した。
【0077】
【表11】
Figure 0004200537
【0078】
Ca可溶化係数42〜61の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られ、オリゴ糖組成物の平均重合度は22〜31であった。
【0079】
実施例10
コーンスターチ(乾粉、水分13重量%)10kgと無水リン酸一ナトリウム0.92kgと無水リン酸二ナトリウム0.82kgを混合してエクストルーダーに投入し、水を加えて混練混合した。吐出した混練品をカットして送風乾燥機で水分13重量%になるまで乾燥した。これを粉砕し、一定温度に設定したオーブンで1時間焙焼した。
実施例1と同様に、合成したリン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、全リン、結合リン、Ca可溶化係数と平均重合度を測定した。
【0080】
【表12】
Figure 0004200537
【0081】
Ca可溶化係数36〜39の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られ、オリゴ糖組成物の平均重合度は24〜31であった。
【0082】
実施例11
コーンスターチ(乾粉、水分13量%)10kgを混合機に入れ水を加えてスラリーとし、無水リン酸一ナトリウムと無水リン酸二ナトリウムを適宜加えて溶解(pH6.0,5.3)混合した。これをドラムドライヤーにかけて糊化し、水分13重量%となるまで乾燥した。次いで、一定温度に設定したオーブンで1時間焙焼した。
実施例1と同様に、合成したリン酸エステル澱粉からオリゴ糖組成物を調製し、全リン、結合リンとCa可溶化係数を測定した。
【0083】
【表13】
Figure 0004200537
【0084】
Ca可溶化係数30〜52の高いCa可溶化活性を有するリン酸結合澱粉が得られた。
【0085】
実施例12
コーンスターチ(乾粉、水分13重量%)10kgを混合機に入れ水を加えてスラリーとし、無水リン酸一ナトリウムと無水リン酸二ナトリウムを適宜加えて溶解(pH6.0)混合した。これをドラムドライヤーにかけて糊化し、水分13重量%となるまで乾燥し、170℃に設定したオーブンで1時間焙焼してリン酸エステル澱粉を得た。合成したリン酸エステル澱粉120gにターマミル120Lを0.12gを加え、さらに10%Ca(OH)2水溶液を加えてpH6.3とした。これを105℃で5分間加圧加熱処理してから95℃で1時間液化処理した。液化液50gに各種澱粉分解酵素を対澱粉0.1%加えて、60℃(TVA IIのみ50℃)で24時間糖化処理し、得られたオリゴ糖組成物のCa可溶化活性、結合リン及び平均重合度を測定した。
【0086】
用いた澱粉分解酵素は、▲1▼大麦β−アミラーゼ(ジェネンコア社製 BBA,大麦由来)、▲2▼甘藷β−アミラーゼ(Sigma 製 試薬β−アミラーゼ,甘藷由来)、▲3▼大麦β−アミラーゼ対澱粉0.1%とプルラナーゼ(天野製薬製 プルラナーゼ「アマノ」,Klebsiella pneumoniae 由来)対澱粉0.05%の組み合わせ、▲4▼グルコアミラーゼ(ノボノルディスク バイオインダストリー製 AMG, Aspergillus niger 由来グルコアミラーゼ)、▲5▼グルコアミラーゼ(Sigma 製試薬グルコアミラーゼ,Aspergillus niger由来)、▲6▼グルコアミラーゼ(Sigma 製試薬グルコアミラーゼ,Rhizopus niveus 由来)、▲7▼ TVA II (公特開平7-25891,Thermoactinomyces vulgaris R-47 由来α−アミラーゼ)、及び▲8▼ファンガミル(ノボノルディスク バイオインダストリー製 ファンガミル, Aspergillus
oryzae 由来糖化型α−アミラーゼ)である。
【0087】
【表14】
Figure 0004200537
【0088】
澱粉分解酵素処理により、平均重合度(リン酸基の結合していない単糖やオリゴ糖を含む)1〜18に低分子化されたオリゴ糖組成物が得られ、Ca可溶化活性はCa可溶化係数として21〜45であった。
【0089】
実施例13
実施例12のリン酸エステル澱粉120g(ドラムドライヤーで糊化し、170℃で1時間焙焼して合成した)に終濃度20重量%となるように水、ターマミル120L0.12gを加え、さらに10%Ca(OH)2水溶液を加えてpH6.3とした。これを105℃で5分間加圧加熱処理してから95℃で1時間液化処理した。次いで、液化液に蓚酸を加えてpHを5.5に調節してからBBA0.12gを加えて、60℃で24時間糖化処理し、オリゴ糖組成物溶液を得た。これに塩酸を加えてpH2.5とし、不溶性物質を濾紙で除いてからNF膜処理(NTR−7410,日東電工製)で脱塩した。さらに活性炭を加えて60℃で2時間放置後、濾紙で活性炭を除いて清澄液を得てからエバポレーターで濃縮した。得られた精製オリゴ糖組成物溶液の固形分は90gであり、Ca可溶化活性はCa可溶化係数として46、結合リンは2.7重量%、無機リン比率18%、平均重合度は12であった。
【0090】
実施例14
実施例12のリン酸エステル澱粉120g(ドラムドライヤーで糊化し、170℃で1時間焙焼して合成した)に終濃度20重量%となるように水、ターマミル120L0.12gを加え、さらに10%Ca(OH)2水溶液を加えてpH6.3とした。これを105℃で5分間加圧加熱処理してから95℃で1時間液化処理した。次いで、液化液に蓚酸を加えてpHを4.5に調節してからAMG0.12gを加えて、60℃で24時間糖化処理し、オリゴ糖組成物溶液を得た。これに塩酸を加えてpH2.5とし、不溶性物質を濾紙で除いてからNF膜処理(NTR−7410,日東電工製)で脱塩した。さらに活性炭を加えて60℃で2時間放置後、濾紙で活性炭を除いて清澄液を得てからエバポレーターで濃縮した。得られた精製オリゴ糖組成物溶液の固形分は56gであり、Ca可溶化活性はCa可溶化係数として41、結合リンは3.6重量%、無機リン比率20%、平均重合度は2.6であった。
【0091】
【発明の効果】
本発明は日本人の栄養素の中で唯一不足するとして問題とされているカルシウムの吸収を促進するカルシウム可溶化作用を有する糖質の工業的な製造法を提供するものである。本発明者らによる先願発明の製造法では、純度の極めて高いPOSが工業的に安価で大量生産される利点を有しているが、馬鈴薯澱粉から得られるPOSの収率は1%程度でしかない。
本発明の方法によれば、澱粉をリン酸エステル化または尿素リン酸エステル化したリン酸結合澱粉をα−アミラーゼのみで酵素分解するだけで、なんらの精製操作を経なくとも、市販のカルシウム吸収促進剤と同等以上のCa可溶化活性を有するオリゴ糖組成物を得ることができる。

Claims (11)

  1. 澱粉にリン酸及び/またはその塩を混合し糊化してからその水分を10重量%未満となるまで乾燥し、焙焼して得られる、全固形分重量に対して結合リンを1重量%以上含むリン酸結合澱粉であって、該澱粉にα−アミラーゼのみを作用させて得られるオリゴ糖組成物のCa可溶化活性がCa可溶化係数として10以上である、リン酸結合澱粉。
  2. リン酸結合澱粉がリン酸エステル澱粉または尿素リン酸エステル澱粉である請求項1記載のリン酸結合澱粉。
  3. 澱粉にリン酸及び/またはその塩を混合し糊化してからその水分を10重量%未満となるまで乾燥し、焙焼することを含む請求項1に記載のリン酸結合澱粉の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載のリン酸結合澱粉にα−アミラーゼを作用させて得られるリン酸結合オリゴ糖を含み、Ca可溶化活性がCa可溶化係数として10以上である、カルシウムの吸収を促進するためのオリゴ糖組成物。
  5. リン酸結合澱粉に澱粉分解酵素としてα−アミラーゼのみを作用させる、請求項4に記載のオリゴ糖組成物。
  6. 平均重合度が8〜50である請求項4または5に記載のオリゴ糖組成物。
  7. 請求項1または2に記載のリン酸結合澱粉にα−アミラーゼを作用させることを含む請求項4〜6のいずれか1項に記載のオリゴ糖組成物の製造方法。
  8. リン酸結合澱粉に澱粉分解酵素としてα−アミラーゼのみを作用させる、請求項7に記載の方法。
  9. 得られたオリゴ糖組成物を脱塩して全リンに対する結合リンの割合を80%以上とすることをさらに含む請求項7または8に記載の方法。
  10. 請求項1または2に記載のリン酸結合澱粉、及び/または請求項4〜6のいずれか1項に記載のオリゴ糖組成物を含む食品。
  11. 請求項1または2に記載のリン酸結合澱粉、及び/または請求項4〜6のいずれか1項に記載のオリゴ糖組成物を含む飲料。
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