JP5371415B2 - 骨密度減少抑制組成物 - Google Patents
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Description
骨粗鬆症は女性ホルモンの減少や加齢により、破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を大幅に上回る状況になり、それが続いた時に骨密度が減少し、骨が折れやすくなる疾病である。自覚症状のないまま進行していくので、気づいた時にはかなり進行している場合が多い。骨粗鬆症にはいくつかの型があることが知られており、典型的なものは閉経後の女性によく見られる高回転型の骨粗鬆症である。そのメカニズムは女性ホルモンの減少により、炎症性サイトカインが増加し、その結果破骨細胞が大幅に増加して骨吸収が促進される。骨芽細胞も増加するが、破骨細胞の増加の方が著しく、破骨細胞>骨芽細胞のバランスとなるため、骨密度の低下が進行し骨折しやすい状態になると言われている。現在、日本には1,000万人の骨粗鬆症患者がいると言われている。
カルシウムは骨を構成する大切な元素の一つであり、カルシウムの摂取不足は、骨粗鬆症や骨の弱体化の主な原因とされている。厚生労働省の国民栄養調査によれば、日本国民の摂取する全ての栄養素の中、カルシウムのみが所要量に達していないとされている。また、その状況はここ二十数年来変わっていない。さらには、男女問わず20〜40代のカルシウム不足を危惧する声も多い。カルシウムは各種食品に満遍なく存在するわけではなく、かなり偏在しているので、所要量を満足するためには、カルシウムの摂取を意識した食事を心がける必要がある。このようなカルシウム不足を解消するために、各種カルシウム強化食品やサプリメントなどが開発されているが、若年時から意識的にカルシウム摂取を心がける必要がある。
また、本発明者らは、特許文献11により、リン酸オリゴ糖、リン酸デキストリンの多価金属塩類組成物が、カルシウム吸収促進に効果があることを示唆している。これらの多くは価格が高価であったり、味質や水への溶解度の問題で食品・飲料への利用が制限されたり、さらには効果を得るには多くの摂取量が必要になる等の問題があった。
即ち、本発明の第1は、重合度が11以上のリン酸化糖類、カルシウム、及びマグネシウムを含有する骨密度減少抑制組成物である。
本発明は、重合度が11以上のリン酸化糖類とカルシウム、マグネシウムを組み合わせることで、骨粗鬆症、特に高回転型骨粗鬆症を抑制する効果があることを見出し、本発明の完成に至った。なお、高回転型骨粗鬆症とは、女性ホルモンの減少や加齢によって骨吸収が骨形成を上回ることによって発生する骨粗鬆症である。
なお、本発明においては、その構成する糖の重合度が10以下の糖類をオリゴ糖、重合度11以上の糖類を、重合度が低い順にデキストリン、多糖、澱粉(ほとんど未分解)と称する。
重合度11以上のリン酸化デキストリン、リン酸化多糖、リン酸化澱粉、リン酸化還元デキストリンとしては、デキストリン、多糖、澱粉、還元デキストリン(以下総称して多糖類と呼称する)にリン酸基が結合したものすべてが挙げられる。
本発明で使用するリン酸化多糖類は、リン酸化澱粉、リン酸化多糖、リン酸化デキストリンを、酵素、酸、熱で低分子化するか、多糖類を直接リン酸化することで得られる。還元物の場合は、リン酸化多糖類を還元するか、還元物を直接リン酸化することで得られる。多糖類としてはコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉などの穀物類の澱粉、馬鈴薯澱粉やタピオカ澱粉などの根系類の澱粉など広く一般に使用されている澱粉、及びその分解物である多糖、デキストリンが使用できる。また、多糖類はその構成糖としてグルコース以外の糖、例えば、果糖、マンノース、ガラクトースなどの六炭糖、キシロース、アラビノース、リボースなどの五炭糖、砂糖、ラクト−ス、トレハロース、キシロビオ−ス、メリビオ−ス、キトビオ−ス、ラクチュロ−ス、ゲンチオビオ−ス、パラチノ−ス、トレハルロ−ス、コウジビオ−ス、ニゲロ−ス、ラミナリビオ−ス、カップリングシュガ−、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖などのオリゴ糖やデキストリンのほか、グルコースを構成糖とするものの結合状態の異なるセロビオ−ス、ラミナリビオース、ゲンチオビオースなどのオリゴ糖や、デキストランやセルロースなどの多糖を含むこともできる。
なお、本発明の骨密度減少抑制組成物には、上記のリン酸化デキストリン以外にも、リン酸化単糖、リン酸化オリゴ糖や、または、リン酸化糖アルコール、リン酸化還元オリゴ糖等のリン酸化糖、及びリン酸化されていない単糖、オリゴ糖、デキストリン、多糖、澱粉などが含まれていてもよい。
リン酸化に引き続き、低分子化を行う場合も公知の方法から任意に選択できるが、アミラーゼなどの酵素を用いて低分子化する方法、または酸による方法が一般的である。
また、必要に応じて脱色、脱塩、未反応物の除去等精製を行うこともできる。
本発明に使用するマグネシウムとしては、特に限定はしないが、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、グルタミン酸マグネシウム、ドロマイト等が使用できる。この中でも、特に酸化マグネシウム、ドロマイト、塩化マグネシウムが特に好ましい。
また、本発明の骨密度減少抑制組成物中におけるカルシウムとマグネシウムの比率は、特に限定しないが、質量比で2:1に近い方が望ましい。
本発明で使用するイソフラボン類としてはダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン等のアグリコン、それらの配糖体、または両者の混合物のいずれでもよく、ヘスペリジン、ナリンジン、ルチンなどはそれらのアグリコン単独、またはアグリコンとの混合物でもよい。
また、本発明の骨密度減少組成物には、フラクトオリゴ糖を添加することがさらに好ましい。
その他、本発明には、必要に応じて任意の成分を添加することが可能である。
添加する成分としては、ポリフェノール類、小腸で消化されにくく、大腸で腸内細菌に醗酵を受けて有機酸を生成して腸内環境を整える作用のある難消化性オリゴ糖等があげられる。ポリフェノール類としては前述のイソフラボンの他、ヘスペリジン、ナリンジン、ルチン、レスベラトロール等があげられる。また難消化性糖類としては、前述のフラクトオリゴ糖の他、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、アラビノオリゴ糖、マンノオリゴ糖等が挙げられる。
その他の成分としては、コラーゲン又はその加水分解物が挙げられる。コラーゲンに関しては、動物、魚等の原料は特に限定しないが、ゼラチンに加工されたものが好ましい。また、コラーゲンの加水分解物の場合、分子量300〜10000程度のものが好ましい。あmた、ビタミンK、カゼインホスホペプチド、β−クリプトキサンチン、ポリグルタミン酸等が有効である。ビタミンKはK1、K2、K3のいずれでもよく、カゼインホスホペプチド、β−クリプトキサンチン、ポリグルタミン酸は特に製法は問わない。
なお、動物に本発明の骨密度減少抑制組成物を投与する方法としては、飼料等に配合して経口的に摂取させる方法が一般的である。また、水溶性であることから、水などの飲料に加えて摂取させる方法も選択できる。
このような飲食品は、有効成分として本発明の骨密度減少抑制組成物を含有するので、摂取することで、骨の弱体化、骨粗鬆症を予防し、進行の遅延を図る上で有利である。
また、本発明の骨密度減少抑制組成物にフラクトオリゴ糖を添加する場合、1日分として0.5〜20g摂取できるように配合することが望ましい。
また、本発明の骨密度減少抑制組成物にイソフラボンを添加する場合は、食品安全委員会により、日常の食生活に加えて摂取するイソフラボンの摂取量は、アグリコン換算で1日当りの摂取量が30mg以下とすれば安全性上の問題はないとされているため、1日分として3〜30mg摂取できるように配合することが望ましい。
コーンスターチ(王子コーンスターチ製、水分13質量%)1200kgを一定の流速でタービュライザに導入し、同時に第一リン酸ナトリウム・2水塩25kgと無水第二リン酸ナトリウム4.6kgを水に溶解して全量477kgのリン酸溶液(pH6.0)を一定の流速で添加して均一に混合した。このリン酸混合澱粉をフラッシュ・ドライヤーで水分6質量%となるまで乾燥し、得られたリン酸含浸澱粉(リン含量0.5質量%、pH5.6)500kgを流動層加熱機(王子コーンスターチ製)に投入した。加熱した熱風を供給して流動加熱し、排気される熱風は流動層の系外に排出した。加熱開始後、30分で175℃まで昇温し、熱風の排気はそのまま系外に排出し続けて、175℃で120分加熱反応した。加熱反応終了後、送風を冷風に切り替え、更に熱風の排気を系外に排出し続けて、品温を100℃以下にまで冷却した。回収されたリン酸化澱粉(結合リン含量0.4質量%、リン酸化率81%)は450kgであった。
次に、得られたリン酸化澱粉の低分子化を行った。70℃の水71Lに塩化カルシウム二水和物34gを溶解した後、攪拌しながら前述のリン酸化澱粉8kgを徐々に添加しながら溶解した。水酸化ナトリウムでpH6.0とした後、ターマミル(Termamyl Classic、ノボザイムズ社製)を対澱粉0.05質量%添加し、5分間保持した。粘度が下がり始めると同じリン酸化澱粉4.5kgを徐々に追加添加した。水酸化ナトリウムでpH6.0に再調整後、追加した澱粉に対してターマミルを0.05質量%添加して10分保持した。次に、調製したリン酸化澱粉分散液をジェットクッカーにて温度110℃、滞留時間5分の条件で処理した。この操作を4回繰り返して、50kgのリン酸化澱粉を処理した。ジェットクッカー処理した液をタンクに集め、60℃まで冷却後、ターマミルを対澱粉0.05質量%追加添加し、60℃、3時間反応させた。酵素反応は塩酸でpH3.5に調整し、終了させた。
得られた酵素分解液に粉末活性炭(PM−KIとPM−SXの等量混合物、三倉化成社製)を対固形分10質量%添加し、60℃、2時間攪拌保持した。その後、セラミック濾過機(0.2μm、トライテック社製)で残渣と活性炭を除去した。濾液には無機リンが多く含まれているので、NF膜(日東電工社製、NTR−7450)で脱塩・濃縮処理を行い、無機リン比率を10%まで減少させた。更に、水酸化ナトリウムでpH6.2(1質量%溶液で測定)に調整してから、0.45μmのポリスルフォンのメンブレンフィルター(ロキテクノ社製)で濾過後、スプレードライヤー(ニロ社製)で乾燥粉末化した。
得られたリン酸化糖類組成物Aは36kgであり、重合度が11以上のリン酸化糖類の含有率は40%であった。また、含まれるリン酸化糖の平均重合度は17であった。
以上で得たリン酸化糖組成物A(以下試料A)を、以下の動物実験により評価した。
試験動物として11週齢、雌のF344/DuCrlCrljラット(日本チャールズリバー(株))を用い、1週間の環境馴化飼育後、12週齢において試験を開始した。
馴化飼育の最終日にラットを1群10匹からなる7群に分け、卵巣摘出手術を行った。
翌日より、飼料(基本飼料はAIN−93M:オリエンタル酵母工業(株)、Ca含量0.5質量%(炭酸Ca使用)、Mg含量0.05質量%(酸化Mg使用))に、調製例で作製した試料A、フラクトオリゴ糖(明治製菓製)、大豆イソフラボン(Jオイルミルズ製、イソフラボン含有率80%)を表1に示す摂取量になるように配合し、自由摂取させて4週間飼育した。4週間後、エーテル麻酔下で放血安楽死させ、左脛骨を採取し、70%エタノールに5日間保存後、骨密度をDXA(Dual-Energy X-ray Absorptiometry)法にて測定した。その結果を図1に示す。対照群に対してそれぞれt−検定を行った。
図1に示されるように、試料Aの単独摂取群において、骨粗鬆症モデルラットの通常Ca食の条件では効果が認められなかったが、試料Aを与えた群は対照群よりも骨密度の減少が少ない傾向にあった。また、特に試料Aとフラクトオリゴ糖の併用摂取群、及び試料Aとイソフラボンの併用摂取群においては対照群に対し、p<0.05で有意に骨密度の減少抑制効果が認められた。
以上、本発明の重合度11以上のリン酸化糖類は、フラクトオリゴ糖やイソフラボンと併用すると、卵巣を摘出した骨粗鬆症モデルラットにおいて骨密度の減少を抑制することが確かめられた。従って、これらを含有する骨密度減少抑制組成物は、高回転型骨粗鬆症の予防および進行の遅延に有効に寄与することは明らかである。
表2に示した組成で各成分を混合し、殺菌処理後、容器へ充填して骨密度減少抑制作用を有する清涼飲料を作製した。
Claims (4)
- 重合度が11以上のリン酸化糖類、カルシウム及びマグネシウム、並びにイソフラボン類、フラクトオリゴ糖のうち少なくとも一方を含有することを特徴とする骨密度減少抑制組成物。
- 重合度が11以上のリン酸化糖類が、リン酸化デキストリン、リン酸化多糖、リン酸化澱粉及び還元リン酸化デキストリンから選ばれる1又は2以上の物質であることを特徴とする請求項1記載の骨密度減少抑制組成物。
- 高回転型骨粗鬆症の予防又は進行の遅延のために用いられる請求項1又は2記載の骨密度減少抑制組成物。
- イソフラボン類を含有し、コンドロイチンを含有しない請求項1〜3のいずれか1項に記載の骨密度減少抑制組成物。
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