JP4403140B2 - 再石灰化促進剤 - Google Patents

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Description

本発明は、結晶性のリン酸カルシウムが存在すると共存する水溶性のリン酸カルシウムが結晶性のリン酸カルシウムに沈着する現象、すなわち、歯の再石灰化現象を促進する作用を有する再石灰化促進剤に関する。本発明の再石灰化促進剤は、食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料、肥料などの分野で利用されるものである。
また本発明は、再石灰化促進作用を有するリン酸でん粉、リン酸マルトデキストリン(PMD)、リン酸オリゴ糖(POS)、及びそれらの塩類を含む組成物を製造する方法、さらに還元リン酸マルトデキストリン、還元リン酸オリゴ糖、及びそれらの塩類を含む組成物を製造する方法に関する。
本発明者らは、すでに特許文献1において、高いCa(カルシウム)可溶化活性を有するPMDやPOS、及びそれらの製造法を開示している。さらに、特許文献2において、PMDやPOSの多価金属塩類組成物並びにそれらの製造方法を開示している。これらの発明は水溶性に乏しいリン酸カルシウムを水溶性に維持する作用を有するPMDやPOSに関するものである。なお、本発明では、α−1,4及びα−1,6結合のぶどう糖からなる多糖で、ぶどう糖の重合度が10を越える化合物をマルトデキストリン(MD)と称し、10以下の重合度の化合物をオリゴ糖(OS)と称する。
また、本発明者らの一部は共同研究により、特許文献3において、馬鈴薯でん粉から得られるPOSの抗う蝕機能を有する組成物を開示し、さらに、特許文献4において、同じく馬鈴薯でん粉から得られるPOSをカルシウム強化剤として含有する飲食物を開示し、さらにまた、特許文献5において、同じく馬鈴薯でん粉から得られるPOSを味質改善剤として含有する飲食物を開示している。
馬鈴薯でん粉から得られるPOSの抗う蝕機能の発明に当たっては、本発明者らとの共同研究者らにより、馬鈴薯でん粉由来POSが従来の石灰化現象の抑制、虫歯菌のミュータンス菌に資化されない、グルカンを生成しない、pH緩衝作用を持つなどの作用(特許文献6に開示)の他に、虫歯を修復する再石灰化作用を有することが見出されて、特許文献3の発明に結びついたものである。同時に、該共同研究者らは、別に、馬鈴薯でん粉由来POSを除くpH緩衝作用を有する緩衝剤を含む組成物にも抗う蝕機能を認めて、特許文献7で開示している。
特許文献7の発明によれば、抗う蝕機能とは、う蝕予防機能とう蝕治療機能の両方を含み、(1)pH緩衝作用を有し、口腔内細菌の産生する酸によるpH低下を抑制する能力を有する。(2)口腔内細菌の作る不溶性グルカンの形成を抑制する能力を有する。(3)初期う蝕の歯の再石灰化を促進する能力を有する。のいずれか一つ以上を有することを意味するとしている。抗う蝕機能を有する緩衝剤として、POS及びそれらの糖アルコール、酸性糖質(オリゴガラクツロン酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸オリゴ糖、ぶどう糖−6−リン酸)、有機酸(酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸)、核酸(各種ヌクレオシド又はヌクレオチドのリン酸エステル)、アミノ酸などを挙げている。
一方、オリゴ糖や糖アルコールにも再石灰化を促進するもののあることが知られている。特許文献8には、パラチニットが歯の再石灰化を促進すると記載されている。特許文献9には、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール、イノシトールが歯の再石灰化を促進することが記載されている。ただし、これらのオリゴ糖や糖アルコールが再石灰化を促進するに有効な濃度は数%濃度とされている。従って、前述の馬鈴薯でん粉由来のPOSが0.2%という低い濃度で有効性を発揮することは、食品などへの利用面で極めて有利な特徴であるといえる。
馬鈴薯でん粉由来のPOSは、特許文献6に開示されているように、α−1,4結合した3〜5個のぶどう糖にリン酸基が1個結合したオリゴ糖群とα−1,4結合した2〜8個のぶどう糖にリン酸基が2個結合したオリゴ糖群の混合組成物であり、結合リンが3%以上と多い割にはCa可溶化活性がかなり低い特徴を有している。これに対して、本発明者らが特許文献1に開示しているように、でん粉にリン酸塩を混合してから焙焼して得られるリン酸でん粉を原料として、α−アミラーゼなどのでん粉分解酵素で加水分解して製造されるPMDやPOSは、結合リンが2%前後と少ないにもかかわらず、極めて高いCa可溶化活性を有している。すなわち、化学的に調製したリン酸でん粉から得られるPMDやPOSと、天然の馬鈴薯でん粉から得られるPOSとは、Caを可溶性に維持する機能においてかなりの違いが認められる。
特許文献7の発明によれば、緩衝作用を有するPOSは全て再石灰化作用を有するとされている。そこで、化学的に調製したリン酸でん粉から得られる結合リン1.8%のPMDについて、特許文献7に開示されている簡易再石灰化試験系で再石灰化作用を測定すると、試料濃度0.2%では再石灰化率は20%(ヒドロキシアパタイト非存在下のCa可溶化率−ヒドロキシアパタイト存在下のCa可溶化率)しか得られず、再石灰化促進効果を認めることができなかった。一方、馬鈴薯でん粉由来のPOSは同じ試料濃度0.2%で55%の再石灰化率となり、特許文献3に開示されている再石灰化促進効果が確認された。すなわち、化学的に調製したリン酸でん粉から得られるPMDやPOSには再石灰化促進効果の認められないことが明らかとなった。
特開平11−255803号公報 特開2002−145893号公報 特開2002−325556号公報 特開2002−253170号公報 特開2002−253164号公報 特開平8−104696号公報 特開2002−325557号公報 特開2000−247852号公報 特開平11−12143号公報
前述のように、結合リン3.6%の馬鈴薯でん粉由来POSには優れた再石灰化促進効果が認められるのに対して、化学的に調製したリン酸でん粉から得られる結合リン1.8%のPMDには再石灰化促進効果が認められない。その原因を考察すると、結合リン3.6%の馬鈴薯でん粉由来POSは、ヒドロキシアパタイトの存在しない反応系では可溶性のCaが多く、ヒドロキシアパタイトが存在すると可溶性のCaが少なくなる。このように、可溶性Caの差の大きいことがヒドロキシアパタイトへのCa沈着の増加となる。一方、リン酸でん粉由来の結合リン1.8%のPMDは、ヒドロキシアパタイトが存在しない反応系も、存在する反応系でも、共に可溶性のCaが多くなる。その結果、可溶性Caの差がほとんどなくなり、再石灰化率の低下につながっている。
そこで、馬鈴薯でん粉由来POSと同じような再石灰化促進作用を有するPMDを得るべく探索を試みた。結合リンの異なるリン酸でん粉を合成し、でん粉分解酵素による分解度の異なる各種PMD組成物を調製した。さらに、再石灰化試験に用いるPMD組成物の添加量を50mgから0.02mgまで変化させて再石灰化反応を行ったところ、驚いたことに、結合リンが0.2重量%と低く、重合度が10以上のデキストリンの範疇に入る鎖長のものが、再石灰化促進作用を有することを見出した。さらに、本発明を進める中で、再石灰化試験の測定条件を改善し、結晶性のヒドロキシアパタイトへのCaの沈着率を評価基準とする新しい再石灰化促進評価法を設定することにより、馬鈴薯でん粉由来のPOSよりも極めて低い濃度で再石灰化促進効果を示すPMDやPOSを含む組成物を見出すことに成功した。また、本発明の再石灰化促進評価法により、有機酸や単糖、オリゴ糖、糖アルコールなどの物質にも、ある濃度範囲で再石灰化促進効果を示す物質が存在することを見出した。しかも、PMDやPOSを含む組成物に有機酸を組み合わせると、Ca=15mMのような高いCa濃度において、高いCa沈着率を示す条件のあることを見出すに至った。
本発明は、極めて低い濃度でCa可溶化作用及び再石灰化促進作用を発揮する物質や組成物に関するものであり、Caなどの金属イオンを可溶性に維持する機能と、歯の初期う蝕を修復する再石灰化作用を促進する機能などの特性を有する物質や組成物を食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料、肥料に利用しようとするものである。
本発明者らは、馬鈴薯でん粉由来のPOSには優れた再石灰化促進効果が認められるにもかかわらず、化学的に調製したリン酸でん粉から得られるPMDやPOSには再石灰化促進効果が認められないことに強い疑問を感じて、再石灰化促進作用の有効性の高い物質をスクリーニングすべく、再石灰化試験法の見直し、改善を含めて鋭意検討を進めた結果、馬鈴薯でん粉由来のPOSには認められない、より優れた再石灰化促進効果を有する物質や組成物を見出すことに成功した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)下記の再石灰化試験測定法において、カルシウム可溶化率及びカルシウム沈着率を指標としてリン酸カルシウムの再石灰化促進作用を評価する方法。
再石灰化試験測定法:
(i)試料溶液の調製
試料を水に溶解し、pHを6.5〜7.0に調整して試料溶液を調製する。同一試料で同一添加量のヒドロキシアパタイト無添加反応とヒドロキシアパタイト添加反応を同時進行で行う。
(ii)ヒドロキシアパタイト無添加反応
ガラス製反応用容器に、緩衝液(pH7.0)、KHPO溶液、水及び(i)で得た試料溶液を入れる。得られた試料混合液の入った反応用容器を36±0.3℃の恒温槽に10分間以上静置してから、試料混合液のpHを7.00±0.02に調整する。pHの調整を終えた試料混合液は前記恒温槽に戻して10分間以上静置する。次いで、36±0.3℃でpHを7.00±0.02に調整された試料混合液に水を投入してからCaCl溶液を投入し、前記恒温槽に静置して反応を開始する。反応終了後、反応液の一部を採取して、遠心分離した後、上清を回収して、可溶性のカルシウム濃度を測定する。
(iii)ヒドロキシアパタイト添加反応
CaCl溶液を投入する前に、水の代わりにヒドロキシアパタイト懸濁液を加えることを除いて、(ii)のヒドロキシアパタイト無添加反応の場合と同様に、同一試料で同一添加量の反応を行い、反応終了液の可溶性のカルシウム濃度を測定する。
(iv)カルシウム可溶化率の算出
ヒドロキシアパタイト無添加の反応終了液における可溶性のカルシウム濃度を測定し、下記式からCa可溶化率を求める。
カルシウム可溶化率(%)=[ヒドロキシアパタイト無添加反応終了液上清の可溶性カルシウム/反応液に添加したカルシウム]×100
(v)カルシウム沈着率の算出
同一試料で同一添加量の反応において、ヒドロキシアパタイト無添加反応の終了液における可溶性のカルシウム濃度からヒドロキシアパタイト添加反応の終了液における可溶性のカルシウム濃度を差し引いた値の、反応液に添加したヒドロキシアパタイトに対する比率をカルシウム沈着率と設定し、下記式で求める。
カルシウム沈着率(%)={[ヒドロキシアパタイト無添加反応終了液上清の可溶性カルシウム−ヒドロキシアパタイト添加反応終了液上清の可溶性カルシウム]/反応液に添加したヒドロキシアパタイト}×100
(2)リン酸でん粉、リン酸マルトデキストリン、還元リン酸マルトデキストリン、リン酸オリゴ糖及び還元リン酸オリゴ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む組成物であって、下記の再石灰化試験測定法において当該組成物の添加量が0.002mg〜50mgの少なくともいずれかの時、カルシウム沈着率が5%以上、好ましくは10%以上となる作用を有する再石灰化促進剤。
再石灰化試験測定法:
(i)試料溶液の調製
試料溶液は当該組成物を水に溶解し、希NaOH溶液又は希HCl溶液でpHを6.5〜7.0に調整して調製する。得られた試料溶液は調製した当日に使用する。同一試料で同一添加量のヒドロキシアパタイト無添加反応とヒドロキシアパタイト添加反応を同時進行で行う。なお、水は全て精製水(電気抵抗が1μS以下に精製された水)を使用する。
(ii)ヒドロキシアパタイト無添加反応
JIS検定に合格した標準温度計で正確に36℃を表示し、温度変化が±0.3℃以内となる恒温槽を用意する。ガラス製の反応用バイアル瓶(容量13.5mL)に、HEPES緩衝液(200mM,pH7.0)1mL、KHPO(18mM)溶液1mL、水、及び(i)で得た0.002mg〜50mgの当該組成物を含む試料溶液を順次入れて、全量を8mLとする。得られた試料混合液の入ったバイアル瓶を36±0.3℃の恒温槽に10分間以上静置してから、試料混合液のpHを7.00±0.02に調整する。pH調整に用いる希NaOH溶液又は希HCl溶液の添加量は100μL以内とする。pHの調整を終えた試料混合液は前記恒温槽に戻して10分間以上静置する。次いで、36±0.3℃でpHを7.00±0.02に調整された試料混合液に水1mLを投入してから速やかにCaCl(30mM)溶液1mLを投入し、前記恒温槽に静置して24時間反応する。反応終了後、反応液の一部を採取して、12,000rpm、3分間遠心分離した後、上清を回収して、可溶性のカルシウム濃度を測定する。可溶性のカルシウム濃度はカルシウム測定キット(例えば、和光純薬製カルシウムCテストワコー)で測定し、ppm単位で表示する。
(iii)ヒドロキシアパタイト添加反応
予め、ヒドロキシアパタイト(例えば、Sigma−Aldrich Co.製のHydroxyapatite type 1)を5mg/mLの濃度で水に懸濁したヒドロキシアパタイト懸濁液を調製する。CaCl(30mM)溶液1mLを投入する前に、水1mLの代わりに前記ヒドロキシアパタイト懸濁液1mLを加えることを除いて、(ii)のヒドロキシアパタイト無添加反応の場合と同様に、同一試料で同一添加量の反応を行い、反応終了液の可溶性のカルシウム濃度を測定する。
(iv)カルシウム可溶化率の算出
ヒドロキシアパタイト無添加の24時間反応終了液における可溶性のカルシウム濃度を測定し、下記式からCa可溶化率を求める。
カルシウム可溶化率(%)=[ヒドロキシアパタイト無添加反応終了液上清の可溶性カルシウム(ppm)/反応液に添加したカルシウム(ppm)]×100
(v)カルシウム沈着率の算出
同一試料で同一添加量の反応において、ヒドロキシアパタイト無添加の24時間反応終了液における可溶性のカルシウム濃度からヒドロキシアパタイト添加の24時間反応終了液における可溶性のカルシウム濃度を差し引いた値の、反応液に添加したヒドロキシアパタイトに対する比率をカルシウム沈着率と設定し、下記式で求める。
カルシウム沈着率(%)={[ヒドロキシアパタイト無添加反応終了液上清の可溶性カルシウム(ppm)−ヒドロキシアパタイト添加反応終了液上清の可溶性カルシウム(ppm)]/反応液に添加したヒドロキシアパタイト(500ppm)}×100
(3)少なくとも1種の有機酸を含む組成物であって、前記(2)に記載の再石灰化試験測定法において当該組成物の添加量が0.01mg〜200mgの少なくともいずれかの時、カルシウム沈着率が5%以上、好ましくは10%以上となる作用を有する再石灰化促進剤。
(4)少なくとも1種の有機酸を含む組成物であって、前記(2)に記載の再石灰化試験測定法の両反応におけるCaCl濃度を5mM、KHPO濃度を3mMに置き換えた条件において当該組成物の添加量が5mg〜400mgの少なくともいずれかの時、カルシウム沈着率が5%以上、好ましくは10%以上となる作用を有する再石灰化促進剤。
(5)単糖、オリゴ糖及び糖アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む組成物であって、前記(2)に記載の再石灰化試験測定法において当該組成物の添加量が100mg〜1000mgの少なくともいずれかの時、カルシウム沈着率が5%以上、好ましくは10%以上となる作用を有する再石灰化促進剤。
(6)リン酸でん粉、リン酸マルトデキストリン、還元リン酸マルトデキストリン、リン酸オリゴ糖及び還元リン酸オリゴ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに少なくとも1種の有機酸を含む組成物であって、前記(2)に記載の再石灰化試験測定法の両反応におけるCaCl濃度を5mM、KHPO濃度を3mMに置き換えた条件において当該組成物の添加量が0.02mg〜1000mgの少なくともいずれかの時、カルシウム沈着率が5%以上、好ましくは10%以上となる作用を有する再石灰化促進剤。
(7)リン酸でん粉、リン酸マルトデキストリン、還元リン酸マルトデキストリン、リン酸オリゴ糖及び還元リン酸オリゴ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに有機酸、単糖、オリゴ糖及び糖アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む組成物であって、前記(2)に記載の再石灰化試験測定法において当該組成物の添加量が0.02mg〜1000mgの少なくともいずれかの時、カルシウム沈着率が5%以上、好ましくは10%以上となる作用を有する再石灰化促進剤。
(8)リン酸でん粉、リン酸マルトデキストリン、還元リン酸マルトデキストリン、リン酸オリゴ糖及び還元リン酸オリゴ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに少なくとも1種の有機酸を含む組成物であって、前記(2)に記載の再石灰化試験測定法の両反応におけるCaCl濃度を10〜15mM、KHPO濃度をCaCl濃度の60%モル濃度に置き換えた条件において当該組成物の添加量が0.02mg〜1000mgの少なくともいずれかの時、カルシウム沈着率が5%以上、好ましくは10%以上となる作用を有する再石灰化促進剤。
(9)前記組成物が多価金属塩を含む前記(2)〜(4)及び(6)〜(8)のいずれかに記載の再石灰化促進剤。
(10)リン酸マルトデキストリン及びリン酸オリゴ糖が、でん粉及び/又はでん粉分解物にリン酸及び/又はリン酸塩を混合してから焙焼して得られるリン酸でん粉及び/又はリン酸でん粉分解物を少なくとも1種のでん粉分解酵素で加水分解して製造されるリン酸マルトデキストリン及びリン酸オリゴ糖である前記(2)及び(6)〜(9)のいずれかに記載の再石灰化促進剤。
(11)リン酸マルトデキストリン、還元リン酸マルトデキストリン、リン酸オリゴ糖及び還元リン酸オリゴ糖の重合度が9以上である前記(2)及び(6)〜(10)のいずれかに記載の再石灰化促進剤。
(12)自身は再石灰化促進作用を示さないリン酸でん粉であって、後に加水分解されることによってリン酸マルトデキストリン及び/又はリン酸オリゴ糖を生成した時、前記(2)に記載の再石灰化試験測定法において、リン酸でん粉から生成するリン酸マルトデキストリン及び/又はリン酸オリゴ糖の添加量が0.002mg〜50mgの少なくともいずれかの時、カルシウム沈着率が5%以上、好ましくは10%以上となる作用を有する再石灰化促進剤。
(13)リン酸でん粉が、でん粉及び/又はでん粉分解物にリン酸及び/又はリン酸塩を混合した後、焙焼して製造されるリン酸でん粉、リン酸でん粉分解物、及びそれらの塩類である前記(2)、(6)〜(12)のいずれかに記載の再石灰化促進剤。
(14)還元リン酸マルトデキストリン及び/又は還元リン酸オリゴ糖が、でん粉及び/又はでん粉分解物にリン酸及び/又はリン酸塩を混合した後、焙焼して得られるリン酸でん粉及び/又はリン酸でん粉分解物を少なくとも1種のでん粉分解酵素で加水分解し、次いで、得られたリン酸マルトデキストリン及び/又はリン酸オリゴ糖を水添還元して製造される還元リン酸マルトデキストリン及び/又は還元リン酸オリゴ糖、及びそれらの塩類である前記(2)、(6)〜(9)及び(11)のいずれかに記載の再石灰化促進剤。
(15)食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料又は肥料の成分として用いられる前記(2)〜(14)のいずれかに記載の再石灰化促進剤。
(16)前記(2)〜(14)のいずれかに記載の少なくとも1種の再石灰化促進剤を含有することを特徴とする食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料又は肥料。
(17)マルトデキストリン及び/又はオリゴ糖を水添還元して製造された還元マルトデキストリン及び/又は還元オリゴ糖に、リン酸及び/又はリン酸塩を混合した後、焙焼して得られる還元リン酸マルトデキストリン、還元リン酸オリゴ糖及びそれらの塩類の少なくとも1種を含む組成物。
(18)マルトデキストリン及び/又はオリゴ糖を水添還元して製造された還元マルトデキストリン及び/又は還元オリゴ糖に、リン酸及び/又はリン酸塩を混合した後、焙焼して製造することを特徴とする還元リン酸マルトデキストリン、還元リン酸オリゴ糖及びそれらの塩類の少なくとも1種を含む組成物を製造する方法。
(19)前記(17)に記載の組成物からなる食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料又は肥料。
本発明は水溶性に乏しい故に生理的効果が発現し得ないリン酸カルシウムなどの金属塩を可溶性に維持するだけでなく、結晶性のリン酸カルシウムが存在すると水溶性のリン酸カルシウムを結晶に沈着させる作用、すなわち、再石灰化の促進作用を有する組成物を提供するものである。新しく設定した再石灰化試験法によるCa可溶化率及びCa沈着率によって再石灰化促進作用物質を探索し、リン酸でん粉、PMD、POS、還元PMD、還元POS、有機酸、糖類などの有効物質を見出した。さらに、再石灰化促進作用における有機酸や糖類と各リン酸化糖との相乗作用も見出し、Ca15mMの高濃度下でも再石灰化促進作用を示す組成物を提供する。
本発明の再石灰化促進作用を示す組成物は、食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料、肥料など広い分野で利用されるものである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、第一に重要な機能はリン酸カルシウムを可溶性に維持する機能である。本発明者らは特許文献1(特開平11−255803号公報)において、リン酸カルシウムを可溶性に維持する機能としてCa可溶化活性測定法を設定し、極めて高いCa可溶化活性を示すPOS、PMDを開示している。次に重要な機能は歯の結晶成分のようなリン酸カルシウムの結晶にリン酸カルシウムが沈着する再石灰化作用である。
前述のように、特許文献7(特開2002−325557号公報)において再石灰化作用を簡便に測定する方法が開示されている。再石灰化現象を、(1)構成成分であるカルシウム(Ca)イオン及びリン酸イオンが脱灰部に供給される。(2)供給されたCaイオン及びリン酸イオンが脱灰部のエナメル質の結晶成長に供される。と解析して、再石灰化促進物質とは、中性下でCaとリン酸との不溶化を抑制しつつ、歯の結晶成分であるヒドロキシアパタイトの結晶成長を促進する物質であるとしている。
再石灰化のこのようなメカニズムを応用した簡易再石灰化試験系は、(A)リン酸、Ca及び試料を含む溶液から歯成分の存在下でCa沈殿反応を進める工程。(B)該沈殿反応後における溶液中のCa濃度又はCa沈殿量を測定する工程。(C)該溶液から該歯成分の非存在下でCa沈殿反応を進める工程。(D)該歯成分の非存在下における沈殿反応の後、溶液中のCa濃度又は生成したCa沈殿量を測定する工程。(E)工程(B)及び(D)におけるCa濃度又は沈殿量を比較する工程。を包含するとし、歯成分として結晶のヒドキシアパタイトが使用できるとしている。
前述のように、本発明者らはCa可溶化活性の高いPMDに再石灰化促進作用が認められないことから、馬鈴薯でん粉由来POSと同じような再石灰化促進作用を有するPOSやPMDを得るべく探索を試みた。結合リンの異なるリン酸でん粉を合成し、でん粉分解酵素による分解度の異なる各種PMD組成物を調製して再石灰化試験を繰り返したところ、結合リンが0.2重量%と低く、重合度が10以上のデキストリンの範疇に入る鎖長のPMD組成物が、再石灰化促進作用を有することを見出した。
これらの探索研究の過程で、前記簡易再石灰化試験法について、反応条件や評価方法などを詳細に検討した。その結果、反応条件として、リン酸とCaの濃度及び比率が再石灰化作用に大きい影響を与えることを知った。リン酸カルシウムはCa濃度が高くなれば、急激にCaは不溶性となり、Ca濃度が一定でリン酸濃度だけが高くなっても、Caは不溶性化する。再石灰化作用を起こすには、取りも直さず、Caとリン酸が可溶性の状態で維持されなければならない。結晶のリン酸カルシウムに沈着する前にCaが不溶化すれば、リン酸カルシウムの結晶の成長にCaやリン酸が供給されなくなり再石灰化作用は起こらない。特にCaは、わずかな濃度変化で劇的にCaの可溶性状態を変えることが判明した。
もう一つ、意外にも温度がCaの可溶性を大きく変える因子であった。実験の再現性に不安があり、正確な温度で再石灰化試験反応を行うこととした。当初は、温度の影響をあまり考慮しないで、反応時間も長いことから、反応液の調製から反応開始まで室温で行い、37℃のインキュベーターに移して24時間放置していた。ところが、温度の違いが微妙にpHの違いにつながり、20℃位の室温で調整したpH7.0は、37℃ではやや低くなることが分かった。そこで、反応液の調製段階から37℃の恒温槽に入れて温度を調節し、反応初期から37℃で反応を開始できるようにすると、37℃、24時間の反応条件で、ヒドロキシアパタイト非存在下のCa可溶化率が大きく減少して、再石灰化率が低下することとなった。ちなみに、馬鈴薯でん粉由来のPOS(結合リン(P)=3.6重量%)を20mg添加して測定すると、再石灰化率は従来の測定条件では55%であったものが、わずか5%にまで減少した。
反応温度の影響を調べるには、正確な温度測定が必要となり、JIS検定に合格した標準温度計で正確に35、36、37℃を表示し、温度変化が±0.3℃以内となる恒温槽を用意した。少量の反応液ではpHの調整が困難であり、調整時の温度変化も大きいので反応液は全量で10mLとする反応系を設定した。標準的な反応液の組成は表1に示す。
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CaCl溶液及びヒドロキシアパタイト懸濁液を投入する前に、試料混合液を各温度の恒温槽に10分間以上静置してから、試料混合液のpHを7.00±0.02に調整した。再度、恒温槽に10分間以上静置してから、ヒドロキシアパタイト存在反応系ではヒドロキシアパタイト懸濁液を投入し、速やかにCaCl溶液を投入して反応を開始した。ヒドロキシアパタイト非存在反応系ではヒドロキシアパタイト懸濁液の代わりに精製水(電気抵抗が1μS以下に精製された水)を添加してから同様にして反応を開始した。恒温槽に静置して24時間反応させた。反応終了後、反応液の一部を採取して、12,000rpm、3分間遠心分離した後、上清を回収して、Ca濃度を測定した。Ca濃度はCa測定キット(和光純薬製カルシウムCテストワコー)で測定した。前述の馬鈴薯でん粉由来POSの20mg添加における、35、36、37℃の各温度での再石灰化率は、70%、67%、5%であった。36℃と37℃との間で、再石灰化率に大きい差が認められ、測定結果の再現性に対する疑問が解消されることとなった。
反応温度の影響が極めて大きいことが判明したので、再度、Caやリン酸の濃度の影響を調べた。反応温度は体温に近い36℃を採用して検討を進めた。Ca/P(モル比)=5/3と一定にして、Ca濃度を変化させると、Ca=1.8mMでは、促進物質を加えない反応系でも再石灰化率は60%であった。すなわち、試料なしの反応系でも再石灰化率は60%と高い値を示すだけでなく、試料として馬鈴薯でん粉由来POSを20mg添加しても再石灰化率はほとんど増加せず、再石灰化促進作用は認められなかった。人の唾液に含まれるCa濃度は1.8mM前後といわれており、この条件ではリン酸濃度が高くならない限り自然に再石灰化が行われていることになる。このことは、有機酸によりリン酸カルシウムが溶解した歯の表面に、中性、Ca=1.8mMの物理的条件下で唾液から供給されるリン酸カルシウムが沈着することによって、絶えず歯は修復されていることを示している。ところが、Ca濃度が高くなるにつれ、溶解性のCa濃度が逆に低下していき、Ca=2.5mMでは溶解性Ca濃度はCa=1.8mMの60%程度となり、Ca=3.0mMでは50%以下となる。その結果、促進物質を加えない反応系の再石灰化率はCa=2.5mMでは20%前後、Ca=3.0mMでは6%前後となる。
しかし、供給されるCaの濃度が高くなっておれば、多少、再石灰化率が減少しても歯の表面に沈着するCaが減少しなければ歯は修復されると考えることもできる。そこで、ヒドロキシアパタイトに対するCaの沈着率を調べてみると、Ca=1.8mMでは反応系のヒドロキシアパタイトに対して9%程度のCaが沈着している計算となる。ところが、Ca=2.5mM、Ca=3.0mMのCa沈着率を同様に求めると、それぞれ、4%程度、2%以下と低下することが判明した。このことは、食品から可溶性のCaが供給されても、再石灰化の観点からすれば、むしろマイナスに作用することを示している。36℃、24時間、Ca=3.0mM、P=1.8mMの条件で簡易再石灰化試験を行うと、前述の馬鈴薯でん粉由来POSは20mg添加で再石灰化率が67%を示し、Ca沈着率は13%となる。すなわち、再石灰化促進物質が存在しなければ、Ca=3.0mMでは2%以下にまで低下するCa沈着率が、馬鈴薯でん粉由来POSを添加することにより、唾液のCa=1.8mMにおけるCa沈着率9%より高い13%の沈着率に達したこととなる。抗う蝕機能の中でもっとも重要な機能である再石灰化促進作用が、前記のようにCa濃度が高くなったときに発揮されることにより、特許文献3(特開2002−325556号公報)に示されるような、馬鈴薯でん粉由来POSを含有するガムで再石灰化効果が確認されることにつながったものと思われる。
さらに、唾液に含まれるリン酸の濃度は3mM程度とされており、Ca濃度より高い濃度で存在する。リン酸カルシウム結晶のモル比はCa/P=5/3であって、Ca濃度よりリン酸濃度の低い方が再石灰化には好ましい。唾液のCa/Pモル比を高くするにはCaの供給が必要であり、Caを食品から供給すれば、必然的に唾液中のCa濃度は2mMより高くなり、Ca濃度が5mMに達すれば、Ca/Pモル比は5/3に近づくことになる。しかし、ここで重要なことはCa濃度が3mMから5mMの間で、再石灰化率を高く維持することである。前述のように、Ca/P=5/3の条件で、再石灰化率はCa=3mMでは6%前後、Ca=5mMでは3%前後となり、Ca沈着率はいずれも2%未満でしかない。
これまで述べてきたように、再石灰化率は同じCa濃度での増減は比較できるが、Ca濃度が変われば比較が困難となる。すなわち、Ca濃度が高い時には、再石灰化率は低くてもCa沈着率はCa濃度の低いときよりも大きくなることがある。そこで、Ca沈着率を比較することにより、再石灰化促進作用を評価することとした。
本発明のきっかけは、前述のように、馬鈴薯でん粉由来で結合P=3.6重量%のPOSには優れた再石灰化促進効果が認められるのに対して、化学的に調製したリン酸でん粉から得られる結合P=1.8重量%のPMDには再石灰化促進効果が認められないことであった。簡易再石灰化試験の可溶性Caの測定値を見ると、馬鈴薯でん粉由来POSは、ヒドロキシアパタイトのない反応系では可溶性Ca濃度が高く、ヒドロキシアパタイトが存在する反応系では可溶性Ca濃度が低くなり、再石灰化率が高くなる。一方、リン酸でん粉由来PMDでは、ヒドロキシアパタイトのない反応系の可溶性Ca濃度が高いものの、ヒドロキシアパタイトの存在する反応系でも可溶性Ca濃度が高くなるため、再石灰化率が低くなっている。
天然の馬鈴薯でん粉の結合Pは0.1重量%未満であり、糖化原料として使用されている馬鈴薯でん粉の平均結合Pは0.05重量%程度である。リン酸でん粉の調製条件を変更して結合Pが1重量%未満のリン酸でん粉を作り、α−アミラーゼで分解して結合リンの異なるPMDを各種作製した。一例として、結合P=0.23重量%のPMDについて、36℃、24時間、Ca=3.0mM、P=1.8mMの簡易再石灰化試験系で測定すると、20mgの添加で再石灰化率は61%となり、Ca沈着率は12%であった。前述のように、同じ条件で結合P=3.6重量%の馬鈴薯でん粉由来POSは20mgの添加で再石灰化率は67%、Ca沈着率は13%である。ところが、驚いたことに結合P=0.23重量%のPMDはその添加量を0.02mgまで少なくしても、Ca沈着率は10%を示すことが判明した。これに対して、馬鈴薯でん粉由来POSは2mgから0.5mg添加までCa沈着率が13%以上を維持するものの、0.2mg添加ではCa沈着率は7%となり、0.1mg添加のCa沈着率は5%に低下して、再石灰化促進作用をあまり示さなくなる。すなわち、リン酸でん粉を原料として調製されるPMDやPOSは天然の馬鈴薯でん粉由来のPOSと異なり、結合リンが1/15と少ないにもかかわらず、10倍以上の再石灰化促進作用を示すことが明らかとなった。
前述の特許文献7(特開2002−325557号公報)では、緩衝剤が再石灰化促進作用に有効であるとされている。しかしながら、リン酸でん粉由来のPMDは結合リンが少ないにもかかわらず、強い再石灰化促進作用を示しており、同じCa沈着率を示す添加量における緩衝能力を比較すると、pH7.0の試料液をpH6.0に下げるに要する塩酸の使用量は、馬鈴薯でん粉由来POS(結合P=3.6重量%)の方がリン酸でん粉由来のPMD(結合P=0.23重量%)より1000倍以上も多く必要とした。すなわち、リン酸でん粉由来のPMDは、緩衝能力を発揮し得ない極めて低い濃度でも再石灰化促進作用を示しており、再石灰化を促進する条件では緩衝能力はほとんど機能していないと思われる。
そこで、緩衝剤として広く利用されている有機酸にも注目してみた。有機酸は歯を溶解する虫歯原因物質であって、到底、再石灰化促進作用を示すとは考えられなかった。乳酸は口中で糖質が微生物により分解されて生成する代謝産物であり、最も虫歯の原因物質とされている。驚いたことに、36℃、24時間、Ca=3.0mM、P=1.8mMの条件で再石灰化試験すると、100mgの乳酸添加は意外にも14%のCa沈着率を示した。さらに、20mg添加まで乳酸は10%以上のCa沈着率を示し、その後、10mg添加ではCa沈着率は5%まで急減した。乳酸の再石灰化促進作用には濃度依存性が大きく、10%以上のCa沈着率を維持する添加量は20から200mgの範囲でしかなかった。これに対して、前述のリン酸でん粉由来のPMD(結合P=0.23%)の添加量は0.02mgから20mgと1000倍もの広い濃度範囲で10%以上のCa沈着率を維持している。乳酸とリン酸でん粉由来のPMDとの再石灰化促進作用における添加量の挙動からも、緩衝能力が直接、再石灰化促進作用に結びつくのではなく、各成分とCaイオンとの微妙な相互作用が再石灰化促進作用につながっていると推察される。
さらに、Ca濃度を5mMに高くすることができれば、唾液のリン酸濃度とのバランスがリン酸カルシウム結晶の組成に近づくことになる。従って、Ca=5mMの条件で再石灰化を促進する物質は抗う蝕機能の面でより優れた効果が期待される。ところが、馬鈴薯でん粉由来のPOS(結合P=3.6%)やリン酸でん粉由来のPMD(結合P=0.23%)はCa=5mMの条件になると、簡易再石灰化試験では再石灰化率が極めて低く、Ca沈着率は2%未満となった。そこで、結合Pが2重量%を超えるリン酸でん粉を調製してPMDを作成し、36℃、24時間、Ca=5.0mM、P=3.0mMの条件で簡易再石灰化試験を行った。ところが、結合P=2.8重量%のPMDは20mgの添加量でも、Ca=5.0mMではCa沈着率は5%未満でしかなかった。なお、このPMD(結合P=2.8重量%)は、Ca=3.0mMにおいて、20mgの添加では再石灰化促進作用をあまり示さないが、添加量を0.02mgに少なくすると19%のCa沈着率が得られるようになり、再石灰化促進作用を示すことを見出している。
一方、乳酸は添加量100mgにすると、前述のCa=5mMの反応条件でCa沈着率は17%が得られ、PMDやPOSでは到底有効性を発揮できないCa高濃度下で、乳酸は高い再石灰化作用を示した。しかしながら、乳酸の添加量をを20mgに少なくすると、Ca沈着率が2%未満に急減し、単独では高濃度が必要であった。そこで、100mgの乳酸に2mgのリン酸でん粉由来のPMD(結合P=0.23重量%)を加えてみると、Ca沈着率が20%以上に大きく増加して、著しい再石灰化促進作用が出現した。さらに、乳酸単独では効果を示さない50mg添加であっても、リン酸でん粉由来のPMD(結合P=0.23重量%)をわずかに0.2mg加えるだけで、Ca沈着率が25%と極めて高い値に達した。Ca=5mMの高濃度では、再石灰化は極めて困難であり、促進作用物質であっても高濃度を要求されることとなる。この時、リン酸でん粉由来のPMDと有機酸を混合使用すれば、より少ない添加量で再石灰化を促進することができるようになることが明らかとなった。このようなPMDと有機酸との組み合わせによる再石灰化促進作用における相乗作用の出現は、両者の作用機構が異なることによって起こると推察される。従って、PMDと有機酸との相乗作用は単に緩衝作用を有することが再石灰化促進作用に結びつくものではないことを示しており、作用の異なる再石灰化促進作用を有する物質の組み合わせにより、より少ない添加量で再石灰化作用を促進することができることになる。PMDと有機酸との相乗作用程の著しい効果はないが、組み合わせによる再石灰化の促進は、馬鈴薯でん粉由来のPOS(結合P=3.6重量%)でも認められる。Ca=3mMでは、馬鈴薯でん粉由来のPOSは0.5mg添加でCa沈着率が15%であったものが、0.2mg添加ではCa沈着率が7%に低下する。これに10mgの乳酸を添加すると、Ca沈着率は16%まで高められ、POSと乳酸両者のCa沈着率の合計値とほぼ同等であった。
再石灰化促進剤として期待される有機酸としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、コハク酸、酢酸、乳酸、アジピン酸、イタコン酸、フィチン酸、安息香酸、アスコルビン酸、グルコノデルタラクトン、α−ケトグルタール酸、酸性アミノ酸が挙げられる。これらの有機酸は、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、アルミニウム塩として用いることもできる。
さらに、本発明者らは新しい再石灰化評価法により、再石灰化促進作用を有する単糖、オリゴ糖、糖アルコールを見出している。その上、再石灰化作用を示す糖質、キシリトールなどがPMD組成物と相乗作用を示すことを見出した。Ca=3mMの条件で、キシリトールを100mg添加すると6%のCa沈着率を示すが、これにリン酸でん粉由来のPMD(結合P=0.23重量%)をわずかに0.2mg加えるだけで、Ca沈着率が18%と高い値を示した。次いで、単独では促進作用を示さない糖質についても、同様に再石灰化試験を行うと、糖アルコールではほとんど全ての糖質に微量のリン酸でん粉由来のPMD(結合P=0.23重量%)を加えると高いCa沈着率を示した。さらにまた、糖アルコール以外の糖質である、単糖、オリゴ糖などについて調べたところ、ほとんど全ての糖質に微量のリン酸でん粉由来のPMD(結合P=0.23重量%)を加えるとCa沈着率が高められることが判明した。
再石灰化促進剤として期待される単糖としては、例えばぶどう糖、果糖、マンノース、ガラクトース、タロース、ソルボース、タガトース、デオキシグルコース、プシコース、フコース、ラムノース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、キシロース、アラビノース、リボース、デオキシリボース、リキソース等が挙げられる。
再石灰化促進剤として期待されるオリゴ糖としては、例えば水あめ、ショ糖、パラチノース、セロビオース、キシロビオース、メリビオース、キトビオース、キチビオース、ラクチュロース、ゲンチオビオース、パラチノース、トレハロース、トレハルロース、コウジビオース、ニゲロース、ラミナリビオース、ビシアノース、プリメブロース、ロジメナビオース、ラクトース、ラフィノース、スタキオース、ツラノース、ソホロース、アロラクトース、カップリングシュガー、パラチノースオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖等が挙げられる。
再石灰化促進剤として期待される糖アルコールとしては、例えばキシリトール、ソルビトール、マルチトール、パラチニット、還元水あめ、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール、アラビニトール、ラクチトール、パラチニット、リビトール、トレイトール、アリトール、イソマルチトール、イノシトール、クエルシトール、イノソース、還元澱粉糖化物等が挙げられる。
以上の検討結果から、Caを溶解する能力が認められる物質には再石灰化促進作用が認められること、その効果発現には緩衝作用と関係なく、適度な濃度となる添加量が必要であることが明らかとなった。これらの再石灰化促進物質は添加量が多くても、再石灰化作用を妨げることがあり、添加量が少なければ全く促進効果を示さない現象が起こりうる。従って、有効濃度を知ることが重要であり、本発明の再石灰化試験法によるCa沈着率測定はその点で極めて利用価値の高い評価法である。唾液中のCa濃度では9%のCa沈着率を示すことから、Ca沈着率を10%以上に高めることをもって、再石灰化促進作用ありと判定することが好ましい。しかしながら、食事によって食品由来のCaが加えられて唾液のCa濃度が高まるCa=3〜5mMではCa沈着率が2%未満に低下することを考えれば、このようなCa高濃度下で5%以上のCa沈着率が得られるなら、再石灰化促進作用ありと判定することができる。
本発明者らは、特許文献1(特開平11−255803号公報)においてリン酸カルシウムを可溶性に維持する能力に優れたPMDやPOSについて開示している。本発明は、特許文献1の開示内容からは予測できなかった再石灰化促進作用に関するものであり、しかもCa可溶化活性の高いものが必ずしも再石灰化促進作用に優れるとは限らないことを見出したものである。さらに特許文献3(特開2002−325556号公報)において、馬鈴薯でん粉由来のPOSに抗う蝕機能を有する組成物を開示している。しかしながら、合成のリン酸でん粉から調製されるPMDやPOSに極めて強い再石灰化作用があり、馬鈴薯でん粉由来のPOSと異なり、緩衝作用をほとんど示さない濃度で再石灰化作用を示すことは全く予測できなかったことである。また、新しく開発した再石灰化の評価法により、有機酸や糖アルコール、単糖、オリゴ糖にも再石灰化促進作用を示す有効濃度が存在することやPMDやPOSと再石灰化の相乗作用を示すことを見出したことは、これまで知られていない現象である。
本発明では、原料及びその製造方法の如何を問わず、でん粉をリン酸化して得られるリン酸でん粉に少なくとも1種のでん粉分解酵素を作用させて製造されるPMD及び/又はPOSを含む組成物であって、本発明の再石灰化試験法によってCa沈着率が5%以上、好ましくは10%以上を示すPMD及び/又はPOSを含む組成物が全てその対象となる。もちろん、Ca沈着率が5%以上、好ましくは10%以上を示すリン酸でん粉も対象であり、リン酸でん粉には、リン酸がエステル結合しているリン酸エステルでん粉や尿素リン酸エステルでん粉などが含まれる。食品添加物として認可されているリン酸でん粉は、でん粉リン酸エステルナトリウムであり、結合リンとして0.2〜3重量%のリンを含み、遊離のリン、すなわち無機リンの含量は全体のリン(全リン)の20%以下と規定されている。
リン酸でん粉の原料となるでん粉は、とうもろこし、馬鈴薯、甘薯、タピオカ、小麦、大麦、米など植物起源のでん粉だけでなく、いずれの起源のでん粉でも使用することができる。また、起源にかかわらず、でん粉を物理的、化学的処理により変性されたでん粉も使用することができる。さらに、酵素処理により部分分解されたでん粉、すなわち、でん粉分解物も同様に原料として使用できる。馬鈴薯でん粉のような結合リンを有する天然のリン酸でん粉も原料となり得るが、合成のリン酸でん粉を原料とする場合、リン酸でん粉の合成方法は特に限定されない。リン酸でん粉の製造方法としては、通常、でん粉スラリーにリン酸及び/又はリン酸塩を混合してから脱水し、乾燥・焙焼する方法、でん粉の脱水ケーキにリン酸及び/又はリン酸塩溶液を噴霧して乾燥・焙焼する方法、でん粉乾粉にリン酸及び/又はリン酸塩溶液を混合して乾燥・焙焼する方法などが用いられる。これらの焙焼方法で、さらに薬品として尿素を添加すると尿素リン酸エステルでん粉を合成することができる。でん粉スラリーを原料とする場合には、スラリー濃度は均一な流動性を維持する観点から、30〜50重量%、好ましくは35〜45重量%で用いられる。
リン酸及び/又はリン酸塩としてはリン酸、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウムなどのリン酸ナトリウム塩やリン酸一カリウム、リン酸二カリウム、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸カリウムなどのリン酸カリウム塩やリン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウムなどのリン酸アンモニウム塩、さらにオキシ塩化リンなど広くリン酸塩が使用できる。
リン酸及び/又はリン酸塩の添加量はその種類によって異なるが、でん粉の重量に対して0.5〜240重量%であり、好ましくは5〜40重量%である。なお、尿素リン酸エステルでん粉の合成にはリン酸塩の他に尿素の添加が必要である。尿素の添加量はでん粉の重量に対して0.5〜240重量%であり、好ましくは5〜60重量%である。pHを調整するために、酸、アルカリを使用することができる。酸としては、当然リン酸を用いることができ、リン酸以外に塩酸、硫酸、亜硫酸などを使用することができる。アルカリとしてはNaOH、KOH、Ca(OH)などを用いることができる。
でん粉とリン酸及び/又はリン酸塩との混合物(尿素リン酸エステルでん粉の合成の場合には尿素も含む)は水分を除くため乾燥するのが望ましい。リン酸化反応となる後工程の焙焼において、水分が多いとリン酸化率(結合リン/全リン×100)を高めることが困難となり、得られるリン酸でん粉の着色が進むなどの問題が生じる。でん粉をリン酸化する焙焼の条件としては、焙焼温度が高くなるほど、焙焼時間が長くなるほど結合リンは増加するが、焙焼品の色が赤褐色となる。従って、焙焼の条件は温度としては、100〜250℃、好ましくは130〜200℃の温度で、焙焼時間としては、5分から24時間、好ましくは10分〜4時間の範囲で加熱するのが好ましい。
これらのリン酸化法以外にも、本発明者らが特許文献1(特開平11−255803号公報)に開示しているように、でん粉とリン酸及び/又はリン酸塩とを混合した後、糊化・乾燥してから焙焼する方法も採用される。糊化・乾燥法としては、例えば、でん粉スラリーにリン酸及び/又はリン酸塩を加えて溶解した後、ドラムドライヤーで糊化・乾燥する方法や、でん粉乾粉にリン酸及び/又はリン酸塩を加えて必要に応じて水を加えながらエクストルーダー処理して糊化・乾燥する方法などがある。
本発明では、前述の方法で得られるリン酸でん粉のCa沈着率が5%以上となる再石灰化促進作用を有するリン酸でん粉そのものがその対象となるだけでなく、リン酸でん粉そのものは前記再石灰化促進作用を有さなくとも、リン酸でん粉を原料とする食品の加工工程において、他の原料に含まれるでん粉分解酵素によりリン酸でん粉が分解を受けて再石灰化促進作用を示す場合、元のリン酸でん粉は再石灰化促進剤となり得る。さらに、食品に添加されたリン酸でん粉は、人の唾液に含まれるでん粉分解酵素により加水分解を受けて低分子化したPMDやPOSを生成し、これらが再石灰化促進作用を示す場合、当然、元のリン酸でん粉は再石灰化促進剤となり得る。また、でん粉を低分子化してからリン酸化する方法も採用され得る。しかしながら、でん粉の低分子化を進めると、加熱焙焼時の着色が進み、脱色精製が困難となることが判明した。このような場合、還元でん粉分解物や還元麦芽水あめのようなでん粉の加水分解物を水添還元して製造された糖アルコール混合物を原料としてリン酸化反応を行うと、Ca沈着率の高い還元PMD及び/又は還元POSを含む組成物が製造されることを見出した。しかも、焙焼反応で得られる還元PMD及び/又は還元POSを含む組成物は着色度が低いことから、そのまま商品となり得るだけでなく、精製が容易であって純度の高い製品を製造することが可能となる。
このように還元デキストリン(還元でん粉分解物)や還元麦芽水あめを原料としてリン酸化して製造される還元PMDや還元POSの着色物質生成が、でん粉を原料としてリン酸化して製造されるリン酸でん粉の着色物質生成より少ないことは、リン酸でん粉を酵素分解して得られるPMDやPOSを水添還元して製造される従来の還元PMDや還元POSに比べて精製工程の負荷が少なくなり、工業生産に適した製造法である。しかも、着色物質の生成はリン酸化の焙焼工程で一部の糖が分解することによって起こるとされている。従って、本発明の還元デキストリンや還元水あめを原料としてリン酸化により製造される還元PMDや還元POSは、リン酸デキストリンやリン酸オリゴ糖を水添還元して得られる従来の還元PMDや還元POSとは、厳密には異なる新規な組成を有するリン酸化糖であると思われる。
本発明のPMDやPOSを含む組成物は、前述のリン酸でん粉をα−アミラーゼで分解して低分子化することにより得られる。低分子化により粘度が低下するため、食品などへの利用用途が大きく拡大される。本来、分解に用いる酵素はでん粉をランダムに切断するα−アミラーゼであれば全て用いることができ、当然2種以上の酵素を混合して用いることもできる。α−アミラーゼとしては、工業的なでん粉の分解(以下、「液化」ともいう)に多用されている耐熱性液化型α−アミラーゼの他に、中温性液化型α−アミラーゼ、糖化型α−アミラーゼ、糖転移酵素のCGTase(Cyclomaltodextrin glucanotransferase)やTVA(Thermoactinomyces vulgarisのα−アミラーゼ)などが使用できる。しかし、工業生産に適応した酵素としては耐熱性の液化型α−アミラーゼが分解能力及びでん粉の溶解力において優れている。リン酸でん粉にα−アミラーゼを作用させる条件は、酵素の種類により異なるが、通常用いられている酵素の作用温度条件を採用することができる。用いる酵素は80〜110℃で有効に作用する耐熱性液化型α−アミラーゼが好ましく、いずれの起源のものでも使用できる。具体的には、細菌起源の高耐熱性α−アミラーゼであるターマミル120L及びL/S(ノボザイムズ ジャパン製、Bacillus licheniformis由来及び同由来とBacillus stearothermophilus混合物)、ネオスピターゼPG2(ナガセ生化学工業製、Bacillus subtilis由来)、クライスターゼT(大和化成製、Bacillus subtilis由来)などの市販酵素を用いることができる。
基質となるリン酸でん粉は10〜40重量%濃度のスラリーとし、水酸化カルシウム及び/又は水酸化ナトリウムを加えて、通常pH6.0〜6.3に調整する。耐熱性α−アミラーゼは安定剤として50ppm以上のカルシウム・イオンを必要とするので、pH調整用アルカリとしては水酸化カルシウムが主に使用される。酵素添加量は使用する酵素によって大きく異なるが、0.0001〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%(対でん粉)である。反応のpHも使用する酵素によって異なるが、通常pH4〜7の間で行われる。工業生産におけるでん粉分解反応(液化反応)では、でん粉の老化を防ぐため、α−アミラーゼ添加後の反応開始温度を100〜110℃に高めて2〜15分、加圧条件で処理した後、90〜100℃の高温で30分〜5時間程度酵素分解を進めて行われている。
α−アミラーゼによるリン酸でん粉の分解は工業生産における分解反応と異なり、必ずしも100〜110℃、加圧というような厳しい分解条件を必要とはしない。結合リンの多寡によって異なるものの、結合リンがでん粉の老化を防ぐ役割を果たすことから、100℃以上の厳しい反応条件は必ずしも必要ではない。しかしながら、分解反応の高温処理は分解液の濾過性をよくして操業を容易にするなどの面から好ましい。具体的には、最終濃度として10〜40重量%となるようにリン酸でん粉を採取し、2.8重量%の塩化カルシウムを全液量の1/100量加え、1N−NaOH溶液でpHを6.3に調節する。これに、ターマミル120Lを0.1重量%(対リン酸結合でん粉)加えて耐圧容器に移す。105℃で5分間加熱後、95℃で1時間液化反応を継続する。
リン酸でん粉をα−アミラーゼのみで処理して得られるPMD組成物は極めて強い再石灰化促進作用を有しており、そのまま濃縮すれば製品となり得る。しかし、リン酸でん粉のα−アミラーゼ処理のみで得られるPMD組成物の平均重合度は10〜50であり、オリゴ糖(重合度10以下)よりもデキストリン(重合度10〜数100)の範疇に入る重合度を有している。通常のオリゴ糖より分子量がかなり大きいため、そのまま製品として濃縮すれば、製品の粘度が高くなって食品としての使用に制限が起こる場合もある。さらに製品の重合度を小さくして、粘度を下げるには、α−アミラーゼを含む各種でん粉分解酵素や糖転移酵素の1種又は2種以上の酵素、さらにこれら各種酵素の1種以上の酵素にα−グルコシダーゼを加えた酵素群による追加分解反応(以下、「糖化反応」という)を行うことができる。なかでも、グルコアミラーゼ、β−アミラーゼ、糖化型α−アミラーゼなどのでん粉分解酵素がオリゴ糖組成物の重合度の低下に有効性の高い酵素として推奨される。他に、単独では重合度低下作用が少ないものの、グルコアミラーゼなどとの組み合わせにより効果を示す酵素として、液化型α−アミラーゼ、CGTase(Cyclomaltodextrin glucanotransferase)、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、TVAなどが挙げられる。
従来技術では、低分子化を進めるための追加分解にはグルコアミラーゼが主に使用され、さらに、枝切り酵素であるプルラナーゼやα−アミラーゼを同時に作用させている。本発明者らによる先願発明(特許文献1)においても、耐熱性液化型α−アミラーゼで処理した後、グルコアミラーゼとプルラナーゼの混合酵素剤であるデキストロザイム(ノボザイムズ ジャパン製)を使用して低分子化を進めている。合成したリン酸でん粉を液化型α−アミラーゼで分解処理して得られたPMD組成物をさらに追加分解する場合、グルコアミラーゼの市販酵素剤AMG(ノボザイムズ ジャパン製、Aspergillus niger由来)、β−アミラーゼの市販酵素剤であるBBA(ジェネンコア製、大麦由来)が用いられる。なお、グルコアミラーゼにより追加分解して得られるPOS組成物の平均重合度は1〜4であり、β−アミラーゼで追加分解して得られるPOS組成物の平均重合度は4〜8であった。でん粉分解酵素による追加分解反応の条件は酵素の種類によって大きく異なるが、通常、反応温度は20〜70℃、pHは4〜7、分解(糖化)時間は0.5〜96時間、酵素添加量は原料の固形分に対して0.0001〜1重量%である。なお、追加分解反応に用いる酵素は最初の分解で使用する液化型α−アミラーゼ処理と同時に用いることもできる。
リン酸でん粉の酵素分解物には、添加酵素や分解反応で生成する凝集タンパク質や未分解でん粉など不溶性物質が含まれる。さらに、でん粉のリン酸化反応における未反応の無機リンや中和に用いた塩類なども不純物として含まれている。不溶性物質は濾過や膜処理で除去されるが、塩類や無機リンを除くにはイオン交換樹脂処理、ナノフィルトレーション(NF)膜処理、イオン交換膜処理などによる脱塩処理が必要である。リン酸でん粉を酵素分解して得られるPMDやPOSを含む組成物を脱塩処理することにより、全リンに対する無機リン比率を減少させることができる。原料のリン酸でん粉の無機リン比率が20%以上と高くとも、これらの脱塩精製処理により、食品添加物として規定されているでん粉リン酸エステルナトリウムと同等の無機リン比率が20%以下となるPMDやPOSを含む組成物を得ることができる。
なお、食品添加物であるリン酸でん粉は、そのまま食品に添加することができる。しかも、α−アミラーゼによって低分子化されてPMDやPOSに変換されるので、リン酸でん粉をそのまま食品に加えて使用しても、加工工程中に他原料由来のα−アミラーゼが存在すれば、リン酸でん粉が高いCa沈着率を有するPMDやPOSに変換される可能性がある。また、食品にα−アミラーゼが存在しなくとも、食品として咀嚼中に唾液のα−アミラーゼの作用によりリン酸でん粉はPMDやPOSに変換される可能性がある。さらに、咀嚼だけでリン酸でん粉の低分子化が不十分な場合でも、小腸では膵液のα−アミラーゼの作用によりPMDやPOSに変換される可能性がある。すなわち、リン酸でん粉を高分子のままで食品に添加しても、体内でPMDやPOSが生成し、高いCa沈着率を示す可能性がある。勿論、前述のように、リン酸でん粉を耐熱性液化型α−アミラーゼによって低分子化すれば、粘度が低く、Ca沈着率の高いPMDやPOSを含む組成物が安価に大量に工業生産され、食品への利用が大きく広げられると期待される。
次に、本発明における再石灰化試験法の測定方法とCa沈着率の定義を示す。
(1)試料溶液の調製
本試験に用いる試料は、PMD及び/又はPOSを含む組成物、リン酸でん粉、還元PMD及び/又は還元POSを含む組成物、有機酸、単糖、オリゴ糖、糖アルコールなどであり、基本的に各試料を水に溶解して濃度2重量%溶液としたものを試料溶液とした。しかし、必要に応じて高い濃度の試料溶液も調製して使用した。なお、最終濃度の調整直前に、希NaOH溶液又は希HCl溶液でpHを6.5〜7.0に調整して試料溶液を調製する。得られた試料溶液は調製した当日に使用する。同一試料で同一添加量のヒドロキシアパタイト無添加反応とヒドロキシアパタイト添加反応を同時進行で行う。なお、水は全て精製水(電気抵抗が1μS以下に精製された水、例えば、蒸留水の脱塩水をMILLIPORE社製MILLI−Q Laboで再生成した水)を使用する。
(2)ヒドロキシアパタイト無添加反応
反応初期の温度は厳密を要するため、JIS検定に合格した標準温度計で正確に36℃を表示し、温度変化が±0.3℃以内となる恒温槽を用意する。(1)で得た試料溶液を必要に応じて水で希釈して表1の標準反応液組成を調製する。反応用バイアル瓶(ガラス製、容量13.5mL)に、HEPES緩衝液(200mM,pH7.0)、KHPO(18mM)溶液、水、各濃度の試料溶液の順に入れる。得られた試料混合液の入ったバイアル瓶を36±0.3℃の恒温槽に10分間以上静置してから、試料混合液のpHを7.00±0.02に調整する。pH調整に用いる希NaOH溶液又は希HCl溶液の添加量は100μL以内とする。pHの調整を終えた試料混合液は前記恒温槽に戻して10分間以上静置する。次いで、36±0.3℃でpHを7.00±0.02に調整された試料混合液に水1mLを投入してから直ちにCaCl(30mM)溶液1mLを投入して前記恒温槽に静置し、24時間反応する。反応終了後、反応液の一部を採取して、12,000rpm、3分間遠心分離した後、上清を回収して、Ca濃度を測定する。Ca濃度はCa測定キット(例えば、和光純薬製カルシウムCテストワコー)で測定し、ppm単位で表示する。
(3)ヒドロキシアパタイト添加反応
予め、ヒドロキシアパタイト(Sigma−Aldrich Co.製のHydroxyapatite type 1)を5mg/mLの濃度で水に懸濁したヒドロキシアパタイト懸濁液を調製する。ヒドロキシアパタイト無添加反応の場合と同様に、表1の標準反応液組成を調製する。HEPES緩衝液(200mM,pH7.0)、KHPO(18mM)溶液、水、各濃度の試料溶液の順に反応用バイアル瓶に入れる。得られた試料混合液の入ったバイアル瓶を36±0.3℃の恒温槽に10分間以上静置してから、試料混合液のpHを7.00±0.02に調整する。pH調整に用いる希NaOH溶液又は希HCl溶液の添加量は100μL以内とする。pHの調整を終えた試料混合液は前記恒温槽に戻して10分間以上静置する。次いで、36±0.3℃でpHを7.00±0.02に調整された試料混合液に、前記ヒドロキシアパタイト懸濁液1mLを投入してから直ちにCaCl(30mM)溶液1mLを投入して前記恒温槽に静置し、24時間反応する。反応終了後、反応液の一部を採取して、12,000rpm、3分間遠心分離した後、上清を回収して、Ca濃度を測定する。Ca濃度はCa測定キット(例えば、和光純薬製カルシウムCテストワコー)で測定し、ppm単位で表示する。
(4)Ca可溶化率の算出
ヒドロキシアパタイト無添加の24時間反応終了液における可溶性のCa濃度を測定し、下記式からCa可溶化率を求めた。
Ca可溶化率(%)=[ヒドロキシアパタイト無添加反応終了液上清の可溶性Ca(ppm)/反応液に添加したCa(ppm)]×100
(5)Ca沈着率の算出
同一試料で同一添加量の反応において、ヒドロキシアパタイト無添加の24時間反応終了液における可溶性のCa濃度からヒドロキシアパタイト添加の24時間反応終了液における可溶性のCa濃度を差し引いた値は、リン酸カルシウムの結晶であるヒドロキシアパタイトに沈着したCa量であるとして、その差し引き値の反応液に添加したヒドロキシアパタイトに対する比率をCa沈着率と設定し、下記式で求めた。
Ca沈着率(%)={[ヒドロキシアパタイト無添加反応終了液上清の可溶性Ca(ppm)−ヒドロキシアパタイト添加反応終了液上清の可溶性Ca(ppm)]/反応液に添加したヒドロキシアパタイト(500ppm)}×100
本測定条件において、測定試料のCa沈着率が5%以上、好ましくは10%以上となれば再石灰化促進作用ありと判定する。この判定基準は、前述のように唾液のCa濃度では、Ca沈着率が9%程度となることから、10%以上を促進作用として好ましいと設定したものである。しかしながら、Ca濃度が3〜5mMの高い濃度では、作用物質がなければCa沈着率は2%未満にまで大きく低下することを考えれば、Ca濃度が高い条件ではCa沈着率が5%以上でも再石灰化促進効果ありと判定できる。
本発明の再石灰化促進剤は、食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料及び肥料の成分として用いることができる。
例えば、有機酸を含まない飲料にPMD(結合P=0.23重量%)を0.02重量%加えれば、Ca/P(モル比)=5/3の条件で中性では120ppmのCaは100%溶解し、Ca沈着率19%の再石灰化促進作用に優れた飲料となる。また、乳酸0.5重量%を含む飲料は、同じ条件で200ppmのCaを50%も溶解できないが、これにPMD(結合P=0.23重量)を0.02重量%加えただけで、Caは100%溶解し、Ca沈着率25%の飲料となる。有機酸を含む酸性の飲料では、さらにCa可溶化率が高くなり、Ca、Mg、Feなどの多価金属塩類を多く含む清涼飲料を製造することが可能となる。本発明の再石灰化促進剤を食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料及び肥料に利用すれば、Caを始めとする多価金属塩類を可溶性の状態を維持する、すなわち、生体内での利用が可能な状態に維持することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例により、その技術的範囲が限定されるものではない。なお、実施例中、結合リン含量の測定、及びPMD及び/又はPOSを含む組成物の平均重合度の測定は、各々以下の方法によって行った。
[結合リン含量の測定]
リン含量はでん粉・関連糖質実験法(学会出版センター、中村道徳ら)に記載の方法に準じて測定した。リン酸でん粉のリン含量を測定するため、試料にターマミル120L(耐熱性液化型α−アミラーゼ)0.1重量%を加えて95℃,15分間加熱分解してから水道水で冷却し、均一な溶液を調製した。さらに、水溶性となる無機リンを全てオルトリン酸とするため、酵素分解した溶液に塩酸を添加してpH2に調整して試料溶液とし、Fiske−Subbarow法でリンを測定した。なお、発色時に濁りが認められるものは遠心分離(3000rpm,3分間)して上清の吸光度を測定した。
全リン含量は無機リン測定時にpH2に調整した試料溶液を湿式灰化処理してから、同様にリンを測定した。結合リン含量(いずれも重量%,対試料固形分)は以下の式から求めた。
結合リン含量=(全リン含量−無機リン含量)
[PMD及び/又はPOSを含む組成物の平均重合度の測定]
糖含量はでん粉・関連糖質実験法(学会出版センター、中村道徳ら)に記載の方法に準じて測定し、PMD及び/又はPOSを含む組成物の平均重合度は全糖/還元糖から求めた。リン含量測定の場合と同様にpH2に調整した試料溶液を適宜希釈して、全糖はフェノール−硫酸法(Duboisら,1956)で、還元糖はSomogyi−Nelson法(Nelson,1944)で測定した。測定値はぶどう糖換算重量%(対試料固形分)で表示し、平均重合度は下記式から求めた。
平均重合度=全糖(重量%)/還元糖(重量%)
(実施例1)
コーンスターチ(乾粉、水分13重量%)930gをヘンシェルミキサーに入れて1800rpmで撹拌しながら、別に調製した一定濃度のリン酸一ナトリウム溶液100gを流速20〜25g/分で投入して混合した。次に、混合物を棚段乾燥機にて、90℃の温風で水分が5重量%以下となるまで乾燥してから、続いて175℃の熱風で1時間焙焼した。リン酸一ナトリウム濃度の異なる溶液を用いて、この操作を9回繰り返して、結合リンが少ない9種のでん粉リン酸エステルナトリウム(リン酸でん粉のナトリウム塩)を得た。
次いで、リン酸でん粉をでん粉分解酵素で加水分解して低分子化PMD組成物を調製した。得られたリン酸でん粉を3〜4g採取して105℃で4時間乾燥し、放冷後、乾燥試料2gを精秤して100mLの耐圧ガラス容器に入れ、水を70g加えて、均一になるまで攪拌した。これに2.8重量%の塩化カルシウム溶液を1mL加え、1N−NaOH溶液でpHを6.3に調節した。次いで、α−アミラーゼとして、クライスターゼL(大和化成製)を水で10倍に希釈した液を20μL加え、耐圧ガラス容器をガス加熱した沸騰水中に置いて、時々攪拌しながら2時間加熱した。加熱終了後、放冷してから1N−塩酸溶液を加えてpHを2に調節し、さらに水を加えて全量を100gとした(濃度2重量%)。
得られた糖組成物の結合リン含量と重合度を測定した。結果を表2に示す。なお、各組成物の平均重合度は10前後であるが、リンの結合した糖の方がリンの結合しない糖よりも分解を受けにくいため、リンの結合した多糖の方が重合度は高いことになる。従って、下記組成物には、重合度10以下のPOSはほとんど含まれず、重合度11以上のPMD主体の組成物であることから、PMD組成物と称する。
Figure 0004403140
結合リンの異なる前記9種類のPMD組成物について、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表3、4に示す。なお、再石灰化試験における再石灰化促進剤の添加量はmg単位で表示した。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
結合リンの少ないPMD組成物の中では、結合リンが多くなるにつれCa可溶化率が高くなり、結合P=0.03重量%のPMD組成物(平均重合度=19)を除く全ての低結合リンPMD組成物(低分子)が再石灰化促進作用を示した。結合P=0.20重量%以上のPMD組成物は全て0.2mgの少ない添加量で高いCa沈着率が得られた。
(実施例2)
実施例1で得られたリン酸でん粉の加水分解条件を沸騰水加熱15分に短縮することにより、低結合リンPMD組成物(中分子)を得た。得られた糖組成物の結合リン含量と重合度を測定した。結果を表5に示す。
Figure 0004403140
前記9種類のPMD組成物の平均重合度は150前後であった。Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表6、7に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
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同じ結合リンの少ないリン酸でん粉を原料として酵素分解しても、実施例1の低結合リンPMD組成物(低分子)に比べて、重合度の大きい中分子では、Ca可溶化率がやや低くなる。しかし、全ての低結合リンPMD組成物(中分子)が再石灰化促進作用を示すだけでなく、0.2mgの少ない添加量で高いCa沈着率が得られた。
(実施例3)
実施例1で得られた結合リンの少ないリン酸でん粉9種類の結合リン含量と重合度を測定した。結果を表8に示す。
Figure 0004403140
前記9種類の結合リンの少ないリン酸でん粉の平均重合度は490〜880であった。Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表9、10に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
酵素分解して得られる低結合リンPMD組成物(低分子及び中分子)に比べて、元のリン酸でん粉はCa可溶化率がやや低い。結合P=0.07重量%のリン酸でん粉(重合度=880)を除くリン酸でん粉は再石灰化促進作用を示し、結合P=0.37重量%以上のリン酸でん粉は0.5mgの添加量で、10%以上の高いCa沈着率が得られた。
(実施例4)
結合リンの多いPMDを得るため、リン酸一ナトリウムの添加量を多くして実施例1に準じてリン酸でん粉を調製し、α−アミラーゼとしてターマミル120Lで2時間加水分解した。得られた糖組成物の結合リン含量と重合度を測定した。結果を表11に示す。
Figure 0004403140
前記5種類のPMD組成物について、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表12、13に示す。
Figure 0004403140
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結合リンの多いPMD組成物は極めて高いCa可溶化率を示したが、20mgの添加量ではCa沈着率が低くなった。ヒドロキシアパタイト存在下でも可溶性のCaが多くなるため、Ca可溶化率が高くてもCa沈着率が低くなる。一方、0.002mgの極少ない添加量でも、高いCa沈着率を示している。
(実施例5)
還元デキストリン(東和化成製、PO−10)930gをヘンシェルミキサーに入れて1800rpmで撹拌しながら、別に調製した一定濃度のリン酸一ナトリウム溶液100gを流速20〜25g/分で投入して混合した。次に、これを棚段乾燥機にて、90℃の温風で水分が5重量%以下となるまで乾燥してから、続いて175℃の熱風で1時間焙焼した。リン酸一ナトリウム濃度の異なる溶液を用いて、この操作を3回繰り返して、結合リンの異なる3種のリン酸エステル結合還元デキストリン(還元PMD)のナトリウム塩を得た。
得られた還元PMDを3〜4g採取して105℃で4時間乾燥し、放冷後、乾燥試料2gを精秤して100mLのガラス容器に入れ、水を加えて全量を100gとした(濃度2重量%)。結合リン含量は、(i)0.17重量%、(ii)0.20重量%、(iii)0.25重量%であった。3種の還元PMDについて、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表14、15に示す。
Figure 0004403140
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3種の還元デキストリンのリン酸化物は着色が少なく、極めて高いCa可溶化率を示した。リン酸カルシウムを可溶化する能力に優れているだけでなく、いずれの還元リン酸デキストリンも2mgから0.02mgの少ない添加量までの範囲で高いCa沈着率を示した。
(実施例6)
各種有機酸(市販の食品添加物)について、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表16、17に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
Figure 0004403140
試験した全ての有機酸に高い可溶性が認められ、多くの有機酸は50mgの添加量でリン酸カルシウムの90%以上を溶解した。また、全ての有機酸で再石灰化促進作用を示したが、Ca沈着率が10%以上となるに必要な添加量は有機酸によって大きく異なり、POS組成物やPMD組成物に比べて有機酸はかなり多くの添加量が必要である。
(実施例7)
各種有機酸(市販の食品添加物)について、よりCa濃度の高いCa=5.0mM、P=3.0mMの条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表18、19に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
Figure 0004403140
Figure 0004403140
Ca=5mMの濃度では、POS組成物やPMD組成物は全く再石灰化促進作用を示さなかったが、多くの有機酸がある濃度で再石灰化を促進する作用が認められた。Ca=3mMに比べて、Ca沈着率が10%以上となるには有機酸はさらに多くの添加量を必要とした。
(実施例8)
各種糖アルコールについて、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表20、21に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
Figure 0004403140
還元水あめ(PO−20)を除く糖アルコールに高いCa可溶性が認められ、多くが600mgの添加量でリン酸カルシウムの90%以上を溶解した。糖アルコールは再石灰化促進作用を示し、還元水あめ(PO−20)を除く糖アルコールは600mg以上の添加量で高いCa沈着率を示した。
(実施例9)
各種単糖、オリゴ糖について、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表22、23に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
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高果糖液糖、パラチノースに高いCa可溶性が認められ、特に高果糖液糖は600mgの添加量でリン酸カルシウムの90%以上を溶解した。果糖ぶどう糖液糖、高果糖液糖、パラチノース及びショ糖が再石灰化促進作用を示し、特に高果糖液糖は400mgの添加量でもCa沈着率15%が得られている。
(実施例10)
実施例1に準じてリン酸でん粉(結合リン=0.3%、乾燥重量12.5kg)を調製した。得られたリン酸でん粉10kgを20重量%濃度で溶解し、α−アミラーゼとしてクライスターゼ(大和化成製)0.05重量%(対固形分)を加えて、さらにCa濃度が50ppmとなるようにCaClを加えた。これをNaOHでpHを6.3に調整してから蒸気加熱により90℃として1時間液化反応を行った。次いで、液温を60℃まで冷却してから、α−アミラーゼ(ノボザイムズ ジャパン製、ファンガミル)を0.05重量%(対固形分)加えて60℃で糖化反応を行った。16時間後、80℃に昇温して2時間保持して酵素を失活させた。
粉末活性炭1重量%(対固形分)を加えて、セラミックフィルター(ポァサイズ0.2μ)で濾過して脱色処理した。得られた透過液160kgを食塩阻止率30%のNF膜(日東電工NTR−7430)処理機にかけて濃縮した。さらに、エバポレーターで濃縮してからNaOHを添加してpH6.0とし、スプレードライヤーにかけて粉末のPMDナトリウム塩組成物(結合P=0.23重量%、平均重合度=10)7kgを得た。
PMD組成物と有機酸とを組み合わせた組成物について、Ca=5.0mM、P=3.0mMの条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表24、25に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
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Figure 0004403140
PMD組成物は単独ではCa=5mMの条件では全く再石灰化促進作用を示さず、クエン酸などの一部の有機酸も単独ではあまり再灰化促進作用を示さなかった。表25に示すように、PMD組成物と有機酸との組み合わせでは、試験した全ての組み合わせで再石灰化促進作用の著しい増加が認められた。乳酸は、単独では100mg以上の添加量で再石灰化促進作用を示すが、50mgの添加量では促進作用を示さない(表19)。しかし、結合P=0.23重量%のPMD組成物を組み合わせると、Ca沈着率が10%を大きく上回るだけでなく、PMD組成物をわずか0.2mg加えただけでCa沈着率は25%にも達した。同様な現象が全ての有機酸で認められ、Ca=5mMの条件ではあまり促進作用を示さなかったクエン酸、アスコルビン酸、安息香酸などでも、わずかなPMD組成物の添加により、高いCa沈着率が得られて著しい再石灰化促進作用の増加が認められた。
(実施例11)
水と馬鈴薯澱粉を混合して澱粉濃度30重量%のスラリー270kgを調製し、消石灰を添加してpH6.3に調整した。次いで、ターマミル120Lを対澱粉0.05重量%添加してジェットクッカーに導入した。クッキングの温度を105℃、圧力を1kg/cm(ゲージ圧)に保持してから高温滞留塔に導いて、加圧下、105℃で5分間保持した後、熟成槽に移して95℃にて2時間保持することによって液化した。得られた液化液を60℃に冷却した後、シュウ酸を添加してpH4.5に調節した。デキストロザイムを対澱粉0.1重量%添加して60℃、40時間保持することで糖化反応を進めた。
次いで、得られた馬鈴薯澱粉の糖化液をフィルタープレスにて濾過し、清澄液は粒状活性炭を充填した脱色塔に通液して脱色した。得られた糖液を強酸性カチオン交換樹脂(レバチットS−100WS)、弱塩基性アニオン交換樹脂(レバチットMP64−WS)、強酸性カチオン交換樹脂(レバチットSP−112WS)、強塩基性アニオン交換樹脂(レバチットMP−600)に順次通液した。通液終了後、樹脂塔に脱塩水を通液して糖液を押し出した。アニオン交換樹脂に吸着したPOSの溶出は、弱塩基性アニオン交換樹脂に40℃に加温した4重量%の苛性ソーダ溶液を通液して行った。溶出液量が樹脂容量の1.0倍の溶出液画分から回収を始め、樹脂容量の1.7倍までを回収して、固形分13重量%を含むPOSのナトリウム塩溶液3.5kg(平均重合度4、結合リン3.6%)が得られた。
POSナトリウム塩組成物と有機酸とを組み合わせた組成物について、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表26、27に示す。添加量の少ない特定の有機酸にPOSナトリウム塩組成物を0.2mg加えて添加すると再石灰化促進作用の増加が認められた。
Figure 0004403140
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Figure 0004403140
Figure 0004403140
(実施例12)
実施例10のPMD組成物(結合P=0.23重量%、平均重合度=10)と有機酸とを組み合わせた組成物について、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表28、29に示す。添加量の少ない特定の有機酸にPMD組成物を0.02mg加えて添加すると再石灰化促進作用の増加が認められた。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
Figure 0004403140
(実施例13)
実施例10のPMD組成物(結合P=0.23重量%、平均重合度=10)と糖アルコールとを組み合わせた組成物について、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表30、31に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
Figure 0004403140
キシリトール100mgに前記PMD組成物を0.2mg加えて添加すると、PMD組成物単独よりも高いCa沈着率が得られた。
(実施例14)
実施例10のPMD組成物(結合P=0.23重量%、平均重合度=10)と単糖やオリゴ糖とを組み合わせた組成物についても、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表32、33に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
Figure 0004403140
水あめ(G2=70%)100mgにPMD組成物(結合リン=0.23%、平均重合度=10)0.2mgを加えて添加すると、PMD組成物単独よりも高いCa沈着率が得られた。
(実施例15)
実施例1に準じてリン酸でん粉(結合P=3.1重量%、乾燥重量12.5kg)を調製した。得られたリン酸でん粉を20重量%濃度で溶解し、α−アミラーゼとしてターマミル120Lを0.1重量%(対固形分)加えて、さらにCa濃度が50ppmとなるようにCaClを加えた。NaOHでpHを6.0に調整してから蒸気加熱により95℃として2時間液化反応を行った。次いで低分子化を進めるため、液温を60℃まで冷却してから、β−アミラーゼ(BBA)0.04重量%(対固形分)、ターマミル120Lを0.01重量%(対固形分)加えて、60℃で20時間糖化反応を行った。
反応終了時に粉末活性炭1重量%(対固形分)を加えて反応を停止し、セラミックフィルター(ポァサイズ0.2μ)で濾過した。低分子画分を除くため、得られた透過液160kgを食塩阻止率30%のNF膜(日東電工NTR−7430)処理機にかけて濃縮した。次いで、カチオン交換樹脂(三菱化学製、SK−1B)11Lに通してカチオンを除き、Ca(OH)を添加してpH5.0としてから粉末活性炭1重量%(対固形分)を加えて、50℃で2時間加温処理してセラミックフィルター(ポァサイズ0.2μ)で濾過した。濾過液をスプレードライヤーにかけて粉末のPOSカルシウム塩組成物6.4kgを得た。
得られたPOSカルシウム塩組成物の結合Pは2.8重量%、無機Pは0.19重量%、平均重合度6.4であった。Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表34に示す。
Figure 0004403140
(実施例16)
でん粉スラリーにリン酸一ナトリウムとリン酸二ナトリウムの混合液を添加して溶解し、ドラムドライヤーにて乾燥して粉砕した。でん粉とリン酸塩の混合物を流動層に投入して、170℃、2時間焙焼し、リン酸でん粉(結合P=1.7重量%、乾燥重量250kg)を調製した。得られたリン酸でん粉100kgを20重量%濃度で溶解し、α−アミラーゼとしてターマミル120Lを0.05重量%(対固形分)加えて、さらにCa濃度が50ppmとなるようにCaClを加えた。NaOHでpHを6.0に調整してから蒸気加熱により90℃として2時間液化反応を行った。次いで低分子化を進めるため、液温を60℃まで冷却してから、α−アミラーゼ(ノボザイムズ ジャパン製、ファンガミル)を0.05重量%(対固形分)加えて60℃で糖化反応を行った。20時間後、ターマミル120Lを0.02重量%(対固形分)加えて、80℃に昇温して2時間保持した。
粉末活性炭1重量%(対固形分)を加えて反応を停止し、セラミックフィルター(ポァサイズ0.2μ)で濾過した。低分子画分を除くため、得られた透過液1000kgを食塩阻止率30%のNF膜(日東電工NTR−7430)処理機にかけて濃縮した。さらに、エバポレーターで濃縮してからNaOHを添加してpH6.0とし、スプレードライヤーにかけて粉末のPOSナトリウム塩組成物47kgを得た。
得られたPOSナトリウム塩組成物の結合Pは1.8重量%、無機Pは0.18重量%、平均重合度8であった。Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表35に示す。
Figure 0004403140
(実施例17)
乾燥したでん粉にリン酸一ナトリウムとリン酸二ナトリウムの混合液を添加してフラッシュドライヤーにて乾燥した。でん粉とリン酸塩の混合物を流動層に投入して、180℃、1時間焙焼し、リン酸でん粉(結合P=0.32重量%、乾燥重量500kg)を調製した。得られたリン酸でん粉100kgを20重量%濃度で溶解し、α−アミラーゼとしてターマミル120Lを0.03重量%(対固形分)加えて、さらにCa濃度が50ppmとなるようにCaClを加えた。NaOHでpHを6.3に調整してから蒸気加熱により90℃として3時間液化反応を行った。
粉末活性炭1重量%(対固形分)を加えて反応を停止し、セラミックフィルター(ポァサイズ0.2μ)で濾過した。さらに、エバポレーターで濃縮してからスプレードライヤーにかけて粉末のPMDナトリウム塩組成物75kgを得た。
得られたPMD組成物の結合Pは0.25重量%、無機Pは0.06重量%、平均重合度11であった。Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表36に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
(実施例18)
実施例17のリン酸でん粉(結合P=0.32重量%)100kgを20重量%濃度で溶解し、中温性のα−アミラーゼとしてBAN240L(ノボザイムズ ジャパン製)を0.1重量%(対固形分)加えて、さらにCa濃度が50ppmとなるようにCaClを加えた。NaOHでpHを6.3に調整してから加温し、80℃で3時間液化反応を行った。
反応液を90℃に高くし、塩酸を加えてpH4.5として反応を停止し、粉末活性炭1重量%(対固形分)、CaClを加えて60℃で2時間放置した。セラミックフィルター(ポァサイズ0.2μ)で濾過してから、エバポレーターで濃縮し、スプレードライヤーにかけて粉末のカルシウム・ナトリウム含有PMD組成物85kgを得た。
得られたPMD組成物の結合Pは0.27重量%、無機Pは0.05重量%、平均重合度12であった。Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表37に示す。
Figure 0004403140
(実施例19)
乾燥したでん粉にリン酸一ナトリウムとリン酸二ナトリウムの混合液を添加してフラッシュドライヤーにて乾燥した。でん粉とリン酸塩の混合物を流動層に投入して、180℃、2時間焙焼し、リン酸でん粉(結合P=3.2重量%、乾燥重量500kg)を調製した。得られたリン酸でん粉100kgを20重量%濃度で溶解し、α−アミラーゼとしてクライスターゼ(大和化成製)0.05重量%(対固形分)を加えて、さらにCa濃度が50ppmとなるようにCaClを加えた。NaOHでpHを6.3に調整してから蒸気加熱により90℃として1時間液化反応を行った。次いで、液温を60℃まで冷却してから、α−アミラーゼ(ノボザイムズ ジャパン製、ファンガミル)を0.05重量%(対固形分)加えて60℃で糖化反応を行った。16時間後、80℃に昇温して2時間保持して酵素を失活させた。
粉末活性炭1重量%(対固形分)を加えて反応を停止し、セラミックフィルター(ポァサイズ0.2μ)で濾過した。得られた透過液900kgを食塩阻止率30%のNF膜(日東電工NTR−7430)処理機にかけて濃縮した。さらに、エバポレーターで濃縮してからNaOHを添加してpH6.0とし、スプレードライヤーにかけて粉末のPMDナトリウム塩組成物51kgを得た。
得られたPMD組成物の結合Pは2.8重量%、無機Pは0.3重量%、平均重合度10であった。Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表38に示す。
Figure 0004403140
(実施例20)
水9.1kgに無水リン酸水素二ナトリウム0.25kgを攪拌しながら添加して溶解し、次いでリン酸二水素ナトリウム・二水塩1.18kgを添加して溶解した。リン酸ナトリウムが完全に溶解してから還元デキストリン(東和化成製、PO−10)7.8kgを少量ずつ添加して溶解した。さらに、水を加えて全量を30kgとしてから、除菌フィルターでろ過した。得られたろ渦液をスプレードライヤーにかけて粉末化した。還元デキストリンとリン酸塩の混合粉末品を棚段乾燥機にて、90℃の温風で水分が2重量%以下となるまで乾燥してから、続いて170℃の熱風で2時間焙焼した。得られたリン酸エステル結合還元デキストリン(還元PMD)のナトリウム塩は、2.9重量%の結合Pを含んでおり、Ca=3.0mM、P=1.8mMの標準条件で再石灰化試験を行った。算出されたCa可溶化率及びCa沈着率の結果を表39に示す。
Figure 0004403140
(実施例21)
実施例4で得られたPMD組成物(iv)(結合P=2.7重量%、平均重合度=10)と2種の有機酸とを組み合わせた組成物について、Ca=10mM、P=6.0mMの条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表40に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
(実施例22)
実施例4で得られたPMD組成物(iv)(結合P=2.7重量%、平均重合度=10)と2種の有機酸とを組み合わせた組成物について、Ca=12mM、P=7.2mMの条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表41に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
(実施例23)
実施例4で得られたPMD組成物(iv)(結合P=2.7重量%、平均重合度=10)と2種の有機酸とを組み合わせた組成物について、Ca=15mM、P=9.0mMの条件で再石灰化試験を行い、Ca可溶化率及びCa沈着率を算出した。結果を表42に示す。
Figure 0004403140
Figure 0004403140
本発明は、食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料、肥料などの分野で利用される。

Claims (6)

  1. でん粉及び/又はでん粉分解物にリン酸及び/又はリン酸塩を混合してから焙焼して得られるリン酸でん粉及び/又はリン酸でん粉分解物を少なくとも1種のでん粉分解酵素で加水分解して製造されるリン酸マルトデキストリン及びリン酸オリゴ糖であって、重合度が9以上であるリン酸マルトデキストリン及びリン酸オリゴ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む再石灰化促進剤。
  2. でん粉及び/又はでん粉分解物にリン酸及び/又はリン酸塩を混合してから焙焼して得られるリン酸でん粉及び/又はリン酸でん粉分解物を少なくとも1種のでん粉分解酵素で加水分解して製造されるリン酸マルトデキストリンであって、重合度が9以上であり、かつ結合リン含量が0.09〜2.9重量%であるリン酸マルトデキストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の再石灰化促進剤。
  3. 更に、有機酸、単糖、オリゴ糖及び糖アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の再石灰化促進剤。
  4. 食品、飲料、調味料、味質改善剤、口腔衛生剤、洗剤、金属補給剤、金属吸収促進剤、化粧品、飼料又は肥料の成分として用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の再石灰化促進剤。
  5. マルトデキストリン及び/又はオリゴ糖を水添還元して製造された還元マルトデキストリン及び/又は還元オリゴ糖に、リン酸及び/又はリン酸塩を混合した後、焙焼して得られる還元リン酸マルトデキストリン、還元リン酸オリゴ糖及びそれらの塩類の少なくとも1種を含む組成物。
  6. マルトデキストリン及び/又はオリゴ糖を水添還元して製造された還元マルトデキストリン及び/又は還元オリゴ糖に、リン酸及び/又はリン酸塩を混合した後、焙焼して製造することを特徴とする還元リン酸マルトデキストリン、還元リン酸オリゴ糖及びそれらの塩類の少なくとも1種を含む組成物を製造する方法。
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