JP4196700B2 - ガラス微粒子堆積体の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば光ファイバを製造するための材料として用いられる光ファイバ母材の前駆体となる、多孔質ガラス微粒子堆積体の製造法に関するものであり、さらに詳しく述べるならば、反応容器内において、ガラス微粒子合成用バーナで生成されたガラス微粒子を出発材の表面に堆積させる際に、反応容器内の特定空間の圧力を調節することにより、多孔質ガラス微粒子堆積体の外径変動を少なくし、かつ多孔質ガラス微粒子堆積体に含まれる、その周囲と屈折率等の特性が均質でない部分等(異常点又は不整)を少なくすることができる多孔質ガラス微粒子堆積体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光伝送に用いられる光ファイバの製造法としては、SiO2を主成分とする光ファイバ母材を合成し、さらにこの母材を延伸、火炎研磨、及び線引き等する工程を経る製造法が知られている。さらに一般に、この光ファイバ母材は、出発材表面にガラス微粒子合成用バーナを用いて合成されるガラス微粒子を付着かつ堆積させることにより、多孔質ガラス微粒子堆積体を製造し、次にこの多孔質ガラス微粒子堆積体を脱水し、さらに加熱焼結して透明体にすることによって合成される。ここで、出発材にガラス微粒子を付着及び堆積させることにより多孔質ガラス微粒子堆積体を合成する方法は、従来からスス付け法(スート法)とよばれ、本方法にはOVD法(外付け法)、及びVAD法(気相軸付け法)が含まれる。これらOVD法及びVAD法は当業者に周知の方法である。
【0003】
しかしながら、従来公知のスート法においては、出発材の表面にガラス微粒子を堆積させて得られたガラス微粒子堆積体の外径が、その長手方向に沿って変動する場合があった。さらに、従来のスート法においては、得られたガラス微粒子堆積体の中に気泡が含まれたり、光学的に周囲と不均一な部分(いわゆる不整)を有したりする欠点が多く発生する場合があった。
【0004】
ガラス微粒子堆積体を製造するための反応容器内の空気の流れを均一にし、かつガラス微粒子合成用バーナから噴射される火炎を安定化することにより、上記ガラス微粒子堆積体の外径の変動、及び上記気泡等の欠点の発生を防止する方法が知られている。すなわち、反応容器外からバーナのノズル周囲の空隙を通して空気、特に清浄空気を反応容器内に流す方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、反応容器内圧力を検出し、その検出結果に応じて反応容器内にバイアス用のガスを供給することにより反応容器内圧力の変動を抑える方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、反応容器内の通路部、すなわち、ガラス微粒子を堆積させる出発材の周囲の空間に、下降気流を生じさせることによって反応容器内の気流を安定させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
スート法において、従来以上にガラス微粒子合成用バーナから噴射される火炎の流れを安定し、かつ、反応容器内のガスの流れを安定化することができれば、いままで以上に外径の変動が少なく、かつ異常点の少ないガラス微粒子堆積体が製造できる。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−300332号公報
【特許文献2】
特開昭56−134529号公報
【特許文献3】
特開昭61−197439号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち本発明は、いわゆるスート法において用いられる反応容器内において、ガスの流れをスムーズにし、かつガラス微粒子合成用バーナ(以下、単に「バーナ」ともいう。)から噴射される火炎の流れを乱さないようにすることにより、長手方向に沿った外径の変動が小さく抑えられ、かつ異常点の少ないガラス微粒子堆積体を製造するための方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明のガラス微粒子堆積体の製造法は、排気口及びその排気口に連結される排気管を有する反応容器内において、ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材を移動させるとともに、ガラス微粒子合成用バーナによって合成されるガラス微粒子を出発材表面に付着させ、かつ堆積させるガラス微粒子堆積体の製造法であって、
反応容器内の鉛直方向において、ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材のガラス微粒子が付着される表面が移動する空間内の最上端位置における反応容器内圧力を、前記の移動する空間内の最下端位置における反応容器内圧力よりも2Pa〜30Pa高くすることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のガラス微粒子堆積体の製造法は、排気口及び排気口に連結される排気管を有する反応容器内において、出発材を鉛直方向上方へ移動させるとともに、ガラス微粒子合成用バーナによって合成されるガラス微粒子を出発材表面に付着させ、かつ堆積させるガラス微粒子堆積体の製造法であって、反応容器内の鉛直方向において、ガラス微粒子合成用バーナの先端の位置、ガラス微粒子合成用バーナから噴射される火炎方向に延長されたガラス微粒子合成用バーナの中心軸が前記反応容器の壁面と交わる位置、並びに排気口が配置される位置からなる群から選ばれる位置から最上端位置及び最下端位置を選び、最上端位置における反応容器内圧力を、最下端位置における反応容器内圧力より2Pa〜30Pa高くすることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のガラス微粒子堆積体の製造法は、2以上の排気口及びその2以上の排気口にそれぞれ連結された排気管を有する反応容器内において、ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材を移動させるとともに、ガラス微粒子合成用バーナによって合成されるガラス微粒子を出発材表面に付着させ、かつ堆積させるガラス微粒子堆積体の製造法であって、反応容器内の鉛直方向において、ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材のガラス微粒子が付着される表面が移動する空間内の最上端位置における反応容器内圧力を、バーナ及び/又は出発材のうちガラス微粒子が付着される表面が移動する空間内の最下端位置における反応容器内圧力よりも2Pa〜30Pa高くするとともに、鉛直方向において上側に配置される排気口に連結された排気管内の圧力が、鉛直方向において下側に配置される排気口に連結された排気管内の圧力よりも高くなるように調節することを特徴とするものである。
【0012】
さらに本発明のガラス微粒子堆積体の製造法は、排気口及び前記排気口に連結される排気管を有する反応容器内において、ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材を移動させるとともに、ガラス微粒子合成用バーナによって合成されるガラス微粒子を出発材表面に付着させ、かつ堆積させるガラス微粒子堆積体の製造法であって、反応容器内に熱源を配置し、反応容器内の鉛直方向において、ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材のガラス微粒子が付着される表面が移動する空間内の最上端位置における反応容器内圧力を、前記熱源から供給される熱によって、前記のガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材のガラス微粒子が付着される表面が移動する空間内の最下端における前記反応容器内圧力よりも2Pa〜30Pa高くすることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、上記の本発明のガラス微粒子堆積体の製造法においては、排気口及びその排気口に連結される排気管を有する反応容器内に清浄ガスの供給口を配置し、さらに反応容器内にその供給口から清浄ガスを供給し、かつ供給口から供給される清浄ガスの圧力が、鉛直方向で同一の高さを有する位置における反応容器内の圧力以上の圧力を有することが好ましい。
【0014】
さらに、上記の本発明のガラス微粒子堆積体の製造法においては、反応容器が、2以上の排気口及びその排気口に連結される排気管を有する場合、排気口の中心から出発材方向に水平に一定距離離れた位置における反応容器内の圧力と、その排気口に連結された排気管内において排気口の中心から排気管内側に水平に一定距離離れた位置における圧力との差(本明細書においては、この差を「排気口内外圧力差」ともいう。)を各排気口ごとに測定し、各排気口における排気口内外圧力差が、全ての排気口内外圧力差の平均値の±30%以内になるように前記排気口内外圧力差を調節することが好ましい。
【0015】
さらに、上記の製造法において、ガラス微粒子合成用バーナを配置した位置と同じ高さに排気口が配置されることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、スート法によるガラス微粒子堆積体の製造法において、反応容器内の特定の空間内の雰囲気ガスの圧力に対して、その鉛直方向で圧力差をつけることによって、反応容器内のガスの流れ及びバーナからの火炎の流れが安定化され、長手方向に沿った外径の変動が少なく、かつ異常点が少ないガラス微粒子堆積体が得られることを見いだした。さらに、反応容器内に熱源を配置することにより、その熱源から供給される熱により、上記圧力差をつけることが好ましいことを見いだした。さらに、上記圧力差をつけるとともに、反応容器内に清浄ガスを供給することが好ましいことを見いだした。さらに2以上の排気口及び排気管を有する製造装置を用いる場合、上記圧力差をつけるとともに、各排気口における排気口の反応容器側空間及び排気口の排気管側空間の差圧の変動幅が小さいことが好ましいことを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0017】
本明細書中、「出発材」とは、スート法により、その表面にバーナで合成されたガラス微粒子を付着及び堆積させる材料である。光ファイバ用に用いる材料を製造するために用いる出発材は一般に、ガラスロッドが用いられ、このガラスロッドとしては、ドーパントを含むガラス及び含まないガラスの両者を用途に応じて用いることができる。本発明の製造法においては、出発材にガラス微粒子が堆積されて形成された層の上にさらにガラス微粒子が堆積される。
【0018】
また、本明細書中、「ガラス微粒子合成用バーナ」とは、一般に多層同心円状の吹き出し口を有し、四塩化珪素、又は四塩化珪素及び四塩化ゲルマニウム等を含む原料ガス、水素及び酸素からなる燃焼ガス、及びアルゴン等の不活性ガスをその吹き出し口から噴射して混合し、水素を燃焼させて原料ガスの火炎加水分解を起こさせることによりガラス微粒子を生成するためのバーナをいい、当業者には公知のものである。本発明において用いる原料ガスとしては、上記ガスを用いることが好ましい。
【0019】
また、本明細書中、「多孔質ガラス微粒子堆積体」とは、上記ガラス微粒子合成用バーナによって生成されたガラス微粒子を、上記出発材表面に付着させ、かつ堆積させて製造された多孔質ガラス体であって、例えば、この多孔質ガラス微粒子堆積体をさらに脱水、焼結することによって光ファイバ製造の原料として用いる透明ガラス母材が製造できるものである。
本明細書中でいう反応容器内圧力、排気管内の圧力等にいう「圧力」とは、その測定場所の雰囲気ガスの圧力をいう。
【0020】
また、本明細書中にいう「排気口の中心」とは、排気口が円形である場合はその円の中心、排気口が楕円である場合は長径及び短径の交点、排気口が正方形である場合は対角線の交点等をいうが、厳密な中心をいうものではなく、およそ一般常識にしたがってほぼ排気口の中心付近の位置という意味である。
【0021】
また、本明細書中にいう「排気管内の圧力」については、排気管内の圧力が排気管のどの位置でも一定である場合は、その圧力が測定された位置に関係なくその圧力を排気管内の圧力というが、排気管内の圧力が排気口からの距離によって異なる場合は、「排気管内の圧力」とは、反応容器と排気管との接合部近傍で測定した圧力をいい、接合部近傍は、排気口から10cm以内である。また、「容器内圧力」とは、反応容器壁近傍であって、かつバーナ及び排気口の両者からできるだけ遠い位置において測定された圧力である。
【0022】
以下に本発明の製造法を図に基づいて説明するが、本発明は以下に説明する図に表された実施態様に限定されない。
図1は、いわゆる多バーナ多層付けOVD法によるガラス微粒子堆積体の製造装置の一実施態様を模式的に示した図である。出発材(4)は、その回転軸が鉛直方向に配置されるようにして上部で回転手段(1)に結合され、回転手段(1)は上下に移動可能な昇降手段(2)に結合される。出発材(4)を囲んで反応容器(3)が配置され、反応容器(3)の壁にはガラス微粒子合成用バーナ(5)がバーナからの火炎(8)が出発材(4)に向くように配置される。出発材(4)をはさんで、バーナ(5)の配置された反応容器壁面と反対側の壁面に排気口(6)が配置され、その各排気口(6)には排気管(7)が結合される。図1には、バーナ、排気口及び排気管がそれぞれ4つの場合を示したが、これらの数は4つに限定されず任意の数にすることが可能である。
【0023】
なお、上記多バーナ多層付けOVD法においては、反応容器に固定された複数バーナに対して出発材を往復移動させる場合、出発材は図1cに示すような往復移動をさせることが好ましい。図1cは、出発材の動きを例示した図であり、図1cにおいては、出発材が1回目に上から下へ210mm移動して折り返し、次に出発材が下から上へ180mm移動してから下方向へ折り返して210mm移動するという移動パターンを繰り返して10往復移動した後、次に毎回の折り返し位置が30mmずつ上方向に移動しながら出発材が往復運動することを示している。また、本発明の製造法は多バーナ多層付けOVD法に限られるものではない。
【0024】
出発材(4)は回転手段(1)により回転されるとともに、昇降手段(2)によって上下に往復運動される。この往復運動する出発材(4)の表面に対し、バーナ(5)から火炎(8)が吹き付けられ、火炎中に含まれるガラス微粒子が出発材(4)表面に付着及び堆積される。火炎(8)に含まれる排ガス及び出発材(4)の表面に付着されなかったガラス微粒子等は、排気口(6)から排気管(7)を通って、反応容器外に排気される。以下に説明するように、図1において、GHの高さにおける反応容器内圧力を、GLの高さにおける反応容器内圧力よりも高くすることにより、反応容器(3)内のガスの流れ及びバーナからの火炎の流れが安定化される。それによって、長手方向に沿った外径の変動が少なく、かつ異常点が少ないガラス微粒子堆積体が得られる。
【0025】
以下に、上記の反応容器内圧力を調節する範囲及び方法についてさらに説明する。
出発材(4)が鉛直方向上下に往復運動する場合において、出発材の位置が最も上まで来た場合を図1aに示し、出発材の位置が最も下まで来た場合を図1bに示す。したがって、図1aにおいては出発材(4)の下部にガラス微粒子の付着及び堆積(以下単に「スス付け」ともいう。)がなされ、スス付けされる出発材の表面のうち最も下になる位置をMLで示した。一方、図1bにおいては出発材(4)の上部にスス付けがされ、スス付けされる出発材の表面のうち最も上になる位置をMHで示した。したがって、反応容器(3)内において、出発材(4)の表面のうちスス付けされる表面が移動する範囲は、図1aのGHを上端とし、かつGLを下端とする反応容器内空間である。本発明においては、この反応容器内空間のGH位置の高さにおける容器内圧力を、GL位置の高さにおける容器内圧力よりも高くする。なお、同じGH位置の高さであっても水平方向の位置の違いによって容器内圧力に差がある場合は、そのなかで最も低い圧力をGH位置における容器内圧力とし、かつGL位置における容器内圧力については、GL位置の高さにおける容器内圧力のうち最も高い圧力をGL位置における容器内圧力とする。
【0026】
上記GL位置の高さにおける容器内圧力より上記GH位置の高さにおける容器内圧力を高くする量は、本発明の目的である反応容器内のガスの流れをスムーズにし、かつバーナからの火炎の流れが安定し、結果として得られるガラス微粒子の外径変動が小さく、かつ異常点が少なくなることが達成できる量であればよい。具体的には、上記GL位置における容器内圧力より上記GH位置の高さにおける容器内圧力を高くする量は、上記バーナからの火炎の流れが安定化でき、かつ反応容器内のガスの流れがスムーズになることから、2〜30Paであることが好ましく、5〜30Paであることがさらに好ましく、10〜25Paであることが特に好ましい。
【0027】
上記GL位置の高さにおける容器内圧力より上記GH位置の高さにおける容器内圧力を高くする方法は、上記本発明の目的が達成できる任意の方法を用いることができる。具体的には、例えば、反応容器に複数配置された排気口に結合された排気管のそれぞれにおいて、単位時間あたりに反応容器内から排気されるガスの量を調節する手段を各排気口及び/又は各排気管に設け、反応容器において鉛直方向の上側(以下、単に「反応容器上側」ともいう。)に配置された排気管内の圧力を、その排気管より反応容器の下側に配置された排気管内の圧力より高くする方法があげられる。3つ以上の排気口及び排気管が反応容器に配置されている場合、反応容器上側に配置された排気管内圧力ほど順番に高くなるように調節されることがバーナからの火炎の流れを安定化し、かつ反応容器内のガスの流れをスムーズにするためには特に好ましいが、必ずしもそのように調節されなくてもGL位置における容器内圧力より上記GH位置における容器内圧力を高くすることができる場合もある。
【0028】
上記排気管のそれぞれにおいて単位時間あたりに反応容器内から排気されるガスの量を調節する手段としては、(1)排気管内の排気口からの排気下流位置に、調節された量の空気を外部から排気管ごとに供給して調節するための手段、(2)排気管の内径を各排気管ごとに変えるための手段(具体的には、排気管の内径を反応容器上側に配置された排気管ほど細くすること)、(3)排気管内にダンパーを設けてその開度を各排気管ごとに調節するための手段などが例示できるが、これらに限定されない。
【0029】
さらに、上記GL位置における容器内圧力より上記GH位置における容器内圧力を高くする方法としては、反応容器内に熱源を配置し、この熱源から熱を反応容器内に供給することにより上昇気流を起こさせて反応容器内の上部ほど圧力を高くする方法があげられる。その具体的な方法としては、抵抗炉ヒータによる加熱、余熱された空気の反応容器内への導入、赤外線ヒータによる加熱等が例示できる。これらの方法は、いずれか一つのみを用いることも、またこれらから選ばれる2以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
図2は、OVD法によるガラス微粒子堆積体の製造装置であって、図1に示した実施態様と別の一実施態様を模式的に示した図である。図2において、出発材(4)は、その回転軸が鉛直方向に配置されるようにして上部で回転手段(1)に結合される。出発材(4)を囲んで反応容器(3)が配置され、反応容器(3)内部には上下に移動可能なバーナ移動手段(9)と結合されたバーナ(5)が配置される。バーナ(5)は、バーナ(5)からの火炎が出発材(4)に向くように配置される。出発材(4)をはさんで、バーナ(5)の配置された壁面と反対側の反応容器壁面に排気口(6)が配置され、その各排気口(6)には排気管(7)が結合される。図2には、バーナが2つ、並びに排気口及び排気管がそれぞれ6つ配置される場合を示したが、これらの数はそれぞれ2つ及び6つに限定されるものではなく、任意の数にすることができる。
【0031】
図2において、出発材(4)が回転手段(1)により回転されるとともに、移動手段(9)によってバーナ(5)が上下に往復運動される。この往復運動するバーナ(5)から噴射される火炎が出発材(4)の表面に吹き付けられ、火炎中に含まれるガラス微粒子が出発材(4)表面に付着及び堆積される。火炎に含まれる排ガス及び出発材(4)の表面に付着されなかったガラス微粒子等は、排気口(6)から排気管(7)を通って、反応容器外に排気される。ここで、以下に説明するように、反応容器内のBHの高さにおける反応容器内圧力を、BLの高さにおける反応容器内圧力よりも高くすることによって、反応容器(3)内のガスの流れ及びバーナからの火炎の流れが安定化される。それによって、長手方向に沿った外径の変動が少なく、かつ異常点が少ないガラス微粒子堆積体が得られる。
【0032】
図2に示した装置において、反応容器内圧力を調節する範囲及び方法を以下に説明する。
図2に示した装置においてバーナ(5)が鉛直方向上下に往復運動し、バーナ(5)が最も上の位置まで上がった場合を図2aに示し、バーナ(5)が最も下の位置まで下がった場合を図2bに示す。したがって、図2aにおいて、バーナ(5)の移動範囲の最上端位置はBHで示され、一方バーナ(5)の移動範囲の最下端位置はBLで示される。したがって、バーナの移動する範囲の反応容器内空間は、図2aのBHを上端とし、かつBLを下端とする反応容器内空間である。本発明においては、この反応容器内空間のBH位置の高さにおける容器内圧力を、BL位置の高さにおける容器内圧力よりも高くする。この高くする量は、図1に示した実施態様で説明した理由と同じ理由により、2〜30Paであることが好ましく、5〜30Paであることがさらに好ましく、10〜25Paであることが特に好ましい。
【0033】
なお、同じBH位置の高さであっても水平方向の位置の違いによって容器内圧力に差がある場合の容器内圧力の解釈等は、上記図1に示した実施態様で説明したものと同じである。
また、反応容器内空間のBH位置の高さにおける容器内圧力を、BL位置の高さにおける容器内圧力よりも高くするための手段は、上記図1に示した実施態様で説明した、GH位置の高さにおける容器内圧力をGL位置の高さにおける容器内圧力より高くするための手段と同じ手段を用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0034】
図3には、VAD法によるガラス微粒子堆積体の製造装置の一態様を示す。
図3において、出発材(4)は、その回転軸が鉛直方向に配置されるようにして上部で回転手段(1)に結合される。この回転手段は少なくとも上方に移動可能な移動手段(2)と結合される。出発材(4)を囲んで反応容器(3)が配置され、反応容器(3)内部にはバーナ(5)が配置される。バーナ(5)は、バーナ(5)から噴射される火炎が出発材(4)の下部位置を向くように配置される。出発材(4)をはさんで、バーナ(5)の配置された壁面と反対側の反応容器壁面に排気口(6)が配置され、その各排気口(6)には排気管(7)が結合される。図3には、バーナが2本、排気口及び排気管がそれぞれ3つ配置される場合を示したが、これらの数は任意の数にすることができる。
【0035】
図3において、出発材(4)は回転手段(1)により回転されるとともに、昇降手段(2)によって鉛直方向上方に引き上げられる。この引き上げられる出発材の下端部付近の表面に、バーナ(5)から噴射される火炎が吹き付けられ、火炎中に含まれるガラス微粒子が出発材(4)表面に付着及び堆積される。火炎に含まれる排ガス及び出発材(4)の表面に付着されなかったガラス微粒子等は、排気口(6)から排気管(7)を通って、反応容器外に排気される。この方法はいわゆるVAD法として知られる。ここで、以下に説明するように、反応容器内のAHの高さにおける反応容器内圧力を、ALの高さにおける反応容器内圧力よりも高くすることによって、反応容器(3)内のガスの流れ及びバーナからの火炎の流れが安定化される。それによって、長手方向に沿った外径の変動が少なく、かつ異常点が少ないガラス微粒子堆積体が得られる。
【0036】
図3に示した装置において、反応容器内圧力を調節する範囲及び方法を以下に説明する。
図3に示した装置において、バーナの先端位置は、2つ存在するバーナのそれぞれBH及びBLである。また、バーナから噴射される火炎方向に延長されたバーナの中心軸AXH及びAXLがそれぞれ反応容器(3)の壁面と交わる位置は、XH及びXLである。また3つの排気口(6)のうち最も高い位置はDHであり、最も低い位置はDLである。図3において、上記各位置の中で最も高い位置はXHであり、最も低い位置はBLである。したがって、本発明の方法においては、XHと同じ高さであるAH位置の高さにおける反応容器内圧力を、BLと同じ高さであるAL位置における反応容器内圧力よりも高くする。この高くする量は、図1に示した実施態様で説明した理由と同じ理由により、2〜30Paであることが好ましく、5〜30Paであることがさらに好ましく、10〜25Paであることが特に好ましい。なお、上記排気口(6)の位置とは、排気口の中心位置をいう。
【0037】
なお、同じAH位置の高さであっても水平方向の位置の違いによって容器内圧力に差がある場合の容器内圧力の解釈等は、上記図1に示した実施態様で説明した解釈等と同じである。
また、図3に示した反応容器内空間のAH位置の高さにおける容器内圧力を、AL位置の高さにおける容器内圧力よりも高くするための手段は、上記図1に示した実施態様で説明した、GH位置の高さにおける容器内圧力をGL位置の高さにおける容器内圧力より高くするための手段と同じ手段を用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0038】
さらに上述した本発明の各製造法においては、ガラス微粒子堆積体の製造装置が2以上の排気口及びその排気口に連結された2以上の排気管を有する場合、各排気管のうち、鉛直方向において上側に配置された排気管内の圧力を、鉛直方向下側に配置された排気管内の圧力より高くすることが好ましい。
【0039】
また、本発明の製造法においては、複数の排気口の各中心から反応容器内側に一定距離入った位置における反応容器内の圧力と、その排気口に連結される排気管内において排気口の中心から排気管内に一定距離入った位置における圧力との差の値(排気口内外圧力差)を測定し、各排気口におけるこの排気口内外圧力差が全ての排気口内外圧力差の平均値の±30%以内であるように調節されることが好ましく、±20%以内であるように調節されることがさらに好ましく、±10%以内であるように調節されることが特に好ましい。このように各排気口におけるこの排気口内外圧力差を調節することにより、反応容器内のガスの流れ及びバーナから噴射される火炎の流れを安定化することができ、外径の変動が少なくかつ異常点の少ないガラス微粒子堆積体が製造できる。
【0040】
上記の反応容器内の圧力を測定する位置、及び排気管内の圧力を測定する位置は、装置の構造等に応じて任意に定めることができるが、両者が近すぎるとこれらの間の圧力差が小さくなりすぎて測定誤差が大きくなる。本発明の製造法においては、排気管内圧力は、排気口から10cm以内の排気管内で測定することが好ましい。また、反応容器内圧力は、排気口と同じ高さであって、バーナ及び排気口の両者からできるだけ遠くに位置する反応容器内壁の近傍で測定することが好ましい。たとえば、出発材を中心としてバーナ及び排気口が180℃反対側に配置されている反応装置であれば、反応容器内圧力は、出発材を中心として排気口との角度が90度になる反応容器壁上で測定することが好ましい(図4c参照)。
【0041】
この、排気口内外圧力差の調節は、上述した、鉛直方向において上側に配置された排気管内の圧力を、鉛直方向下側に配置された排気管内の圧力より高くすることとあわせて行うことが特に好ましいが、必ずしも一緒に行なわなくても反応容器内のガスの流れ及びバーナからの火炎の流れを安定化できる場合がある。
【0042】
上述した排気口及び排気管内における圧力の調節について、図4に基づいてさらに具体的に説明する。
図4は、ガラス微粒子堆積体の製造装置の反応容器(3)の一部分を示す図であり、上述した図1〜図3で例示された本発明の製造装置において配置される排気口及び排気管の一態様を模式的に示したものである。
【0043】
図4aにおいて反応容器(3)には、5つの排気口(6a〜6e)が配置され、さらに各排気口にはそれぞれ排気管(7a〜7e)が結合される。また、各排気管(7a〜7e)は一つの排気管(7g)に結合される。図4aにおいて、図面上側が鉛直方向上側である。図4aに示した各排気口近傍の反応容器内圧力、及び各排気管内の圧力を図4bに示した。排気口(6a)から(6e)に対して、出発材の中心軸上の点を頂点として各排気口の中心とのなす角度が90度、かつ排気口中心と同じ高さの反応容器壁上の位置がそれぞれR1〜R5であり、各位置における雰囲気圧力はPr1〜Pr5である。また、各排気口の中心から排気管内側に10cm入った位置がそれぞれI1〜I5であり、各位置における雰囲気圧力はPi1〜Pi5である。さらに、各排気口における排気口内外圧力差はΔP1〜ΔP5であり、ΔPn=Prn−Pinで計算される。さらに図4に示された装置の場合、排気口内外圧力差の平均値(ΔPav)は、ΔPav=(ΔP1+ΔP2+ΔP3+ΔP4+ΔP5)/5で計算される。
【0044】
本発明の製造法においては、上述の通り、鉛直方向上側に配置された排気管内の圧力を、鉛直方向下側に配置された排気管内の圧力より高くすることが好ましい。すなわち、図4bにおいて、Pi1>Pi2>Pi3>Pi4>Pi5となるように調節することが好ましい。
【0045】
また、各排気口の排気口内外圧力差ΔP1〜ΔP5が、ΔPav±30%以内であるように調節されることが好ましく、ΔPav±20%以内であるように調節されることがさらに好ましく、ΔPav±10%以内であるように調節されることが特に好ましい。
【0046】
このように上記排気管内の圧力、及び/又は上記排気口内外圧力差を調節する方法は、例えば、単位時間あたりに反応容器内から排気されるガスの量を調節する手段を各排気口及び/又は各排気管に設けることによって行うことができ、具体的には、(1)排気管内の排気口からの排気下流位置に、調節された量の空気を外部から排気管ごとに供給して調節するための手段を設ける方法、(2)排気管の内径を各排気管ごとに変える方法(具体的には、排気管の内径を反応容器上側に配置された排気管ほど細くすること)、(3)排気管内にダンパーを設けてその開度を各排気管ごとに調節する方法などが例示できるが、これらに限定されない。また、図4に示したように各排気管(7a〜7e)を一つの排気管(7g)を通して排気する場合は、鉛直方向下方から排気するように排気管(7g)を配置して排気を行うことが、各排気管(7a〜7e)内の圧力を鉛直方向上方ほど高くしやすいことから好ましい。
【0047】
本発明のガラス微粒子堆積体の製造法においては、反応容器内に清浄ガスの供給口を配置し、この供給口から清浄ガスを供給することによって、反応容器内のガスの流れ及びバーナから噴射される火炎の流れをさらに安定化することができる。ここで「清浄ガス」とは、ガス中に含まれる固体及び/又は液体の微粒子が極めて少ないガスをいい、通常フィルターを通して製造されるものであり、当業者には周知である。本発明の清浄ガスとしては、例えばクラス100以下のガスを用いることが好ましい。本発明で用いる清浄ガスとしては、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等及びこれから選ばれる2種以上の混合ガスがあげられるが、これらに限定されない。清浄ガスとして空気を用いることが特に好ましい。
【0048】
反応容器内に清浄ガスを供給するためには、反応容器内に清浄ガス供給口を配置する。この清浄ガス供給口が配置される位置は、バーナから噴射される火炎流を乱さない位置であることが好ましい。そのためには、バーナからの火炎流と逆方向に清浄ガスが噴射されることは好ましくなく、バーナ火炎流とほぼ同じ方向に清浄ガスが流れ、バーナ火炎を乱さないことが好ましい。したがって、反応容器内においてバーナが配置される位置と同じ高さであって、バーナの横に清浄ガス供給口を配置することが好ましい。清浄ガス供給口の上下方向の幅がバーナ直径よりも大きい場合は、清浄ガス供給口の上下の幅の範囲内に、バーナが配置された位置の高さと同じ高さが含まれるように配置されることが好ましい。反応容器にバーナが複数配置されている場合は、各バーナの両横位置に清浄ガスの供給口をそれぞれ配置することが好ましい。ただし、これは、清浄ガスが反応容器内に一般に略水平方向に供給されることを前提にしたものであり、清浄ガスの流れがバーナの火炎流を乱さなければ、清浄ガス供給口の位置は上記位置に配置する場合に限られるものではなく、例えばバーナが配置される位置と異なる高さに清浄ガス供給口を設けることもできる。さらにこの清浄ガスの供給については、清浄ガス供給口から供給される直前の清浄ガスの圧力が、供給口と鉛直方向で同じ高さの位置における反応容器内の圧力以上であることが好ましい。ここで、供給口と鉛直方向で同じ高さの位置における反応容器内の圧力とは、反応容器内の同一の高さの平面内における最も高い圧力をいう。そのようにすることによって、その平面内でのガスの流れが乱されることが少なくなる。清浄ガスの供給量は、本発明の作用効果を発現できる範囲内で、任意の量を供給することができるが、一般的には、単位時間あたりバーナから反応容器内に噴射されるガスの量と同等かそれ以下であることが好ましい。清浄ガスの供給量が多すぎると反応容器内のガスの流れが乱されるからである。
【0049】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されない。
(比較例)
図1に示す構成の装置を用いて、上方の圧力が高く、GHとGLとの圧力差が1Paとなっている状態でガラス微粒子堆積体を作成した。バーナの間隔を210mmとしてバーナを4本配列させた。バーナを固定して、ロッドの移動方法を図1cに示すようにして、折り返し位置(戻り位置)をバーナ移動方向が折り返えされるごとに30mmずつ順次ずらし、所定距離移動させたところで逆向きに移動させる方法により、最大外径が200mmになるまで出発材表面にガラス微粒子を堆積させた。各バーナには、原料であるSiCl4を4SLM、水素を100SLM、酸素を100SLM、アルゴンを10SLM供給した。得られたガラス微粒子堆積体の外径は、長手方向に沿って最大で15mmと大きな変動を示した。
【0050】
(実施例1)
上記比較例1と同様の装置を用いた。ただし、上部の排気管よりも下部の排気管から強く排気できるように、各排気管内部に取り付けてあるダンパーの角度を調節することにより、ガラス微粒子が付着される出発材表面が移動する範囲の最上端と最下端との圧力差を生じさせてガラス微粒子堆積体の製造を行った。この最上端圧力(以下「上部圧」ともいう)と最下端圧力(以下「下部圧」ともいう)との圧力差(Pa)に対して、そのとき得られたガラス微粒子堆積体の長手方向の外径変動(最大外径と最小外径の差)及びガラス微粒子堆積体の平均収率(%)を測定し、表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から、上部圧と下部圧との圧力差が2Paより小さい場合は外径変動が大きく、圧力差が30Paを超えると平均収率が低下した。圧力差が30Paを超えると、反応容器内の気流が乱れるため平均収率が低下したと考えられる。なお平均収率は、用いたガラス原料ガスのうち、ガラスとして出発材に堆積された割合をモル%で表した数字である。
【0053】
(実施例2)
2本のバーナを150mmの間隔をあけて配置したバーナ列を用いた、図2に示した構成の装置を使用した。図2の装置において、各排気管(7)内に直接空気を供給できるようにし、各排気管に供給する空気の量を調整することによって排気管内圧力を調節できるようにした。バーナ列を所定範囲で往復移動させながら、ガラス微粒子堆積体の外径が150mmになるまで、出発材に対しガラス微粒子を堆積させた。各排気管内に供給する空気量を調節して排気管内圧力を種々の値に調節してガラス微粒子堆積体の製造を行った。製造時の上部圧と下部圧との差(Pa)に対し、得られたガラス微粒子堆積体の外径変動(mm)及び平均収率(%)を表2に示した。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示した結果から、上部圧と下部圧との差が2Paより小さい場合は外径変動が大きく、30Paを超えると平均収率が低下することがわかる。
【0056】
(実施例3)
図3に示した構成のVAD法の装置を使用してガラス微粒子堆積体を製造した。ガラス微粒子堆積体の外径が150mmとなるようにし、出発材の中央部側バーナには原料ガスとしてGeCl4及びSiCl4を供給してコア部を合成し、出発材の外側バーナには原料ガスとしてSiCl4のみを供給してクラッド部を合成した。最上端位置(AH)及び最下端位置(AL)の圧力を調節しながらスス付けを行った。最上端位置と最下端位置との圧力差が30Pa以上の製造条件では、スス付け中にクラッド部の側面に割れが発生した。またこの圧力差が1Paの場合は、クラッド外径(すなわちガラス微粒子堆積体の外径)の変動が大きく良好な結果が得られなかった。一方、上記圧力差を2〜30Paの間にした場合は、割れの発生もなく、外径変動も小さく良好な品質のガラス微粒子堆積体を製造できた。
【0057】
(実施例4)
実施例1と同様の装置及び製造法を用い、図4に示したように各部の圧力を測定しながら、ガラス微粒子堆積体の製造を行った。ガラス微粒子堆積体の製造においては、Px1>Px2>Px3>Px4(Xはr又はi)となるように圧力を保ちながら、圧力差ΔPを変化させることでΔPのばらつきの状態を変化させ、そのとき得られるガラス微粒子堆積体の長手方向の外径変動を測定することによってガラス微粒子堆積体の形状の安定性をみた。外径が180mmになるまでスス付けを行ってガラス微粒子堆積体を製造した。
【0058】
得られた圧力データを基に以下の式に従って圧力の変動率を求め、ガラス微粒子堆積体の外径変動の大きさとの関係をみた。なお、排気管内圧力は、排気口から排気管内に10cm入った場所で測定し、また、反応容器内圧力は排気管内圧力を測定した位置と同じ高さであって、かつ出発材中心軸上の点を頂点として排気口とのなす角度が90度になる反応容器壁上の場所で測定した。圧力差の変動率を以下の式によって求めた。
ΔP変動率(%)={ΔPの最大ずれ幅}÷ΔPav×100
ここで、{ΔPの最大ずれ幅}=ΔPn(n=1〜4)の最大値−ΔPavである。また、ΔPavは、ΔPnの平均値である。得られた結果を表3に示した。
【0059】
【表3】
【0060】
上部の圧力を下部よりも高くすることによって、得られるガラス微粒子堆積体の外径変動の大きさを小さくすることができるが、さらにΔPの平均値に対する、ΔPの各値のばらつきが小さいほど、上記外径変動も小さくなる。
【0061】
(実施例5)
実施例1と同様にしてガラス微粒子堆積体を製造した。ただし、各バーナの両脇にそれぞれ100mm×30mmの縦長の開口部を配置し、この開口部から反応容器内に外部から清浄な空気を導入した。清浄空気の導入量は、各開口部からの導入量を合計して800リットル/分とした。
【0062】
得られたガラス微粒子堆積体の外径の変動、及びガラス微粒子の付着効率(平均収率)は、実施例1とほとんど差がなかった(表4)。ただし、ガラス微粒子堆積体製造後に反応容器内に付着したガラス微粒子の付着層の厚さが、実施例1の場合に比較して2/3に減少しており、出発材に付着されなかったガラス微粒子が、反応容器内から効率良く排気されていることがわかった。反応容器内壁に付着するガラス微粒子は、これが剥がれてガラス微粒子堆積体に付着すると、付着箇所が光学的及び物理的特性の異常点となるため、反応容器内壁に付着するガラス微粒子はできるだけ少なくすることが好ましい。したがって、本実施例によれば、反応容器内に清浄空気を導入することにより反応容器内壁に付着するガラス微粒子の量が少なくなるという効果があることがわかる。
【0063】
【表4】
【0064】
【発明の効果】
本発明の多孔質ガラス微粒子堆積体の製造法によって製造されたガラス微粒子堆積体は、製造装置の反応容器内のガスの流れ及びバーナからの火炎の流れが安定化されているため、その長手方向にそった外径の変動が少なく、かつ含まれる異常点が少ないという効果を有する。さらに、上記反応容器内のガスの流れ及びバーナからの火炎の流れが安定化されていることによって、バーナで合成されたガラス微粒子が従来公知の方法よりも高い効率で出発材表面に付着及び堆積するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1aは、本発明の多孔質ガラス微粒子堆積体の製造法に用いる、CVD法に基づく装置の一実施態様を示す概念図である。
図1bは、本発明の多孔質ガラス微粒子堆積体の製造法に用いる、CVD法に基づく装置の一実施態様を示す概念図である。
図1cは、本発明の製造法の一態様において、バーナに対し出発材を相対的往復運動させるときの出発材の往復パターンの一例を示す図である。
【図2】図2aは、本発明の多孔質ガラス微粒子堆積体の製造法に用いる、CVD法に基づく装置の別の一実施態様を示す概念図である。
図2bは、本発明の多孔質ガラス微粒子堆積体の製造法に用いる、CVD法に基づく装置の別の一実施態様を示す概念図である。
【図3】本発明の多孔質ガラス微粒子堆積体の製造法に用いる、VAD法に基づく装置の一実施態様を示す概念図である。
【図4】図4aは、本発明の多孔質ガラス微粒子堆積体の製造法に用いる反応装置の反応容器に配置された排気口及び排気管の一態様を示す概念図である。
図4bは、本発明の製造法に用いる反応装置の排気管内圧力及び反応容器内圧力を示す概念図である。
図4cは、図4bに示した排気管内圧力及び反応容器内圧力の測定位置の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
1…回転手段
2…昇降手段
3…反応容器
4…出発材
5…ガラス微粒子合成用バーナ(バーナ)
6…排気口
7…排気管
8…火炎
9…バーナ移動手段
10…多孔質ガラス微粒子堆積体製造装置
Claims (7)
- 排気口及び前記排気口に連結される排気管を有する反応容器内において、ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材を移動させるとともに、前記ガラス微粒子合成用バーナによって合成されるガラス微粒子を前記出発材表面に付着させ、かつ堆積させるガラス微粒子堆積体の製造法であって、
前記反応容器内の鉛直方向において、前記ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は前記出発材の前記ガラス微粒子が付着される表面が移動する空間内の最上端位置における前記反応容器内圧力を、前記移動する空間内の最下端位置における前記反応容器内圧力よりも2Pa〜30Pa高くすることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造法。 - 排気口及び前記排気口に連結される排気管を有する反応容器内において、出発材を鉛直方向上方へ移動させるとともに、ガラス微粒子合成用バーナによって合成されるガラス微粒子を前記出発材表面に付着させ、かつ堆積させるガラス微粒子堆積体の製造法であって、
前記反応容器内の鉛直方向において、前記ガラス微粒子合成用バーナの先端の位置、前記ガラス微粒子合成用バーナから噴射される火炎方向に延長された前記ガラス微粒子合成用バーナの中心軸が前記反応容器の壁面と交わる位置、並びに前記排気口が配置される位置からなる群から選ばれる位置から最上端位置及び最下端位置を選び、前記最上端位置における前記反応容器内圧力を、前記最下端位置における前記反応容器内圧力より2Pa〜30Pa高くすることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造法。 - 2以上の排気口及び前記2以上の排気口にそれぞれ連結された排気管を有する反応容器内において、ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材を移動させるとともに、前記ガラス微粒子合成用バーナによって合成されるガラス微粒子を前記出発材表面に付着させ、かつ堆積させるガラス微粒子堆積体の製造法であって、前記反応容器内の鉛直方向において、前記ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は前記出発材の前記ガラス微粒子が付着される表面が移動する空間内の最上端位置における前記反応容器内圧力を、前記移動する空間内の最下端位置における前記反応容器内圧力よりも2Pa〜30Pa高くするとともに、鉛直方向において上側に配置される前記排気口に連結された排気管内の圧力が、鉛直方向において下側に配置される前記排気口に連結された排気管内の圧力よりも高くなるように調節することを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造法。
- 排気口及び前記排気口に連結される排気管を有する反応容器内において、ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は出発材を移動させるとともに、前記ガラス微粒子合成用バーナによって合成されるガラス微粒子を前記出発材表面に付着させ、かつ堆積させるガラス微粒子堆積体の製造法であって、前記反応容器内に熱源を配置し、前記反応容器内の鉛直方向において、前記ガラス微粒子合成用バーナ及び/又は前記出発材の前記ガラス微粒子が付着される表面が移動する空間内の最上端位置における前記反応容器内圧力を、前記熱源から供給される熱によって、前記移動する空間内の最下端における前記反応容器内圧力よりも2Pa〜30Pa高くすることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造法。
- 排気口及び前記排気口に連結される排気管を有する反応容器内に清浄ガスの供給口を配置し、さらに前記反応容器内に前記供給口から清浄ガスを供給し、かつ前記供給口から供給される前記清浄ガスの圧力が、鉛直方向で同一の高さを有する位置における前記反応容器内の圧力以上の圧力を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス微粒子堆積体の製造法。
- 前記反応容器が2以上の前記排気口及び前記排気口に連結される排気管を有する場合、前記排気口の中心から前記出発材方向に水平に一定距離離れた位置における反応容器内の圧力と、その排気口に連結された排気管内において前記排気口の中心から排気管内側に水平に一定距離離れた位置における圧力との差(排気口内外圧力差)を前記各排気口ごとに測定し、前記各排気口における前記排気口内外圧力差が、全ての前記排気口内外圧力差の平均値の±30%以内になるように前記排気口内外圧力差を調節することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス微粒子堆積体の製造法。
- 前記ガラス微粒子合成用バーナを配置した位置と同じ高さに前記排気口が配置されることを特徴とする、請求項1、3又は4のいずれか一項に記載のガラス微粒子堆積体の製造法。
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