JP4449272B2 - ガラス微粒子堆積体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はOVD法(外付法)によるガラス微粒子堆積体の製造方法の改良に関し、ガラス微粒子堆積体中に混入する異物数を低減し、伝送特性の向上した光ファイバを得ることのできるガラス微粒子堆積体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ母材の製法の一つとしてOVD法(外付法)がある。これは図2に示すように、上煙突2及び下煙突3に内部が連通している反応容器1内において、ガラス微粒子合成用バーナー11(図2の例では11,12および13の3本を使用しているが1本でもよい)の酸水素火炎中にガラス原料となるSiCl4 やGeCl4 等を流し、火炎中での加水分解反応や酸化反応により生成するSiO2 やGeO2 等のガラス微粒子を、自らの中心軸を回転軸として回転し上記バーナーとは相対的に往復運動(トラバース)する出発ガラスロッド9に対して径方向に堆積させ、該出発ガラスロッド9外周にガラス微粒子堆積体10を形成させる方法である。形成されたガラス微粒子堆積体10(ガラスロッド9を含む)を高温加熱により透明ガラス化して光ファイバ用ガラス母材とし、これを線引きして光ファイバを得る。
このガラス微粒子堆積体形成工程中、OVD装置内において出発ガラスロッド9やガラス微粒子堆積体に堆積しなかったガラス微粒子は反応容器1(上下煙突も含む)内を浮遊する。この浮遊ガラス微粒子は排気口17から排出されるが、うまく排出できずにガラス微粒子堆積体10に異物として混入する場合がある。バーナー11〜13の火炎から直接堆積したものと、浮遊していたガラス微粒子では嵩密度が異なり、異物となるわけである。また、装置内を排気しているため、支持棒4、バーナー11〜13、排気口17等の取付け部から外気の巻き込みが起き、これもガラス微粒子堆積体10への異物混入の原因となっている。
ガラス微粒子堆積体10中に異物が混入すると、透明ガラス化して得られる光ファイバ用母材中に気泡が発生したり、線引き時のファイバ外径変動や、スクリーニング試験時の断線発生の原因となる。
【0003】
これに対し、例えば特開平5−116979号公報(文献1)、特開平5−116980号公報(文献2)、特開平8−217480号公報(文献3)等にガラス微粒子堆積体中の異物を低減させる先行技術が知られている。
文献1では出発ロッドに清浄ガスを吹きつけながらガラス微粒子を堆積させることにより異物混入を防止する方法、文献2ではガラス微粒子合成用バーナーとは別の酸水素バーナーから出発ロッド全長にわたり火炎を吹きつけながら堆積させる方法が提案されている。
文献3では反応容器の材質をニッケル(Ni)若しくはNi基合金に限定し、非稼働時の管理方法として不活性ガスまたは清浄空気(クリーンエア:CAと略記)を反応容器内に導入している。この方法によれば、非稼働時の結露を防止し、反応容器金属から生成する水和物を低減し製造中の母材中への金属微粒子の混入を防止できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記各文献に提案される方法はいずれも有効ではあるが、ガラス微粒子堆積体内への異物混入の問題が完全に解決されているわけではないのが現状である。 そこで、本発明はOVD法によるガラス微粒子堆積体の形成において異物混入をさらに低減し、且つ装置内への外気の巻き込みを防止してガラス微粒子堆積体を製造できる方法を確立することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の(1)〜(3)の構成を採用することにより、上記課題を解決するものである。
(1) 上煙突、排気口を備えた反応容器及び下煙突から構成される装置内において、1本以上のバーナーの火炎中にガラス原料ガスを供給して火炎加水分解反応及び酸化反応させることにより生成するガラス微粒子を、回転する出発ガラスロッドと前記バーナーとを相対的に往復運動させながら該ガラスロッド外周に堆積させる方法において、前記上煙突内及び/または下煙突内にクリーンガスを加熱せずに導入し、該クリーンガス導入部から排気口までの装置内圧力勾配が5〜150Pa/mとなるようにすることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。
(2) 上煙突、排気口を備えた反応容器及び下煙突から構成される装置内において、1本以上のバーナーの火炎中にガラス原料ガスを供給して火炎加水分解反応及び酸化反応させることにより生成するガラス微粒子を、回転する出発ガラスロッドと前記バーナーとを相対的に往復運動させながら該ガラスロッド外周に堆積させる方法において、前記上煙突内及び/または下煙突内にクリーンガスを加熱せずに導入し、該クリーンガス導入部から排気口までの装置内圧力勾配が5〜150Pa/mとなるようにし、かつ該クリーンガスを導入する位置における圧力を装置外圧力より0〜100Pa高くすることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。
(3) 上記クリーンガスの清浄度が0.3μm以上の大きさのダストで1000個/CF以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載されるガラス微粒子堆積体の製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明者らはOVD法により製造されるガラス微粒子堆積体中への異物混入を更に低減する方法を研究した結果、従来の技術においてはまた、いずれの方法においても装置内の圧力勾配や装置内での圧力そのものについて明確な記載はなされていないので、この点についての考察、実験を重ねた結果、本発明に到達できたものである。本発明により浮遊ガラス微粒子のガラス微粒子堆積体中への異物としての混入や装置内への外気巻き込みを防止し、後の線引き等における外径変動やスクリーニング試験における断線発生頻度が低減されたガラス微粒子堆積体を製造できる。
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の態様を説明する。
図1は本発明の一実施態様を示す概略説明図である。反応容器1の上下にはその内部が反応容器1と連通している上煙突2及び下煙突3(閉鎖管)が設けてあり、上煙突2上部は支持棒4を挿入する穴のある上蓋5が設置され、コア又はコアとクラッドを有してなるガラスロッド6の両端にダミーロッド7,8を接続してなる出発ガラスロッド9や、これにガラス微粒子堆積体10を形成してなる母材 を反応容器から出し入れできるようにしてある。支持棒4は昇降装置6により回転及び上下動自在に設けられている。反応容器1にはガラス微粒子合成用のバーナー11,12及び13が、反応容器1のバーナー取付け部(穴)を介し各バーナー11,12及び13の先端が反応容器1内でガラス微粒子を噴出して出発ガラスロッド9外周にガラス微粒子堆積体10を形成できるように取付けてある。14,15及び16は各バーナーに供給されるガスのラインを模式的に示している。また、反応容器1には排気口17が設けられ、堆積されなかった余剰のガラス微粒子が排気と共に排気管18へと排出されるようにしてある。排気管18は図示を省略した排気手段に連通している。クリーンガス発生器19,20からのクリーンガスはクリーンガス導入管21,22及び上部クリーンガス投入口23,下部クリーンガス投入口24を経由して上煙突2及び/または下煙突3内に導入される。25,26,27及び28は圧力測定器である。
【0008】
本発明では、OVD法によりガラス微粒子堆積体を作製する際に、まず装置の上煙突2内または下煙突3内のいずれか1以上においてクリーンガスを導入し、クリーンガス導入位置から排気口までの装置内圧力勾配を5〜150Pa/mとする。すなわち、図1において上部クリーンガス投入口23から上煙突2内にクリーンガスを導入した場合は、圧力測定器25で測定した圧力と、排気口位置にある圧力測定器27で測定した圧力の圧力勾配が5〜150Pa/mとなるようにする。
また、下部クリーンガス投入口24から下煙突3内にクリーンガスを導入した場合は、圧力測定器26で測定した圧力と、排気口位置にある圧力測定器27で測定した圧力の圧力勾配が5〜150Pa/mとなるようにする。
上煙突2と下煙突3の両方にクリーンガスを導入した場合には、圧力測定器26で測定した圧力と排気口位置にある圧力測定器27で測定した圧力の圧力勾配、及び圧力測定器25で測定した圧力と圧力測定器27で測定した圧力の圧力勾配が5〜150Pa/mとなるようにする。
圧力勾配を本発明の範囲内とする具体的な手段としては、グリーンガス流量を調整することが挙げられる。
【0009】
このように、上煙突内及び/または下煙突内にクリーンガスを導入し、反応容器内における圧力勾配を5〜150Pa/mの範囲内にあるようにすることにより、装置内を浮遊する余剰ガラス微粒子は効率的に排気口へ排出される。装置内圧力勾配が5Pa/m未満では排気効率が悪く、150Pa/mを超えると装置内の流速が上がりすぎて、ガラス微粒子堆積体が冷却されて割れるといった問題が生じてしまうため好ましくない。
【0010】
また、本発明ではOVD法によりガラス微粒子堆積体を作製する際に、まず装置の上煙突内または下煙突内のいずれか1以上にクリーンガスを導入し、かつクリーンガス導入部の圧力を0〜100Paに保つことにより、上煙突や下煙突に存在する隙間(例えば支持棒と上煙突とのクリアランス部や下煙突と反応容器とのつなぎ目の隙間など)から外気が混入することを防止でき、装置内のクリーン度を高く保つことができる。
すなわち、図1において上煙突2内にクリーンガスを導入する場合には、上部クリーンガス投入口23に対応する位置に設けてある圧力測定器25で測定される圧力が、外気より0〜100Pa高くなるようにする。
また、下煙突3内にクリーンガスを導入する場合には、下部クリーンガス投入口24に対応する位置に設けてある圧力測定器26で測定される圧力が、外気より0〜100Pa高くなるようにする。
上煙突2内と下煙突3内の両方にクリーンガスを導入する場合には、圧力測定器25,26で測定される圧力が外気より0〜100Pa高くなるようにする。
このようなクリーンガス導入位置での圧力を調整する具体的手段としては、クリーンガスの流量を調整する。
クリーンガス導入部の圧力と外気圧との差が0Pa未満では装置内へ外気が混入してガラス微粒子堆積体中に異物が混入してしまうし、また100Paを超えるとガラス微粒子堆積体が急冷されて割れてしまう。
【0011】
本発明において更に好ましくは、上煙突内及び/または下煙突内にクリーンガスを導入し、クリーンガス導入位置から排気口までの装置内圧力勾配を5/150Pa/m、且つクリーンガス導入部の圧力を装置該圧力より0〜100Pa高く保つようにする。これにより、装置内を浮遊する余剰ガラス微粒子は効率的に排気口に排出され、かつ装置内のクリーン度を高く保つことができる。
【0012】
本発明に係るクリーンガスとしては、例えば清浄空気(クリーンエア)等を用いることができるが、特に好ましくは清浄空気、N2 等である。その他He、Ar等を用いてもよい。
本発明に係るクリーンガスの清浄度としては、0.3μm以上の大きさを有するダスト数が1000個/CF(立方フィート)以下とすることが、装置内の清浄度を高く保てる上で好ましい。該ダスト数が1000個/CFを超えると、ガラス微粒子堆積体中に混入する異物数が増加する。
【0013】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるところはない。
【0014】
(実施例1)
図1に示すようなNiで構成された反応容器11と、該反応容器1にそれぞれ連通する上及び下煙突2及び3を有し、上煙突2,下煙突3にはクリーンガス発生器19,20からのクリーンガスをクリーンガス導入管21,22を経てそれぞれ導入できるようになっている。上蓋5の上部には支持棒4を挿入する穴を有しており、また反応容器1には3本のガラス微粒子合成用のバーナー11,12及び13を設置してある。
コア及びクラッドを有する直径20mmのコアロッドの両側に石英ガラス製ダミーロッド7,8をそれぞれ溶着して出発ロッド9を作製し、該出発ロッド9を40rpmで回転させながら鉛直方向に設置し、200mm/分の速度で上下に1100mmトラバース運動させながら、バーナー11,12及び13から生成するガラス微粒子を該出発ロッド9外周に順次堆積させて、ガラス微粒子堆積体10を作製した。直径30mmの各バーナー(配置間隔は150mm)には、それぞれガラス原料としてSiCl4 :4SLM(スタンダードリットル/分)、燃焼性ガスとしてH2 :50〜100SLM、助燃性ガスとしてO2 :60〜100SLM、さらにシールガスとしてAr:5SLMを供給した。
【0015】
クリーンガス導入管21,22から上煙突2及び下煙突3内に、大きさが0.3μm以上の大きさのダスト数が10〜20個/CF以下であるクリーンエアをそれぞれ投入した。なお装置外の大気のクリーン度は0.3μm以上の大きさのダスト数が100,000個/CFであった。
このとき、上部クリーンガス投入口27から排気口17に至までの圧力勾配は60Pa/m、上部クリーンガス投入口27における圧力は装置外圧力より100Pa高くした。また、下部クリーンガス投入口28から排気口17に至までの圧力勾配は60Pa/m、下部クリーンガス投入口28における圧力は装置外圧力より100Pa高くした。
【0016】
目標のガラス重量10kgに達した時点でガラス微粒子の堆積を停止し、最終的に得られたガラス微粒子堆積体を高温加熱して透明ガラス化させ、その後常法によりファイバ化を行った。このときのファイバ外径変動とスクリーニング試験時の断線頻度との合計(異常点頻度)は20回/Mmであった。本実施例の諸条件,得られた結果を表1に示す。
【0017】
(実施例2〜6及び比較例1〜3)
実施例1と同様の装置を用い、排気圧力(排気量)とクリーニングガス投入量を変化させることにより、上部クリーンガス投入部の圧力、下部クリーンガス投入部の圧力、と各投入部から排気口への圧力勾配、排気口圧力を以下の表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にしてガラス微粒子堆積体を作製し、実施例1と同様にファイバ化した。このときのファイバ外径変動とスクリーニング試験時の断線頻度の回数/Mm及び異常点頻度(回数/Mm)を表1に併せて示す。
【0018】
【表1】
【0019】
表1の結果から明らかなように、煙突と排気口との圧力勾配が5〜150Pa/m又はクリーンガス投入部の圧力が0〜100Paのときに、異常点頻度が低減する。
【0020】
【発明の効果】
以上説明のとおり、本発明はOVD法によりガラス微粒子堆積体を製造する方法において、上煙突内及び/または下煙突内にクリーンガスを導入し、このときる装置内の圧力分布及びクリーンガス投入口付近の圧力(室圧との差)を本発明範囲内とすることにより、装置内に浮遊する余剰ガラス微粒子が異物としてガラス微粒子堆積体に混入したり、装置への外気巻き込み等を悪影響を回避して製造できるので、得られたガラス微粒子堆積体を中間体として製造された光ファイバは外径変動やスクリーニング試験時の断線頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を概略説明する図である。
【図2】従来法を概略説明する図である。
【符号の説明】
1 反応容器、 2 上煙突、 3 下煙突、 4 支持棒、
5 上蓋、 6 昇降装置、 7及び8 ダミーロッド、
9 出発ガラスロッド、 10 ガラス微粒子堆積体、
11,12及び13 ガラス微粒子合成用のバーナー、
14,15及び16 配管、
17 排気口、 18 排気管、
19及び20 クリーンガス発生器、
21及び22 クリーンガス導入管、
23 上部クリーンガス投入口、 24 下部クリーンガス投入口、
25,26,27及び28 圧力測定器。
Claims (3)
- 上煙突、排気口を備えた反応容器及び下煙突から構成される装置内において、1本以上のバーナーの火炎中にガラス原料ガスを供給して火炎加水分解反応及び酸化反応させることにより生成するガラス微粒子を、回転する出発ガラスロッドと前記バーナーとを相対的に往復運動させながら該ガラスロッド外周に堆積させる方法において、前記上煙突内及び/または下煙突内にクリーンガスを加熱せずに導入し、該クリーンガス導入部から排気口までの装置内圧力勾配が5〜150Pa/mとなるようにすることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。
- 上煙突、排気口を備えた反応容器及び下煙突から構成される装置内において、1本以上のバーナーの火炎中にガラス原料ガスを供給して火炎加水分解反応及び酸化反応させることにより生成するガラス微粒子を、回転する出発ガラスロッドと前記バーナーとを相対的に往復運動させながら該ガラスロッド外周に堆積させる方法において、前記上煙突内及び/または下煙突内にクリーンガスを加熱せずに導入し、該クリーンガス導入部から排気口までの装置内圧力勾配が5〜150Pa/mとなるようにし、かつ該クリーンガスを導入する位置における圧力を装置外圧力より0〜100Pa高くすることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。
- 上記クリーンガスの清浄度が0.3μm以上の大きさのダストで1000個/CF以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載されるガラス微粒子堆積体の製造方法。
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