JP3654232B2 - 光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光ファイバの製造方法に関し、特にガラスロッド外周にガラス原料を気相反応させることにより生成するガラス微粒子を積層してガラス微粒子堆積体を得る、いわゆるOVD法による光ファイバ母材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
SiCl4 等のガラス原料ガスを、H2 、炭化水素等の燃焼性ガス、O2 等の助燃性ガス及び必要な場合にはN2 等の不活性ガスと共にガラス合成用バーナーに導入し、該ガラス合成用バーナーに形成される火炎中で該ガラス原料を加水分解反応(火炎加水分解反応)させる、あるいは酸化反応させることによりガラス微粒子(SiO2 )を生成させ、これをターゲット外周に堆積してガラス微粒子積層体(多孔質体ともいう)を得た後、該ガラス微粒子積層体を焼結して透明ガラス体とする方法は、合成石英ガラスの製法として多用されており、特に光ファイバ用母材の製法としても一般的な方法である。
【0003】
上記ターゲットとして、コア用ガラスロッド又はコアの外周にクラッド層を有するガラスロッドを出発材とし、該出発材をその中心軸回りに回転させながら、該出発材とは相対的に軸方向に往復運動するガラス合成用バーナーから、該ガラス合成用バーナーの火炎中で加水分解反応させることにより生成させたガラス微粒子を該出発材の外周に積層させてガラス微粒子堆積体を形成させる方法は、OVD法として公知である。
例えば図1の例では少なくともコアを有するガラスロッド1の両端にダミー棒2を溶着して出発材3とし、該ダミー棒部分を把持して出発材3を回転及び上下方向に往復運動させながら、ガラス合成用バーナー4の火炎5中に生成するガラス微粒子を吹きつけ、出発材3外周にガラス微粒子堆積体6を形成する。
【0004】
従来のOVD法として例えば、特開平7−144928号公報には、トーチ(ガラス合成用バーナー)から放射されるガラス微粒子含有火炎の周囲に冷却不活性ガスをガラス微粒子含有火炎放射と同時に噴射せしめ、ガラス微粒子がガラス種棒(出発材)長手方向へ拡散するのを防止すると共にスート堆積表面が加熱されないようにしてスート堆積表面(低温)とガラス微粒子(高温)との温度差を大きく保つことにより、サーモフォレシス効果によってガラス微粒子の堆積速度〔堆積速度=単位時間当たりにターゲット母材に付着するガラス微粒子の質量(g/min)〕を増大することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記したような従来のOVD法におけるガラス微粒子堆積体の堆積速度、収率(収率=実付着量/投入量)をさらに向上できる光ファイバ母材の製造方法を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する手段として本発明の構成は、下記(1) 〜(8) のとおりである。
(1) コア又はコアとクラッドを有するガラスロッドを出発材とし、該出発材をその中心軸の回りに回転させながら、該出発材と相対的に軸方向に往復運動するガラス合成用バーナーから、該ガラス合成用バーナー火炎中でガラス原料ガスを火炎加水分解反応させることにより合成されたガラス微粒子を該出発材の外周に吹きつけて堆積させガラス微粒子堆積体を形成することにより母材を製造する方法であって、(母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2倍以下である時期(以下、母材細径時ともいう)に堆積するガラス微粒子堆積体嵩密度/母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2.5倍以上である時期(以下、母材太径時ともいう)において堆積するガラス微粒子堆積体嵩密度)<1とし、かつ、前記母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2倍以下である時期のガラス微粒子堆積体嵩密度を0.1g/cm 3 以上とすることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
(2) 上記母材細径時に堆積するガラス微粒子堆積体嵩密度を0.5g/cm3未満とすることを特徴とする上記(1)に記載の光ファイバ母材の製造方法。
(3) 上記母材細径時のガラス微粒子堆積面温度を650℃未満とすることを特徴とする上記(1)又は (2)に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【0007】
(4) 上記母材太径時に堆積するガラス微粒子堆積体嵩密度を0.5g/cm3以上とすることを特徴とする上記(1) ないし(5) のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
(5) 上記母材太径時のガラス微粒子堆積面温度を650℃以上とすることを特徴とする上記(1) ないし(4) のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
(6) 上記母材細径時のガラス微粒子堆積体嵩密度よりも上記母材太径時のガラス微粒子堆積体嵩密度が大きくなるように、燃焼性ガスまたは助燃性ガスの流量を変えることを特徴とする上記(1) ないし(5) のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、上記課題を解決する手段について鋭意研究の結果、OVD法で堆積速度を上げるには次の2つの手法を組み合わせることが最良の結果を奏するという新規な知見を得た。
第1は、ターゲットが細径時にガラス嵩密度を下げて母材外径(出発材とその外周に堆積したガラス微粒子堆積体からなる母材の外径)を積極的に太くすることで、ターゲットとなる面積を広げて堆積速度を上げるという手法である。OVD法はVAD法(気相軸付け法:1本以上のコア合成用バーナーと1本以上のクラッド合成用バーナーから同時にガラス微粒子をターゲットに吹きつけ、堆積させてゆく方法)に比較しターゲット面積が小さい時間が長いため、この手法により同量のガラス微粒子であっても嵩の高い(=嵩密度が小さい)堆積体となるためターゲットとしては大きくガラス微粒子が堆積しやすくなるため、母材外径をを早く太径化させる効果が大きい。なお、嵩密度は、〔嵩密度=ガラス微粒子堆積体質量/ガラス微粒子堆積体体積(g/cm3 )〕の式により算出できる。
【0009】
第2は、ある程度まで母材外径が太径化した時点で、酸水素火炎の流量を上げて母材の嵩密度を上げ、かつ原料の反応を促進して収率を向上させるという手法である。ガラス微粒子のドライビングフォーメーションは火炎温度(火炎中のガラス微粒子温度)と堆積面温度との温度差によるサーモホレシス効果が支配的であると考えられ、母材がある程度の外径に達すると、嵩密度を下げてターゲット面積を広げることによる収率向上効果よりも、酸水素流量を上げ火炎温度を上げかつ堆積面温度を上げることにより、原料反応の促進とサーモホレシス効果を得ることによる方が、ガラス微粒子の堆積面への付着効率を上げることができる。なお、この時に嵩密度は高くなる。
【0010】
そこで、問題となるのは第1の手法から第2の手法へと切り換える時点である。本発明者らの検討によれば、使用しているガラス合成用バーナーの直径aに対し母材外径dが2倍以下(d≦2a)においては嵩密度を下げて堆積する。なお、本発明においてガラス合成用バーナーの直径aは、図2に示すように最外周のポートの内径をいう。
具体的には、H2 、O2 等の流量を調整することにより火炎の温度を下げ、ガラス微粒子堆積体のススの嵩密度を0.1g/cm3 〜0.5g/cm3 程度に下げる。嵩密度が0.1g/cm3 未満では柔らかすぎて容易に破損してしまい、0.5g/cm3 を超えると本発明の効果が減少する。
このような嵩密度範囲を実現するには、ガラス微粒子の堆積面温度を650℃未満とすることが好ましく、具体的にはバーナーに導入する燃料ガス、助燃性ガス等の流量を調節することが挙げられる。
【0011】
なお、本発明において母材外径dとは図1に示すように合成している母材(ガラス微粒子堆積体)のほぼ定常的な部分での外径をいう。また、この外径の測定はレーザー式の距離測定器を用いて算出する。すなわち、レーザー光をガラス微粒子堆積体回転軸にたいして垂直にかつ中心に行けて出射し、後方散乱光をセンサーで受光させ、堆積面とセンサー間との距離をモニターする。母材外径が太くなる分、モニターしている測定距離が短くなることを利用し、母材外径を算出する。
【0012】
母材外径dがガラス合成用バーナ直径aの2.5倍以上(d≧2.5a)となると上記の手段の効果はなくなるので、酸水素火炎の流量を上げ、原料の反応を促進し、トータルで収率を上げる。このとき嵩密度は上がる。
具体的には、H2 、O2 等の流量を調整することにより火炎の温度を上げ、ガラス微粒子堆積体のススの嵩密度を0.5g/cm3 〜0.8g/cm3 程度にする。嵩密度が0.5g/cm3 未満では本発明の効果が減少し、また0.8g/cm3 を超えると硬くなりすぎて、以降の工程での脱水、脱気、焼結が困難になる。
【0013】
このような嵩密度範囲を実現するには、ガラス微粒子の堆積面温度を650℃〜950℃とすることが好ましく、上記のようにバーナーに導入するガス流量を調整する。ここで、ガラス微粒子の堆積面温度とは、図1に示すように、母材(ガラス微粒子体積体)の表面においてガラス合成用バーナー4の火炎5が当接している部分の温度のことであり、堆積面からの放射光により温度を算出する(サーモグラフィー)。
なお、堆積面温度と嵩密度には相関関係があるため、予め相関線を求めておいて、堆積面温度から嵩密度を算出することができる。
【0014】
本発明において、母材外径dが2a〜2.5aの間は、嵩密度が連続的に移行するように堆積させればよい。
以上のようにして得られる母材の最終的な外径は、ガラス合成用バーナ直径の約3〜4倍(3〜4a)である。
【0015】
以上のように本発明は合成に用いるバーナー直径aを基準にしているが、一般にガラス合成用バーナーは最終目的とする母材外径に対応して選択しており、最終目的とする母材外径をDとするとa=1/3 〜1/4 D程度のものを用いている。
具体的には、後記する実施例に示す。
【0016】
なお、本発明で用いるガラス合成用バーナーとしては、例えば図2に示したような構造のものでもよいし、図3に示すように中心ポート外周に同心円状にポートが形成された多重管バーナーでもよい。ガラス合成用バーナーの本数も1本又は複数本のいずれでもよい。
また、図1ではガラス合成用バーナーが固定されており、出発材がその中心軸を軸として回転しつつ、上下に往復運動する構成を示しているが、出発材が回転するのみで、バーナーをトラバースする構成も、本発明の範囲に含有される。
【0017】
本発明においてはガラス合成用バーナーに導入するガスについては、この種技術分野で公知のガラス原料ガス例えばSiCl4 、HSiCl3 、CH3 SiCl3 、(CH3 )2 SiCl2 、CH3 Si(CH3 0)3 、Si(OCH3 )4 等及び各種のドーパントガス、燃焼性ガス例えばH2 ,CH4 等炭化水素類、助燃性ガス例えばO2 等を用いればよく、また必要な場合には不活性ガス例えばAr,N2 ,He等を用いることができる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0019】
実施例1
図1に示す構成により、ガラス微粒子堆積体を形成し、ガラス堆積面温度とガラス嵩密度(g/cm3 )、ガラス堆積速度(g/min)の関係を検討した。コア及びクラッドを有し、直径40mm、長さ500mmのガラスロッド1の両端に石英ガラス製ダミー棒2を溶着して出発材3とした。該出発材3を鉛直に設置し、40rpmで回転、及び上下方向に速度100mm/min で往復運動させながら、ガラス微粒子合成用バーナー(以下、単にバーナーという場合もある)4から生成するガラス微粒子5を該出発材3外周に堆積させてガラス微粒子堆積体6を形成した。本実施例で用いたバーナー4の最外周ポートの内径は40mmであり、バーナー4には原料となるSiCl4 :3〜5SLM((スタンダードリットル/分)を供給し、火炎を形成するためのH2 を全量で40〜120SLM及びO2 を20〜60SLM、さらにシールガスとしてArを全量で4SLM、供給した。
図2に用いたバーナー4の概略断面図と各ポートから流したガスの種類を示す。
【0020】
まず直径40mmの出発材からガラス微粒子を堆積させてゆき、堆積面温度を400℃〜600℃に保持しながら、ガラス微粒子堆積体の嵩密度を0.25g/cm3 〜0.45g/cm3 に維持させるように原料ガス等の流量を調整し、ガラス微粒子堆積体外径が120mmまでガラス微粒子を堆積させた。 次いで母材外径が120mmに達した時点で、バーナー4に供給するSiCl4 の流量を5〜8SLM、H2 を120〜160SLM、O2 を60〜80SLM,Arを4SLMとして、堆積面温度を650℃以上750℃までに維持することによりガラス微粒子堆積体の嵩密度を0.5g/cm3 以上0.6g/cm3 以下に維持し、質量30kgになるまで堆積を続けた。このガラス堆積に費やした時間は45時間となった。堆積速度は11.1g/minであった。
【0021】
比較例1
実施例1と同様の構成において、同様の出発材を用いてガラス微粒子の堆積を行い、ガラス堆積面温度とガラス嵩密度、ガラス堆積速度の関係を測定した。 該出発材を40rpmで回転させながら鉛直に設置し、上下方向に速度100mm/minで往復運動させながらバーナーから生成するガラス微粒子を順次堆積・積層させて、ガラス微粒子堆積体を作製した。直径(最外周ポートの内径)40mmのバーナーには原料となるSiCl4 :3〜5SLMを供給し、火炎を形成するためのH2 を全量で100〜150SLM、及びO2 を全量で50〜75SLM、さらにシールガスとしてArを全量で4SLM供給した。
【0022】
実施例1の場合と同様に直径40mmの出発材表面にガラスを堆積し始め、堆積面温度を700℃に維持することにより堆積するガラス微粒子の嵩密度を約0.55g/cm3 に維持させてガラス微粒子堆積体外径120mmまで堆積させた。ガラス微粒子堆積体の外径が120mmに到達した時点で、実施例1と同様にバーナー4に供給するSiCl4 の流量を5〜8SLM、H2 を120〜160SLM、O2 を60〜80SLM,Arを4SLMとして、堆積面温度を650℃〜750℃に維持することによりガラス微粒子堆積体の嵩密度を0.5g/cm3 〜0.6g/cm3 に維持し、質量30kgになるまで堆積を続けた。本比較例1において堆積工程に要した時間は60時間となった。堆積速度は8.3g/minであった。
【0023】
比較例2
実施例1と同様の構成において、同様の出発材を用いてガラス微粒子の堆積を行い、堆積面温度とガラス嵩密度、ガラスの堆積速度の関係を調べた。
該出発材3を鉛直に設置し、40rpmで回転と同時に上下方向に速度100mm/minで往復運動させながら、ガラス微粒子合成用バーナー4から生成するガラス微粒子を該出発材3外周に堆積させてガラス微粒子堆積体6を形成した。直径40mmのバーナー4には原料となるSiCl4 :3〜5SLMを供給し、火炎を形成するためのH2 を全量で40〜120SLM及びO2 を20〜60SLM、さらにシールガスとしてArを全量で4SLM供給した。
【0024】
実施例1と同様にガラス微粒子堆積体の外径が120mmに達するまでは堆積面温度を400℃〜600℃にキープしながら、嵩密度を0.25〜0.45g/cm3 に維持するように堆積した。その後も同様に原料ガス、H2 、O2 の流量を制御して堆積面温度を400℃〜600℃に、ガラス微粒子堆積体の嵩密度を0.25g/cm3 〜0.45g/cm3 に維持しながら、質量30kgになるまでガラス微粒子を堆積させた。すなわち、ガラス微粒子堆積体の外径によってガス流量等の条件を変えることは行わなかった。本比較例2において堆積工程に費やした時間は51時間となった。堆積速度は9.8g/minであった。
【0025】
以上の実施例1及び比較例1,2の条件と得られた結果を表1にまとめて示す。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例2
図1の構成において、バーナーは図3に示すもの、出発材外径(コア及びクラッドを有するガラスロッドの外径)は30mmとしてガラス微粒子の堆積を行い、ガラス堆積面温度とガラス嵩密度、ガラス堆積速度の関係を調べた。該出発材を40rpmで回転させながら鉛直方向に設置し、上下に100m/minの速度で往復運動させながらバーナーから生成するガラス微粒子を順次堆積・積層させて、ガラス微粒子堆積体を作製した。
図3に示す構造で、最外ポートの内径が30mmの8重管バーナーからは、原料となるSiCl4 :2〜4SLMを供給し、火炎を形成するためにH2 :30〜90SLM及びO2 :15〜45SLM、さらにシールガスとしてAr:4SLMを供給した。最初、直径30mmの出発材からガラス微粒子を堆積させてゆき、堆積面温度を400〜600℃に保持しながら、ガラス微粒子の嵩密度を0.25〜0.45g/cm3 に維持させるように原料ガス流量を調整し、ガラス微粒子堆積体外径が90mmまでガラス微粒子を堆積させた。
【0028】
外径90mmに達した時点で、バーナー4に供給する各ガスの流量を、SiCl4 :4〜6SLMとし、H2 :90〜120SLM、O2 :45〜60SLM、Ar:4SLMとして、堆積面温度を650〜750℃に維持することにより、ガラス微粒子堆積体の嵩密度を0.5〜0.6g/cm3 に維持し、質量30kgになるまで堆積を続けた。本実施例2において堆積に費やした時間は55.5時間となった。堆積速度は9.0g/minであった。
【0029】
実施例3
図1の構成において、バーナーは図4に示すもの、出発材外径(コア及びクラッドを有するガラスロッドの外径)は50mmとしてガラス微粒子の堆積を行い、ガラス堆積損温度とガラス嵩密度、ガラス堆積速度の関係を調べた。該出発材を40rpmで回転させながら鉛直方向に設置し、上下方向に速度100mm/minで往復運動させながら、バーナーから生成するガラス微粒子を順次堆積・積層させて、ガラス微粒子堆積体を作成した。
図4に示す最外ポートの内径が50mmのマルチノズルバーナーからは、原料となるSiCl4 :4〜6SLMを供給し、火炎を形成するためのH2 を全量で50〜150SLM、及びO2 を全量で25〜75SLM、さらにシールガスとしてArを全量で4SLMを供給した。
直径50mmの出発材からガラス微粒子を堆積させてゆき、堆積面温度を400〜600℃に維持しながら、ガラス微粒子の嵩密度を0.25〜0.45g/cm3 に維持させるように上記のガス流量範囲内で流量を調整し、ガラス微粒子堆積体外径が150mmまでガラス微粒子を堆積させた。
ガラス微粒子堆積体外径150mmに達した時点で、バーナー4に供給するガス流量を SiCl4 :6〜10SLM、H2 :150〜200SLM、O2 :75〜100SLM、及びAr:4SLMとして堆積面温度を650〜750℃に維持することによりガラス微粒子堆積体の嵩密度を0.5〜0.6g/cm3 に維持し、質量30kgになるまで堆積を続けた。このガラス堆積に費やした時間は38.5時間、堆積速度は13.0g/minであった。
表2に実施例2及び3の条件と結果を合わせて示す。
【0030】
【表2】
【0031】
実施例4
実施例1において、バーナー4に供給するガスの流量を変更する時点をガラス微粒子堆積体外径が90mmに達した時点とする以外は実施例1と同様にして、ガラス微粒子堆積体を形成した。このガラス堆積に費やした時間は50時間となった。堆積速度は10g/minであった。
【0032】
比較例3
比較例1において、バーナー4に供給するガスの流量を変える前のガラス微粒子堆積体の嵩密度は0.5〜0.6g/cm3 に維持させたこと、及びバーナー4に供給するガスの流量を変更する時点をガラス微粒子堆積体外径が90mmに達した時点としたこと、以外は比較例1と同様にしてガラス微粒子堆積体を形成した。本比較例3において堆積工程に要した時間は67時間となった。堆積速度は7.5g/minであった。
【0033】
以上の実施例4及び比較例3の条件と得られた結果を表3にまとめて示す。
【0034】
【表3】
【0035】
実施例5
実施例2において、バーナー4に供給するガスの流量を変更する時点をガラス微粒子堆積体外径が70mmに達した時点とする以外は実施例2と同様にして、ガラス微粒子堆積体を形成した。本実施例5において堆積に費やした時間は63時間となった。堆積速度は7.9g/minであった。
【0036】
実施例6
実施例3において、バーナー4に供給するガスの流量を変更する時点をガラス微粒子堆積体外径が115mmに達した時点とする以外は実施例3と同様にして、ガラス微粒子堆積体を形成した。本実施例6において堆積に費やした時間は43時間となった。堆積速度は11.6g/minであった。
表4に実施例5及び6の条件と結果を合わせて示す。
【0037】
【表4】
【0038】
上記の各実施例ではバーナーを1本のみ用いたが、複数本用いても堆積速度を挙げる効果が奏される。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明のように、コア又はコアとクラッドからなるガラスロッドの両端にダミーロッドを溶着して作製した出発材を軸回りに回転及び軸方向に往復運動させながら、ガラス合成用バーナーで合成されたガラス微粒子を出発材物品の外周に吹きつけて堆積させる方法において、堆積初期の母材細径時にガラス堆積面温度を積極的に下げて、ガラス微粒子の嵩密度を下げて堆積させ、母材外径がガラス合成用バーナー直径の2.5倍以上ではガラス堆積面温度を積極的に高くして、ガラス原料の反応を促進し、ガラス微粒子堆積体嵩密度を上げることにより、ガラス微粒子の堆積速度を上げることができるため、光ファイバ母材をより安価に作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施態様を説明する概略図である。
【図2】 本発明の実施例で用いたガラス合成用バーナーの構成を説明するための概略断面図である。
【図3】 本発明の実施例で用いた他のガラス合成用バーナーの構成を説明するための概略断面図である。
【図4】 本発明の実施例で用いたさらに他のガラス合成用バーナーの構成を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
1 ガラスロッド、 2 ダミー棒、 3 出発材、
4 ガラス合成用バーナー、 5 火炎、 6 ガラス微粒子堆積体。
Claims (6)
- コア又はコアとクラッドを有するガラスロッドを出発材とし、該出発材をその中心軸の回りに回転させながら、該出発材と相対的に軸方向に往復運動するガラス合成用バーナーから、該ガラス合成用バーナー火炎中でガラス原料ガスを火炎加水分解反応させることにより合成されたガラス微粒子を該出発材の外周に吹きつけて堆積させガラス微粒子堆積体を形成することにより母材を製造する方法であって、(母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2倍以下である時期に堆積するガラス微粒子堆積体嵩密度/母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2.5倍以上である時期において堆積するガラス微粒子堆積体嵩密度)<1とし、かつ、前記母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2倍以下である時期のガラス微粒子堆積体嵩密度を0.1g/cm 3 以上とすることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
- 上記母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2倍以下である時期に堆積するガラス微粒子堆積体嵩密度を0.5g/cm3 未満とすることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 上記母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2倍以下である時期のガラス微粒子堆積面温度を650℃未満とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 上記母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2.5倍以上である時期に堆積するガラス微粒子堆積体嵩密度を0.5g/cm3 以上とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 上記母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2.5倍以上である時期のガラス微粒子堆積面温度を650℃以上とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 上記母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2倍以下である時期のガラス微粒子堆積体嵩密度よりも上記母材外径が該ガラス合成用バーナー直径の2.5倍以上である時期のガラス微粒子堆積体嵩密度が大きくなるように、燃焼性ガスまたは助燃性ガスの流量を変えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
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