JP4196480B2 - フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合メッキ等による離型処理が表面に施された電極を用いて、電着法によりフィルムを形成させ、さらにこのフィルムを電極から離型するフィルムの製造方法、および、この方法により製造されたフィルムに関する。本発明の製造方法によると、簡便な装置により均一なフィルムが得られる。また、この方法によると、高精細なパターン化フィルムを任意の場所に設けることができる。したがって本発明のフィルムは、回路基板、半導体装置等の絶縁保護層、絶縁性接着層、応力緩和層等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、フィルムを製造する方法としては、溶融押し出し法、溶液キャスト法等が用いられている。溶融押し出し法は、加熱溶融させた樹脂を高温度・高圧力下で金属製ダイのスリットから吐出し、冷却して樹脂フィルムを製造する方法である。また、溶液キャスト法では、樹脂を適当な有機溶剤に溶解したキャスト用樹脂溶液を支持体上に塗工した後、有機溶剤を除去してフィルムが製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記溶融押し出し法によると、得られる樹脂フィルムの膜厚精度は前記金属製ダイの加工精度に直接的に影響され、ダイのスリットの加工精度以上の膜厚精度を得ることは極めて難しい。特に薄膜フィルムにおいては、この製造方法によって膜厚を精密に制御することは困難である。
一方、上記溶液キャスト法によると、上記溶融押し出し法に比べて良好な膜厚制御が可能であり、かつ優れた外観を呈する薄膜フィルムが得られる。しかしながら、均一なフィルムを得るためには、樹脂溶解時に発生する気泡を十分除去する必要があり、またキャスト用樹脂溶液の粘度を適度に調整する必要がある。さらに、この方法によると製造時に多量の有機溶剤を使用するという問題がある。
【0004】
また、電気・電子機器分野においては、例えば配線パターンにしたがって回路基板等の表面に絶縁保護層等のパターンを設ける場合がある。これらのパターンを形成する方法としては、スクリーン印刷等の印刷法、または感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィー法が広く使用されている。
しかし、上記印刷法は、安価であり工業的に優れるが、得られるパターンの精度が低く、細線の印刷が困難である。一方、上記フォトリソグラフィー法は、超微細加工が可能であることから半導体やプリント回路基板等の製造に使用されている。しかしこの方法では、パターンの製造工程が煩雑であり、しかも製造設備が高価であるという問題がある。
【0005】
一方、導電体上に選択的にフィルムを形成する方法として電着法が知られている。この電着法は、製造工程が簡便である、細線パターンにも比較的よく追従できる等といった特長を有する。
しかし、電着を行う際には導電体に電極接点を確保する必要があり、この接点の部分はフィルムが形成されずに残ってしまう。また、電着は導電体上に選択的に起こるため、この導電体(回路等)以外の場所にはフィルムが形成されないという制約がある。そして、この方法は導電体上にフィルムを直接成長させるものであって、形成されたフィルムはこの導電体に密着している。すなわち、導電体からこのフィルムを剥がして任意の場所に移動させることはできない。
【0006】
本発明の目的は、簡便な装置により均一な膜厚を有するフィルムが得られ、かつ所望の位置に高精細なパターン化フィルムを設けることが可能なフィルムの製造方法、および、この製造方法により得られたフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、剥離性を備えた層の上に粒子を電着してフィルムを形成させ、次いでこの層からフィルムを離型することにより上記課題を解決できることを見出して本発明を完成した。
【0008】
フィルムの製造方法としては、例えば、導電性材料からなる基体に無機微粒子およびフッ素含有有機微粒子の少なくとも一方を含む導電性層を形成してなる導電性層付基体に、重合性化合物および重合体の少なくとも一方からなる粒子を電着してフィルムを形成させ、次いで上記フィルムを上記導電性層から離型する方法がある
この製造方法では、フィルムを「電着」により形成するので、製造装置が簡単であり、かつ膜厚制御が容易である。上記導電性層は剥離性を有するので、形成されたフィルムをこの導電性層から容易に離型して、このフィルムを単体で使用し、あるいは他の被着体に転写することができる。
【0009】
本発明のフィルムの製造方法は、導電性材料からなるドラム状基体の外周面に無機微粒子およびフッ素含有有機微粒子の少なくとも一方を含む導電性層を形成してなる導電性層付ドラムを、その周方向の一部を重合性化合物および重合体の少なくとも一方を含む粒子のエマルジョンに浸漬して軸中心に回転させながら、上記エマルジョン中において上記導電性層付ドラムに上記重合体粒子を電着してフィルムを連続的に形成させるとともに、形成された上記フィルムを上記エマルジョン外において乾燥させた後に上記導電性層から連続的に離型することを特徴とする。
この製造方法によると、長尺のフィルムを連続して効率よく製造することができる。また、導電性層付ドラムの回転数や電着条件等を調節することにより、所望の厚さのフィルムを容易に製造することができる。
【0010】
また、その他のフィルムの製造方法としては、導電性材料からなる基体の表面の一部を非導電性パターンにより被覆した後、上記基体の表面の他部に無機微粒子およびフッ素含有有機微粒子の少なくとも一方を含む導電性層を形成してなる導電性層付基体に、重合性化合物および重合体の少なくとも一方を含む粒子を電着してフィルムを形成させ、次いで上記フィルムを上記導電性層から離型することによりパターン化されたフィルム(以下、「パターン化フィルム」という。)を得る方法がある
【0011】
更に、その他のフィルムの製造方法としては、導電性材料からなる基体に無機微粒子およびフッ素含有有機微粒子の少なくとも一方を含む導電性層を形成した後、上記導電性層の一部を非導電性パターンにより被覆してなる導電性層付基体に、重合性化合物および重合体の少なくとも一方を含む粒子を電着してフィルムを形成させ、次いで上記フィルムを上記導電性層から離型することによりパターン化フィルムを得る方法がある
【0012】
上記のその他の製造方法によると、導電性層付基体の表面に露出している導電性層のパターンの形状に沿ってフィルムを形成することができる。上記非導電性パターンの形成は、例えばフォトリソグラフィ法等を用いることにより高精度に行うことができるので、この方法によれば高精度なパターン化フィルムを得ることができる。また、本発明の方法によると、導電性層付基体を「版」としてフィルムの製造に繰り返して使用することができ、導電性層のパターンを形成するためのフォトリソグラフィを毎回行う必要はないので、従来のフォトリソグラフィを用いたパターン形成方法に比べて製造効率がよい。
【0013】
本発明の製造方法において導電性層付基体に電着される上記粒子は、粒子表面に電荷を有し、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂およびポリエステル系樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂からなることが好ましい。
【0015】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。なお、本発明における「フィルム」とは、ある程度の面積を有する連続フィルムのみならず、たとえば半導体装置における絶縁膜のような微小面積の膜等をも含む意味である。
【0016】
(I)基体の離型処理
〔導電性基体〕
本発明において用いる基体は、導電性を有する材質からなるものであれば特に限定されないが、通常はSUS、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、シリコン等の金属からなるものが好ましく使用される。この基体の形状は、平板状、曲面状、ドラム状、シート状、箔状等のいずれでもよいが、本発明の製造方法にはドラム状の基体が用いられる。
【0017】
〔無機微粒子〕
本発明において用いられる無機微粒子は、導電性層に剥離性を付与しうるものであれば特に限定されるものではないが、その硬度は2以上(より好ましくは硬度3 以上、さらに好ましくは硬度4以上)であることが好ましい。無機微粒子の硬度が2未満であると導電性層の耐久性が不足する場合がある。無機微粒子の例としては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、黒鉛、フッ化黒鉛、窒化ホウ素等から選択される一種または二種以上からなる微粒子が挙げられ、一般に固体潤滑剤といわれる物質からなるものが好ましく使用される。特に炭化珪素またはシリカを用いることが好ましい。
【0018】
〔フッ素含有有機微粒子〕
本発明において用いられるフッ素含有有機微粒子は、導電性層に剥離性を付与しうるものであれば特に限定されるものではない。フッ素含有有機微粒子の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等から選択される一種または二種以上からなる微粒子が挙げられる。本発明においてはPTFE微粒子が特に好ましく使用される。
【0019】
これらの無機微粒子およびフッ素含有有機微粒子(以下、「離型性微粒子」ともいう。)の平均粒子径は特に制限されるものではないが、通常は0.01〜100μmであり、0.01〜30μmであることが好ましく、0.05〜10μmであることがより好ましい。
【0020】
〔導電性層〕
本発明における導電性層は、例えば、上記離型性微粒子を含むメッキ液を用いて、亜鉛、銅、ニッケル、金、スズ、コバルト、銀、またはこれらの合金等の金属類と上記離型性微粒子とを共析させるメッキ処理により形成される(以下、本発明の導電性層がメッキ処理により形成されたものである場合、この導電性層を「導電性メッキ層」ともいう。また、導電性メッキ層が形成された基体を「メッキ層付基体」、導電性メッキ層が形成されたドラム状基体を「メッキ層付ドラム」ともいう。)。上記メッキ液は、フィルムの製造に必要な導電性が確保される範囲で、金属以外の無機材料または有機材料をさらに含有してもよい。メッキ液中に含まれる離型性微粒子の量は、この微粒子の共析量が1〜60重量%となる範囲が好ましく、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。微粒子の共析量が1重量%以下では十分な離型性が得られず、また共析量60重量%を超えると導電性メッキ層の強度が著しく低下する。
【0021】
上記メッキ処理の方法は電解メッキ法でも無電解メッキ法でもよい。電解メッキ法による場合には、例えば青酸亜鉛、青酸銅等の青酸塩、硫酸銅等と上記離型性微粒子とを含むメッキ液を使用することができる。一方、無電解メッキ法による場合には、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−ホウ素等と上記離型性微粒子とを含むメッキ液を使用することができる。本発明の導電性メッキ層は、ニッケルと離型性微粒子とを含むメッキ液を用いた無電解メッキ法により形成することが好ましく、このメッキ液としてはニッケル−リンと離型性微粒子とを含むものがさらに好ましい。得られたメッキ面は、必要に応じて加熱処理してもよい。これにより導電性メッキ層の耐久性が向上する。
【0022】
なお、導電性を確保できる限りにおいて、金属メッキの代わりにポリマーメッキにより導電性層を形成してもよい。
【0023】
この導電性層の厚さは、0.1μm〜100μmとすることが好ましく、1〜70μmとすることがより好ましい。導電性層の厚さが上記範囲未満であると、表面処理効果が十分に発揮されない場合がある。一方、導電性層の厚さが大きすぎると、特にこの導電性層が導電性メッキ層である場合においては、この層の厚さが不均一となって平滑性が低下する恐れがある。
また、導電性層の動摩擦係数は0.02〜0.15であることが好ましく、0.05〜0.10であることがより好ましい。動摩擦係数が0.15を超えると、この導電性層の上に形成させたフィルムを離型し難くなる。一方、動摩擦係数が0.02未満では、乾燥中などの意図しない段階で導電性層からフィルムが剥がれ落ちる恐れがある。
【0024】
(II)フィルムの形成
〔電着性粒子〕
本発明では、「重合性化合物および重合体の少なくとも一方からなる電着可能な粒子」(以下、「電着性粒子」ともいう。)のエマルジョンを電着液としてフィルムを形成させる。ここで、「重合性化合物」とは重合性基を有する化合物を指し、完全硬化前の前駆的重合体、重合性オリゴマー、単量体などを含む意味である。一方、「重合体」とは実質的に重合反応が完了した化合物を指す。ただし、加熱、湿気などによりこの重合体を電着後に架橋させることも可能である。
【0025】
上記電着液に、導電性メッキ層等の導電性層が形成された導電性層付基体または導電性層付ドラムを浸漬して電極とし、対極を配して電流を流すことにより、導電性層の表面に上記電着性粒子が電着されてフィルムが形成される。この電着を可能とするために、上記電着性粒子は表面に電荷を有することが好ましい。この表面電荷はアニオン型でもカチオン型でもよいが、導電性層を陰極として電着することによりこの導電性層からの金属の溶出が防止できることから、カチオン型の粒子であることが好ましい。
【0026】
上記電着性粒子は、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂およびポリエステル系樹脂から選択される一種または二種以上からなることが好ましい。また、これらの樹脂に加えてさらに他の成分を含んでもよい。また、これらの樹脂は互いに、あるいは他の成分と化学的に結合されていてもよい。
本発明においては、絶縁信頼性、耐熱性等に優れたフィルムが得られることから、ポリイミド系樹脂を主成分とする電着性粒子を用いることが特に好ましい。ここで、「ポリイミド系樹脂」とは、電着後の加熱などにより硬化可能な前駆的重合体(たとえばポリアミック酸など。)、ポリイミド系樹脂の形成に用いられる単量体、オリゴマーなどをも含む意味であり、他の樹脂についても同様である。さらに、この「ポリイミド系樹脂」とは、ポリイミド樹脂またはその前駆的重合体、ポリイミド樹脂の形成に用いられる単量体と他の単量体との共重合体樹脂またはその前駆的重合体、ポリイミド樹脂またはその前駆的重合体と他の化合物との反応物などをも含む意味であり、他の樹脂についても同様である。
【0027】
そして、本発明の方法により好ましく製造されるフィルムは、上記電着性粒子を電着し、必要に応じてこれを一部あるいは完全に熱硬化させて得られたものであって、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂およびポリエステル系樹脂から選択される一種または二種以上からなる。また、これらの樹脂に加えてさらに他の成分を含んでもよい。また、これらの樹脂は互いに、あるいは他の成分と化学的に結合されていてもよい。
【0028】
以下、主としてポリイミド系樹脂からからなる電着性粒子のエマルジョン(以下、「ポリイミド系樹脂エマルジョン」という。)、主としてエポキシ系樹脂からなる電着性粒子のエマルジョン(以下、「エポキシ系樹脂エマルジョン」という。)、主としてアクリル系樹脂からなる電着性粒子のエマルジョン(以下、「アクリル系樹脂エマルジョン」という。)および主としてポリエステル系樹脂からなる電着性粒子のエマルジョン(以下、「ポリエステル系樹脂エマルジョン」という。)の製造方法について説明する。
【0029】
▲1▼ポリイミド系樹脂エマルジョン
本発明の製造方法においてフィルムの形成に用いる電着液は、ポリイミド系樹脂エマルジョンからなることが特に好ましい。このポリイミド系樹脂エマルジョンの好ましい例としては下記の二種類が挙げられる。
〔1〕(A)有機溶媒可溶性のポリイミドと(B)親水性ポリマーとの複合粒子からなるポリイミド系樹脂エマルジョン。例えば特開平11−49951公報に記載の方法により好ましく製造される。
〔2〕(C)ポリアミック酸と(D)疎水性化合物との複合粒子を含む粒子からなるポリイミド系樹脂エマルジョン。例えば特開平11−60947号公報に記載の方法により好ましく製造される。
これらのポリイミド系樹脂エマルジョンは、水性分散体としての保存安定性に優れるとともに、このエマルジョン中の粒子を電着して得られた樹脂はポリイミド本来の耐熱性、電気絶縁性、機械的特性等を保持しているため好ましい。
【0030】
上記〔1〕のポリイミド系樹脂エマルジョンの製造方法についてさらに詳しく説明する。
(A)有機溶媒可溶性のポリイミドの合成法は特に限定されるものではないが、例えば、有機極性溶媒中、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを混合して重縮合させて、ポリアミック酸を得たのち、該ポリアミック酸を加熱イミド化法または化学イミド化法により脱水閉環反応させることにより、ポリイミドを合成することができる。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重縮合を多段階で行うことにより、ブロック構造を有するポリイミドを合成することも可能である。
この有機溶媒可溶性のポリイミドは、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基等の反応性基(a)を1種以上有することが好ましい。反応性基(a)を有するポリイミドの合成方法としては、例えば、ポリアミック酸の合成に使用されるカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、カルボン酸一無水物、モノアミン化合物等の反応原料として、反応性基(a)を有する化合物を使用し、脱水閉環反応後に反応性基(a)を残存させる方法等を挙げることができる。
【0031】
(B)親水性ポリマーは、親水性基として、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基等を1種以上有し、水に対する20℃の溶解度が、通常0.01g/100g以上、好ましくは0.05g/100g以上である親水性ポリマーからなる。前記親水性基に加えて、前記(A)成分中の反応性基(a)と反応しうる反応性基(b)を1種以上有することが好ましい。このような反応性基(b)としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基のほか、前記親水性基と同様の基等を挙げることができる。このような親水性ポリマーは、親水性基および/または反応性基(b)を有するモノビニル単量体を単独重合または共重合させるか、あるいはこれらのモノビニル単量体と他の単量体とを共重合させることにより得ることができる。
【0032】
この(A)有機溶媒可溶性のポリイミドと(B)親水性ポリマーとを、反応性基(a)と親水性ポリマー中の反応性基(b)とが適切な反応性を有する組み合わせとなるように選択し、該ポリイミドと該親水性ポリマーとを、例えば有機溶媒中にて溶液状態で混合して、必要に応じて加熱しつつ、反応させたのち、この反応溶液と水性媒体とを混合し、場合により有機溶媒の少なくとも一部を除去することにより、該ポリイミドと該親水性ポリマーとを相互に結合して同一粒子内に含む複合粒子からなるポリイミド系樹脂エマルジョンを得ることができる。
【0033】
次に、上記〔2〕のポリイミド系樹脂エマルジョンの製造方法についてさらに詳しく説明する。
ポリイミドの前駆体である(C)ポリアミック酸の合成法は、特に限定されるものではないが、例えば、有機極性溶媒中、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重縮合反応によりポリアミック酸を得ることができる。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重縮合反応を多段階で行うことにより、ブロック構造を有するポリアミック酸を合成することも可能である。なお、ポリアミック酸を脱水閉環させることにより部分的にイミド化したポリアミック酸も使用可能である。
【0034】
一方、(D)疎水性化合物は、前記ポリアミック酸中の少なくともアミド酸基と反応しうる基(以下、「反応性基」という。)を有する化合物である。この反応性基としては、例えば、エポキシ基、イソシアナト基、カルボジイミド基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ジアゾ基、カルボニル基等を挙げることができる。これらの反応性基は、疎水性化合物中に1種以上存在することができる。なお、「疎水性」とは、水に対する20℃の溶解度が、通常、0.05g/100g未満、好ましくは0.01/100g未満、さらに好ましくは0.005g/100g未満であることを意味する。
【0035】
このような疎水性化合物としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、フルオレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ポリカルボジイミド、コレステロール、ベンジルアルコールp−トルエンスルホン酸エステル、クロロ酢酸エチル、トリアジントリチオール、ジアゾメタン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等から選択される1種または2種以上を使用することができる。
【0036】
この(C)ポリアミック酸と(D)疎水性化合物とを、例えば、有機溶媒中にて溶液状態で混合して反応させたのち、この反応溶液を水性媒体と混合し、場合により有機溶媒の少なくとも一部を除去することにより、ポリアミック酸と疎水性化合物とを同一粒子内に含む複合粒子からなるポリイミド系樹脂エマルジョンを得ることができる。
【0037】
なお、上記〔1〕および〔2〕のエマルジョンの製造において用いられるテトラカルボン酸二無水物は特に限定されるものではなく、その例としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物あるいは脂環式テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;
等を挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
また、上記〔1〕および〔2〕のエマルジョンの製造において用いられるジアミン化合物は特に限定されるものではなく、その例としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミン類;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンあるいは脂環式ジアミン類;
2,3−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン等の、分子内に2つの第一級アミノ基および該第一級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン類;
モノ置換フェニレンジアミン類;
ジアミノオルガノシロキサン;
等を挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
▲2▼エポキシ系樹脂エマルジョン
エポキシ系樹脂エマルジョンの製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、例えば特開平9−235495号公報、同9−208865号公報に記載の方法などによればよい。
【0040】
▲3▼アクリル系樹脂エマルジョン
アクリル系樹脂エマルジョンの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば通常の乳化重合法により製造できる。単量体としては一般的なアクリル系および/またはメタクリル系単量体から選択される一種または二種以上を用いればよい。このとき、粒子を電着可能とするために、アミノ基、アミド基などのカチオン性基を有する単量体、またはカルボキシル基、スルホン酸基等などのアニオン性基を有する単量体を共重合させることが好ましく、その共重合量は使用する単量体全体に対して5〜80重量%(より好ましくは10〜50重量%)とすることが好ましい。上記アミノ基を有する単量体の具体例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどが好ましく使用される。
【0041】
▲4▼ポリエステル系樹脂エマルジョン
ポリエステル系樹脂エマルジョンの製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、例えば特開昭57−10663号公報、同57−70153号公報、同58−174421号公報に記載の方法などによればよい。
【0042】
〔フィルムの乾燥および離型〕
上記電着性粒子を電着して導電性メッキ層等の導電性層上に形成されたフィルムは、乾燥された後に導電性層から離型される。この乾燥時の熱等により、電着された粒子を一部あるいは完全に硬化させてもよい。好ましい乾燥温度は、電着性粒子の組成および目的とする熱硬化の程度により異なるが、一般に40〜150℃であり(より好ましくは60〜100℃)、好ましい乾燥時間は0.5〜30分(より好ましくは1〜10分)である。
乾燥されたフィルムは、導電性メッキ層等の導電性層から離型(単離)して支持体をもたないシート状、ロール状などとして保存あるいは使用してもよく、またこのフィルムを任意の被着体に転写することにより導電性層からフィルムを離型してもよい。特に後述するパターン化フィルムの場合には、被着体に転写して離型することが好ましい。
【0043】
本発明の製造方法においては、電着性粒子として樹脂前駆体を用い、これを電着した後に乾燥時の熱により一部硬化させることが好ましい。この一部硬化フィルムは完全硬化フィルムに比べて接着性がよいので、離型されたフィルムを任意の被着体に載置するか、または導電性メッキ層等の導電性層から被着体に直接フィルムを転写して、その後このフィルムを被着体上で熱処理して完全硬化させることにより、フィルムを被着体に密着させることができる。また、この一部硬化フィルムを二つの被着体の間に配置した状態で熱処理して完全硬化させることにより、このフィルムを接着剤として使用することができる。上記熱処理によりフィルムの硬度および耐薬品性も向上する。
【0044】
被着体上における熱処理の条件は特に限定されるものではないが、好ましい加熱温度は100℃以上であり、特に好ましくは150〜300℃である。加熱温度が100℃未満であると、硬化が不十分であるため十分なフィルム強度が得られず、また被着体への十分な密着力が得られない場合がある。一方、加熱温度が400℃を超えると、このフィルムを構成する化合物が分解しやすいので好ましくない。
【0045】
本発明の方法により製造するフィルムの厚さは、このフィルムの用途等により異なるが、0.1μm〜100μmとすることが好ましく、1〜70μmとすることがより好ましい。フィルムの厚さが上記範囲未満であると均一に電着することが困難である。一方、フィルムの厚さが大きすぎると電着に長時間を要するため製造効率が低下する。
【0046】
(III)パターン化フィルムの製造方法
パターン化フィルムの製造方法は、非導電性材料からなるパターンで基体表面の一部を覆って導電性層が形成される範囲を制限することにより、製造しようとするパターン化フィルムの形状に合わせたパターンの導電性層を形成する。の方法においては、導電性層をメッキ処理により形成することが特に好ましい。このメッキ処理によれば、導電性材料からなるパターンで被覆された部分には導電性メッキ層が形成されないので、製造しようとするパターン化フィルムの形状に合わせたパターンの導電性メッキ層を容易に得ることができる。また、その他の方法としては、基体表面に形成された導電性メッキ層等の導電性層の一部を非導電性材料からなるパターンで覆うことにより、製造しようとするパターン化フィルムの形状に合わせたパターンで導電性層を露出させる。
【0047】
非導電性パターンの製造は、塗布、印刷、フォトリソグラフィなどの任意の方法により行うことができる。本発明においては、従来公知のレジスト材料および方法を用いたフォトリソグラフィにより非導電性パターンを形成することが好ましい。非導電性パターンの厚さは0.1〜100μmとすることが好ましく、1〜50μmとすることがより好ましい。この厚さが0.1μm未満ではピンホールが発生して導通部が生じる場合があり、また厚さが100μmを超えると非導電性パターンの寸法精度が低下する恐れがある。
本発明の方法によると、L/S=10/10μm程度まで(より好ましい条件では5/5μm程度まで)の精度を有するパターン化フィルムを製造することができる。
【0048】
本発明の製造方法により製造されたフィルムは、銅基板に転写して加熱硬化させた後において、180度剥離による接着強度が0.3〜1.5kg/cm2(より好ましくは0.5〜1.5kg/cm2)という、良好な接着力を示すものとすることができる。また、電着性粒子がポリイミド樹脂からなる場合、本発明の方法によると表面抵抗率1015Ω以上(より好ましい条件では1016Ω以上、通常1019Ω以下)、体積抵抗率1016Ω・cm(より好ましい条件では1017Ω・cm以上、通常1019Ω・cm以下)という、良好な絶縁特性を示すフィルムが得られる。
【0049】
(作用および効果)
本発明のフィルムの製造方法は、メッキ処理などにより形成された導電性層上に粒子を「電着」してフィルムを形成するので、製造装置が簡単であり、かつ膜厚制御が容易である。この導電性メッキ層等の導電性層は良好な剥離性を有するので、形成されたフィルムをこの導電性層から容易に離型して、このフィルムを単体で使用し、あるいは他の被着体に転写することができる。したがって、電着により被着体上に直接フィルムを形成させる従来の方法とは異なり、本発明の方法により得られたフィルムを導電性層から離型して被着体に移動させれば、この被着体の任意の部分(例えば導電性をもたない部分)にフィルムを接着することができる。このとき、フィルムが一部硬化した状態で被着体に載置し、その後このフィルムを完全硬化させることが好ましく、これによりフィルムの被着体への密着性が向上する。
また、導電性メッキ層をドラム状基体に設けた導電性層付ドラムを用いることにより、長尺のフィルムを連続して効率よく製造することができる。
さらに、導電性メッキ層等の導電性層が所定のパターンに形成された導電性層付基体を「版」として使用すれば、このパターンに沿った形状のパターン化フィルムを繰り返して製造することができる。
【0050】
本発明のフィルムの製造方法およびこの方法により得られたフィルムの特長は、このフィルムがポリイミド系樹脂またはエポキシ系樹脂からなる場合に特に有効に発揮され、このフィルムは回路基板、半導体装置等の絶縁保護層、絶縁性接着剤、応力緩和層などとして好適に利用することができる。
例えば、本発明によるポリイミド系樹脂フィルムを用いて半導体装置上に絶縁保護層を形成する場合には、電着液としてポリイミド系樹脂エマルジョン(好ましくは上記〔1〕または〔2〕のポリイミド系樹脂エマルジョン)を使用して、請求項3または4記載の導電性層付基体(すなわち、導電性メッキ層等の導電性層がパターン化されている)にポリイミド系樹脂(電着性粒子)を電着してフィルムを形成させ、これを乾燥温度60〜100℃、乾燥時間1〜10分の条件で乾燥させてポリイミド樹脂の一部を硬化させることにより厚さ10〜50μmの一部硬化ポリイミド系樹脂フィルムとし、このフィルムを導電性層上から半導体装置上に圧着転写した後、200〜300℃で10〜60分の熱処理を行ってフィルムを完全硬化させることが好ましい。
また、このポリイミド系樹脂フィルムを絶縁性接着剤として使用する場合には、上記一部硬化ポリイミド系樹脂フィルムを半導体装置上に圧着転写したのち、このフィルムの上に上層となるべき回路等を配置し、次いで上記と同様の条件により熱処理を行えばよい。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下において、特記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0052】
(1)エマルジョンの合成
以下の合成例1〜5により、電着性粒子のエマルジョンを合成した。
【0053】
(合成例1:ポリイミド系樹脂エマルジョン)
テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物32.29g(90ミリモル)および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン3.00g(10ミリモル)、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン36.95g(90ミリモル)およびオルガノシロキサンLP7100(信越化学製の商品名)2.49g(10ミリモル)を、N−メチル−2−ピロリドン450gに溶解して、室温で12時間反応させた。その後、この反応溶液に、ピリジン32gおよび無水酢酸71gを添加し、100℃で3時間脱水閉環反応を行った。次いで、反応溶液を減圧留去して精製し、固形分10%のポリイミド溶液を得た。
ジエチレングリコールモノエチルエーテル100部を入れた反応容器を、窒素ガス雰囲気下で85℃に保持し、この反応容器に、n−ブチルアクリレート65部、ジメチルアミノエチルアクリレート30部、グリシジルメタアクリレート5部およびアゾビスイソブチロニトリル1部からなる混合液を5時間かけて連続的に添加しつつ、撹拌下で溶液重合を行なった。滴下終了後、85℃でさらに2時間撹拌を続けて、溶液重合を完結させ、固形分50%のアクリルポリマー溶液を得た。
ポリイミド溶液50部(固形分)とアクリルポリマー溶液30部(固形分)とエピコート828(油化シェルエポキシ社製の商品名)20部を混合し、70℃×3時間反応させた後、酢酸3部を徐々に添加して混合し、pH調整を行った。次いで、蒸留水1000部を徐々に添加しつつ強く撹拌して、カチオン性のポリイミド系樹脂エマルジョンを得た。
【0054】
(合成例2;ポリアミック酸エマルジョン)
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(100ミリモル)、ジアミン化合物として2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン41.1g(100ミリモル)を、N−メチル−2−ピロリドン450gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。減圧留去により、濃縮を行い、固形分15%のポリアミック酸溶液を得た。
前記ポリアミック酸の溶液70部(固形分)に対して、エピコート828(油化シェルエポキシ社製)30部を添加して十分混合し、80℃×60分反応させたのち、トリエタノールアミン10部を添加した蒸留水1000部に徐々に加えながら強く撹拌して、アニオン性のポリアミック酸エマルジョン(ポリイミド系樹脂エマルジョンの一例である)を得た。
【0055】
(合成例3:エポキシ系樹脂エマルジョン)
トリレンジイソシアネートと2−エチルヘキサノールからなるブロックイソシアネート46.3部と、エピコート828(油化シェルエポキシ社製の商品名)とジエチルアミンとを反応させて得られたエポキシアミン付加物89.3部とを混合し、pH調節剤として酢酸3.8部を加えた。これを、イオン交換水1200部中に攪拌しながら投入することによって、カチオン性のエポキシ系樹脂前駆体を主成分とする分散粒子のエマルジョンを得た。
【0056】
(合成例4:アクリル系樹脂エマルジョン)
イオン交換水200部、コータミン24(花王株式会社製、界面活性剤の商品名)1部を反応器に仕込み、窒素気流下で系を60℃まで昇温した後、V−50(和光純薬株式会社製、開始剤の商品名)を仕込んで重合反応を開始させた。反応開始直後から、イオン交換水30部、ブチルアクリレート20部、メチルメタクリレート77部、DMAPAA−Q3部(興人株式会社製の商品名)、コータミン24 0.3部、エマルゲンE−920(花王株式会社製、界面活性剤の商品名)2部からなるモノマーエマルジョンを、3時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、系を65℃に昇温してさらに3時間反応させることによって、カチオン性のアクリル系樹脂重合体を主成分とする分散粒子のエマルジョンを得た。
【0057】
(合成例5:ポリエステル系樹脂エマルジョン)
ジメチルテレフタレート466部、ジメチルイソフタレート388部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル178部、エチレングリコール443部、ネオペンチルグリコール400部、酢酸亜鉛0.44部、酢酸ナトリウム0.04部、三酸化アンチモン0.43部を反応器に仕込み、140〜220℃で4時間かけてエステル交換反応を行った。次に260℃20mmHgの真空下で重縮合反応を1時間行ってポリエステル系樹脂を得た。
このポリエステル系樹脂30部をイソプロパノール14部と水56部の混合液中に入れ、70〜75℃で3時間かけて分散させることによって、カチオン性のポリエステル系樹脂重合体を主成分とする分散粒子のエマルジョンを得た。
【0058】
(2)フィルムの製造
〔実施例1〕
▲1▼メッキ層付ドラムの作製
基体としては、直径30cm×長さ30cmの鋼製ドラム状基体を使用した。この基体を、硫酸ニッケル4.5g/リットル、次亜リン酸ナトリウム20g/リットル、錯化剤35g/リットル、離型性微粒子としてのPTFE粒子(平均粒子径0.2μm)5g/リットル、および分散助剤適量を含有するメッキ液(pH4.5)に浸漬して、90℃でニッケル−リン無電解メッキを行うことにより、PTFE粒子を約20%含有するニッケル−リン−PTFE複合メッキ層(導電性メッキ層)を基体上に形成してメッキ層付ドラムを得た。この導電性メッキ層の厚さは7μmであり、動摩擦係数は0.06であった。
【0059】
▲2▼フィルムの製造
合成例1で得たポリイミド系樹脂エマルジョンからなる電着液を満たしたステンレス(SUS304)製電着浴槽(容量50リットル)中で、前記▲1▼の工程で得たメッキ層付ドラム(回転式円筒型電極)を陰極とし対向電極を陽極として電圧(100V)を印加し、このドラムの一回転のうち電着液中を通過する間に所定膜厚(30μm)のフィルムが電着されるように一定速度で陰極を回転させた。このとき、ドラム上に形成されたフィルムを乾燥用ドライヤーにて乾燥(90℃×5分)させるとともにフィルムを一部硬化させた後、このフィルムをドラムから離型して巻き取ることによって連続的にフィルムを製造した。
【0060】
〔実施例2〕
導電性メッキ層の形成においてニッケル−リン−PTFE複合メッキに代えてニッケル−リン−シリカ複合メッキ(離型性微粒子として、実施例1で用いたPTFE粒子に代えて平均粒子径0.3μmのシリカ5g/リットルを使用。)を行い、電着液として合成例3で得たエポキシ系樹脂エマルジョンを用いた点以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。なお、このニッケル−リン−シリカ複合メッキ層の厚さは7μmであり、動摩擦係数は0.07であった。
【0061】
〔実施例3〕
電着液として合成例5で得たポリエステル系樹脂エマルジョンを用いた点以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0062】
〔実施例4〕
電着液として合成例4で得たアクリル系樹脂エマルジョンを用いた点以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0063】
〔実施例5〕
導電性メッキ層の形成においてニッケル−リン−PTFE複合メッキに代えて実施例2と同様にニッケル−リン−シリカ複合メッキを行い、電着液として合成例2で得たポリアミック酸エマルジョンを用い、電極の正負を逆転させた点以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。
【0064】
〔実施例6〕
300×300×0.5mmのステンレス板(SUS304)を基体として、これに実施例1と同様にニッケル−リン−PTFE複合メッキを施した。このメッキ層付基体を陰極に、対向電極に不溶性金属板を用いて、これらを合成例1で得たポリイミド系樹脂エマルジョンからなる電着液中に浸漬して100Vを印加し、陽極上に形成された膜厚30μmのフィルムを100℃×5分間乾燥してポリイミド系樹脂を一部硬化させた。この一部硬化ポリイミド系樹脂フィルムを18μm厚の電解銅箔に圧着転写することにより複合メッキ上から離型し、次いで250℃×30分熱処理して硬化させることにより、反りのない銅張積層板を得た。
【0065】
参考例1
〔1〕非導電性パターン形成
300×300×0.5mmのステンレス板(SUS304)を基体として、これにレジスト用樹脂(JSR株式会社製、商品名「オプトマーHH550」)を5μmの膜厚で塗布した。これをプレベーク(80℃×5分)した後、フォトマスク(L/S=30/70μm)を用いて露光量100mjで露光し、指定現像液にて現像した。さらにポストベーク(250℃×30分)を行って、非導電性パターンにより被覆された基体を得た。
【0066】
〔2〕複合メッキ
上記〔1〕の工程で得られた基体を、ニッケル−リン−PTFE複合メッキ液(上村工業株式会社製、商品名「ニムフロン」)に浸漬して、液温90℃で無電解メッキ法によりメッキを行い、上記非導電性パターンにより被覆されない部分の基体表面に7μm厚のニッケル−リン−PTFE複合メッキ層を形成して、パターン化された導電性メッキ層を有するメッキ層付基体を得た。
【0067】
〔3〕電着
2リットルのガラス製容器に、合成例1で得たポリイミド系樹脂エマルジョンからなる電着液を入れ、上記〔2〕の工程で得たメッキ層付基体を陰極に、対向電極を陽極にして、攪拌しながら温度25℃、極間距離4cm、電圧50Vで2分間電着を行い、電着されたポリイミド系樹脂を80℃×5分間の乾燥により一部硬化させて、パターン化された導電性メッキ層上に膜厚30μmの一部硬化ポリイミド系樹脂フィルムを形成した。
【0068】
〔4〕転写
あらかじめ100℃に加熱されたアライナーを有する精密プレス機に、上記〔3〕の工程によりポリイミド系樹脂フィルムが形成されたメッキ層付基体と被転写基板とを設置し、5kg/cmの圧力で20分間圧着することによって、導電性メッキ層からフィルムを離型して基板に転写し、絶縁保護層を形成させ、その後250℃×10分熱処理して硬化させた。
【0069】
参考例2
〔1〕複合メッキ
基体としての300×300×0.5mmのステンレス板(SUS304)を、ニッケル−リン−PTFE複合メッキ液(上村工業株式会社製、商品名「ニムフロン」)に浸漬して、液温90℃で無電解メッキ法によりメッキを行い、7μm厚のニッケル−リン−PTFE複合メッキ層を形成してメッキ層付基体を得た。
【0070】
〔2〕非導電性パターン形成
上記〔1〕の工程で得られたメッキ層付基体に、レジスト用樹脂(JSR株式会社製、商品名「オプトマーHH550」)を5μmの膜厚で塗布した。これをプレベーク(80℃×5分)した後、フォトマスク(L/S=30/70μm)を用いて露光量100mjで露光し、指定現像液にて現像した。さらにポストベーク(250℃×30分)を行って、非導電性パターンで被覆されることによりパターン化された導電性メッキ層を有するメッキ層付基体を得た。
【0071】
〔3〕電着
2リットルのガラス製容器に、合成例1で得たポリイミド系樹脂エマルジョンからなる電着液を入れ、上記〔2〕の工程で得たメッキ層付基体を陰極に、対向電極を陽極にして、攪拌しながら温度25℃、極間距離4cm、電圧50Vで2分間電着を行い、電着されたポリイミド系樹脂を80℃×5分間の乾燥により一部硬化させて、パターン化された導電性メッキ層上に膜厚30μmの一部硬化ポリイミド系樹脂フィルムを形成した。
【0072】
〔4〕転写
あらかじめ100℃に加熱されたアライナーを有する精密プレス機に、上記〔3〕の工程によりポリイミド系樹脂フィルムが形成されたメッキ層付基体と被転写基板とを設置し、5kg/cmの圧力で20分間圧着することによって、導電性メッキ層からフィルムを離型して基板に転写し、絶縁保護層を形成させ、その後250℃×10分熱処理して硬化させた。
【0073】
〔比較例1〕
導電性メッキ層の形成においてニッケル−リン−PTFE複合メッキに代えてニッケル−リンメッキ(すなわち、離型性微粒子を使用しない)を行った点以外は実施例1と同様に電着を行った。このニッケル−リンメッキ層の動摩擦係数は0.16であった。しかし、この導電性メッキ層上に電着されたフィルムは、導電性メッキ層から剥離することができなかった。
上記実施例1〜5および比較例1のフィルム製造条件および製造結果を表1および2に示す。実施例1〜5のフィルムはいずれも導電性メッキ層からの離型性は良好であった。
【0074】
【表1】
Figure 0004196480
【0075】
【表2】
Figure 0004196480
【0076】
(3)性能評価
上記実施例6により得られたポリイミド樹脂フィルムの性能を下記の方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0077】
〔接着強度〕
セバスチャン法により、基板に対するフィルムの接着強度を測定した。
【0078】
〔表面抵抗率および体積抵抗率〕
いずれもJIS K6911に準拠して測定した。
【0079】
〔HAST試験(耐湿熱性)〕
熱硬化後のポリイミド系樹脂フィルムについて、温度121℃、湿度100%、2気圧の条件下で、72時間のHAST試験(耐湿熱性試験)を行った。試験の前および試験後のポリイミド系樹脂フィルムに対して赤外線分光測定を実施し、その変化の程度により耐湿熱性を下記基準で評価した。
○;変化がなく耐性が認められる
×;変化が大きく耐性が認められない
【0080】
〔鉛筆硬度〕
JIS K 5400に準拠して測定した。
【0081】
【表3】
Figure 0004196480
【0082】
表3から判るように、実施例6の方法により得られたポリイミド系樹脂フィルムは、いずれも基板に対する良好な接着性を示し、かつ絶縁特性、硬度および耐湿熱性にも優れていた。なお、実施例6のフィルムは導電性メッキ層からの離型性は良好であった。
【0083】
【発明の効果】
本発明のフィルムの製造方法では、剥離性を有する導電性メッキ層等の導電性層上に粒子を「電着」してフィルムを形成するので、簡単な製造装置により膜厚等の均一なフィルムが得られ、またこの導電性層上に形成されたフィルムを離型して任意の場所に移動させることができる。また、樹脂前駆体を電着した後に導電性層上で一部硬化させれば、このフィルムは接着性に優れるので、これを離型して被着体上に移動させ、次いで熱処理して完全硬化させることにより、被着体に密着してフィルムを設けることができる。本発明の方法により製造されたフィルムは、特にポリイミド系樹脂またはエポキシ系樹脂からなる場合、回路基板、半導体装置等における絶縁保護層、絶縁性接着剤、応力緩和層などとして好適である。

Claims (2)

  1. 導電性材料からなるドラム状基体の外周面に無機微粒子およびフッ素含有有機微粒子の少なくとも一方を含む導電性層を形成してなる導電性層付ドラムを、その周方向の一部を重合性化合物および重合体の少なくとも一方を含む粒子のエマルジョンに浸漬して軸中心に回転させながら、上記エマルジョン中において上記導電性層付ドラムに上記重合体粒子を電着してフィルムを連続的に形成させるとともに、形成された上記フィルムを上記エマルジョン外において乾燥させた後に上記導電性層から連続的に離型することを特徴とするフィルムの製造方法。
  2. 上記重合体粒子は、粒子表面に電荷を有し、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂およびポリエステル系樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂からなる請求項1に記載のフィルムの製造方法。
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