JP4194753B2 - 電磁鋼板に焼鈍分離剤を被覆する方法 - Google Patents

電磁鋼板に焼鈍分離剤を被覆する方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、MgOを主成分とし、塩素含有化合物を含む少なくとも1種の添加物を添加した水溶液の塗布により、電磁鋼板に焼鈍分離剤として酸化物粉末を被覆する方法に関する。
【0002】
従来から電磁鋼板の製造プロセスにおいては、鋼の溶製、スラブの鋳造、スラブの熱間圧延、インヒビター生成のための熱延板焼鈍、熱延板の冷間圧延、冷延板の脱炭焼鈍を行った後に、主としてMgOから成る付着分離剤を塗布して、次工程における2次再結晶のための電磁鋼板コイルの最終焼鈍時に付着が起きないようにしていた。
【0003】
珪素鋼圧延板から製造する方向性電磁鋼板は、変圧器用として圧延方向が磁化容易方向である集合組織(ゴス組織)とするために、結晶粒成長抑制剤(インヒビター)、例えば、AlとN、MnとS、CuとS、MnとSeによって合金化される。これらは、例えば、AlN、MnS、CuS、MnSeの化合物を形成し、その微細な分散により再結晶焼鈍時の結晶粒の早期成長を防止する。その結果、2次再結晶により望ましいゴス方位の結晶粒成長が起きる。
【0004】
インヒビターとして結晶粒成長を効果的に制限するには、粒子の微細分散の分布ができる限り均一であることが重要である。これは、熱延板焼鈍中と、脱炭処理後に行う窒素含有量増加処理中、のいずれか又は両方で起きる。インヒビターの分布状態は、結晶粒の選択成長が開始する直前までは更に変化する可能性がある。従来から良く知られているように、インヒビターの分布にとって、焼鈍分離剤の組成も特に重要である。そのため、実質的に酸化マグネシウムから成る焼鈍分離剤に他の物質を少量添加することにより、表面を改良し、分極を促進し、再磁化による損失を低減している。
【0005】
ドイツ特許公報DE2947945C2はボロンとナトリウムの化合物を添加することを推奨しており、欧州特許公報EP0232537B1はチタン、ボロン、または硫黄の化合物を添加することを推奨している。当初、塩化物の添加は有害であると一般に考えられていた。しかし、ドイツ特許公報DE34440344によると、硫酸アンチモンをSb、Sr、TiまたはZrの塩化物と組み合わせて添加した場合、磁気特性が向上すると考えられる。しかし、硫酸アンチモンは水に殆ど溶けない上、毒性がある。ドイツ特許公報DE4409691A1の提案によると、良く水に溶けるナトリウム化合物または微細分散した酸化物系アルミニウム化合物を添加し、同時に金属塩化物を更に添加することができる。欧州特許公報EP0789093A1には添加物としてハロゲンまたはハロゲン化物が開示されている。欧州特許公報EP0416420A2によると、Mg、Ca、Naおよび/またはKの塩化物を添加することにより、焼鈍分離剤の塩素量を明確な規定量に調整する必要がある。上記従来技術に開示された塩化物の欠点は、随伴して導入された元素が鋼板表面に残留し、長時間の焼鈍後に固形残滓を生ずる原因になることである。
【0006】
本発明の目的は、窒化物系および/または硫化物系のインヒビターが最終焼鈍のための昇温過程で早期劣化することを防止し、昇温過程で窒化物系インヒビターを再形成することである。昇温過程においては、焼鈍ガスが鋼板生地あるいはその中に含有されているインヒビターと反応することにより、インヒビターが決定的な影響を受ける。焼鈍分離剤の組成が本質的な役割を演じている。
【0007】
上記の問題を解決するために、本発明の方法においては、水溶液に添加する添加物として塩化アンモニウム(NHClまたはNHCl・nHO)を用いる。添加物の量は、焼鈍分離剤中のMgOの重量に対して塩素濃度が0.01〜0.10wt%、望ましくは0.02〜0.05wt%になるように選択する。
本発明においては、更にピロ燐酸ナトリウムを付加的に添加することができる。その添加量は、焼鈍分離剤中のMgOの重量に対してナトリム濃度が0.02〜0.05wt%に調整されるように選択する。
【0008】
本発明により焼鈍分離剤に添加した物質により層の生成が制御される。すなわち、ガラス皮膜が低温で生成するため緻密性が高く、電磁鋼板中で焼鈍ガスとインヒビターとの反応を防止する。
本発明の方法の効果は、単に再磁化損失を改良するのみではなく、方位のシャープさが明らかに高まること、すなわち明瞭なゴス方位が得られ、その結果、製造された鋼板を例えばレーザ処理することにより磁区が微細化され、それにより特性が大幅に向上する可能性がある。更に、添加物が容易に準備できるものであり、水に良く溶け、安価で、用い方も単純であり、毒性や環境の面での問題もない、という利点がある。
【0009】
本発明の方法においては、焼鈍分離剤中の塩素とナトリウムの濃度を別個にあるいは相互に調整する。塩素およびナトリウムを、種々の化合物の形で水溶液中に導入し、それぞれ特定の最適濃度にすることができる。
特に、高透磁率の電磁鋼板の場合、本発明により塩素を、更にはナトリウムを、焼鈍分離剤に添加すると、最終焼鈍条件の変動によって磁気特性が余り影響されなくなる、という特別な利点がある。最終焼鈍はコイルの形で行うので、鋼板の幅方向および長手方向で焼鈍条件が変動することが避けられない。焼鈍条件は特に焼鈍ガスの露点との関係が大きい。酸化マグネシウムをスラリーの状態で塗布し、乾燥するので、一部が水酸化マグネシウムとして混入することが避けられない。最終焼鈍の昇温過程で、水酸化マグネシウムが熱分解して酸化マグネシウムと水が生ずる。放出された水分によって焼鈍ガスの露点が上昇する。露点が不適当になるとインヒビターの分布に悪影響がある。
【0010】
焼鈍分離剤への塩素供給源として塩化アンモニウムを選択したことは、特に重要であり、他の公知の塩化物に比べて2つの利点がある。1つは、最終焼鈍の熱的な条件下において、塩素の結合相手はガス相を介して環境を害さない形で外部へ排出され、固形残滓が残留しないことである。もう1つは、既に説明したように、電磁鋼板中の塩化物系インヒビターの早期劣化を防止が必要なことである。塩化アンモニウムはこれら2つの要請に対して顕著な効果が得られる。最終焼鈍中にNH3 基が熱的に分離される。このガスは、コイルの鋼板間の窒素分圧を更に増加させて窒化物系インヒビターの劣化を回避する条件を整え、次いで無害なN2 とH2 に分解する。
【0011】
焼鈍分離剤に2種目の添加物としてピロ燐酸ナトリウムを添加することにより、磁気特性を更に向上させることができる。ピロ燐酸ナトリウムは、塩素添加による特性向上効果を更に促進すると共に、鋼板の窒素濃度の増加し過ぎを防止する。
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0012】
〔実施例1〕
厚さ0.30mmの高透磁率方向性電磁鋼板を工業的に生産する際に、焼鈍分離剤への添加物として塩化アンモニウムを用い、また比較として塩化アンチモンを用いて、塩素濃度およびナトリウム濃度を調整した。
Figure 0004194753
図1に、再磁化損失P1.7 による結果を示す。塩素濃度の調整を本発明により塩化アンモニウムで行うと、塩化アンチモンを用いた場合に比べて磁気特性が明らかに向上している。
【0013】
〔実施例2〕
厚さ0.30mmの高透磁率方向性電磁鋼板を工業的に生産する際に、焼鈍分離剤への添加物として塩化アンモニウムおよびピロ燐酸ナトリウムを用いて、塩素濃度を下記の値に調整した。
Figure 0004194753
表3に、再磁化損失P1.7 による結果を示す。
【0014】
Figure 0004194753
本発明によりナトリウム濃度および塩素濃度を調整したことにより、磁気特性が明らかに向上している。再磁化損失は約7%低減した。製品鋼板に磁区微細化のためのレーザ処理を行うと、本発明により焼鈍分離剤のNa濃度およびCl濃度を調整した場合に特に効果が顕著である。
【0015】
〔実施例3〕
厚さ0.27mmの高透磁率方向性電磁鋼板を工業的に生産する際に、塩化アンモニウムおよびピロ燐酸ナトリウムの添加により、焼鈍分離剤の塩素濃度およびナトリウム濃度をそれぞれ下記の値に調整した。
Figure 0004194753
表5に、再磁化損失P1.7 による結果を示す。
【0016】
Figure 0004194753
本発明により塩素濃度を調整したことにより再磁化損失が約2%低減した。本発明により、更にナトリウム濃度を調整したことにより再磁化損失が更に3%低減した。図2に示すように、レーザ処理による効果が明らかに向上している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、再磁化損失P1.7 による結果を示す。塩素濃度の調整を本発明により塩化アンモニウムで行うと、塩化アンチモンを用いた場合に比べて磁気特性が明らかに向上している。
【図2】 図2は、レーザ処理による効果が明らかに向上していることを示す。

Claims (5)

  1. 主成分としてのMgOと、塩素含有化合物の添加物とからなる水溶液の塗布により、結晶粒成長抑制剤を含む電磁鋼板に焼鈍分離剤を被覆する方法において、
    上記添加物が塩化アンモニウム(NHClまたはNHCl・nHO)であることを特徴とする方法。
  2. 請求項1記載の方法において、焼鈍分離剤中のMgOの重量に対して塩素濃度が0.01〜0.10wt%となるのに十分な量の塩化アンモニムを上記水溶液に添加することを特徴とする方法。
  3. 請求項2記載の方法において、焼鈍分離剤中のMgOの重量に対して塩素濃度を0.02〜0.05wt%に調整することを特徴とする方法。
  4. 主成分としてのMgOと、塩素含有化合物およびナトリウム化合物の添加物とからなる水溶液の塗布により、結晶粒成長抑制剤を含む電磁鋼板に焼鈍分離剤を被覆する方法において、
    上記添加物が塩化アンモニウム(NHClまたはNHCl・nHO)およびピロ燐酸ナトリウム(NaまたはNa・nHO)であることを特徴とする方法。
  5. 請求項4記載の方法において、焼鈍分離剤中のMgOの重量に対してナトリウム濃度を0.02〜0.05wt%に調整することを特徴とする方法。
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