JP4194075B2 - リクライニング車椅子における転倒防止装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、リクライニング車椅子における転倒防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、リクライニング可能な車椅子において、通常の着座姿勢から背もたれを後方へ回動させると重心が後輪側に移動するために後方へ転倒する恐れがあった。これを解消するために、リクライニングにともなって後輪(補助輪)が後方へ移動するもの(例えば、特許文献1参照)、あるいは座席部がリクライニングに伴って前方へ移動するものなど、提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−314450号公報
【特許文献2】
特開平11−113967号公報
【0004】
しかし、上記のように構成されるリクライニング車椅子は、構成部品が多数必要となることにより車椅子の重量が増し、操作性が悪くなってしまうという欠点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点に鑑み本発明では、リクライニング可能な車椅子においてリクライニング操作によって背部支持枠が後方傾倒するのに連動して確実に転倒防止装置が作動して後方転倒を防止するとともに、この転倒防止装置を構成する部品数を極めて少なくし車椅子の重量を軽減することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、前輪及び後輪を具備したフレーム本体上に座席部を有し、該フレーム本体に対して相対的に後方傾倒可能に取り付けられる背部支持枠を備えたリクライニング可能な車椅子において、前記背部支持枠の中間部に前後回動自在となるように支持杆の一端部を枢着するとともに、一端部がフレーム本体に上下回動自在となるように枢着された作動杆の他端部を前記支持杆の中間部に枢支する一方、背部支持枠の後方傾倒操作に連動して支持杆の自由端が側面視において後輪の接地位置の後方斜め上部に位置する状態から徐々に後方斜め下方に移動するとともに、前記前後輪が接地している状態では支持杆の自由端と床面との間に隙間ができるよう構成したことを最も主要な特徴とする。
請求項2の発明は、上記支持杆の自由端に転動自在にローラーを枢着するとともに、該ローラーと床面との間に隙間ができるよう構成したことを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、車椅子のフレーム本体に後方傾倒可能に取り付けられた背部支持枠を後方傾倒することによって、作動杆が下方回動するとともに、該作動杆と背部支持枠に枢着された支持杆の自由端が後輪の接地位置の後方斜め上部に位置する状態から徐々に後方斜め下方に移動する。すなわち、リクライニング操作をすることによって、自動的に支持杆の自由端が後輪後方の床面上で背部支持枠を支持可能な状態となり、リクライニングにともなって相対的に後方へ移動する重心の位置により後方転倒しやすくなるが、これを確実に防止できるという効果を奏する。また、この転倒防止装置は支持杆と作動杆により構成されており、部品数も少なく軽量な車椅子を提供できるという効果も有している。さらに、前記支持杆の自由端は床面に接地しないようにも構成されているので、段差を乗り越えるために前輪を浮き上がらせることもできる。
請求項2の発明によれば、支持杆の自由端に転動自在なローラーを具備しているのでリクライニングした状態で段差を乗り越える際に、このローラーが床面に接地し移動できるという効果を奏する。
【0008】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施形態に係るリクライニング車椅子の転倒防止装置を図面に基づいて説明する。
第1図は、本発明の一実施形態に係る転倒防止装置を備えたリクライニング車椅子の全体側断面図、第2図は第1図に示す車椅子の全体背面図、第3図はリクライニングさせた状態を示す全体側断面図、第4図は第3図の状態からさらにリクライニングさせた状態を示す全体側断面図である。
【0009】
本発明の転倒防止装置1を備えたリクライニング可能な車椅子2は、以下のように構成されている。
3はフレーム本体である。このフレーム本体3は、側面視において略々L字状に形成されたフレームパイプ4と前後方向の下部パイプ5を固着し、該フレームパイプ4と下部パイプ5の前端側を上下方向の縦パイプ6で連結してなる一対の側部フレーム7,7を左右に略々座幅間隔に離間させて配設し、横パイプ8,8,・・・で連結して一体的に構成している。また、前記フレームパイプ4,4の上側水平状部の前後中間部には下向きにブラケット9,9が固着されており、このブラケット9,9を横パイプ10で連結している。そして、このフレーム本体3の上面部に固着されたプレート11,11間にスプリング(図示しない。)を張設して車椅子2の座席としている。
【0010】
12,12は前輪であり、前記縦パイプ6,6の下端に、当該縦パイプ6,6の軸心回りに旋回自在となるよう軸承されている。
13,13は後輪であり、前記側部フレーム7,7の後方下部に固着された取付プレート14,14に軸支されている。
【0011】
15は背部支持枠であり、上側枠部15aが回動自在に枢着され、ハンドル16,16を具備した中間枠部15bの下端部と下側枠部15cの上端部とを軸着して折り畳み可能に設け、さらにこの軸着部には前記中間枠部15bと下側枠部15cとが一平面をなす状態で固定可能に固定手段17,17が設けられている。このように背部支持枠15を折り畳み可能に構成することにより、収納時等コンパクトになり便利である。
【0012】
前記背部支持枠15は、フレーム本体3の後部において起立状態から後方へ傾倒可能にリクライニング機構18を介して支持されている。詳述すると、このリクライニング機構18は、第1図に示すように、前記横パイプ10に突設されるブラケット19,19と背部支持枠15の下端部とを第1リンク20,20で連結し、また側部フレーム7,7のブラケット9,9の後方位置に固着されるブラケット21,21と背部支持枠15の下端やや上方寄り位置に設けられるブラケット15d,15dとを第2リンク22,22で連結してなる不等辺四節リンク機構されている。
【0013】
前記リクライニング機構18は次のように作用する。当該リクライニング機構18は、第1図、第3図、第4図に示すように、第1リンク20,20の先端部が略々水平前方へ移動し、第2リンク22,22の先端部が前下方へ移動するように各リンク20,20,22,22を設定している。すなわち、背部支持枠15がフレーム本体3に対して、下方へ引き込まれながら傾倒していくように作用する。逆に、背部支持枠15を起立させるときは、当該背部支持枠15がフレーム本体3に対して上方へ伸びながら起立していくように作用する。したがって、背部支持枠15が使用者の背中に追従してリクライニングするようになり、背部支持枠15と背中の擦れを軽減させる効果を有している。
【0014】
23は伸縮固定装置を示し、適宜操作で伸縮可能かつ適所で固定可能となっており、本実施例ではガススプリングを用いている。そして、この伸縮固定装置23は、一端をフレーム本体3の横パイプ8の左右中間部に突設されるブラケット24,24に枢着し、他端を前記左右の第1リンク20,20を一体的に連結する連結パイプ25に突設されるブラケット26に枢着し、この伸縮固定装置23の伸縮作動により背部支持枠15がリクライニングするように設けられている。また、伸縮固定装置23を固定状態にすると、背部支持枠15がそのリクライニング状態で保持されるようになっている。
【0015】
27は脚部支持枠であり、上端を前記側部フレーム7,7の上側水平状部の前端に枢着して上下方向回動可能に設けている。そして、この脚部支持枠27の下端には、ステップ28,28が軸着されている。
【0016】
29は前記脚部支持枠27の支持手段である。これは、脚部支持枠27の上下中間部に横設されるパイプ30に突設されるブラケット31に支持プレート32の前端を枢着し、この支持プレート32の中央部に形成された通孔部33には、横パイプ8に突設されるブラケット34の先端部に設けられる横方向の支軸35が挿通されている。そして、前記通孔部33は上側に凸状の係合溝33a,33b,33c,33dを一体形成しており、この係合溝33a,33b,33c,33dの何れかに支軸35が係合することにより脚部支持枠27を支持するようになっている。すなわち、本実施例では脚部支持枠27の角度を4段階に調節できるようになっている。
【0017】
前記支持プレート32は、自重により通孔部33の上側端面が支軸35に沿って移動するようになっており、脚部支持枠27を持ち上げると自動的に支軸35が係合溝33aから33b、そして33c,33dと順次係合していき、脚部支持枠27の支持角度を段階的に変更させるようになっている。逆に元の状態に下降させるには、支持プレート32に固着されたハンドル部材36を持ち上げて支軸35と係合溝33a,33b,33c,33dとの係合を解けばよい。このとき、脚部支持枠27は上下回動自在な状態となる。
【0018】
つぎに、転倒防止装置1について説明する。この転倒防止装置1は、背部支持枠15の略々中間部に固着されている横パイプ37の中間部に固着されているブラケット38,38に回動自在に枢着された支持杆39を有している。該支持杆39は上端部にボス部材39aが固着され、下端部にブラケット39bが固着されたパイプ39cからなるもので、該ブラケット39bには転動自在なローラー40が枢着され構成されている。
この支持杆39を背部支持枠15のリクライニングに連動して後方に突出させる作動杆41がフレーム本体3と該支持杆39に枢着されている。詳述すると、該作動杆41は両端に空孔部41a,41aが設けられたパイプ41bからなるもので、横パイプ8の中間部に固着されたブラケット42に一端部を回動自在に枢着し、他端部を前記支持杆39の中間部に固着されたブラケット43に枢着してなるものである。
【0019】
上述の転倒防止装置1によれば、背部支持枠15の後方傾倒に連動して作動杆41が下方回動する。作動杆41の下方回動及び背部支持枠15の後方傾倒により、支持杆39が後方下部に突出していく。なお。第1図に示す状態から第3図に示す状態まで、支持杆39のローラー40と床面との間に隙間があり、リクライニングをした状態で移動させる場合にも多少の段差を越えることが可能である。
また、それ以上の角度まで背部支持枠15を傾倒させると床面とローラー40間に隙間が少なくなり、リクライニングにともなって後方へ移動した重心によって後方へ転倒しやすくなる状態を十分保持できる状態にある。
さらに、該転倒防止装置1には次のような効果がある。それは、伸縮固定装置23であるガススプリングのガス圧が比較的強いものを利用すると、リクライニング状態から復帰させる際には軽い操作力でできるが、逆に乗車していない状態でリクライニングさせようとすると前輪側が浮き上がり易くなりリクライニングさせにくくなるという欠点があった。しかし、本発明の転倒防止装置により、支持杆39が後方へ突出して床面を支持するので前輪側が浮き上がることなく楽にリクライニングさせることができる。これにより、ベッド上で仰臥した方を滑りやすい布状のシート等を利用して横方向にずらしてこの車椅子に載せかえることもでき、非常に至便である。
そして、この転倒防止装置1は、支持杆39と作動杆41によって主に構成されており、部品数を少なくすることができ、軽量な車椅子を提供することができる。
【0020】
つぎに、第5図に示す車椅子2は上記と別の実施形態を示すものである。
この車椅子は、上記リクライニング機構18を用いず、フレーム本体3に背部支持枠15を直接回動自在に枢着し、背部支持枠15下方中間部とフレーム本体3の前方下部間に伸縮固定装置23を連結固定したものである。その他については同様の構成である。
【0021】
この車椅子2の場合においても、転倒防止装置1を第1の実施形態と同様に構成すれば、第5図仮想線で示すように支持杆39が作動する。すなわち、様々な構成により背部支持枠15の後方傾倒がなされても、該背部支持枠15の中間部に支持杆39を枢着するとともに、該支持杆39とフレーム本体3間に作動杆41を枢着することによって上述した効果を得ることができる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の転倒防止装置はリクライニング可能な車椅子、より具体的に言えばフレーム本体に対して相対的に後方傾倒可能な背部支持枠を有する車椅子において、背部支持枠の後方傾倒に連動するように支持杆が後方へ突出し、リクライニングにより後方へ移動する重心により後方転倒しやすくなる状態を十分に支持することができ、安全性を向上させることができる。
また、転倒防止装置を構成する部品数も少なく、安全で軽量な車椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転倒防止装置を備えたリクライニング車椅子を示す全体側断面図
【図2】その背面図
【図3】背部支持枠を後方傾倒させた状態を示す側断面図
【図4】第3図の状態からさらに後方傾倒させた状態を示す側断面図。
【図5】第2の実施形態を示す車椅子の全体側断面図
【符号の説明】
1 転倒防止装置
2 車椅子
3 フレーム本体
15 背部支持枠
39 支持杆
40 ローラー
41 作動杆

Claims (2)

  1. 前輪及び後輪を具備したフレーム本体上に座席部を有し、該フレーム本体に対して相対的に後方傾倒可能に取り付けられる背部支持枠を備えたリクライニング可能な車椅子において、前記背部支持枠の中間部に前後回動自在となるように支持杆の一端部を枢着するとともに、一端部がフレーム本体に上下回動自在となるように枢着された作動杆の他端部を前記支持杆の中間部に枢支する一方、背部支持枠の後方傾倒操作に連動して支持杆の自由端が側面視において後輪の接地位置の後方斜め上部に位置する状態から徐々に後方斜め下方に移動するとともに、前記前後輪が接地している状態では支持杆の自由端と床面との間に隙間ができるよう構成したことを特徴とするリクライニング車椅子における転倒防止装置。
  2. 上記支持杆の自由端に転動自在にローラーを枢着するとともに、該ローラーと床面との間に隙間ができるよう構成したことを特徴とする請求項1記載のリクライニング車椅子における転倒防止装置。
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