JP4187438B2 - アルカリ蓄電池用正極とアルカリ蓄電池とこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非焼結式のアルカリ蓄電池用正極と、これを用いたアルカリ蓄電池と、これらの製造方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水素化物二次電池などに代表されるアルカリ蓄電池用の正極には、活物質としての水酸化ニッケルを、結着剤や増粘剤などとともに、水または溶剤に分散してペースト状にし、これを集電体であるニッケル発泡体などの導電性の多孔性基材に塗布し、充填した非焼結式のニッケル電極が広く用いられている。
【0003】
この非焼結式のニッケル電極において、水酸化ニッケルの結着剤には、通常、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)が用いられている。これは、ニッケル電極は電池内でアルカリ水溶液中で過充電され、酸素ガス雰囲気にさらされるため、結着剤として酸化されにくい安定な化合物が必要とされ、これを満たすものとしてPTFEが最適とされているためである。
【0004】
このような非焼結式のニッケル電極では、活物質である水酸化ニッケルの充填密度を高くでき、また電極の製造も簡単という利点がある反面、集電体であるニッケル発泡体などの多孔性基材の作製にコストがかかるという問題がある。すなわち、上記多孔性基材の作製に際しては、通常、ウレタンフォームにニツケルなどの金属をメッキしたのち、還元性雰囲気で焼成し、さらにウレタンフォームを除去するといった工程が必要であり、作製コストが高くなりやすい。
【0005】
このため、上記の多孔性基材に代えて、金属板の表裏両面側に金属繊維などを付けた基材を用いたり(特開平9−265991号公報)、金属板にエンボス加工により押圧力を付加して金属板の表裏両面側に凹凸部を設けた基材を用いること(特開平10−106580号公報)が、提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような金属板を用いると、低コスト化をはかれるものの、水酸化ニッケルの結着剤としてPTFEを用いた正極合剤が基材から剥離、脱落しやすくなる。これは、PTFEは圧力を加えると、線状に伸びる性状があるため、プレス、切断などの工程を行うと、正極合剤の基材からのすべりが生じ、剥離、脱落が容易に起こり、また電池の充放電を行うと、活物質が膨張収縮を繰り返すため、正極合剤が基材からやはり剥離しやすくなるためである。
このように基材から正極合剤が剥離、脱落すると、基材と正極合剤の接触抵抗の増加で充電されにくくなり、充電時の酸素発生も増加し、その結果、十分な放電容量が得られず、サイクル劣化が早期に起こる。
【0007】
また、電池内はアルカリ雰囲気であるため、正極合剤層中の樹脂分がアルカリにより分解されるのに伴い電解液が消費されるなどして、電池特性の劣化を早める原因となっている。さらに、電池特性の向上のため、水酸化ニッケルをあらかじめアルカリ水溶液中で熱処理(後述するマイクロウエーブ処理)する場合、水酸化ニッケルが上記処理中にアルカリ成分を含んで、合剤ペーストがアルカリ性となり、樹脂分が時間とともに分解して増粘効果が減少し、合剤ペーストの粘度が低下する。このため、混練した合剤ペーストを連続して基材上に塗布すると、たとえば、塗布開始時と塗布終了時とで正極合剤層の充填密度が変わり、正極の容量がかなり異なったものとなるという問題もある。
【0008】
これらの問題を解決するため、PTFE以外の結着剤として、上記した剥離,脱落や耐アルカリ性の問題のないものを用いる様々な検討がなされているが、良好な特性が得られるものは未だ実用化されていない。また、上記金属板からなる基材を使用すると、従来のニッケル発泡体などの多孔性基材に比べて、集電性能が悪くなり、正極の利用率を高くできないという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような事情に照らし、金属板を基材として用いる場合に生じる上記のような問題点を解決し、とくに低コストでの製造が可能であるとともに、利用率の高いアルカリ蓄電池用正極を提供すること、またこれを使用したサイクル特性にすぐれたアルカリ蓄電池を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的に対して、従来のニッケル発泡体などの3次元的多孔性基材を、金属板を加工した2次元的基材に変更した場合に生じる、▲1▼正極合剤と基材との接着強度の低下の問題と、▲2▼耐アルカリ性の問題と、さらに▲3▼基材の集電性能の低下の問題とを、同時に解決しなければ、3次元的多孔性基材と同様の特性が得られないことに気づき、最適な結着剤成分と基材構造との組み合わせについて、詳細にわたり、検討した。
【0011】
▲1▼の問題に対しては、水酸化ニッケルの結着剤として基材との接着力の強いものを選定すればよいが、そのような結着剤は、上記活物質の反応を阻害し、また▲2▼の問題である耐アルカリ性に劣ったり、正極合剤と基材との接触抵抗を増加させて、▲3▼の問題である集電性能の低下を引き起こす場合がある。
【0012】
本発明者らは、このような観点から検討した結果、金属板を正極基材として用いる場合に、結着剤としてスチレン−アクリル系樹脂、スチレン樹脂またはポリ−N−ビニルアセトアミドの中から選ばれる少なくとも1種を使用すると、アルカリ性の正極合剤中でも結着剤の分解が抑えられて、すぐれた耐アルカリ性を示し、正極合剤の基材への接着強度が向上して、正極作製工程での不良発生が抑制され、また充放電による結着剤の分解も起こらず、さらに充放電による膨張収縮に耐え、接触抵抗の増加や充電時の酸素発生が抑えられて、高容量でサイクル特性にすぐれたアルカリ蓄電池が得られることがわかった。つまり、上記特定の結着剤の使用により、▲1▼,▲2▼の問題を解決できることがわかった。
【0013】
また、▲3▼の問題に対しては、金属板に表裏両面側にまたがる多数個の打ち抜き孔を形成するとともに、その一部には金属板表面側に打ち抜きバリが形成され、残りには金属板裏面側に打ち抜きバリが形成されるような構成とし、このように表裏両面側に打ち抜きバリを有する金属板を基材として、その表裏両面側に上記の正極合剤層を形成して、正極を作製すると、正極合剤層の内部に上記打ち抜きバリが侵入する形となるため、集電性能が著しく向上し、しかも、正極合剤層が上記打ち抜きバリによって保持されるため、正極合剤層の剥離、脱落などの防止により好ましい結果が得られることがわかった。
【0014】
また、本発明者らは、以上の知見にもとづいて、さらに検討を続けたところ、上記した表裏両面側に打ち抜きバリを有する金属板を基材として、その表裏両面側に上記特定の結着剤を含む正極合剤層を形成する際に、活物質である水酸化ニッケルとして、粒子表面が特定量の水酸化コバルトにより被覆されているものを用いて、これにあらかじめアルカリ水溶液を加えて熱処理しておくことにより、またこのように熱処理した水酸化ニッケルを活物質として含む正極合剤層を形成したのち、アルカリ水溶液中に浸漬処理して熱処理することにより、さらにはこのようにして得た正極を用いて電池を組み立てたのちに、低レートの電流値で初期充電を行うという特定の化成処理を施すことにより、正極の利用率と電池のサイクル特性を飛躍的に向上できることがわかった。
【0017】
本発明は、このような知見をもとにして、完成されたものである。
すなわち、本発明は、正極活物質としての水酸化ニッケル粒子にアルカリ水溶液を加えて熱処理し、これにスチレン−アクリル系樹脂、スチレン樹脂またはポリ−N−ビニルアセトアミドの中から選ばれる少なくとも1種の結着剤を加えて正極合剤ペーストを調製する工程と、この正極合剤ペーストを基材の表裏両面側に塗布し乾燥して正極合剤層を形成したのち、アルカリ水溶液中に浸漬処理して熱処理し、アルカリ蓄電池用正極とする工程と、このアルカリ蓄電池用正極と負極および電解液を用いてアルカリ蓄電池を組み立て、0.01〜0.1Cの電流値で初期充電を行う工程とを有し、上記の水酸化ニッケル粒子は、表面が水酸化コバルトにより被覆されて、その水酸化コバルトの量が水酸化ニッケルに対し2〜6重量%であり、上記の基材は、厚さが50μm以下の金属板に多数個の打ち抜き孔が形成され、この打ち抜き孔の一部は金属板表面側に打ち抜きバリを有し、残りは金属板裏面側に打ち抜きバリを有する構成からなることを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法に係るものである。
【0018】
また、本発明は、上記構成の製造方法として、結着剤としてのスチレン樹脂が平均分子量が1,000〜1,000,000の範囲であり、正極合剤ペースト中で0.05〜20μmの分散粒子として存在する上記製造方法、基材における打ち抜き孔の最大径が0.1〜1mmである上記製造方法、基材における打ち抜き孔の間隔が0.1〜1.2mmである上記製造方法、基材における金属板がエンボス加工されて表裏両面側に凹凸部を有する構成からなる上記製造方法、打ち抜きバリを含めた基材全体の厚さが0.25〜1.2mmである上記製造方法、基材の重量が150〜450g/m2である上記製造方法を提供できるものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明における正極用の基材は、金属板として、ニッケル板、ニッケルメッキ鋼板、銅板などが用いられ、この金属板に多数個の打ち抜き孔が形成され、かつこの打ち抜き孔の一部(通常、全打ち抜き孔の約半分)には金属板表面側に打ち抜きバリを有し、残りには金属板裏面側に打ち抜きバリを有する構成とされたものである。上記前者の打ち抜きバリは金属板表面側に向けて打ち抜くことにより、上記後者の打ち抜きバリは金属板裏面側に向けて打ち抜くことにより、形成される。金属板の厚さは、上記バリを形成する際の加工性を向上させ、また正極中での基材の体積割合を減少するため、50μm以下(通常、20μm以上)であるのがよい。これにより基材作製工程での歩留まりが向上し、また正極中の活物質の充填量が多くなるため、電池の容量を大きくできる。上記バリの形状は、とくに制限はないが、加工性の点から、略三角形状であるのが好ましい。
【0020】
金属板に形成される打ち抜き孔の最大径は、0.1〜1mmであるのがよい。後述するように、金属板からなる2次元的基材では、従来の3次元的基材に比べ、正極合剤ペーストの粘度が高めに設定されるので、このペーストをいかにして上記孔に充填するかが重要であり、上記孔への充填が不十分となると、その後の加圧成形時に合剤層が剥離しやすくなる。打ち抜き孔の最大径を0.1mm以上と大きくすることで、孔の中に上記ペーストが充填されやすくなり、1mm以下とすることで、塗布充填後の加圧成形時の基材の変形や破断が生じにくくなる。また、このような打ち抜き孔の間隔は、0.1〜1.2mmであるのがよい。これは、打ち抜き孔の間隔を0.1mm以上とすることにより、上記と同様に、塗布充填後の加圧成形時での基材の変形や破断が生じにくくなり、1.2mm以下とすることにより、正極合剤の保持能力が高まり、正極合剤層の剥離、脱落などの不良発生を低減でき、高容量化に適する基材が得られるからである。
【0021】
また、上記の金属板は、打ち抜き孔を有するだけでなく、エンボス加工されて表裏両面側に凹凸部を有する構成とされているのがよい。こうすることにより、正極合剤の保持能力がより高められ、集電性能もより向上する。さらに、このように構成される本発明の基材は、打ち抜きバリを含めた基材全体の厚さとして、0.25〜1.2mmであるのが望ましい。このような基材厚さとすることにより、正極合剤の保持能力が高まり、また加圧成形後の電極の平坦性が良好となり、電極捲回時の短絡発生を抑制できる。また、このような基材の重量は、150〜450g/m2であるのがよい。基材重量を150g/m2以上とすることにより、基材強度や電気抵抗などの点で好結果が得られ、450g/m2以下とすることにより、加工性や高容量化の点で好結果を得ることができる。
【0022】
本発明において、正極活物質である水酸化ニッケルは、その利用率を向上させるため、粒子表面が水酸化コバルト粒子で被覆されたものが用いられる。水酸化コバルトの被覆量としては、導電性を向上させるとともに、正極に用いる際の活物質充填量に影響を与えない範囲にするため、水酸化ニッケルに対して水酸化コバルト中のコバルトの重量が2〜6重量%(水酸化ニッケル100重量部に対して水酸化コバルト中のコバルトの量が2〜6重量部の割合)となるようにすることが好ましく、3〜5重量%にすることがより好ましい。
【0023】
本発明においては、上記の水酸化ニッケルを使用し、これにあらかじめ、アルカリ水溶液を加えて熱処理する。その際、導電助剤として水酸化コバルトなどのコバルト化合物を加えて、一緒に熱処理してもよい。こうすることで、粒子表面を被覆する水酸化コバルトまたは上記コバルト化合物の平均価数が大きくなり、電池の組み立て後、充電を行う際に、より高次の導電性コバルト酸化物の形成が容易になり、金属板からなる2次元的基材を使用しても、十分なネットワークを形成でき、十分な電池容量を確保できる。熱処理は、ヒータなどの熱源を用いて行ってもよいし、酸化反応を促進する酸化剤を用いて行ってもよいが、マイクロウエーブを照射する方法がとくに効果的であり、望ましい。
【0024】
マイクロウエーブを照射する方法は、水酸化ニッケルまたはこれと水酸化コバルトなどのコバルト化合物とアルカリ水溶液を混合するバッチと、これらの内容物を混合、粉砕するためのアジデータとチヨッパを備えたマイクロ波発生装置を用いて、行うことができる。これらの装置は、マイクロ波の出力、バッチ内の温度および処理時間を制御でき、また密閉されたバッチ中にあとからアルカリ水溶液などの液体を注入できるように構成されているのが望ましい。
【0025】
アルカリ水溶液は、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液のいずれでもよい。通常は、水酸化カリウム濃度が5〜40重量%程度の水酸化カリウム水溶液で、これに水酸化リチウムを1〜30g/リットル程度添加したものが、好ましく用いられる。アルカリ水溶液の使用量は、水酸化ニッケル1Kgに対し、アルカリ水溶液が100g程度となる量とするのが望ましい。これより少ない使用量では、コバルトの価数を上げる反応が十分に行われず、またこれより多い使用量では、水酸化ニッケル粉末の乾燥に時間がかかる。
【0026】
手順としては、あらかじめ水酸化ニッケルをバッチに投入し、アジテータとチョッパによる撹拌を行いながら、バッチのヒータにて100℃まで加熱し、撹拌を続けたまま、アルカリ水溶液をゆっくりと注入する。ゆっくりと注入すると、水酸化ニッケルとアルカリ水溶液がまんべんなく混合され、反応が均一に進行する。注入は、室温など比較的低い温度で行ってもよいが、その後のマイクロウエーブ照射の効果をすぐに出すには、高い温度の方が好ましい。
【0027】
注入が完了したら、直ちにマイクロウエーブの照射を始める。マイクロウエーブの出力は、たとえば水酸化ニッケル1〜2Kgを処理する場合、0.1〜1kW程度とするのが適当である。0.1kW未満では、水酸化ニッケルの温度上昇が不十分となり、アルカリ水溶液と水酸化ニッケル粒子および種々構成物との反応が均一かつ速やかに進行せず、1kWを超えると、必要以上の温度上昇を招き、強固な導電性ネットワークの形成が難しくなる。ただし、水酸化ニッケルの量により、最適な出力値は変わるので、必ずしも上記範囲に限定されない。また、マイクロウエーブによる処理時間は、約30分程度とし、水酸化ニッケル粉末が乾燥するまで行うのがよい。ただし、これも水酸化ニッケルおよびアルカリ水溶液の量によって変わるので、必ずしも上記範囲に限定されない。
【0028】
本発明において、正極活物質である水酸化ニッケルの結着剤には、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン樹脂またはポリ−N−ビニルアセトアミドの中から選ばれる少なくとも1種が用いられる。上記のスチレン−アクリル系樹脂は、スチレンまたはその誘導体単位を含む有機分子と、(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステルなどの誘導体単位を含む有機分子との重合体が、乳化重合などにより合成されたものであり、重合体分子内に親水性官能基などが導入されたものであってもよい。正極合剤ペーストを調製する際には、このスチレン−アクリル系樹脂がノニオン系やアニオン系の界面活性剤などによって水溶液中に安定に分散された水分散体の状態として使用するのが望ましい。
【0029】
また、上記のスチレン樹脂は平均分子量が1,000〜1,000,000の範囲、とくに10,000〜300,000の範囲にあるのがよい。この範囲外になると、十分な結着性が得られにくい。このスチレン樹脂は、正極合剤ペーストの調製にあたり、キシレンなどの揮発性有機溶剤中に分散させた状態で使用するのが望ましい。基材塗布後の乾燥時に、上記の有機溶剤を容易に揮散除去でき、電池特性に悪影響を与える心配がないためである。この場合、スチレン樹脂は正極合剤ペースト中で0.05〜20μmの分散粒子として存在しているのがよい。この範囲外となると、適当な粘度に調整しにくくなる。
【0030】
さらに、上記のポリ−N−ビニルアセトアミドは、N−ビニルアセトアミドを常法により重合してなる粉末状の親水性樹脂(水溶性樹脂)であって、正極合剤ペーストの調製に際しては、これを粉末状態のまま合剤ペースト中に混合するようにしてもよいし、あらかじめ1〜20重量%の水溶液とした状態で合剤ペースト中に混合することもできる。
【0031】
本発明において、アルカリ蓄電池用正極は、以下のように製造される。
まず、正極活物質である上記熱処理した水酸化ニッケルと、上記した特定の結着剤と、必要により導電助剤である水酸化コバルトなどのコバルト化合物とを、カルボキシメチルセルロースなどの増粘剤を含む水溶液中に分散させて、正極合剤ペーストを調製する。従来の3次元的基材の場合は、上記ペーストの粘度は、800〜2,000mpsに調整されていた。しかるに、本発明の2次元的基材の場合は、上記と同じペースト粘度に調整すると、基材塗布後の乾燥時に垂れが生じて、均一厚みの極板にするのが難しい。このため、上記ペーストの粘度は、4,000〜20,000mpsの高めに調整するのが望ましく、このような粘度に調整すると、上記問題は生じない。
【0032】
つぎに、このように調製された正極合剤ペーストを、前記した本発明の基材、つまり表裏両面側に打ち抜きバリを有する金属板からなる基材の表裏両面側に、塗布し、各打ち抜き孔に十分に充填したのち、乾燥して、正極合剤層を形成し、これを加圧成形する。この加圧成形後、アルカリ水溶液中に浸漬処理して熱処理することにより、本発明のアルカリ蓄電池用正極を製造する。上記の浸漬処理と熱処理を施すことにより、水酸化ニッケルの粒子表面を被覆する水酸化コバルト粒子および添加したコバルト化合物が部分的に酸化されて、これらを構成するコバルトの平均価数が大きくなり、電池組立後に充電を行う際に、より高次の導電性コバルト酸化物の形成が容易となり、2次元的基材を用いても、十分なネットワークが形成され、十分な電池容量が確保されるようになる。
【0033】
上記のアルカリ水溶液への浸漬処理に際し、アルカリ水溶液には、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液のいずれを用いてもよいが、通常は、水酸化カリウム濃度が5〜40重量%程度の水酸化カリウム水溶液が好ましく、この水酸化カリウム水溶液に水酸化リチウムを1〜30g/リットル程度添加したものも好ましく用いられる。浸漬処理の条件としては、温度が35〜100℃、好ましくは50〜90℃で、浸漬時間が0.2〜2.4時間、好ましくは0.25〜1時間とするのがよい。また、この浸漬処理後の熱処理に際しては、その温度が35〜110℃、好ましくは50〜90℃で、熱処理時間が0.2〜2.4時間、好ましくは0.25〜1時間とするのがよい。熱処理時の雰囲気は、空気中でもよいし、酸素濃度を調整した雰囲気としてもよい。
【0034】
本発明において、アルカリ蓄電池は、上記のように製造されるアルカリ蓄電池用正極と、負極および電解液を用いて、以下のように製造される。
すなわち、通常は、上記の正極と負極とこれらを分離するポリプロピレン不織布などからなるセパレータとを積層し、これを電池缶内に装填するとともに、アルカリ水溶液からなる電解液を注入し、電池缶の開口部を封口して、電池を組み立て、この組み立て後、0.01〜0.1Cの微小電流値で初期充電を行う化成処理を施すことにより、本発明のアルカリ蓄電池を製造する。
【0035】
上記の化成処理において、微小電流で充電すると、高い電流値で充電するよりも、強固な導電性ネットワークを形成でき、利用率の向上につながる。これは、電池の組み立て後、電極中の各種コバルト化合物は、初回充電時に導電性コバルト酸化物へと変化するため、初回充電を上記のような低レートで行うことに意味がある。0.1Cよりも高くなると、導電性ネットワークの形成が十分に行われず、0.01C未満となると、非常に長時間を要するため、生産効率などを考慮すると、現実的でない。また、このような低レートでの充電量は、水酸化ニッケルに被覆された、または後から正極合剤中に配合された水酸化コバルトなどのコバルト化合物が高次の導電性コバルト酸化物になるのに必要な理論的な充電量以上であるのが望ましい。この条件を満たす充電が終わったのちは、これよりも高い電流値による充電をさらに行っても差し支えない。
【0036】
このように、本発明においては、正極をアルカリ水溶液中に浸漬処理して熱処理することで、コバルトの平均価数を高次の導電性コバルト酸化物に変化しやすい2.6〜3.1の範囲、好ましくは2.65〜2.75の範囲に変化させることにより、電池組立後の上記微小電流の充電により高次の導電性コバルト酸化物が容易に形成され、これにより良好な導電性が確保されるのみならず、上記化成処理により強固なネットワークが形成されるので、電極や水酸化ニッケルの膨潤を抑制でき、サイクル特性を飛躍的に向上させることができる。
【0037】
負極には、たとえば、カドミウム電極や水素吸蔵合金電極などが用いられる。水素吸蔵合金電極では、活物質である水素吸蔵合金として、希土類−Ni系、ラーべス系、Mg−Ni系、V−Ti−Ni系などが好ましく用いられ、その中でも、ミッシュメタルを用いた希土類−Ni系水素吸蔵合金が好ましい。とくに、ミッシュメタル(Mm)1に対し、Ni3.4〜4.3、Co0.2〜0.7、Mn0.1〜0.5、Al0.1〜0.4、Mg0.01〜0.1の範囲にある水素吸蔵合金が好ましく用いられる。正極に形成される導電性コバルト酸化物は、負極の水素吸蔵合金の腐食により生成した水素ガスや水素吸蔵合金から溶出したマンガンイオンなどにより還元されるが、上記組成の水素吸蔵合金は、比較的容量が大きく腐食も少ないため、本発明の電池にとくに有用である。
【0038】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部であることを意味し、また濃度や固溶量などを示す%は、とくにその単位を付記しないかぎり、重量%であることを意味する。
【0039】
実施例1
金属板として、厚さが40μmのニッケル板を使用した。この金属板に打ち抜き間隔0.6mm、打ち抜き孔の最大径が0.75mmで、表裏両面側に打ち抜きバリが形成されるように打ち抜き方向を変化させて多数個の打ち抜き孔を形成し、かつエンボス加工を施して、基材全体の厚さが0.80mm、重量が360g/m2である図2に示す形状の基材を作製した。図2中、21は金属板(ニッケル板)、22は多数個の打ち抜き孔、23は打ち抜きバリで、金属板表面側に形成された打ち抜きバリ23aと、金属板裏面側に形成された打ち抜きバリ23bとからなっている。24はエンボス加工により金属板21の表裏両面側に形成された凹凸部であり、rは基材全体の厚さである。
【0040】
一方、表面を板状の水酸化コバルト粒子で被覆した水酸化ニッケル粉末(水酸化ニッケルに対し水酸化コバルト中のコバルトが4%)100部を、マイクロウエーブ装置のアジテータおよびチョッパ付きのバッチに投入し、蓋をして密閉したのち、アジテータおよびチョッパを回転させながら、バッチ内の温度を100℃に設定し、温度が十分に上昇したのち、撹拌を続けたまま、アルカリ水溶液(30%水酸化カリウム水溶液)10部をゆっくりと注入し、その後直ちに0.5kWのマイクロウエーブを30分間照射した。
【0041】
このマイクロウエーブ処理した水酸化ニッケル粉末100部に、水酸化コバルト粉末3部、2%カルボキシメチルセルロース水溶液10部および50%スチレン樹脂分散液(平均分子量約20万のスチレン樹脂がキシレン中に直径約180nmの粒子として分散した50%濃度の分散液)4部を加え、混合して、正極合剤ペーストを調製した。
【0042】
このペーストを上記基材の表裏両面側に塗布し、0.81mm間隔のプレードを通して、均一厚みの塗布物とした。これを80℃で1時間乾操したのち、1トン/cm2 の圧力で加圧成形してシート状にし、80℃のアルカリ水溶液(水酸化リチウムを17g/リットル含有する30%水酸化カリウム水溶液)に0.5時間浸漬処理したのち、80℃の空気中で1時間熱処理を行い、70℃の温水で0.7時間水洗し、さらに85℃の空気中で1時間乾燥後、加圧成形して、所定サイズに裁断し、理論容量が600mAhの非焼結式の正極を作製した。
【0043】
この正極中のコバルトの平均価数を以下のように測定した。正極を0.9cm×0.9cmに切断し、0.025規定のモール塩(10%CH3 COOH含有)100mlに浸漬し、1時間撹拌して、基材を構成するニッケル板を溶解させた。その後、12モル/リットルの濃度の硫酸10mlを添加し、0.025モル/リットル濃度の過マンガン酸カリウム水溶液で滴定して、3価のコバルトの定量を行った。その際、測定結果に3価のニッケルによる値が重畳している可能性があるため、あらかじめ処理前の正極について3価のニッケルの量を求めておき、その測定値よりこの量を差し引いて、3価のコバルトの量を求めた。また、事前に正極中のコバルトの総量を原子吸光分析により求め、その量から3価のコバルトの量を差し引き、2価のコバルトの量とした。これらの結果から、コバルトの平均価数を求めたところ、2.71であった。
【0044】
負極は、以下のように作製した。市販のMm、Ni、Co、Alの各試料を、MmNi3.9 Co0.6 Mn0.35Al0.25Mg0.05(Mmは、La70% 、Ce12%、Nd14%、Pr4%を含有する)の組成になるように、高周波溶解炉で加熱溶解し、水素吸蔵合金を得た。これを機械的に粉砕し、平均粒子径が35μmの水素吸蔵合金粉末を得た。この水素吸蔵合金粉末100部に、カルボニルニッケル粉末1部、5%ポリ−N−ビニルアセトアミド水溶液10部および40%スチレン−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体1.7部を加え、混合して、負極合剤ペーストを調製した。このペーストをパンチングメタルからなる多孔性基材に塗布し充填し、乾燥して、負極合剤層を形成したのち、加圧成形し、その後、所定サイズに裁断して、シート状の負極を作製した。
【0045】
この負極と前記の正極をナイロン不織布からなるセパレータを介して巻回し、この巻回構造の電極体を有底円筒状の電池缶に挿入後、電解液として29%水酸化カリウムと2%水酸化リチウムとの混合水溶液(水酸化カリウム濃度が29%で、水酸化リチウム濃度が2%のアルカリ混合水溶液)からなる電解液を注入したのち、電池缶の開口部を封口して、図1に示す構造の理論容量600mAhの単4形のアルカリ蓄電池を組み立て、0.017C(10mA)の低電流充電を初期工程に含む化成処理を施して、アルカリ蓄電池を製造した。
【0046】
図1に示すアルカリ蓄電池につき、説明する。まず、符号と部材名称の関係から先に説明すると、1は正極、2は負極、3はセパレータ、4は巻回構造の電極体、5は電池缶、6は環状ガスケット、7は電池蓋、8は端子板、9は封口板、10はゴム弾性体、11はゴム弾性体10と一体となって形成されたゴム製弁体、12は正極リード体、13は絶縁体、14は絶縁体である。
【0047】
正極1および負極2は、それぞれ前記の構成からなるものであるが、この図1ではそれらの作製にあたって使用した基材などは示しておらず、単一のものとして示している。セパレータ3は、前記のようにナイロン不織布からなるものであり、正極1と負極2はこのセパレータ3を介して重ね合わせられ、渦巻状に巻回して作製した巻回構造の電極体4として電池缶5に挿入され、その上部には絶縁体14が配置されている。また、電池缶5の底部には上記巻回構造の電極体4の挿入に先立って絶縁体13が配設されている。この図1には図示していないが、負極2の最外周部では基材の一部が露出していて、それが電池缶5の内壁に接触し、それによって電池缶5は負極端子として作用する。
【0048】
環状ガスケット6はナイロン66で作製され、電池蓋7は端子板8と封口板9とで構成され、電池缶5の開口部はこの電池蓋7などで封口されている。つまり、電池缶5内に巻回構造の電極体4や絶縁体13、絶縁体14などを挿入したのち、電池缶5の開口端近傍部分に底部が内周側に突出した環状の溝5aを形成し、その溝5aの内周側突出部で環状ガスケット6の下部を支えさせて環状ガスケット6と電池蓋7とを電池缶5の開口部に配置し、電池缶5の溝5aから先の部分を内方に締め付けて電池缶5の開口部を封口している。端子板8にはガス排出孔8aが設けられ、封口板9にはガス検知孔9aが設けられ、端子板8と封口板9との間にはゴム弾性体10およびゴム製弁体11が配置されている。さらに、封口板9の外周部を折り曲げて端子板8の外周部を挟み込んで端子板8と封口板9とを固定している。
【0049】
正極リード体12はニッケルリボンからなり、その一方の端部は正極2の基材にスポット溶接され、他方の端部は封口板9の下端にスポット溶接されていて、端子板8の上記封口板9との接触により正極端子として作用する。
【0050】
このように構成されるアルカリ蓄電池は、通常の状況下ではゴム弾性体10の押圧力によりゴム製弁体11がガス検知孔9aを閉鎖しているので、電池内部は密閉状態に保たれているが、電池内部にガスが発生して電池内部の圧力が異常に上昇した場合には、ゴム弾性体10が収縮してゴム製弁体11とガス検知孔9aとの間に隙間が生じ、電池内部のガスはガス検知孔9aおよびガス排出孔8aを通過して電池外部に放出され、高圧での電池破裂が防止できるように構成されるとともに、上記のガス放出により電池内圧が低下した場合には、ゴム弾性体10が元の状態に復元し、その押圧力によりゴム製弁体11が再びガス検知孔9aを閉鎖して電池内部を密閉構造に保つようになっている。
【0051】
実施例2
正極合剤ペーストの調製に際し、スチレン樹脂に代えて、50%スチレン−アクリル酸樹脂水分散液4部を使用した以外は、実施例1と同様にして、理論容量が600mAhの非焼結式の正極を製造した。この正極中のコバルトの平均価数は2.72であった。また、この正極を用いて、実施例1と同様にして、単4形のアルカリ蓄電池を作製した。
【0052】
実施例3
正極合剤ペーストの調製に際し、スチレン樹脂に代えて、5%ポリ−N−ビニルアセトアミド水溶液15部を使用した以外は、実施例1と同様にして、理論容量が600mAhの非焼結式の正極を製造した。この正極中のコバルトの平均価数は2.71であった。また、この正極を用いて、実施例1と同様にして、単4形のアルカリ蓄電池を作製した。
なお、この例で調製した正極合剤ペーストは、調製直後の粘度が6,640mPa・s、3日間放置後の粘度が6,690mPa・sであり、3日間放置後でも粘度の変化はほとんど認められなかった。
【0053】
比較例1
水酸化ニッケルのマイクロウエーブ処理を省いた以外は、実施例1と同様にして、理論容量が600mAhの非焼結式の正極を製造した。この正極中のコバルトの平均価数は2.49であった。また、この正極を用いて、実施例1と同様にして、単4形のアルカリ蓄電池を作製した。
【0054】
比較例2
加圧成形後のアルカリ水溶液への浸漬処理および熱処理を省いた以外は、実施例1と同様にして、理論容量が600mAhの非焼結式の正極を製造した。この正極中のコバルトの平均価数は2.57であった。また、この正極を用いて、実施例1と同様にして、単4形のアルカリ蓄電池を作製した。
【0055】
比較例3
電池組み立て後の化成処理での初期充電電流値を0.15C(90mA)に変更した以外は、実施例1と同様にして、単4形のアルカリ蓄電池を作製した。
【0056】
比較例4
正極合剤ペーストの調製に際し、スチレン樹脂に代えて、60%PTFE分散液3.5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、理論容量が600mAhの非焼結式の正極を製造した。また、この正極を用いて、実施例1と同様にして、単4形のアルカリ蓄電池を作製した。
【0057】
比較例5
正極合剤ペーストの調製に際し、スチレン樹脂4部を用いず、2%カルボキシメチルセルロース水溶液の使用量を10部から20部に変更した以外は、実施例1と同様にして、正極合剤ペーストを調製した。このペーストは、調製直後の粘度が6,320mPa・s、3日間放置後の粘度が5,413mPa・sで、3日間放置後に粘度がかなり低下していた。また、このペーストを用いて、実施例1と同様にして、正極の作製を試みたが、合剤剥離が著しく、正極の作製は困難であった。このため、アルカリ蓄電池の作製もできなかった。
【0058】
上記の実施例1〜3および比較例1〜4の各アルカリ蓄電池を、それぞれ、70℃で6時間保存してから、25℃,0.1C(60mA)で12時間充電し、0.2C(120mA)で1.0Vまで放電した。この充放電サイクルを放電容量が一定になるまで繰り返したのち、正極の利用率を求めた。
つぎに、25℃,1C(600mA)で、充電電圧がピーク値から5mV低下するまで充電を行い、1C(600mA)で1.0Vまで放電し、この充放電サイクルを初期の放電容量の8割まで低下するまで行い、サイクル数を調べた。
これらの結果は、表1に示されるとおりであった。
【0059】
【0060】
上記の表1の結果から明らかなように、本発明の方法により製造された実施例1〜3のアルカリ蓄電池は、正極活物質としてマイクロウエーブ処理を施していない水酸化ニッケルを使用した比較例1、正極合剤層を形成したのちアルカリ水溶液中での浸漬処理と熱処理を施していない比較例2、電池組み立て後の化成処理として低レートでの初期充電を行っていない比較例3、正極活物質の結着剤として従来のPTFEを使用した比較例4の各アルカリ蓄電池に比べて、正極利用率が高く、サイクル特性に格段にすぐれていることがわかる。
【0061】
また、とくに、上記の実施例3および比較例5においては、参考のため、調製した正極合剤ペーストの粘度特性を示しているが、両者の粘度特性の対比からも明らかなように、本発明の特定の結着剤(スチレン−アクリル系樹脂、スチレン樹脂またはポリ−N−ビニルアセトアミド)を使用すると、耐アルカリ性の面でも好ましい結果が得られることが明らかである。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、表裏両面側に打ち抜きバリを有する厚さが50μm以下の金属板を正極基材とし、その表裏両面側に水酸化ニッケルを活物質とし、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン樹脂またはポリ−N−ビニルアセトアミドの中から選ばれる少なくとも1種を結着剤とした正極合剤層を形成し、かつ上記活物質として粒子表面が特定量の水酸化コバルトにより被覆されている水酸化ニッケルを使用し、これにあらかじめアルカリ水溶液を加えて熱処理することにより、またこれらの活物質と結着剤を含有する正極合剤層を形成したのちアルカリ水溶液中に浸漬処理して熱処理することにより、さらにこのようにして得た正極を用いて電池を組み立てたのち低レートの電流値で初期充電を行う特定の化成処理を施すことにより、低コストで利用率の高い正極を製造でき、また、サイクル特性にすぐれたアルカリ蓄電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリ蓄電池の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のアルカリ蓄電池用正極における基材の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
5 電池缶
21 金属板(ニッケル板)
22 打ち抜き孔
23(23a,23b) 打ち抜きバリ
24 凹凸部(エンボス加工による)
r 基材全体の厚さ
Claims (7)
- 正極活物質としての水酸化ニッケル粒子にアルカリ水溶液を加えて熱処理し、これにスチレン−アクリル系樹脂、スチレン樹脂またはポリ−N−ビニルアセトアミドの中から選ばれる少なくとも1種の結着剤を加えて正極合剤ペーストを調製する工程と、この正極合剤ペーストを基材の表裏両面側に塗布し乾燥して正極合剤層を形成したのち、アルカリ水溶液中に浸漬処理して熱処理し、アルカリ蓄電池用正極とする工程と、このアルカリ蓄電池用正極と負極および電解液を用いてアルカリ蓄電池を組み立て、0.01〜0.1Cの電流値で初期充電を行う工程とを有し、上記の水酸化ニッケル粒子は、表面が水酸化コバルトにより被覆されて、その水酸化コバルトの量が水酸化ニッケルに対し2〜6重量%であり、上記の基材は、厚さが50μm以下の金属板に多数個の打ち抜き孔が形成され、この打ち抜き孔の一部は金属板表面側に打ち抜きバリを有し、残りは金属板裏面側に打ち抜きバリを有する構成からなることを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法。
- 結着剤としてのスチレン樹脂は、平均分子量が1,000〜1,000,000の範囲であり、正極合剤ペースト中で0.05〜20μmの分散粒子として存在する請求項1に記載のアルカリ蓄電池の製造方法。
- 基材において、打ち抜き孔の最大径が0.1〜1mmである請求項1または2に記載のアルカリ蓄電池の製造方法。
- 基材において、打ち抜き孔の間隔が0.1〜1.2mmである請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ蓄電池の製造方法。
- 基材において、金属板は、エンボス加工されて表裏両面側に凹凸部を有する構成からなる請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ蓄電池の製造方法。
- 打ち抜きバリを含めた基材全体の厚さが0.25〜1.2mmである請求項1〜5のいずれかに記載のアルカリ蓄電池の製造方法。
- 基材の重量が150〜450g/m2である請求項1〜6のいずれかに記載のアルカリ蓄電池の製造方法。
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