JP4183507B2 - 神経系の損傷後疾患の処置のためのトリペプチド及びトリペプチド誘導体 - Google Patents

神経系の損傷後疾患の処置のためのトリペプチド及びトリペプチド誘導体 Download PDF

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Description

本発明は、神経系の損傷後疾患、特に例えば、虚血、外傷又は中毒のような、壊死由来の疾患の処置のための、トリペプチド及びトリペプチド誘導体の使用に関する。
神経又は神経組織の虚血は、一般に血管疾患により、例えば、塞栓症又は血栓症のため引き起こされる。よって、例えば、脳梗塞により、中枢神経系の神経が影響を受けることがある。虚血は、最終的に患部組織の壊死をもたらす。
外傷性衝撃もまた、このような神経の死をもたらすことがある。例えば、脊髄損傷及び末梢神経の機械的傷害が知られている。更に、毒性物質、例えば、重金属による環境的影響により神経の壊死に至ることもある。
このような神経損傷に対する新しい治療的方法は、別々のニューロン集団の生存、成長及び分化に著しい影響を及ぼすとされている、神経栄養因子又はニューロトロフィンの投与を含む。ニューロトロフィンファミリーは、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、ニューロトロフィン−4(NT−4)及びCNTF−ファミリー(毛様体神経栄養因子)を含む。ニューロトロフィンは、分子量26〜28kDaの塩基性の小タンパク質である。NGFは、多くの異なる組織において活性を示す、ニューロトロフィンファミリーの最もよく性状解析されたメンバーである。
末梢神経系(PNS)において、NGFは、交感神経及びある種の知覚神経の発生に決定的に重要である。中枢神経系(CNS)において、NGFは、前脳基底部のコリン作動性ニューロンの発生及び維持における栄養的役割を担う。これはまた、ニューロン再生における成体CNS組織においても、ある役割を演じる。
例えば、外傷、虚血又は中毒由来の損傷後ニューロン疾患の処置のための神経栄養因子の使用は、これまでのところ期待される成功をおさめていない。
特に脳における神経損傷の処置の場合には、神経栄養因子は、血液脳関門を通過せず、このため非経口又は経腸投与に利用できないため、適していない。
発明の概要
よって、本発明の基礎をなす目的は、神経成長を刺激し、このため例えば、虚血、外傷又は中毒由来の疾患のような損傷後ニューロン疾患の処置に適している物質を提供することである。
本発明のこの目的は、虚血、外傷又は中毒由来の損傷後疾患の処置に有用な医薬の製造のための、式(I):
Figure 0004183507
[式中、Xは、OH、(C1-5)アルコキシ、NH2、NH−C1-5−アルキル、N(C1-5−アルキル)2を表し;
1は、アミノ酸:Phe、Tyr、Trp、及びPro(それぞれ、場合により1個以上の(C1-5)アルコキシ基、(C1-5)アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい)、更にはAla、Val、Leu又はIleの1つから誘導される残基であり;
2は、アミノ酸:Gly、Ala、Ile、Val、Ser、Thr、Leu及びProの1つから誘導される残基であり;
1及びY2は、相互に独立に、H又は(C1-5)アルキルを表し;
3及びR4は、相互に独立に、H、OH、(C1-5)アルキル又は(C1-5)アルコキシを表し(ただし、R3及びR4は、両方ともOH又は(C1-5)アルコキシであることはない);そして
5は、H、OH、(C1-5)アルキル又は(C1-5)アルコキシを表す]で示される化合物、又は薬学的に許容しうるその塩の使用により解決される。
発明の詳細な説明
他に記載がなければ、アミノ酸残基は、L型だけでなくD型との両方で存在しうる(L型が好ましい)。
好ましい化合物は、R1が、アミノ酸:Ile、又はアミノ酸:Phe、Tyr、Trp(それぞれ、場合により1個以上の(C1-5)アルコキシ基、(C1-5)アルキル基又は1個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい)の1つから誘導される残基、特にIle又はPhe(場合により1個以上の(C1-5)アルコキシ基、1個以上の(C1-5)アルキル基又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)から誘導される残基である、式(I)の化合物である。
式(I)において、Xは、好ましくは(C1-5)アルコキシ、NH2、NH−(C1-5)アルキル又はN(C1-5−アルキル)2であり、更に好ましいのは、NH2、NH(C1-3)アルキル及びN(C1-5−アルキル)2である。
2は、好ましくはアミノ酸:Gly又はIleから誘導される残基である。
3及びR4は、好ましくは相互に独立に、H、(C1-5)アルキル又は(C1-5)アルコキシを表し(ただし、R3及びR4は、両方ともOH又は(C1-5)アルコキシであることはない)、更に好ましいのは、H、(C1-3)アルキル又は(C1-3)アルコキシである。
5は、好ましくはH、(C1-5)アルキル又は(C1-5)アルコキシを表し、特に好ましいのは、H、(C1-3)アルキル又は(C1-3)アルコキシである。
1及びY2は、好ましくは相互に独立に、H又は(C1-3)アルキルを表す。
式(I)の特に好ましい化合物では、R1は、Phe(場合により1個以上の(C1-5)アルコキシ基、1個以上の(C1-5)アルキル基又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)から誘導されるか、又はアミノ酸:Ileから誘導される残基であり、R2は、アミノ酸:Gly又はIleから誘導される残基であり、R3、R4及びR5は、水素原子を表し、Xは、NH2、NH−(C1-3)アルキル又はN(C1-3−アルキル)2を表し、そしてY1及びY2は、相互に独立に、H又は(C1-3)アルキルを表す。
最も好ましい式(I)の化合物は、グリシル−L−フェニルアラニル−L−プロリンアミド、N,N−ジエチル−イソロイシル−フェニルアラニル−L−プロリンエチルアミド、N,N−ジエチル−イソロイシル−イソロイシル−プロリンアミド、又は薬学的に許容しうるこれらの塩である。
アミノ酸に関して使用した略語(フェニルアラニンではPheであるなど、更には部分的にフェニルアラニンではFのような、1文字コードを以下に使用した)は、当業者には既知である(例えば、BeyerとWalter, Lehrbuch der Organischen Chemie, 第21版, S. Hirzel Verlag Stuttgart 1988を参照のこと)。よって、Pheは、フェニルアラニンを意味し、Glyはグリシンを意味するなどである。「アミノ酸:Pheから誘導される残基」という表現は、よってベンジル(−CH2−C65)残基を意味する。したがって、「アミノ酸:Glyから誘導される残基」は、水素原子を意味し、「アミノ酸:Alaから誘導される残基」は、メチル基を意味するなどである。
本発明により使用される式(I)の化合物は、水溶性物質であり、よって経腸又は非経口投与に適している。
しかし、本発明により使用される化合物は、全てが等しく経口/経腸又は非経口投与に適しているわけではない。例えば、HCl−Gly−Phe−ProNH2は、主として非経口投与用と考えられるが、N,N−ジエチル−Ile−Ile−ProNH2及びN,N−ジエチル−Ile−Phe−ProNHEtは、非経口及び特に経口投与に適している。本発明により使用される化合物の経口投与に対する適性は、以下に更に詳細に記述される、いわゆる並列人工膜透過測定法(Parallel Artificial Membrane Permeation Assay)を用いて推定することができる。経口投与には、この測定法により求める場合、10を超える、好ましくは30を超える、更に好ましくは45を超える値を有する化合物が好ましい。
本発明により使用されるトリペプチド及びトリペプチド誘導体の作用に必須の前提条件は、CNSにおけるその濃度である。他の因子のほかに、これは、能動又は受動輸送により起こりうる、血液脳関門の通過の程度による影響を受ける。いわゆる媒介輸送又は脂質筏を介する輸送が機序として考えられる。輸送の均衡は、血液脳分布係数(logBB)によりその型又は機序から独立に表現される。この係数が高いほど、CNSにおける濃度が高い。
QSAR(定量的構造活性相関)に関連しての分子モデリングによる脳血液分布係数の定義及び測定は、以下に更に詳細に記述されている。本発明により使用される化合物の血液脳分布係数は、好ましくは−3.5以上、特に好ましくは−3.0以上の範囲にある。
更に、本発明により使用される式(I)の物質は、チロシンキナーゼ受容体(TrkA、TrkB、及びTrkC)に対する高い親和性を示す。神経栄養物質のNGFは、これらの受容体へのドッキングを介して作用することが知られているため、この受容体への高い親和性は、本発明により使用される化合物の神経栄養作用の強力な指標である。ドッキング定数(pKD)は、分子モデリングツールにより求められ、そして対応する方法は、以下に更に詳細に記述される。本発明により使用される化合物は、好ましくは5.5以上のpKD値を有し、更に好ましいのは、7以上のpKD値である。
本発明により使用されるトリペプチド及びトリペプチド誘導体の合成には、特に制限がなく、既知の方法、好ましくは、各アミノ酸又はその誘導体のL−又はD立体配置が維持される、ペプチド化学の立体特異的製造法により行うことができる。BeyerとWalter, Lehrbuch der Organischen Chemie, 第21版, S. Hirzel Verlag Stuttgart 1988, pages 829-834には、種々のペプチド合成法が記載されている。好ましい方法は、以下の反応式に図解されるような、N−カルボン酸無水物法(NCA法)及び混合カルボン酸無水物を使用する方法を含む。
NCA法:
Figure 0004183507
混合カルボン酸無水物合成:
Figure 0004183507
ここで、AA1及びAA2は、それぞれ中間及び末端アミノ酸(R1又はR2から誘導される)を表し、Bocは、tert−ブチルオキシカルボニル残基を表し、NCAは、N−カルボン酸無水物を表し、そしてTFAは、トリフルオロ酢酸を表す。出発物質は、市販されている。
例えば、セリンのような、官能基を有するアミノ酸を使用する場合は、当業者には既知の方法でこれらを保護することができる。
更に、本発明により使用されるトリペプチド又はトリペプチド誘導体は、好ましくはフルオレン−9−イル−メトキシ−カルボニル保護基(Fmoc残基)又はFmoc/tert−ブチル(tBu)保護アミノ酸を用いて、固相で、場合により改変されたメリーフィールド(Merryfield)合成法で合成することができる。
上述の反応は、個々の反応工程に関して一般に90%を超える収率であり、そして60%を超える全収率である。こうして合成されたトリペプチド及びトリペプチド誘導体の純度は、一般に98%を超えており、よって医薬組成物に使用するのに充分である。トリペプチド及びトリペプチド誘導体の構造は、質量分析(MS)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、自動アミノ酸分析(AAA)、旋光度(OR)、及び/又は赤外及び紫外分光法(IR、UV)により確認することができる。
1日に体重1キログラム当たり5mgを超える用量の投与が通常有効であり、特に非経口多回投与が有効である。
これらの物質は、その分子構造のため、急性及び慢性毒性試験の両方において非常に低い毒性を示す。ラットにおける最小致死量(静脈内)は、体重1キログラム当たり250〜350mgであった。よって、本試験物質は、ヒトにおける治療的使用の前提条件となる、好都合な治療係数を示す。
本トリペプチド又はトリペプチド誘導体は、種々の方法、例えば、非経口(静脈内、筋肉内、皮下)、呼吸器管経由(バッカル、舌下、鼻内、気管支内)、経皮経路(経皮(percutane))及び経腸経路(経口)での投与に適した、医薬組成物の製造に使用することができる。最後の場合、適切な用量は、初回通過効果を克服することが必要である。
本発明の医薬組成物は、更に薬学的に許容しうる賦形剤、薬学的に許容しうる希釈剤又は補助剤を含む。その処方には、例えば、「レミントンの製剤科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」, 第20版, Williams & Wilkins, PA, USAのような、標準法を利用することができる。
投与剤形は、投与経路に応じて選択され、特に錠剤、カプセル剤、粉剤及び液剤を含む。
経口投与には、好ましくは錠剤及びカプセル剤が使用されるが、これらは、適切な結合剤(例えば、ゼラチン又はポリビニルピロリドン)、適切な賦形剤(例えば、乳糖又はデンプン)、適切な滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、及び場合により更に別の添加剤を含む。
経口投与に特に好ましい処方は、N,N−ジエチル−Ile−Ile−ProNH2 100mg又は200mg、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)400/600、ヒプロメロース(Hypromellose)(E404)、二酸化チタン、及びクロスカルメロース−Naを含むコーティング錠である。
非経口投与には、滅菌水性溶液が好ましい。適切な水性溶媒は、水、生理食塩水、ハンクス液及びリンガー溶液を含む。好ましいのは、特に20g/lのトリペプチド又はトリペプチド誘導体、例えば、グリシル−L−フェニルアラニル−L−プロリンアミドを含む生理食塩水である。
非経口投与のための特に好ましい処方は、凍結乾燥HCl−Gly−Phe−ProNH2 100mg又は200mg、酢酸、酢酸ナトリウム、及び注射用水を含む、点滴用注射液5又は10mlを含む、注射用アンプルである。
特に脊髄損傷及び末梢神経の機械的傷害の処置には、本発明により使用される化合物が固定化された材料の移植が、誘導される神経再生を保証するのに適切な方法である。広く変化に富んだ材料へのペプチドの固定化の種々の方法が知られている(参考文献として、US 6,156,572を参照のこと)。本発明では、よって式(I)の化合物を、ヒドロゲル、好ましくは(アガロース、アルギナート又はキトサンのような)多糖類ヒドロゲル、又はポリ(ラクチド)、ポリエチレンオキシド、及びヒアルロナートのような、生体適合性及びできれば生分解性物質に固定化することが特に好ましい。これらの材料へのペプチドの固定化方法は、当業者には知られており、そしてEDC活性化又は二官能性イミダゾールカップリング剤(例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール)の使用のような、カルボジイミドのようなアミド結合を形成するためのヒドロキシル基の典型的な活性化工程を含む。特に有用な固定化マトリックスは、US 6,156,572に開示されている。
更に、本発明により使用されるトリペプチドは、末梢神経の橋に導入することができ、そして次にこれが横断面の傷害ギャップに移植される(S. Varon, J.M. Conner, CNS修復における神経成長因子, Journal of Neurotrauma, Vol. 11, No.5, 1994を参照のこと)。
ペプチドは、通常エンド−又はエキソペプチダーゼによるタンパク質分解及び更に別の代謝を受けるものであり、ゆえにこれらが血液脳関門に到達し、通過まですることは予想できなかったため、本発明により使用されるトリペプチド又はトリペプチド誘導体の神経再生作用は、驚くべきものである。この分解の程度及び速度は、血漿中のトリペプチド又はトリペプチド誘導体の半減期により示される。例えば、チレオリベリン(thyreoliberin)(TRH)のようなトリペプチドの半減期は、非常に短いことが知られている。したがって、本発明により使用されるトリペプチド及びトリペプチド誘導体が、予期しないほど長い半減期(≧24時間)を示すことは驚くべきことである。この長い半減期は、充分な抗神経変性作用に対する更に別の前提条件である。
更に、肝細胞での実験において、本発明のトリペプチド及びトリペプチド誘導体は、肝臓において専らゆっくり代謝されることを実験的に証明できた。この結果は、血漿及び添加肝細胞の分析により確認したが、ここでは4時間を超える曝露後、変質していないトリペプチドのみが分析された。
本発明により使用されるトリペプチド及びトリペプチド誘導体の優れた治療特性は、神経突起成長測定法(発芽測定法)を用いて以下に更に説明されよう。しかし、これらの実験を詳細に記述する前に、血液脳分布係数の測定、PAMPA測定法、TrKドッキング定数の測定、次の実験において使用されるトリペプチド誘導体の半減期及び選択された合成法が記述される。
実験のセクション
1.脳血液分布係数の測定
上記のように、血液脳関門は、一般に水溶性物質に対する障害物を与えて、普通の投与法によるCNSの処置用の多くの水溶性物質の使用を妨げている。しかし、本発明により使用されるトリペプチド又はトリペプチド誘導体は、該血液脳関門を通過する能力があることが証明できた。本発明により使用されるトリペプチド及びトリペプチド誘導体の血液脳分布は、以下のとおり定量される。
いわゆるQSAR(定量的構造活性相関)法は、化学物質の特定の物理化学的又は薬理学的性質の定量のための確立された方法である。この方法は、一般に、いわゆる記述子(X1、X2など)の変調による、化合物の特定の実験特性(例えば、脳血液分布係数(BB)など)と計算された構造パラメーターA、B、Cなどとの間の線形相関の決定を含み、一般には下記の形の等式が得られる:
Log BB = (X1×A)+(X2×B)+(X3×C)+・・・+定数
こうして得られる記述子により、次に例えば、実験データが入手できない化合物の脳血液分布係数のような、それぞれの実験特性を計算することができる。したがって、脳血液分布は、本発明により以下のとおり求められる。
75個の化合物の実験データ(Luco, J.M., J. Chem. Inf. Comput. Sci. (1999), 39, 396-404を参照のこと)及び特定のパラメーターに基づいて、以下に説明されるように、計算値と実験値の間の線形相関を得ることができた。
本化合物は、分子モデリングプログラムパッケージのSYBYL(トリポス・アソシエーツ社(Tripos Associates Inc.), 1699 S. Henley Road, Suite 303, セントルイス, MO63144, 米国)を用いて作成した。選択したセット(A−F−P、A−dF−P、A−F−dP、A−dF−dP)に関して化合物の低エネルギーコンフォメーションを決定するために、ランダム検索を行った。ペプチド結合のものを除く全ての二面角は、可撓性であると考えた。最も低エネルギーの構造の基本骨格コンフォメーションを、全ての化合物の出発コンフォメーションとした。
全ての手動で作成した化合物は、ガスタイガー(Gasteiger)(PEOE)部分電荷(Gasteiger, J., Marsili, M. (1980; Tetrahedron 36, 3219-3238))及び4という距離依存性誘電率での、トリポス(Tripos)力場(Clark, M., Kramer, III, R.D. 及びvan Optenbosch, N. (1989), J. Comp. Chem. 10, 982-991を参照のこと)を用いてエネルギー論的に最小化した。
分子グラフィックスプログラムのMOE(ケミカル・コンピューティング・グループ社(Chemical Computing Group Inc.), モントリオール, カナダ, http://www.chemcomp.com)により、化合物の結合性及び原子型(力場パラメーターの意味での型)だけに依存する記述子の広く適用できるセットの計算が可能である(上に引用したホームページのLabuteを参照のこと)。本明細書において使用される全ての記述子は、化合物のファン・デル・ワールス(van der Walls)表面の単純な近似を含む。1947個の有機化合物の試験セットでは、厳密なファン・デル・ワールス表面と2D近似の間に高い相関(r2=0.9666)が得られた。14個のパラメーターの第1のセット(PEOE−VSA)は、一定間隔境界を用いる分子の電荷分布(PEOE)と考えられた。10個の記述子の第2のセット(SlogP−VSA)は、化合物のlog(P)を記述し、そして8個の第3のセット(SMR−VSA)は、分子の分極率に依存する。
上述の全部で32個の記述子の値は、実験の脳血液分布への相関を見い出すために、75個の化合物のそれぞれについて計算された(Lucco, J.M., J. Chem. Inf. Comput. SCI. (1999), 39, 396-404を参照のこと)。主成分の回帰を行うことにより、記述子の関数としてLog(BB)の線形モデルを推定した。1回目の計算において、寄与が非常に低いため8個の記述子を無視できると考えられた。これら8個を除いた2回目のラン後、寄与が0.1未満である更に別の9個の記述子が現れた。最後に、残った15個の記述子を用いる、70個の化合物(明らかな異常値を示す5個は除去した)の計算に基づいて、比較的良好な線形の、更には相互検証した(リーブ・ワン・アウト法(leave-one-out))相関が得られた。この相関は、図1において図で表現される(この図では、使用成分:15個;条件数663.7658;2乗平均平方根誤差(RMSE):0.20126;相関係数(R2):0.03240;相互検証R2:0.88321)。
Log(BB)は、以下のとおり定義される:
Log(BB) = Log(脳内の濃度)/(血液中の濃度)。
この相関により得られた記述子は、次に本発明のトリペプチド及びトリペプチド誘導体の血液脳分布の計算のために使用することができた。
特に、生理的pH範囲に存在する形に関連する、以下の値が得られた:
Figure 0004183507
1:式(I)のY12N−CR2H−CO−に対応する、アミノ基での置換を含む脂肪族アミノ酸。
2:式(I)の−NH−CHR1−CO−による、フェニル環での置換を含む芳香族アミノ酸、更には脂肪族アミノ酸。
3:プロリン及び誘導体 D:右旋性
以下の結論は、これらの計算から導かれる:
(a)プロリンの遊離酸の代わりのプロリンアミド、プロリン(ジエチル)アミド及びプロリンメチルエステルの使用は、血液脳関門の通過に関して好ましい。
(b)A2の構造単位(R1に対応する)では、芳香族アミノ酸F及びそのアルキル誘導体、更にはイソロイシン(I)が好ましい。
(c)構造単位A1(R2に対応する)では、脂肪族アミノ酸(I)、更には2個のエチル基での(G)及び(I)のアミノ基の置換が、特に好ましい。
(d)アミノ酸単位の光学的キラリティーは、少なくとも血液脳関門の受動通過には貢献していないようである。
2.消化管吸収
経口投与薬物の吸収は、消化管バリアを通過するその能力により決定される。並列人工膜透過測定法システム(Parallel Artificial Membrane Permeation Assay system)(PAMPA)は、消化管薬物吸収の予測に関して単純かつ迅速な方法である。生物学的細胞層の薬物透過は、主として受動拡散プロセスに関連している。PAMPA法によって、受動拡散により人工膜を通過する潜在的な新しい薬物の透過を測定して、低、中及び高吸収物質への分類ができる。
Kansyらに報告された並列人工膜透過測定法による手順を利用した(Kansy M., Senner F., Gobernator K., 物理化学的高処理能力スクリーニング:受動吸収プロセスの説明における並列人工膜透過測定法, J. Med. Chem., 1998, 41(7), 1007-1010)。この人工膜は、有機溶媒中のレシチンの溶液を96ウェルプレート中の支持フィルター物質にピペットで加えることにより作成した。
全ての試験化合物について、5mMのストック溶液をエタノール中に調製した。次にこれらをトリス緩衝液(0.05M、pH7.4)に希釈して、500μMの最終濃度にした。全ての試験化合物の透過速度は、三重測定又は四重測定で測定した。人工膜を通過する拡散時間は、16時間であった。全ての化合物について、リン脂質層のない参照値は、個別に求めた。アクセプター区画における濃度は、モレキュラー・ディヴァイシーズ(Molecular Devices)製のマイクロタイタープレートリーダーであるスペクトラマックス・プラス384(Spectramax Plus384)を用いるUV差分光法によって測定した。各化合物について、λmax値は先の試験で求め、測定はこの波長で実施した。透過速度は、フラックス速度として表されるが、これは、以下の式により計算される:フラックス(%)=OD(試験ウェル)/OD(対照ウェル)×100。内部標準として、低、中及び高透過性である既知のフラックス速度の3つの薬物を、試験プレートに含めた:ブレチリウム(Bretylium)、ヒドロコルチゾン(Hydrocortizone)及びクマリン(Coumarin)。透過実験後、膜の完全性のチェックを行うことにより、試験化合物が、毒性又は非特異的作用によって人工膜を傷害した(そしてそのため偽陽性の結果を構成している)かどうかを検査した。非透過性染料であるルシファー・イエロー(Lucifer Yellow)を、各ウェルに実験後に適用して、マーカーの濃度を、ワラック・ビクター2 1420マルチラベル・カウンター(Wallac Victor2 1420 Multilabel Counter)で測定した。ルシファー・イエローの濃度が対照ウェル(人工膜なし)で検出された量の1%を超えたウェルは、廃棄した。本実験において、1個のウェルだけ(参照化合物ブレチリウムに対して)がこの限界を超えたため、これを考慮に入れなかった。
表1は、7つの試験化合物及び3つの参照化合物のフラックス速度を示す。
Figure 0004183507
フラックス速度が我々や他の研究者(Kansyら、上記を参照のこと)により数回測定されている、3つの参照化合物により構成された内部対照は、異常を示さず、実験が行われた良好な条件を立証している。また、ヒトにおいて低い生物学的利用能を示す、能動輸送される化合物であるブレチリウムは、この実験で同様に0%のフラックス速度を示した。Kansyら(上記を参照のこと)により発表された、ヒドロコルチゾン及びクマリンのフラックス速度は、それぞれ52及び66%であった。これらのデータは、我々が実験で得た結果と非常に良好な一致を見ている(表1)。
PAMPA法により、化合物を3群に分類できる:
低(フラックス速度<20%)、中(20%<フラックス速度<50%)及び高(フラックス速度>50%)透過物質。この分類によれば、HCl−Gly−Phe−ProNH2、更にはTRH及びH−Gly−Phe−Pro−OHは、弱く吸収される化合物であり、N,N−ジエチル−Ile−Ile−ProNH2、N−イソプロピル−Ile−Ile−ProNH2、N,N−ジエチル−Gly−Ile−ProNH2及びN,N−ジエチル−Ile−Phe−ProNHEtは、経口適用後、中度〜高度に吸収される化合物であると予測される。
この試験で得られる結果に基づいて、生物学的膜の透過性に関して試験化合物の以下の格付けを行うことができる:
HCl−Gly−Phe−ProNH2、H−Gly−Phe−Pro−OH < TRH、N,N−ジエチル−Gly−Ile−ProNH2 < N−イソプロピル−Ile−Ile−ProNH2 < N,N−ジエチル−Ile−Ile−ProNH2 < N,N−ジエチル−Ile−Phe−ProNHEt。
本明細書に記述されるPAMPA透過試験システムの限界は、これが、経細胞経路により輸送される化合物だけしか検出できないという事実である。傍細胞経路又は能動経路を選ぶ化合物は、経口適用後、ヒトでの良好な吸収にもかかわらずフラックス速度が低いであろう。
3.ドッキング定数の測定
TrkA、TrkB及びTrkCの二量体断片のX線構造又はモデルに基づいて、式(I)の幾つかの化合物のドッキング試験を実施した。両方のモノマーの間のリガンドの全ての配置について、理論的方法によってその親和定数(pKd=pKi)を計算する必要がある(Wang, R.; Liu, L.; Lai, L.; Tang, Y.; J. Mol. Model., 1998, 4, 379-394を参照のこと )。
a)受容体の二量体配置のモデリング
以下の全ての研究の論拠は、NGFがドッキングしたTrkA断片のX線構造(pdb=1www)である(Wiesmann, C., Ultsch, M.H., Bass, S.H., De Vos, A.M., Nature 1999, 401, 184を参照のこと)。
我々は、リガンドが、TrkA、TrkB又はTrkCの2つのモノマーにNGFと同様に結合することを仮定する。リガンドの親和性が高いほど、両方のモノマーがより密に結合され、そしてこれが、活性の主要な機能として考えられる。NGFは、トリペプチド誘導体よりもはるかに大きいため、モデルは、少し小さい分子が結合できるように作るべきである。この目的のために、NGFの座標をX線構造から除去して、1つのモノマーを他のモノマーへのファン・デル・ワールス接触に手動で近づけた(分子モデリングパッケージのSYBYL(トリポス・アソシエーツ社(TRIPOS Associates Inc.))を用いて)。両方の空いているモノマーを一緒にする適切な配置を見い出すために、AMBER−ALL−ATOM力場(S.J. Weinerら, J. Amer. Chem. Soc. 1984, 106, 765-784を参照のこと)を150Kで20000fsの間用いる、分子動力学シミュレーション(MD)を実行した。このシミュレーション後に生じた構造を、0.1kcal/mol Å2のエネルギー勾配に最適化した。この構造を、TrkB及びTrkCの構造のモデル作成の鋳型として、更にはドッキング試験のために使用した。
TrkB及びTrkCの二量体配置のモデルは、SYBYLの相同性モデリングツールのCOMPOSER(Blundell, T.L., Carney, D., Gardner, S., Hayes, F., Howlin, B., Hubbard, T., Eur. J. Biochem. 1988, 172-513-20を参照のこと)並びにこれに続くMD及びエネルギー最小化を用いて作成した。生じた構造は、PROCHECK(Laskowski, R.A., MacArthur, M.W., Moss, D.S., Thornton, J.M., J. Appl. Cryst., 1993, 26, 283-91を参照のこと)を用いて特性を照合した。
b)リガンドのドッキング試験
プログラムGOLD[Jones, D.T., J. Mol. Biol., 1999, 292(2), 195-202;Jones, D.T., Taylor, W.R., Thornton, J.M., Nature 1992, 358, 86-89を参照のこと]をリガンドの「自動」ドッキングのために使用した。3つ全ての受容体に対するリガンドそれぞれの最適なドッキングを確保するために、2つのわずかに異なる結合部位を調査した。各ランにつきGOLDを用いて、20個のドッキング構造(全部で40個)を測定した。タンパク質構造は、固定していると考えられるため、固定した受容体の基本骨格だけを保持しながら40個全ての配置を最適化した。
c)親和定数の決定
全てのタンパク質−リガンド複合体について、酵素インヒビター複合体の場合のPKi値に相当するpKd値を求めるために、GOLD及びプログラムのSCORE[Wangら、同文献を参照のこと]を用いたいわゆる適合度の値である、リガンドと受容体との相互作用エネルギーをトリポス(Tripos)力場を用いて計算した(適合度、即ちpKd値が高いほど、リガンドの親和性は高い)。SCOREは、ドッキング配置において、相互作用エネルギーだけでなく、溶媒和、脱溶媒及びエントロピー効果も考慮に入れる。
結果は、受容体に対するリガンドそれぞれの最も良好なpKd(pKi)値を示す、以下の表に要約される。この表はまた、上記で測定された脳血液分布の値をも示す。
最も高い親和性は、Et2−IFP−NH−Etについて予測された(TrkAに結合する場合、7.29(約100nM)のpKi値(SCOREによる))。幾つかの水素結合が検出できるが、最も重要なものは、両方のN末端エチル基の、更にはIle側鎖と3個のヒスチジン残基との、及びフェニルアラニン側鎖と受容体のPhe327との疎水性相互作用である。残りの全てのリガンドについては、親和性が約一桁小さい。
Figure 0004183507
4.合成
a)HCl−H−Gly−L−Phe−L−Pro−NH2の合成
工程1:Boc−L−Phe−OH + H−L−Pro−NH2 → Boc−L−Phe−L−Pro−NH2
Boc−L−Phe−OH 87.6gをジメチルホルムアミド(DMF)50ml及び1,2−ジメトキシエタン(DME)300mlの混合物に溶解して、−15℃に冷却した。次に、N−メチルモルホリン(NMM)37ml(1当量)を一度に加え、次いでクロロギ酸イソブチル(IBCF)45ml(1当量)を10分かけて滴下により加えた。次にこの混合物を−15℃で更に5分間撹拌した。続いてTFA.H−L−Pro−NH2 40g(1.06当量)を5分かけて少量ずつ加え、次にN,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン(DIEA)315ml(1当量)を一度に加えた。反応混合物を室温及び大気圧で一晩反応させた。続いて、この反応混合物を、水流吸引器及びドライアイス/アセトントラップを取り付けたロータリーエバポレーターで濃縮し、そして残渣を酢酸エチル1lにとり、次に2l分液ロートで、1N KHSO4水溶液80mlで12回洗浄し、食塩水80mlで1回洗浄し、飽和NaHCO3水溶液80mlで10回洗浄し、食塩水80mlで1回洗浄した。次いでNa2SO4 50gで乾燥した。焼結ガラスロート(粗い多孔度)での濾過後、上述のように濃縮した。次に蒸発の残渣(乾燥泡状物)を1lヘキサン中で粉砕して、固体を焼結ガラスロート(120mm内径×120mm、中度の多孔度)上に回収した。続いてこれをデシケーター中で室温及び0.1〜1mmHg(真空油ポンプ、ドライアイス/アセトントラップ付き)の圧力で12時間かけて乾燥した。こうしてBoc−L−Phe−L−Pro−NH2 92.8gを得た(収率:77.8%)。
分析データ:
モル質量(質量分析法): 317g/mol
融点: 60℃(分解)
純度(HPLC): 95.2%
旋光度(Na/20℃]: −23.9
2O[KF]: 1.84%
重金属: 25.4ppm
溶媒: 2.02 0/00
元素分析: 64.0% C
7.4% H
11.4% N
17.0% O
工程2:Boc−L−Phe−L−Pro−NH2 → TFA.H−L−Phe−L−Pro−NH2
工程1で得られたBoc−L−Phe−L−Pro−NH2(180g)を、マグネティックスターラーを取り付けた2l丸底フラスコ中で塩化メチレン250mlに溶解/懸濁した。次に、トリフルオロ酢酸250mlをこの溶液と室温(15〜25℃)及び大気圧で1時間反応させた。次に反応混合物を、撹拌しながらtert−ブチルメチルエーテル(TBME)5l中で沈殿させた。沈殿物を焼結ガラスロート上に回収し、次にジエチルエーテル1.5lで2回及びヘキサン1lで2回洗浄した。続いて工程1で上述したように乾燥を行った。
工程3:Boc−Gly−OH + TFA.H−L−Phe−L−Pro−NH2 → Boc−Gly−L−Phe−L−Pro−NH2
Boc−Gly−OH 44g(1当量)を、DMF 50ml及びDME 300mlの混合物に溶解し、次に−15℃に冷却した。NMM 28ml(1当量)を一度に加え、続いてIBCF 34ml(1当量)を10分かけて滴下により加えた。この混合物を−15℃で更に5分間撹拌した。TFA.H−L−Phe−L−Pro−NH2 94.5g(1.06当量)をここに5分かけて少量ずつ加え、続いてDIEA 44ml(1当量)を加えた。この反応混合物を室温及び大気圧で一晩反応させた。次に、反応混合物を、水流吸引器及びドライアイス/アセトントラップを取り付けたロータリーエバポレーターで濃縮し、そして残渣を酢酸エチル1.2lにとり、次に2l分液ロートで、1N KHSO4水溶液80mlで5回洗浄し、飽和NaHCO3水溶液80mlで5回洗浄し、そして食塩水80mlで1回洗浄した。次いでNa2SO4 50gで乾燥した。焼結ガラスロート(粗い多孔度)での濾過後、上述のように濃縮した。次に蒸発の残渣(粘着性油状物)をジエチルエーテル1lとヘキサン2lの混合物中で粉砕して、固体を焼結ガラスロート(180mm内径×180mm、中度の多孔度)上に回収した。続いてこれをデシケーター中で室温及び0.1〜1mmHg(真空油ポンプ、ドライアイス/アセトントラップ付き)の圧力で12時間かけて乾燥した。こうして、Boc−Gly−L−Phe−L−Pro−NH2 100gを得た(収率:94.7%)。
分析データ:
モル質量(質量分析法): 418g/mol
融点: 66℃(分解)
純度(HPLC): 98.6%
旋光度[Na/20℃]: −27.9
2O[KF]: 3.78%
重金属: 40.2ppm
溶媒: 1.8 0/00
元素分析: 61.2% C
7.5% H
12.8% N
18.4% O
工程4:Boc−Gly−L−Phe−L−Pro−NH2 → HCl.H−Gly−L−Phe−L−Pro−NH2
工程3で得られたBoc−Gly−L−Phe−L−Pro−NH2(149g)を塩化メチレン300mlに溶解/懸濁して、次に4N HCl/ジオキサン300mlを一度に加えた。この混合物を、マグネティックスターラーを取り付けた2l丸底フラスコ中で、室温(15〜25℃)で大気圧で1時間反応させた。次に、ジエチルエーテル1lを反応混合物に加え、沈殿物を焼結ガラスロート上に回収した。次に沈殿物をジエチルエーテル1.5lで2回洗浄して、工程1に記載されたように乾燥した。
分析データ:
モル質量(質量分析法): 318g/mol
融点: 93℃(分解)
純度(HPLC): 98.8%
旋光度[Na/20℃]: −19.1
2O[KF]: 2.79%
重金属: 15.9ppm
溶媒: 0.72 0/00
元素分析: 53.7% C
6.4% H
14.3% N
14.9% O
b)N,N−ジエチル−Ile−Phe−Pro−NH−Etの合成
N,N−ジエチル−Ile−Phe−Pro−NH−Etは、固相合成法により以下のとおり調製した:
Figure 0004183507
H−R:H−Pro−(SASRIN)−N−Et(バッケム社(Bachem AG)(スイス)の所有権;ポリスチレンが基剤)
A:DMF中20%ピペリジン
B:DCCl/HOBt/DMF
C:95% TFA、次いで留去
D:C18でのRP−HPLC、システム:0.1% TFA/アセトニトリル
E:アセタート型のアニオン交換体、水で溶出
分析データ:
外観: 帯黄色の生成物
溶解度: 5%酢酸中に1mg/ml(清澄な無色の溶液)
アミノ酸分析: Pro 1.00(1)
Phe 0.03(1)
Ile 0.01(1)
N,N−ジエチル−Ileは測定できない;
Ile−Phe結合は不完全な加水分解
ESI−MS: m=458.5u(平均質量)
純度(HPLC): >95%
水分含量: 3.9%
c)N,N−ジエチル−Ile−Ile−Pro−NH−Etの合成
N,N−ジエチル−Ile−Ile−Pro−NH−Etは、固相合成法により以下のとおり調製した:
Figure 0004183507
Fmoc−R =Fmoc−ラメージ(Ramage)−樹脂(D−2200)
Fmoc−Ile−Pro−OH(B−2135)、Fmoc−Ile−OH(B−1340)
A =DMF中20%ピペリジン
B =TBTU/DIPEA/DMF
C =95% TFA、次いでIPEで沈殿
D =C18でのRP−HPLC、システム:0.1% TFA/アセトニトリル
E =アセタート型のアニオン交換体、H2Oで溶出
分析データ:
外観: 帯黄色の生成物
溶解度: 水中に1mg/ml(清澄な無色の溶液)
アミノ酸分析: Pro 1.00(1)
Ile 0.03(1)
N,N−ジエチル−Ileは測定できない;
Ile−Ile結合は不完全な加水分解
ESI−MS: m=396.5u(平均質量)
純度(HPLC): >96%
水分含量: 2.0%
5.代謝安定性の測定
ラット肝細胞の単離及び培養
オスの成体ウィスターラット(IFFAクレド(IFFA Credo)、L'Arbresle、フランス )からの肝細胞を、Seglen(単離ラット肝細胞の調製, Methods Cell Biol. 13, 29-83, 1976)により報告され、Williamsら(ラット肝細胞初代培養。III.分離及び接着の改善法並びに培地による生存率の増強、in vitro 13: 809-817, 1977)により改変された手順により、コラゲナーゼ(シグマ(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州、米国)から購入)を用いるインサイチュー肝灌流によって単離した。位相差顕微鏡法及びトリパンブルー試験における未変性細胞の周縁部不応性による細胞生存率の推定後、新たに単離した肝細胞を、10%(v/v)ウシ胎仔血清、70μMコルチゾル、2mM L−グルタミン、10mM HEPES緩衝液、及び4mM NaOHを補足した基礎ウィリアム培地E(basal William's medium E)(WME)中で洗浄した。次にこれらを、37℃で6時間細胞接着のために前述の培地で50mmプラスチック細胞培養シャーレ当たり0.5×106個の細胞の密度で培養した。続いて、肝細胞を、7.8μMの遊離脂肪酸の混合物のための輸送体として4g/lウシアルブミン画分V(シグマ(Sigma))を含む無血清及び無コレステロール培地(SF−WME)中で3回洗浄し(Cheesebeuf MとPadieu P, 長期無血清ラット肝上皮細胞株における主要代謝機能の発現, In vitro 20: 780-795, 1984)、次に式(I)の種々のトリペプチドを補足したSF−WMEに移した。実験の各群について、3又は4つの肝臓由来の肝細胞を使用した。
統計
有意性は、スチューデントのt検定を用いて計算する。値は、平均±SDとして表される。
肝細胞におけるトリペプチドの分析:
方法:(懸濁した肝細胞)
血漿試料:トリクロロ酢酸で沈殿。遠心分離及び上清のアリコートをHPLCに。
イオン交換カラム:ヌクレオシル(Nucleosil)C18(250×4.6mm)。
緩衝液 TEAP 0.1%/CH3CN、1ml/分
210nmで読み取り。
トリペプチドの試験条件
20μg/24時間/106細胞
106細胞/ml
物質濃度を10μg/ml及び1.0μg/mlまで下げる。
各濃度の各物質は、24時間に10回(1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間)分析される。
結果
下記の半減期の値を得た:
Figure 0004183507
6.発芽測定法
神経細胞の発芽は、樹状突起の長さにより測定される。本発明では、本発明により使用される物質の発芽に及ぼす影響がインビボ測定法で試験される。
ラット10匹の海馬の隔壁を破壊した(Haggら; Exp. Neurol., 101, 303-312を参照のこと)。21日後、海馬の損傷は、挙動試験により確認すると明白であったが、ラットをそれぞれ5匹の2つの群に分割した。本発明により使用される物質(GFPNH2)を1日に体重1kg当たり20mgを、ラット5匹の試験群に少なくとも15日間投与した。
投与後、ラットを屠殺し、コリン作動性神経末端をCAT(コリン−アセチル−トランスフェラーゼ)免疫蛍光測定法により蛍光顕微鏡下で観察した。こうして樹状突起の長さを測定した。
対照群のラットでは、2μm以下の樹状突起長の変化を観察した。これに反して、本発明により使用される物質の投与によって、試験群では8〜10μmの樹状突起長の増加が起こった。よって、GFPNH2は、樹状突起の成長をもたらす成長因子である。
図1は、血液脳分布の実験値及び計算値の相関を示す。

Claims (3)

  1. 虚血、外傷又は中毒由来の神経細胞壊死による損傷後疾患の処置のための医薬であって、下記式(I):
    Figure 0004183507
    [式中、Xは、N2、NH−C1-3 −アルキル、N(C1-3 −アルキル)2を表し;
    1は、アミノ酸:Pheから誘導される残基(場合により1個以上の(C1-5)アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい)、又はIleから誘導される残基であり;
    2は、アミノ酸:Gly又はIleのいずれかから誘導される残基であり;
    1及びY2は、相互に独立に、H又は(C1-3 )アルキルを表す)]で示される化合物、又は薬学的に許容しうるその塩を含む医薬。
  2. 1が、アミノ酸:Pheから誘導される残基(場合によりハロゲン原子で置換されていてもよい)である、請求項1記載の医薬。
  3. 式(I)の化合物が、グリシル−L−フェニルアラニル−L−プロリンアミド、N,N−ジエチル−イソロイシル−フェニルアラニル−L−プロリンエチルアミド、N,N−ジエチル−イソロイシル−イソロイシル−プロリンアミド、又は薬学的に許容しうるこれらの塩である、請求項1〜のいずれか1項記載の医薬。
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