JP4182728B2 - 磁気記憶素子の記録方法、磁気記憶装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不揮発性メモリに用いて好適な、磁気記憶素子の記録方法、並びに磁気記憶素子を用いて構成された磁気記憶装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ等の情報機器においては、ランダム・アクセス・メモリとして、動作が高速で、高密度のDRAMが広く使用されている。
しかし、DRAMは電源を切ると情報が消えてしまう揮発性メモリであるため、情報が消えない不揮発のメモリが望まれている。
【0003】
そして、不揮発メモリとして、磁性体の磁化状態により情報を記録する磁気記憶素子を用いた磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)の開発が進められている(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】
日経エレクトロニクス 2001.2.12号(第164頁−第171頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のMRAMは、直交する2種類の配線(例えばワード線とビット線)がそれぞれ複数本形成され、これら2種類の配線の各交点に磁気記憶素子が設けられることにより、多数の磁気記憶素子がマトリクス状に配置された磁気記憶装置を構成している。そして、2種類の配線について、それぞれ特定の配線に電流を流すことにより、電流を流した配線の交点に位置する磁気記憶素子のみを選択して、その磁気記憶素子の記憶層の磁化を電流磁界によって反転させて、情報の記録を行っている。
【0006】
しかしながら、MRAMを構成する各磁気記憶素子の磁気特性にばらつきがあると、目的の(記録を行うべき)磁気記憶素子以外の磁気記憶素子で磁化の反転が起きてしまうことがあり、正しい記録を行うことができなくなるため好ましくない。また、目的の磁気記憶素子以外の磁気記憶素子で磁化が全く反転しないようにするために、電流磁界を充分小さくしてしまうと、目的の磁気記憶素子のうち一部に対して記録を失敗する可能性もある。
【0007】
今後、MRAMにおいても、記憶容量を増加するために、高密度化を図る必要があり、メモリセルを構成する磁気記憶素子の縮小化が求められることから、磁気記憶素子の記憶層に用いられる磁性体の寸法も小さくする必要がある。
そして、磁性体は寸法の縮小化に従って保磁力が増加する傾向を有するため、MRAMの磁気記憶素子においても、縮小化に伴い記録層の保磁力が増加していく。このように保磁力が増加すると、各磁気記憶素子の保磁力のばらつきを小さくすることが難しくなってくる。
【0008】
上述した問題の解決のために、本発明においては、書き損じがなく正しく情報の記録を行うことが可能な磁気記憶素子の記録方法を提供する。また、この磁気記憶素子を備えて、各磁気記憶素子に磁気特性のばらつきがあっても、安定して正確に情報を記録することができる磁気記憶装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の磁気記憶素子の記録方法は、磁化状態を情報として保持する記憶層と、この記憶層に磁場を印加する磁場印加手段と、これら磁場印加手段と記憶層との間に配置され、軟磁性体により成り、磁場印加手段からの磁場の少なくとも一部を遮蔽する磁場遮蔽体とを有する磁気記憶素子に対して、磁場遮蔽体を加熱して磁場遮蔽体の少なくとも一部の磁化を減少又は消失させた状態で、磁場印加手段から記憶層に磁場を印加して、記憶層に磁化状態の記録を行うものである。
【0011】
本発明の磁気記憶装置は、磁化状態を情報として保持する記憶層と、この記憶層に磁場を印加する磁場印加手段と、これら磁場印加手段と記憶層との間に配置され、軟磁性体により構成され、磁場印加手段からの磁場の少なくとも一部を遮蔽する磁場遮蔽体とを有する磁気記憶素子と、第1の配線と、第2の配線とを有し、これら第1の配線と第2の配線とが交差する交点に、それぞれ磁気記憶素子が配置されて成り、第1の配線が磁気記憶素子の磁場印加手段を構成し、この第1の配線から電流磁場が記憶層に印加され、第2の配線により磁場遮蔽体が加熱されるものである。
【0012】
また、上記本発明の磁気記憶装置において、複数の磁気記憶素子の各磁気記憶素子に対して、それぞれ構成の異なる磁場遮蔽体を配置すると共に、各磁場遮蔽体を共通の第2の配線により加熱する磁気記憶素子群を構成してもよい。
【0013】
上述の本発明の記録方法及び本発明の磁気記憶装置に係る磁気記憶素子の構成によれば、磁化状態を情報として保持する記憶層と、この記憶層に磁場を印加する磁場印加手段と、これら磁場印加手段と記憶層との間に配置され、軟磁性体により成り、磁場印加手段からの磁場の少なくとも一部を遮蔽する磁場遮蔽体とを有することにより、磁場遮蔽体を加熱したときには、温度上昇により磁場遮蔽体を構成する軟磁性体の磁気転移温度に近くなって、磁場遮蔽体の磁化が減少又は消失して、その遮蔽能力が低下又は消失するため、磁場印加手段からの磁場を記憶層に充分な大きさで印加して、記憶層に情報を記録することが可能になる。
一方、磁場遮蔽体を加熱していないときには、磁場遮蔽体により磁場印加手段からの磁場の少なくとも一部が遮蔽されるため、記憶層に印加される磁場が小さくなり、記憶層の磁化が変化せず、記録層への記録が行われない。
従って、磁場遮蔽体の加熱の有無と磁場印加手段からの磁場の発生の有無とを選択することにより、記憶層への記録を選択して行うことが可能になる。
【0014】
上述の本発明の磁気記憶素子の記録方法によれば、上述の磁気記憶素子に対して、磁場遮蔽体を加熱して磁場遮蔽体の少なくとも一部の磁化を減少又は消失させた状態で、磁場印加手段から記憶層に磁場を印加して、記憶層に磁化状態の記録を行うことにより、磁場遮蔽体を加熱すると共に磁場印加手段から記憶層に磁場を印加した場合には記憶層に磁化状態の記録が行われる。これに対して、磁場遮蔽体を加熱していない場合には、磁場印加手段から磁場を発生させても磁場遮蔽体により遮蔽されて、記憶層の磁化が変化しないことから、誤って記憶層に記録が行われることがない。
即ち、磁場遮蔽体の加熱及び磁場印加手段からの磁場の発生を共に行った場合には記憶層の記録を行うことができる一方で、磁場遮蔽体の加熱を行わない場合には記憶層に誤って記録が行われることがない。
従って、記憶層への記録を選択して行うことが可能になり、安定して正確に記録を行うことが可能になる。
【0015】
上述の本発明の磁気記憶装置の構成によれば、上述の磁気記憶素子と、第1の配線と、第2の配線とを有し、これら第1の配線と第2の配線とが交差する交点に、それぞれ磁気記憶素子が配置されて成り、第1の配線が磁気記憶素子の磁場印加手段を構成し、この第1の配線から電流磁場が記憶層に印加され、第2の配線により磁場遮蔽体が加熱される構成としたことにより、磁気記憶素子に対して上述した記録方法により記録を行うことが可能である。
即ち、第2の配線により磁場遮蔽体を加熱して磁場遮蔽体の少なくとも一部の磁化を減少又は消失させた状態で、第1の配線により記憶層に対して電流磁場を印加して、記憶層の磁化の向きを変化させて、その結果として記憶層に磁化状態(情報)を記録させることができる。
そして、対応する第1の配線と第2の配線とを共に選択した磁気記憶素子では、上述したように記憶層に情報の記録が行われるのに対して、対応する第2の配線が選択されていない磁気記憶素子では、磁場遮蔽体が加熱されず第1の配線からの電流磁場の少なくとも一部が磁場遮蔽体により遮蔽されて記憶層に印加される電流磁場が小さくなるため、記憶層の磁化の向きが変化せず、記憶層へ誤って記録されることがない。
即ち、選択された磁気記憶素子以外の磁気記憶素子に対して、書き損じを生じることがない。
また、第2の配線により磁場遮蔽体を加熱して磁場遮蔽体の遮蔽能力が低下することにより記録が行われるため、磁気記憶素子の記憶層の保磁力にばらつきがあっても、加熱により確実に磁場遮蔽体の遮蔽能力を低下させて記憶層に記録を行うことができる。
即ち、磁気記憶素子の磁気特性(保磁力等)のばらつきの影響を受けにくい磁気記憶装置を構成することができる。
【0016】
また、上記本発明の磁気記憶装置において、複数の磁気記憶素子の各磁気記憶素子に対して、それぞれ構成の異なる磁場遮蔽体を配置すると共に、各磁場遮蔽体を共通の第2の配線により加熱する磁気記憶素子群を構成したときには、第2の配線に流す電流の量を調整して、磁場遮蔽体の温度を制御することにより、構成の異なる磁場遮蔽体のうち、遮蔽能力が発揮される磁場遮蔽体の数を変えて、これにより磁気記憶素子群を構成する複数の磁気記憶素子のうち記憶層に磁化状態が記録される素子の数を変えることができる。
そして、記憶層に磁化状態が記録される素子の数を変えて複数段階の記録を行うようにすれば、磁気記憶素子群を構成する複数の磁気記憶素子に任意の記録を行うことが可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係る磁気記憶素子の一実施の形態の概略構成図(断面図)を図1に示す。
この磁気記憶素子10は、情報が磁化の向きにより記録される記憶層1と磁化の向きが固定された磁化固定層3とが、トンネル絶縁膜2を挟んで配置されて、磁気トンネル接合素子(MTJ)4が構成されている。
この磁気トンネル接合素子4は、図中左右方向が磁性層1,3の磁化容易軸方向になり、紙面に垂直な方向が磁性層の磁化困難軸方向になるように配置されている。
磁化固定層3は、図示しないが、強磁性層と反強磁性層との積層膜から成り、反強磁性層により強磁性層の磁化の向きを一方に固定している。
磁化固定層3の下面には、導体(電極)14が接続され、この導体(電極)14を介して、その下の半導体基板15に電気的に接続されている。半導体基板15には、素子選択用トランジスタや配線に電流を流すための駆動トランジスタ等が形成される。
【0018】
また、本実施の形態の磁気記憶素子10では、特に、記憶層1の上方に、磁場遮蔽体5が設けられている。
この磁場遮蔽体5は、軟磁性体により構成され、記憶層1に印加される磁場を一部又は全部遮蔽するために設けられている。
【0019】
この磁場遮蔽体5には、磁気記憶素子10の動作温度以上の適当な温度に磁気転移を有する軟磁性体を用いることが好ましい。この磁気転移としては、例えばNiFe合金等のキュリー温度や、GdFeCo合金等のフェリ磁性体の補償温度等を利用することができる。
ただし、あまり磁気転移の温度が高温である場合、加熱するために第2の配線12に大きい電流を流す必要が生じ、消費電力が増大する等の不都合がある。
そこで、例えばNiFe合金にCr,Mn等の添加物を入れてキュリー温度を低下させたものや、CoFeSiB合金等の非晶質合金でキュリー温度を組成で調整できるものを磁場遮蔽体5に用いるとよい。
【0020】
また、磁場遮蔽体5に用いられる軟磁性体は単層でも良く、また磁区形成を抑制するために中間に非磁性層を挟んだ3層構造等の多層構造にしても良い。
【0021】
さらに、磁場遮蔽体5の上方に少し離れて、紙面に垂直な方向(磁性層の磁化困難軸方向)に伸びる第1の配線11が設けられ、磁場遮蔽体5の左右端に左右方向(磁性層の磁化容易軸方向)に伸びる第2の配線12が電気的に接続されている。
第1の配線11に電流を流すことにより、その周囲に図中右向き或いは左向きの電流磁場を発生させることができる。
また、第2の配線12に電流を流すことにより、磁場遮蔽体5に電流を流して磁場遮蔽体5を発熱させて、磁場遮蔽体5の温度を上昇させることができる。
【0022】
ところで、軟磁性体は、磁化されやすい性質を有し、また一般的に温度上昇により磁化が減少する性質を有し、さらに温度が上昇すると磁化が消失して非磁性となる性質を有する。
従って、軟磁性体より成る磁場遮蔽体5は、以下に述べる性質を有する。
室温付近においては、磁化されやすく、第1の配線11からの電流磁場により磁化されて、この電流磁場を少なくとも一部遮蔽する。
一方、加熱により温度上昇すると、磁化されにくくなり、さらには非磁性となるため、第1の配線11からの電流磁場を遮蔽しなくなる。
この性質を利用して、室温付近においては第1の配線11からの電流磁場を一部又は全部遮蔽し、温度上昇したときには第1の配線11からの電流磁場を遮蔽せず、電流磁場を記憶層1に充分に印加することが可能になる。
【0023】
続いて、上述の構成を有する本実施の形態の磁気記憶素子10において、情報を記録する方法を、図2を参照して説明する。図2では、第1の配線11、磁場遮蔽体5、記憶層1のみを抽出して示している。
【0024】
磁場遮蔽体5を加熱しないで、第1の配線11に電流を流したときには、図2Aに示すように、第1の配線11に流れる(図中紙面に垂直な向こう向きの)電流Iにより、時計回りの電流磁場が発生し、この電流磁場の磁力線Hが軟磁性体から成る磁場遮蔽体5内を通る。その結果、記憶層1に流れる磁束が減少し、記憶層1の磁化反転は起こらない。
【0025】
これに対して、磁場遮蔽体5をそのキュリー温度以上に加熱して、かつ第1の配線11に(図中紙面に垂直な向こう向きの)電流Iを流したときには、磁場遮蔽体5の磁化が消失して非磁性化するため、電流磁場の磁力線Hが磁場遮蔽体5に集中しなくなり、磁場遮蔽体5を通り抜けて記憶層1に達する。これにより、記憶層1に充分に大きい電流磁場が印加され、記憶層1の磁化反転が起こり、記憶層1の磁化M1が図中左向きとなる。
なお、記憶層1の磁化M1を図中右向きにする場合には、磁場遮蔽体5をそのキュリー温度以上に加熱して、かつ第1の配線11に、図中紙面に垂直な手前向きの電流を流せばよい。
このようにして、記憶層1に、記録する情報に対応して、右向き或いは左向きの磁化情報が記録される。
【0026】
また、本実施の形態の磁気記憶素子10では、磁場遮蔽体5の加熱を、図1に示したように第2の配線12に電流を流すことにより行っている。
従って、第1の配線11及び第2の配線12に、共に充分な電流を流したときには、磁場遮蔽体5が加熱されて、図2Bに示したように、記憶層1に電流磁場が印加されて、記憶層1に磁化状態の記録が行われる。
一方、第2の配線12に電流を流さない、或いは第2の配線12に流す電流が小さいときには、磁場遮蔽体5がキュリー温度まで達しないため、図2Aに示したように、磁場遮蔽体5によって第1の配線11からの電流磁場の一部又は全部が遮蔽される。
【0027】
なお、上述の記録動作の説明では、磁場遮蔽体5に電流を流してそのキュリー温度に達するまで加熱して記録を行うようにしているが、第1の配線11からの電流磁場の大きさと記憶層1の保磁力との関係によっては、磁場遮蔽体5をキュリー温度以上まで加熱しなくても、記憶層1の磁化を反転させて記録を行うことができる。
この場合は、加熱により磁場遮蔽体5の磁化が弱まって、磁場遮蔽体5の遮蔽能力が低下することにより、第1の配線11から記憶層1に印加される電流磁場が強まり、その結果として記憶層1の磁化を反転させることが可能になり、記憶層1への情報の記録が可能になる。
また、キュリー温度の代わりに、磁気転移温度として、前述したフェリ磁性体の補償温度を利用しても同様の記録動作を行うことが可能である。
【0028】
そして、記憶層1に記録された磁化情報の検出(読み出し)は、従来のMRAMに用いられている磁気記憶素子と同様にして行うことができる。
即ち、記憶層1の磁化M1の向きと磁化固定層3の磁化の向きとが平行(同じ向き)の関係にあるか、反平行(反対向き)の関係にあるかによって、トンネル絶縁膜2を流れるトンネル電流に対する抵抗が変化するので、この抵抗値又は電流値によって、記憶層1に記録された磁化情報を検出することができる。
【0029】
上述の本実施の形態の磁気記憶素子10によれば、記憶層1に電流磁場を印加する第1の配線11と、記憶層1との間に、軟磁性体より成る磁場遮蔽体5が設けられていることにより、室温付近では磁場遮蔽体5により第1の配線11からの電流磁場の磁力線が磁場遮蔽体5内に集中し、電流磁場の一部又は全部が遮蔽され、記憶層1に印加される電流磁場が小さくなるため、記憶層1の磁化反転が起こらなくなる。
一方、第2の配線12に電流を流して、磁場遮蔽体5に電流を流して発熱させたときには、磁場遮蔽体5が加熱されてその磁化が減少又は消失することにより遮蔽能力が低下又は消失し、記憶層1に印加される電流磁場が充分大きくなることから、記憶層1の磁化反転が起こり、記憶層1への情報の記録が行われる。
【0030】
従って、第1の配線11及び第2の配線12に共に電流を流した場合には、上述した記録動作が行われる。
これに対し、第1の配線11のみに電流を流した場合には、磁場遮蔽体5により第1の配線11からの電流磁場が一部又は全部遮蔽されるため、記憶層1に印加される電流磁場が小さくなり、記憶層1への記録は行われない。
また、第2の配線12のみに電流を流した場合には、磁場遮蔽体5が加熱されてその遮蔽能力が低下又は消失するが、第1の配線11からの電流磁場が発生しないため、やはり記憶層1への記録は行われない。
【0031】
上述のように、第1の配線11及び第2の配線12に共に電流を流していなければ、記憶層1に記録が行われない。
このため、複数の磁気記憶素子10を有する磁気記憶装置を構成したときに、電流を流す第1の配線11及び第2の配線12を適切に選択すれば、選択された第1の配線11及び第2の配線12の交点にある、選択した磁気記憶素子10の記憶層1は第2の配線12に電流が流れ加熱されることによって磁場遮蔽体5の遮蔽能力が低下するため、記憶層1の保磁力にばらつきがあっても第1の配線11からの電流磁場が充分な大きさで印加され、記憶層1に記録が行われる。
一方、その他の選択していない磁気記憶素子10の記憶層1の磁化を反転することはなく、書き損じなく正確に記録を行うことができる。
このとき、磁気記憶素子10の記憶層1の保磁力にばらつきがあっても、第1の配線11及び第2の配線12の選択により、記録が行われる磁気記憶素子10と記録が行われない磁気記憶素子10を正しく選択することができる。
【0032】
従って、本実施の形態の磁気記憶素子10を用いることにより、安定して正確に情報の記録を行うことができる磁気記憶装置を構成することが可能になる。
【0033】
そして、マトリクス状に直交配置させたそれぞれ複数本の第1の配線11及び第2の配線12の交点に、本実施の形態の磁気記憶素子10を配置することにより、MRAM等の磁気記憶装置を構成することができる。
【0034】
次に、本発明の磁気記憶装置の一実施の形態として、上述の実施の形態の磁気記憶素子10を用いて構成した磁気記憶装置の概略構成図(斜視図)を図3に示す。多数配置された磁気記憶素子10のうち、図3では縦2個・横2個分を図示している。
【0035】
この磁気記憶装置20は、図3に示すように、マトリクス状に直交配置させたそれぞれ多数の第1の配線(例えばビット線)11及び第2の配線(例えばワード線)12の交点に、平面形状が長方形状とされ、図1に示した断面構造を有する磁気記憶素子10を配置して構成されている。
各磁気記憶素子10は、図1に示したように、記憶層1の下にトンネル絶縁層2を介して磁化固定層3が配置され、記憶層1と第1の配線11との間に軟磁性体より成る磁場遮蔽体5が配置されている。また、第1の配線11は、磁気記憶素子10の磁化困難軸方向(Y方向)と平行になっており、第2の配線12は磁気記憶素子10の磁化容易軸方向(X方向)と平行になっている。
【0036】
第1の配線11の一端には、第1の配線11に電流を流すための駆動トランジスタ21が接続されている。
第2の配線12の一端には、第2の配線12に電流を流すための駆動トランジスタ22が接続されている。
磁化固定層3には、記憶層1の磁化状態を検出するための素子選択用トランジスタ23が接続されている。
【0037】
このように磁気記憶装置を構成した場合、例えば次のようにして磁気記憶素子10に対して記録を行う。
【0038】
多数ある第1の配線11及び第2の配線12からそれぞれ1本を選択し、これら選択した第1の配線11及び第2の配線12の交点に配置された磁気記憶素子10に、記憶する情報の内容(「0」或いは「1」)に対応して、第1の配線11に流す電流の向きを選定して、第1の配線11に電流を流す。これにより、第2の配線12に流す電流により、磁場遮蔽体5が加熱されて、温度上昇により磁化が減少又は消失し、磁場遮蔽体5の遮蔽能力が低下又は消失し、第1の配線11からの充分な大きさの電流磁場が記憶層1に印加されて情報が記録される。
そして、選択する第1の配線11及び第2の配線12を変えることにより、他の任意の磁気記憶素子に情報を記録することができる。
【0039】
上述したように記録を行うことにより、選択された磁気記憶素子10、即ち対応する第1の配線11及び第2の配線12に共に電流を流した磁気記憶素子10では、第2の配線12に流した電流により磁場遮蔽体5に電流が流れて発熱することによって磁場遮蔽体5の遮蔽能力が低下又は消失し、第1の配線11に流した電流からの電流磁場が記憶層1に充分に印加されて記憶層1に磁化状態が記録される。
【0040】
これに対して、第1の配線11のみに電流を流した磁気記憶素子10では、第1の配線11に流した電流からの電流磁場が、磁場遮蔽体5により一部又は全部遮蔽されるため、記憶層1に達する電流磁場が小さくなり、記憶層1の磁化が反転しないため、記憶層1の磁化状態は変化しない。
また、第2の配線12のみに電流を流した磁気記憶素子10では、第2の配線12に電流を流したことにより磁場遮蔽体5の遮蔽能力が低下又は消失するものの、第1の配線11からの電流磁場が発生していないため、記憶層1に電流磁場が印加されず、記憶層1の磁化が反転しないため、記憶層1の磁化状態は変化しない。
これにより、選択されていない磁気記憶素子10に、誤って記録されることがない。
【0041】
従って、各磁気記憶素子10において、対応する第1の配線11及び第2の配線12が選択されたときだけ、記憶層1磁化情報が記録される。
即ち誤って目的以外の磁気記憶素子10に記録してしまうことがない。
【0042】
なお、この磁気記憶装置20において、多数の磁気記憶素子10に記録を行う場合には、第2の配線(例えばワード線)12に対して第1の配線(例えばビット線)11の一本ずつに順次電流磁場を発生させて、同一の第2の配線12に対応する同一行の各磁気記憶素子10に1つずつ順次記録を行っても良いし、複数の第1の配線(例えばビット線)11に同時に電流磁場を発生させ、同一行の複数の磁気記憶素子に同時に記録を行ってもよい。
【0043】
上述の本実施の形態の磁気記憶装置20の構成によれば、誤って目的以外の磁気記憶素子10に記録してしまうことがなくなり、各磁気記憶素子10の記憶層1の保磁力にばらつきがあっても、書き損じなく安定して正確に記録を行うことが可能になる。
そして、記憶容量を大きくするために、磁気記憶素子を微小化するほど、各磁気記憶素子の記憶層の保磁力が増大し、磁気特性のばらつきも大きくなる傾向があるため、本実施の形態の磁気記憶装置20は、記憶容量を増大させるために好適である。
【0044】
また、磁場遮蔽体5を加熱して、その遮蔽能力を低下又は消失させることにより、選択された磁気記憶素子10の記憶層1にかかる磁場を強めることができるため、第1の配線11からの電流磁場を従来のMRAMと比較して非常に大きくする必要はなく、第1の配線に実用的な範囲の大きさの電流を流して記録を行うことができる。
【0045】
ここで、比較例として従来のMRAMに用いられる磁気記憶素子の構成と、本発明に係る磁気記憶素子の図1に示した実施の形態の構成とを比較した。
図4Aに示すように、比較構成として、従来のMRAMに用いられる磁気記憶素子、即ち直交する2本の導体配線101及び102に流す電流iBおよびiWにより発生する直交磁場により強磁性体より成る記憶層110に情報の記録を行う磁気記憶素子を構成する。
また、図4Bに示すように、図1に示した磁気記憶素子10において、第1の配線11に電流iBを流し、第2の配線12に電流iWを流す構成とする。
【0046】
まず、図4Aの記憶層110及び図4Bの記憶層1に、共に長軸1μm・短軸0.5μmの楕円形状で膜厚さ6nmのNiFe合金膜を用い、長軸方向を第2の配線(ワード線)102,12の方向に平行となるように配置して、それぞれ磁気記憶素子を構成した。図4Bの磁場遮蔽体5としては、膜厚2nmのSiO2 膜を介して、一辺1.5μmの正方形状で膜厚15nmのNiFeMn合金膜を2層積層したものを用いた。
また、図示しないが、記憶層110,1に対してトンネル絶縁層を介して磁化固定層を配置した。トンネル絶縁層には、酸化アルミニウム膜を用い、磁化固定層には、膜厚3nmのCoFe合金膜から成る強磁性層と膜厚30nmのPtMn合金膜から成る反強磁性層をそれぞれ用いた。
【0047】
これら比較例及び本発明に係る磁気記憶素子に対して、予め記憶層110,1を外部磁場によって一方向に磁化しておき、その後第1の配線(ビット線)101,11及び第2の配線(ワード線)102,12に記憶層110,1の磁化が反転する方向に電流iB,iWを流して、磁化反転したかどうかを測定した。この測定を複数の磁気記憶素子に対して行い、第1の配線(ビット線)101,11の電流iBの量と記憶層110,1の磁化反転確率との関係を調べた。
記憶層110,1の磁化方向の測定は、記憶層110,1と磁化固定層と間にトンネル絶縁層を介して流れるトンネル電流を検出することにより行った。
【0048】
図4Aに示した比較例の磁気記憶素子において、ビット線の電流iBとワード線の電流iWを変えたときの記憶層110の磁化反転確率を図5Aに示す。
また、図4Bに示した本発明に係る磁気記憶素子において、ビット線の電流iBとワード線の電流iWを変えたときの記憶層110の磁化反転確率を図5Bに示す。
【0049】
選択された磁気記憶素子のみに誤りなく記録するためには、ワード線及びビット線に同時に電流を流したときに磁化反転確率が1であり、それ以外は磁化反転確率が0でなければならない
従って、図5Aより、図4Aに示した比較例の磁気記憶素子において、誤りなく記録動作が可能な範囲はビット線電流iBが7.5mA〜10mAのときだけである。
これに対して、図5Bより、本発明に係る図1及び図4Bに示した実施の形態の磁気記憶素子においては、ワード線電流i w が5mAのときにビット線電流iBが25mA〜30mAで誤りのない動作が可能で、ワード線電流iWが10mAのときには、ビット線電流iBが15mA〜30mAの広い範囲で誤りのない動作が可能である。即ち、本発明に係る磁気記憶素子によれば、誤りなく記録動作が可能な範囲が広くなっていることがわかる。
【0050】
続いて、本発明に係る磁気記憶素子の他の実施の形態の概略構成図(断面図)を図6に示す。
本実施の形態では、図6に示すように、第1の配線41及び第2の配線42の交点に2つの磁気記憶素子40A及び40Bが配置され、これら各磁気記憶素子40A,40Bはそれぞれ記憶層31A,31Bとトンネル絶縁層32と磁化固定層33とを有している。
【0051】
さらに、本実施の形態では、軟磁性体より成る磁場遮蔽体35が、領域により異なる部分に分割されている。具体的には、左側の磁気記憶素子40A上にある領域35Aは厚く形成され、右側の磁気記憶素子40B上にある領域は薄く形成されている。この磁場遮蔽体35の材料には、例えば前述した各種の軟磁性体を用いることができる。
このように磁場遮蔽体35が構成されていることにより、第2の配線(例えばワード線)42に電流を流したときに、磁場遮蔽体35の厚い部分35A及び薄い部分35Bを直列に電流が流れ、抵抗の高い薄い部分35Bでの発熱が大きくなるため、磁場遮蔽体35は薄い部分35Bの温度が高く厚い部分35Aの温度が低くなる。
【0052】
続いて、本実施の形態の磁気記憶素子において、磁場遮蔽体35の温度による第1の配線41からの電流磁場の磁力線の状態の変化を、図7を参照して説明する。
【0053】
まず、第2の配線41に、磁場遮蔽体35の全ての領域35A及び35Bの温度がキュリー温度以上になるように電流を流すと、図7Aに示すように、磁場遮蔽体35全体の遮蔽能力が無くなり、両方の磁気記憶素子の記憶層31A及び31Bに第1の配線11からの電流磁場が充分作用して、これら記憶層31A及び31Bの磁化が共に反転して同じ向きになり、同じ磁化情報が記録される。図7Aでは、第1の配線11に流す電流Iを図中紙面に垂直で向こう向きにしているため、電流磁場が時計回りに発生し、左右両方の磁気記憶素子の記憶層31A及び31Bに対して左向きに作用するため、これら記憶層31A及び31Bの磁化M1A及びM1Bが共に左向きに磁化される。
【0054】
次に、第2の配線42に流す電流を下げて、磁場遮蔽体35の薄い部分35Bのみの温度がキュリー温度以上になるようにすると、図7Bに示すように、磁場遮蔽体35の薄い部分35Bの下に位置する右側の磁気記憶素子の記憶層31Bのみに記録することができる。図7Bでは、第1の配線11に流す電流Iを図7Aと同じ向きにしているため、電流磁場が時計回りに発生し、右の磁気記憶素子の記憶層31Bに対して左向きに作用するため、この記憶層31Bの磁化M1Bが左向きに磁化される。一方、左の磁気記憶素子の記憶層31Aに対しては、電流磁場が磁場遮蔽体35の厚い部分35Aに集中し、記憶層31Aに充分な電流磁場が印加されないので、記憶層31Aの磁化が変化せず記録がなされない。
【0055】
さらに、第2の配線に電流を流さないときには、図7Cに示すように、磁場遮蔽体35の全ての領域35A,35Bが遮蔽体として機能して、第1の配線11からの電流磁場が磁場遮蔽体35に集中し、左右両方の磁気記憶素子の記憶層31A及び31Bに充分な電流磁場が印加されず、磁化が変化しない。
これにより、左右両方の磁気記憶素子の記憶層31A及び31Bのいずれにも記録が行われない。
【0056】
このような状態変化を利用して、2つの磁気記憶素子40A及び40Bに対して選択的に任意の情報の記録を行うことができる。
まず、2つの磁気記憶素子40A及び40Bに記録する情報が、同じ情報(両方「0」又は両方「1」)である場合には、図7Aに示したと同様に、第1の配線41に電流Iを流し、第2の配線42に流す電流により加熱して磁場遮蔽体35の全領域35A及び35Bを共にキュリー温度以上として、2つの磁気記憶素子40A及び40Bの記憶層31A及び31Bに対して、共に第1の配線11からの電流磁界が充分印加されるようにする。これにより、2つの磁気記憶素子40A及び40Bの記憶層31A及び31Bに、同じ向きの磁化M1A及びM1Bが記録される。なお、これら磁化M1A及びM1Bを、図7Aとは反対に、両方右向きに記録するためには、第1の配線41に流す電流を図中手前向きにすればよい。
【0057】
一方、2つの磁気記憶素子40A及び40Bに記録する情報が、異なる情報(「0」と「1」、或いは「1」と「0」)である場合には、2段階で記録を行う。
第1段階として、例えば図8Aに示すように、第1の配線41に電流Iを流し、第2の配線42に流す電流により加熱して磁場遮蔽体35の全領域35A及び35Bを共にキュリー温度以上として、2つの磁気記憶素子40A及び40Bの記憶層31A及び31Bに対して、共に第1の配線11からの電流磁界を充分印加し、2つの磁気記憶素子40A及び40Bの記憶層31A及び31Bに、同じ向きの磁化M1A及びM1Bを記録する。図8Aでは第1の配線41に流す電流Iを図中手前向きにしているため、電流磁場が反時計回りになり、各記憶層31A及び31Bに右向きに作用し、記憶層31Aの磁化M1A及び記憶層31Bの磁化M1Bが共に右向きになる。
次に、第2段階として、例えば図8Bに示すように、第1の配線41に流す電流Iを第1段階とは逆向きにして、さらに第2の配線42に流す電流を下げて磁場遮蔽体35の薄い部分35Bだけをキュリー温度以上とし、磁場遮蔽体35の薄い部分35Bの下にある右の磁気記憶素子の記憶層31Bだけに第1の配線41からの電流磁場を充分印加する。第1の配線41に流す電流Iが逆向きであることから、電流磁場も逆向きになり、これにより右の磁気記憶素子の記憶層31Bの磁化M1Bの向きは、第1段階とは反転する。図8Bでは第1の配線41に流す電流Iを図中向こう向きにしているため、電流磁場が時計回りになり、記憶層31Bに左向きに作用し、記憶層31Bの磁化M1Bが右向きから左向きに反転する。このとき、左の磁気記憶素子の記憶層31Aには第1の配線41からの電流磁場が充分に印加されないため記憶層31Aの磁化M1Aは反転せず、第1段階と同じ向き(図8Bでは右向き)のままである。
なお、図8Bとは反対に、左の磁気記憶素子の記憶層31Aの磁化M1Aを左向き、右の磁気記憶素子の記憶層31Bの磁化M1Bを右向きにそれぞれ記録するためには、第1の配線41に流す電流Iを、第1段階及び第2段階においてそれぞれ図8A及び図8Bとは逆の向きにすればよい。
【0058】
また、本実施の形態の磁気記憶素子において、上述した記録動作を可能にするための回路構成としては、例えば図9に示す回路構成が考えられる。
図9に示すように、第1の配線41の一端にNOT回路NOTを接続し、第1の配線41の両端に記録する情報に対応して+或いは−の電圧φDATAを供給するように構成する。
また、第2の配線42の一端に電源電圧VDDを供給し、他端に配線42に流す電流量を変える回路を接続する。この回路は、第1の選択トランジスタT1及び第1の抵抗R1が直列接続された第1の経路と、第2の選択トランジスタT2及び第2の抵抗R2が直列接続された第2の経路とが並列接続されて、一端が接地されている。第1の選択トランジスタT1のゲートに第1の選択電圧φV1が供給され、第2の選択トランジスタT2のゲートに第2の選択電圧φV2が供給される。
そして、第1の抵抗R1及び第2の抵抗R2の各抵抗値の大小関係をR1<R2とすれば、第1の選択電圧φV1により第1の選択トランジスタT1がオンになったときは、第1の抵抗R1の抵抗値が小さいので第2の配線42に流れる電流が多くなって磁場遮蔽体35の全領域35A,35Bの温度が高くなって、その結果2つの磁気記憶素子40A,40Bに対して記録が行われる。一方、第2の選択電圧φV2により第2の選択トランジスタT2がオンになったときは、第2の抵抗R2の抵抗値が大きいので第2の配線42に流れる電流が少なくなって磁場遮蔽体35の薄い部分35だけが温度が高くなり、その結果右の磁気記憶素子40Bに対してのみ記録が行われる。
【0059】
上述の本実施の形態によれば、電流磁場を印加する第1の配線41と、磁気記憶素子40A,40Bの各記憶層31A,31Bとの間に、軟磁性体より成る磁場遮蔽体35が設けられていることにより、室温付近では磁場遮蔽体35により第1の配線41からの電流磁場の一部又は全部が遮蔽され、記憶層31A,31Bの磁化反転が起こらず記録が行われない。また、第2の配線42に電流を流して、磁場遮蔽体35に電流を流して発熱させたときには、磁場遮蔽体35の遮蔽能力が低下又は消失し、記憶層31A,31Bに印加される電流磁場が充分大きくなることから、記憶層31A,31Bへの情報の記録が行われる。
これにより、先の実施の形態の磁気記憶素子10と同様に、第1の配線41及び第2の配線42に共に充分な電流を流した場合には、上述した記録動作が行われ、第1の配線41のみに電流を流した場合や、第2の配線42のみに電流を流した場合には、記憶層31A,31Bへの記録が行われない。
【0060】
また、第2の配線42に流す電流量を少なく設定して、磁場遮蔽体35の薄い部分35Bのみが磁場転移温度以上になるようにすれば、この薄い部分35Bの下にある一方の磁気記憶素子40Bの記憶層31Bのみに第1の配線41からの電流磁場が充分な大きさで印加され、この記憶層31Bのみに情報の記録が行われ、他方の磁気記憶素子40Aの記憶層31Aには情報記録が行われない。
これにより、一方の磁気記憶素子40Bに選択的に記録を行うことができる。さらに、図8に示したように、両方の磁気記憶素子40A及び40Bに記録を行う前述の記録動作と組み合わせれば、2つの磁気記憶素子40A及び40Bに任意の情報の記録を行うことができる。
【0061】
従って、図6の構成の2つの磁気記憶素子40A,40Bを複数組有する磁気記憶装置を構成したときに、磁気記憶素子40A,40Bの記憶層31A,31Bの保磁力にばらつきがあっても、第1の配線41及び第2の配線42の選択及び第2の配線42に流す電流量の選定により、記録が行われる磁気記憶素子と記録が行われない磁気記憶素子とを正しく選択することができる。
即ち、本実施の形態の磁気記憶素子を用いることにより、安定して正確な情報の記録ができる磁気記憶装置を構成することが可能になる。
【0062】
上述の図6に示した実施の形態の磁気記憶素子40A,40Bを用いても、図3に示した磁気記憶装置20と同様にして磁気記憶装置を構成することができる。
図6に示した磁気記憶素子40A,40Bを用いて磁気記憶装置を構成することにより、電流を流す第1の配線41及び第2の配線42を選択し、第2の配線42に流す電流量を選定して磁場遮蔽体35の状態を設定すれば、その他の磁気記憶素子に誤って記録してしまうことがなくなり、各磁気記憶素子40A,40Bの記憶層31A,31Bの保磁力にばらつきがあっても、書き損じなく安定して正確に記録を行うことが可能になる。
【0063】
次に、本発明に係る磁気記憶素子のさらに他の実施の形態の概略構成図(斜視図)を図10に示す。
本実施の形態では、2つの磁気記憶素子60A及び60Bが、第1の配線(ビット線)61と平行で第2の配線(ワード線)62と垂直な方向に配置されている。そして、図中手前側の第1の磁気記憶素子60Aの記憶層51Aの上方に長さの短い磁場遮蔽体52が配置され、図中奥側の第2の磁気記憶素子60Bの記憶層51Bの上方に長さの長い磁場遮蔽体53が配置され、これら2つの磁場遮蔽体52及び53が並列に同一の第2の配線62に接続されている。2つの磁場遮蔽体52及び53は、材料及び幅が同一で長さが異なる構成とされる。2つの磁場遮蔽体52及び53の材料には、例えば前述した各種の軟磁性体を用いることができる。
【0064】
このように磁場遮蔽体52,53が構成されていることにより、短い磁場遮蔽体52は抵抗値が低く、長い磁場遮蔽体53は抵抗値が高くなる。
図6に示した実施の形態では磁場遮蔽体35の2つの領域35A,35Bが直列に接続されているため、抵抗値が高い薄い部分35Bの発熱量が大きい。
これに対して、本実施の形態では、2つの磁場遮蔽体52及び53が並列に同一の第2の配線62に接続されているため、磁場遮蔽体52及び53の両端にかかる電圧が等しくなる。これにより、抵抗値が低い方に大きい電流が流れ、発熱量も大きくなることから、短い磁場遮蔽体52は、長い磁場遮蔽体53と比較して、発熱量が大きく磁化が減少しやすくなる。
従って、第2の配線62に流す電流量を調整すれば、短い磁場遮蔽体52の下にある磁気記憶素子60Aの記憶層51Aだけに記録を行うことができる。
【0065】
ここで、本実施の形態の磁気記憶素子60A,60Bについて、図5と同様にして、ビット線の電流iB とワード線の電流iW を変えたときの記憶層51A,51Bの磁化反転確率の変化を測定した。
短い磁場遮蔽体52を長さ1.5μm・幅1μmとし、長い磁場遮蔽体53を長さ2μm・幅1μmとした。記憶層51A及び51B、トンネル絶縁層、磁化固定層は、図4Bの場合と同一構成にした。
【0066】
短い磁場遮蔽体52の下に位置する第1の磁気記憶素子60Aの測定結果を図11Aに示し、長い磁場遮蔽体53の下に位置する第2の磁気記憶素子60Bの測定結果を図11Bに示す。
図11Aより、第1の磁気記憶素子60Aの記憶層51Aの磁化反転に必要なビット線電流iB は、ワード線電流iW が10mAでも20mAでも変化は小さい。
一方、図11Bより、第2の磁気記憶素子60Bの記憶層51Bの磁化反転に必要なビット線電流iB は、ワード線電流iW が10mAと20mAとでは大きく異なる。
【0067】
従って、始めにワード線に20mAの電流iW を流し、17.5mA以上のビット線電流iB を流せば、第1の磁気記憶素子の記憶層51A、第2の磁気記憶素子の記憶層51Bを、共に同じ向きに磁化させることができる。その後、ワード線電流iW を10mAまで下げて、17.5mA以上20mA以下のビット線電流iW で記録すれば、第1の磁気記憶素子の記憶層51Aにのみ記録が行える。
このようにして、第1の磁気記憶素子60A及び第2の磁気記憶素子60Bに任意の記録が行えることがわかる。
【0068】
上述の本実施の形態によれば、電流磁場を印加する第1の配線61と、磁気記憶素子60A,60Bの各記憶層51A,51Bとの間に、軟磁性体より成る磁場遮蔽体52,53が設けられていることにより、図1に示した先の実施の形態の磁気記憶素子10と同様に、第1の配線61及び第2の配線62に共に充分な電流を流した場合には、2つの磁気記憶素子60A及び60Bの記憶層51A及び52Bに対して記録動作が行われ、第1の配線61のみに電流を流した場合や、第2の配線62のみに電流を流した場合には、記憶層51A,51Bへの記録が行われない。
【0069】
また、第2の配線62に流す電流量を少なく設定して、短い磁場遮蔽体52のみが磁場転移温度以上になるようにすれば、この磁場遮蔽体52の下にある一方の磁気記憶素子60Aの記憶層51Aのみに第1の配線61からの電流磁場が充分な大きさで印加され、この記憶層51Aのみに情報の記録が行われ、他方の磁気記憶素子60Bの記憶層51Bには情報記録が行われない。
これにより、一方の磁気記憶素子60Aに選択的に記録を行うことができる。
さらに、図8に示したと同様に、両方の磁気記憶素子60A及び60Bに記録を行う記録動作と組み合わせれば、2つの磁気記憶素子60A及び60Bに任意の情報の記録を行うことができる。
【0070】
従って、図10の構成の2つの磁気記憶素子60A,60Bを複数組有する磁気記憶装置を構成したときに、磁気記憶素子60A,60Bの記憶層51A,51Bの保磁力にばらつきがあっても、第1の配線61及び第2の配線62の選択及び第2の配線62に流す電流量の選定により、記録が行われる磁気記憶素子と記録が行われない磁気記憶素子とを正しく選択することができる。
即ち、本実施の形態の磁気記憶素子を用いることにより、安定して正確な情報の記録ができる磁気記憶装置を構成することが可能になる。
【0071】
なお、2つの磁場遮蔽体の長さを異ならせる代わりに、幅を異ならせる構成としても同様のことが可能である。この場合、幅の狭い磁場遮蔽体の方が高い抵抗値を有し、発熱量が大きくなる。
【0072】
上述の図10に示した実施の形態の磁気記憶素子60A,60Bを用いても、図3に示した磁気記憶装置20と同様にして磁気記憶装置を構成することができる。
図10に示した磁気記憶素子を用いて磁気記憶装置を構成することにより、電流を流す第1の配線61及び第2の配線62を選択し、第2の配線62に流す電流の大きさを選定して磁場遮蔽体52,53の状態を設定すれば、その他の磁気記憶素子に誤って記録してしまうことがなくなり、各磁気記憶素子60A,60Bの記憶層51A,51Bの保磁力にばらつきがあっても、書き損じなく安定して正確に記録を行うことが可能になる。
【0073】
上述の図6や図10に示した実施の形態では、2つの磁場遮蔽体の厚さや長さ即ち寸法を異ならせて選択記録を可能にした構成であったが、2つの磁場遮蔽体の構成はその他の構成も可能である。その場合の実施の形態を以下に示す。
【0074】
図12に示す実施の形態は、2つの磁場遮蔽体53及び54を構成する軟磁性体の材料を異ならせた場合を示している。
軟磁性体の材料を異ならせた構成としては、使用される元素が異なる複数の軟磁性体を用いた構成や、合金からなる軟磁性体の構成元素の組成比を異ならせた構成等が挙げられる。
【0075】
本実施の形態では、軟磁性体の材料を異ならせたことにより、軟磁性体の温度特性が異なり、一方の材料が他方の材料と比較して、例えばより低い温度で磁化が減少し始めたり、例えば磁化の減少率が大きかったりする。
これにより、2つの磁場遮蔽体53及び54のうち、この一方の材料から成る磁場遮蔽体の下にある磁気記憶素子の記憶層にのみ記録を行うことが可能になる。
また、軟磁性体の材料を異ならせたことにより、材料の抵抗率に大きな差がある場合には、磁場遮蔽体の寸法を異ならせた場合と同様に、抵抗値の差により発熱量の大小が生じる。これによっても、一方の磁場遮蔽体の下にある磁気記憶素子の記憶層にのみ記録を行うことが可能になる。
【0076】
図13に示す実施の形態は、同一材料から成り寸法も同一の磁場遮蔽体53を2個並列に第2の配線12に接続し、一方の磁場遮蔽体53、図13では手前の磁場遮蔽体53に他の部品(膜や素子)55を取り付けた場合を示している。
他の部品55としては、例えば導電膜のように電気的特性を変えて磁場遮蔽体53を流れる電流量を変えるものや、例えばヒートシンクや冷却手段(ペルチェ素子と同様の機能を有するもの)、或いは加熱手段(発熱抵抗体等)のように温度特性を変えて磁場遮蔽体53の温度変化を変えるものが考えられる。
他の部品55として、導電膜を用いた場合には、導電膜に大きい電流が流れ、発熱量が増大するため、第2の配線62の電流量を調整することにより、導電膜55を設けた側の磁気記憶素子60Aにのみ記録を行うことが可能になる。
他の部品55として、ヒートシンクや冷却手段を用いた場合には、磁場遮蔽体53が冷却されて磁化の減少が抑制されるため、第2の配線62の電流量を調整することにより、部品55を設けていない側の磁気記憶素子60Bにのみ記録を行うことが可能になる。
他の部品55として、加熱手段(発熱抵抗体等)を用いた場合には、逆に磁場遮蔽体53が加熱されて磁化の減少が促進されるため、第2の配線62の電流量を調整することにより、部品55を設けた側の磁気記憶素子60Aにのみ記録を行うことが可能になる。
【0077】
なお、図12や図13に示した実施の形態は、2つの磁場遮蔽体を第2の配線62に並列に接続しているが、2つの磁場遮蔽体を図6と同様に直列に接続して第2の配線62に接続する構成としても良い。直列に接続すると電流が同じになるため、抵抗値の大きい方の発熱量が大きくなる。
また、2つの磁場遮蔽体を第2の配線に並列に接続する構成において、2つの磁場遮蔽体の厚さを異ならせてもよい。
【0078】
さらに、2つの磁場遮蔽体を、上述した寸法(厚さや長さ、幅)、軟磁性体の材料、他の部品の有無、の各要素について、複数の要素が異なる構成としてもよい。この場合、要素が異なることによる作用が、互いに打ち消し合うよりも、強め合うように構成することが望ましい。
また、3つ以上の磁気記憶素子に対して、それぞれ異なる磁場遮蔽体を1つずつ配置して磁気記憶装置を構成し、各磁気記憶素子に選択的に記録を行う構成も可能である。
【0079】
即ち、本発明の磁気記憶装置において、複数の磁気記憶素子に対して、それぞれ構成(要素)の異なる磁場遮蔽体を配置すると共に、各磁場遮蔽体が共通の第2の配線により加熱される磁気記憶素子群を構成することができる。
そして、同数の磁気記憶素子から成る磁気記憶素子群を、多数配置して磁気記憶装置を構成することができる。
【0080】
この構成の磁気記憶装置に記録を行う場合には、まず第1の工程として、ある磁気記憶素子群の全ての磁場遮蔽体を第2の配線により加熱して遮蔽能力を低下又は消失させた状態で、第1の配線から電流磁場を印加することにより、磁気記憶素子群の全ての磁気記憶素子に対して、それぞれの記憶層に同じ向きの磁化情報を記録する。このとき第1の配線に流す電流の向きは、遮蔽能力が最も低下しにくい、例えば磁場遮蔽体の温度と磁場遮蔽体の磁気転移の温度との差が最も小さい、磁場遮蔽体に対応する1番目の磁気記憶素子に記憶する情報の内容に対応させて設定する。
次に、第2の工程として、第2の配線に流す電流をより小さい電流に設定して、磁場遮蔽体の温度を下げることにより、1番目の磁気記憶素子にのみ磁場遮蔽体の遮蔽能力を復活させることができ、この状態で第1の配線から電流磁場を印加することにより、1番目以外の磁気記憶素子に対して、それぞれの記憶層に同じ向きの磁化情報を記録する。このとき第1の配線に流す電流の向きは、遮蔽能力が次に低下しにくい磁場遮蔽体に対応する2番目の磁気記憶素子に記憶する情報の内容に対応させて設定する。
以下、第3の工程以降、第2の配線に流す電流を小さくしていき、磁場遮蔽体の遮蔽能力を1つずつ復活させることにより、磁化情報が記録される磁気記憶素子の数を減らしていき、最終的に磁気記憶素子群を構成する全ての磁気記憶素子に任意の情報を記録することができる。
なお、例えば101010のように、1つずつ異なる情報を記録する場合は磁気記憶素子群を構成する磁気記憶素子の数の工程を必要とするが、例えば110001のように同じ情報が2つ以上連続する場合は、情報が変わる所から次の記録を行うようにすればよい。
【0081】
上述の各実施の形態では、磁場遮蔽体の加熱を、第2の配線12,42,62から磁場遮蔽体5,35,52,53に直接電流を流して行っているが、本発明では、磁場遮蔽体の上或いは下に導体膜を形成し、この導体膜に電流を流して磁場遮蔽体の加熱を行っても良い。
【0082】
また、上述の各実施の形態では、第1の配線11,41,61に電流を流すことにより発生する電流磁場を用いて記憶層1,31A,31B,51A,51Bに磁場を印加している。
記憶層に磁場を印加する磁場印加手段は、このように配線に電流を流して電流磁場を発生させる構成が最も簡単で効果的であるが、本発明は、磁場印加手段は電流磁場を発生させる構成に限定されるものではなく、磁場印加手段をその他の構成としてもよい。
例えばフェリ磁性体などの温度により磁化が変化する材料を用いて磁場印加手段を構成し、温度変化により磁化を変化させて発生する磁場の大きさを変えるようにすることも可能である。
なお、磁場印加手段として、例えば電流磁場を発生させる配線の背面(記憶層とは反対の面)或いは側面に、磁束集中用の軟磁性体を配置した構造とすることも可能である。
【0083】
また、上述の各実施の形態では、磁気記憶素子上の部分のみを軟磁性体より成る磁場遮蔽体として、それ以外の部分は第2の配線(Cu等の導電性の良い材料が用いられる)としているが、本発明では、第2の配線(例えばワード線)を全て軟磁性体で構成しても良い。
【0084】
また、上述の各実施の形態では、記憶層の磁化状態の検出(読み出し)を行うために、記憶層に対してトンネル絶縁層を挟んで磁化固定層を配置して磁気トンネル接合素子を構成したが、本発明において記憶層の磁化状態を検出するための構成は、磁気トンネル接合素子に限定されるものではなく、その他の構成(例えば巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)やホール素子等)としてもよい。
【0085】
また、本発明に係る磁気記憶装置において、磁気記憶素子の記憶層に印加される磁場を制御するには、第1の配線(例えばビット線)、記憶層、第2の配線(例えばワード線)の順に配置した構成と、第1の配線(例えばビット線)、第2の配線(例えばワード線)、記憶層の順に配置した構成の、いずれの構成も可能である。
このうち、図3に示したように、第1の配線(例えばビット線)11、第2の配線(例えばワード線)12、記憶層1の順番に配置して、磁場遮蔽体5を磁場印加手段(第1の配線11)と記憶層1との間に配置するのが、記憶層にかかる磁場の変化を大きくできるので好都合である。
【0086】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【0087】
【発明の効果】
上述の本発明によれば、磁場遮蔽体を加熱していない場合には、磁気記憶素子の記憶層に誤って磁化状態の記録が行われないため、書き損じがなく、磁気記憶素子に正しく情報の記録を行うことが可能になる。これにより、磁気記憶素子に選択性良く記録を行うことができる。
また、磁場遮蔽体を加熱することにより記憶層への記録が行われるため、各磁気記憶素子の記憶層の保磁力等の磁気特性のばらつきがあっても、その影響を受けることなく、正確に情報を記録することができる。
従って、本発明によれば、安定して正確に情報を記録することができる磁気記憶装置を構成することが可能になる。
そして、記憶容量を大きくするために、磁気記憶素子を微小化するほど、各磁気記憶素子の記憶層の保磁力が増大し、磁気特性のばらつきも大きくなる傾向があるため、本発明は磁気記憶装置の記憶容量を増大させるために有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る磁気記憶素子の一実施の形態の概略構成図(断面図)である。
【図2】A、B 図1の磁気記憶素子の記録動作を説明する図である。
【図3】 図1の磁気記憶素子を用いた磁気記憶装置の概略構成図(斜視図)である。
【図4】A 従来のMRAMに用いられる磁気記憶素子の斜視図である。
B 図1の磁気記憶素子の斜視図である。
【図5】A 図4Aの磁気記憶素子のワード線電流とビット線電流を変えたときの磁化反転確率の変化を示す図である。
B 図4Bの磁気記憶素子のワード線電流とビット線電流を変えたときの磁化反転確率の変化を示す図である。
【図6】 本発明に係る磁気記憶素子の他の実施の形態の概略構成図(断面図)である。
【図7】A〜C 図6の構成における、磁場遮蔽体の温度による電流磁場の磁力線の状態の変化を示す図である。
【図8】A、B 図6の2つの磁気記憶素子に異なる情報を記録する方法を説明する図である。
【図9】 図6の構成において図8に示した記録動作を可能にする回路構成の一形態を示す図である。
【図10】 本発明に係る磁気記憶素子のさらに他の実施の形態の概略構成図(斜視図)である。
【図11】A、B 図10の磁気記憶素子のワード線電流とビット線電流を変えたときの磁化反転確率の変化を示す図である。
【図12】 材料の異なる2つの磁場遮蔽体を用いて並列に接続した実施の形態を示す図である。
【図13】 2つの磁場遮蔽体の一方に他の部品を設けた実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
1,31A,31B,51A,51B 記憶層、2,32 トンネル絶縁層、3,33 磁化固定層、4 磁気トンネル接合素子、5,35,53,54 磁場遮蔽体、10,40A,40B,60A,60B 磁気記憶素子、11,41,61 第1の配線、12,42,62 第2の配線、20 磁気記憶装置
Claims (6)
- 磁化状態を情報として保持する記憶層と、
上記記憶層に磁場を印加する磁場印加手段と、
上記磁場印加手段と上記記憶層との間に配置され、軟磁性体により成り、上記磁場印加手段からの磁場の少なくとも一部を遮蔽する磁場遮蔽体とを有する磁気記憶素子に対して、
上記磁場遮蔽体を加熱して、上記磁場遮蔽体の少なくとも一部の磁化を減少又は消失させた状態で、上記磁場印加手段から上記記憶層に磁場を印加して、上記記憶層に磁化状態の記録を行う
ことを特徴とする磁気記憶素子の記録方法。 - 磁化状態を情報として保持する記憶層と、該記憶層に磁場を印加する磁場印加手段と、該磁場印加手段と該記憶層との間に配置され、軟磁性体により構成され、上記磁場印加手段からの磁場の少なくとも一部を遮蔽する磁場遮蔽体とを有する磁気記憶素子と、
第1の配線と、
第2の配線とを有し、
上記第1の配線と上記第2の配線とが交差する交点に、それぞれ上記磁気記憶素子が配置されて成り、
上記第1の配線が、上記磁気記憶素子の上記磁場印加手段を構成し、該第1の配線から電流磁場が上記記憶層に印加され、
上記第2の配線により、上記磁場遮蔽体が加熱される
ことを特徴とする磁気記憶装置。 - 上記第2の配線が、上記磁場遮蔽体に電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気記憶装置。
- 複数の上記磁気記憶素子の各磁気記憶素子に対して、それぞれ構成の異なる上記磁場遮蔽体が配置されると共に、各上記磁場遮蔽体が共通の上記第2の配線により加熱される磁気記憶素子群が構成されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気記憶装置。
- 上記構成の異なる磁場遮蔽体は、それぞれ寸法が異なることを特徴とする請求項4に記載の磁気記憶装置。
- 上記構成の異なる磁場遮蔽体は、それぞれ用いられている軟磁性材料が異なることを特徴とする請求項4に記載の磁気記憶装置。
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