JP4178662B2 - フォークリフトのサイドシフト装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォーク等のアタッチメントをリフトブラケット前面に固着されたフィンガーバーに沿って車幅方向に移動することのできるフォークリフトのサイドシフト装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来の一般的なフォークリフトのサイドシフト装置は、図９に示すように、フォークリフトのマスト（図示省略）に沿って昇降されるリフトブラケット１０１の前面に固着された上下一対のフィンガーバー１０２，１０３に、アタッチメントとしてのフォーク１０４をシフター１０５を介して車幅方向に移動可能に取り付け、シフトシリンダ１１１によってシフト動作させる構成となっている。
シフター１０５は、アッパフィンガーバー１０２に略Ｌ形のアッパライナー１０９を介して係合されるアッパシフターバー１０６と、ロアフィンガーバー１０３の前面にロアライナー１１０を介して当接されるロアシフターバー１０７と、それら両シフターバー１０６，１０７を相互に結合する左右の縦板１０８とから構成されている。
アッパシフターバー１０６は逆Ｌ形に形成されており、アッパフィンガーバー１０２に形成された係合凸部１０２ａに上方から係合してその上面及び傾斜後面を摺動面としてシフト動作し、ロアシフターバー１０７はフィンガーバー１０３の前面を摺動面としてシフト動作するようになっている。
【０００３】
ところで、上下のフィンガーバー１０２，１０３にフォーク１０４が直に取り付けられる標準車の場合、規格によってアッパフィンガーバー１０２の係合凸部１０２ａの後面は、前方に規定の角度で傾斜することが定められている。そのため、アタッチメントとしてのサイドシフト装置を備えるに際しては、標準車をベースにすることから、アッパフィンガーバー１０２とアッパシフターバー１０６との係合についても当然の如く傾斜付きとしている。一方、ロアシフターバー１０７には外れ止め用としての左右２個のフック１０７ａが設けられ、このフック１０７ａがロアフィンガーバー１０３に対して所定の隙間Ｃを保有するように設定されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなアッパフィンガーバー１０２の係合凸部１０２ａの後面が傾斜面とされた構造のサイドシフト装置の場合、図１０に示すように、積載重量Ｗの分力がアッパフィンガーバー１０２の斜面に沿ってアッパシフターバー１０６及びアッパライナー１０９を押し下げる力ｗとして作用する。
一方、フォーク１０４には積載荷重による下傾方向（前下がり）のモーメントが作用するが、このモーメントによってロアシフターバー１０７には後ろ向きの力が作用し、アッパシフターバー１０６には前向きの力Ｆが作用する。そして、アッパシフターバー１０６に作用する前向きの力Ｆの分力がフィンガーバー１０２の係合凹部１０２ａの斜面に沿って該アッパシフターバー１０６及びアッパライナー１０９を持上げる力ｆとして作用する。
このため、例えばシフター１０５に標準よりも長いロングフォーク１０４を備えた場合、ロードセンターが大きくなり、それに伴いフォーク１０４に作用するモーメントも大きくなる。そして、このことに関連して前記アッパライナー１０９を持ち上げる力ｆが押し下げる力ｗを上回ると、図１１に示す如くシフター１０５の浮き上がり現象が発生する。その結果、ロアシフターバー１０７のフック１０７ａがロアフィンガーバー１０３に当接し、シフト不良が生ずるという問題があった。
【０００５】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シフターの浮き上がりを防止して円滑なシフト動作を確保することが可能なフォークリフトのサイドシフト装置を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明に係るフォークリフトのサイドシフト装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載した通りの構成を備えた。
従って、請求項１の発明によれば、フィンガーバーに後面を略直立面とする断面矩形状の係合凸部を設け、該係合凸部の少なくとも上面と後面にシフターバーがライナーを介して係合される構成としたことによって、シフターバー及びライナーを持上げる力が発生しなくなる。このため、シフターの浮き上がり現象が防止され、シフターの円滑なシフト動作が確保される。
また、上下のシフターバーは、フィンガーバーに対する係合部分が縦軸線を挟んで前後対称形に形成されており、しかもアタッチメントのフック掛止用として縦軸線を挟んで前後に大小２個の掛止凸部が対称的に備えられていることによって、上下のシフターバーを、前後反転して使用（組付け）することが可能となるため、車格の異なる２種のフォークリフトの共通部品として適用できる。即ち、部品の共通化を可能とするものであり、部品の管理が簡易化される。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。先ず、第１の実施の形態に係るフォークリフトのサイドシフト装置を図１〜図３に基づいて説明する。図１はサイドシフト装置の正面図、図２は図１のＡ−Ａ線断面図、図３はアッパフィンガーバーを示す側面図である。
図１において、図示省略のマストに沿ってリフトローラ１ａを介して昇降するリフトブラケット１の前面には、車幅方向に延在される横長でかつ上下一対のフィンガーバー２，３が所定間隔を置いて平行に固着され、それらフィンガーバー２，３の前面には、アタッチメントとしての左右一対のフォーク４を支持するためのシフター５が車幅方向に移動可能に配置される。
シフター５は、上下に所定間隔を置いて平行に配置された上下一対のシフターバー６，７と、それら両シフターバー６，７を左右両端において相互に結合する左右の縦板８とから構成されている。なお、両シフターバー６，７は図１に示すように、所定のシフト量を確保するためにフィンガーバー２，３の両端部からはみ出るようなサイズの横長に形成されている。
【００１１】
図２の側面図に示すように、上部のシフターバー６（以下、アッパシフターバーという）は、上部のフィンガーバー２（以下、アッパフィンガーバーという）に対してアッパライナー９を介して上方から被さるように係合されている。
本実施の形態においては、上部のフィンガーバー２は、図３に示すように、上側に断面矩形状の係合凸部２ａを備えており、該係合凸部２ａの後面は水平上面に対して直角（９０度）をなす直立面とされている。上部のシフターバー６（以下、アッパシフターバーという）は、その後側に係合凹部６ａを備えており、この係合凹部６ａがアッパフィンガーバー２の係合凸部２ａの上面及び後面に対して略Ｌ形のアッパライナー９を介して上方から被さるように係合されている。従って、アッパシフターバー６は、係合凸部２ａの上面及び後面を摺動面としてシフト動作する。
また、アッパシフターバー６の前側には、前記フォーク４のアッパフック４ａが掛止される掛止凸部６ｂが設けられ、この掛止凸部６ｂの後面が前方に所定の角度で傾斜されている。
【００１２】
一方、下側のシフターバー７（以下、ロアシフターバーという）は、下側のフィンガーバー３（以下、ロアフィンガーバーという）に対して従来と同様な構造で係合されている。即ち、ロアシフターバー７は、その後面側に左右一対のシフタープレート１０を備えており、そのシフタープレート１０がロアフィンガーバー３の前面に平板からなるロアライナー１１を介して摺動可能に当接されており、さらにそのシフタープレート１０の後面に外れ止め用として設けられたロアフック１２がロアフィンガーバー３の下向き係合凸部３ａに対して所定の隙間Ｃを残して対向されている。また、ロアシフターバー７の掛止凸部７ａには、フォーク４のロアフック４ｂが掛止されている。
そして、上記のようにフィンガーバー２，３に取り付けられたシフター５は、油圧式のシフトシリンダ１３によって車幅方向にシフト動作されるようになっている。なお、シフトシリンダ１３は図１に示すように、シリンダ本体がアッパフィンガーバー２に固定されたブラケット１４にピン１５によって連結され、ピストンロッドがシフター５の一方の縦板８に固定されたブラケット１６にピン１７によって連結されている。
【００１３】
本実施の形態に係るサイドシフト装置は上述のように構成したものである。従って、フォーク４への荷物の積載時において、該フォーク４には下傾方向（前下がり）のモーメントが作用し、これに伴いアッパシフターバー６がアッパライナー９を介してアッパフィンガーバー２の係合凸部２ａの後面に押付けられる。しかるに、本実施の形態においては、アッパフィンガーバー２の係合凸部２ａを断面矩形状に形成して係合凸部２ａの後面を直立面としてあるため、アッパシフターバー６及びアッパライナー９にはこれを持上げる力が発生しない。
従って、シフター５の浮き上がり現象が防止されることになり、シフター５の円滑なシフト動作を確保することができる。
【００１４】
次に、本発明の第２の実施の形態を図４〜図６に基づいて説明する。この第２の実施の形態では、リフトブラケット１の前面上部に固着されるアッパフィンガーバー２の上方とロアフィンガーバー３の下方には、シフター５のアッパシフターバー６とロアシフターバー７がそれぞれ縦並びに配置されている。また、アッパシフターバー６とロアシフターバー７とは左右の縦板８によって相互に結合されている。
そして、アッパフィンガーバー２の略中央上面には、図５に示すように、水平上面に対して前後面がそれぞれ９０度の直立面をなす断面矩形状の係合凸部２ａが形成されている。
これに対し、図６に示すように、アッパシフターバー６は上下面にそれぞれ凹部を持つ断面略Ｈ形に形成され、下面側の凹部が係合凸部２ａに対応する門形形状の係合凹部６ａとされ、上面側凹部の前壁を構成する凸部がフォーク４のアッパフック４ａが掛止される掛止凸部６ｂとされている。そして、図４に示すように、アッパシフターバー６の係合凹部６ａが凹形のアッパライナー９を介して係合凸部２ａに上方から被さるように係合し、係合凸部２ａの上面及び前後面を摺動面としてシフト動作される。
【００１５】
一方、図４に示すように、ロアシフターバー７は断面略Ｌ形に形成され、その直立部が断面矩形状に形成されたフィンガーバー３の前面にロアライナー１１を介して摺動可能に当接されている。また、ロアシフターバー７の水平部は、ロアフィンガーバー３の下面に対して所定の隙間Ｃを置いて対向するとともに、下面側にはフォーク４のロアフック４ｂが係合する係合凸部７ａを有する。また、ロアフィンガーバー３の前面上部には、ロアシフターバー７の直立部の前面に適宜隙間を置いて対向する外れ止め用としてのフック１８が設けられている。
上記のように取り付けられたシフター５は、シフトシリンダ１３によってシフト動作される。
【００１６】
上記のように、第２の実施の形態に係るサイドシフト装置においては、アッパシフターバー６の係合凹部６ａを略門形に形成し、その係合凹部６ａをアッパフィンガーバー２に形成された略矩形状の係合凸部２ａの上面及び前後面にそれぞれ密着状に係合する構成としたものである。従って、アッパシフターバー６に対して前方及び後方のいずれの方向から外力が付与された場合であっても、該アッパシフターバー６の移動を規制することができる。
このため、第１の実施の形態の場合と同様に、シフター５の浮き上がり現象を防止して円滑なシフト動作を確保できるとともに、前後方向の動きを規制することによってその係合状態を保持して不測の離脱事故を防止できる。
【００１７】
また、第２の実施の形態では、アッパフィンガーバー２の上方にアッパシフターバー６を、またロアフィンガーバー３の下方にロアシフターバー７をそれぞれ縦並びに配置したことによって、リフトブラケット１の前面からフォーク４の後面までの距離、即ちサイドシフト装置の前後方向厚みを従来に比べて薄くすることが可能となる。このため、ロードセンターが小さくなり、許容荷重を稼ぐことができる。
また、本実施の形態では、アッパシフターバー６を断面Ｈ形に形成したことによって、該アッパシフターバー６の曲げ剛性をアップすることができる。このことは、アッパシフターバー６に必要な強度を確保した上でその肉厚を薄く設定することが可能となるため、サイドシフト装置の軽量化に役立つ。
【００１８】
次に、本発明の第３の実施の形態を図７及び図８に基づいて説明する。この実施の形態は前述した第２の実施の形態の変更例であって、アッパシフターバー６とロアシフターバー７とのそれぞれに、両シフターバー６，７の縦軸線Ｐ−Ｐを挟んでフォーク掛止用の大小２個の掛止凸部を設けることによって、車格の異なる大小２種のフォークリフトに適用できるように構成したものである。
【００１９】
具体的には、アッパシフターバー６は断面Ｈ形に形成され、縦軸線Ｐ−Ｐを挟んだ前後両側上部にフォーク４のアッパフック４ａ用の掛止凸部６ｂ，６ｃが形成されている。また、ロアシフターバー７は断面逆Ｔ形に形成されており、同様に縦軸線Ｐ−Ｐを挟んで前後両側下部にフォーク４のロアフック４ｂ用の掛止凸部７ｂ，７ｃが形成されている。そして、縦軸線Ｐ−Ｐを挟んで一方の掛止凸部６ｂ，７ｂの高さ及び厚みが、例えば１及び２トン用のフォーク４に対応する寸法に設定され、他方の掛止凸部６ｃ、７ｃの高さ及び厚みが３トン用のフォーク４に対応する寸法に設定されている。
また、アッパフィンガーバー２の係合凸部２ａにアッパライナー９を介して係合するアッパシフターバー６の係合凹部６ａ及びロアフィンガーバー３の前面にロアライナー１１を介して当接されるロアシフターバー７の係合部分は、縦軸線Ｐ−Ｐを挟んで前後対称形に形成されている。
【００２０】
そして、上記のように構成されるアッパシフターバー６とロアシフターバー７は、左右の縦板８によって相互に結合される際に、その上下間隔が１及び２トン用のフォークのフック間隔又は３トン用のフォークのフック間隔に対応するように設定されることになる。図７は１及び２トンのフォークリフトに適用した場合を示し、図８が３トンのフォークリフトの適用した場合を示している。
従って、上記のように構成された第３の実施の形態によるときは、上下のシフターバー６，７を、車格を異にする２種のフォークリフトに関して共通部品とすることができ、部品管理の簡易化に役立つ。
【００２１】
なお、実施の形態では、アッパフィンガーバー２に設けられる断面矩形状の係合凸部２ａの後面を、水平上面に対して直角をなす直立面としたが、必ずしも直角に限定されるものではなく、直角に近い形であれば、多少の傾斜は差し支えないものである。要するに、アタッチメントに作用する前回りのモーメントによってアッパシフターバー６が係合凸部２ａの後面に押付けられた際にアッパシフターバー６の持上げ力が生ずるとしても、シフター５の浮き上がり現象に生じさせないような軽度の持上げ力しか発生しないような傾斜であれば何ら差し支えないのである。
また、本実施の形態は、アタッチメントとしてフォークの場合で説明したが、これに限定されるものではなく、例えばクランプであってもよい。また、フィンガーバー２，３は上下２枚としたが、一枚板であっても何ら差し支えない。
【００２２】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、フォークリフトのサイドシフト装置において、シフターの浮き上がりを防止して円滑なシフト動作を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】第１の実施の形態に係るフォークリフトのサイドシフト装置を示す正面図である。
【図２】図１のＡ−Ａ線断面図である。
【図３】アッパフィンガーバーを示す側面図である。
【図４】第２の実施の形態に係るサイドシフト装置の側断面図である。
【図５】アッパフィンガーバーを示す側面図である。
【図６】アッパシフターバーを示す側面図である。
【図７】第３の実施の形態に係るサイドシフト装置を示す側断面図であり、１トン及び２トン用のフォークリフトに適用した場合を示す。
【図８】同じく第３の実施の形態に係るサイドシフト装置を示す側断面図であり、３トン用のフォークリフトに適用した場合を示す。
【図９】従来のサイドシフト装置を示す側断面図である。
【図１０】アッパシフターバーの浮き上がり現象を示す説明図である。
【図１１】シフターが浮き上がった状態のサイドシフト装置を示す側断面図である。
【符号の説明】
１…リフトブラケット
２，３…フィンガーバー
２ａ…係合凸部
６ａ…係合凹部
６ｂ…掛止凸部
４…フォーク
５…シフター
６，７…シフターバー

Claims (1)

1. マストに沿って昇降可能なリフトブラケットの前面に横長のフィンガーバーが固着され、そのフィンガーバーにはアタッチメントを支持する上下一対のシフターバーが車幅方向に移動可能に係合される構造のフォークリフトのサイドシフト装置であって、
   前記フィンガーバーの上部に後面を略直立面とする断面矩形状の係合凸部を形成し、前記上側のシフターバーが少なくとも前記係合凸部の上面と後面にライナーを介して係合する構成とし、
   上下のシフターバーは、フィンガーバーに対する係合部分が縦軸線を挟んで前後対称形に形成されており、しかもアタッチメントのフック掛止用として縦軸線を挟んで前後に大小２個の掛止凸部が対称的に備えられている
   フォークリフトのサイドシフト装置。

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