JP4176934B2 - 磁性キャリア - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れていることによって、安定した帯電性を有する磁性キャリアに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法においては、セレン、OPC(有機半導体)、a−Si(アモルファス−シリコン)の如き光導電性物質を感光体として用い、種々の手段により静電気的潜像を形成し、この潜像に磁気ブラシ現像法を用いて、正規現像においては、潜像の極性と逆極性に帯電させたトナーを静電的に、反転現像においては、潜像の極性と同極性に帯電させたトナーを静電的に付着させ、顕像化する方式が採用されている。
【0003】
この現像方式においては、磁性キャリアと呼ばれる担体粒子が使用され、摩擦帯電により適量の正又は負の電気量をトナーに付与すると共に、磁気力を利用することによって磁石を内蔵する現像スリーブを介して、潜像を形成した感光体表面付近の現像領域にトナーを搬送している。
【0004】
従来、キャリア粒子としては、鉄粉粒子、フェライト粒子、磁性微粒子をバインダー樹脂中に分散した複合体粒子、所謂、バインダー型粒子が提案又は実用化されている。これらはその電気抵抗が、鉄粉粒子のように低いものからバインダー型粒子のように高いものまで様々であり、かつ、用いる現像機システムに合わせて最適な電気抵抗が存在することから、実用上これらキャリア粒子を磁性芯材粒子として用い、この磁性芯材粒子の粒子表面を種々の樹脂で被覆することにより電気抵抗を調整して使われる場合が多い。
【0005】
近年、この電子写真法は複写機やプリンターなど広く用いられており、細線や小文字、写真あるいはカラー原稿の如き様々な対象に対応できることが要求されている。さらに高画質化や高品位化、高速化及び連続化についても、合わせて要求されており、今後も益々これらの要求は高くなるものと思われる。
【0006】
これらの諸要求を満たすキャリア粒子として高速化、連続化によってもトナーを壊すことのない比重2〜4.5の軽量の複合体粒子が広く使用されている。
【0007】
キャリア粒子の特性向上の要求はとどまることがなく、特にフルカラー画像の高画質化を達成するためには、小粒径のトナーに対して磁性キャリアとしての帯電性に優れていることが要求される。
【0008】
即ち、トナーに対して均一な帯電量を与え、かつ長時間の使用によっても帯電量が変化せず、さらに環境の変化によっても帯電量が変化しないことが重要であり、このような諸特性をみたす磁性キャリアとしては耐久性に優れていることが強く要求されている。
【0009】
従来、磁性キャリアの耐久性を向上させるために、▲1▼磁性芯材粒子の粒子表面にシランカップリング剤等を含有するシリコーン樹脂被覆層を設けた磁性キャリア(特開昭60−140951号公報、特開昭62−121463号公報及び特開平7−104522号公報)、▲2▼磁性芯材粒子の粒子表面にカップリング剤を処理した上にさらにシリコーン樹脂を被覆した磁性キャリア(特開昭60−19156号公報及び特開昭62−121463号公報)、▲3▼磁性芯材粒子の粒子表面にアミノシランカップリング剤を処理し、それと反応し得る官能基を有する樹脂からなる被覆層を有する磁性キャリア(特開平4−198946号公報)が知られている。
【0010】
しかしながら、耐久性が優れている磁性キャリアは、現在最も要求されているところであるが、このような磁性キャリアはまだ得られていない。
【0011】
即ち、前出公知の▲1▼の磁性キャリアは、後出比較例に示す通り、長時間の使用に対して被覆層の剥離が生じ、結果として帯電量が変化してしまい画像上の問題が発生してしまう。
【0012】
前出公知の▲2▼及び▲3▼の磁性キャリアは、後出比較例に示す通り、いずれも、樹脂を被覆する際にカップリング剤が樹脂被覆層中に遊離し、結果として磁性芯材粒子と樹脂被覆層との接着性に十分な効果が見られず、長時間の使用で被覆層の剥離が生じ、画像上に問題が生じてしまう。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を解決した磁性キャリアを提供することである。
【0014】
本発明の目的は、耐久性が優れていることによってトナーと混合しての使用、所謂、現像剤としての長期の使用によっても被覆層の剥離が見られず、結果として安定した帯電量を保持し、画像的にも鮮明な画像を維持できる電子写真用磁性キャリアを提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、少なくとも無機化合物粒子とバインダー樹脂とを有する複合体粒子を有する磁性キャリアであって、
該無機化合物粒子の表面は、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、有機酸基、エステル基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基からなるグループから選択される1種又は2種以上の官能基(A)を有する親油化処理剤又はそれらの混合物で処理されており、
該複合体粒子の表面は、該親油化処理剤が有する該官能基(A)と異なる官能基(B)を1種又は2種以上有しているカップリング剤の1種又は2種以上で被覆されており、
該カップリング剤が有する官能基(B)は、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなるグループから選択される官能基であり、
該官能基(A)と該官能基(B)との組み合わせが、官能基(A):官能基(B)としたとき、i)有機酸基:アミノ基、ii)エステル基:アミノ基、iii)アルデヒド基:アミノ基、iv)ケトン基:アミノ基、v)ハロゲン化アルキル基:アミノ基、vi)アミノ基:エポキシ基、vii)エポキシ基:アミノ基、viii)アミノ基:メルカプト基、ix)メルカプト基:アミノ基のいずれかであることを特徴とする磁性キャリアである。
【0017】
本発明者らは、磁性キャリア芯材粒子として、無機化合物粒子とバインダー樹脂とを少なくとも有する複合体粒子を用い、この複合体粒子の表面を被覆している被覆層の剥離の抑制について鋭意研究を行なった結果、無機化合物粒子の表面を、特定の官能基(A)を有する親油化処理剤又はそれらの混合物で処理すると共に、複合体粒子の表面を被覆する被覆層として、前記親油化処理剤が有する官能基(A)と異なる特定の官能基(B)を有しているカップリング剤、又は、前記親油化処理剤が有する官能基(A)と異なる特定の官能基(C)を有している樹脂を用いることにより、被覆層を構成しているカップリング剤又は樹脂の剥離が生じ難いことを見出し、本発明に至った。
【0018】
以下、被覆層として、カップリング剤を用いる場合を「第1の発明」として説明し、樹脂を用いる場合を「第2の発明」として説明し、第1の発明及び第2の発明に共通する構成については、「本発明」として説明する。
【0019】
第1の発明において最も重要な点は、磁性キャリア芯材粒子を構成している無機化合物粒子粉末が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、有機酸基、エステル基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基から選ばれた1種又は2種以上の官能基(A)を含む親油化処理剤又はそれらの混合物で処理されているとともに、キャリア芯材粒子の粒子表面を、前記官能基(A)とは相違しており、且つエポキシ基、アミノ基及びメルカプト基から選ばれた1種又は2種以上の官能基(B)を有するカップリング剤で被覆した場合には、後出実施例に示す通り、従来公知の磁性キャリアに比べて、キャリア芯材粒子の粒子表面に被覆されているカップリング剤の剥離が生じ難いという事実である。
【0020】
第1の発明において、キャリア芯材粒子の粒子表面に被覆されているカップリング剤の剥離が生じ難い理由について、本発明者らは、無機化合物粒子の粒子表面に処理されている親油化処理剤に含まれる官能基(A)とカップリング剤の被覆層に含まれる官能基(B)とが反応することにより、キャリア芯材粒子の粒子表面に密着性と均一性に優れたカップリング剤の被覆層を形成することができたことによるものと考えている。
【0021】
そして第1の発明において、カップリング剤の被覆層上にさらに樹脂を被覆する磁性キャリアも同様に、複合体粒子の粒子表面に密着性と均一性に優れたカップリング剤の被覆層を形成することができたことに起因して、樹脂被覆層をも複合体粒子に強固に固着させることができるため、カップリング剤の被覆層がキャリア芯材粒子の粒子表面から剥離することによって樹脂被覆層がカップリング剤の被覆層とともに剥離するようなことがない。
【0025】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明に係る磁性キャリアについて述べる。本発明に係る磁性キャリアは、少なくとも無機化合物粒子とバインダー樹脂とを有する複合体粒子であって、その複合体粒子表面がカップリング剤又は樹脂で被覆されている。
【0026】
本発明における複合体粒子を構成する無機化合物粒子粉末は、水に溶解せず、又は水によって変質・変性しないものであればよい。
【0027】
無機化合物としては、磁性無機化合物粒子と非磁性無機化合物粒子とがある。磁性無機化合物粒子としては、マグネタイト粒子粉末、マグヘマイト粒子粉末、これらにケイ素の酸化物、ケイ素の水酸化物、アルミニウムの酸化物又はアルミニウムの水酸化物の1種又は2種以上を有する磁性鉄酸化物粒子粉末、バリウム、ストロンチウム又はバリウム−ストロンチウムを含むマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末、マンガン、ニッケル、亜鉛、リチウム及びマグネシウムから選ばれた1種又は2種以上を含むスピネル型フェライト粒子粉末の如き各種磁性鉄化合物粒子粉末が使用できる。これらの中でも、磁性鉄酸化物粒子粉末が好ましく使用できる。非磁性無機化合物粒子粉末としては、ヘマタイト粒子粉末の如き非磁性鉄酸化物粒子粉末、ゲータイト粒子粉末の如き非磁性含水酸化第二鉄粒子粉末、酸化チタン粒子粉末、シリカ粒子粉末、タルク粒子粉末、アルミナ粒子粉末、硫酸バリウム粒子粉末、炭酸バリウム粒子粉末、カドミウムイエロー粒子粉末、炭酸カルシウム粒子粉末、亜鉛華粒子粉末が使用できる。これらの中でも、非磁性鉄酸化物粒子粉末が好ましく使用できる。
【0028】
無機化合物粒子粉末の粒子形態は、立方体状、多面体状、球状、針状及び板状の如きいずれの形態の粒子をも使用することができる。無機化合物粒子の平均粒子径は、複合体粒子の平均粒子径よりも小さい粒子であればよく、0.01〜5.0μm、特に、0.1〜2.0μmの範囲のものが好ましい。
【0029】
磁性無機化合物粒子粉末と非磁性無機化合物粒子粉末とを混合して使用する場合には、これらの混合割合は、磁性無機化合物粒子粉末が少なくとも30質量%含有されていることが好ましい。
【0030】
混合する磁性鉄酸化物粒子の平均粒子径aと非磁性鉄酸化物粒子の平均粒子径bとの比は、a<bの関係にあることが好ましく、aが0.02乃至2μmであって、bが0.05〜5μmである場合において、1.5a<bの関係にあることがより好ましい。
【0031】
本発明において、無機化合物粒子粉末は、その全部又は一部が親油化処理剤で処理されている。
【0032】
本発明に用いられる親油化処理剤としては、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、有機酸基、エステル基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基からから選ばれた1種又は2種以上の官能基を有する有機化合物やそれらの混合物が使用でき、いずれも本発明の目的を達成することができる。これらのうち、粒度分布が均整な複合体粒子を得るためには、官能基としてはエポキシ基、アミノ基及びメルカプト基が好ましく、特に、温湿度の影響を受けがたく帯電付与能が安定した磁性キャリアを得るためには官能基としてエポキシ基が好ましい。官能基を有する有機化合物としてはカップリング剤が好ましく、より好ましくはシランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤であり、シラン系カップリング剤が特に好ましい。
【0033】
エポキシ基を有する有機化合物としては、エピクロルヒドリン、グリシドール、スチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体がある。
【0034】
エポキシ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランがある。
【0035】
アミノ基を有する有機化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、スチレン−(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体がある。
【0036】
アミノ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランがある。
【0037】
アミノ基を有するチタン系カップリング剤としては、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネートがある。
【0038】
メルカプト基を有する有機化合物としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸がある。
【0039】
メルカプト基を有するシラン系カップリング剤としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランがある。
【0040】
有機酸基を有する有機化合物としては、オレイン酸、ステアリン酸、スチレン−アクリル酸がある。
【0041】
エステル基を有する有機化合物としては、ステアリン酸エチル、スチレン−メタクリル酸メチルがある。
【0042】
ケトン基を有する有機化合物としては、シクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルエチルケトンがある。
【0043】
ハロゲン化アルキル基を有する有機化合物としては、クロロヘキサデカン、クロロデカンがある。
【0044】
アルデヒド基を有する有機化合物としては、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒドがある。
【0045】
本発明における親油化処理剤の処理量は、無機化合物粒子粉末に対し0.1〜5.0質量%、特に、0.1〜4.0質量%が好ましい。
【0046】
0.1質量%未満の場合には、カップリング剤又は樹脂の被覆を複合体粒子表面に密着させることが困難となり、さらに、親油化処理が不十分なために無機化合物粒子の含有量の高い複合体粒子が得ることが困難となる。
【0047】
5.0質量%を超える場合には、カップリング剤又は樹脂の被覆を複合体粒子表面に密着させることはできるが、生成した複合体粒子同士の凝集が生じ、複合体粒子の粒子サイズの制御が困難になる。
【0048】
本発明における複合体粒子を構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0049】
熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、アセトグアナミン樹脂、フラン樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂があり、これらの樹脂は単独でも2種以上を混合しても構わないが、少なくともフェノール樹脂を含有していることが好ましい。
【0050】
本発明における複合体粒子を構成するバインダー樹脂と無機化合物粒子との含有割合は、バインダー樹脂1〜20質量%と無機化合物粒子80〜99質量%であることが好ましい。
【0051】
本発明における複合体粒子は、平均粒子径が好ましくは10乃至100μm、より好ましくは10乃至60μm、さらに好ましくは10乃至50μm、最も好ましくは15乃至45μmの球状粒子であることが好ましい。さらにその特性は比重が2.5乃至4.5、特に、2.5乃至4.0であり、79.57kA/m(1000エルステッド)の磁界下での測定において、磁化の強さが15乃至60Am2/kg、特に、25乃至60Am2/kgであり、残留磁化(σr)が0.1乃至20Am2/kg、特に、0.1乃至10Am2/kgであり、比抵抗値が5×1011乃至5×1015Ωcm、特に、5×1011乃至8×1014Ωcmであることが好ましい。
【0052】
次に、第1の発明に係る磁性キャリアについて説明する。
【0053】
第1の発明に係る磁性キャリアは、上記の如き複合体粒子の粒子表面がエポキシ基、アミノ基及びメルカプト基から選ばれた1種又は2種以上の官能基(B)を有するカップリング剤で被覆されている。カップリング剤は、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基、特に1級アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。カップリング剤に含まれる官能基(B)は、複合体粒子中の無機化合物粒子粉末を処理している親油化処理剤に含まれる官能基(A)と異なる官能基(B)であることが必要であり、好ましくはこの官能基(A)と反応するものを選択することが好ましい。
【0054】
例えば、被覆カップリング剤に含まれる官能基(B)がエポキシ基である場合には、無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)はアミノ基、メルカプト基及び有機酸基の1種又は2種以上を選択すればよい。被覆カップリング剤に含まれる官能基(B)がアミノ基である場合には、無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)がエポキシ基、メルカプト基、有機酸基、エステル基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基の1種又は2種以上を選択すればよい。被覆カップリング剤に含まれる官能基(B)がメルカプト基である場合には、無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)がアミノ基、エポキシ基、有機酸基、エステル基、ケトン基及びアルデヒド基の1種又は2種以上を選択すればよい。
【0055】
なお、被覆カップリング剤に含まれる官能基(B)と無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)が、例えば共にエポキシ基であった場合には、お互いの相互作用がなく、また、共に同じアミノ基であった場合には、弱い水素結合を形成することによって幾分かの効果を持つが、その結合力は弱いものであり、後出比較例に示す通り、耐久テストにおける機械的衝撃において、被覆層の剥離が生じ易い。
【0056】
これら官能基(A)と(B)の官能基同士の反応は、シランカップリング剤を例にとると以下の通りである。
【0057】
【化1】
Figure 0004176934
(式中、Rは有機基を示し、R’はシリコーン残基を示し、〜はSiとNとが直接又は連結基を介して結合していることを表わす。)
【0058】
被覆カップリング剤の種類は、無機化合物粒子粉末の親油化処理に用いた前述の各種カップリング剤のいずれであっても第1の発明の目的を達成することができるが、得られる磁性キャリアの流動性を損なわないためには、シラン系カップリング剤がより好ましい。
【0059】
カップリング剤による被覆量は、複合体粒子に対し0.001〜5.0質量%、特に0.01〜2.0質量%であることが好ましい。
【0060】
0.001質量%未満の場合には、カップリング剤の被覆を複合体粒子表面に密着させることが困難となり、帯電量の耐久性に問題が生じることがある。
【0061】
5.0質量%を超える場合には、カップリング剤の被覆を複合体粒子表面に密着させることはできるが、余剰のカップリング剤の存在に起因して、長時間の使用による帯電量の変化が生起するという問題が生じることがある。
【0062】
複合体粒子表面のカップリング剤処理後、必要により更に樹脂被覆する場合には、樹脂の密着強度を高める上でその使用量が複合体粒子に対して0.05〜4.0質量%、特に、0.05〜2.0質量%であることが好ましい。
【0063】
カップリング剤で被覆されている第1の発明に係る磁性キャリア粉末の粒子サイズは、平均粒子径が10〜200μmが好ましい。平均粒子径が10μm未満の場合は、磁性キャリア粒子自体が感光体に飛んでしまい、画像上の欠陥を生じてしまう所謂、キャリア付着が生じ易くなる。平均粒子径が200μmを超える場合は、鮮明な画像を得ることが困難となる。
【0064】
特に高画質化、高品位化のためには、第1の発明に係る磁性キャリア粉末の粒子サイズは、平均粒子径が好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは10〜60μm、さらにより好ましくは15〜60μm、最も好ましくは15〜45μmであることが、写真原稿等の画像比率の高いトナー消費量の多いオリジナル連続プリントした際も、補給トナーの混合搬送性に優れる点で、より一層好ましい。
【0065】
カップリング剤で被覆されている第1の発明に係る磁性キャリアの特性は、前述した複合体粒子の有する特性と同様に、比重が2.5乃至4.5、特に、2.5乃至4.0であり、79.58kA/m(1000エルステッド)の磁界下での測定において、磁化の強さが15乃至60Am2/kg、特に、25乃至60Am2/kg、残留磁化(σr)が0.1乃至20Am2/kg、特に、0.1乃至10Am2/kgであることが好ましい。
【0066】
さらに、後述する磁性キャリアの帯電量の変化率が、好ましくは0〜25%、より好ましくは0〜20%であることが良い。
【0067】
次に、第2の発明に係る磁性キャリアについて説明する。
【0068】
第2の発明に係る磁性キャリアは、上記の如き複合体粒子の粒子表面がエポキシ基、アミノ基、有機酸基、エステル基、ケトン基及びハロゲン化アルキル基から選ばれた1種又は2種以上の官能基(C)を有する樹脂で被覆されている。樹脂に含まれる官能基(C)は、複合体粒子中の無機化合物粒子粉末を処理している親油化処理剤に含まれる官能基(A)と異なる官能基(C)であることが必要であり、好ましくはこの官能基(A)と反応するものを選択することが好ましい。
【0069】
例えば、被覆樹脂に含まれる官能基(C)がエポキシ基である場合には、無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)はアミノ基、メルカプト基及び有機酸基の1種又は2種以上を選択すればよい。被覆樹脂に含まれる官能基(C)がアミノ基である場合には、無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)がエポキシ基、メルカプト基、有機酸基、エステル基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基の1種又は2種以上を選択すればよい。被覆樹脂に含まれる官能基(C)が有機酸基である場合には、無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)がアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、エステル基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基の1種又は2種以上を選択すればよい。被覆樹脂に含まれる官能基(C)がエステル基である場合には、無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)がアミノ基、メルカプト基、有機酸基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基の1種又は2種以上を選択すればよい。被覆樹脂に含まれる官能基(C)がケトン基である場合には、無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)がアミノ基、メルカプト基、有機酸基、エステル基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基の1種又は2種以上を選択すればよい。被覆樹脂に含まれる官能基(C)がハロゲン化アルキル基である場合には、無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)がアミノ基、エポキシ基、有機酸基、メルカプト基、エステル基、ケトン基及びアルデヒド基の1種又は2種以上を選択すればよい。
【0070】
なお、被覆樹脂に含まれる官能基(C)と無機化合物粒子粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)が例えば共にエポキシ基同士であった場合には、お互いの相互作用がなく、また、共に同じアミノ基であった場合には、弱い水素結合を形成することによって幾分かの効果を持つが、その結合力は弱いものであり、後出比較例に示す通り、耐久テストにおける機械的衝撃において、被覆層の剥離が生じ易い。
【0071】
これら官能基(A)と(C)の官能基同士の反応は、シランカップリング剤を例にとると以下の通りである。
【0072】
【化2】
Figure 0004176934
(式中、Rは有機基を示し、R’はシリコーン残基を示し、〜はSiとNとが直接又は連結基を介して結合していることを表わす。)
【0073】
官能基を有する樹脂の種類は、エポキシ樹脂、エポキシ変成シリコーン樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルの如きエポキシ基を有するモノマーとの共重合物の如きエポキシ基を有する樹脂組成物;ポリアミド樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、アニリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、グアナミン樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルや(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアミノ基を有するモノマーとの共重合物の如きアミノ基を有する樹脂組成物;ポリアクリル酸、スチレンとアクリル酸との共重合物の如き有機酸基を有する樹脂組成物;ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリル変成シリコーン樹脂、アルキド変成シリコーン樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合物の如きエステル基を有する樹脂組成物;及びメチルエチルケトン樹脂の如きケトン基を有する樹脂組成物;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンの如きハロゲン化アルキル基を有する樹脂組成物が挙げられる。
【0074】
官能基(C)を有する樹脂の被覆量は、複合体粒子に対して0.05質量%以上である。0.05質量%未満の場合には、不十分かつ不均一な被膜となりやすく、帯電量を自由に制御することが困難となる。また、被覆量が多すぎると複合体粒子の電気抵抗が高くなりすぎ画像上の問題が発生してしまう。好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
【0075】
官能基(C)を有する樹脂で被覆されている第2の発明に係る磁性キャリア粉末の粒子サイズは、平均粒子径が10〜200μmが好ましい。平均粒子径が10μm未満の場合は、磁性キャリア粒子自体が感光体に飛んでしまい、画像上の欠陥を生じてしまう所謂、キャリア付着が生じ易くなる。平均粒子径が200μmを超える場合は、鮮明な画像を得ることが困難となる。
【0076】
特に高画質化、高品位化のためには、第2の発明に係る磁性キャリア粉末の粒子サイズは、平均粒子径が好ましくは10乃至100μm、より好ましくは10乃至60μm、さらに好ましくは10〜50μm、最も好ましくは15〜45μmであることが、写真原稿等の画像比率の高いトナー消費量の多いオリジナル連続プリントした際も、補給トナーの混合搬送性に優れる点で、より一層好ましい。
【0077】
官能基(C)を有する樹脂で被覆されている第2の発明に係る磁性キャリアの特性は、前述した複合体粒子の有する特性と同様に、比重が2.5乃至4.5、特に、2.5乃至4.0であり、79.58kA/m(1000エルステッド)の磁界下での測定において、磁化の強さが15乃至60Am2/kg、特に、25乃至60Am2/kg、残留磁化(σr)が0.1乃至20Am2/kg、特に、0.1乃至10Am2/kgであることが好ましい。
【0078】
さらに、後述する磁性キャリアの帯電量の変化率が、好ましくは0〜25%、より好ましくは0〜20%であることが良い。
【0079】
第2の発明において、官能基(C)を有する樹脂被覆中には、必要によりカップリング剤を樹脂固形分に対し0.1〜20.0質量%含んでいてもよい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤が好ましい。さらに好ましくはカップリング剤の自己縮合による強度低下を防止するためにカップリング剤を樹脂固形分に対し0.1〜10.0質量%であることが良い。
【0080】
本発明に係る磁性キャリアは必要により、官能基(B)を有するカップリング剤の被覆の上に更に樹脂を被覆しても良いし、或いは、官能基(C)を有する樹脂の被覆の上に重ねて樹脂を被覆してもよい。
【0081】
本発明において、更に被覆する、或いは、重ねて被覆する樹脂は、公知の樹脂であればいずれでもよく、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂が拳げられる。モノマーから重合して得られる重合体でもかまわない。耐久性や耐汚染性を考慮すればシリコーン樹脂が好ましい。
【0082】
更に樹脂を被覆する場合、或いは、重ねて樹脂を被覆する場合、その被覆量は、複合体粒子に対して0.05質量%以上が好ましく、0.05質量%未満の場合には、不十分かつ不均一な被膜となりやすく、帯電量を自由に制御することが困難となる。被覆量が多すぎると複合体粒子の電気抵抗が高くなりすぎ画像上の問題が発生してしまう。被覆量は、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは樹脂被覆時の粒子同士の合一化を防止するために0.2〜5質量%である。
【0083】
本発明において、表面に更に樹脂が被覆されている、或いは、表面に重ねて樹脂が被覆されている磁性キャリア粉末の粒子サイズは、平均粒子径が10〜200μmである。平均粒子径が10μm未満の場合は、磁性キャリア粒子自体が感光体に飛んでしまい、画像上の欠陥を生じてしまう所謂、キャリア付着が生じ易くなる。平均粒子径が200μmを超える場合は、鮮明な画像を得ることが困難となる。特に高画質化・高品位化のためには平均粒子径が10〜50μmの範囲がより好ましく、さらには平均粒子径15〜45μmが、写真原稿等の画像比率の高いトナー消費量の多いオリジナルを連続プリントした際も、補給トナーの混合搬送性に優れる点で、より一層好ましい。
【0084】
本発明において、表面に更に樹脂が被覆されている、或いは、表面に重ねて樹脂が被覆されている磁性キャリアの特性は、前述した複合体粒子の有する特性と同様に、比重が2.5乃至4.5、特に、2.5乃至4.0であり、79.58kA/m(1000エルステッド)の磁界下での測定において、磁化の強さが15乃至60Am2/kg、特に、25乃至60Am2/kg、残留磁化(σr)が0.1乃至20Am2/kg、特に、0.1乃至10Am2/kgである。
【0085】
さらに、後述する磁性キャリアの帯電量の変化率が、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%、さらに好ましくは0〜10%であることが良い。
【0086】
次に、本発明に係る磁性キャリアの製造方法について述べる。
【0087】
無機化合物粒子粉末の親油化処理剤による処理は、無機化合物粒子粉末にカップリング剤や有機化合物の溶液を添加混合して被覆処理すればよい。
【0088】
複合体粒子は、例えば、後述する実施例に記載されている通り、無機化合物粒子及び塩基性触媒の存在下で、フェノール類とアルデヒド類とを水性媒体中で撹拌しながら、フェノール類とアルデヒド類とを反応・硬化させて、無機化合物粒子とフェノール樹脂とを含有する複合体粒子を生成する方法や、無機化合物粒子粉末を含有したバインダー樹脂を粉砕する、所謂、混練粉砕法等によって製造することが出来る。磁性キャリアの粒径を容易に制御し、シャープな粒度分布にするために前者の方法が好ましい。
【0089】
なお、前者の方法で複合体粒子を生成する場合には、無機化合物粒子の種類及び量、反応に使用する水の量によって適当な剪断・圧密がかかるように撹拌装置の撹拌翼周速度を調整することによって、得られる複合体粒子の平均粒子径を所望の範囲に制御することができる。
【0090】
バインダー樹脂としてフェノール樹脂を用いた複合体粒子の製造は、例えば、水性媒体中にフェノール類とアルデヒド類と親油化処理を行なった無機化合物粒子粉末を分散させ、塩基性触媒を添加して反応させる方法が挙げられる。フェノール類とともにロジンの如き天然樹脂や、桐油、亜麻仁油の如き乾性油を混合して反応させる、所謂、変性フェノール樹脂を形成させる方法も挙げられる。
【0091】
バインダー樹脂が特にフェノール樹脂である場合には、適度な吸着水を保持しており、カップリング剤の加水分解を促進し、強固な被覆を形成するために好ましい。
【0092】
バインダー樹脂としてエポキシ樹脂を用いた複合体粒子の製造は、例えば、水性媒体中にビスフェノール類とエピハロヒドリンと親油化処理を行なった無機化合物粒子粉末を分散させ、アルカリ水性媒体中で反応させる方法が挙げられる。
【0093】
バインダー樹脂として、メラミン樹脂を用いた複合体粒子の製造は、例えば、水性媒体中にメラミン類とアルデヒド類と、親油化処理を行なった無機化合物粒子粉末を分散させ、弱酸性触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0094】
その他の熱硬化性樹脂を用いた複合体粒子の製造方法としては、例えば、親油化処理を行なった無機化合物粒子粉末を種々の樹脂と混練した後、粉砕し、さらには球形化処理を行なう方法が挙げられる。
【0095】
親油化処理を行なった無機化合物粒子とバインダー樹脂とを有する複合体粒子は、樹脂をより硬化させるために必要により熱処理を施すことも行なわれる。特に減圧下あるいは不活性雰囲気下で行うことが無機化合物微粒子の酸化防止のために好ましい。
【0096】
第1の発明において、複合体粒子のカップリング剤による被覆処理は、常法によりカップリング剤を水や溶剤に溶解したものに、複合体粒子を浸漬した後、濾過及び乾燥する方法や、複合体粒子を撹拌しながらカップリング剤の水溶液や溶媒液をスプレーし、乾燥する方法等が用いられる。特に複合体粒子の合一化を防止し、均一な被覆層を形成するために、撹拌しながら処理する方法が好ましい。
【0097】
第2の発明において、複合体粒子の樹脂による被覆処理は、周知の方法によって行なえばよく、例えば、ヘンシェルミキサーや、ハイスピードミキサーを用いて複合体粒子と樹脂とを乾式混合する方法、樹脂を含む溶剤中へ複合体粒子を含浸する方法、スプレードライヤーを用いて複合体粒子に樹脂を吹きつける方法のいずれであってもよい。
【0098】
さらに、複合体粒子とフェノール類、アルデヒド類、或いはメラミン類及びアルデヒド類とを水性媒体中で反応させフェノール樹脂やメラミン樹脂を被覆する方法や、アクリロニトリルと他のビニル系モノマーとの混合物を水性媒体中で重合させアクリロニトリル系重合体を被覆する方法や、ラクタム類のアニオン重合によりポリアミド樹脂を被覆する方法も用いることができる。
【0099】
本発明において、必要により行われる樹脂の被覆は、周知の方法によって行なえばよく、例えば、ヘンシェルミキサーや、ハイスピードミキサーを用いてカップリング剤、或いは、樹脂によって被覆された複合体粒子と樹脂とを乾式混合する方法、樹脂を含む溶剤中へカップリング剤、或いは、樹脂によって被覆された複合体粒子を含浸する方法、スプレードライヤーを用いてカップリング剤、或いは、樹脂によって被覆された複合体粒子に樹脂を吹きつける方法のいずれであってもよい。
【0100】
さらに、カップリング剤、或いは、樹脂によって被覆された複合体粒子とフェノール類、アルデヒド類、或いはメラミン類及びアルデヒド類とを水性媒体中で反応させフェノール樹脂やメラミン樹脂を被覆する方法や、アクリロニトリルと他のビニル系モノマーとの混合物を水性媒体中で重合させアクリロニトリル系重合体を被覆する方法や、ラクタム類のアニオン重合によりポリアミド樹脂を被覆する方法も用いることができる。
【0101】
本発明の磁性キャリアのより具体的な構成及び作用効果を、以下、実施例及び比較例により明らかにするが、ここで用いる特性値の測定方法、キャリアと共に用いるトナーの製造例、及び画像特性の評価方法について述べる。
【0102】
(特性値の測定方法)
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所株式会社製)により計測した重量平均粒子径を意味し、また、粒子の粒子形態は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−800)で観察したものである。
【0103】
球形度の測定は、走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−800)により球状複合体粒子をランダムに250個以上抽出し、平均長軸径l及び平均短軸径wを求め、下記式によって算出した。
【0104】
球形度=l/w
l:球形複合体粒子の平均長軸径
w:球形複合体粒子の平均短軸径
【0105】
磁化値及び残留磁化値は、振動試料型磁力計VSM−3S−15(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場79.58kA/m(1000エルステッド)のもとで測定した値で示した。
【0106】
真比重は、マルチボリウム密度計(マイクロメリティクス製)で測定した値で示した。
【0107】
体積固有抵抗は、ハイレジスタンスメーター4329A(横河ヒューレットパッカード製)で測定した値で示した。
【0108】
磁性キャリアの耐久性テストに係る帯電量の測定は以下のように行なった。
【0109】
磁性キャリア粒子粉末50gを100ccガラス製サンプル瓶の中に入れ、ふたをした後、ペイントコンディショナー(RED DEVIL社製)にて、10時間振とうさせる。振とう前後の各々のサンプルについて帯電量を測定した。
【0110】
なお、トナーの帯電量は、磁性キャリア粒子粉末95質量部と後述のトナー製造例に示すトナー5質量部を十分に混合し、ブローオフ帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。磁性キャリアの帯電量の変化率は、初期の帯電量の値と10時間振とう後の帯電量の値との差を初期の帯電量の値で割った値に100を乗じて百分率を算出する。
【0111】
(トナー製造例)
・プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸とトリメリット酸を縮合して得られたポリエステル樹脂 100質量部
・カーボンブラック 4質量部
・荷電制御剤(ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛化合物) 2質量部
・低分子量ポリオレフィン 4質量部
上記原料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸押出式混練機により溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による粉砕機で微粉砕後、多段分割式風力分級機で分級して、重量平均粒径7.5μmの黒色粉体を得た。
【0112】
上記黒色粉体100質量部と疎水性酸化チタン1質量部をヘンシェルミキサーで混合して黒色トナーを得た。
【0113】
(画像特性)
画像特性の面から評価した磁性キャリアの耐久性は、画像濃度、ベタ均一性及びカブリで示した。
【0114】
即ち、市販のフルカラー複写機CLC700(キャノン製)を使用して、画像比率10%のオリジナル原稿を用いて、23℃/50%下で、連続1万枚の複写を行った時の画像濃度、ベタ均一性及びカブリで示した。
【0115】
なお、上記トナー製造例に示した黒色トナーを用い、トナー濃度をトナー及び磁性キャリアの混合物の質量比を基準として、5%とした。
【0116】
画像濃度の評価は、反射濃度計RD918(マクベス社製)で測定される画像濃度が1.5である直径20mmの円を5ヶ所設けたオリジナル原稿を複写し、画像部の中心の画像濃度を反射濃度計RD918で測定し、5ヶ所の平均値とした。
【0117】
ベタ均一性の評価は、上記の画像濃度の評価で測定した5箇所の画像濃度の最大値と最小値との差を求めた。
A:0.04以下 B:0.04を超え0.08以下
C:0.08を超え0.12以下 D:0.12を超える
【0118】
カブリの評価は、画像形成後の非画像部(白地部)を10点測定した反射濃度の最悪値(Ds)から画像形成前の用紙を10点測定した反射濃度の平均値(Dr)を引いた値(Dr−Ds)〔カブリ量〕によって行った。
【0119】
カブリ量1.2%以下は実質的にカブリの無い良好な画像であり、カブリ量が1.2%を超えるとカブリの目立った不鮮明な画像である。
A:0.4%以下 B:0.4%を超え0.8%以下
C:0.8%を超え1.2%以下 D:1.2%を超える
【0120】
なお、反射濃度の測定は、反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.LTD社製REFLECTOMETER MODEL TC−6DS)を用いた。
【0121】
【実施例】
下記の実施例のうち、実施例1〜13が第1の発明(本発明)の例である。
<磁性キャリア芯材粒子粉末の製造例>
磁性キャリア芯材粒子粉末Aの製造
ヘンシェルミキサー内に、平均粒径が0.24μmの粒子表面にアルミニウムの酸化物が存在している球状マグネタイト粒子粉末500gと0.4μmの粒状ヘマタイト粒子粉末500gとを仕込み、十分に良く撹拌して得られた混合粉末に、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤KBM−403(信越化学工業株式会社製)7.5gを添加・混合して、上記混合粉末を構成する粒子の粒子表面をエポキシ基を有するシラン系カップリング剤で処理した。
【0122】
1リットルのフラスコに、フェノール125g、37%ホルマリン187.5g、粒子表面がエポキシ基を有するシラン系カップリング剤で処理されている上記混合粉末1kg、25%アンモニア水37.5g及び水125gを仕込み、撹拌しながら60分間で85℃に上昇させた後、同温度で120分間反応・硬化させることにより、フェノール樹脂と無機化合物粒子からなる複合体粒子の生成を行った。
【0123】
次に、フラスコ内の内容物を30℃に冷却した後、内容物を3リットルのフラスコに移し、この中に1.5リットルの水を添加した後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗し、風乾した。
【0124】
次いで、これを減圧下(5mmHg以下)に、150〜180℃で乾燥して複合体粒子(以下、磁性キャリア芯材粒子粉末Aという)を得た。
【0125】
この磁性キャリア芯材粒子粉末Aは、粒子表面にアルミニウムの酸化物が存在している球状マグネタイト粒子の含有量が44.0質量%、粒状ヘマタイト粒子の含有量が44.2質量%の球状(球形度1.1)粒子であり、平均粒子径が35μm、比重が3.55であって、79.58kA/m(1000エルステッド)での磁界下における磁化値(σ79.58)が29Am2/kg、残留磁化値(σr)が3.0Am2/kg、体積固有抵抗が1×1012Ωcmであった。
【0126】
磁性キャリア芯材粒子粉末Bの製造
ヘンシェルミキサー内に、平均粒径が0.31μmの球状マグネタイト粒子粉末1000gを仕込み十分に良く撹拌した後、アミノ基を有するシランカップリング剤KBM−602(信越化学工業株式会社製)5.0gを添加・混合して、上記マグネタイト粒子の粒子表面をアミノ基を有するカップリング剤で処理した。
【0127】
1リットルの四つ口フラスコに、水250ml、水酸化ナトリウム27.5g、ビスフェノールA100g、エピクロルヒドリン50g、無水フタル酸10g及び粒子表面がアミノ基を有するシランカップリング剤で処理されている上記マグネタイト粒子粉末1kgを投入し、撹拌した。85℃まで昇温し、同温度で2時間撹拌を続けて磁性キャリア芯材粒子粉末の生成を行なった。
【0128】
次に、フラスコ内の内容物を30℃に冷却し、1.5リットルの水を添加した後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗し、乾燥した。
【0129】
このようにして、磁性キャリア芯材粒子粉末Bを得た。
【0130】
この磁性キャリア芯材粒子粉末Bは、球状マグネタイト粒子の含有量が87.6質量%の球状(球形度1.1)粒子であり、平均粒子径が25μm、比重が3.52であって、磁化値(σ79.58)が58Am2/kg、残留磁化値(σr)が5.1Am2/kg、体積固有抵抗が4×107Ωcmであった。
【0131】
磁性キャリア芯材粒子粉末Cの製造
0.31μmの球状マグネタイト粒子粉末800g及び平均粒径0.60μmの粒状ヘマタイト粒子粉末200gの混合粉末を、前記芯材粒子粉末Aの製造例の場合と同様にしてエポキシ基を有するシランカップリング剤KBM−403(信越化学工業株式会社製)0.50質量%を用いて親油化処理を行なった。
【0132】
1リットルのフラスコ内にフェノール120g、37%ホルマリン182.5g、粒子表面がエポキシ基を有するシランカップリング剤で処理されている上記混合粉末1kg、25%アンモニア水33.5g及び水110gを仕込み、撹拌しながら60分間で85℃に上昇させた後、同温度で120分間反応・硬化させることにより、フェノール樹脂と処理済混合粉末からなる磁性キャリア芯材粒子粉末の生成を行った。
【0133】
次に、フラスコ内の内容物を30℃に冷却し、1.5リットルの水を添加した後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗し、風乾した。
【0134】
このようにして、磁性キャリア芯材粒子粉末Cを得た。
【0135】
この磁性キャリア芯材粒子粉末Cは、球状マグネタイト粒子の含有量が70.4質量%及び粒状ヘマタイト粒子の含有量が17.7質量%の球状(球形度1.2)粒子であり、平均粒子径が45μm、比重が3.56であって、磁化値(σ79.58)が47Am2/kg、残留磁化値(σr)が4.5Am2/kg、体積固有抵抗が2×109Ωcmであった。
【0136】
磁性キャリア芯材粒子粉末Dの製造
平均粒径0.24μmの球状マグネタイト粒子粉末900g及び平均粒径0.30μmの粒状酸化チタン粒子粉末100gの混合粉末を、前記芯材粒子粉末Aの製造例の場合と同様にしてアミノ基を有するシランカップリング剤KBM−602(信越化学工業株式会社製)0.70質量%を用いて親油化処理を行なった。
【0137】
1リットルのフラスコ内にフェノール130g、37%ホルマリン185g、粒子表面がアミノ基を有するシランカップリング剤で処理されている上記混合粉末1kg、25%アンモニア水35g及び水110gを仕込み、撹拌しながら60分間で85℃に上昇させた後、同温度で120分間反応・硬化させることにより、フェノール樹脂と処理済混合粉末からなる磁性キャリア芯材粒子粉末の生成を行った。
【0138】
次に、フラスコ内の内容物を30℃に冷却し、1.5リットルの水を添加した後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗し、乾燥した。
【0139】
このようにして、磁性キャリア芯材粒子粉末Dを得た。
【0140】
この磁性キャリア芯材粒子粉末Dは、球状マグネタイト粒子の含有量が79.0質量%及び粒状酸化チタン粒子の含有量が8.8質量%の球状(球形度1.2)粒子であり、平均粒子径が50μm、比重が3.57であって、磁化値(σ79.58)が52Am2/kg、残留磁化値(σr)が4.8Am2/kg、体積固有抵抗が2×108Ωcmであった。
【0141】
磁性キャリア芯材粒子粉末Eの製造
平均粒径0.26μmの多面体状マグネタイト粒子粉末1000gを、前記芯材粒子粉末Aの製造例の場合と同様にして、アミノ基を有するシランカップリング剤(KBM602)0.50質量%を用いて親油化処理を行なった。
【0142】
1リットルのフラスコに、水250ml、水酸化ナトリウム30g、ビスフェノールA110g、エピクロルヒドリン55g、無水フタル酸12g及び粒子表面にアミノ基を有するシランカップリング剤で処理されている上記マグネタイト粒子粉末1kgを投入し、撹拌した。85℃まで昇温し、同温度で2時間撹拌を続けて磁性キャリア芯材粒子の生成を行なった。
【0143】
次に、フラスコ内の内容物を30℃に冷却し、1.5リットルの水を添加した後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗し、風乾した。
【0144】
このようにして、磁性キャリア芯材粒子粉末Eを得た。
【0145】
この磁性キャリア芯材粒子粉末Eは、球状マグネタイト粒子の含有量が87.2質量%の球状(球形度1.2)粒子であり、平均粒子径が60μm、比重が3.56であって、磁化値(σ79.58)が57Am2/kg、残留磁化値(σr)が7.0Am2/kg、体積固有抵抗が2×107Ωcmであった。
【0146】
<磁性キャリア芯材粒子のカップリング剤による表面の処理>
実施例1
万能撹拌機(5XDML:株式会社ダルトン製)内に、磁性キャリア芯材粒子粉末Aを入れ品温が50℃になるまで撹拌する。次に、アミノ基を有するシランカップリング剤KBM−602(信越化学工業株式会社製)0.3質量%をメタノールに溶解した液を添加して、品温を70℃になるまで昇温し、その温度で2時間撹拌を行ない、磁性キャリア芯材粒子粉末Aの粒子表面をアミノ基を有するシランカップリング剤で被覆して、磁性キャリアを製造した(以下、磁性キャリア粒子粉末Iとする)。
【0147】
アミノ基を含有するシランカップリング剤による被覆は、電子顕微鏡観察の結果、充分かつ均一であり、被覆量は0.23質量%であった。得られた磁性キャリア粒子粉末Iは、表1に示す通り、平均粒子径35μm、カサ密度1.88g/ml、比重3.53、電気抵抗値6×1011Ωcm、磁化値(σ79.58)が29Am2/kg、残留磁化値(σr)が3.0Am2/kg、帯電量の変化率は8%(初期−60μC/g、振とう後−55μC/g)であった。画像特性は、表3に示す通りであった。
【0148】
実施例2
万能撹拌機(5XDML:株式会社ダルトン製)内に、磁性キャリア芯材粒子粉末Aを入れ品温が50℃になるまで撹拌する。次に、アミノ基を有するカップリング剤KBM−903(商品名:信越化学工業株式会社製)0.15質量%をメタノールに溶解した液を添加して、品温を70℃になるまで昇温し、その温度で2時間撹拌を行ない、カップリング剤で表面処理された磁性キャリアIIを得た。磁性キャリア粒子粉末IIの諸特性を表1に示す。画像特性は表3に示す通りであった。
【0149】
実施例3〜7及び比較例1〜3
キャリア芯材粒子粉末の種類、粒子表面に被覆させるカップリング剤の有無、種類及び量を種々変化させた以外は、実施例1と同様にして磁性キャリアIII〜Xを得た。実施例3〜7の各実施例で得られた磁性キャリア粒子粉末は、いずれも電子顕微鏡観察の結果、カップリング剤による被覆が充分かつ均一であった。
【0150】
得られた磁性キャリア粒子粉末III〜Xの諸特性を表1に示した。また、画像特性は表3に示す通りであった。
【0151】
なお、比較例1は、粒子表面にカップリング剤による処理がされていない磁性キャリア芯材粒子粉末である。
【0152】
比較例2及び3は、混合粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)と被覆カップリング剤に含まれる官能基(B)が同一の粒子である。
【0153】
この比較例2及び3で得られたカップリング剤によって被覆されている磁性キャリアは、耐久テストにおいて帯電量が若干大きく変化してしまった。これは、親油化処理剤の官能基(A)とカップリング剤の官能基(B)とが同じエポキシ基(比較例2)及び同じアミノ基(比較例3)であるために、磁性キャリア芯材粒子と被覆カップリング剤との接着性が弱く、耐久テストにおける機械的衝撃において被覆層が剥離して、帯電量が変化したものと考えられる。
【0154】
【表1】
Figure 0004176934
【0155】
<カップリング剤処理されている磁性キャリア芯材粒子の樹脂による被覆>
実施例8
万能撹拌機内の磁性キャリア粒子粉末I 1kgを70℃で撹拌しながら、シリコーン樹脂KR−221(信越化学工業株式会社製)を固形分として10gとカップリング剤KBM903(信越化学工業株式会社製)0.3gとをシリコーン樹脂の固形分濃度が20%になるようにトルエンで希釈した液を添加する。以後、同温度で2時間撹拌した後、窒素ガスによる不活性雰囲気下で150℃で2時間熱処理を行なった。シリコーン樹脂による被覆は、電子顕微鏡観察の結果、十分且つ均一であった(以下、磁性キャリア粒子粉末XIとする。)。
【0156】
得られた磁性キャリア粒子粉末XIの諸特性を表2に示す。画像特性は、表3に示す通りであった。
【0157】
実施例9
万能撹拌機内の磁性キャリア粒子粉末IIを70℃で撹拌しながら、シリコーン樹脂SR2411(東レ・ダウコーニング株式会社製)を固形分として15gとカップリング剤KBM602(信越化学工業株式会社製)0.7gとをシリコーン樹脂の固形分濃度が20%になるようにトルエンで希釈した液を添加する。以後、同温度で2時間撹拌した後、窒素ガスによる不活性雰囲気下で200℃で2時間熱処理を行なった。シリコーン樹脂による被覆は、電子顕微鏡観察の結果、十分且つ均一であった(以下、磁性キャリア粒子粉末XIIとする。)。
【0158】
得られた磁性キャリア粒子粉末XIIの諸特性を表2に示す。画像特性は、表3に示す通りであった。
【0159】
<樹脂による被覆>
実施例10〜13及び比較例4〜6
磁性キャリア粒子の種類並びに被覆樹脂の種類及び量を種々変化させた以外は、実施例8と同様にして磁性キャリア粒子の粒子表面に樹脂が被覆されている磁性キャリアXIII〜XIXを得た。この時の主要条件及び諸特性を表2に示す。画像特性は、表3に示す通りであった。
【0160】
比較例4で得られた磁性キャリア芯材粒子の粒子表面が樹脂によって直接被覆されている磁性キャリアは、耐久テストにおいて帯電量が大きく変化してしまった。これは、磁性キャリア芯材粒子と被覆樹脂との接着性が弱く耐久テストにおける機械的衝撃において被覆層が剥離して、帯電量が変化したものと考えられる。
【0161】
比較例5及び6で得られた磁性キャリアXVIII及びXIXは、磁性キャリア芯材粒子の粒子表面にカップリング剤被覆及び該被覆上に樹脂が被覆されている粒子であるが、耐久テストにおいて帯電量が若干大きく変化してしまった。これは、球状マグネタイト粒子の粒子表面に処理されている親油化処理剤の官能基と被覆カップリング剤の官能基とが同じエポキシ基(比較例5)及び同じアミノ基(比較例6)であるため磁性キャリア芯材粒子とカップリング剤被覆との接着力が弱く、耐久テストにおける機械的衝撃においてカップリング剤被覆とともに樹脂被覆が剥離して、帯電量が変化したものと考えられる。
【0162】
【表2】
Figure 0004176934
【0163】
【表3】
Figure 0004176934
【0164】
<磁性キャリア芯材粒子の樹脂による表面の処理>
実施例14
万能撹拌機(5XDML:株式会社ダルトン製)内に、磁性キャリア芯材粒子粉末A1000gを入れ品温が50℃になるまで撹拌する。次に、アミノ基を有するスチレン−アクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体を固形分として20gをトルエンに溶解した液に添加して、品温が50℃を維持するように加温し、その温度で2時間撹拌を行ない、磁性キャリア芯材粒子粉末Aの粒子表面をアミノ基を有するスチレン−アクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体(モル比=70:30,Mw=12,000)で被覆して、磁性キャリアを製造した(以下、磁性キャリア粒子粉末1とする)。
【0165】
アミノ基を含有するスチレン−アクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体による被覆は、電子顕微鏡観察の結果、充分かつ均一であり、被覆量は1.7質量%であった。得られた磁性キャリア粒子粉末1は、表4に示す通り、平均粒子径35μm、カサ密度1.90g/ml、比重3.53、電気抵抗値5×1015Ωcm、磁化値(σ79.58)が29Am2/kg、残留磁化値(σr)が3.1Am2/kg、帯電量の変化率は3%(初期−72μC/g、振とう後−70μC/g)であった。画像特性は、表5に示す通りであった。
【0166】
実施例15
万能撹拌機(5XDML:株式会社ダルトン製)内に、磁性キャリア芯材粒子粉末Bを入れ品温が50℃になるまで撹拌する。次に、エステル基を有するアクリル変性シリコーン樹脂20gを固形分としてトルエンに溶解した液を添加して、品温を70℃になるまで昇温し、その温度で2時間撹拌を行なった。さらに不活性ガス雰囲気下、200℃の温度で熱処理を行いアクリル変性シリコーン樹脂の硬化を行い、アクリル変性シリコーン樹脂で表面処理された磁性キャリア2を得た。磁性キャリア粒子粉末2の諸特性を表4に示す。画像特性は表5に示す通りであった。
【0167】
実施例16〜20及び比較例7〜10
キャリア芯材粒子粉末の種類、粒子表面に被覆させる樹脂の種類、量及び官能基の有無を種々変化させた以外は、実施例14と同様にして磁性キャリア3〜11得た。実施例16〜20の各実施例で得られた磁性キャリア粒子粉末は、いずれも電子顕微鏡観察の結果、官能基を有する樹脂による被覆が充分かつ均一であった。
【0168】
得られた磁性キャリア粒子粉末3〜11の諸特性を表4に示した。画像特性は表5に示す通りであった。
【0169】
なお、比較例7は、粒子表面に官能基を有さない樹脂が被覆されている磁性キャリア芯材粒子粉末である。
【0170】
比較例8〜10は、混合粉末を処理した親油化処理剤に含まれる官能基(A)と被覆樹脂に含まれる官能基(C)が同一の粒子である。
【0171】
この比較例8〜10で得られた官能基(C)を有する樹脂によって被覆されている磁性キャリアは、耐久テストにおいて帯電量が実施例14と比較して若干大きく変化してしまった。これは、親油化処理剤の官能基(A)と樹脂の官能基(C)とが同じエポキシ基(比較例8及び9)及び同じアミノ基(比較例10)であるために、磁性キャリア芯材粒子と被覆樹脂との接着性が弱く、均一な被覆層が形成されず、画像特性が悪化したものと考えられる。
【0172】
【表4】
Figure 0004176934
【0173】
【表5】
Figure 0004176934
【0174】
【発明の効果】
本発明に係る磁性キャリアは、密着性及び均一性に優れた、官能基(B)を有するカップリング剤被覆層、又は、官能基(C)を有する樹脂被覆層の形成が可能であることにより、複合体粒子へのカップリング剤被覆層、又は、樹脂被覆層の接着がより強固となることに起因して、長時間の使用によっても樹脂被覆の剥離が生じることがなく、安定した帯電性を有しているので、磁性キャリアとして好適である。
【0175】
さらに、本発明に係る磁性キャリアを用いた現像剤は、長時間の使用によっても磁性キャリア粒子表面の樹脂被覆が剥離することがないため、安定した帯電性を有しているので、画像濃度、ベタ均一性、カブリ抑制等が優れた画像特性が得られる。

Claims (37)

  1. 少なくとも無機化合物粒子とバインダー樹脂とを有する複合体粒子を有する磁性キャリアであって、
    該無機化合物粒子の表面は、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、有機酸基、エステル基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基からなるグループから選択される1種又は2種以上の官能基(A)を有する親油化処理剤又はそれらの混合物で処理されており、
    該複合体粒子の表面は、該親油化処理剤が有する該官能基(A)と異なる官能基(B)を1種又は2種以上有しているカップリング剤の1種又は2種以上で被覆されており、
    該カップリング剤が有する官能基(B)は、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなるグループから選択される官能基であり、
    該官能基(A)と該官能基(B)との組み合わせが、官能基(A):官能基(B)としたとき、i)有機酸基:アミノ基、ii)エステル基:アミノ基、iii)アルデヒド基:アミノ基、iv)ケトン基:アミノ基、v)ハロゲン化アルキル基:アミノ基、vi)アミノ基:エポキシ基、vii)エポキシ基:アミノ基、viii)アミノ基:メルカプト基、ix)メルカプト基:アミノ基のいずれかであることを特徴とする磁性キャリア。
  2. 前記無機化合物粒子が、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基から選ばれた1種又は2種以上の官能基を有する親油化処理剤で処理されている請求項1に記載の磁性キャリア。
  3. 前記無機化合物粒子が、少なくともエポキシ基を有する親油化処理剤で処理されている請求項1に記載の磁性キャリア。
  4. 前記親油化処理剤が、カップリング剤である請求項1乃至3のいずれかに記載の磁性キャリア。
  5. 前記カップリング剤が、シランカップリング剤、チタンカップリング剤又はアルミニウムカップリング剤である請求項4に記載の磁性キャリア。
  6. 前記カップリング剤が、シランカップリング剤である請求項4に記載の磁性キャリア。
  7. 前記無機化合物粒子が、無機化合物粒子に対し0.1乃至5.0質量%の親油化処理剤で処理されている請求項1乃至6のいずれかに記載の磁性キャリア。
  8. 前記複合体粒子表面を被覆しているカップリング剤が、シランカップリング剤である請求項1乃至7のいずれかに記載の磁性キャリア。
  9. 前記複合体粒子表面を被覆しているシランカップリング剤が、少なくともアミノ基を有するシランカップリング剤である請求項8に記載の磁性キャリア。
  10. 前記複合体粒子表面を被覆しているシランカップリング剤が、少なくとも1級アミノ基を有するシランカップリング剤である請求項9に記載の磁性キャリア。
  11. 前記複合体粒子の粒子表面を被覆しているカップリング剤が有している官能基は、前記無機化合物粒子粉末を処理している親油化処理剤が有する官能基と反応し得ることを特徴とする請求項1に記載の磁性キャリア。
  12. 前記複合体粒子の粒子表面を被覆しているカップリング剤は、官能基としてエポキシ基を有しており、前記無機化合物粒子粉末を処理している親油化処理剤は、官能基としてアミノ基、メルカプト基及び有機酸基から選ばれた1種又は2種以上を有していることを特徴とする請求項1に記載の磁性キャリア。
  13. 前記複合体粒子の粒子表面を被覆しているカップリング剤は、官能基としてアミノ基を有しており、前記無機化合物粒子粉末を処理している親油化処理剤は、官能基としてエポキシ基、メルカプト基、有機酸基、エステル基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基から選ばれた1種又は2種以上を有していることを特徴とする請求項1に記載の磁性キャリア。
  14. 前記複合体粒子の粒子表面を被覆しているカップリング剤は、官能基としてメルカプト基を有しており、前記無機化合物粒子粉末を処理している親油化処理剤は、官能基としてアミノ基、エポキシ基、有機酸基、エステル基、ケトン基及びアルデヒド基から選ばれた1種又は2種以上を有していることを特徴とする請求項1に記載の磁性キャリア。
  15. 前記複合体粒子表面を被覆しているカップリング剤の処理量が、複合体粒子に対して0.001乃至5.0質量%である請求項1乃至14のいずれかに記載の磁性キャリア。
  16. 前記バインダー樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1乃至15のいずれかに記載の磁性キャリア。
  17. 前記熱硬化性樹脂が、少なくともフェノール樹脂を含有している請求項16に記載の磁性キャリア。
  18. 前記複合体粒子の表面が、更に樹脂で被覆されている請求項1乃至17のいずれかに記載の磁性キャリア。
  19. 前記複合体粒子表面を被覆している樹脂の被覆量が、複合体粒子に対して0.05質量%以上である請求項18に記載の磁性キャリア。
  20. 前記被覆樹脂が、シリコーン樹脂である請求項18又は19に記載の磁性キャリア。
  21. 前記複合体粒子表面が、カップリング剤を含有しているシリコーン樹脂で被覆されている請求項20に記載の磁性キャリア。
  22. 前記カップリング剤が、シランカップリング剤である請求項21に記載の磁性キャリア。
  23. 前記シランカップリング剤が、アミノ基を有するシランカップリング剤である請求項22に記載の磁性キャリア。
  24. 前記複合体粒子の重量平均粒径が、10乃至200μmである請求項1乃至23のいずれかに記載の磁性キャリア。
  25. 前記複合体粒子の重量平均粒径が、10乃至100μmである請求項1乃至23のいずれかに記載の磁性キャリア。
  26. 前記複合体粒子の重量平均粒径が、10乃至60μmである請求項1乃至23のいずれかに記載の磁性キャリア。
  27. 前記複合体粒子の重量平均粒径が、15乃至60μmである請求項1乃至23のいずれかに記載の磁性キャリア。
  28. 前記複合体粒子の重量平均粒径が、15乃至45μmである請求項1乃至23のいずれかに記載の磁性キャリア。
  29. 前記複合体粒子は、比重が2.5乃至4.5であり、79.58kA/m(1000エルステッド)の磁界下で測定した磁化の強さが15乃至60Am2/kgであり、残留磁化(σγ)が0.1乃至20Am2/kgであり、電気抵抗値が5×1011乃至5×1015Ωcmである請求項1乃至28のいずれかに記載の磁性キャリア。
  30. 前記無機化合物粒子が、少なくとも磁性鉄化合物粒子である請求項1乃至29のいずれかに記載の磁性キャリア。
  31. 前記磁性鉄化合物粒子が、磁性鉄酸化物粒子である請求項30に記載の磁性キャリア。
  32. 前記磁性鉄酸化物粒子が、ケイ素の酸化物、ケイ素の水酸化物、アルミニウムの酸化物又はアルミニウムの水酸化物の1種又は2種以上を有している請求項31に記載の磁性キャリア。
  33. 前記磁性鉄酸化物粒子がアルミニウムの酸化物を有している請求項32に記載の磁性キャリア。
  34. 前記無機化合物粒子が、磁性鉄化合物粒子と非磁性無機化合物粒子とからなる請求項1乃至33のいずれかに記載の磁性キャリア。
  35. 前記非磁性無機化合物粒子が、非磁性鉄酸化物粒子である請求項34に記載の磁性キャリア。
  36. 前記磁性鉄酸化物粒子の平均粒子径aと、非磁性鉄酸化物粒子の平均粒子径bとが下記関係を満たしている請求項34又は35に記載の磁性キャリア。
    a<b
  37. 該磁性鉄酸化物粒子の平均粒子径aと、非磁性鉄酸化物粒子の平均粒子径bとが下記関係を満たしている請求項36に記載の磁性キャリア。
    0.02μm≦a≦2μm
    0.05μm≦b≦5μm
    1.5a<b
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