JP4174856B2 - 溶銑脱珪方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は溶銑予備処理として行われる溶銑の脱珪方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高炉溶銑の溶銑予備処理として高炉鋳床やトーピードカーにおける脱珪処理が行われている。通常の高炉溶銑のSiレベルは0.3〜0.5wt%程度であり、鋳床やトーピードカーで行われる従来の脱珪処理では、これを0.2wt%前後のSiレベルまで低減させている。
【0003】
一方、本発明者らは、脱燐前の溶銑中Siの含有レベルを従来技術よりも1桁低いレベル(0.07wt%以下)とすることにより、飛躍的に高い脱燐効率が得られることを見い出し、また、溶銑中Siをそのような極めて低いレベルまで効率的に脱珪処理する方法として、高炉溶銑を受銑した取鍋(溶銑鍋や装入鍋)内で溶銑を撹拌しつつ脱珪処理する方法を開発した。この方法によれば、高い脱珪酸素効率が得られるため、溶銑中Siを上記のような極低レベルまで短時間で効率的に且つ安定的に脱珪することができ、しかも、処理後の溶銑温度を維持、安定化する上でも極めて有利である。
【0004】
ところで、最近になって環境保護等の面から溶銑予備処理で発生するスラグ量の削減が大きな課題となりつつある。
脱珪処理においてスラグ量を削減する一つの方法としては、造滓剤であるCaOの添加量を減じ、スラグの塩基度(CaO/SiO2)を低下させた脱珪処理を行うことである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、取鍋やトーピードカー等の容器を用いて低塩基度(例えば、塩基度1.0以下)のスラグを生成させて脱珪処理を行った場合、以下のような問題があることが判明した。
すなわち、高炉鋳床で行われる脱珪処理とは異なり、トーピードカーや取鍋等の容器で脱珪処理を行う場合には脱珪処理後に必ず除滓工程(スラグ除去工程)が必要であるが、塩基度が低いスラグは元々粘性が高く除滓しにくい上に、時間の経過とともにさらに粘性が増して除滓が難しくなり、このため一般に脱燐処理や脱硫処理で行われているような溶銑処理−除滓工程では除滓時間が脱珪処理ピッチに間に合わず、このため脱珪処理自体の実施が事実上困難になることが判った。
【0006】
したがって本発明の目的は、取鍋やトーピードカー等の容器を用いて低塩基度のスラグを生成させて脱珪処理を行う際に、脱珪−除滓工程を円滑且つ効率的に実施することができる溶銑脱珪方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するため、本発明の溶銑脱珪方法は以下のような特徴を有する。
[1]溶銑を容器に受銑後、該容器内の溶銑を撹拌しつつスラグの塩基度を1.0以下にして脱珪処理し、該脱珪処理終了後10分以内に除滓を開始する溶銑脱珪方法であって、溶銑容器を備えた溶銑台車が走行する軌道に沿って脱珪処理設備と除滓設備を隣接して設け、溶銑台車を前記脱珪処理設備と除滓設備に順次移動・停車させて脱珪処理と除滓を順次行う際に、除滓が行われる溶銑台車X n と脱珪処理が行われる溶銑台車X n+1 とを連結した状態で両溶銑台車に対する除滓と脱珪処理とを同時並行して行い、且つ下記( a )〜( c )の手順を順次繰り返すことにより、溶銑台車X n ,X n+1 ,X n+2 ……X n+m により順次運ばれてくる溶銑の脱珪処理と除滓を行うことを特徴とする溶銑脱珪方法。
a )連結された両溶銑台車X n ,X n+1 に対する除滓と脱珪処理の実施中(但し、除滓と脱珪処理のうちのいずれか一方のみの実施中の場合も含む)またはそれらの終了後、後続の溶銑台車X n+2 を溶銑台車X n+1 に連結する。
b )前記両溶銑台車X n ,X n+1 に対する除滓と脱珪処理が終了した後、前記連結された両溶銑台車X n+1 ,X n+2 のうち、溶銑台車X n+1 を除滓設備に、溶銑台車X n+2 を脱珪処理設備にそれぞれ移動させるとともに、除滓が終了した前記溶銑台車X n を前記溶銑台車X n+1 から切離し、該溶銑台車X n を下工程の処理設備側に移動させる。
c )前記連結された両溶銑台車X n+1 ,X n+2 に対する除滓と脱珪処理とを同時並行して行う。
[2]上記[1]の溶銑脱珪方法において、脱珪処理を取鍋で行うことを特徴とする溶銑脱珪方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明法による溶銑脱珪処理は、取鍋やトーピードカー等の容器を用いて行う溶銑予備処理としての脱珪処理であり、溶銑を容器に受銑後、該容器内の溶銑を撹拌しつつスラグの塩基度(CaO/SiO2)を1.0以下にして脱珪処理を行う。このようにスラグの塩基度を1.0以下として脱珪処理を行うことによりスラグ発生量を削減でき、また容器の耐火物保護の面でも有利である。
一般に、この脱珪処理では造滓剤としてCaO源が、また、脱珪剤として気体酸素および/または固体酸素源(例えば、焼結粉、ミルスケール等)が容器内に供給される。なお、供給される気体酸素は純酸素ガス、酸素含有ガスのいずれでもよい。
【0010】
図1は、150tonの溶銑鍋を用いて低塩基度のスラグ(塩基度:0.5〜1.0)の下で脱珪処理した場合において、脱珪処理終了時から除滓開始までの時間が除滓所要時間に及ぼす影響を示したもので、脱珪処理終了時から除滓開始までの時間が長いほどスラグの粘性が増し、除滓しにくくなる(すなわち、除滓所要時間が長くなる)ことが示されている。また、図2は図1と同様に溶銑鍋を用いて脱珪処理した場合において、スラグの塩基度と脱珪処理終了時から除滓開始までの時間が除滓所要時間に及ぼす影響を示している。
【0011】
図1及び図2によれば、スラグの塩基度が低いほど、また脱珪処理終了時から除滓開始までの時間が長いほどスラグの粘性が増して除滓が難しくなり、除滓所要時間が増大している。一般に高塩基度のスラグ(塩基度>1.0)は元々粘性が小さく、また、脱珪処理終了時から除滓開始までにある程度時間がかかっても、スラグ自体が固くなるため除滓にはさほど支障を来さない。これに対して低塩基度のスラグ(塩基度≦1.0)は、元々粘性が高い上に、脱珪処理終了時から除滓開始までに時間がかかると、高塩基度のスラグのように固くならずに粘性だけが高まり、除滓に著しく手間取る。
【0012】
溶銑脱燐を効率良く行い、転炉におけるスラグレス吹錬の適用率を高めるためには、脱珪処理量をできるだけ多くする必要があり、このため一般に、取鍋やトーピードカー等の溶銑容器を用いた脱珪処理における脱珪処理ピッチは20分前後としている。そして、図1及び図2の結果からして、スラグの塩基度を1.0以下にして脱珪処理を行った場合には、脱珪処理終了時から除滓開始までの時間が10分を超えると除滓所要時間が脱珪処理ピッチである20分を超過し、脱珪−除滓工程の円滑な実施が事実上困難となる。これに対して、脱珪処理終了時から除滓開始までの時間が10分以内であれば、除滓所要時間が脱珪処理ピッチである20分以内に収まり、脱珪−除滓工程を円滑且つ効率的に実施することができる。
【0013】
このため本発明の溶銑脱珪方法では、脱珪処理終了後10分以内に除滓を開始することを条件とする。
なお、図2等の結果からして、本発明の効果をより確実に得るためには、スラグの塩基度は0.5以上であることが好ましい。
本発明による脱珪処理は、取鍋やトーピード等の容器で実施される。ここで、本発明法が実施される取鍋には、高炉溶銑を高炉鋳床を経て直接受銑する溶銑鍋や、転炉等への溶銑装入を行うため溶銑鍋から溶銑が移される所謂装入鍋等が含まれる。また、溶銑鍋や装入鍋と類似の溶銑保持形状を有する鍋を使用してもよい。
【0014】
一般に、高炉溶銑を容器を用いて脱珪処理する場合には、溶銑容器を備えた溶銑台車が利用される。この場合、本発明法は以下に述べるような方法で実施されることが好ましい。
すなわち、溶銑容器を備えた溶銑台車が走行する軌道に沿って脱珪処理設備と除滓設備を隣接して設け、溶銑台車を前記脱珪処理設備と除滓設備に順次移動・停車させて脱珪処理と除滓を順次行う際に、除滓が行われる溶銑台車Xnと脱珪処理が行われる溶銑台車Xn+1とを連結した状態で両溶銑台車に対する除滓と脱珪処理とを略同時並行して行い、且つ下記(a)〜(c)の手順を順次繰り返すことにより、溶銑台車Xn,Xn+1,Xn+2 …… Xn+mにより順次運ばれてくる溶銑の脱珪処理と除滓を行うものである。
【0015】
(a) 連結された両溶銑台車Xn,Xn+1に対する除滓と脱珪処理の実施中(但し、除滓と脱珪処理のうちのいずれか一方のみの実施中の場合も含む)またはそれらの終了後、後続の溶銑台車Xn+2を溶銑台車Xn+1に連結する。
(b) 前記両溶銑台車Xn,Xn+1に対する除滓と脱珪処理が終了した後、前記連結された両溶銑台車Xn+1,Xn+2のうち、溶銑台車Xn+1を除滓設備に、溶銑台車Xn+2を脱珪処理設備にそれぞれ移動させるとともに、除滓が終了した前記溶銑台車Xnを前記溶銑台車Xn+1から切離し、該溶銑台車Xnを下工程の処理設備側に移動させる。
(c) 前記連結された両溶銑台車Xn+1,Xn+2に対する除滓と脱珪処理とを略同時並行して行う。
【0016】
図3の(i)〜(v)は上記の工程を順に示したもので、Aは脱珪ステーション、a1は脱珪処理設備、a2は除滓設備であり、これら両設備は脱珪ステーションA内で隣接して設けられている。また、Xn〜Xn+2は溶銑台車、2は溶銑台車の溶銑容器(例えば、溶銑鍋)であり、各溶銑台車は軌道1上を高炉側若しくは鋳床脱珪工程等の上工程から移動してくる。
【0017】
図3(i)に示すように、脱珪ステーションA内では2台の溶銑台車Xn,Xn+1が連結された状態で、除滓設備a2での溶銑台車Xnに対する除滓と脱珪処理設備a1での溶銑台車Xn+1に対する脱珪処理とが略同時並行して行われる。なお、図3(i)の工程において除滓がなされる溶銑台車Xnは、その前に脱珪処理設備a1で脱珪処理された溶銑台車である。
【0018】
上記両溶銑台車Xn,Xn+1に対する除滓と脱珪処理の実施中(除滓と脱珪処理のうちいずれか一方のみが実施中の場合も含む)またはそれらの終了後、図3(ii)に示すように移動してきた後続の溶銑台車Xn+2を溶銑台車Xn+1に連結する。溶銑台車Xn+2を溶銑台車Xn+1に連結するタイミングは、溶銑台車Xn+1に対する除滓開始までの時間を最短にするという観点からは、溶銑台車Xn,Xn+1に対する除滓と脱珪処理の実施中になされることが好ましい。一方、除滓と脱珪処理の終了後に溶銑台車Xn+2を溶銑台車n+1に連結する場合には、それらの終了後可及的速やかに連結することが好ましい。
【0019】
前記両溶銑台車Xn,Xn+1に対する除滓と脱珪処理が終了した後、図3(iii)〜(v)に示すように、連結された両溶銑台車Xn+1,Xn+2のうち、溶銑台車Xn+1を除滓設備a2に、溶銑台車Xn+2を脱珪処理設備a1にそれぞれ移動するとともに、除滓が終了した溶銑台車Xnを溶銑台車Xn+1から切離し、この溶銑台車Xnを下工程の処理設備側に移動させる。
【0020】
そして、図3(i)と同様に、前記連結された2台の溶銑台車について、除滓設備a2での溶銑台車Xn+1に対する除滓と脱珪処理設備a1での溶銑台車Xn+2に対する脱珪処理とが略同時並行して行われ、以上の手順を繰り返すことにより、次々と移動してくる溶銑台車Xn,Xn+1,Xn+2 …… Xn+mの脱珪処理と除滓を行うものである。
【0021】
以上のような脱珪処理法では、脱珪処理設備と除滓設備を隣接して設け、これら両設備において互いに連結された2台の溶銑台車に対する脱珪処理と除滓を略同時並行して行うとともに、(1)脱珪処理中または処理直後の溶銑台車Xn+1に対して後続の溶銑台車Xn+2を連結する、(2)連結された溶銑台車Xn+1,Xn+2をそれぞれの次処理位置へ移動させる、(3)除滓終了後の溶銑台車Xnを切離す、という手順を繰り返すことにより、脱珪処理終了後から最短の時間で除滓を開始することができ、しかも脱珪処理−除滓という一連の工程を迅速且つ円滑に実施することができる。このため脱珪処理終了後10分以内に除滓を開始とするという本発明法の条件を容易に達成でき、しかも効率的な溶銑予備脱珪を行うことができる。
【0022】
なお、図3では1台の溶銑台車Xが2つの溶銑容器2を備えているが、1台の溶銑台車が有する溶銑容器は1つでも、また3つ以上でもよく、溶銑台車が複数の溶銑容器を備えている場合には、脱珪処理、除滓はともに複数の溶銑容器に対して略同時に実施される。
【0023】
次に、溶銑容器として溶銑鍋等の取鍋を用いて本発明の溶銑脱珪方法を実施する場合について説明する。
取鍋内で行う脱珪処理は、その溶銑保持形状のために溶銑を十分に撹拌でき、このため鋳床脱珪はもとより、トーピードカーによる脱珪工程に較べても高い脱珪効率が得られる。また、鋳床脱珪等の従来法は脱珪効率が低いだけでなく、脱珪剤としてミルスケール等の固体酸素源(以下、“固酸”という)を用いるため溶銑温度が低下するという問題があるが、取鍋内で行う脱珪処理では脱珪剤として気体酸素(以下、“気酸”という)を供給することができるため、溶銑温度の維持、安定化が容易であり、且つ固酸の供給も併用できるために溶銑温度の調整も容易である。
【0024】
図4は、取鍋内での脱珪処理(脱珪剤:気酸)と高炉鋳床での脱珪処理(脱珪剤:固酸)を実施した場合について、それらの脱珪酸素効率を脱珪剤である酸素の供給量(但し、高炉鋳床脱珪の場合は脱珪剤が固酸であるため、気酸に換算した酸素供給量)との関係で示したもので、高炉鋳床脱珪では脱珪酸素効率が元々低い上に、酸素供給量が1.5Nm3/tを超えると脱珪酸素効率がさらに低下しており、このような脱珪酸素効率では脱珪幅ΔSi(脱珪量):0.2wt%以上の脱珪処理は困難である。これに対して取鍋内での脱珪処理では、酸素供給量に拘りなく約70%程度の脱珪酸素効率が得られており、このため0.2wt%を超えるような脱珪幅ΔSiであっても、短時間且つ効率的な脱珪処理が可能である。
【0025】
図5は、取鍋内での脱珪処理(脱珪剤:気酸)と高炉鋳床での脱珪処理(脱珪剤:固酸)を実施した各場合について、脱珪幅ΔSi(但し、高炉鋳床脱珪において脱珪酸素効率40%が得られる脱珪幅ΔSiの範囲)と脱珪処理後の溶銑温度との関係を示したもので、高炉鋳床での脱珪処理の場合には、脱珪剤として固酸を用いるため脱珪幅ΔSiが大きくなるにしたがい溶銑温度が低下している。
【0026】
これに対して、取鍋内での脱珪処理の場合には、脱珪剤として気酸を用いるため脱珪幅ΔSiが大きくなるにしたがって溶銑温度が上昇している。したがって、取鍋内での脱珪処理では、溶銑のハンドリングや下工程の精錬に影響するような溶銑温度の低下を生じる恐れは全くなく、溶銑温度の確保が極めて容易であり、また、必要に応じて気酸供給を固酸供給に切り替え若しくは気酸供給と固酸供給を併用することにより、溶銑温度を調整して所望のレベルに安定化させることも容易である。
【0027】
また、出銑された溶銑中のSi量が比較的高い場合には高炉鋳床での脱珪処理を実施してから取鍋内での脱珪処理を実施することもできる。特に、溶銑の脱珪処理では脱珪幅(Δ%Si)が大きくなるとスラグフォーミングが顕著になり、事実上操業が困難になる場合がある。したがって、全脱珪幅が比較的大きい場合には、鋳床脱珪を実施した後、取鍋内脱珪を実施し、1つの脱珪工程での脱珪幅を小さくすることによりスラグフォーミングを抑制することが好ましい。
また、このように脱珪処理を2工程で行い、1つの工程での脱珪幅を小さくすることにより、特に取鍋内脱珪後の除滓時間が短くて済むため有利である。
【0028】
先に述べたように取鍋内での脱珪処理は、脱珪剤として気酸を供給することにより脱珪効率が高められ且つ溶銑温度の低下が防止される点に大きな特徴があり、したがって、この脱珪処理では脱珪剤の一部または全部として気酸を用いることが好ましい。なお、使用する気体酸素(気酸)としては、純酸素ガス、酸素含有ガスのいずれでもよい。この気酸の取鍋内への供給方法としては、(1)上吹ランスで上方から溶銑に吹き付ける方法、(2) インジェクションランスを通じて溶銑内に吹き込む方法、(3) 取鍋本体に設けられた底吹ノズル等の吹込みノズルを通じて溶銑内に吹き込む方法等が採用でき、これらの何れかまたは2つ以上の方法の組み合わせにより気酸の供給を行うことができる。
【0029】
また、取鍋内での脱珪処理の他の特徴は溶銑の十分な撹拌が得られる点にあり、この溶銑の撹拌は溶銑内に気酸または他の撹拌ガス(例えば、窒素ガス)を吹き込むことにより実現できる。その具体的な方法としては、上述したインジェクションランスを通じてガスを溶銑内に吹き込む方法、吹込みノズルを通じてガスを溶銑内に吹き込む方法等が採用でき、これらの何れかまたは2つ以上の方法の組み合わせにより実施可能である。
【0030】
通常、取鍋内の脱珪処理では造滓材と必要に応じて固酸が供給されるが、これらの固体添加材の供給方法としては、(1)上置き添加による方法、(2)上吹きランスを通じて上方から溶銑に吹き付ける方法、(3)インジェクションランスを通じて溶銑内に吹き込む方法等が採用でき、これらの何れかまたは2つ以上の方法の組み合わせにより固体添加材の供給を行うことができる。
但し、固体添加材の供給としては、上記(1)、(2)の方法よりも(3)の方法の方が、固体添加材の運動エネルギーを利用して溶銑の撹拌力を高めることができるため、脱珪効率を高める上で有利である。
【0031】
通常、造滓剤としては石灰粉等のCaO源が、また固酸としてはミルスケールや焼結粉等が供給される。
また、取鍋を用いた脱珪処理では、必要に応じて溶銑の温度調整を行うことができ、この温度調整は脱珪剤である固酸及び/又は気酸をその添加量を含めて適宜調整して供給することにより行うことができる。
また、以上述べたような取鍋を用いた脱珪処理において最も好ましい態様は、供給する気体酸素の全量を溶銑に対して上吹きし、撹拌用ガスとして不活性ガスのみを用いてこれを溶銑内に吹き込み、さらに好ましくは溶銑の撹拌性をより高めるため、撹拌ガスとともに造滓剤や固酸等の粉体を吹き込むことである。
【0032】
溶銑予備処理の脱珪工程では、脱珪剤として供給された酸素源によって溶銑中のSiが酸化除去されることで脱珪がなされるが、同時にSiの酸化に消費されなかった過剰な酸素源が溶銑中の炭素を酸化し、溶銑が脱炭されてしまう問題があるが、上記のような脱珪処理法によれば、供給すべき気体酸素の全量を溶銑に対して上吹きし、溶銑中に吹き込む撹拌ガスとして不活性ガスのみを使用することにより脱炭の進行を極力抑制することができ、一方において、溶銑中に撹拌ガスである不活性ガスを吹き込み、さらに好ましくは溶銑の撹拌に有効な大きな運動エネルギーが得られる粉体の吹き込みを実施することにより、溶銑の撹拌性を十分に高め、上吹きにより供給される気体酸素との反応が起こる場所に溶銑を積極的に供給することにより脱珪反応を促進させ、効率的な脱珪を行わせることができる。すなわち、この脱珪処理法によれば、高い脱珪反応効率の確保と脱炭の抑制が特にバランス良く達成される。
【0033】
また、溶銑の脱珪処理では、処理すべき溶銑中のSi濃度が低いほど脱珪反応効率が低下しやすく、また溶銑の脱炭も進行しやすい。したがって、高い脱珪反応効率と脱炭の抑制が特にバランス良く達成される上記の脱珪処理法は、低Si溶銑の脱珪方法として特に好適であり、具体的には、Si濃度が0.4wt%以下の低Si溶銑を0.2wt%以下のSi濃度まで脱珪処理する場合に特に好適である。
【0034】
溶銑中に撹拌ガスとして吹き込まれる不活性ガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等の1種以上が使用できる。
また、溶銑中に撹拌ガスとともに吹き込まれる粉体としては、造滓剤である石灰粉等のCaO源、脱珪剤である酸化鉄やミルスケール等の固酸等が挙げられ、これらのうちの1種以上の粉体を撹拌ガスとともに溶銑中に吹き込むことが好ましい。
【0035】
図6は上記の方式による取鍋を用いた脱珪処理状況の一例を示しており、この例では上吹きランスを通じて上方から気酸(酸素ガス)が溶銑に吹き付けられ、インジェクションランスを通じて溶銑内に造滓剤(石灰粉等)が撹拌ガス(N2)とともに吹き込まれ、さらに必要に応じて固酸(焼結粉、ミルスケール等)が取鍋上方から上置き装入できるようになっている。このような取鍋による脱珪処理の操業条件の一例を挙げると、150ton取鍋で気酸供給を主体とした溶銑脱珪処理を行う場合、上吹きランスによる気酸供給量:2500Nm3/hr、インジェクションランスによる石灰粉(造滓剤)供給量:30〜100kg/分程度の操業条件となる。
【0036】
【実施例】
図3に示す設備構成と工程に従い、高炉から出銑された溶銑(Si量:0.2〜0.3wt%、溶銑温度:1450〜1500℃程度)を溶銑台車上の150tonの溶銑鍋に受銑し、これを脱珪処理−除滓設備に移動させて脱珪処理と除滓を順次実施した。脱珪処理は図6に示す方式の設備で行い、上吹ランスを通じて溶銑に気体酸素(供給量:2500Nm3/hr)を吹き付け、インジェクションランスを通じて溶銑内に撹拌ガス(N2ガス)とともに造滓剤である石灰粉(供給量:30〜100kg/min)を吹き込み、さらに、固体酸素源である焼結粉を上置装入して、処理時間10〜20分の脱珪処理(スラグの塩基度:0.5〜1.0)を実施した。この脱珪処理終了後、約5分以内に除滓を開始し、10〜20分で除滓を終了した。
【0037】
このような脱珪処理−除滓を、図3の工程にしたがって各溶銑台車毎に順次実施したが、全ての溶銑台車について脱珪処理ピッチの時間内で除滓を支障なく行うことができた。また、脱珪処理により溶銑中Si量は0.07wt%以下まで低減し、また、処理後の溶銑温度は1280℃以上であった。
【0038】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の溶銑脱珪方法によれば、取鍋やトーピードカー等の容器において低塩基度のスラグを生成させて脱珪処理を行う際に、脱珪−除滓工程を円滑且つ効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶銑鍋を用い、スラグの塩基度を0.5〜1.0として脱珪処理を実施した場合において、脱珪処理終了時から除滓開始までの時間が除滓所要時間に及ぼす影響を示すグラフ
【図2】溶銑鍋を用いて脱珪処理を実施した場合において、スラグの塩基度と脱珪処理終了時から除滓開始までの時間が除滓所要時間に及ぼす影響を示すグラフ
【図3】本発明法を溶銑容器を備えた溶銑台車を利用して実施する場合の工程を示す説明図
【図4】取鍋内での脱珪処理と高炉鋳床での脱珪処理について、脱珪酸素効率を酸素供給量との関係で示すグラフ
【図5】取鍋内での脱珪処理と高炉鋳床での脱珪処理について、脱珪幅ΔSiと溶銑温度との関係を示すグラフ
【図6】取鍋内脱珪の実施状況の一例を示す説明図
【符号の説明】
1…軌道、2…溶銑容器、A…脱珪ステーション、a1…脱珪処理設備、a2…除滓設備、Xn〜Xn+2…溶銑台車

Claims (2)

  1. 溶銑を容器に受銑後、該容器内の溶銑を撹拌しつつスラグの塩基度を1.0以下にして脱珪処理し、該脱珪処理終了後10分以内に除滓を開始する溶銑脱珪方法であって、
    溶銑容器を備えた溶銑台車が走行する軌道に沿って脱珪処理設備と除滓設備を隣接して設け、溶銑台車を前記脱珪処理設備と除滓設備に順次移動・停車させて脱珪処理と除滓を順次行う際に、除滓が行われる溶銑台車X n と脱珪処理が行われる溶銑台車X n+1 とを連結した状態で両溶銑台車に対する除滓と脱珪処理とを同時並行して行い、且つ下記( a )〜( c )の手順を順次繰り返すことにより、溶銑台車X n ,X n+1 ,X n+2 ……X n+m により順次運ばれてくる溶銑の脱珪処理と除滓を行うことを特徴とする溶銑脱珪方法。
    a )連結された両溶銑台車X n ,X n+1 に対する除滓と脱珪処理の実施中(但し、除滓と脱珪処理のうちのいずれか一方のみの実施中の場合も含む)またはそれらの終了後、後続の溶銑台車X n+2 を溶銑台車X n+1 に連結する。
    b )前記両溶銑台車X n ,X n+1 に対する除滓と脱珪処理が終了した後、前記連結された両溶銑台車X n+1 ,X n+2 のうち、溶銑台車X n+1 を除滓設備に、溶銑台車X n+2 を脱珪処理設備にそれぞれ移動させるとともに、除滓が終了した前記溶銑台車X n を前記溶銑台車X n+1 から切離し、該溶銑台車X n を下工程の処理設備側に移動させる。
    c )前記連結された両溶銑台車X n+1 ,X n+2 に対する除滓と脱珪処理とを同時並行して行う。
  2. 脱珪処理を取鍋で行うことを特徴とする請求項1に記載の溶銑脱珪方法。
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