JP4173679B2 - Ecrプラズマ源およびecrプラズマ装置 - Google Patents

Ecrプラズマ源およびecrプラズマ装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ECRプラズマ源およびECRプラズマ装置に関し、より詳細には、略矩形断面において一様なプラズマ密度を発生させ得るECRプラズマ源およびそれを用いたECRプラズマ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ源は、プラズマ生成室中に高密度のプラズマを均一に発生させることができるため、半導体レーザ、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス、LSIなどに対するスパッタリング装置やエッチング装置のプラズマ源として用いられている。
【0003】
ECRプラズマ源は、プラズマ生成室と、磁気コイルと、マイクロ波導入部とから構成されているが、従来のECRスパッタリング装置やエッチング装置では、主として静置させたウェハー状の円形試料を処理対象としていたため、これらの装置に備えられるECRプラズマ源は、プラズマ流に垂直な面内の断面形状が円形のプラズマ生成室と、プラズマ流に垂直な面内の断面形状が円形の巻き線せられた磁気コイルと、マイクロ波をマイクロ波導波管から直接あるいは分岐結合方式により導入する構造のマイクロ波導入部とから構成されていた(例えば、特許第1553959号明細書、あるいは、天沢ら唐dCRプラズマを用いた高品質薄膜形成煤C精密工学会誌Vol.66,No.4,511(2000)参照)。
【0004】
特に、スパッタリング装置の場合は、ターゲット粒子がマイクロ波導入窓(通常は石英板が用いられる)を汚染するのを防ぐために、分岐結合方式がよく利用される。
【0005】
図5は、円形断面を有する従来のECRプラズマ源を備えるエッチング装置の構成例を説明するための図で、図5(a)は上面図、図5(b)は図5(a)のA−A´における断面図である。
【0006】
図5に示した構成の従来のECRプラズマ源を備えるエッチング装置では、プラズマ生成室70内で生成されたプラズマが、プラズマ引出し開口14を経由して試料室11内に配置された試料100に照射される。この場合、プラズマ生成室70内で生成されたプラズマは、図5(b)に示すように、プラズマ生成室70から試料100へと向かう下向きのプラズマ流を生じる。
【0007】
プラズマ生成室70は、処理する試料100の形状を考慮して、このプラズマ流に垂直な面内の断面形状が円形となる形状とされている。また、磁気コイル80、81は、プラズマ流に垂直な面内で円形に巻き線せられており、プラズマ生成室70内の所定の位置にECR条件となる磁場を生成するように設計されている。プラズマ生成室70内には、マイクロ波導波管90からマイクロ波導入窓91(通常は石英窓が利用される)を経由してマイクロ波が導入され、マイクロ波の振動電界により磁場中の電子を効率的に加速することとされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年開発が進んでいる液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Liminescence)ディスプレイなどの、いわゆるFPD(Flat Panel Display)装置では、例えば50cm×60cm程度の大型の試料に対して、スパッタリングやエッチングを施すことが要求されている。
【0009】
しかしながら、このような処理を、プラズマ生成室がプラズマ流に垂直な面内で円形断面を有する従来のECRプラズマ源で対応するためには、その直径を拡大する必要が生じ、その場合、(1)プラズマ生成室や磁気コイルが大型化してECRプラズマ源が非常に高価なものとなってしまうこと、および、(2)円形断面を有するECRプラズマ源では、略矩形の大型FPD試料の均一なスパッタリングやエッチングが困難であること、などの問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、略矩形断面において一様なプラズマ密度を生じさせることが可能なECRプラズマ源およびそれを用いたECRプラズマ装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、マイクロ波による電子サイクロトロン共鳴(ECR)を用いてプラズマを生成しその開口部からプラズマ流を取り出すためのプラズマ生成室と、当該プラズマ生成室内に静磁界を発生せしめるための磁気コイルを巻き線せられた少なくとも1つの磁界発生手段と、マイクロ波発信手段から伝送されたマイクロ波を前記プラズマ生成室の前記開口部と対向する面から前記プラズマ生成室内に導入するためのマイクロ波導入手段とを備えるECRプラズマ源であって、前記プラズマ生成室とその開口部は、当該プラズマ生成室内で生成するプラズマ流の方向に垂直な断面形状が略矩形を有し、前記磁界発生手段の磁気コイルは、前記プラズマ流の方向に垂直な面内で略矩形形状に巻き線せられており、前記マイクロ波導入手段は、前記マイクロ波発信手段と前記プラズマ生成室との間に配置された、直線状のマイクロ波空洞共振器を構成しており、前記直線状のマイクロ波空洞共振器の一方の端面を金属板で終端した、開口部を有さない終端部とし、前記直線状のマイクロ波空洞共振器の他方の端部に金属スリットを挿入することで第1の開口部が設けられ、前記マイクロ波発生手段から伝送されたマイクロ波は前記第1の開口部を介して前記マイクロ波空洞共振器に導入され、前記直線状のマイクロ波空洞共振器の内部には、側面に開口部の無い長さλg/2(λg:マイクロ波の定在波の管内波長)の第1の共振ユニットと、側面に前記少なくとも1つの第2の開口部を有し長さλg/2の第2の共振ユニットとが交互に設けられ、前記直線状のマイクロ波空洞共振器には前記第2の共振ユニットが2つ以上配置され、前記第2の開口部を介して同相のマイクロ波を前記プラズマ生成室の前記対向する面から前記プラズマ生成室内へ導入させることとしたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項に記載の発明は、請求項1に記載のECRプラズマ源において、前記マイクロ波導入手段は、前記マイクロ波発信手段から伝送されたマイクロ波を分岐結合するためのマイクロ波分岐手段を備えることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のECRプラズマ源において、前記第1の共振ユニットと前記第2の共振ユニットとの境界には、サセプタンスを調整するための窓が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、ECRプラズマ装置であって、請求項1乃至3のいずれかに記載のECRプラズマ源を備えることを特徴とする。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のECRプラズマ装置において、試料移動手段を備え、当該試料移動手段により試料を移動させながら当該試料表面の略矩形領域にプラズマ照射することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明のECRプラズマ源およびECRプラズマ装置について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるECRプラズマ源、およびこのECRプラズマ源を備えるECRプラズマ装置(エッチング装置あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)装置)の構成を説明するための図で、図1(a)は装置の上面図であり、図1(b)は図1(a)中のA−A´における断面図である。
【0017】
ECRプラズマ源は、プラズマ生成室10と、磁気発生装置の磁気コイル20、21と、マイクロ波導入部30とから構成されており、プラズマ生成室10で生成されたプラズマは、プラズマ生成室10内で加速され、プラズマ引出し開口14を経由して試料室11へと向かうプラズマ流が生じ、試料室11内に配置されている試料40へと照射される。本実施形態では、FPDなどの大型試料全面の処理を可能とするために、図示していない試料移動機構を備え、試料40は、この試料移動機構により試料室11内を所定の速度で矢印方向に移動しながら処理されることで試料全面の処理が行われる。
【0018】
プラズマ生成室10は、ECRを用いてプラズマを生成しその開口部であるプラズマ引出し開口14からプラズマ流を取り出すためのもので、プラズマ生成室10とプラズマ引出し開口14は、共に、プラズマ生成室10内で生成するプラズマ流の方向に垂直な断面形状が略矩形を有し、これにより、試料40上に略矩形のプラズマ流照射領域を形成することを可能としている。
【0019】
なお、本明細書全体を通じて用いられる「略矩形」という形状は、本来の矩形の他、矩形に類似する形状を広く意味するものであり、例えば、その4つの角が適度な丸みを帯びている形状等であってもよい。また、この形状の輪郭を構成する長辺と短辺の長さの比についても特に制限はなく、さらに、4辺の長さを等しくした形状をも含み得るものである。この形状をいかなるものとするかは、本発明のECRプラズマ装置により処理される試料の大きさや処理内容等から定められる装置の仕様によって適宜設定可能であることは言うまでもない。
【0020】
プラズマ生成室10内に静磁界を発生せしめるための磁界発生装置の磁気コイル20、21は、プラズマ流の方向に垂直な面内で略矩形に巻き線せられており、プラズマ生成室10内の所定の位置にECR条件となる磁場を生成する。
【0021】
プラズマ生成室10内には、マイクロ波導入部30から、石英などの材料からなるマイクロ波導入窓36を経由してマイクロ波が導入され、これにより、マイクロ波の振動電界により磁場中の電子を効率的に加速することとされている。なお、このマイクロ波導入部30へは、図示していないマイクロ波源(マグネトロン管等を利用)で発生させたマイクロ波が、アイソレータや整合器等を介して伝送されている。
【0022】
マイクロ波導入部30は、その内部にマイクロ波の定在波を形成する中空の導波管を構成しており、その端面を終端部31とする導波管の内部には、この導波管の伸長方向に、マイクロ波の定在波の管内波長λgに相当する間隔で複数の開口部34(この図ではスリット状)が直列に設けられ、この伝送部35から、プラズマ生成室10内へと位相の揃った(同相の)マイクロ波を伝送する構造となっている。
【0023】
すなわち、このマイクロ波導入部30の導波管には、終端部31から順に、側面に開口部34の無い長さλg/2の共振ユニット32、側面に開口部34の有る長さλg/2の共振ユニット33、が交互に配置されており、側面に開口部34の有る長さλg/2の共振ユニット33内に形成されている定在波は互いに位相が揃うこととなるため、この同相のマイクロ波のみが、開口部34、マイクロ波伝送部35、マイクロ波導入窓36を経由してプラズマ生成室10内に導入され、略矩形のプラズマ生成室10内の所定の位置に、一様なプラズマ密度をもつECRプラズマを生成することができる。
【0024】
ここで示した構成例では、マイクロ波導入部30の定在波を形成する導波管の全長はλgの3.5倍となっているが、処理する試料の大きさに応じて、導波管の全長を自由に設定可能であることは言うまでもない。また、磁気コイル20、21は、プラズマ生成室10の所定の位置にECR条件となる磁場を形成させるために、巻き数、電流値、を設計すればよく、単数または複数の磁気コイルを用いることができるのは言うまでもない。
【0025】
図1に示した構成のECRプラズマ装置を、エッチング装置として実施する場合では、図示していないガス導入口からSF、CFなどのエッチングガスをプラズマ生成室10に導入することにより、Siなどの試料のエッチングを容易に行うことができる。また、大型試料を所定の速度で移動させながらエッチングを行なうことにより、大面積の試料全面を均一にエッチング処理することが可能となる。
【0026】
また、図1に示した構成のECRプラズマ装置を、CVD装置として実施する場合では、図示していないガス導入口から、例えばSiH、O、Nなどのガスをプラズマ生成室10に導入することにより、SiO(酸化珪素)、Si(窒化珪素)、SiO(酸窒化珪素)などの成膜を均一に行なうことが可能となる。
【0027】
なお、図1に示したECRプラズマ源のマイクロ波導入部30は、端部が終端されその内部にマイクロ波の定在波を形成する中空の導波管で構成することとしているが、マイクロ波導入部30の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、マイクロ波空洞共振器を構成すること等としてもよい。
【0028】
また、開口部34の形状もスリット状である必要はなく、同相のマイクロ波をプラズマ生成室10内へ導入し得る形状であれば良く適宜設計が可能である。
【0029】
さらに、開口部34をマイクロ波の定在波の管内波長λg毎に設ける配置方法の他、適当な形状の開口部を複数有する開口領域を、マイクロ波の定在波の管内波長λgに相当する間隔毎に設けることとしても良い。
【0030】
図2は、このような構成のECRプラズマ源を備えるECRプラズマ装置(エッチング装置あるいはCVD装置)の構成を説明するための図で、図2(a)は装置の上面図であり、図2(b)は図2(a)中のA−A´における断面図である。基本構成は図1に示したECRプラズマ装置と同様であるが、ECRプラズマ源のマイクロ波導入部30をマイクロ波空洞共振器としている。
【0031】
この図に示したマイクロ波導入部30は、一方の端面を金属板等で終端した終端部31とし、この終端部31からn・(λg/2)(n:3以上の整数)の距離に設けられた他方の端部には金属板スリット等を挿入等することで空洞共振器の開口部38が設けられており、これら終端部31と空洞共振器の開口部38が設けられた端部との間に、マイクロ波導入部30の伸長方向に、終端部31からλg/2の長さ毎に直列に接続された複数の共振ユニット32、33(すなわち、側面に開口部34の無い共振ユニット32と側面に開口部33の有る共振ユニット33)を交互に設けることでマイクロ波空洞共振器が構成されている。
【0032】
図2(a)において、共振ユニット32と共振ユニット33との境界を示す点線部には、サセプタンスを調整するための窓を設ける場合と、特に窓を設けない場合とがあり、その構造は、ECRプラズマ源あるいはECRプラズマ装置としての仕様に応じて適宜設計すれば良い。なお、図2(b)には、開口部38を点線で示した。
【0033】
そして、このマイクロ波空洞共振器の同相部の側面(図2(b)では下面)に設けられた複数の開口部34から、プラズマ生成室10内へとマイクロ波を伝送する構造となっている。なお、図2に示した構成例では、空洞共振器の全長はλgの3.5倍となっている。
【0034】
この空洞共振器では、側面に開口部34のある共振ユニット33が3つ設けられているが、これらの内部のマイクロ波は同相の定在波となるから、側面の開口部34からは同相のマイクロ波がマイクロ波伝送部35、マイクロ波導入窓36を経由してプラズマ生成室10に導入される。このような構成により、略矩形のプラズマ生成室10内の所定の位置に、一様なプラズマ密度をもつECRプラズマを生成することができる。
【0035】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施形態にかかるECRプラズマ源、およびこのECRプラズマ源を備えるスパッタリング装置の構成を説明するための図で、図3(a)はスパッタリング装置の上面図であり、図3(b)は図3(a)中のA−A´における断面図である。
【0036】
このECRプラズマ源の基本構造は図2に示したものと同様であり、プラズマ生成室10と、磁気コイル20、21と、マイクロ波導入部30とから構成されるが、マイクロ波導入部30にはマイクロ波発信装置から伝送されたマイクロ波を分岐結合するためのマイクロ波分岐部37が備えられている。
【0037】
プラズマ生成室10で生成されたプラズマは、磁力線に沿って加速されプラズマ引出し開口14を経由して試料室11へと向かうプラズマ流となる。プラズマ流の周囲に配置したターゲット50にDCまたはRF電力を印加することで、ターゲット50を構成する金属あるいは半導体などの元素がスパッタされ、試料室11内に配置されている試料40に堆積する。
【0038】
本実施形態では、FPDなどの大型試料全面の処理を可能とするために、図示していない試料移動機構を備え、試料40は、この試料移動機構により試料室11内を所定の速度で矢印方向に移動しながらスパッタリング処理されることで試料全面に堆積が行われる。
【0039】
プラズマ生成室10は、プラズマ流に垂直な面内での断面形状が略矩形となるように設計されており、これにより、試料40上に略矩形のプラズマ流照射領域を形成することを可能としている。また、磁気コイル20、21は、プラズマ流に垂直な面内で略矩形に巻き線せられており、プラズマ生成室10内の所定の位置にECR条件となる磁場を生成する。
【0040】
プラズマ生成室10内には、分岐結合方式を用いたマイクロ波導入部30から、石英などの材料からなるマイクロ波導入窓36を経由してマイクロ波が導入され、これにより、マイクロ波の振動電界により磁場中の電子を効率的に加速することとされている。
【0041】
図3に示した構成例では、図示していないマイクロ波源(マグネトロン管等を利用)で発生させたマイクロ波がアイソレータや整合器等を介してマイクロ波分岐部37に伝送され、マイクロ波は、マイクロ波分岐部37により左右2方向に分岐されて各々の側に配置された空洞共振器へと導入される。
【0042】
各空洞共振器は、図2でも説明したように、側面の開口部34から同相のマイクロ波がマイクロ波伝送部35、マイクロ波導入窓36を経由してプラズマ生成室10に導入され、両側からのマイクロ波が合成されてプラズマ生成室10内に伝播する。このような構成により略矩形のプラズマ生成室10内の所定の位置に、一様なプラズマ密度をもつECRプラズマを生成することができる。
【0043】
すなわち、このマイクロ波導入部30は、その端面を終端部31とし、マイクロ波導入部30の左右各々の伸長方向に、終端部31からλg/2(λgは管内波長)の長さ毎に直列に接続された複数の共振ユニットによりマイクロ波空洞共振器を構成し、これらのマイクロ波空洞共振器の同相部の側面(図3(b)では左面または右面)に設けられた複数の開口部34から、プラズマ生成室10内へとマイクロ波を伝送する構造となっている。なお、図3に示した構成例では、左右の空洞共振器の各々の全長はλgの3.5倍となっている。
【0044】
左右の各々の空洞共振器の端部には金属板スリット等が挿入されることで開口部38が設けられており、終端部31から順に、側面に開口部34の無い共振ユニット32、側面に開口部34の有る共振ユニット33、が交互に配置されている。
【0045】
この例では、側面に開口部34のある共振ユニット33が3つずつ設けられており、これらの共振ユニット33内部のマイクロ波は同相の定在波となるから、側面の開口部34からは同相のマイクロ波がマイクロ波伝送部35に伝送される。そして、左右のマイクロ波伝送部35を伝送するマイクロ波は、マイクロ波導入窓36を経由してプラズマ生成室10に導入され合成される。このような構成により、略矩形のプラズマ生成室10内の所定の位置に、一様なプラズマ密度をもつECRプラズマを生成することができる。
【0046】
このように、分岐結合方式とすることで、大型試料のスパッタリングにおいてもマイクロ波導入窓の汚染を防ぐことが可能となる。また、図3に示した分岐結合方式のECRプラズマ源をエッチング装置あるいはCVD装置に用いることも可能であるのは言うまでもない。
【0047】
ここで示した構成例では、左右の空洞共振器の各々の全長はλgの3.5倍となっているが、処理する試料の大きさに応じて、空洞共振器の全長を自由に設定可能であることは言うまでもない。
【0048】
例えば、図4に示す構成のECRプラズマ源は、図3に示したスパッタリング装置に備えるECRプラズマ源と同様の分岐結合方式のプラズマ源であり、左右各々の共振器長はλgの5.5倍の長さになっており、図3に示したスパッタリング装置に備えるECRプラズマ源に比較して約1.6倍の幅をもつ略矩形試料の処理が可能となる。このように、略矩形断面の長辺が変化してもλg/2の長さをもつ共振ユニットの数を加減することにより、目的に応じた大きさの略矩形断面を形成することができる。
【0049】
また、磁気コイル20、21は、プラズマ生成室10の所定の位置にECR条件となる磁場を形成させるために、巻き数、電流値、を設計すればよく、単数または複数の磁気コイルを用いることができるのは言うまでもない。
【0050】
このように、図3に示した構成のスパッタリング装置では、図示していないガス導入口からO、Nなどのガスをプラズマ生成室10に導入し、Si、Alなどのターゲット50をスパッタすることにより、SiO、Si、Al、AlNなどの試料の薄膜形成を容易に行うことができる。また、大型試料を所定の速度で移動させながらスパッタリングを行なうことにより、大面積の試料全面を均一に薄膜形成することが可能となる。
【0051】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、ECRプラズマ源を、プラズマ流に垂直な面内で略矩形断面を有するプラズマ生成室と、プラズマ流に垂直な面内で略矩形形状に巻き線せられた磁気コイルと、端部が終端された導波管または端部が終端されて直列に接続された複数の共振ユニットからなるマイクロ波空洞共振器とで構成し、この導波管またはマイクロ波空洞共振器の同相部側面に設けられた複数の開口部から、プラズマ生成室内へ同相のマイクロ波を伝送することとしたので、略矩形断面において一様なプラズマ密度を発生させ得るECRプラズマ源を提供することが可能となる。
【0052】
また、本発明によれば、ECRプラズマ源のマイクロ波導入部を、マイクロ波発信管から伝送されたマイクロ波を分岐結合する構造としたので、マイクロ波導入窓が汚れることなくスパッタリング等の処理を実行することが可能となる。
【0053】
また、本発明によれば、ECRプラズマ装置に、プラズマ源として上述のECRプラズマ源を備え、さらに、大型試料を移動させるための試料移動機構を備えることとしたので、FPDのような略矩形形状の大型試料に対しても容易にスパッタリングやエッチング等の処理が可能なECRプラズマ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるECRプラズマ源、およびこのECRプラズマ源を備えるECRプラズマ装置(エッチング装置あるいはCVD装置)の構成を説明するための図で、(a)は装置の上面図であり、(b)は(a)中のA−A´における断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるECRプラズマ源、およびこのECRプラズマ源を備えるECRプラズマ装置(エッチング装置あるいはCVD装置)の他の構成例を説明するための図で、(a)は装置の上面図であり、(b)は(a)中のA−A´における断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかるECRプラズマ源、およびこのECRプラズマ源を備えるスパッタリング装置の構成を説明するための図で、(a)はスパッタリング装置の上面図であり、(b)は(a)中のA−A´における断面図である。
【図4】本発明のECRプラズマ源の第4の構成例を説明するための上面図である。
【図5】円形断面を有する従来のECRプラズマ源を備えるエッチング装置の構成を説明するための図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A´における断面図である。
【符号の説明】
10 略矩形断面のプラズマ生成室
11 試料室
14 プラズマ引出し開口
20、21 略矩形断面の磁気コイル
30 マイクロ波導入部
31 終端部
32 長さλg/2の共振ユニット(側面に開口部無し)
33 長さλg/2の共振ユニット(側面に開口部有り)
34 共振ユニット側面の開口部
35 マイクロ波伝送部
36、91 マイクロ波導入窓
37 マイクロ波分岐部
38 空洞共振器の開口部
40、100 試料
50 ターゲット
70 円形断面のプラズマ生成室
80、81 円形断面の磁気コイル
90 マイクロ波導波管

Claims (5)

  1. マイクロ波による電子サイクロトロン共鳴(ECR)を用いてプラズマを生成しその開口部からプラズマ流を取り出すためのプラズマ生成室と、当該プラズマ生成室内に静磁界を発生せしめるための磁気コイルを巻き線せられた少なくとも1つの磁界発生手段と、マイクロ波発信手段から伝送されたマイクロ波を前記プラズマ生成室の前記開口部と対向する面から前記プラズマ生成室内に導入するためのマイクロ波導入手段とを備えるECRプラズマ源であって、
    前記プラズマ生成室とその開口部は、当該プラズマ生成室内で生成するプラズマ流の方向に垂直な断面形状が略矩形を有し、
    前記磁界発生手段の磁気コイルは、前記プラズマ流の方向に垂直な面内で略矩形形状に巻き線せられており、
    前記マイクロ波導入手段は、前記マイクロ波発信手段と前記プラズマ生成室との間に配置された、直線状のマイクロ波空洞共振器を構成しており、前記直線状のマイクロ波空洞共振器の一方の端面を金属板で終端した、開口部を有さない終端部とし、前記直線状のマイクロ波空洞共振器の他方の端部に金属スリットを挿入することで第1の開口部が設けられ、前記マイクロ波発生手段から伝送されたマイクロ波は前記第1の開口部を介して前記マイクロ波空洞共振器に導入され、前記直線状のマイクロ波空洞共振器の内部には、側面に開口部の無い長さλg/2(λg:マイクロ波の定在波の管内波長)の第1の共振ユニットと、側面に前記少なくとも1つの第2の開口部を有し長さλg/2の第2の共振ユニットとが交互に設けられ、前記直線状のマイクロ波空洞共振器には前記第2の共振ユニットが2つ以上配置され、
    前記第2の開口部を介して同相のマイクロ波を前記プラズマ生成室の前記対向する面から前記プラズマ生成室内へ導入させることとしたことを特徴とするECRプラズマ源。
  2. 前記マイクロ波導入手段は、前記マイクロ波発信手段から伝送されたマイクロ波を分岐結合するためのマイクロ波分岐手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のECRプラズマ源。
  3. 前記第1の共振ユニットと前記第2の共振ユニットとの境界には、サセプタンスを調整するための窓が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のECRプラズマ源。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のECRプラズマ源を備えることを特徴とするECRプラズマ装置。
  5. 試料移動手段を備え、当該試料移動手段により試料を移動させながら当該試料表面の略矩形領域にプラズマ照射することを特徴とする請求項4に記載のECRプラズマ装置。
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