JP4171528B2 - 新規な分化抑制剤 - Google Patents

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Description

産業上の利用分野
本発明は、新規生理活性物質に関するものである。
従来の技術
ヒトの血液、リンパ液中には多種類の細胞があり、それぞれが重要な役割を担っている。例えば、赤血球は体内での酸素運搬を、血小板は止血作用を、白血球やリンパ球は感染を防御している。これらの多様な細胞は骨髄中の造血幹細胞に由来する。造血幹細胞は体内の種々のサイトカインや環境要因によって刺激されて、各種血液細胞、破骨細胞、肥満細胞などに分化することが近年明らかにされてきた。このサイトカインとして、赤血球への分化についてはエリスロポエチン(EPO)が、白血球への分化については顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が、血小板産生細胞である巨核球への分化については血小板増殖因子(mplリガンド)が発見されて、前者2つは現在すでに臨床応用がなされている。
血液未分化細胞に関して、特定の血液系列に分化することが運命づけられた血液前駆細胞とすべての系列への分化能と自己複製能を有する造血幹細胞に概念的に分類されている。血液前駆細胞に関してコロニーアッセイによって同定が可能であるが、造血幹細胞の同定方法は確立されていない。これらの細胞に関して、ステムセルファクター(SCF)やインターロイキン3(IL−3)、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン1(IL−1)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、オンコスタチンMなどが細胞の分化増殖を促すことが報告されている。
骨髄移植療法に代替される造血幹細胞移植療法や遺伝子治療への応用のため、造血幹細胞を体外で増幅することが検討されている。しかし、この細胞を上記のようなサイトカインを用いて体外で増殖培養させると、造血幹細胞が本来有している多分化能および自己複製能が徐々に失われ、5週間培養後には特定の系列にのみ分化する血液前駆細胞へと変化し、造血幹細胞の特徴の一つである多分化能が失われることが報告されている(Wagner et al.,Blood 86,512−523,1995)。
血液前駆細胞の増殖には単独のサイトカインのみでは効果が十分でなく、複数のサイトカインの共同作用(シナジー)が重要であることが明らかになっている。このことから造血幹細胞の特徴を維持したまま増殖させるためには、血液未分化細胞を増殖、分化させるサイトカインと共に分化を抑制するサイトカインが必要であると考えられている。しかし、一般に細胞の増殖や分化を促進するサイトカインが多数見いだされているのに対して、細胞の分化を抑制するサイトカインは少数しか見いだされていない。例えば、白血病細胞阻害因子(LIF)はマウス胚幹細胞を分化させずに増殖させる作用が報告されているが、造血幹細胞や血液前駆細胞に対し、そのような作用は有していない。また、腫瘍細胞増殖因子(TGF−β)は多様な細胞に対して増殖抑制の作用をするが、造血幹細胞や血液前駆細胞に対する作用は一定の見解が得られていない。
血液細胞のみならず、未分化細胞、特に幹細胞に関しては組織再生に強く関与すると考えられている。これらの組織再生、並びに各組織の未分化細胞を増幅させることは成書(吉里勝利著 再生ー甦るしくみ、1996、羊土社)を参考にすることからその幅広い用途を知ることができる。
ノッチ(Notch)はショウジョウバエで発見された神経細胞の分化制御に関わるリセプター型膜蛋白質であり、ノッチのホモログは線虫(Lin−12)、アフリカツメガエル(Xotch)、マウス(Motch)、ヒト(TAN−1)などの無脊椎動物、脊椎動物の分類を越えた広い動物種から見いだされている。一方、ショウジョウバエノッチのリガンドとしてショウジョウバエデルタ(Delta)およびショウジョウバエセレイト(Serrate)の2つが見いだされており、リセプターのノッチと同様に広い動物種からノッチリガンドホモログが見いだされている(Artavanis−Tsakonas et al.,Science 268,225−232,1995)。
特にヒトに関して、ヒトノッチホモログであるTAN−1は、幅広く体中の組織に発現されており(Ellisen et al.,Cell 66,649−661,1991)、またTAN−1以外に3つのノッチ類縁分子が存在することが報告されている(Artavanis−Tsakonas et al.,Science 268,225−232,1995)。血液細胞においては、PCR(Polymerase Chain Reaction)法にてCD34陽性細胞にTAN−1の発現が認められている(Milner et al.,Blood 83,2057−2062,1994)。しかしながらヒトに関して、ノッチのリガンドと考えられるヒトデルタ、ヒトセレイトの遺伝子及びアミノ酸の配列は1997年4月時点では学術論文として報告されていない。
ショウジョウバエノッチについて、そのリガンドとの結合性が詳細に調べられ、ノッチの細胞外部分に36あるEpidermal Growth Factor(EGF)様繰り返しアミノ酸配列のうち11番目と12番目の繰り返し配列を結合領域として、リガンドとCa++を介して結合し得ることが示された(文献のFehon et al.,Cell 61,523−534,1990およびRebay et al.,Cell 67,687−699,1991および国際公開番号WO92/19734)。他種のノッチホモログについてもEGF繰り返し配列は保存されており、リガンドとの結合に関して同様の機構が類推されている。リガンドにおいてもアミノ酸末端の近くにDSL(Delta−Serrate−Lag−2)と呼ばれるアミノ酸配列とリセプターと同様にEGF様繰り返し配列が保存されている(Artavanis−Tsakonas et al.,Science 268,225−232,1995)。
一方、EGF様配列はトロンボモジュリン(Jackman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83,8834−8838,1986)や低密度リポ蛋白質(LDL)リセプター(Russell et al.,Cell 37,577−585,1984)および血液凝固因子(Furie et al.,Cell 53,505−518,1988)で見いだされ、細胞外での凝集や接着に重要な役割を果たすと考えられている。
近年クローニングされたショウジョウバエデルタの脊椎動物のホモログはニワトリ(C−デルタ−1)とアフリカツメガエル(X−デルタ−1)が見いだされており、X−デルタ−1は原始ニューロンの発生にXotchを介して作用することが報告されている(Henrique et al.,Nature 375,787−790,1995およびChitnis et al.,Nature 375,761−766,1995)。一方、ショウジョウバエセレイトの脊椎動物のホモログは、ラットジャグド(Jagged)が見いだされている(Lindsell et al.,Cell 80,909−917,1995)。この報告によれば、ラットジャグドのmRNAは胎仔ラットの脊髄に検出される。また、ラットノッチを強制的に過剰発現させた筋芽細胞株とラットジャグド発現細胞株の共培養により、この筋芽細胞株の分化が抑制されることが見いだされているが、ラットノッチを強制発現させていない筋芽細胞株に対してはラットジャグドが作用しないことが見いだされている。
本発明者はノッチおよびそのリガンドが神経芽細胞、筋芽細胞の分化制御のみならず、広く未分化な細胞、特に血液未分化細胞の分化制御を行なうとの仮説を立てた。しかしヒトへ臨床応用する際、既知のニワトリ型、アフリカツメガエル型などの異種の生物種のノッチリガンドでは種特異性、抗原性の問題がある。このため未だ報告のないヒト型のノッチリガンドを取得することは不可欠である。そこで、本発明者はノッチリガンド分子に共通するDSLドメインとEGF様ドメインを有する分子で、ヒト型ノッチ(TAN−1など)のリガンドであるヒトデルタホモログ(以下ヒトデルタ)及びヒトセレイトホモログ(以下ヒトセレイト)が存在すると考え、これらの発見は未分化細胞の分化制御に有効な医薬品の候補となると考え、それらの発見に努めた。
その結果、本発明者は以前の出願においてヒトノッチリガンド分子としてヒトデルタ−1、ヒトセレイト−1、ヒトセレイト−2分子の3種の分子の遺伝子クローニングを行い、それらの分子が血液未分化細胞に作用することを見いだしている。(国際公開番号WO97/19172分化抑制ポリペプチド及びWO98/02458分化抑制剤を参照)
ヒトノッチリガンド分子に関して、最新の報告によるとヒトデルタ−1に関しては国際公開番号WO97/01571において不完全かつ全長ではないヒトデルタ−1らしき分子の部分遺伝子並びに部分アミノ酸配列が示され、また、ヒトセレイト−1(ヒトジャグド−1)については国際公開番号WO96/27610において全長遺伝子並びに全長アミノ酸配列が、またヒトセレイト−2(ヒトジャグド−2)に関しては同出願において全長ではない部分遺伝子並びに部分アミノ酸配列が示されているが、遺伝子配列において何らかの間違いがあるらしくフレームシフトをおこしてカルボキシ末端のアミノ酸配列が本発明者により国際公開番号WO98/02458分化抑制剤に示されたものと全く異なっており、さらにアミノ末端に関しては遺伝子クローニングされておらず遺伝子配列並びにアミノ酸配列は不完全なものとなっている。また、遺伝子配列データベースGenbankリリース98(1996年12月)において配列を検索するとヒトセレイト−1については4つのエントリーがあり、HSU61276、HSU73936、HSU77720及びHSU77914として登録されているが、他のヒトノッチリガンド分子に関しては該データベース上には認められなかった。
発明が解決しようとする課題
本発明の課題は、上記の3つの分子以外の新規なノッチリガンド分子の遺伝子配列、アミノ酸配列を明らかにし、この新規ノッチリガンド分子を提供し、この分子を用いた新しい治療方法を提供することにある。
課題を解決する手段
本発明者はさらに新しいヒトノッチリガンドの探索のため、上記のヒトデルタ−1遺伝子を用いたクロスハイブリダイーゼーション法にておこなった。
ヒトデルタ−1遺伝子の取得は、参考例1および2、並びに国際公開番号WO97/19172に従ってを行うことができる。また、ヒトデルタ−1の全アミノ酸配列をコードするcDNA、すなわち配列表の配列番号8の179番から2347番の配列を有するDNAを含むベクターpUCDL−1Fを大腸菌JM109に遺伝子導入した形質転換細胞は、E.coli:JM109−pUCDL−1Fとして日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号に所在の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。寄託日は平成8年10月28日であり、寄託番号はFERM BP−5728。
このヒトデルタ−1遺伝子の色々な長さ部分遺伝子調製し、これらをプローブとして用い、多くのcDNAライブラリーを色々なハイブリダイーゼション条件でスクリーニングを行い、クロスハイブリダイゼーションにて新たなノッチリガンド様分子を発見すべく進めた。
そして、鋭意研究の結果、ヒト胎児肺cDNAライブラリーよりノッチリガンド分子に共通するDSLドメインを有している新規分子、新規ヒトデルタ−2のアミノ酸配列をコードするcDNAの単離に成功し、このcDNAを用いて各種形態を有する蛋白質の発現系を作製した。また、これらの蛋白質の精製法を確立し、精製を行い単離した。
新規ヒトデルタ−2のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1から3に示し、それらをコードするDNA配列を配列表の配列番号4に示した。
このようにして作製された蛋白質の生理作用を神経未分化細胞、前脂肪細胞、肝細胞、筋芽細胞、皮膚未分化細胞、血液未分化細胞、免疫未分化細胞など、多数の細胞を用いて探索した。その結果、この新規ヒトデルタ−2は血液未分化細胞に対して分化制御作用を有し、かつ未分化な状態に維持する生理作用を有することを見いだした。また、さらに血管内皮細胞に対し、増殖抑制作用を有することを見出した。
さらにマウスに対する毒性試験では明らかな毒性は観察されず有効な医薬品となる効果を示し、本発明が完成した。したがって本発明分子を含む薬剤、本発明分子を含む培地、本発明分子が固定化された器材は、血液未分化細胞などの未分化細胞を未分化な状態で保つことができる全く新しい医薬品、医療品である。また該ヒトデルタ−2を免疫原として抗体を作製し、精製法を確立し、本発明が完成した。
すなわち、本発明は少なくとも配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を含有するポリペプチド、少なくとも配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を含有するポリペプチド、少なくとも配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を含有するポリペプチドから構成され、未分化細胞の分化抑制作用を有する該ポリペプチド、未分化細胞が脳神経、筋肉系未分化細胞以外の未分化細胞である未分化細胞の分化抑制作用を有する該ポリペプチド、未分化細胞が血液未分化細胞である未分化細胞の分化抑制作用を有する該ポリペプチド、また、血管細胞に作用する該ポリペプチドに関する。また、これらポリペプチドを含有する医薬組成物、細胞の分化抑制作用を有する該医薬品組成物、細胞が血液未分化細胞である該医薬品組成物、血管細胞の調節作用を有する該医薬品組成物に関し、さらに、これらポリペプチドを含有する細胞培養培地、またこの培地が血液未分化細胞用の細胞培養培地、これらポリペプチドが固定化された器材に関する。また、該培地もしくは該器材を用いた細胞の培養方法、細胞が血液未分化細胞である該培養方法に関する。
さらに、少なくとも配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNA、少なくとも配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする該DNA、少なくとも配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードする該DNA、配列表の配列番号4に記載の遺伝子配列の355番から927番の遺伝子配列を有する該DNA、配列表の配列番号4に記載の遺伝子配列の355番から1854番の遺伝子配列を有する該DNA、配列表の配列番号4に記載の遺伝子配列の355番から2331番の遺伝子配列を有する該DNAに関し、これらのDNA群の中から選ばれるDNAと、宿主細胞中で発現可能なベクターDNAと連結してなる組み換えDNA体、これら組み換えDNA体により形質転換された細胞、該細胞と共にヒト由来細胞を培養する培養方法、また、該形質転換された細胞を培養し培養物中より生産された化合物を採取することを特徴とする該ポリペプチドの製造方法、また、配列表の配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドを特異的に認識する抗体に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。
遺伝子操作に必要なcDNAの作製、ノーザンブロットによる発現の検討、ハイブリダイゼーションによるスクリーニング、組換えDNAの作製、DNAの塩基配列の決定、cDNAライブラリーの作製等の一連の分子生物学的な実験は通常の実験書に記載の方法によって行うことができる。前記の通常の実験書としては、たとえば、Maniatisらの編集した Molecular Cloning,A laborartory manual,1989,Eds.,Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T.,Cold Spring Harbor Loboratory Pressを挙げることができる。
本発明のポリペプチドは少なくとも配列表の配列番号1から3のアミノ酸配列からなるポリペプチドを有するが、自然界で生じることが知られている生物種内変異、アレル変異等の突然変異及び人為的に作製可能な点変異による変異によって生じる改変体も、それらが配列表の配列番号1から3のポリペプチドの性質を失わない限り本発明の新規化合物に含まれる。そのアミノ酸の改変、置換に関しては例えばBennettらの出願(国際出願番号WO96/2645)などに詳しく記載されており、これらを参考にして作製することができる。
また、配列表の配列番号1から3のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA配列については配列表の配列番号4にアミノ酸配列とともに示した。この遺伝子配列に関し、アミノ酸レベルの変異がなくとも、自然界から分離した、染色体DNA、またはcDNAにおいて、遺伝コードの縮重により、そのDNAがコードするアミノ酸配列を変化させることなくDNAの塩基配列が変異した例はしばしば認められる。さらに、これらの配列は人為的にも改変が可能である。また、5’非翻訳領域及び3’非翻訳領域はポリペプチドのアミノ酸配列の規定には関与しないので、それらの領域のDNA配列は変異しやすい。このような遺伝コードの縮重によって得られる塩基配列も本発明のDNAに含まれる。
本発明で記載する未分化細胞とは、特定の刺激によって増殖可能な細胞であり、かつ特定の刺激によって特定の機能を有する細胞に分化可能な細胞と規定され、これらの中には皮膚組織系の未分化細胞、脳神経系の未分化細胞、筋肉系の未分化細胞、血液系の未分化細胞などが含まれ、各々幹細胞といわれる自己複製能力を有しかつその系統の細胞を生み出す能力を有する細胞を含む。また、分化抑制作用とは、これらの未分化細胞が自律的もしくは他律的に分化する現象を抑制する作用であり、具体的には未分化な状態を維持する作用である。また、脳神経系未分化細胞とは、特定の刺激に伴い、特定の機能を有する脳、神経の細胞にのみ分化する能力を有する細胞と規定できる。また、筋肉系未分化細胞とは特定の刺激に伴い、特定の機能を有する筋肉細胞にのみ分化する能力を有する細胞と規定される。また、本発明で記載する血液未分化細胞とは、血液コロニーアッセイで同定が可能な特定の血液系列に分化することが運命づけられた血液前駆細胞および全ての系列への分化能と自己複製能を有する造血幹細胞を含む細胞群と規定される。また、本発明において血管細胞とは血管内皮細胞を主構成細胞とする血管を構成する細胞の総称である。
配列表において、
配列表の配列番号1のアミノ酸配列は本発明の新規ヒトデルタ−2のシグナルペプチドを除いた活性中心の配列、すなわちアミノ末端からDSLドメインまでのアミノ酸配列であり、配列番号3に示した本発明の新規ヒトデルタ−2の成熟型全長アミノ酸配列のアミノ酸番号1番から191番に相当している。
配列番号2のアミノ酸配列は、本発明の新規ヒトデルタ−2のシグナルペプチドを除いた細胞外ドメインの配列であり、配列番号3に示した本発明の新規ヒトデルタ−2成熟型全長アミノ酸配列のアミノ酸番号1番から500番に相当している。
配列番号3のアミノ酸配列は、本発明の新規ヒトデルタ−2の成熟型全長アミノ酸配列である。
配列番号4の配列は本発明の新規ヒトデルタ−2のcDNA配列およびそのコード領域に対応する全アミノ酸配列である。
配列番号5は本発明で使用したFLAGペプチドをコードするDNA配列及びFLAGペプチドアミノ酸配列である。
配列番号6及び7は参考例1で使用したプライマーのDNA配列である。
配列番号8は本発明で使用したヒトデルタ−1の全アミノ酸配列及びそれをコードするcDNA配列である。
配列番号9、10、12及び13は実施例1で使用したプライマーのDNA配列である。
配列番号11は実施例1で使用したプローブのDNA配列である。
配列番号14は実施例1及び2で使用したプローブのDNA配列である。
配列番号15及至24は実施例3で使用したプライマーのDNA配列である。
なお、配列表に記載されたアミノ酸配列の左端及び右端はそれぞれアミノ基末端(以下N末)及びカルボキシル基末端(以下C末)であり、また塩基配列の左端及び右端はそれぞれ5’末端及び3’末端である。
未知のヒトノッチリガンドの遺伝子をクローニングするために次の方法が考え得る。ヒトノッチリガンドは生物の進化の過程で、ある程度アミノ酸配列、遺伝子配列が保存されていることから、別のノッチリガンド分子の遺伝子をプローブに用いてクローニングすることは原理的に可能である。しかしながら、このようなクロスハイブリダイゼーション法においては、どの部分をプローブとして用いるのが適当であるか、ハイブリダイゼーションの条件はどのようにするかなど多くの検討点があり、決して容易ではない。また、クロスハイブリダイゼーション法は多くの類似の遺伝子を同時にクローニングしてしまうため遺伝子配列解析に時間がかかるため、クローニングした遺伝子が目的の分子であるかどうか同定することは極めて困難であった。
本発明者はヒトデルタ−1遺伝子から10種類以上の遺伝子断片を作製し、これらをプローブとして10種類以上の異なる臓器由来のcDNAライブラリーのスクリーニングを数多くのハイブリダイゼーション条件、洗浄条件にて行ない、新しいデルタ様分子の発見に努めた。
このプラークハイブリダイゼーションにおいてプローブをアイソトープ標識、及び各種非アイソトープ標識し、ライブラリーをスクリーニングすることによってクローンを得ることができる。アイソトープの標識法としては例えば[32P]γ−ATPとT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて末端をラベルする方法や、他のニックトランスレーション法またはプライマー伸長法などによる標識法が利用できる。
その結果、本発明者は実施例1において、配列表の配列番号8に示したヒトデルタ−1の全長遺伝子の部分遺伝子、すなわち配列表の配列番号11に示した遺伝子配列を有するプローブを用いてヒト胎児肺cDNAライブラリーをスクリーニングを行い、1次スクリーニングではおよそ120個のポジティブプラークを分離し、2次スクリーニングにおいて、およそ80個のポジティブプラークをクローン化し、これらのクローンの遺伝子配列の決定をおこなった。これらをクローニングした遺伝子の大半はプローブに用いたヒトデルタ−1遺伝子であったが、この中の5つのクローンがヒトデルタ−1に類似した本発明の新規ヒトデルタ−2遺伝子であることであることが判明し、目的の新規ノッチリガンド分子を見いだすことに成功した。
しかしながら上記の5つのクローン中にはシグナルシークエンス並びにアミノ末端の配列が含まれていなかったために、さらに全長遺伝子を入手するために配列表の配列番号14に示した遺伝子配列を有する新しいプローブを作製し、さらに該ヒト胎児肺cDNAライブラリーを再度スクリーニングして全長遺伝子のクローニングに成功した。
この配列をデータベース(Genbankリリース98、1996年12月)で比較したところ、これらは新規な配列であった。
cDNAを組み込むプラスミドとしては、実施例1に記載したpBluescript KS以外にも、例えば大腸菌由来のpBR322、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119(いずれも日本国宝酒造社製)などが挙げられるが、その他のものであっても宿主内で複製増殖できるものであればいずれも用いることができる。またcDNAを組み込むファージベクターとしては、例えばλgt10、λgt11などが挙げられるが、その他のものであっても宿主内で増殖できるものであれば用いることができる。このようにして、得られたプラスミドは適当な宿主、例えばエシェリヒア(Escherichia)属菌、バチルス(Bacillus)属菌などにカルシウムクロライド法等を用いて導入する。上記エシェリヒア属菌の例としては、エシェリヒア コリK12HB101、MC1061、LE392、JM109などが挙げられる。上記バチルス属菌の例としてはバチルス、サチリスMI114等が挙げられる。また、ファージベクターは、例えば増殖させた大腸菌にインビトロパッケージング法(Enquist and Sternberg、Meth.Enzymol.,68,281−,1979)を用いて導入することができる。
該アミノ酸配列をKyte−Doolittleの方法(J.Mol.Biol.157:105,1982)に従って、アミノ酸配列から疎水性部分、親水性部分を解析した。その結果、本発明の新規ヒトデルタ−2は細胞膜通過部分を1つ有する細胞膜蛋白質として、細胞上に発現されることが明らかとなった。
新規ヒトデルタ−2のアミノ酸配列の解析によれば、新規ヒトデルタ−2の前駆体のアミノ酸配列は配列表の配列番号4のアミノ酸配列に示す685アミノ酸残基からなり、シグナルペプチド領域は同配列表のアミノ酸配列の−26番のメチオニンから−1番のグリシンにあたる26アミノ酸残基、細胞外領域は同配列表の1番のセリンから500番のセリンにあたる500アミノ酸残基、細胞膜通過領域は同配列表のアミノ酸配列の501番のフェニルアラニンから526番のバリンにあたる26アミノ酸残基、細胞内領域は同配列表の527番のアルギニンから659番のバリンにあたる133アミノ酸残基が該当することが推定された。ただし、これらの各部分は、あくまでもアミノ酸配列から予測されたドメイン構成であり、実際に細胞上および溶液中での存在形態は、上記の構成と若干異なることも十分考えられ、上記に一応規定された各ドメインの構成アミノ酸が、5から10アミノ酸配列前後することも考えられる。
少なくとも、実施例5に記載したようにCOS−7細胞で発現させ、生産、精製した該ヒトデルタ−2ポリペプチドのN末端アミノ酸配列は配列表の配列番号2の1番目のセリンから始まるアミノ酸配列を有している。同様に他の動物細胞で発現させた場合でも同一のN末端を有することが期待される。
本発明分子新規ヒトデルタ−2の1997年4月時点までに報告のあるノッチリガンド分子との全長アミノ酸配列の比較では、ヒト由来の分子としてヒトデルタ−1(配列表の配列番号8のアミノ酸配列)とは48.5%、ヒトセレイト−1(Genbank HSU61276及びHSU73939)とは40.3%、ヒトセレイト−2(本発明者ら出願番号平8−18622分化抑制剤)とは42.7%であり、他の脊椎動物のデルタに関してはマウスデルタ−1(Dll1、Genbank MMDELTA1)とは48.7%、カエルデルタ−1(Genbank XELXDEL)とは47.0%、カエルデルタ−2(Genbank XLU70843)とは49.7%、ニワトリデルタ−1(Genbank GGU26590)とは47.9%であった。
これらの結果から、本発明の新規ヒトデルタ−2はヒトのみならず、他種の生物ホモログですら全く報告のない新規な分子であることが明らかであり、これらの物質とは異なる新規なアミノ酸配列を有する新規な物質であり、本発明の発明者により初めて明らかにされた物質である。また、上記のデータベース上の全ての生物種の検索においても新規ヒトデルタ−2と同一配列を有するポリペプチドは見いだされなかった。
ノッチのリガンドホモログは進化論的に保存された共通の構造配列を有している。すなわちDSL配列と繰り返して存在するEGF様配列である。新規ヒトデルタ−2とヒトデルタ−1との比較により、新規ヒトデルタ−2のアミノ酸配列からこれら保存された構造配列を推定した。
すなわち、DSL配列は配列表の配列番号4のアミノ酸配列の149番のシステインから191番のシステインにあたる43アミノ酸残基に相当した。EGF様配列は8回繰り返して存在し、配列表の配列番号4のアミノ酸配列のうち、第1EGF様配列は196番システインから224番システインまで、第2EGF様配列は227番システインから255番システインまで、第3EGF様配列は262番システインから295番システインまで、第4EGF様配列は302番システインから333番システインまで、第5EGF様配列は340番システインから373番システインまで、第6EGF様配列は380番システインから411番システインまで、第7EGF様配列は418番システインから449番システインまで、第8EGF様配列は458番システインから491番システインに該当した。
新規ヒトデルタ−2のアミノ酸配列から予想されることとして、糖鎖が付加される部分はN−アセチル−D−グルコサミンがN−グリコシド結合可能な部分として、配列表の配列番号4のアミノ酸配列の82番、157番、179番、367番の4カ所のアスパラギン残基が挙がられる。また、N−アセチル−D−ガラクトサミンのO−グリコシド結合を推定する部分として、セリンまたはスレオニン残基が頻出する部分が考えられる。これらの糖鎖が付加されたタンパクの方がポリペプチドそのものよりも一般に生体内での分解に対して安定であり、また強い生理活性を有していると考えられる。したがって、配列表の配列番号1、2または3の配列を含有するポリペプチドのアミノ酸配列の中にN−アセチル−D−グルコサミンがN−グルコシドやN−アセチル−D−ガラクトサミンなどの糖鎖がN−グリコシドあるいはO−グルコシド結合してなるポリペプチドも本発明に含まれる。実施例5に示したように本発明のヒトデルタ−2はCOS−7細胞に遺伝子導入して発現させると、糖鎖の付加により異なる分子量を有する蛋白質として、少なくとも2種類以上の形態をとって発現される。
ショウジョウバエノッチおよびそのリガンドの結合に関する研究により、ショウジョウバエノッチのリガンドがノッチに結合するために必要なアミノ酸領域は、シグナルペプチドが切断された成熟体蛋白質のN末からDSL配列までであることが明らかにされている(国際公開番号WO92/19734)。また、同様に線虫を用いたFitzgeraldとGreenwald(Development、121、4275−4282、1995)の研究からノッチリガンド様分子APX−1はノッチ様リセプターの活性化にとって全長のアミノ末端からDSLドメインまで十分であることが明らかにされている。
これらのことから、ヒトノッチリガンド分子のリガンド作用発現に必要な領域は少なくともDSLドメイン、すなわち配列表の配列番号1のアミノ酸配列の149番のシステインから191番のシステインを含む領域であり、また、少なくともヒトデルタ−1のリガンド作用の発現に必要な領域は配列表の配列番号1に示した新規アミノ酸配列であり、更に少なくともヒトセレイト−1のリガンド作用の発現に必要な領域は配列表の配列番号2に示した新規アミノ酸配列であることがわかる。
また、実施例2に示したように、配列表の配列番号4の遺伝子配列の一部もしくは全部をコードするDNAを用いれば、新規ヒトデルタ−2のmRNAの検出が可能である。たとえば、これらの遺伝子の発現を調べる方法として、配列表の配列番号4の一部の遺伝子配列を有する12merから16mer以上、さらに望ましくは20mer以上の相補し得る核酸、つまりアンチセンスDNA、RNA、及びそれらがメチル化、メチルフォスフェート化、脱アミノ化、またはチオフォスフェート化された誘導体を用い、ハイブリダイゼーション、PCR等の手法によって行うことが出来る。同様な方法でマウス等の他の生物の本遺伝子のホモログの検出や遺伝子クローニングができる。さらに、ヒトを含めたゲノム上の遺伝子のクローニングも同様に可能である。従って、そのようにしてクローニングされたこれら遺伝子を用いれば、ヒトデルタ−2の更に詳細な機能も明らかにすることが出来る。例えば、近年の遺伝子操作技術を用いれば、トランスジェニックマウス、ジーターゲッティングマウス、また、本遺伝子と関連する遺伝子を共に不活化したダブルノックアウトなどのあらゆる方法を用いることが出来る。また、本遺伝子のゲノム上の異常があれば、遺伝子診断、遺伝子治療への応用も可能である。
尚、本発明の新規ヒトデルタ−2の全アミノ酸配列をコードするcDNAを含むベクターpBSDL−2を大腸菌JM109に遺伝子導入した形質転換細胞は、E.coli:JM109−pBSDL−2として日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号に所在の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。寄託日は平成9年5月9日であり、寄託番号はFERM BP−5941。
新規ヒトデルタ−2ポリペプチドを生産する方法は実施例3に示したように、発現ベクターpcDNA3を用いて行うことができる。さらに、上記の方法にて分離した新規ヒトデルタ−2のアミノ酸配列をコードするcDNAを用いた色々な形態を有した新規ヒトデルタ−2ポリペプチドの生産、精製には多数の方法が成書によって知られている(Kriegler, Gene Transfer and Expression−A Laboratory Manual Stockton Press,1990.および横田ら、バイオマニュアルシリーズ4,遺伝子導入と発現・解析法,羊土社、1994)。すなわち、分離した該ヒトデルタ−2のアミノ酸配列をコードするcDNAを適当な発現ベクターにつなぎ、動物細胞、昆虫細胞などの真核細胞、バクテリアなどの原核細胞を宿主として生産させることができる。
本発明の新規ヒトデルタ−2を発現させる際に、本発明のポリペプチドをコードするDNAはその5’末端に翻訳開始コドンを有し、また、3’末端には翻訳終止コドンを有してもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。更に該DNAを発現させるには上流にプロモーターを接続する。ベクターとしては上記の大腸菌由来プラスミド、枯草菌由来プラスミド、酵母由来プラスミド、あるいはλファージなどのバクテリオファージおよびレトロウィルス、ワクシニアウィルスなどの動物ウィルスなどが挙げられる。
本発明に用いられるプロモーターとしては、遺伝子発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
形質転換する際の宿主がエシェリヒア属菌である場合はtacプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーターなどが好ましく、宿主がバチルス属菌である場合にはSPO1プロモーター、SPO2プロモーターなどが好ましく、宿主が酵母である場合にはPGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。
宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウィルスのプロモーター、メタルチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーターなどが利用できる。
本発明のポリペプチドを発現させる時、配列表の配列番号1、2もしくは3のアミノ酸配列をコードするDNAのみでもかまわないが、産生されたポリペプチドの検出を容易にするための既知抗原エピトープをコードするcDNAを付加したり、多量体構造を形成させるためにイムノグロブリンFcをコードするcDNAを付加することで、特別の機能を付加した蛋白質を生産させることもできる。
新規ヒトデルタ−2に関して本発明者は実施例3に示したごとく、細胞外タンパク質を発現する発現ベクターとして、
1)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1番から500番のアミノ酸をコードするDNA、
2)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1番から500番のアミノ酸のC末側に8アミノ酸、すなわちAsp Tyr Lys Asp Asp Asp Asp Lysのアミノ酸配列(以下FLAG配列、配列表の配列番号5にこれをコードするDNA配列の1例を示す)を持つペプチドを付加したキメラタンパク質をコードするDNA、および
3)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の1番から500番のアミノ酸のC末側にヒトIgG1のヒンジ部分以下のFc配列を付加し、ヒンジ部分のジスルフィド結合により2量体構造を有するキメラタンパク質をコードするDNA、
を各々発現ベクターpcDNA3(米国INVITROGEN社)に各々別々につなぎ、新規ヒトデルタ−2の細胞外部分発現ベクターを作製した。
また、新規ヒトデルタ−2の全長タンパク質を発現する発現ベクターとして、
4)配列表の配列番号3の1番から659番のアミノ酸をコードするDNA、および
5)配列表の配列番号3の1番から659番のアミノ酸のC末端側にFLAG配列を持つペプチドを付加したキメラタンパク質をコードするDNAを発現ベクターpcDNA3に各々別々につなぎ、新規ヒトデルタ−2の全長発現ベクターを作製した。
このようにして構築された該ヒトデルタ−2をコードするDNAを含有する発現プラスミドを用いて、形質転換体を製造した。
宿主としては例えばエシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、動物細胞などが挙げられる。動物細胞としては、例えばサル細胞であるCOS−7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO、カイコ細胞SF9などが挙げられる。
実施例4に示したごとく、上記の1)〜5)の発現ベクターをそれぞれ別々に遺伝子導入し、ヒト新規ヒトデルタ−2をCOS−7細胞(理化学研究所、細胞開発銀行から入手可能、RCB0539)で発現させ、これら発現プラスミドで形質転換された形質転換体が得られる。さらに、各形質転換体をそれぞれ公知の方法により、適当な培地中で適当な培養条件により培養することによって各種新規ヒトデルタ−2ポリペプチドを製造することができる。
実施例5に示したごとく、上記の様な培養物から新規ヒトデルタ−2ポリペプチドを分離精製することができる。また、一般的には下記の方法により行うことができる。
すなわち、培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法、たとえば遠心分離法などで菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破砕した後、遠心分離や濾過により粗抽出液を得る方法などを適宜用いることができる。緩衝液の中に尿素、塩酸グアニジンなどのタンパク変性剤や、トリトンX−100などの界面活性剤が含まれていてもよい。培養溶液中に分泌される場合には、培養液を公知の方法、たとえば遠心分離法などで菌体あるいは細胞と分離し、上清を集める。
このようにして得られた細胞抽出液あるいは細胞上清に含まれる新規ヒトデルタ−2は公知のタンパク質精製法を用いることで、精製できる。その精製の過程でタンパク質の存在を確認するために、上記に示したFLAG、ヒトIgGFcなどの融合タンパクの場合には、それら既知抗原エピトープに対する抗体を用いたイムノアッセイで検出して精製を進めることができる。また、このような融合タンパク質として発現させない場合には、実施例6に記載した抗体を用いて検出することができる。
新規ヒトデルタ−2を特異的に認識する抗体は実施例6に示したように作製することができる。また成書(Antibodies a laboratory manual,E.Harlow et al.,Cold Spring Harbor Laboratory)に示された各種の方法ならびに遺伝子クローニング法などにより分離されたイムノグロブリン遺伝子を用いて、細胞に発現させた遺伝子組換え体抗体によっても作製することができる。このように作製された抗体は新規ヒトデルタ−2の精製に利用できる。すなわち、実施例6に示したこれらの新規ヒトデルタ−2を特異的に認識する抗体を用いれば、本発明の新規ヒトデルタ−2の検出、測定が可能であり、細胞の分化異常に伴う疾患例えば悪性腫瘍など疾患の診断薬として使用でき得る。
精製方法としてより有効な方法としては抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。この際に用いる抗体としては実施例6に記載した抗体を用いることができる。また、融合タンパクの場合には、実施例5に示したように、FLAGであればFLAGに対する抗体、ヒトIgGFcであればProtein G、Protein Aを用いることができる。
このように精製された新規ヒトデルタ−2タンパクの生理機能を、各種細胞株、マウス、ラットなどの生物個体を用いた各種生理活性アッセイ法、分子生物学的手法に基づく細胞内シグナル伝達の各種アッセイ法、ノッチリセプターとの結合などの色々なアッセイ法にて知ることができる。
本発明者は新規ヒトデルタ−2のIgG1キメラ蛋白質を用いて、血液未分化細胞への作用を観察した。すなわち、実施例7に示したようにCD34陽性細胞画分を濃縮した臍帯血由来血液未分化細胞において、各種サイトカイン存在下でコロニー形成する血液未分化細胞に対してコロニー形成作用の抑制活性を有することを見いだした。
またさらに、実施例8に記載したようにCD34陽性細胞画分を濃縮した臍帯血由来血液未分化細胞を各種サイトカイン存在下の無血清培養条件でヒトデルタ−2存在下で2週間培養を行い、ヒト血液未分化細胞の中で最も未分化な造血幹細胞としてされているLTC−IC(Long−Term Culture−Initiating Cells)を計測した結果、その数を維持する活性が見出された。ついで、実施例9に示したようにヒトデルタ−2はヒト血液未分化細胞に結合することを見出した。
この結果から、新規ヒトデルタ−2は血液未分化細胞の分化を抑制し、それらの作用は血液幹細胞からコロニー形成細胞にわたって作用することが明らかである。これらの生理作用は血液未分化細胞の体外増殖に必要な作用であり、特に新規ヒトデルタ−2を含有する細胞培養培地で培養した細胞は抗癌剤投与後の骨髄抑制回復に有効であり、他の条件を整えることにより体外での造血幹細胞の増幅を可能とするであろう。さらに、医薬品として用いた場合には、抗癌剤などの副作用で見られる骨髄抑制作用を保護し、軽減する作用がある。
また、これらの実験において、このLTC−IC維持活性、並びに血液細胞に対する結合は本発明者により先に同様な活性が示されたヒトデルタ−1(WO97/19172)よりも本発明の新規ヒトデルタ−2は血液細胞に対し強い活性を有していることが示された。
実施例9に示したようにCD34陽性の血液未分化細胞にヒトデルタ−2のIgG1キメラ蛋白質は結合する。この結合することから本発明のポリペプチドは細胞の分離や検出に用いることができる。分離方法としては実施例9に記載したフローサイトメーターを用いた方法でもかまわないが、実施例11に記載した本発明のポリペプチドを固定化した器材を用いる方が簡便と考えられる。したがって、本発明のポリペプチドを用いた細胞の分離方法も本願に含まれ、さらに本発明のポリペプチドを固定化した器材を用いた細胞の分離方法、この分離方法に応用した細胞の分離装置も本願に含まれる。これら分離装置並びに分離方法に関しては、色々な成書に示されている抗体を用いた細胞分離方法の全てが利用できる。例えば、磁気ビーズと抗体を組み合わせたノルウェー国Dynal社のダイナビーズが利用できる。
またさらに、実施例12に示したように本発明新規ヒトデルタ−2のIgG1キメラ蛋白質は血管内皮細胞の増殖に対して抑制的作用を有しており、血管新生作用を阻害する活性を有する。したがって、FolkmanとKlagsbrun(Science 235,442−447、1987)によって提唱された血管新生を抑制することで治療できるであろう疾患、病態に対する治療薬剤として使用できる。具体的な用途に関しては上記の参考文献に記されているが、例えば悪性腫瘍等の疾患を挙げることができる。
さらに、血液細胞、血管細胞以外の未分化細胞においても、細胞の分化を抑制する作用が主に期待でき、また組織再生を促す作用等が期待できる。
医薬品として用いるならば、本発明のポリペプチドを適当な安定化剤、例えばヒト血清アルブミンなどと共に凍結乾燥品を作製し、用時注射用蒸留水にて溶解もしくは懸濁して使用し得る形状が望ましい。例えば0.1から1000μg/mlの濃度に調製した注射剤、点滴剤として提供することができる。本発明者は実施例13に示したように本発明の化合物1mg/ml、ヒト血清アルブミン5mg/mlとなるようにバイアルに小分けし、長期にわたって該化合物の活性は保持された。さらに、細胞を体外にて培養、活性化させる場合には医薬品同様に、凍結乾燥品、もしくは溶液剤を作製して、培地に加える、もしくは培養に使用する容器に固定化することができる。また、本発明のポリペプチドの毒性については、マウスに対していずれのポリペプチドも10mg/Kgを腹腔内投与したがマウスの死亡例は確認されなかった。
また、本発明のインビトロの生理活性は、あらゆる疾患モデルマウス、またはそれらに準ずる疾患に似た症状を呈するラット、サル等の動物をモデルとして投与を行い、その身体的、生理的な機能の回復、異常を調べることにより可能となる。例えば、造血細胞に関する異常であれば、5−FU系の抗癌剤を投与して、骨髄抑制モデルマウスを作製し、このマウスに本発明の化合物を投与した群としなかった群の骨髄細胞、末梢血細胞の数、生理的な機能を調べることで明らかになる。また更に、体外で造血幹細胞を含む造血未分化細胞の培養、増殖を調べる場合には、マウス骨髄細胞を培養器などを利用して、培養を行い、その際に本発明の化合物を加えた群と加えなかった群で培養後の細胞を致死量放射線照射マウスに細胞移植を行い、その結果の回復の度合いを、生存率、血球数の変動などを指標にすることで調べることが出来る。勿論、これらの結果が人にも外挿できるため、本化合物の薬効としての評価として有効なデータを得ることが出来る。
本発明の化合物を医薬品として利用する場合、その適応として、細胞の分化異常に伴う疾患、例えば白血病、悪性腫瘍の治療があげられ、体外でヒト由来細胞を培養して、その本来の機能を保ったまま増殖させる、もしくは新たな機能を持たせる等を行う細胞治療、組織損傷後の再生時に投与することにより本来その組織が有していた機能を損なうことなく再生させる治療法などの応用が可能である。その際の投与量としてはその形態などにもよるが、具体的には10μg/Kgから10mg/Kg程度投与すればよい。
また、さらに強い生理活性を有する形態として、多量体を形成し得る形態で発現させることが望ましい。
多量体構造を有する新規ヒトデルタ−2は、実施例3および4に記載したヒトIgGのFc部分とのキメラタンパク質として発現させて抗体のヒンジ部分によりジスルフィド結合をした多量体として発現させる方法、また、抗体認識部位をC末端もしくはN末端に発現するキメラタンパクとして発現させ、発現させた該ヒトデルタ−2の細胞外部分を含むポリペプチドをC末端もしくはN末端の抗体認識部位を特異的に認識する抗体と反応させることにより多量体を形成させる方法が挙げられる。さらに、別の方法として、抗体のヒンジ領域部分のみとの融合タンパクを発現させて、ジスルフィド結合にて2量体を形成させる方法、もしくはその他の新規ヒトデルタ−2の活性に何等影響を与えない方法でジスルフィド結合を生じさせる形のペプチドをC末端、N末端もしくはその他の部位に発現するように作成された融合タンパクから構成された2量体以上の高い比活性を有する多量体型新規ヒトデルタ−2を得ることもできる。また、さらに配列表の配列番号1、2及び3のアミノ酸配列を含むポリペプチドから選ばれる1つ以上のポリペプチドを遺伝子工学的に2つ以上直列にもしくは並列に並べ多量体構造を発現させる方法などもある。その他、現在知られている2量体以上の多量体構造を持たせるあらゆる方法が適応可能である。したがって、遺伝子工学的な技術により作製される2量体もしくはそれ以上の形態を有する形の配列表の配列番号1、2及び3に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む化合物に関しても本発明に含まれる。
また、その他の方法として、化学的な架橋剤を用いて多量体化する方法が挙げられる。例えば、リシン残基を架橋するジメチルスベロイミデート2塩酸塩など、システイン残基のチオール基で架橋するN−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドなど、アミノ基とアミノ基を架橋するグルタールアルデヒドなどが挙げられ、これらの架橋反応を利用して、2量体以上の多量体を形成させることができる。したがって、化学的な架橋剤により作製される2量体もしくはそれ以上の多量体の形態を有す形の配列表の配列番号1、2もしくは3に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む化合物に関しても本発明に含まれる。
体外において細胞を増殖、活性化し、体内に細胞を戻す医療方法への適応には、上記のような形態を有した新規ヒトデルタ−2を直接培地中に加えることも可能だが、固定化する事も同様に可能である。固定化の方法としてはこれらのポリペプチドのアミノ基、カルボキシル基を利用したり、適当なスペーサーを用いたり、上記の架橋剤を用いたりして、培養容器にポリペプチドを共有結合させることができる。実施例11に固定された器材の作製方法並びにその効果の一例を示した。したがって、固体表面に存在する形態を有す配列表の配列番号1、2もしくは3のアミノ酸配列を含有するポリペプチドに関しても本発明に含まれる。
また、自然界に存在する新規ヒトデルタ−2は細胞膜蛋白質であることから、これらの分子を発現する細胞と血液未分化細胞を共培養することによっても、実施例7、8、および12で行った分化抑制作用を発現させることができる。したがって、配列表の配列番号1、2もしくは3のアミノ酸配列をコードするDNAを用いて形質転換するした細胞と未分化細胞を共培養する方法についても本発明に含まれる。実施例10にその一例を示した。発現させる細胞は実施例で示したサル由来COS−7細胞、マウス由来Balb3T3細胞でもかまわないが、ヒト由来の細胞が望ましく、また更に発現させる細胞は細胞株ではなくヒトの体内の血液細胞でも体細胞でもかまわない。したがって、遺伝子治療用のベクターに組み込んで体内で発現させることもできる。遺伝子治療用のベクターとしてはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターなどが挙げられる。
また、本発明分子すなわち配列表の配列番号1、2もしくは3のアミノ酸配列を有するポリペプチドとこれらのリセプターとの結合を阻害することは細胞分化を促進する分子、化合物を見つけだす手段として利用できる。その方法としては、ラジオアイソトープなどを用いた結合実験、ノッチリセプターの下流分子である転写調節因子群を用いたルシフェラーゼアッセイ、X線構造解析を行いコンピューター上でのシュミレーションなどあらゆる方法が応用できる。したがって、配列表の配列番号1、2もしくは3のポリペプチドを用いた薬剤スクリーニング方法に関しても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
第1図はヒト各種臓器におけるヒトデルタ−2mRNAの発現を調べたノザンブロットの図である。
第2図はヒト由来T細胞系細胞株Jurkatに対する本発明のHD2EXIGと比較のHD1EXIGの結合を示すものである。
第3図はヒト臍帯血単核球CD34陽性細胞に対する本発明のHD2EXIGと比較のHD1EXIGの結合を示すものである。
発明の実施の形態
以下に発明を実施する形態について参考例、実施例を示すが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
参考例1 ヒトデルタ−1プライマーによるPCR産物のクローニングおよび塩基配列の決定
C−デルタ−1およびX−デルタ−1に保存されたアミノ酸配列に対応した混合プライマー、すなわちセンスプライマーDLTS1(配列表の配列番号6に記載)及びアンチセンスプライマーDLTA2(配列表の配列番号7に記載)を用いた。
合成オリゴヌクレオチドは固相法を原理とする全自動DNA合成機を使用して作成した。全自動DNA合成機としては米国アプライドバイオシステム社391PCR−MATEを使用した。ヌクレオチド、3’−ヌクレオチドを固定した担体、溶液、および試薬は同社の指示に従って使用した。所定のカップリング反応を終了し、トリクロロ酢酸で5’末端の保護基を除去したオリゴヌクレオチド担体を濃アンモニア中にて室温で1時間放置することにより担体からオリゴヌクレオチドを遊離させた。次に、核酸及びりん酸の保護基を遊離させるために、核酸を含む反応液を、封をしたバイアル内において濃アンモニア溶液中で55℃にて14時間以上放置した。担体及び保護基を遊離した各々のオリゴヌクレオチドの精製をアプライドバイオシステム社のOPCカートリッジを使用して行い、2%トリフルオロ酢酸で脱トリチル化した。精製後のプライマーは最終濃度が100pmol/μlとなるように脱イオン水に溶解してPCRに使用した。
これらプライマーを用いたPCRによる増幅は以下のように行った。ヒト胎児脳由来cDNA混合溶液(QUICK−Clone cDNA、米国CLONTECH社)1μlを使用し、10×緩衝液(500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、0.01%ゼラチン)5μl、dNTP Mixture(日本国宝酒造社製)4μl、前述の脊椎動物デルタホモログに特異的なセンスプライマーDLTS1(100pmol/μl)5μlおよびアンチセンスプライマーDLTA2(100pmol/μl)5μl、及びTaqDNAポリメラーゼ(AmpliTaq:日本国宝酒造社製、5U/μl)0.2μlを加え、最後に脱イオン水を加えて全量を50μlとして、95℃で45秒間、42℃で45秒間、72℃を2分間からなる行程を1サイクルとして、この行程を5サイクル行い、さらに95℃で45秒間、50℃で45秒間、72℃を2分間からなる行程を1サイクルとして、この行程を35サイクル行い最後に72℃にて7分間放置してPCRを行った。このPCR産物の一部を2%アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本国日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察し、約400bpのcDNAが増幅されていることを確認した。
PCR産物の全量を低融点アガロース(米国GIBCO BRL社製)にて作成した2%アガロースゲルにて電気泳動し、エチジウムブロマイドにて染色後、紫外線照射下にてデルタプライマーによるPCR産物の約400bpのバンドを切り出し、ゲルと同体積の蒸留水を加え、65℃にて10分間加熱し、ゲルを完全に溶かしたのち、等量のTE飽和フェノール(日本国日本ジーン社製)を加えて、15000rpm5分間遠心分離後上清を分離し、さらに同様な分離作業をTE飽和フェノール:クロロフォルム(1:1)溶液、さらにクロロフォルムにて行った。最終的に得られた溶液からDNAをエタノール沈澱して回収した。
ベクターとしてpCRII Vector(米国Invitorogen社製、以下pCRIIと示す)を用い、ベクターと先のDNAのモル比が1:3となるように混ぜ合わせて、T4 DNAリガーゼ(米国Invitorogen社製)にてベクターにDNAを組み込んだ。DNAが組み込まれたpCRIIを大腸菌One Shot Competent Cells(米国Invitrogen社)に遺伝子導入し、アンピシリン(米国Sigma社製)を50μg/ml含むL−Broth(日本国宝酒造社製)半固型培地のプレートに蒔き、12時間程度37℃に放置し、現れてきたコロニーを無作為選択し、同濃度のアンピシリンを含むL−Broth液体培地2mlに植え付け、18時間程度37℃で振盪培養し、菌体を回収し、ウィザードミニプレップ(米国Promega社製)を用いて添付の説明書に従ってプラスミドを分離し、このプラスミドを制限酵素EcoRIにて消化して、約400bpのDNAが切れ出されてくることで該PCR産物が組み込まれていることを確認し、確認されたクローンについて、組み込まれているDNAの塩基配列を米国アプライドバイオシステム社の螢光DNAシークエンサー(モデル373S)にて決定した。
参考例2 ヒトデルタ−1遺伝子の全長クローニングおよびその解析
ヒト胎盤由来のcDNAライブラリー(λgt−11にcDNAが挿入されたもの、米国CLONTECH社製)からプラークハイブリダイゼーションにて全長cDNAを持ったクローンの検索を1×106相当のプラークから行った。出現したプラークをナイロンフィルター(Hybond N+:米国Amersham社製)に転写し、転写したナイロンフィルターをアルカリ処理(1.5M NaCl、0.5M NaOHを染み込ませたろ紙上に7分間放置)し、次いで中和処理(1.5M NaCl、0.5M Tris−HCl(pH7.2)、1mM EDTAを染み込ませたろ紙上に3分間放置)を2回行い、次にSSPE溶液(0.36M NaCl、0.02M りん酸ナトリウム(pH7.7)、2mM EDTA)の2倍溶液中で5分間振とう後洗浄し、風乾した。その後、0.4M NaOHを染み込ませたろ紙上に20分間放置し、5倍濃度のSSPE溶液で5分間振とう後洗浄し、再度風乾した。このフィルターを用いて放射性同位元素32Pにて標識されたヒトデルタ−1プローブにてスクリーニングを行った。
放射性同位元素32Pにて標識された参考例1で作製されたDNAプローブは以下のように作成した。すなわち、遺伝子配列が決定されたヒトデルタ−1プライマーによる精製PCR産物(約400bp)が組み込まれたpCRIIより、EcoRIにてベクターより切り出し、低融点アガロースゲルからDNA断片を精製回収した。得られたDNA断片をDNAラベリングキット(Megaprime DNA labeling system:米国Amersham社製)を用いて標識した。すなわち、DNA25ngにプライマー液5μl及び脱イオン水を加えて全量を33μlとして沸騰水浴を5分間行い、その後、dNTPを含む反応緩衝液10μl、α−32P−dCTP5μl、及びT4DNAポリヌクレオチドキナーゼ溶液2μlを加えて、37℃で10分間水浴し、更にその後、セファデックスカラム(Quick Spin Column Sephadex G−50:独逸国ベーリンガーマンハイム社製)で精製し、5分間沸騰水浴をしたのち、2分間氷冷後使用した。
前述の方法にて作成したフィルターを、各々の成分の最終濃度が5倍濃度のSSPE溶液、5倍濃度のデンハルト液(日本国和光純薬社製)、0.5%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム、日本国和光純薬社製)、及び10μg/mlの沸騰水浴により変性したサケ精子DNA(米国Sigma社製)であるプレハイブリダイゼーション液中に浸し、65℃にて2時間振とうした後、前述の方法で32P標識されたプローブを含むプレハイブリダイゼーション液と同一組成のハイブリダイゼーション液に浸し、65℃にて16時間振盪し、ハイブリダイゼーションを行った。
次に、フィルターを0.1%SDSを含むSSPE溶液に浸し、55℃にて振盪し2回洗浄後、さらに0.1%SDSを含む10倍希釈したSSPE溶液に浸し、55℃にて4回洗浄した。洗浄を終了したフィルターを増感スクリーンを使用して、オートラジオグラフィーを行った。その結果、強く露光された部分のクローンを拾い、再度プラークを蒔き直し前述の方法にてスクリーニングを行い、完全に単独のクローンを分離した。
単離されたファージクローンは7クローンであった。成書の方法に従い、これらのすべてのクローンのファージを約1×109pfu調製し、ファージDNAをウィザードラムダプレップ(米国Promega社製)にて精製し、制限酵素EcoRIにて消化し、同様にEcoRIで消化したpBluescript KS(米国Stratagene社製)に組み込んだ。これらのクローンの両端のDNA配列をDNAシークエンサーにより解析したところ、D5、D6、D7の3クローンは共に配列表の配列番号7のDNA配列の1番から2244番の配列を含むクローンであり、D4のクローンは配列表の配列番号8のDNA配列の999番から2663番を含むクローンであった。D5とD4の2クローンはキロシークエンス用デリションキット(日本国宝酒造社製)を用いて添付の説明書に従ってデリションミュータントを作製し、該DNAシークエンサーを用いて5’方向、3’方向の両方向から、本発明の全長のcDNA塩基配列を決定した。
さらに配列表の配列番号8のDNA配列の1214番にあるXhoIサイトを利用し、D4とD5を制限酵素XhoIによって消化して、配列表の配列番号8のDNA配列全長を含むプラスミドpBSDel−1を作製した。
実施例1 新規ヒトデルタ−2のcDNAクローニング
配列表の配列番号8のヒトデルタ−1遺伝子をプローブとして用いて新たなヒトデルタホモログの遺伝子クローニングを行った。
プローブとしては参考例2に得た配列表の配列番号8のヒトデルタ−1全長遺伝子pBSDel−1、もしくは上記に記載した寄託してあるベクターpUCDL−1Fを鋳型として用いてPCR法にて作製した。プライマーは配列表の配列番号9のセンスプライマー(配列表の配列番号8の636番から655番のDNA配列にあたる)及び配列表の配列番号10のアンチセンスプライマー(配列表の配列番号8の1332番から1351番のDNA配列の相補鎖にあたる)を用いた。
PCRによる増幅の溶液組成はプライマーと鋳型以外は参考例1に記載した溶液組成で、条件は95℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃を2分間からなる行程を1サイクルとして、この行程を30サイクル行い、最後に72℃にて7分間放置してPCRを行った。このPCR産物の一部を1%アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本国日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察し、約700bpのcDNAが増幅されていることを確認した。
このPCR産物をアガロースゲルより切り出し、GenecleanIIキット(米国Biol01社製)にて添付の取扱説明書に従いDNAプローブを精製し、25ng/μlとなるように蒸留水に希釈して、配列表の配列番号11に示した配列を有するDNAプローブを作製した。
参考例2に記載した方法に従って、上記プローブを用いて、λgt10にて作製されたヒト胎児肺由来cDNAライブラリー(米国Clontech社製)をスクリーニングした。ただし、ハイブリダイゼーション条件としては55℃で16時間行い、さらに洗浄条件は0.1%SDSを含むSSC溶液に浸し、室温で振盪し6回洗浄後、さらに0.1%SDSを含む3倍希釈したSSC溶液に浸し、55℃にて1回洗浄した。
上記の条件でおよそ120万個のプラークを1次スクリーニングとして行った結果、約120個のプラークがポジティブと判断され、これらを同様な方法で2次スクリーニングを行って各ファージを分離した。
分離したファージDNAを参考例2に記載した方法で精製し、同様に制限酵素EcoRIにて消化し、pBluescript KSにつなぎ、参考例1に示したのと同様DNAシークエンサーにてDNA遺伝子配列を解析した。
約半数以上のクローンは配列表の配列番号8の遺伝子配列を有するヒトデルタ−1であったが、この中にヒトデルタ−1には似ているが異なる遺伝子配列を有し、なおかつコンピューターソフトウエアGenetyxCD Ver36(ソフトウエア開発株式会社製)にてGenbankリリース98上には存在しない新規な配列を含むクローンが5つ見いだされた。これらのクローンのDNA配列を、キロシークエンス用デリションキット(日本国宝酒造社製)を用いて添付の説明書に従ってデリションミュータントを作製するとともに、プライマーウオーキング法と組み合わせて、該DNAシークエンサーを用いて5’方向、3’方向の両方向から、本発明の全長のcDNA塩基配列を決定した。
その結果、クローン4Aは配列表の配列番号4のDNA配列の526番から3339番までの遺伝子配列をコードし(ただし同配列の1296番から1515番までの配列を欠失していた)、クローン22は配列表の配列番号4のDNA配列の1029番から3213番までに遺伝子配列をコードし、クローン65は配列表の配列番号4のDNA配列の754番から3228番までに遺伝子配列をコードし、クローン90は配列表の配列番号4のDNA配列の552番から2618番までに遺伝子配列をコードし、クローン105は配列表の配列番号4のDNA配列の669番から3339番までに遺伝子配列をコード(ただしこのクローン105には他のクローンでは見られない不明配列の挿入が何カ所も見られるためスプライス前の未成熟なmRNAに由来すると考えられる)していた。また、クローン65に関しては配列表の配列番号4のDNA配列の2294番のシトシンがチミンに置換していた。そのため、同配列表のアミノ酸配列の647番のセリンがスレオニンに置換している。
しかしながら、これらのクローンにはいずれも全長のアミノ酸配列をコードしている遺伝子配列を含んでいないことが判明したため、さらに新しいプローブを作製して再度スクリーニングを行った。
新しいプローブは上記で分離したクローン4Aを鋳型として用いてPCR法にて作製した。プライマーは配列表の配列番号12のセンスプライマー(配列表の配列番号4の526番から545番のDNA配列にあたる)及び配列表の配列番号13のアンチセンスプライマー(配列表の配列番号4の918番から937番のDNA配列の相補鎖にあたる)を用い、初めのプローブ同様作製した。このプローブのDNA配列を配列表の配列番号14に示す。
このプローブを用いて1回目同様同一のcDNAライブラリーのスクリーニングを行った。ただし、ハイブリダイゼーション条件としては65℃で16時間行い、さらに洗浄条件は0.1%SDSを含むSSC溶液に浸し、室温で振盪し6回洗浄後、さらに0.1%SDSを含む10倍希釈したSSC溶液に浸し、65℃にて2回洗浄した。
このスクリーニングにより同様に新たなクローンを同定し、同様に遺伝子配列を決定したところ、配列表の配列番号4に示すDNA配列と同一の配列を有するクローンPと配列表の配列番号4に示すDNA配列の263番から2768番の配列を有するクローンRAを同定された。この2つのクローンが全長の新規ヒトデルタ−2のタンパク質をコードしているクローンとして分離できた。尚、pBluescript KSのEcoRIサイトにライゲーションされているクローンPを含むベクターをpBSDL−2と命名する。
実施例2 新規ヒトデルタ−2の発現臓器
新規ヒトデルタ−2のmRNAの発現を調べるため、あらかじめmRNAが転写されているフィルターである、Human Multiple Tissue Northern Blot、Human Multiple Tissue Northern Blot II、Human Multiple Tissue Northern Blot III、Human Fetal Multiple Tissue Northern BlotII、(すべて米国Clontech社)を用い、実施例1に記載の配列表の配列番号14の配列を有するDNAをプローブとして前掲のDNAラベリングキット(MegaPrime DNA labeling system:米国Amersham社製)にて前述の方法で32P標識し、上記のフィルターの添付の取扱説明書にしたがってハイブリダイゼーションを行い発現を調べた。結果を第1図に示す。
その結果、発現されているmRNAの長さは約3.8kbと5kbの2種類であった。発現部位としてヒト成人組織のうち特に強い発現を認めたのは、心臓であった。また、胎盤、卵巣、小腸、甲状腺、脊髄に比較的強い発現が認められ、骨格筋、肺、肝臓、膵臓、胸腺、前立腺、リンパ節、気管、副腎、骨髄では明かな発現を認めた。一方、極めて弱くしか発現が認められなかったのは胃、脾臓、結腸であり、さらに全く発現が認められなかったのは、脳、腎臓、精巣、末梢血リンパ球であった。ヒト胎児組織においては胎児肺に極めて発現が高く、胎児腎臓に強い発現が認められ、胎児肝臓、胎児脳には若干弱いながら発現が認められた。
これらの結果から本発明の新規ヒトデルタ−2は成人では心臓に関連する機能を有すると考えられた。またさらに、胎児期の肺に強い発現が認められたことからも、血管細胞の対しての作用も有すると想像された。
実施例3 新規ヒトデルタ−2発現ベクターの作製
実施例1の新規ヒトデルタ−2の全長をコードするベクターpBSDL−2を用いて、次の1)から5)に挙げる新規ヒトデルタ−2蛋白質の発現ベクターを作製した。制限酵素サイトの付加、短い遺伝子配列の挿入は全て米国Stratagene社製ExSite PCR−Based Site−Directed Mutagenesis Kitを用い、添付の取扱い説明書に従って行った。
1)分泌型新規ヒトデルタ−2蛋白質(HD2EX)発現ベクター
配列表の配列番号2のアミノ酸配列の1番から500番のポリペプチドをコードするcDNAを、サイトメガロウイルスのプロモーターとネオマイシン耐性遺伝子を含む発現ベクターpcDNA3につなぎ、発現ベクターを作製した。
新規ヒトデルタ−2の発現ベクターを作製するにあたって、遺伝子産物のより安定的に発現させるために、開始コドン(配列表の配列番号4のDNA配列の277番)の5’方向に約20bp上流の部分にEcoRIサイトを付加した。すなわち、上記のMutagenesis Kitを用い、配列表の配列番号4に記載のDNA配列、新規ヒトデルタ−2の全長のcDNAを含むプラスミドpBSDL−2をテンプートとし、配列表の配列番号15及び配列番号16の遺伝子配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして、5’方向に約20bp上流の部分にEcoRIサイトを付加したDNAを作成した。以下このプラスミドをpBSEco−DL−2と示す。
次に、このpBSEco−DL−2をテンプレートとして、細胞外部分のカルボキシル末端部分、すなわち配列表の配列番号2のアミノ酸配列の500番目のセリン残基までをコードするDNA配列に続き、終止コドン、更に制限酵素NotIサイトを付加するため、同様にMutagenesis Kitを用い、配列表の配列番号17及び配列番号18の遺伝子配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして、終止コドン、さらにNotIサイトの付加を行った。次に、このベクターをEcoRIおよびNotIにて消化し、切り出されてくる約1600bpの遺伝子断片を同様な制限酵素処理したpcDNA3につないで発現ベクターを構築した。このベクターをpHD2EXと命名した。
2)分泌型新規ヒトデルタ−2のFLAGキメラ蛋白質(HD2EXFLAG)発現ベクター
配列表の配列番号2のアミノ酸配列の1番から500番のポリペプチドのC末端にFLAG配列をコードするcDNAを付加したキメラ蛋白質をコードするcDNAを、発現ベクターpcDNA3につなぎ、発現ベクターを作製した。
pBSEco−DL−2をテンプレートとして用い、細胞外部分のカルボキシル末端部分、すなわち配列表の配列番号2の500番目のセリン残基までをコードするDNA配列に続き、FLAG配列を付加し、ついで終止コドン、更に制限酵素NotIサイトを付加するため同様にMutagenesis Kitを用い、配列表の配列番号19及び配列番号18の遺伝子配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして、C末端にFLAG配列をコードする遺伝子並びに終止コドン、さらにNotIサイトの付加を行った。次に、このベクターをEcoRIおよびNotIにて消化し、切り出されてくる約1600bpの遺伝子断片を同様な制限酵素処理したpcDNA3につないで発現ベクターを構築した。このベクターをpHD2EXFLAGと命名した。
3)分泌型新規ヒトデルタ−2のIgG1Fcキメラ蛋白質(HD2EXIg)発現ベクター
配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドのC末にヒトIgG1のヒンジ部分以下のFc部分のアミノ酸配列を付加したポリペプチドをコードする遺伝子配列をpcDNA3につなぎ、発現ベクターを作製した。
イムノグロブリンFcタンパクとの融合タンパクの作製はZettlmeisslらの方法(Zettlmeissl et al.,DNA cell Biol.,9,347−354,1990)にしたがって、イントロンを含むゲノムDNAを用いた遺伝子を利用し、その遺伝子をPCR法を用いて作製した。
すなわち、ヒトゲノムDNAをテンプレートとして使用して、ヒトIgG1Fc部分をコードするゲノム遺伝子配列を制限酵素BamHIサイトのついた配列表の配列番号23の配列を有するオリゴヌクレオチド、制限酵素XbaIサイトのついた配列表の配列番号24の配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRを行う。その結果、得られるおよそ1.4Kbpのバンドを精製し、制限酵素BamHI及びXbaI(共に日本国宝酒造社製)で消化して、同様な制限酵素処理を行ったpBluescriptにT4 DNAリガーゼにて遺伝子をつないでサブクローニングした。
その後、このプラスミドDNAを精製し、シークエンスにて遺伝子配列を確認し、遺伝子配列が確かにヒトIgG1の重鎖のヒンジ部分からC末端にあたるアミノ酸配列をコードするゲノムDNAであることを確認した(その配列はKabat et al.,Sequence of Immunological Interest,NIH publication No91−3242、1991を参照のこと)。すなわち、この遺伝子は5’端に制限酵素BamHIサイトを有し、3’端にXbaIサイトを有し、pBluescript KSのBamHIサイトとXbaIサイトにクローニングされている。以下、このプラスミドをpBShIgFcとする。
pBSEco−DL−2をテンプレートとして用い、同様にMutagenesis Kitを用い、細胞外部分のカルボキシル末端部分、すなわち配列表の配列番号3の500番目のセリン残基の後に、制限酵素BamHIサイトを付加し、さらにその下流に上記のヒトイムノグロブリンIgG1FcをコードするDNAをつなぐためのNotIサイトを付加するために、配列表の配列番号20と配列番号18のオリゴヌクレオチドにて、同様にMutagenesis Kitを用い、これらのサイトの付加を行った。また、この際にはBamHIサイトの付加によりアミノ酸をコードするフレームがずれないように、配列表の配列番号4のDNA配列上の500番目のセリンをコードするDNA配列はAGCからTCGに変更した。
この様にして作製したベクターをNotI、BamHIにて消化し、上記のpBShIgFcをNotI、BamHIにて消化し切り出されてくる約1200bpの遺伝子断片をつないで最終的に目的の分泌型新規ヒトデルタ−2のIgG1Fcキメラ蛋白質をコードする遺伝子断片を含むベクターを作成した。最後に、このベクターをEcoRIおよびNotIにて消化し、切り出されてくる約3000bpの遺伝子断片を同様な制限酵素処理したpcDNA3につないで発現ベクターを構築した。このベクターをpHD2EXIgと命名した。
4)全長型ヒトデルタ−2の蛋白質(HD2F)発現ベクター
配列表の配列番号4のアミノ酸配列の1番から659番のポリペプチドをコードするcDNAを、発現ベクターpcDNA3につなぎ、発現ベクターを作製した。
pBSEco−DL−2をテンプレートとして用い、全長のカルボキシル末端部分、すなわち配列表の配列番号3の659番目のバリンの後に終止コドン、更に制限酵素NotIサイトを付加するため同様にMutagenesis Kitを用い、配列表の配列番号21及び配列番号18の遺伝子配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして、C末端に終止コドン、さらにNotIサイトの付加を行った。次に、このベクターをEcoRIおよびNotIにて消化し、切り出されてくる約2100bpの遺伝子断片を同様な制限酵素処理したpcDNA3につないで発現ベクターを構築した。このベクターをpHD2Fと命名した。
5)全長型新規ヒトデルタ−2のFLAGキメラ蛋白質(HD2FLAG)発現ベクター
配列表の配列番号3のアミノ酸配列の1番から659番のポリペプチドのC末端にFLAG配列をコードするcDNAを付加したキメラ蛋白質をコードするcDNAを、発現ベクターpcDNA3につなぎ、発現ベクターを作製した。
pBSEco−DL−2をテンプレートとして、カルボキシル末端部分にFLAG配列を付加し、ついで終止コドン、更に制限酵素NotIサイトを付加するため同様に配列表の配列番号22及び配列番号18の遺伝子配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして、C末端にFLAG配列をコードする遺伝子並びに終止コドン、さらにNotIサイトの付加を行った。
次に、このベクターをEcoRIおよびNotIにて消化し、切り出されてくる約2100bpの遺伝子断片を同様な制限酵素処理したpcDNA3につないで発現ベクターを構築した。このベクターをpHD2FLAGと命名した。
実施例4 各種発現ベクターの細胞への遺伝子導入と発現
実施例3で作製した発現ベクターはCOS−7細胞(理化学研究所、細胞開発銀行から入手可能、RCB0539)に遺伝子導入した。
遺伝子導入前の細胞の培養はD−MEM(ダルベッコ改変MEM培地、米国GIBCO−BRL社製)10%FCSにて培養した。遺伝子導入の前日に細胞の培地を交換し、細胞数を5×105cells/mlにして一晩培養した。遺伝子導入の当日、遠心分離にて細胞を沈澱させ、PBS(−)にて2回遠心洗浄後、1mM MgCl2、PBS(−)に1×107cells/mlとなるようにして細胞を調製した。遺伝子導入は米国Bio−Rad社製遺伝子導入装置ジーンパルサーを用いたエレクトロポレーション法で行った。上記の細胞懸濁液を500μlエレクトロポレーション専用セル(0.4cm)に取り、発現ベクターを20μg加え、氷中で5分間放置した。その後、3μF,450Vの条件で2回電圧をかけ、その2回の間は1分間室温で放置した。その後、氷中で5分間放置後、上記の培地10mlをあらかじめ分注した直径10cm細胞培養用ディシュに細胞を播種し、37℃、5%炭酸ガスインキュベーターで培養した。
その翌日、培養上清を除去し、ディッシュに付着した細胞をPBS(−)10mlで2回洗浄し、発現ベクターpHD2EX、pHD2EXFLAG、及びPHD2EXIgの場合は無血清のD−MEM10mlを加えてさらに7日間培養し、培養上清を回収し、セントリコン30(米国アミコン社製)にてバッファーをPBS(−)に置換すると同時に10倍濃縮を行い、細胞培養上清を得た。
また、pHD2F及びpHD2FLAGの場合は、10%FCSを含むD−MEMに培地を交換し、さらに3日間培養し、細胞破砕物を調製した。すなわち、2×106個の細胞をセルリシスバッファー(50mM Hepes(pH7.5)、1% TritonX100、10% グリセロール、4mM EDTA、50μg/ml Aprotinin、100μM Leupeptin、25μM PepstatinA、1mM PMSF)200μlに懸濁し、氷中に20分間放置し、その後14000rpmで20分間遠心し上清を取り細胞破砕物を得た。
こうして得られたサンプルを用いてウェスタンブロッティング法にて蛋白の発現を確認した。
すなわち、濃縮した培養上清もしくは細胞破砕物を日本国ACIジャパン社製のSDS−PAGE用電気泳動槽及びSDS−PAGE用ポリアクリルアミドゲル(グラジエントゲル5〜20%)を用い、添付の取扱い説明書に従ってSDS−PAGEをおこなった。サンプルは2−メルカプトエタノール(2−ME)を加えて5分間の沸騰水浴加熱処理により還元処理を行ったものと、この処理を行わない非還元状態のものを用い、マーカーとしては米国Amersham社製レインボーマーカー(高分子量用)を用い、サンプルバッファー、泳動バッファーについては添付の取扱い説明書に従って作製した。SDS−PAGE終了後、アクリルアミドゲルをPVDFメンブランフィルター(米国BioRad社製)に同社製ミニトランスブロットセルにより転写した。
このように作製されたフィルターをブロックエース(日本国大日本製薬社製)、もしくは5%牛由来アルブミン(米国シグマ社製)を含むTBS−T(20mM Tris、137mM NaCl(pH7.6)、0.1%Tween 20)に4℃一晩振盪してブロッキングした。その後、ECLウェスタンブロッティング検出システム(米国Amersham社)に添付の説明書に従い、実施例6に記載した抗新規ヒトデルタ−2マウスモノクローナル抗体、もしくはFLAGキメラの場合(HD2EXFLAG、HD2FLAG)は一次抗体としてマウスモノクローナル抗体Anti−FLAG M2(米国コダック社製)を用い、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスIg羊抗体(米国Amersham社製)を反応させた。また、IgGキメラの場合(HD2EXIg)は、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgヒツジ抗体(米国Amersham社製)を反応させた。
抗体の反応時間は各々室温で一時間反応させ、各反応間はTBS−Tにて10分間室温で振盪洗浄する操作を3同ずつ繰り返した。最後の洗浄後、フィルターをECLウエスタンブロッティング検出システム(米国Amersham社製)の反応液に5分間浸し、ポリ塩化ビニリデンラップに包んでX線フィルムに感光させた。
その結果、還元処理を行ったサンプルはpHD2EXとpHD2EXFLAGの導入によって得られた蛋白質は約65kダルトン、pHD2EXIgの導入によって得られた蛋白質は約95kダルトン、一方、非還元状態のサンプルはpHD2EXIgを導入した場合、150kから200kダルトンの若干スメア状のバンドで主に約180kダルトンのバンドを検出し、還元条件のほぼ2倍の分子量であることから、2量体が形成されていることを確認した。
これらの実験では、コントロールとしてインサートのないpcDNA3ベクターを導入したCOS−7細胞の細胞破砕物および培養上清を同様に試験したが、抗ヒトデルタ−2マウスモノクローナル抗体、抗FLAG抗体、抗ヒトIg抗体に反応するバンドは検出されなかった。
以上の結果から、これら5種の発現ベクターはいずれも目的のポリペプチドを生産することができた。
実施例5 遺伝子導入細胞による分泌型新規ヒトデルタ−2蛋白質の精製
実施例4の方法で発現が検出されたHD2EXFLAGもしくはHD2EXIgを含むCOS−7細胞培養上清を大量調製し、アフィニティーカラムによってこれらキメラ蛋白質を精製した。
HD2EXFLAGに関しては、実施例4に記載した方法によって取得した2リットルの培養上清をAnti−FLAG M2 Affinity Gel(米国コダック社製)を充填したカラムに通して、キメラ蛋白質が有するFLAG配列とゲルのAnti−FLAG抗体のアフィニティーによりキメラ蛋白質をカラムに吸着させた。カラムは内径10mmのディスポカラム(米国BioRad社製)を用い、上記ゲルを5ml充填した。吸着は培地ボトル→カラム→ペリスターポンプ→培地ボトルの環流式回路を組み立て、流速1ml/分で72時間循環させた。その後、カラムをPBS(−)35mlで洗浄し、0.5MTris−グリシン(pH3.0)50mlで溶出した。あらかじめ小チューブ(米国ファルコン社製2063)に0.5MTris−HCl(pH9.5)を200μl分注しておき、溶出液は2mlずつ25画分をそのチューブに分取し、各々の画分を中和した。
上記の方法で精製された分泌型FLAGキメラ蛋白質の溶出画分の各10μlは実施例4に記載の還元処理を行い、5−20%濃度勾配ポリアクリルアミドゲルによるSDS−PAGE電気泳動を行い、電気泳動終了後、日本国和光純薬社製ワコー銀染キットIIを用いて、添付の説明書に従って銀染色を行った。結果として、HD2EXFLAGは第4番から第8番の溶出画分にバンドが検出され、この分子量は実施例4で得られた抗FLAG抗体によるウェスタンブロッティングの結果と一致した。この結果からHD2EXFLAGの純品が精製された。
IgG1Fcキメラ蛋白質、すなわちHD2EXIgに関しては、FLAGキメラ蛋白質と同様の操作で培養上清の2リットルをスウェーデン国ファルマシア社製Protein Aセファロースカラムに吸着させ、溶出画分を分取した。
FLAGキメラ蛋白質と同様に溶出液の一部を用いて、還元条件でのSDS−PAGE電気泳動および銀染色により溶出面分の決定、サイズの確認、純度検定を行った。結果として、溶出画分の第4番から第15番にバンドが検出され、サイズは抗ヒトIg抗体を用いたウェスタンブロッティングの結果と一致した。この結果からHD2EXIgの純品が精製された。
このようにして精製されたHD2EXFLAGの分子量をさらに詳細にSDS−PAGEにて解析したところ、その分子量は2つのバンドとして確認され、1つは65.8Kダルトン、もう一つは61.7Kダルトンであった。この2種の分子量の異なるバンドを実施例4に記載の方法でPVDFに転写して、米国ABI社アミノ酸シークエンサーにてそれぞれのN末端のアミノ酸配列を10アミノ酸決定した。その結果、いずれも配列表の配列番号1のアミノ酸配列の1番から10番までにアミノ酸配列に一致した。このことからこの分子量の違いは糖鎖の付加の違いであると考えられた。同様に精製されたHD2EXIgにおいてもわずかに分子量が異なる2つのバンドが確認され、同様な理由によると考えられた。
実施例6 新規ヒトデルタ−2を認識する抗体作成
実施例8に記載の方法で精製されたHD2EXFLAGを免疫原としてウサギに免疫して、抗体価の測定後、全血の採血を行い、血清を採取して、米国BioRad社製のエコノパック血清IgG精製キットを用いて、添付の取扱い説明書に従って、抗新規ヒトデルタ−2ウサギポリクローナル抗体を作製した。
また、実施例5に記載した方法で精製されたHD2EXFLAGを免疫原として、成書の方法に従いマウスモノクローナル抗体を作成した。すなわち、上記のように精製されたHD2EXFLAGをBalb/cマウス(日本国日本エスエルシー社製)に1匹あたり10μgを皮下・皮内に免疫した。2回の免疫後、眼底採血を行い血清中の抗体価の上昇を認めた後、3回目の免疫を行ってからマウスの脾臓細胞を取り出し、マウスミエローマ細胞株P3X63Ag8(ATCC TIB9)とポリエチレングリコール法にて細胞融合を行った。HAT培地(日本国免疫生物研究所製)にてハイブリドーマを選択し、酵素抗体法にて新規ヒトデルタ−2の細胞外部分を認識する抗体を培地中に産生しているハイブリドーマ株を分離し、新規ヒトデルタ−2を特異的に認識するマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ産生株が樹立された。
このようにして樹立されたハイブリドーマの培養上清をスウェーデン国ファルマシア社製Mab TrapG IIを用いて、添付の取扱い説明書に従って、抗新規ヒトデルタ−2モノクローナル抗体を精製し作製した。
これらモノクローナル抗体を用いてアフィニティーカラムを作製した。アフィニティーカラムの作製はスウェーデン国ファルマシア社製CNBr活性化Sepharose4Bにて添付の取扱い説明書に従い行った。このゲルの2mlを用いて2cm2×1cmのサイズのカラムを作製した。
抗新規ヒトデルタ−2モノクローナル抗体を結合させたカラムに対してpHDEXを遺伝子導入したCOS−7細胞培養上清濃縮液を20ml/hrの速度で流し、その後同一速度でPBS(−)を15ml流して洗浄し、最終的に0.1M酢酸ナトリウム、0.5MNaCl(PH4.0)にて溶出した。この溶離液を1mlづつ分取し、各画分に1MTris−HCl(pH9.5)を200μlづつ加えて、中和した。
さらに実施例4に記載の方法に従って、各々の精製蛋白質を還元条件下でSDS−PAGEを行い、銀染色、及びウェスタンブロッティングを行ない、分子量の推定を行った。この結果、pHDEXを遺伝子導入したCOS−7細胞培養上清濃縮液からは約65kダルトンのHD2EXが精製されていることが確認され、これらアフィニティーカラムで新規ヒトデルタ−2タンパク質が精製可能であることが明らかとなった。
実施例7 HD2EXIgの血液未分化細胞のコロニー形成に対する作用
HD2EXIgの血液未分化細胞に対する生理作用を観察するため、CD34陽性細胞をHD2EXIgおよび既存のサイトカイン存在下で無血清半固形培地で培養し、コロニー形成細胞の増減を観察した。
ヒト臍帯血もしくはヒト正常骨髄血のCD34陽性細胞は臍帯血もしくは成人正常骨髄血をシリカ液(日本国免疫生物研究所製)により添付の説明書にしたがって処理し、その後フィコールパック(スエーデン国ファルマシア社製)による比重遠心分離法により低密度細胞画分(<1.077g/ml)を分画した単核球より分離した。
CD34陽性細胞の分離はノルウェー国Dynal社製DynabeadsM−450 CD34とDETACHaBEADS CD34を用い、添付の取扱説明書に従って分離した。分離後、その純度はFITC標識抗CD34抗体HPCA2(米国ベクトンデッキンソン社製)で染色し、同社のフローサイトメーター(FACSCalibur)にて検定し、85%以上の純度を有していることを確認して用いた。
このようにして分離したCD34陽性細胞400個が下記の培地1ml中に存在するように均一に懸濁し、35mmディッシュ(米国ファルコン社製)にまき、37℃、5%炭酸ガス、5%酸素ガス、90%窒素ガス、100%湿度雰囲気下の炭酸ガスインキュベーターで2週間の培養後、形成された血球コロニーを倒立顕微鏡下で計測した。
培養に用いた培地はα−medium(米国GIBCO−BRL製)に2% Deionized Bovine Serum Albumin(BSA、米国Sigma社製)、10μg/ml ヒトインスリン(米国Sigma社製)、200μg/ml トランスフェリン(米国Sigma社製)、10-5M 2−メルカプトエタノール(日本国ナカライテスク社製)、160μg/ml ソイビーンレクチン(米国Sigma社製)、96μg/ml コレステロール(米国Sigma社製)、0.9%メチルセルロース(日本国和光純薬社製)で行った。
上記の培地に、最終的に1μg/mlの濃度となるように新規ヒトデルタ−2細胞外Igキメラ蛋白質(HD2EXIg)を加え、比較区にはIgGFc部分の影響を見るため、ヒトIgG1(米国Athens Research and Technology社製)を同濃度加えた。同時に加えたサイトカイン条件は100ng/mlのヒトSCF(米国Intergen社製)、10ng/mlのヒトIL−3(米国Intergen社製)、100ng/mlのヒトIL−6(米国Intergen社製)である。
その結果、比較区ではコロニー形成が細胞400個当たり42±5であったが、HD2EXIgを加えた場合には21±3と著明にコロニー形成が抑制を受けた。この結果から、本発明分子新規ヒトデルタ−2は血液未分化細胞に作用することが明らかとなった。
実施例8 無血清液体培養におけるHD2EXIgの血液未分化細胞のLTC−ICに対する作用
HD2EXIgの液体培養での血液未分化細胞に対する生理作用を確認するため、臍帯血単核球CD34陽性細胞をHD2EXIg及び既存のサイトカイン存在下の無血清培養実験を行った。培養期間は2週間で2週間の間の現在最も未分化な血液細胞群と考えられるLTC−ICの変化を確認した。
この比較としてHDEXIgを加えない比較区及び本発明者がWO97/19172において同様な試験に於いてLTC−IC活性を見出しているヒトデルタ−1のIgGキメラ蛋白(HD1EXIg)を加えたHD1EXIg区も行った。HD1EXIgの作製はWO97/19172に記載の方法で行った。
実施例7に記載した方法で分離した臍帯血単核球CD34陽性細胞を16200個を下記の培地で2週間培養した。培養前区、HD2EXIg添加区、HD1EXIg添加区と比較区の4つの実験区に存在するLTC−IC数を計測した。また、細胞数並びにコロニー形成細胞数も各区に於いて計測した。
培養条件は基本培地としてα−mediumを用い、2%BSA、10μg/mlヒトインシュリン、200μg/mlトランスフェリン、40μg/ml低密度リポプロテイン、10-5M 2−メルカプトエタノールを加え、更に100ng/mlヒトSCF、10ng/mlヒトIL−3、100ng/mlヒトIL−6を加えた培地を用いた。この培地にHD2EXIg添加区には精製されたHD2EXIgを1μg/ml、HD1EXIg添加区には精製されたHD1EXIgを1μg/ml、比較区には前述のヒトIgG1を各々添加した。培地交換は週2回、半量を交換した。
LTC−ICの測定はSutherlandらの方法(Blood、74、1563−、1989;Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、87、3584−、1990)の方法に従って行った。具体的には本発明者のWO97/19172にも記載されている。
全細胞数は生細胞数をトリパンブルー(米国Gibco BRL社製)による色素法で顕微鏡下で計測し、コロニー形成細胞数は実施例7に示す方法で次の培地にて行った。その培地はα−mediumに30%牛胎児血清(FCS、日本国ICNバイオメディカルジャパン社製)、1%BSA、10-5M 2−メルカプトエタノール、0.9%メチルセルロース(日本国和光純薬社製)、100ng/mlヒトSCF、10ng/mlヒトIL−3、100ng/mlヒトIL−6、2U/mlヒトEPO(日本国中外製薬社製)、10ng/mlヒトG−CSF(米国Intergen社製)を加えた物を用いた。
結果を第1表に示す。
Figure 0004171528
この結果からHD2EXIgはLTC−IC数を比較区に比べ維持する活性を有していることが明らかとなった。また、この活性は比較に用いたヒトデルタ−1よりも強いことが確認された。
実施例9 HD2EXIgの血液未分化細胞に対する結合及び分離
精製されたHD2EXIgを用いて、ヒトT細胞系血液細胞株Jurkat及びヒト臍帯血単核球CD34陽性細胞に対する結合を調べた。この結合実験に於いて実施例8同様比較として本発明者により同様な活性が確認されたヒトデルタ−1のIgGキメラ蛋白(HD1EXIg)も比較で実験を行った。
Jurkat細胞は1×106個を2%FCS、10mM Hepesを含むハンクス液(米国Gibco BRL社製)100μlに懸濁し、HD2EXIgもしくはHD1EXIgもしくはヒトIgG1を1μg/mlとなるように添加し4℃で3時間放置し、反応させた。反応後、同様なハンクス液で遠心分離にて洗浄し、PE(フェコエリスリン)標識ヤギ抗ヒトIgGモノクローナル抗体にを1μg/ml添加して、30分間氷中で放置した。その後、同様なハンクス液で2回洗浄したのち、最終的に同様なハンクス液に懸濁して、解析に供した。測定はフローサイトメーターFACScalibur(米国ベクトンデッキンソン社)で行った。
結果を第2図に示す。縦軸は細胞数、横軸は蛍光強度である。上段は比較のHD1EXIgの結果を示し、下段は本発明のHD2EXIgの結果を示す。実線はHD1EXIgおよびHD2EXIgの結果であり、破線はヒトIgG1の比較区である。いずれもJurkat細胞に結合していることが観察された。また、その結合を見ると、蛍光強度の強さは上段のHD1EXIgに比べ、本発明のHD2EXIgの方が蛍光強度が強いことが認められる。その蛍光強度の平均値で約2倍程度の強い蛍光強度が得られる。この結果から、HD2EXIgはHD1EXIgに比べ、Juakat細胞に対して強い結合をすることが理解された。
次に、同様な染色方法で実施例7の方法で分離されたヒト臍帯血単核球CD34陽性細胞に対する結合を調べた。ただし、この場合は、FITC標識抗ヒトCD34抗体HPCA−2(米国ベクトンデッキンソン社製)による染色も、上記の2次抗体標識時に同時に行い、データはCD34陽性、すなわちFITC陽性画分のみを示す。
その結果を第3図に示す。この結果、同様にHD2EXIg、HD1EXIgはCD34陽性細胞に結合し、その結合はHD2EXIgの方が2倍程度HD1EXIgより強いことが示された。
また、HD2EXIgで染色した同様の細胞をセルソータFACSvantage(米国ベクトンデッキンソン社)にて添付の取扱説明書に従って、HD2EXIg陽性画分の細胞を分離した。
実施例10 新規ヒトデルタ−2発現細胞との共培養による血液未分化細胞に対する効果
実施例3で作製した全長型新規ヒトデルタ−2のFLAGキメラ蛋白質発現ベクターpHD2FLAGをマウス細胞株Balb3T3(理化学研究所細胞開発銀行RCB0005)に実施例4に記載した方法で遺伝子導入を行い、成書の方法に従ってG418(米国Gibco BRL社)によるセレクションを行って、クローンを得た。得たクローンを実施例4に記載した方法で全長型ヒトデルタ−2のFLAGキメラ蛋白質の発現を確認して、発現の確認できたクローンを用いて以下の実験を行った。このクローンをBalb/HD2FLAGとする。
実施例7の方法で得た臍帯血単核球CD34陽性細胞とBalb/HD2FLAGを共培養した。比較として遺伝子導入していないBalb3T3との共培養も行った。
培養条件は
1)遺伝子導入していないBalb3T3、造血因子無し。
2)Balb/HD2FLAG、造血因子無し。
3)遺伝子導入していないBalb3T3、造血因子有り。
4)Balb/HD2FLAG、造血因子有り。
で行った。
培地はα−mediumに10%FCS、10-5M 2−メルカプトエタノールを加えたものを用いた。造血因子添加区では100ng/mlヒトSCF、10ng/mlヒトIL−3、100ng/mlヒトIL−6を加えた。培養期間は2週間で行い、培地交換は週3回の半量を交換した。ヒト血液細胞と共培養する前に、前もって培養しておいた各Balb3T3細胞には250KV PeakのX線を照射して、細胞の増殖を押さえた。
培養前と1)から4)の試験区でのコロニー形成細胞数、LTC−IC数を計測した。
その結果は下記のようになった。
培養前では全細胞数20000個でコロニー形成細胞数が3200個、LTC−IC数が220個であった。
1)ではコロニー形成細胞数、LTC−IC数とも測定できない位少なかった。
2)ではコロニー形成細胞数は測定できないくらい少なかった。LTC−ICは105個であった。
3)ではコロニー形成細胞数は26500個、LTC−ICは90個であった。
4)ではコロニー形成細胞数は38000個、LTC−ICは120個であった。
また、3)と4)のコロニー形成細胞の内訳を解析したところ、3)では顆粒球系のコロニーしか観察されなかったが、4)では赤芽球系も観察され、コロニー形成細胞数の差はこの赤芽球系コロニー数の違いによるもでのあることが判った。
この結果から、Balb/HD2FLAG細胞はコロニー形成、特に赤芽球系コロニーの増幅作用を有し、LTC−IC維持作用も有していることが明らかとなった。この結果から、本ヒトデルタ−2発現ベクターを用いれば造血細胞維持活性を持つ細胞を作り出すことができることが明らかとなった。
実施例11 新規ヒトデルタ−2を固定化した器材の作製とその効果
実施例5にて作製されたHD2EXIgを固定化したセファロースゲルを作製した。セファロースゲルはスエーデン国ファルマシア社製CNBr活性化セファロースゲルを用い、添付の説明書にしたがってHD2EXIgを固定化した。
このように作製されたゲルと実施例7の方法で分離された臍帯血単核球CD34陽性細胞を1昼夜培養した。培養条件は実施例10と同一の培地で、比較区としてBSAを固定化した同セファロースゲルを作製し、同様の実験を行った。培養後、実施例8の方法でコロニー形成細胞数を測定した。その結果、HD2EXIgを固定化したゲルではコロニー形成細胞がおよそ4割程度少なくなる現象が確認された。
したがって、本発明のヒトデルタ−2が固定化された器材は造血細胞に対して作用を有することが明らかになった。
実施例12 新規ヒトデルタ−2の血管内皮細胞増殖に及ぼす変化
血管内皮細胞は、日本国クラボウ社製の正常ヒト大動脈血管内皮細胞と正常ヒト肺動脈血管内皮細胞のそれぞれ4次継代培養細胞を用いた。細胞は、3次培養の継代時に組織培養用96ウェルプレート(米国ファルコン社製)に5000細胞数/ウェルずつ蒔き、日本国クラボウ社製のヒトリコンビナントEGFを10ng/ml,ヒトリコンビナントFGF−Bを5ng/ml各々含有する低血清血管内皮細胞増殖用培地(HuMedia−EG2、日本国クラボウ社製)中で培養し、その際、最終的に1μg/mlの濃度となるように新規ヒトデルタ−2細胞外Igキメラ蛋白質(HD2EXIg)を加え、比較区にはIgGFc部分の影響を見るため、ヒトIgG1(米国Athens Research and Technology社製)を同濃度加えた。尚、対照はHuMedia−EG2以外の添加蛋白質無しの条件で培養を行った。培養は37℃,5%炭酸ガス,100%湿度雰囲気下で3日間行った後に、細胞を計数した。
血管内皮細胞の計数は、BorenfreundとPuerner(Journal of Tissue Culture Methods 9(1),7−9,1984)によって開発された方法、すなわち、生体染色色素のneutral red(3−amino−7−dimethylamino−2−methylphenazine hydrochloride)が生きている細胞においてのみ原形質膜を通りリソソームに蓄積されることを利用したニューラルレッド法を原理とした日本国クラボウ社製のNR試薬セットを用い、540nmの吸光度は日本国日本インターメッド社製イムノリーダー(NJ−2000)で測定した。その結果、大動脈血管内皮細胞の場合は対照区では吸光度の値がOptical Density(OD)として0.18±0.02であり、ヒトIgG1添加区ではほぼ同様な0.17±0.02であったが、HD2EXIg添加区では0.11±0.01でありと著明に少なかった。また、肺動脈血管内皮細胞の場合は対照区では0.16±0.02であり、ヒトIgG1添加区ではほぼ同様な0.16±0.01であったが、HD2EXIg添加区では0.08±0.01でありと著明に少なかった。これらの結果から、HD2EXIgは血管内皮細胞の増殖を抑制することがわかった。
実施例13 薬剤の作製
実施例5に示された各ポリペプチド1mgに対して人血清アルブミン(ミドリ十字社製)5mgとなるように1mlの蒸留水に溶解し、0.22μmの滅菌フィルターにて濾過滅菌後、バイアル瓶に分注して凍結乾燥して作製した。
発明の効果
本発明の新規ヒトデルタ−2分子は血液未分化細胞をはじめとする未分化細胞の増殖、分化抑制にとって有効な化学品となり、医薬品、医療品として使用が可能である。
配列表
配列番号 :1
配列の長さ:191
配列の型 :アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源
生物名:ヒト
配列
Figure 0004171528
配列番号 :2
配列の長さ:500
配列の型 :アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源
生物名:ヒト
配列
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
配列番号 :3
配列の長さ:659
配列の型 :アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源
生物名:ヒト
配列
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
配列番号 :4
配列の長さ:3339
配列の型 :核酸
鎖の数 :二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
起源
生物名:ヒト
配列
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
配列番号 :5
配列の長さ:27
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :6
配列の長さ:20
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :7
配列の長さ:20
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :8
配列の長さ:2663
配列の型 :核酸
鎖の数 :二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
起源
生物名:ヒト
配列
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
Figure 0004171528
配列番号 :9
配列の長さ:20
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :10
配列の長さ:20
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :11
配列の長さ:716
配列の型 :核酸
鎖の数 :二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
起源:ヒト
配列
Figure 0004171528
配列番号 :12
配列の長さ:20
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :13
配列の長さ:20
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :14
配列の長さ:412
配列の型 :核酸
鎖の数 :二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
起源:ヒト
配列
Figure 0004171528
配列番号 :15
配列の長さ:28
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :16
配列の長さ:30
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :17
配列の長さ:28
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :18
配列の長さ:33
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号19
配列の長さ:52
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :20
配列の長さ:36
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :21
配列の長さ:25
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :22
配列の長さ:52
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :23
配列の長さ:36
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528
配列番号 :24
配列の長さ:33
配列の型 :核酸
鎖の数 :一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(化学合成DNA)
配列
Figure 0004171528

Claims (9)

  1. 配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を含有するポリペプチド。
  2. 配列表の配列番号5に記載の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列及びIgG1のヒンジ部分以下のFc配列からなる群から選択される第2アミノ酸配列と組み合わせた請求の範囲第1項に記載のポリペプチドを含み、かつ該第2アミノ酸配列が該請求の範囲第1項に記載のポリペプチドのC末側に結合しているポリペプチド。
  3. 血管内皮細胞の増殖を抑制する方法であって、該血管内皮細胞を配列表の配列番号3記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドと共に培養する工程を含む方法。
  4. 配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードするDNA。
  5. 配列表の配列番号4に記載の塩基配列の355番から2331番の塩基配列を有する請求の範囲第4項に記載のDNA。
  6. 請求の範囲第4項に記載のDNAと、宿主細胞中で発現可能なベクターDNAと連結してなる組み換えDNA体。
  7. 請求の範囲第6項に記載の組み換えDNA体により形質転換された細胞。
  8. 配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドの製造方法であって、請求の範囲第7項に記載の細胞を培養する工程及び該細胞において発現した該ポリペプチドを分離精製する工程を含む製造方法。
  9. 配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを特異的に認識する抗体。
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