JP4170628B2 - ブテノリド類の新規製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品や農薬等の構成ユニットとして有用なブテノリド類(α,β−不飽和−γ−ラクトン)の新規で、効率的且つ短工程の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブテノリド(α,β−不飽和−γ−ラクトン)は生物活性物質や医薬品に頻繁に見られる構成ユニットである。また、ブテノリドを還元することにより得られるγ−ブチロラクトンも同様に重要なユニットである。それだけでなくブテノリドは、ビルディングブロックとして有機合成で汎用されている。従って、ブテノリドの高効率、短工程合成法の開発は重要な研究課題の一つである。
ブテノリドの合成法としては、例えばTetrahedron Lett. 1990, 31, 6789 に記載されているように、α,β−不飽和エステルをγ,δ−不飽和エステルに異性化させた後、エポキシ化し、酸で処理して閉環させる方法が知られているが、基質に制限があり工程数も多い。
また、Tetrahedron 1995, 51, 5831 に記載されているように、β−ヒドロキシエステルから7工程で必要とされる炭素骨格を整えた後、閉環し、更に二重結合を異性化させることでブテノリドに導く方法も知られているが工程数が極めて多い。
また、Tetrahedron Lett., 1992, 33, 4589 に記載されているようにニトリルオキシドとアルケンとの双極子環化付加反応の後、還元し、いくつかの工程を経てブテノリドに導く方法も知られているが、縮合環に限られると共に工程が長い。
また、Tetrahedron Lett. 1992, 33, 4605 に記載されているように、ケトンに対しリフォルマツキー試薬を反応させた後、脱水し、次いで四酸化オスミウムでジヒドロキシル化し最後に酸処理してブテノリドを合成する方法も知られているが、脱水の際の位置選択性が問題となり汎用性に欠ける。
更に、α−ヒドロキシケトンやα−オキシケトンを原料にホーナーエモンズ反応によるオレフィン化に引き続いての環化(TetrahedronLett. 1995, 36, 2839)や、イナミンをルイス酸と共に反応させてから酸で環化させる方法(Tetrahedron Lett. 1980, 21, 657)等も知られているが十分な例が示されておらずその汎用性は明らかでない。
以上のように、これまで多くの合成例が報告されているが、α−オキシケトンに対するZ選択的なオレフィン化反応が知られていないことから1〜2工程でブテノリドを合成する効果的な方法は未だ見出されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き現状に鑑みなされたもので、短工程で選択性が高く、且つ収率の高いブテノリド類の製造法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、α−オキシケトンをイノラートアニオンと反応させ、次いでこの生成物を直接酸で処理するか、又はアルキル化剤で処理した後、酸で処理することを特徴とするブテノリド類の製造法に関する。
【0005】
また、本発明は、α−オキシケトンとイノラートアニオンとを反応させるか、又はα−オキシケトンとイノラートアニオンとを反応させた後、これをアルキル化剤で処理することを特徴とするα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステル体の製造法に関する。
【0006】
更に、本発明は、α,β−不飽和カルボン酸又はそのエステル体を酸で処理することを特徴とするブテノリド類の製造法に関する。
【0007】
即ち、本発明者らは、ブテノリド類の短工程で選択性が高く、且つ収率の高い製造法を求めて鋭意研究を重ねた結果、α−オキシケトンにイノラートアニオンを反応させ、次いでこの反応液を酸処理するだけで、或いは一旦アルキル化剤で処理した後、酸処理するだけで容易に且つ収率良く所望のブテノリドを合成し得ることを見出し本発明を完成するに到った。
原料となるα−オキシケトンは、α位にシロキシ基やアルコキシ基等の酸により容易に脱離し得る基を有するケトンであり、その合成は一般に容易である。この原料に対し、イノラートアニオンを室温で反応させると30分以内にケトンの高Z選択的オレフィン化反応が終結し、この反応液に酸を加えて濃縮するだけで(或いはアルキル化剤で処理した後、酸処理するだけで)、所望のブテノリドが高収率で得られる。イノラートアニオンは、例えば、本発明者らが先に開発し特許出願しているジブロモエステルを原料とする簡便法(特願2001−308642号、Tetrahedron Lett.,2001,42,8357)により生成させたもの等を用いればより効果的である。
本発明の製造法は、従来法に比べて工程数が少なく簡便であり、収率、選択性も高く、また原料の合成も容易である。また、従来の方法では効率的合成が困難であった多置換ブテノリドの合成にも適用可能である。従って、本発明の製造法は、医薬品、農薬等の短工程合成法として極めて有用である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の製造法において用いられるイノラートアニオンとしては、例えば下記一般式[2]で示される化合物が挙げられる。
【化9】
Figure 0004170628
(式中、Rは、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基、置換基を有していても良いシリル基、水素原子又はリチウム原子を表す。)
【0009】
本発明の製造法において用いられるα−オキシケトンとしては、例えば下記一般式[3]で示される化合物が挙げられる。
【化10】
Figure 0004170628
(式中、Rは、酸により容易に脱離し得る基を表し、R,R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基又は水素原子を表す。また、R,R、Rの何れか2つが互いに結合して隣接する炭素原子と一緒になって環を形成していても良い。)
【0010】
本発明の製造法により得られるブテノリド類としては、例えば下記一般式[1]で示される化合物が挙げられる。
【化11】
Figure 0004170628
(式中、R,R,R及びRは前記と同じ。)
【0011】
また、本発明の製造法により得られるα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステル体としては、例えば下記一般式[4]で示される化合物が挙げられる。
【化12】
Figure 0004170628
(式中、R,R,R及びRは前記と同じ。Rは水素原子又は酸により容易に脱離し得る基を表す。)
【0012】
上記一般式[1]〜[4]のそれぞれにおいて、R並びにR〜Rで表される、置換基を有していても良いアルキル基のアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状、分枝状又は環状の低級アルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、置換基を有していても良いアリール基のアリール基としては、例えば、炭素数6〜30、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜14の単環、多環又は縮合環式の芳香族炭化水素基が挙げられ、より具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
更に、置換基を有していても良いアラルキル基のアラルキル基としては、例えば、炭素数7〜30、好ましくは7〜20、より好ましくは7〜15の単環、多環又は縮合環式のアラルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
これらアルキル基、アリール基及びアラルキル基の置換基としては、本発明に係る反応の進行に支障を来さないものであればどのような置換基でも良いが、例えば、アルケニル基、アルキニル基、アルコシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0013】
一般式[1]、[2]及び[4]において、Rで表される置換基を有していてもよいシリル基の置換シリル基としては、シリル基の水素原子の1〜3個がアルキル基、アリール基等に置き換わったものが挙げられ、中でもトリ置換体が好ましく、より具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0014】
一般式[3]において、Rで表される酸により容易に脱離し得る基、及び一般式[4]において、Rで表される酸により容易に脱離し得る基としては、例えば、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基、置換基を有していても良いシリル基等が挙げられる。
これら置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基及び置換基を有していても良いシリル基の定義及び具体例は、上記R並びにR〜Rのそれらと全く同じである。
【0015】
一般式[1]、[3]及び[4]において、R,R、Rの何れか2つが互いに結合して隣接する炭素原子と一緒になって環を形成している場合の環の員数に制限はなく、具体例としては、例えばトリメチレン環、テトラメチレン環、ペンタメチレン環、ヘキサメチレン環、ヘプタメチレン環等のポリメチレン環や例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環等が挙げられる。
【0016】
本発明のブテノリド類の製造法において、α−オキシケトンをイノラートアニオンと反応させた後の酸処理、或いはアルキル化剤で処理した後の酸処理に用いられる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、トシル酸等が挙げられ、また、このときの溶媒としては例えば、エタノール、メタノール、テトラヒドラフラン(THF)、水等が挙げられる。
【0017】
本発明のブテノリド類の製造法並びにα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステル体の製造法において用いられるアルキル化剤としては、例えば、沃化メチル、沃化エチル、沃化プロピル、沃化ブチル、臭化ベンジル、臭化アリル等のハロゲン化アルキル等が挙げられる。
【0018】
本発明の製造法において用いられるイノラートアニオンは、例えば 、本発明者らが開発した、Tetrahedron Lett.,2001,42,8357 に記載の方法、即ち、α,α−ジブロモエステルとリチウム金属とをナフタレン類又はビフェニル類の存在下に反応させる方法により容易に合成することが出来る。
しかしながら、本発明の製造法において用いられるイノラートアニオンは、上記方法により製造されたものに限定されるものではなく、例えばAngew. Chem. Int. Ed. Engle. 1975, 14, 765に記載の3,4−ジフェニルイソキサゾールをリチオ化したのち解裂させる方法、J. Org. Chem. 1978, 43, 376に記載のシリルケテンをリチオ化する方法、J. Am. Chem. Soc., 1980, 107, 321やJ. Org. Chem. 1992, 57, 7194に記載のα−ケトジアニオンの転位による方法、Tetrahedron, 1997, 53, 7843に記載のα−ケトジアニオンの転位による方法、J. Am. Chem. Soc., 1987, 109, 228に記載のイノールトシラートをメチルリチウムで処理する方法、Synlett, 1993, 233に記載のリチウムアセチリドをリチオt−ブチルパーオキシドで酸化する方法、J. Am. Chem. Soc., 1996, 118, 7634に記載のトリメチルシリルジアゾメタンをリチオ化した後に一酸化炭素を反応させる方法、或いはまた、同じく本発明者らが開発したα,α−ジブロモエステルを−78℃冷却下t−ブチルリチウムで処理し、3時間後0℃に昇温することでイノラートアニオンを簡便に合成する方法(Tetrahedron 1998, 54, 2411)等、何れの方法で製造されたものであっても良い。
【0019】
本発明の製造法において用いられるα−オキシケトンの製造法としては、例えば、ケトンのシリルエノールエーテルを過酸などでエポキシ化後、転位させる方法、ケトンエノラートをオキサジリジンなどで酸化する方法、1,2−ジオールの一方のアルコールを酸化する方法等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明のブテノリド類の製造法を反応スキームで示すと以下のようになる。
【化13】
Figure 0004170628
【0021】
即ち、イノラートアニオンとα−オキシケトンを室温(−20℃〜+30℃位まで可能)にてTHF中(エーテルでも可)で反応させることにより10分から1時間で(通常は30分位)Z−α,β−不飽和カルボキシラートが生成する。
この反応液に例えば塩酸のエタノール溶液(3%)を加え、加熱して濃縮するとブテノリドが生成する。このとき塩酸の代わりに硫酸、トシル酸などの他の酸を用いてもよい。また、このときの溶媒としてはエタノール、メタノール、THF、水などが用いられる。
本反応の幾つかの例についてその結果を以下の表1に示す。なお、表中のTBSはt−ブチルジメチルシリル基を表す。
【0022】
【表1】
Figure 0004170628
【0023】
また、本発明の他のブテノリド類の製造法の反応スキームを示すと以下のようになる。
【化14】
Figure 0004170628
【0024】
即ち、イノラートアニオンとα−オキシケトンを室温(−20℃〜+30℃位まで可能)にてTHF中(エーテルでも可)で反応させることにより10分から1時間で(通常は30分位)Z−α、β−不飽和カルボキシラートが生成する。
この反応液にヨウ化メチルを過剰量(2当量以上、通常10等量)加え、更にHMPA(ヘキサメチルホスホリックトリアミド)若しくはDMF(ジメチルホルムアミド)を過剰量(通常10等量)加えて、室温で8時間から12時間攪拌する。ここで生成したメチルエステル(ヨウ化メチルの代わりにその他のアルキル化剤、例えばヨウ化エチル、ベンジルブロミドを用いて他のエステルにしてもよい。)を精製せずに塩酸で処理することによりブテノリドが得られる。このとき塩酸の代わりに硫酸、トシル酸などの他の酸を用いてもよい。また、このときの溶媒としてはエタノール、メタノール、THF、水などが用いられる。
本反応の幾つかの例についてその結果を以下の表2に示す。
【0025】
【表2】
Figure 0004170628
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0027】
実施例1 3,5,5−トリメチル−4−フェニル−2(5H)−フラノンの合成
2,2−ジブロモプロピオン酸エチル(1.0mmol)の無水THF溶液(6mL)に、−78℃冷却下、t−ブチルリチウム(4.0mmol,n−ペンタン溶液)を加えて3時間攪拌した。次いで、この反応液を0℃に昇温して更に30分間攪拌し、室温まで昇温した。この溶液に2−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(0.8mmol)の無水THF溶液(2mL)を室温で加え、30分間攪拌した後、3%塩酸−エタノール(10mL)を室温で加え、攪拌下に減圧濃縮した。残渣を飽和重曹水(10 mL)を加えて処理した後、酢酸エチル(20mL×2)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた油状物と固体をカラムクロマトグラフィー(SiO,10v/v%AcOEt−ヘキサン)に付し、標題のブテノリド(141mg,収率:86%)を淡黄色固体として得た。
【0028】
実施例2 3,4,5,5−テトラメチル−2(5H)−フラノンの合成
2,2−ジブロモプロピオン酸エチル(1.2mmol)の無水THF溶液(6mL)に、−78℃冷却下、t−ブチルリチウム(4.8mmol,n−ペンタン溶液)を加えて3時間攪拌した。次いで、この反応液を0℃に昇温して更に30分間攪拌し、室温まで昇温した。この溶液に3−t−ブチルジメチルシリルオキシ−3−メチル−2−ブタノン(1.0mmol)の無水THF溶液(2mL)を室温で加え、30分間攪拌した後、3%塩酸−エタノール(10mL)を室温で加え、110℃で1時間還流した。室温に戻した後、攪拌下に減圧濃縮した。残渣を飽和重曹水(10mL)を加えて処理した後、酢酸エチル(20 mL×2)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(SiO,30v/v%AcOEt−ヘキサン)に付し、標題のブテノリド(134mg,収率:96%)を黄色油状物として得た。
得られた化合物の各種スペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ: 1.41(s,6H),1.79(dd,J=1.2Hz,2.0Hz,3H),1.92(dd,J=1.2Hz,2.0Hz,3H)。
IR(neat):1748cm−1
【0029】
実施例3 3,5−ジメチル−4−フェニル−2(5H)−フラノンの合成
2,2−ジブロモプロピオン酸エチル(1.0mmol)の無水THF溶液(6mL)に、−78℃冷却下、t−ブチルリチウム(4.0mmol,n−ペンタン溶液)を加えて3時間攪拌した。次いで、この反応液を0℃に昇温して更に30分間攪拌し、室温まで昇温した。この溶液に2−t−ブチルジメチルシリルオキシ−1−フェニル−1−プロパノン(0.8mmol)の無水THF溶液(2mL)を室温で加え、30分間攪拌した後、3%塩酸−エタノール(10mL)を室温で加え、攪拌下に減圧濃縮した。残渣を飽和重曹水(10mL)を加えて処理した後、酢酸エチル(20mL×2)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(SiO,5v/v%AcOEt−ヘキサン)に付し、標題のブテノリド(114mg,収率:75%)を淡黄色油状物として得た。
得られた化合物の各種スペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:1.38(d,J=6.8Hz,3H),2.00(d,J=1.6Hz,3H),5.42(qd,J=1.6Hz,6.8Hz,1H),7.35(t,1.6Hz,1H),7.37(d,1.6Hz,1H),7.44−7.52(m,3H)。
IR(neat):1749cm−1
【0030】
実施例4 3−メチル−4,5−ジフェニル−2(5H)−フラノンの合成
2,2−ジブロモプロピオン酸エチル(1.0mmol)の無水THF溶液(6mL)に、−78℃冷却下、t−ブチルリチウム(4.0mmol,n−ペンタン溶液)を加えて3時間攪拌した。次いで、この反応液を0℃に昇温して更に30分間攪拌し、室温まで昇温した。この溶液に2−t−ブチルジメチルシリルオキシ−1,2−ジフェニルエタノン(0.8mmol)の無水THF溶液(2mL)を室温で加え、30分間攪拌した後、3%塩酸−エタノール(10mL)を室温で加え、攪拌下に減圧濃縮した。残渣に飽和重曹水(10mL)を加えて処理した後、酢酸エチル(20mL×2)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(SiO,2v/v%AcOEt−ヘキサン)に付し、標題のブテノリド(174mg,収率:85%)を無色油状物として得た。
得られた化合物の各種スペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:2.17(d,J=1.6Hz,3H),6.20(dd,J=1.6Hz,3.2Hz,1H),7.21−7.38(m,10H)。
IR(neat):1748cm−1
【0031】
実施例5 メチル(Z)−4−(t−ブチルジメチルシロキシ)−2,3,4−トリメチル−2−ペンテノエートの合成
2,2−ジブロモプロピオン酸エチル(1.2mmol)の無水THF溶液(6mL)に、−78℃冷却下、t−ブチルリチウム(4.8mmol,n−ペンタン溶液)を加えて3時間攪拌した。次いで、この反応液を0℃に昇温して更に30分間攪拌し、室温まで昇温した。この溶液に3−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−ブタノン(1.0mmol)の無水THF溶液(2mL)を室温で加え、30分間攪拌した後、ヨウ化メチル(10mmol)及びHMPA(10mmol)を室温で加え、一晩撹拌した。反応後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加えて処理した後、酢酸エチル(20 mL×2)で抽出した。有機層を水(×3)、飽和重曹水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(SiO,5v/v%AcOEt−ヘキサン)に付し、標題のメチルエステル(280mg,収率:98%)を無色油状物として得た。これを更にHPLC(SiO,1v/v%AcOEt−ヘキサン,10ml/min)に付し、精製した。
得られた化合物の各種スペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:0.09(s,6H),0.87(s,9H),1.38(s,6H),1.71(q,J=1.2Hz,3H),1.82(q,J=1.2Hz,3H),3.71(s,3H)。
13C−NMR(100MHz,CDCl,TMS)δ:−2.1(q×2),15.7(q),18.5(q),25.8(q×3),29.3(q×2),51.6(q),76.4(s),121.2(s),142.3(s),173.3(s)。
IR(neat):1732cm−1
【0032】
実施例6 3,4,5,5-テトラメチル-2(5H)-フラノンの合成
実施例5で得られたメチルエステル(0.26mmol)のエタノール(2mL)溶液に6N−塩酸(2mL)を室温で加え、一晩攪拌した。反応後、反応液に水(10mL)を加え、塩化メチレン(10mL×3)で抽出した。有機層を飽和重曹水(10mL×2)及び飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(SiO,30v/v%AcOEt−ヘキサン)に付し、標題のブテノリド(23mg,65%)を淡黄色油状物として得た。
得られた化合物の各種スペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:1.41(s,6H),1.79(dd,J=1.2Hz,2.0Hz,3H),1.92(dd,J=1.2Hz,2.0Hz,3H)。
IR(neat):1748cm−1
【0033】
【発明の効果】
本発明は、医薬品や農薬等の構成ユニットとして有用なブテノリド類(α,β−不飽和−γ−ラクトン)とその中間体であるα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステル体の新規で、且つ効率的な製造法を提供するものであり、本発明の製造法の利点を挙げると以下のようになる。
(1)本発明のブテノリドの製造法は、従来法に比べて工程数が少なく簡便であり、且つ収率も高く、また原料の合成も容易である。
(2)本発明の製造法によれば、高Z選択的にオレフィン化反応が起こり、対応するα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステル体が高収率で得られる。
(3)本発明の製造法は、従来の方法では効率的合成が困難であった多置換ブテノリドの合成にも適用可能である。
従って、本発明の製造法は、医薬品、農薬等の短工程合成法として極めて有用である。

Claims (12)

  1. α−オキシケトンをイノラートアニオンと反応させ、次いでこの生成物を直接酸で処理するか、又はアルキル化剤で処理した後、酸で処理することを特徴とするブテノリド類の製造法であって、イノラートアニオンが下記一般式[2]
    Figure 0004170628
    (式中、R は、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基、又は置換基を有していても良いシリル基を表す。)で示される化合物であり、
    α−オキシケトンが下記一般式[3]
    Figure 0004170628
    (式中、R は、酸により容易に脱離し得る基を表し、R ,R 及びR は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基又は水素原子を表す。また、R ,R 、R の何れか2つが互いに結合して隣接する炭素原子と一緒になって環を形成していても良い。)で示される化合物であるブテノリド類の製造法。
  2. 一般式[3]において、Rで表される、酸により容易に脱離し得る基が置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基又は置換基を有していても良いシリル基である請求項に記載の製造法。
  3. 酸処理に用いる酸が塩酸、硫酸又はトシル酸である請求項1又は2に記載の製造法。
  4. アルキル化剤がハロゲン化アルキルである請求項1〜の何れかに記載の製造法。
  5. ハロゲン化アルキルが沃化メチル、沃化エチル、沃化プロピル、沃化ブチル、臭化ベンジル又は臭化アリルである請求項に記載の製造法。
  6. ブテノリド類が下記一般式[1]
    Figure 0004170628
    (式中、R,R,R及びRは前記と同じ。)で示される化合物である請求項1〜の何れかに記載の製造法。
  7. α−オキシケトンとイノラートアニオンとを反応させるか、又はα−オキシケトンとイノラートアニオンとを反応させた後、これをアルキル化剤で処理することを特徴とするα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステル体の製造法であって、
    イノラートアニオンが下記一般式[2]
    Figure 0004170628
    (式中、R は、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基又は置換基を有していても良いシリル基を表す。)で示される化合物であり、
    α−オキシケトンが下記一般式[3]
    Figure 0004170628
    (式中、R は、酸により容易に脱離し得る基を表し、R ,R 及びR は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基又は水素原子を表す。また、R ,R 、R の何れか2つが互いに結合して隣接する炭素原子と一緒になって環を形成していても良い。)で示される化合物であるα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステル体の製造法。
  8. 一般式[3]において、Rで表される、酸により容易に脱離し得る基が置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基又は置換基を有していても良いシリル基である請求項に記載の製造法。
  9. α,β−不飽和カルボン酸又はそのエステル体が下記一般式[4]
    Figure 0004170628
    (式中、R,R,R及びRは前記と同じ。Rは水素原子又は酸により容易に脱離し得る基を表す。)で示される化合物である請求項7又は8に記載の製造法。
  10. で表される、酸により容易に脱離し得る基が置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアラルキル基又は置換基を有していても良いシリル基である請求項に記載の製造法。
  11. アルキル化剤がハロゲン化アルキルである請求項7〜10の何れかに記載の製造法。
  12. ハロゲン化アルキルが沃化メチル、沃化エチル、沃化プロピル、沃化ブチル、臭化ベンジル又は臭化アリルである請求項11に記載の製造法。
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