JP4287616B2 - 2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類の製造方法 - Google Patents

2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特徴的な構造を有し、医薬、農薬の製造における中間体、またはフッ素導入剤として有用な2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
7員環の有機化合物で環中にオキシ基(−O−)を有するエーテル化合物(以下、「7員環オキササイクル」と呼ぶ)は、天然界に存在し、医薬への応用も可能なことから近年、注目を集め、数多くの合成例が報告されている化合物である(総説(Tetrahedron、第54巻(1998年)、P.12631〜12670))。
【0003】
例えば上記総説によれば、一方の末端がアルコキシアリルスタナン(R−O−CH=CH−CH2−SnBu3)(ここでRは鎖状アルキレン基、Buはブチル基を表す)であり、もう一方の末端がアルデヒド基である特定の鎖状化合物をルイス酸触媒と接触させたところ、分子内求核反応が起こり、7員環オキササイクルが得られたと記載されている(該総説、P.12634)。また、特定の6員環ケトンをBaeyer−Villiger酸化に付すなどの手段により、7員環ラクトンを得た後、ラクトンのカルボニル部位を他の官能基に置換して、7員環オキササイクルを得た例が報告されている(該総説、P.12647〜12650)。
【0004】
このようにして得られる7員環オキササイクルをビルディングブロックとして用いることで、薬理活性を持つ、より大きな構造の化合物も合成されている。
【0005】
7員環オキササイクルとして、環上にハロゲン基が直接結合した化合物は知られている(例えば、上記概説のP.12656)が、薬剤中にしばしば用いられる基であるトリフルオロメチル基が結合したものは知られていない。一般に、トリフルオロメチル基を薬剤の特定部位に導入するためには、高価なフッ素化剤が必要であったり、反応の選択性が低く、目的物が効率的に得られ難いという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は7員環オキササイクルのうち、2位炭素にトリフルオロメチル基が結合し、かつ2,3−不飽和であり、かつ6,7−不飽和である新規な物質(2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類)効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を加えた。この結果、トリフルオロメチル基源として、工業的な入手の容易な式[9]に表される1,1−ジハロゲノ−3,3,3−トリフルオロアセトン
【0008】
【化14】
Figure 0004287616
【0009】
(式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素の何れかを表す)
を用い、これを以下の反応に付すことで課題が解決することを見いだした。すなわち、式[9]で表される化合物を、式[10]で表される、1,2−不飽和グリニヤール試薬
【0010】
【化15】
Figure 0004287616
【0011】
(式中、 1 ,L 2 ,L 3 はそれぞれ独立して、水素原子、又はフェニル基を表す。またXは塩素、臭素またはヨウ素を表す。)
と反応させ、次いで加水分解すると、式[7]に表されるトリフルオロメチル−アルケニル置換ジハロゲノヒドリン
【0012】
【化16】
Figure 0004287616
【0013】
(式中、L1〜L3の意味は前記と同じ。)
が得られ、これに、式8で表されるアルケニルリチウム類
【0014】
【化17】
Figure 0004287616
【0015】
(式[8]中、 5 は、水素原子、またはエトキシ基を表す。L 6 ,L 7 はそれぞれ水素原子を表す。)
を作用させると、式[11]に表されるリチオオキシランが生成することを知った。
【0016】
【化18】
Figure 0004287616
【0017】
(式中、L1〜L3およびL5〜L7の意味は前記と同じ。)
さらにこの化学種に特定の求電子剤(E)を作用させると、一般式[2]に表されるシス−ジビニルオキシラン
【0018】
【化19】
Figure 0004287616
【0019】
(式中、L1〜L3,L5〜L7の意味は前記に同じ。L8は、求電子剤(E)に基づく基であり、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(CO)OA(ここでAは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)、C(OH)R12、またはSiR123の何れかを表す(ここでR1、R2、R3は、それぞれ独立して、アリール基(ヘテロアリール基を含む)、または炭素数1〜6のアルキル基(これらのアルキル基は、炭素原子の代わりにヘテロ原子を有していてもよく、置換基を有していてもよい)を表す。R1、R2、R3の全部または選ばれた2つがお互いつながって環を形成していてもよい。))
を選択性よく合成できることを見いだした(本出願人はここまでの発明のうち、L8が(CO)OA以外のものについて、特願2001−72725として既に出願している)。
【0020】
本発明者らはさらに、得られた一般式[2]で表されるシス−ジビニルオキシランを無溶媒で、または不活性溶媒中で加熱することにより、7員環化が進行し、目的物質の一部である、一般式[3]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類
【0021】
【化20】
Figure 0004287616
【0022】
(式中、L1〜L3,L6〜L7、L8の意味は前記に同じ。)
が効率よく合成されることを見いだした。
【0023】
上記で得られる、式[3]のオキセピン類の7位の置換基(L8)としては、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基は含まれない。これは、L8としてこれらの基を導入するための適切な求電子剤(E)が存在しないためである。
【0024】
この問題点を解決するために、本発明者らはさらに検討を加え、スズまたはホウ素を含む求電子剤を使用した中間化学種を経由させることにより、この問題が解決することを見いだした。すなわち、式[7]で表される化合物をリチオ化して、式[11]で表されるリチオオキシランを得た後に、求電子剤(E)として、SnR123(Z)、またはB(OR1)(OR2)(Z)(ここでR1、R2、R3は、それぞれ独立して、アリール基(ヘテロアリール基を含む)、または炭素数1〜6のアルキル基(これらのアルキル基は、炭素原子の代わりにヘテロ原子を有していてもよく、置換基を有していてもよい)を表す。R1、R2、R3の全部または選ばれた2つがお互いつながって環を形成していてもよい。Zはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、擬ハロゲン基、アルコキシ基の何れかを表す。)を作用させると、式[4]で表される、スズもしくはホウ素を含むシス−ジビニルオキシラン
【0025】
【化21】
Figure 0004287616
【0026】
(式中、L1〜L3,L5〜L7の意味は前記に同じ。L9はSnR123、またはB(OR1)(OR2)の何れかを表す。)
が得られることが分かった。
【0027】
続いてこの化合物を無溶媒下、または不活性溶媒中で加熱することにより、スズまたはホウ素を含む基は安定に結合したまま、7員環化が円滑に進行し、一般式[5]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類
【0028】
【化22】
Figure 0004287616
【0029】
(式中、L1〜L3,L5〜L7、L9の意味は前記に同じ。)
が得られた。さらにこの化合物を、パラジウム錯化合物の存在下、L4Yで表されるハロゲン化物または擬ハロゲン化物(ここでL4は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、(CO)OA(Aは前記に同じ)、C(OH)R12、またはSiR123の何れかを表す。Yはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6のパーフルオロアルカンスルホン酸基の何れかを表す。)と反応させることで、7位の置換基L9が効率よくL4に置換され、その結果、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基である場合も含めて、広く本発明の目的物質である、一般式[1]で表わされる2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類を合成できることを見いだした。
【0030】
また、本発明の目的物を得るための鍵化合物である、式[2]または式[4]で表されるシス−ジビニルオキシランは、式[7]に表される、トリフルオロメチル−アルケニル置換ジハロゲノヒドリンに、式[8]で表されるアルケニルリチウム類を作用させ、次いで求電子剤(E)を作用させることによって得られる。ここで本発明者らは、該方法において式[8]で表されるアルケニルリチウム類を作用させる際、LiTMP(リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド)、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド)、KDA(カリウムジイソプロピルアミド)、KHMDS(カリウムヘキサメチルジシラジド)から選ばれる塩基を系内に共存させると、反応性が顕著に増大し、式[2]または式[4]の化合物がより効率的に得られることを見いだし、本発明の完成に到達したものである。
【0031】
すなわち本発明は、一般式[4]で表されるシス−ジビニルオキシランを無溶媒で、または不活性溶媒中で加熱することを特徴とする、一般式[5]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類の製造方法を提供する。また、一般式[5]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類を、パラジウム錯化合物の存在下、一般式[6]で表されるハロゲン化物または擬ハロゲン化物と反応させることを特徴とする、一般式[1]で表わされる2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類の製造方法を提供する。
【0032】
また本発明は、一般式[4]で表されるシス−ジビニルオキシランを無溶媒で、または不活性溶媒中で加熱し、一般式[5]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類を得た後に、パラジウム錯化合物の存在下、式[6]で表されるハロゲン化物または擬ハロゲン化物と反応させることを特徴とする、一般式[1]で表わされる2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類の製造方法を提供する。
【0033】
さらに本発明は、一般式[7]で表されるトリフルオロメチル置換ジハロゲノヒドリン類に、−78℃以下の温度で、LiTMP(リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド)、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド)、KDA(カリウムジイソプロピルアミド)、KHMDS(カリウムヘキサメチルジシラジド)から選ばれる塩基の存在下、一般式[8]で表されるアルケニルリチウム類を混合し反応させた後に、求電子剤と反応させることを特徴とする、本発明の鍵化合物である一般式[2]または[4]で表されるシス−ジビニルオキシランの製造方法を提供する。
【0034】
本発明に係る反応の経路を次にまとめる。
【0035】
【化23】
Figure 0004287616
【0036】
上に示すように、式[9]の化合物から式[7]の化合物を得る工程を「予備工程」、式[7]の化合物を式[2]の化合物に誘導する工程を「工程A1」と呼ぶ。また、式[7]の化合物を式[4]の化合物に誘導する工程を「工程A2」と呼ぶ。また式[2]の化合物を式[3]の化合物に変換する工程を「工程B1」と呼ぶ。また、式[4]の化合物を式[5]の化合物に変換する工程を「工程B2」と呼ぶ。さらに、式[5]の化合物を式[1]の化合物に変換する工程を「工程C」と呼ぶ。
【0037】
本発明において使用される、置換基の略号とその定義を、表1にまとめる。また、本発明において使用する求電子剤(E)と、その場合に導入される基(L8またはL9)の関係を表2にまとめる。表2に示したように、基L8を導入するのに用いる求電子剤を「クラスa」、基L9を導入するのに用いる求電子剤を「クラスb」と分類する。
【0038】
【表1】
Figure 0004287616
【0039】
【表2】
Figure 0004287616
【0040】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0041】
本発明において、置換基 、L 、L についての上記説明で言及しているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基は、本発明の反応に直接関与しない基であるから、その種類に特別な制限はない。
【0042】
しかし原料の入手の容易さを考えると、アルキル基は炭素数が1〜6、アルケニル基は炭素数が2〜6、アルキニル基は炭素数が2〜6のものが好ましい。なおこれらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、その炭素構造中に分岐を有していてもよい。一方、シクロアルキル基とシクロアルケニル基は炭素数が3〜8であり、シクロアルキニル基は炭素数が8以上のものが好ましい。これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基はいずれも、炭素原子の代わりに酸素原子、窒素原子、イオウ原子をヘテロ原子として有していてもよく、置換基を有していてもよい。なお、ここでいう置換基とは、本発明の反応条件において不活性な基であれば制限はなく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基にあっては、フッ素原子、フェニル基、アルコキシ基、三級アミノ基、オキソ基(O=)等であり、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基にあっては、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アルケニル基、フルオロアルケニル基、フェニル基、アルコキシ基、オキソ基(O=)等である。
【0043】
また同様に、置換基 、L 、L におけるアリール基とは、フェニル基、ナフチル基、またはそれらの水素原子がフッ素原子、フルオロアルキル基、アルケニル基、フルオロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、三級アミノ基で置換されたもの、等が挙げられる。
【0044】
これら 、L 、L に該当する特に好ましい基を具体的に例示すると、水素原子、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基、フェニル基、シクロヘキシル基、メトキシ基などの他、以下の基が例示できる。
【0045】
【化24】
Figure 0004287616
【0046】
なお、式[6]の化合物における「擬ハロゲン化物」とはトリフラート(CF3SO2O)イオン、ペンタフルオロエタンスルホネート(C25SO2O)イオン、ノナフルオロブタンスルホネート(C49SO2O)など、炭素数1〜6のパーフルオロアルカンスルホン酸イオンをアニオン部に有する化合物のことである。
【0047】
本発明によって提供される一般式[1]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類の例を以下に列挙する。
【0048】
【化25】
Figure 0004287616
【0049】
以下に、それぞれの工程について、その操作方法と条件を説明する。
【0050】
[予備工程]
まず、「予備工程」である、一般式[7]で表されるトリフルオロメチル置換ジハロゲノヒドリン類の合成について述べる。この化合物は、式[9]で表される1,1−ジハロゲノ−3,3,3−トリフルオロアセトンを、式[10]で表される1,2−不飽和グリニヤール試薬と反応させ、次いで加水分解することで得ることができる。この技術は、本出願人が特開2001−253841に開示した通りであるが、その概要を述べる。
【0051】
ここで、式[9]の化合物は、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン、1,1−ジブロモ−3,3,3−トリフルオロアセトン、1,1−ジヨード−3,3,3−トリフルオロアセトン、1−ブロモ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン、1−クロロ−1−ヨード−3,3,3−トリフルオロアセトン、または1−ブロモ−1−ヨード−3,3,3−トリフルオロアセトンのことであり、これらのうち1種のみを使用してもよいし、2種以上のものを同時に使用してもよい。これらのうち、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトンは工業的な入手が特に容易であるため、特に好ましい。
【0052】
式[10]で表される1,2−不飽和グリニヤール試薬の置換基L1〜L3の種類については前述した何れのものであってもよい。この基L1〜L3の種類に応じて、最終的な目的物である式[1]の化合物の種類が変わる。
【0053】
反応温度は−40℃〜+100℃が好ましく、−30℃〜+50℃がより好ましい。また1,2−不飽和グリニヤール試薬は1,1−ジハロゲノ−3,3,3−トリフルオロアセトンに対してやや過剰に用いるのが、反応率を上げるためには好ましい。反応終了後、反応液に氷または冷水を徐々に添加すれば加水分解が起こり、式[7]で表されるトリフルオロメチル置換ジハロゲノヒドリンを得ることができる。この後、反応液を希薄な酸水溶液で洗浄し、必要に応じて水洗、脱水処理等を行った後に、最終的に蒸留を行えば、式[7]で表される化合物を単離することができる。
【0054】
[工程A1について]
「工程A1」は、式[7]で表されるジハロゲノヒドリンを出発原料として、式[2]で表されるシス−ジビニルオキシランを得る工程である。具体的には、式[7]に表される化合物に対して、式[8]で表されるアルケニルリチウムを作用させ、式[11]に表されるリチオオキシランを得る反応(前段反応)、およびそれに引き続き、求電子剤(E)として前記「クラスa」に該当するもの(すなわち、アルコール類、ハロゲン化アルキル(R1X)、ケトン(R12C=O)、ハロゲン化シリル(R123SiX)、二酸化炭素の何れか)を作用させる反応(後段反応)によりなる(下記参照)。なお、求電子剤として二酸化炭素を用いる場合、L8として導入される基はカルボキシル(COOH)基であるが、二酸化炭素を作用させた後に公知のエステル化剤を作用させ、エステルに変換することができる。例えばR123SiCHN2で表されるジアゾ化合物(R1、R2、R3の説明は前記に同じ)を作用させると、L8をメトキシカルボニル基(COOMe)に変換できる。二酸化炭素はバブリングするか、反応器内に充満させればよく(その際、加圧してもよい)、ドライアイスとして系内に加えてもよい。十分な反応率を得るためには、二酸化炭素とジアゾ化合物はジハロゲノヒドリンと等モル以上作用させることが必要である。
【0055】
【化26】
Figure 0004287616
【0056】
次に、本工程の条件について述べる。前段反応も後段反応も空気と水の共存を避け、封管中で行うか、不活性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴンなど)の気流下で行うのが好ましい。
【0057】
まず、前段反応である、アルケニルリチウムとの反応は、式[7]の化合物の溶液を撹拌しながら、式[8]のアルケニルリチウムの溶液を徐々に添加するなどの手段により達せられる。アルケニルリチウムの置換基L5〜L7の種類は前記の通りであり、これらの種類によって最終目的物であるオキササイクルの構造式が変わる。この前段工程において、作用させるアルケニルリチウムは、式[7]で表される化合物1モルに対し、1〜10モルが好ましく、1〜5モルがより好ましい。反応温度は−78℃以下が好ましく、−90℃以下がより好ましい。−98℃は温度調節が比較的容易であるので好ましい。−78℃を超えると、式[11]で表されるリチオオキシランが分解することがあるので、好ましくない。溶媒は−78℃以下もしくは−100℃で液体である、反応において不活性な溶媒が使用でき、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン(何れも無水試薬)などが例示でき、これらは併せて使用することができる。
【0058】
なお、トリフルオロメチル基の根本の置換基がアルケニル基であり、かつリチウム化剤がアルケニルリチウムであるという、本発明に係る置換基の組み合わせにおいては、この前段反応が遅いことがある。この場合、反応率を上げるためには長時間がかかることとなり、操作上好ましくない。
【0059】
ここで本発明者らは、この前段の反応を、無水条件で有機溶媒によく溶け、求核性が弱い塩基である、LiTMP(リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド))、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド)、KDA(カリウムジイソプロピルアミド)、KHMDS(カリウムヘキサメチルジシラジド)から選ばれる塩基の存在下に行うと、反応速度が飛躍的に向上し、限られた時間内に、式[11]に表されるリチオオキシランをきわめて効率よく得ることができることを見いだした。NaOH、KOHなどの無機塩基は、本工程に求められる無水条件では溶解度が低く、十分な反応速度の増大をもたらさない
【0060】
前記塩基の使用量は、式[7]で表される化合物1モルに対し、0.5〜10モルが好ましく、1〜5モルがより好ましい。塩基が0.5モルより少ない場合には敢えて使用する効果が得られ難く、10モルを超えると経済的に好ましくない。このように塩基が存在する条件における、反応所要時間は典型的には1〜10時間であるが、薄相クロマトグラフィー、NMRなどで反応の進行状況を追跡しながら反応を実施することが望ましい。
【0061】
このようにして得た式[11]で表されるリチオオキシランは、低温でのみ安定な物質であるから、反応混合物から単離することなくすぐ引き続いて、後段反応である、求電子剤(E)との反応に用いるのが好ましい。
【0062】
後段反応は、前段反応終了後の反応液に求電子試薬(E)を加えることで達せられる。前段反応と同じく、−78℃以下で行うことが好ましく、−90℃以下がより好ましい。−98℃は温度調節が比較的容易であるので好ましい。−78℃を超えるとリチオオキシランが徐々に分解するので好ましくない。このとき撹拌を行ってもよい。またあえて新たに溶媒を添加する必要はない。薄相クロマトグラフィー、NMR等により反応の状況を測定しながら典型的には1〜10時間、反応を継続した後、徐々に昇温し、室温近くになったあと、反応液に飽和塩化アンモニウムなどの停止剤を加えるのが好ましい。
【0063】
得られた反応液は抽出、脱水、乾燥、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの有機合成における慣用の精製法により精製すると、一般式[2]に表されるシス−ジビニルオキシランを単離することができる。
【0064】
なお、本工程においては、一般式[2]で表されるシス−ジビニルオキシランの他に、一般式[12]で表されるトランス−ジビニルオキシランも副生する。
【0065】
【化27】
Figure 0004287616
【0066】
このトランス−ジビニルオキシランは、続く「工程B1」でオキセピン環に変換されないため、最終目的物の収率の低下をもたらす、望まれない副生物であるが、ここに提示した方法、条件によれば、このトランス体の生成量は少なく抑えられ、シス体を主生成物として得ることができ、7員環の表題化合物を得る上で有利である。
【0067】
[工程A2について]
本工程は式[7]で表されるジハロゲノヒドリンを出発原料として、式[4]で表されるシス−ジビニルオキシランを得る工程である。式[4]の化合物は、式[2]の化合物と、求電子剤に基づく置換基が異なるだけである(すなわちL8に対してL9)。反応の方法、条件は「工程A1」と同じであり、後段反応において、求電子剤(E)として「クラスb」のもの(具体的にはSnR123(Z)、またはB(OR1)(OR2)(Z)の何れか)を用いる点のみが相違点である(下式参照)(R1、R2、R3、Zは前記に同じ)。
【0068】
【化28】
Figure 0004287616
【0069】
前段反応については、「工程A1」と同一の反応であり、やはり、LiTMP(リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド))、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド)、KDA(カリウムジイソプロピルアミド)、KHMDS(カリウムヘキサメチルジシラジド)から選ばれる塩基を共存させることで、式[11]のリチオオキシランの生成速度を著しく増大させることができる。
【0070】
後段反応については、求電子剤(E)の種類は異なるものの、「工程A1」と同一の方法、条件で実施することができる。
【0071】
本工程においてもシス−ジビニルオキシランの他に、トランス−ジビニルオキシランの副生があるが、やはり目的とするシス−ジビニルオキシランが主生成物として得られる。
【0072】
[工程B1について](参考
本工程は、「工程A1」で得られた、式[2]で表されるシス−ジビニルオキシランを、式[3]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピンに誘導する工程である。本工程は、式[2]の化合物を無溶媒で、または不活性溶媒中で加熱することによりなる。
【0073】
本工程では原料も生成物も比較的安定であるが、副反応を抑えるために、不活性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴンなど)の存在下で行う方が好ましい。
【0074】
反応温度に特別な制限はないが、25℃〜200℃で行うことが好ましく、さらに好ましくは50〜150℃である。所要時間は典型的には1〜100時間であるが、条件によって異なるため、薄相クロマトグラフィー、NMR等で反応進行状況を追跡しながら、反応を実施するのが好ましい。
【0075】
本工程は「工程A1」で得られた反応混合物を直接加熱することもできるが、「工程A1」終了後、式[2]の化合物を単離精製した後に、本工程に付した方が副反応が起こりにくいので好ましい。
【0076】
本工程で溶媒を用いる場合、溶媒は不活性なものであれば特に限定されないが、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ヘキサンなどを挙げることができる。本反応は室温以上に加熱することが多いため、あまり沸点の低い溶媒(ジメチルエーテルなど)は加圧下で扱わなければならないなど、操作の煩雑を生じるので好ましくない。
【0077】
反応が十分に進行したことを確認した後、カラムクロマトグラフィー等、慣用の精製手段をとることにより、式[3]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピンを単離することができる。
【0078】
この、式[3]で表される化合物は本発明の最終目的物の一部であり、式[1]で表される化合物から、オキセピン環の7位の置換基がアルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基である場合を除いた化合物である。
【0079】
[工程B2について]
「工程B2」は、原料化合物(式[4]の化合物)のうち、求電子剤(E)に基づく置換基が、式[2]と異なることだけが相違点である(すなわちL8に対してL9)。L9はその根本(1位)の原子がホウ素またはスズである置換基であるが、「工程B1」に述べたのと同じ方法、条件によって加熱を行えばよい。すなわち、置換基L9は安定に結合したまま7員環化が円滑に進行し、式[5]で表されるオキセピンが高い選択性をもって得られる。
【0080】
[工程Cについて]
本工程は、「工程B2」で得た、式[5]で表される化合物を、パラジウム錯化合物の共存下、式[6]で表されるハロゲン化物または擬ハロゲン化物とカップリングさせて、式[1]で表される最終目的物に誘導する工程である。
【0081】
なお、式[6]の化合物として、置換基L4がアルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基以外のものを用いても、式[1]の化合物は合成できる(例えば式[6]の化合物として塩化エタン用いれば、式[1]のL4がエチル基であるものが得られる)。しかしそれらのものは、式[3]として表される化合物に該当するため、敢えて「工程A2」「工程B2」「工程C」の3ステップを経て合成する必要はない。すなわち、これらは既に述べた「工程A1」「工程B1」の2ステップを経て合成でき、その方が簡便である。つまり、この「工程C」は、式[6]の化合物のうち、L4がアルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基である化合物に限って適用するのが好ましい。
【0082】
本工程において、置換基L9がB(OR1)(OR2)である場合には塩基を系内に共存させる必要がある(一方、L9がSnR123である場合は、塩基は必要でない)。塩基としては、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリ−o−オクチルアミン、トリアリルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリンなどの有機塩基を挙げることができるが、これらに限られない。塩基の使用量は、式[5]で表される化合物1モルに対し、1〜10モル、好ましくは1〜5モル、さらに好ましくは1〜3モルである。1モルよりも少ない場合には反応が十分に進行せず、収率低下の原因となり、10モルより多いと、目的物の収量にほとんど変化はなく、未反応の塩基が系内に残るだけで経済的に不利になるから好ましくない。
【0083】
一方、置換基L9がSnR123である場合には、塩基は必要でないが、無機塩類を系内に共存させると、反応が好ましく進行する場合がある。ここでいう無機塩類とはフッ化セシウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムなどであり、式[5]で表される化合物1モルに対し1〜10モル、好ましくは1〜5モル使用すると、良好な結果が得られることが多い。
【0084】
本工程に使用できるパラジウム錯化合物に特別な制限はないが、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2)、トリス(ジベンジリデン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、トリス(ジベンジリデン)(クロロホルム)ジパラジウム(Pd2(dba)3(CHCl3))、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh34)、Pd(OCOMe)2、PdCl2、PdBr2、PdCl2(PPh32、Pd(OCOMe)2(PPh32、PdBr2(PPh32、PdBr2(PPh32、PdCl2(PMe32、PdCl2[P(Ph)2CH2CH2P(Ph)2]、PdCl2[P(Ph)2CH2CH2CH2P(Ph)2]、PdCl2[P(Ph)2CH2CH2CH2CH2P(Ph)2]、Pd2Br4(PPh32等が挙げられる。ここでMeはメチル基、Phはフェニル基を表す。パラジウム錯化合物の使用量は、式[5]で表される化合物1モルに対し、0.00001モル〜0.5モル、好ましくは0.00005〜0.1モル、より好ましくは0.0001〜0.1モルである。0.00001モルより少ないと反応が遅く工業的に不利となり、一方0.5モルよりも多いことは反応性の上では問題ないが経済的に不利であるので好ましくない。
【0085】
この反応にホスフィン類を添加すると、パラジウム錯体が安定化し、反応が好ましく進行する場合が多く、ホスフィン類を添加することが好ましい。ホスフィン類としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンなど、汎用のホスフィン化合物が例示される。ホスフィン類の添加量は前記のパラジウム錯化合物1モルに対し、10モル以内とすることが好ましく、5モル以内であることがより好ましく、3モル以内であることがさらに好ましい。ホスフィン類が10モルよりも多いと、反応速度が遅くなるだけでなく、経済的にも不利であるから好ましくない。
【0086】
本工程の反応は無溶媒で行っても溶媒中で行ってもよい。溶媒を使用する場合、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、水などを用いればよく、これらは併せて使用することもできる。
【0087】
反応は空気中で行ってもよいが、パラジウム錯化合物やホスフィン類の劣化を防ぐために、不活性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴンなど)の存在下で行った方がよい。反応温度は0℃〜200℃が好ましく、25℃〜150℃が特に好ましい。反応時間は典型的には1〜50時間であるが、原料基質や条件によっても異なるので、薄相クロマトグラフィーやNMRなどで反応進行状況を確認しつつ、反応を行うことが好ましい。
【0088】
反応終了後の反応混合物をカラムクロマトグラフィーやゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)など、有機化合物の精製についての慣用の手段に付すことによって、目的物である一般式[1]の化合物を単離することができる。
【0089】
以下に本発明を実施例を以て説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
【0090】
【実施例】
[実施例1〜6]
実施例1〜6は下記スキームに表される反応に関する。
【0091】
【化29】
Figure 0004287616
【0092】
原料基質は上式で[1a]と表示されたジクロロヒドリンであり、1mmolの[1a]に対して−98℃〜−78℃でビニルリチウム、LiTPMを各々3mmol混合した。次いで、求電子剤として下記のものを混合して、同温度で撹拌を続けたところ、求電子剤に基づく基として「A1」が導入された生成物[2a]〜[2f]が、それぞれ次の表3に示す収率で得られた。
【0093】
【表3】
Figure 0004287616
【0094】
実施例1〜実施例6は同一の方法、条件にて行ったものであるが、以下に[2d]の合成の具体例(実施例4)を示す。
【0095】
トリブチル(ビニル)スズ(1.90 g, 3 mmol)のTHF溶液 (5 mL) にブチルリチウムのヘキサン溶液(1.5mol・dm-3, 2 mL, 3 mmol)を−78℃で滴下し,その温度で2時間撹拌してビニルリチウム(3 mmol)を調製した。この溶液をメタノール/液体窒素で−98℃ に冷却し,ジクロロヒドリン[1a](285 mg, 1.0mmol)のTHF溶液(2 mL)をゆっくり滴下し,同温度で30分撹拌した。ここへ別途調製したリチウム 2,2,6,6-テトラメチルピペリジド(3 mmol)のTHF溶液をゆっくり加え,−98℃ で3時間撹拌した。その後,クロロトリメチルシラン(6 mmol)を −98℃ で加え,1時間撹拌したあと,飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。ジエチルエーテルを用いて水相を3回抽出したのち,集めた有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し,溶媒をエバポレーターで減圧留去して得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサンのみでまずテトラブチルスズを流出させたのち,ヘキサン/酢酸エチル=10:1を使用)で精製して,ジビニルオキシラン[2d] (241 mg, 0.77 mmol, 収率77%)を無色液体として得た。
【0096】
なお、実施例1〜実施例6にかけて、[2a]〜[2f]の目的生成物と、それらのトランス型の異性体(式[12]の化合物)の生成比は何れも95:5以上であり、シス型の目的物が選択的に得られた。
[化合物データ:2a〜2f]
なお、 1H NMRと 13C NMRでは基準物質をテトラメチルシランとし、19F NMRでは基準物質をCFCl3とし、これらのケミカルシフトを0ppmとしたときの相対値として、各物質のケミカルシフト(δ(ppm))を示す(以下、全て同じ)。
[2a]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ(ppm) 3.90 (d, J = 6.2 Hz, 1H), 5.43-5.78 (m, 3H), 6.28 (d, 16.0H), 6.89 (d, 16.0H), 7.24-7.53 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 61.9, 62.4 (q, J = 36.5 Hz), 115.1, 123.1 (q, J =279.0 Hz), 124.2, 126.9, 128.7, 128.8, 129.7, 135.1, 137.0; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -76.0. Analysis calc'd for C13H11F3O: C, 65.00; H, 4.62; found: C, 65.21; H, 4.74.
[2b]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 1.71 (s, 3H), 5.31 (dd, J = 10.8, 1.2 Hz, 1H), 5.39 (dd, J = 16.0, 10.8 Hz, 1H), 6.20 (d, J = 16.0 Hz, 1H),6.75 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 7.22-7.49 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 15.9, 65.6, 66.5 (q, J = 35.5 Hz), 117.8, 119.8, 123.8 (q, J = 281.2 Hz), 126.8, 128.6, 128.8, 135.3, 135.9, 136.0; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -66.9.
[2c]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 3.51 (brs, 1H), 4.88-5.00 (m, 2H), 5.58 (dd, J = 11.8, 10.2 Hz, 1H), 6.13 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.68 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 7.17-7.63 (m, 5H); 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -63.2.
[2d]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ -0.20 (s, 9H), 5.07 (ddd, J = 16.4, 10.8, 1.6 Hz, 1H), 5.16 (ddd, J = 16.4, 10.8, 1.6 Hz, 1H), 5.65 (dd, J = 16.4, 10.8 Hz, 1H), 6.10 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.65 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 7.26-7.43 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ -1.15, 65.9 (q, J = 35.5 Hz), 67.0, 116.2, 117.8, 124.1 (q, J = 277.9 Hz), 126.7, 128.3, 128.6, 134.9, 135.6, 136.6; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -69.8.
[2e]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 0.26 (s, 9H), 5.00-5.13 (m, 2H), 5.60-5.74 (m, 1H), 6.14 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.70 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 7.16-7.44 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ -8.16, 64.6 (q, J = 34.8 Hz), 70.0, 115.0, 117.2, 124.3 (q, J = 277.7 Hz), 126.7, 128.3, 128.6, 135.6, 136.2, 136.7; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -72.1.
[2f]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 1.32 (s, 12H), 5.32-5.74 (m, 3H), 6.15 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 7.28-7.55 (m, 5H);
13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 24.6, 65.6 (q, J = 33.5 Hz), 85.0, 115.9, 121.2, 123.5 (q, J = 280.6 Hz), 126.8, 128.6 (2C), 132.7, 135.2, 137.3;
19FNMR (188 MHz, CDCl3) δ -73.1.
[実施例7]
実施例7は下記スキームの反応に関する。
【0097】
【化30】
Figure 0004287616
【0098】
原料は[1b]で表されるジクロロヒドリンであり、1mmolの[1b]に対して実施例1〜6と同様に、−98℃〜−78℃でビニルリチウム、LiTPMを各々3mmol混合した。次いで、求電子剤としてメタノールを作用させ、求電子剤に基づく基として水素原子が導入された生成物[2g]を収率80%で得た。なお[2g]と、そのトランス型の異性体(式[12]の化合物)の生成比は95:5以上であった。
[化合物データ,2g]
[2g]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 4.00 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.44-5.84 (m, 2H), 5.66 (s, 1H), 5.85 (s, 1H), 7.29-7.42 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) d 61.1, 63.6 (q, J = 35.5 Hz), 120.8, 122.9 (q, J = 280.6 Hz), 124.2, 126.6, 128.4, 128.5, 130.5, 136.6, 137.4; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -73.7.
[実施例8]
実施例8は下記スキームの反応に関する。
【0099】
【化31】
Figure 0004287616
【0100】
原料は[1c]で表されるジクロロヒドリンであり、1mmolの[1c]に対して、実施例1〜6と同様に、−98℃〜−78℃でビニルリチウム、LiTPMを各々3mmol混合した。次いで、求電子剤としてメタノールを混合して、同温度で撹拌を続けたところ、求電子剤に基づく基として水素原子が導入された生成物[2h]が収率20%で得られた。なお[2h]と、そのトランス型の異性体(式[12]の化合物)の生成比は82:18であった。
[化合物データ,2h]
2h. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ, 3.82 (d, J =5.8 Hz, 1H), 5.15-5.46 (m, 3H), 5.72 (d, J =12.4 Hz, 1H), 6.89 (d, J =12.4 Hz, 1H), 7.27-7.42 (m, 5H).([2h]のtrans isomer (assingnable), 3.19 (d, J =7.8 Hz, 1H));
19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -75.1, ([2h]のtrans isomer, -68.7).
[実施例9]
実施例9は下記スキームの反応に関する。
【0101】
【化32】
Figure 0004287616
【0102】
原料は[1a]で表されるジクロロヒドリンであり、この[1a]に対して−98〜−78℃でビニルリチウム、LiTPMを作用させた後、求電子剤として過剰量の二酸化炭素とメチルシリルジアゾメタンを作用させ、求電子剤に基づく基として(CO)OCH3基が導入された生成物[2i]を収率70%で得た。なお[2i]と、そのトランス型の異性体(式[12]の化合物)の生成比は92:8であった。
【0103】
実施例9の操作手順;トリブチルビニルスズ (1.90 g, 6 mmol) のTHF溶液 (10 mL) に,−78℃ でn-ブチルリチウムのヘキサン溶液 (1.5mol・dm-3, 4 mL, 6 mmol) を滴下し,−78℃ で2時間撹拌したのちに反応溶液を −98℃に冷却した。ジクロロヒドリン[1a] (570 mg, 2 mmol) のTHF溶液 (4 mL) を−98℃でゆっくり加えたのち,別途調製したLiTMPのTHF溶液 (0.75mol・dm-3 ,8 mL, 6 mmol) を−98℃で滴下した。反応溶液を−98℃ で3時間撹拌したのち,無水THFで洗浄したドライアイスを適当量(過剰量)固体のまま加えた。反応溶液を徐々に−78℃にまで昇温したのちに飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。ジクロロメタンで水層を5回抽出し,あわせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。エバポレーターで溶媒を減圧留去して得た粗生成物をメタノール (5 mL)/ベンゼン (10 mL) の混合溶媒に溶かし,ここへトリメチルシリルジアゾメタン (2.0mol・dm-3 ,3 mL, 6 mmol) を室温でゆっくり滴下した。1時間室温で撹拌したあと,ギ酸を加えて反応を停止した。反応溶液を濃縮し,粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサンのみでまずテトラブチルスズを流出させたのち,ヘキサン/酢酸エチル=10:1を使用)で精製し,さらにGPC精製によりオキシラン[2i] (420 mg, 70% yield)を得た。
[化合物データ,2i]
[2i]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 3.85 (s, 3H), 5.48-5.88 (m, 3H), 6.19 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 7.24-7.50 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 53.0, 66.4 (q, J = 36.5 Hz), 67.4, 113.9, 122.4 (q, J = 280.3 Hz), 123.4, 127.1, 127.7, 128.7, 129.1, 134.6, 138.6, 165.7; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ , -72.4, ([2i]のtrans isomer, -68.1);
IR (neat) 3030, 2957, 2851, 2237, 1884, 1746, 1655, 1603, 1580, 1499, 1439, 1387, 1261, 1170, 1142, 1063, 970, 945, 856 cm-1.
[実施例10]
実施例10は下記スキームの反応に関する。
【0104】
【化33】
Figure 0004287616
【0105】
原料は[1a]で表されるジクロロヒドリンであり、[1a]に対して−98〜−78℃でα−エトキシビニルリチウムおよびLiTPMを作用させた。次いで、求電子剤としてメタノールを作用させ、求電子剤に基づく基として水素原子が導入された生成物[2j]を収率53%で得た。なお[2j]と、そのトランス型の異性体(式[12]の化合物)の生成比は78:22であった。
【0106】
[2j]の合成の具体例:トリブチル(1-エトキシビニル)スズ(1.08 g, 3 mmol)のTHF溶液 (5 mL) にブチルリチウムのヘキサン溶液(1.5mol・dm-3, 2 mL, 3 mmol)を−78℃で滴下し,その温度で2時間撹拌してα−エトキシビニルリチウムを調製した。この溶液をメタノール/液体窒素で−98℃に冷却し,ジクロロヒドリン[1a](285 mg, 1.0 mmol)のTHF溶液(2 mL)をゆっくり滴下し,ここへ別途調製したリチウム 2,2,6,6-テトラメチルピペリジドのTHF溶液(0.75mol・dm-3, 4 mL, 3 mmol)をゆっくり加え,−98℃で3時間撹拌したあと,メタノールを加えて反応を停止した。ジエチルエーテルを用いて水相を3回抽出したのち,集めた有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し,溶媒をエバポレーターで減圧留去して得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサンのみでまずテトラブチルスズを流出させたのち,ヘキサン/ジエチルエーテル=10:1を使用)で精製して,ジビニルオキシラン[2j](150 mg, 収率53%, cis/trans = 78 : 22)を無色液体として得た。また,原料の[1a] (62 mg, 22%)を回収した。
[化合物データ、2j]
[2j]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 1.24 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 3.85 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 4.15 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 4.19 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.17 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 6.84 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 7.22-7.48 (m, 5H), ([2j]のtrans isomer (assignable), 1.32 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 3.48 (s, 1H), 3.81 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.35 (s, 1H), 6.38 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 16.0 Hz, 1H)); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 14.2, 59.40, 61.6 (q, J = 35.5 Hz), 63.5, 85.5, 114.1, 122.9 (q, J = 279.3 Hz), 126.8, 128.6,128.7, 133.7, 137.4, 153.4, ([2j]のtrans isomer, 14.1, 59.42, 62.1 (q,J = 36.5 Hz), 63.8, 83.9, 118.9, 123.2 (q, J = 279.3 Hz), 126.9, 128.7, 128.8, 132.2, 135.5, 154.0); 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -75.3, ([2j]のtrans isomer, -69.3); IR (neat) 3086, 3061, 3030, 2984, 2932, 2905, 2887, 1668, 1638, 1498, 1481, 1450, 1344, 1317, 1263, 1186, 1157, 1068, 972, 935, 866, 820, 748 cm-1.
[参考例1〜7]および[実施例11,12]
[参考例1〜7]および[実施例11,12]は下記スキームの反応に関する。
【0107】
【化34】
Figure 0004287616
【0108】
原料は実施例1〜9で合成し、精製に付したジビニルオキシラン[2a]〜[2i]である。これらのジビニルオキシランを四塩化炭素中で、次の表4の条件で加熱したところ、表中に掲げる収率で、それぞれに対応するジヒドロオキセピン[3a]、[3b]、[3c]、[3d]、[3e]、[3f]、[3g]、[3a]、[3i]が得られた(なお原料として[2h]を使用した場合には、[2a]を使用した場合と同じく、[3a]が得られた)。
【0109】
【表4】
Figure 0004287616
【0110】
例として[2a]を原料とした[3a]の合成につき述べる(参考例1)。
【0111】
耐圧試験管中にジビニルオキシラン[2a](194 mg, 0.81 mmol)の四塩化炭素溶液(5 mL)を入れ封管したのち,100℃で12時間加熱撹拌した(反応の追跡は 19F NMR を用いておこなった)。反応溶液をエバポレーターで濃縮後,粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/ジエチルエーテル=20/1)で精製し,[3a](180.3 mg,収率93%)を無色液体として得た。
[化合物データ,3a〜3g,3i]
[3a]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 2.44-2.61 (m, 2H), 3.86-3.88 (m, 1H), 4.99-5.09 (m, 1H), 5.81 (d, J = 4.2 Hz, 1H), 6.39 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.19-7.39 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 33.9, 42.9, 109.6, 114.2 (q, J = 3.4 Hz), 120.1 (q, J = 272.6 Hz), 127.0, 127.2, 128.8, 141.6 (q, J = 33.4 Hz), 142.9, 144.1; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -72.3; Analysis calc'd for C13H11F3O: C, 65.00; H, 4.62; found: C, 65.05; H, 4.62.
[3b]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 1.88 (s, 3H), 2.40-2.55 (m, 2H), 3.69-3.74 (m, 1H), 4.99 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 5.69 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 7.15-7.37 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 20.5, 32.7, 42.2, 107.3, 114.3, 120.3 (q, J = 273.2 Hz), 126.9, 127.3, 128.6, 141.2, 141.7 (q, J = 33.1 Hz), 154.2; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -72.7 (d, J = 1.7 Hz).
[3c]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 2.39-2.67 (m, 2H), 3.07 (brs, 1H),
3.62-3.76 (m, 1H), 5.00 (dd, J = 7.8, 6.0 Hz, 1H), 5.69 (d, J = 3.9 Hz, 1H), 7.09-7.41 (m, 15H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 32.2, 42.1, 81.3, 112.8, 114.5, 120.1 (q, J = 273.6 Hz), 127.1, 127.3, 127.61, 127.66, 127.7, 127.90 (2C), 127.91, 128.7, 141.5 (q, J = 33.6 Hz), 143.3, 143.4, 143.6, 159.3; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ-71.8 (d, J = 1.3 Hz).
[3d]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 0.15 (s, 9H), 2.53-2.66 (m, 2H), 3.73-3.79 (m, 1H), 5.47 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 5.65 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 7.17-7.38 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ -2.59, 34.2, 42.7, 113.1, 120.5 (q, J = 273.6 Hz), 121.9, 126.9, 127.3, 128.6, 142.0 (q, J = 41.0 Hz), 144.3, 164.6; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -72.3 (d, J = 2.6 Hz).
[3e]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 0.15 (m, 9H), 2.49 (ddd, J = 14.2, 7.8, 3.8 Hz, 1H), 2.68 (ddd, J = 14.2, 9.0, 6.0 Hz, 1H), 3.77-3.79 (m, 1H), 5.27 (dd, J = 7.8, 6.0 Hz, 1H), 5.60 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 7.17-7.43 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ -9.57, 34.5, 42.9, 113.6, 120.3 (q,J = 274.5 Hz), 123.6, 126.8, 127.3, 128.6, 143.0, 144.3, 166.9; 19F NMR
(188 MHz, CDCl3) δ -72.6 (d, J = 1.9 Hz); IR (neat) 3028, 2914, 2855,
1682, 1628, 1603, 1493, 1454, 1373, 1294, 1240, 1188, 1130, 1078, 1020, 918, 883, 756 cm-1; Analysis calc'd for C16H19F3OSn: C, 47.68; H, 4.75; found: C, 47.90; H, 4.77.
[3f]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 1.24 (s, 12H), 2.43 (ddd, J = 15.0, 7.8, 3.8 Hz, 1H), 2.64 (ddd, J = 21.8, 9.5, 5.0 Hz, 1H), 3.71-3.77 (m, 1H), 5.67 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 5.94 (dd, J = 7.8, 5.0 Hz, 1H), 7.09-7.30(m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 24.7, 34.7, 42.1, 84.3, 114.4, 120.2 (q, J = 273.6 Hz), 125.9, 126.9, 127.1, 128.8, 140.0, 142.3 (q, J = 33.6 Hz); 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -72.3 (d, J = 2.6 Hz).
[3g]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 2.24-2.33 (m, 2H), 2.78-2.86 (m, 2H), 4.96 (dt, J = 7.4, 4.4 Hz, 1H), 6.43 (dt, J = 7.2, 2.0 Hz, 1H), 7.15-7.20 (m, 2H), 7.29-7.40 (m, 3H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 24.1, 34.3, 111.2, 120.4 (q, J = 274.5 Hz), 127.6, 127.9, 128.4, 135.0, 138.2, 142.1 (q, J = 33.6 Hz), 144.7; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -65.7.
[3i]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 2.49-2.74 (m, 2H), 3.72 (s, 3H), 5.78 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 6.50 (dd, J = 7.2, 6.0 Hz, 1H), 7.08-7.30 (m, 5H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 32.8, 41.0, 52.5, 115.6, 119.8 (q, J = 273.0 Hz), 121.7, 127.1, 127.3, 128.9, 141.7 (q, J = 34.6 Hz), 142.9, 145.9, 162.3; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -72.3 (d, J = 2.6 Hz); IR (neat) 3065, 3030, 2955, 2912, 1742, 1686, 1664, 1602, 1493, 1439, 1350, 1319, 1275, 1196, 1138, 1061, 1032, 999, 968, 789, 756, 700 cm-1; MS (GC-EI) m/e 300 (M++2, 0.2), 299 (M++1, 3), 298 (M+, 13), 266 (59), 239 (67), 141 (58), 115 (100).
[実施例13〜15]
実施例13〜15は下記スキームに関する。
【0112】
【化35】
Figure 0004287616
【0113】
すなわち実施例11実施例12で得られた、スズまたはホウ素が7位に結合したオキセピン([3e]、[3f])を原料とし、これを化合物RXとカップリングさせ、[4a]、[4b]、[4c]を得た。それぞれの実施例における、使用した試薬、反応条件、収率を表5に示す。
【0114】
【表5】
Figure 0004287616
【0115】
例として、[3f]を[4c]に誘導した実施例15について説明する。
【0116】
オキセピン[3f](150 mg, 0.40 mmol),Pd2(dba)3(9.2 mg, 2.5 mol%), P(t-Bu)3(8.1 mg, 10 mol%), ビニルブロミド(1mol・dm-3 in THF, 0.8 mL, 0.8 mmol)をTHF(2mL)に溶解した。ここへ水酸化カリウム(3 mol・dm-3)水溶液を1.8mL滴下し,そのまま室温で終夜撹拌した。反応溶液をジエチルエーテルで希釈し,金属塩類をショートカラムで除去した。濾液を飽和塩化アンモニウム水溶液で中和したのち,水相をジエチルエーテルで抽出し,集めた有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し,エバポレーターを使って濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/ジエチルエーテル=20/1)つづけてGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)にて精製し,カップリング体[4c](83 mg, 収率75%)を無色液体として得た。
[化合物データ、4a〜4c]
[4a]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ2.70-2.79 (m, 2H), 3.79-3.88 (m, 1H), 5.84 (t, J = 3.8 Hz, 1H), 5.91 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.19-7.64 (m, 10H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 32.7, 42.3, 108.6, 114.5, 120.5 (q, J = 273.9 Hz), 124.9, 127.0, 127.4, 128.4, 128.6, 128.7, 134.6, 142.0 (q, J = 33.3 Hz), 143.8, 155.7; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -71.6 (d, J = 2.4 Hz).
[4b]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 2.45-2.74 (m, 2H), 3.65-3.74 (m, 1H), 5.69-5.77 (m, 2H), 7.12-7.43 (m, 10H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 33.2, 41.9, 115.0, 119.6, 120.8 (q, J = 273.6 Hz), 121.9, 127.2, 128.3, 128.8 (2C), 131.7, 140.4, 142.2 (q, J = 34.1 Hz), 140.4, 143.3; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -72.6 (d, J = 1.7 Hz).
[4c]. 1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 2.52-2.74 (m, 2H), 3.71-3.79 (m, 1H), 5.14 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 5.30 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 5.52 (d, J = 17.0 Hz, 1H), 5.75 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 6.11 (dt, J = 17.0, 11.0 Hz, 1H); 13C NMR (50 MHz, CDCl3) δ 32.7, 42.2, 113.1, 114.4 (2C), 120.3 (q, J =274.0 Hz), 127.0, 127.3, 128.7, 131.0, 141.8 (q, J = 33.5 Hz), 143.7, 154.8; 19F NMR (188 MHz, CDCl3) δ -71.9 (d, J = 2.8 Hz).
【0117】
【発明の効果】
本発明は、医薬、農薬の製造における中間体、またはフッ素導入剤として有用な2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類を提供する。また、本発明によると、入手の容易な1,1−ジハロゲノ−3,3,3−トリフルオロアセトンを出発原料として、該物質が効率よく合成できるという効果を奏する。

Claims (4)

  1. 一般式[4]で表されるシス−ジビニルオキシラン
    Figure 0004287616
    を無溶媒で、または不活性溶媒中で加熱することを特徴とする、一般式[5]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類
    Figure 0004287616
    の製造方法。
    (式[4]および式[5]中、 1 ,L 2 ,L 3 はそれぞれ独立して、水素原子、又はフェニル基を表す。L 5 は、水素原子、またはエトキシ基を表す。L 6 ,L 7 はそれぞれ水素原子を表す。L9は、SnR123、またはB(OR1)(OR2)の何れかを表す。ここで、R1、R2、R3は、それぞれ独立して、アリール基(ヘテロアリール基を含む)、または炭素数1〜6のアルキル基(これらのアルキル基は、炭素原子の代わりにヘテロ原子を有していてもよく、置換基を有していてもよい)を表す。R1、R2、R3の全部または選ばれた2つがお互いつながって環を形成していてもよい。)
  2. 一般式[5]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類
    Figure 0004287616
    を、パラジウム錯化合物の存在下、次の式[6]で表されるハロゲン化物または擬ハロゲン化物
    Figure 0004287616
    と反応させることを特徴とする、一般式[1]で表わされる2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類
    Figure 0004287616
    の製造方法。
    (式[5]および式[1]において、 1 ,L 2 ,L 3 はそれぞれ独立して、水素原子、又はフェニル基を表す。L 5 は、水素原子、またはエトキシ基を表す。L 6 ,L 7 はそれぞれ水素原子を表す。式[5]において、L9はSnR123、またはB(OR1)(OR2)の何れかを表す。式[6]および式[1]において、L4は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、(CO)OA(ここでAは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)、C(OH)R12、またはSiR123を表す。L9およびL4におけるR1、R2、R3は、それぞれ独立して、アリール基(ヘテロアリール基を含む)、または炭素数1〜6のアルキル基(これらのアルキル基は、炭素原子の代わりにヘテロ原子を有していてもよく、置換基を有していてもよい)を表す。R1、R2、R3の全部または選ばれた2つがお互いつながって環を形成していてもよい。また式[6]において、Yはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6のパーフルオロアルカンスルホン酸基の何れかを表す。)
  3. 一般式[4]で表されるシス−ジビニルオキシラン
    Figure 0004287616
    を無溶媒で、または不活性溶媒中で加熱し、一般式[5]で表される2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類
    Figure 0004287616
    を得た後に、パラジウム錯化合物の存在下、次の式[6]で表されるハロゲン化物または擬ハロゲン化物
    Figure 0004287616
    と反応させることを特徴とする、一般式[1]で表わされる2−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロオキセピン類
    Figure 0004287616
    の製造方法。
    (式[4]、式[5]および式[1]中、 1 ,L 2 ,L 3 はそれぞれ独立して、水素原子、又はフェニル基を表す。L 5 は、水素原子、またはエトキシ基を表す。L 6 ,L 7 はそれぞれ水素原子を表す。式[4]および式[5]において、L9はSnR123、またはB(OR1)(OR2)の何れかを表す。式[6]および式[1]において、L4は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、(CO)OA(ここでAは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)、C(OH)R12、またはSiR123の何れかを表す。式[6]において、Yはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6のパーフルオロアルカンスルホン酸基の何れかを表す。またL9およびL4におけるR1、R2、R3は、それぞれ独立して、アリール基(ヘテロアリール基を含む)、または炭素数1〜6のアルキル基(これらのアルキル基は、炭素原子の代わりにヘテロ原子を有していてもよく、置換基を有していてもよい)を表す。R1、R2、R3の全部または選ばれた2つがお互いつながって環を形成していてもよい。)
  4. 一般式[7]で表されるトリフルオロメチル置換ジハロゲノヒドリン類
    Figure 0004287616
    に、−78℃以下の温度で、LiTMP(リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド)、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド)、KDA(カリウムジイソプロピルアミド)、KHMDS(カリウムヘキサメチルジシラジド)から選ばれる塩基の存在下、一般式[8]で表されるアルケニルリチウム類
    Figure 0004287616
    を混合し反応させた後に、求電子剤と反応させることを特徴とする、一般式[2]で表されるシス−ジビニルオキシラン
    Figure 0004287616
    または、式[4]で表されるシス−ジビニルオキシラン
    Figure 0004287616
    の製造方法。
    (式[7]、式[8]、式[2]および式[4]において、 1 ,L 2 ,L 3 はそれぞれ独立して、水素原子、又はフェニル基を表す。L 5 は、水素原子、またはエトキシ基を表す。L 6 ,L 7 はそれぞれ水素原子を表す。式[7]において、Xは塩素、臭素またはヨウ素を表す。式[2]において、L8は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(CO)OA(ここでAは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)、C(OH)R12、またはSiR123の何れかを表す。式[4]において、L9はSnR123、またはB(OR1)(OR2)を表す。またL8およびL9におけるR1、R2、R3は、それぞれ独立して、アリール基(ヘテロアリール基を含む)、または炭素数1〜6のアルキル基(これらのアルキル基は、炭素原子の代わりにヘテロ原子を有していてもよく、置換基を有していてもよい)を表す。R1、R2、R3の全部または選ばれた2つがお互いつながって環を形成していてもよい。)
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