JP4170525B2 - 波形読出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、順序付けられた複数の波形データ、例えば、複数の音節それぞれの波形をあらわす連続した複数の波形データ等からなるオーディオフレーズを、鍵盤やシーケンサ等からの発音開始指示によって読み出す波形読出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでの電子楽器は発音指示に応じて楽音波形の先頭から最後まで連続して読み出しを行なうようになっている。これは押鍵に応じて1つの楽器音の楽音波形を読み出すことを想定しているためである。これまでの電子楽器では、例えば「ハレルヤ」などの歌声を示す複数の音節からなるオーディオフレーズを記憶しておき、これを発音開始指示に応じて読み出すという使用方法に関しては想定されていない。これまでの電子楽器においても「ハレルヤ」などのオーディオフレーズを楽音波形として記憶しておけば、発音開始指示に応じてこれを再生することもできる。しかしながら、これまでの電子楽器では複数の音節からなる連続したオーディオフレーズを再生することを想定していないため、発音開始指示に応じて「ハレルヤ」が最初から最後まで読み出されるだけであり、オーディオフレーズの特定の音節のみを任意のタイミングで読み出すことはできず、オーディオフレーズを用いて鍵盤などで演奏しようとすると制約が大きいものとなっていた。
【0003】
これに対して特開平9−281970号公報には、複数の音節からなるオーディオフレーズを音節毎に区切ることによって各音節ごとの波形データを順序付けて記憶しておき、最初の発音開始指示に応じて最初の音節の波形データを読み出し、再度の発音開始指示に応じてその次の音節の波形データを読み出すことが示されてる。しかしながら、この公報には、発音開始指示の度に読出対象の音節を次のものに進めることが開示されいるのみであり、この技術を採用しても、オーディオフレーズを用いて鍵盤等で演奏しようとすると相変わらず大きな制約を伴うことになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑み、オーディオフレーズ等の波形データを読み出すにあたり多彩な読出しを可能とし、自由度の高い表現豊かな演奏を可能にした波形読出装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の波形読出装置のうちの第1の波形読出装置は、
発音開始指示を入力する発音開始指示入力手段と、
順序付けられた複数の波形データを発音開始指示の入力とは独立して記憶する波形記憶手段と、
所定の波形ホールド指示を入力する波形ホールド指示入力手段と、
上記波形記憶手段に記憶された波形データを上記発音開始指示入力手段により入力される発音開始指示に応じて読み出す波形読出手段とを備え、
上記波形読出手段が、波形ホールド指示入力手段による波形ホールド指示の有無に応じて、それぞれ、今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データ、あるいは今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データの次の波形データを読み出すものであることを特徴とする。
【0006】
本発明の第1の波形読出手段は、波形ホールド指示入力手段を備えたため、波形データの読出しを先に進めるか、もう一度同じ波形データを読み出すかを選択することができ、その分多彩な演奏が可能となる。
【0007】
また、本発明の波形読出装置のうちの第2の波形読出装置は、
発音開始指示を入力する発音開始指示入力手段と、
順序付けられた複数の波形データを記憶する波形記憶手段と、
少なくとも3つの、第1の読出形式、第2の読出形式、及び第3の読出形式の中から読出形式を指定する読出形式指定手段と、
上記波形記憶手段に記憶された波形データを上記発音開始指示入力手段により入力される発音開始指示に応じて読み出す波形読出手段とを備え、
上記波形読出手段が、読出形式指定手段により指定された、第1の読出形式、第2の読出形式、あるいは第3の読出形式に応じて、それぞれ、今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データの次の波形データの読出し、今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データの先頭からの読出し、あるいは、今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データの途中からの読み出しを行なうものであることを特徴とする。
【0008】
ここで、上記第2の波形読出装置において、所定の波形ホールド指示を発音開始指示の入力とは独立して入力する波形ホールド指示入力手段を備えるとともに、上記発音開始指示入力手段が、レガート形式及び非レガート形式の双方の形式での発音開始指示の入力が可能なものであって、
上記読出形式指定手段が、上記波形ホールド指示入力手段と上記発音開始指示入力手段との組合せからなり、波形ホールド指示手段による波形ホールド指示の非存在をもって上記第1の読出形式の指定となし、波形ホールド指示手段による波形ホールド指示が存在する場合には、発音開始指示入力手段により入力される発音開始指示が非レガート形式であるかあるいはレガート形式であるかを読出形式指定のための要件の1つとして、第2の読出形式あるいは第3の読出形式を指定するものであってもよい。
【0009】
また、上記第2の波形読出装置において、上記波形読出手段は、読出形式指定手段により上記第3の読出形式が指定された場合に、読出しを行なおうとする波形データの、あらかじめ設定されている所定の途中位置から読出しを行なうものとすることができる。
【0010】
また、上記第2の波形読出装置において、上記波形読出手段は、読出形式指定手段により上記第3の読出形式が指定された場合に、今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示に応じて読み出されていた波形データの、現在の読出位置の続きの位置から読出しを行なうものであることも好ましい態様である。
【0011】
なお、上記の第2の波形読出装置において、第3の読み出し形式が指定された場合に、あらかじめ設定されている所定の途中位置からの読出しを行なうか、現在の読出位置からの読出しを行なうか、のいずれの読み出しを行なうかを所定の条件に応じて選択するようにすることも好ましい態様である。例えば、今回の発音開始指示により読み出される波形データに所定の途中位置からの読出しが設定されている場合にはその途中拉置からの読出しを行ない、今回の発音開始指示により読み出される波形データに所定の途中位置からの読出しが設定されていない場合には現在の読出位置からの読出しを行なうようにする。あるいはこの場合、今回の発音開始指示により読み出される波形データに所定の途中位置からの読出しが設定されている場合であっても、使用者により現在の読出位置からの読み出しが指定されている場合には、現在の読出位置からの読出しを行なうようにすることもできる。
【0012】
本発明の第2の波形読出装置は、少なくとも第1、第2および第3の3つの読出形式の中から自由に選択された読出形式により波形データを読み出すものであり、一層多彩な演奏が可能である。
【0013】
また、本発明の波形読出装置のうちの第3の波形読出装置は、
発音開始指示を入力する発音開始指示入力手段と、
順序付けられた複数の波形データを記憶する波形記憶手段と、
所定のリセット指示を入力するリセット指示入力手段と、
上記波形記憶手段に記憶された波形データを上記発音開始指示入力手段により入力される発音開始指示に応じて読み出す波形読出手段とを備え、
上記波形読出手段が、発音開始入力指示手段による発音開始指示の入力を受けて、リセット指示入力手段によりリセット指示が入力されているか否かに応じて、それぞれ、上記複数の波形データのうちの先頭の波形データの読出し、あるいは今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読出された波形データの次の波形データの読出しを行なうものであることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の波形読出装置は、リセット指示入力手段を備え、発音開始指示があったときに波形データの読出を次に進めるか先頭の波形データの読出に戻るかを自在に選択することができるようにしたため、多彩な演奏が可能となる。
【0015】
ここで、上記第1、第2、および第3の波形読出装置のいずれにおいても、上記発音開始指示入力手段は、音高の指示を伴う発音開始指示を入力するものであり、かつ、上記波形記憶手段は、それぞれの基準音高をあらわす基準音高データが対応づけられた複数の波形データを記憶するものであって、
上記発音開始指示入力手段により入力された発音開始指示に伴う音高と、その発音開始指示に応じて読み出される波形データに対応する基準音高データによりあらわされる音高とに基づいて、その発音開始指示に応じて読み出される波形データに基づく波形の音高を決定する読出波形音高決定手段を備えることが好ましい。
【0016】
また、本発明の波形読出プログラム記憶媒体は、プログラムを実行するプログラム実行手段と、順序付けられた複数の波形データを記憶するメモリとを備えた装置を、メモリから波形データを読み出す波形読出装置として機能させる波形読出プログラムが記憶された波形読出プログラム記憶媒体において、当該装置を、
発音開始指示を受信する発音開始指示受信手段と、
発音開始指示とは独立に送信されてくる所定の波形ホールド指示を受信する波形ホールド指示受信手段と、
波形記憶部に記憶された波形データのうち、波形ホールド指示受信手段による波形ホールド指示の受信の有無に応じて、それぞれ、今回の発音指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データ、あるいは今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データの次の波形データを発音開始指示受信手段により受信される発音開始指示に応じて読み出す波形読出手段とを備えた波形読出装置として機能させるための波形読出プログラムが記憶されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明の波形読出プログラム記憶媒体に記憶された波形読出プログラムによれば、プログラム実行手段と波形メモリを備えた装置を本発明の波形読出装置として機能させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である波形読出装置の構成図である。
【0020】
この図1に示す波形読出装置10は、鍵盤11,制御部12、D/A変換器13、メモリ14、および操作パネル15からなり、操作パネル15には5つのフレーズ選択スイッチ151、音節ホールド、フレーズリセット、ポルタメント、音節連続再生、ループ/非ループの各スイッチ152〜156、パラメータ設定用の操作子群157、および表示器158が示されている。
【0021】
メモリ14には、制御部12で動作するプログラム、5つのオーディオフレーズの波形データ、および各オーディオフレーズに対応するパラメータなどが予め記憶されている領域と、ワーキング用の領域とが設けられている。記憶されているパラメータはパラメータ設定用操作子群157の操作により任意に変更可能であり、その際、設定中のパラメータの種類、値および設定に関連するその他の情報が表示器158に表示される。
【0022】
ここで説明する実施形態では、オーディオフレーズの波形データおよびパラメータは予め記憶されているが、使用者が任意にオーディオフレーズの波形データを記憶させ、それに対して自動的にあるいは任意にパラメータを設定するように構成してもよい。
【0023】
制御部12はこの波形読出装置10の全体の制御を行なうものであり、操作パネル15の各種操作子の操作および鍵盤11の演奏操作を監視し、これらの監視結果に応じてメモリ14から波形データを読み出しD/A変換器13を介して外部に出力する。なお、波形データは同時には1つの波形データのみが読み出されるようになっている。
【0024】
尚、本実施形態では、1つのオーディオフレーズ(通常は複数の音節からなる)の波形データを1つの波形データと称し、その1つのオーディオフレーズを構成する複数の音節の1つ1つを音節と称しているが、本発明との対応では、1つのオーディオフレーズを複数の音節1つ1つに分けたときの1つ1つの音節をそれぞれあらわす各波形データ部分をそれぞれ1つの波形データと称している。ただし、本発明では、各波形データは1つの音節に対応付けられている必要はなく、2つ以上の音節の組を1つの波形データとしてもよく、あるいは、音節なる概念が存在しない波形、例えば楽器音の波形を複数に分けた1つ1つを1つの波形データと称してもよく、本発明では、結局順序付けられた複数の波形データが存在していればよい。即ち、順序付けられた複数の波形データの各々を以降の説明における音節として取り扱うことができる。
【0025】
図1に戻って説明を続行する。
【0026】
図1の操作パネル15に示す各スイッチは、以下に説明する作用をなすスイッチである。
(5つのフレーズ選択スイッチ151)
これら5つのフレーズ選択スイッチ151は、それら5つのフレーズ選択スイッチ151の1つ1つがメモリ14に記憶されている5つのオーディオフレーズの1つ1つに対応しており、それら5つのフレーズ選択スイッチ151のうちのいずれか1つのフレーズ選択スイッチを押すことにより、その押されたフレーズ選択スイッチに対応するオーディオフレーズが読出対象のオーディオフレーズとして選択される。
(音節ホールドスイッチ152)
このスイッチ152が押下中でないときに新たな押鍵があった場合には従前まで読み出していた、すなわち、今回の新たな押鍵の直前の押鍵に応じて読み出していた音節の次の音節の読み出しが行なわれ、このスイッチ152が押下中であるときに新たな押鍵があった場合には従前まで読み出していた音節の読み出しが行なわれる。
(フレーズリセットスイッチ153)
このスイッチを押下すると次の押鍵でフレーズの先頭の音節の読み出しが行なわれる。
(ポルタメントスイッチ154)
このスイッチ154が押下中でないときに新たな押鍵があった場合にはポルタメントは付加されず、押下中であるときに新たな押鍵があった場合にはポルタメントが付加される。
(音節連続再生スイッチ155)
このスイッチ155が押下されている場合には音節の区切りが無視され、読出中の音節の最後まで読み出しを行なったときに引き続いて次の音節の読み出しが行なわれる。
(ループ/非ループスイッチ156)
読み出し対象の音節にループ読み出しが指定されている場合(後述する)には、このスイッチが押下中であるときにループ読み出しが行なわれる。
【0027】
図2は、オーディオフレーズの波形データのメモリマップを示す図である。
【0028】
図1に示すメモリ14には、図2に示すようにフレーズ1〜フレーズ5の5つのオーディオフレーズの波形データが記憶されている。各波形データは複数の音節からなる連続したデータである。例えばフレーズ1は「ハレルヤ」の4音節の歌声のデータである。
【0029】
図3(a)は、フレーズ1の波形データのエンベロープのレベル変化を示す図、図3(b)は、フレーズ1の波形データの音高変化を示す図である。図3(a)に示されるように、オーディオフレーズの波形データは複数の音節からなる連続したデータであるため、エンベロープのレベルは音節と音節の間でも0にはなっていない。これらのオーディオフレーズの長さおよびこれらのオーディオフレーズに含まれる音節の数は任意であり互いに異なり得る。またここではオーディオフレーズとして歌声を取り上げたが楽器の演奏音に適用してもよい。その場合、各音符に対応する音をここでいう音節として扱う。図3に示す符号の意味は後述する。
【0030】
図4は、各フレーズに対応して設定されたパラメータのメモリマップを示す図である。
【0031】
また、各フレーズには、それぞれ図4に示すパラメータが設定されている。すなわち、各音節毎には、「開始位置」、「ループ/非ループ」、「母音開始位置」、「ループ開始位置」、「ループ終了位置」、「ループ長さ」、「音節無視」、「基準音高」、および「リリース速度」の各パラメータが設定されている。
【0032】
新たな押鍵により「開始位置」からその音節の波形データの読み出しが開始される。「開始位置」はその音節の波形データの、メモリ上の先頭の位置を示している。
【0033】
図3(a)に示す横軸上の各位置S1,S2,S3,S4が各音節の「開始位置」である。
【0034】
「母音開始位置」は各音節の母音の開始位置を示している。例えば、「ハレルヤ」の「ハ」の音節の場合には「ハ」の母音である「ア」の開始位置を示す。母音開始位置が明瞭でない音節に関しては、母音開始位置が設定されていないことを示す情報が「母音開始位置」に設定される。なお、ループ開始位置は母音開始位置と同じかそれよりも後に配置されている。
【0035】
母音開始位置からの読み出しが指定されている場合には、新たな押鍵に応じて「母音開始位置」パラメータにより指定される位置から読み出しが行なわれる。具体的には、音節ホールドとしている場合、従前の音節の読み出しを行なっている最中に新たな押鍵をレガート演奏で行なったとき、従前の音節に母音開始位置からの読み出しが設定されていればその設定されている位置から読み出しが行なわれる。
【0036】
図3(a)に示す各位置VS1,VS2,VS3,VS4が各音節の「母音開始位置」である。
【0037】
ループ読み出しが指定されているときには「ループ開始位置」と「ループ終了位置」との間でループ読み出しが行われる。「ループ終了位置」は音節の末尾、次の音節の開始位置の直前に設定されている。
【0038】
図3(a)に示す各位置LS1,LS2,LS3,LS4が各音節に関する「ループ開始位置」、各位置LE1,LE2,LE3,LE4が各音節に関する「ループ終了位置」である。
【0039】
ループには波形データの1周期をループする短時間ループと波形データのレベルやピッチなどの変動周期をループする長時間ループがあり、「ループ長さ」はいずれのループであるかを示している。
【0040】
「音節無視」は、その音節を1つの音節として扱うか、その音節とその次の音節とをまとめて1つの音節として扱うかを示す。「音節無視」によりその音節をその次の音節とまとめて1つの音節として扱うことが指定されている場合には、その音節に関する、次の音節とまとめて1つの音の音節として扱うことにより無意味となるパラメータは無視される。
【0041】
「基準音高」はその音節の波形データの有する平均的音高を半音刻みで示す。図3(b)下段にはフレーズ1の波形データの各音節ごとの基準音高P1,P2,P3,P4が示され、上段にはそれらの基準音高P1,P2,P3,P4が5線譜上のどこに対応するかが示されている。
【0042】
「リリース速度」は離鍵されたときに波形データにかけられる制御レベルの減衰速度を示す。この制御レベルは、波形のエンベロープの大きさを決める制御パラメータである。
【0043】
1つのフレーズに対応するパラメータには、各音節のパラメータの他に、そのフレーズ全体に対応するパラメータも存在し、ここでは、そのフレーズの波形データのメモリ上の「最終位置」、「音節数」、「フレーズ名」が設定されている。「音節数」から読み出し中の音節が最後の音節かどうかが分かる。フレーズを選択するとフレーズ名が表示器158(図1参照)に表示される。
【0044】
図3(a)に示す位置ENDが、このフレーズに関する「最終位置」である。
【0045】
図5,図6は、発音開始指示、すなわちここでは鍵盤11における押鍵があったときに制御部12で実行される処理を示すフローチャートの各一部を示す図である。
【0046】
鍵盤11において押鍵があると、図5〜図6に示すルーチンが起動され、先ずステップ(1)において、音節ホールド中か否かが判定される。
【0047】
「音節ホールド」スイッチ152が押下中でなければ音節ホールド中ではないと判定し、ステップ(2)に進んで、フレーズリセットフラグが“1”か否かを判定する。
【0048】
フレーズリセットフラグが“1”であればフレーズリセットフラグを“0”とし(ステップ(3))、波形データの読み出し中であるか否かを判定する(ステップ(4))。読み出し中であれば読み出し中の音節の波形データにかけている、波形のエンベロープの大きさを決める制御レベルを急速に減衰させ、制御レベルの減衰が完了したら読み出しを停止する(ステップ(5))。続いて、それまで読み出していた音節にかかわらず先頭の音節を新たな読み出し対象の音節として設定し(ステップ(6))、その音節の開始位置を読み出し位置とする(ステップ(7))。
【0049】
ステップ(2)においてフレーズリセットフラグが“1”でないと判定されると、波形データの読み出し中であるか否かを判定する(ステップ(12))。波形データの読み出し中でなければ直接にステップ(18)に進み、今回読み出しが終了した音節の次の音節を新たな読み出し対象の音節として設定し、波形データの読み出し中であれば、読み出し中の音節が最後の音節であるか否か(ステップ(13))、読み出し中の音節に「音節無視」が設定されているか否か(ステップ(14))、波形データの現在の読み出し位置から次の音節の開始位置までの長さ(アドレス数)が所定値よりも大きいか否か(ステップ(15))を判定し、いずれかの条件に該当する場合には読み出し中の音節の波形データにかけている制御レベルを急速に減衰させ、制御レベルの減衰が完了したら読み出しを停止する(ステップ(16))。いずれの条件にも該当しない場合には次の音節の開始位置の直前まで読み出しを続行する(ステップ(17))。すなわち、読み出しているのが最後の音節以外の音節の末尾である場合にはそのまま次の音節まで読み出しを続行させ、そうでない場合には波形データの読み出しを停止させる。こうすることにより、読み出しているのが最後の音節以外の音節の末尾である場合には、読み出しを一旦停止してから新たな読み出しを開始するよりも、音節と音節のつながりが自然となる。
【0050】
続いてそれまで読み出していた音節の次の音節を新たな読み出し対象の音節とし(ステップ(18))、その音節の開始位置を読み出し位置とする(ステップ(7))。なお、それまで読み出していた音節が最後の音節である場合には先頭の音節を読み出し対象の音節とする。
【0051】
ステップ(8)では、「ポルタメント」スイッチ154が押下中か否か、すなわちポルタメントの付加が指示されているか否かを判定する。
【0052】
ポルタメント付加が指示されていない場合には、新たな押鍵により指示された音高と読み出し対象とされた音節に設定されている基準音高との音程に基づいて、読み出された音節の平均的音高が新たな押鍵により指示された音高と一致するように読み出し音高を決定する(ステップ(9))。具体的には、新たな押鍵により指示された音高と、読み出し対象とされた音節に設定されている基準音高とが何半音分離れているかを求め、2の12乗根をその差異の分だけべき乗した数を読み出し速度とする。読み出し時にはサンプリング周期毎にこの読み出し速度の分だけ読み出しアドレスを歩進する。例えば、押鍵により指示された音高が読み出し対象の音節に設定されている基準音高よりも半音高い場合には録音時の約1.06倍の読み出し速度となる。読み出し速度をこのように決めることにより、波形データの本来持っている音節内の音高変化をそのまま生かしながら、読み出された音節の平均的音高が新たな押鍵により指示された音高と一致するようになる。なお、読み出し音高と同じ音高を目標音高にも設定する。
【0053】
ポルタメント付加が指示されている場合には、新たな押鍵の直前の押鍵に対応する音高と、読み出し対象として設定された音節に設定されている基準音高との音程に基づいて上述と同様に読み出し音高を求めるとともに、新たな押鍵により指示された音高と読み出し対象とされた音節に設定されている基準音高との音程に基づいて、上述と同様に読み出し音高を求め、それを目標音高とする。
【0054】
読み出し対象とされた音節に関して、上述のようにして決定された読み出し音高で、指定された読み出し位置から波形データの読み出しを開始する(ステップ(11))。尚、読み出した波形データには最大音量を示す制御レベルをかける。
【0055】
すなわち、音節ホールドスイッチ152が押下されていない場合には、新たな押鍵に応じて、それまで読み出していた音節の波形データの読み出しを停止し、その次の音節の開始位置から波形データの読み出しを開始する。ただし、フレーズリセットが指示されていた場合には、新たな押鍵に応じて、フレーズの先頭の音節の波形データの読み出しを行なう。
【0056】
ステップ(1)における音節ホールド中か否かの判定において、「音節ホールド」スイッチ152が押下中であれば音節ホールド中であると判定し、図6のステップ(21)に進み、新たな押鍵がレガート形式で押下されたか否かを判定する。レガート形式か否かの判定は、新たな鍵が押下されたときに既に別の鍵が押下されている場合にレガート形式と判定してもよいし、この条件を満足するか、あるいは新たな鍵が押下されたときにいずれの鍵も押下されていない場合であっても、直前の離鍵から所定時間以内にその新たな押鍵がなされた場合にはレガート形式と判定してもよい。後者の場合には同じ鍵を連打した場合であってもレガート形式の押下と判定することができる。
【0057】
レガート形式でない場合には波形データの読み出し中か否か判定し(ステップ(22))、波形データの読み出し中の場合には読み出し中の音節の波形データにかけている制御レベルを急速に減衰させ、制御レベルの減衰が完了したら読み出しを停止する(ステップ(23))。そしてそれまで読み出していた音節を再び読み出し対象とする(ステップ(24))。
【0058】
ステップ(21)においてレガート形式であると判定された場合には後述するリリース処理中か否か判定し(ステップ(25))、リリース処理中である場合には上述と同様に読み出し中の音節の波形データにかけている制御レベルを急速に減衰させ、制御レベルの減衰が完了したら読み出しを停止する(ステップ(23))。そしてそれまで読み出していた音節を再び読み出し対象とする(ステップ(24))。
【0059】
ステップ(25)においてリリース処理中ではないと判定された場合には、波形データの読み出し中か否か判定し(ステップ(26))、波形データの読み出し中でない場合にはそれまで読み出していた音節を再び読み出し対象とする(ステップ(24))。
【0060】
ステップ(26)において読出処理中であると判定された場合には、読み出している音節に母音開始位置が設定されているか否か判定するステップ(27))。
【0061】
母音開始位置が設定されている場合には読み出し中の音節の波形データにかけている制御レベルを急速に減衰させ、制御レベルの減衰が完了したら読み出しを停止する(ステップ(28))。そしてそれまで読み出していた音節を再び読み出し対象とし(ステップ(29))、その音節に設定されている母音開始位置を読み出し位置とする(ステップ(30))。
ステップ(27)において母音開始位置が設定されていないと判定された場合には「ポルタメント」スイッチ154が押下中でポルタメントの付加が指示されているか否かを判定する(ステップ(31))。
【0062】
ポルタメント付加が指示されていない場合には、新たな押鍵により指示された音高と、従前から読み出し対象とされている音節に設定されている基準音高との音程に基づいて、前述したように読み出し音高、目標音高を決定する(ステップ(32))。
【0063】
一方、ポルタメント付加が指示されている場合には、新たな押鍵により指示された音高と従前から読み出し対象とされている音節に設定されている基準音高との音程に基づいて前述したように目標音高を決定する(ステップ(33))。なお、この場合、読み出し音高は従前のままである。
【0064】
その後、決定された読み出し音高で波形データの読み出しを続行する(ステップ(34))。
【0065】
すなわち、ここでは、音節ホールドスイッチ152が押下されている場合には、新たな押鍵がなされても読み出し対象の音節を次の音節とはせずにそれまで読み出していた音節の波形データを読み出す。
【0066】
このとき、新たな押鍵がレガート形式ではなされなかった(非レガート形式でなされた)場合には、それまで読み出していた音節の開始位置から読み出しを行なう。なお、新たな押鍵がレガート形式でなされたが読み出し中の波形データに関してリリース処理中である場合、あるいは新たな押鍵がレガート形式でなされたが波形データの読み出し中でない場合にも、非レガート形式で押鍵がなされた場合と同様にそれまで読み出していた音節の開始位置から読み出しを行なう。これは、以前になされていた押鍵に対応する波形データの読み出しが終了しようとしている。あるいは既に終了しているとき、という特殊な状況のときにレガート演奏された場合には、レガート演奏されなかったときと同様の取り扱いをするものである。このような特殊な状況におけるレガート演奏を想定しない場合には、単純にレガート演奏されたか否かの判定のみを行うようにしてもよい。即ち、レガート演奏されたか否かを判定し、レガート演奏されなかったと判定した場合にはステップ(22)に進むことによりそれまで読み出していた音節の開始位置から読み出しを行ない、レガート演奏されたと判定した場合にはステップ(27)に進むことによりそれまで読み出していた音節の母音開始位置あるいはそれまで読み出していた位置の続きの位置からの読み出しを行なうようにする。
【0067】
また、波形データの読み出し状況が特殊な状況でないときにレガート形式で押鍵がなされた場合には、それまで読み出していた音節に母音開始位置が設定されているときにはその母音開始位置から読み出しを行ない、それまで読み出していた音節に母音開始位置が設定されていないときにはその今まで読み出していた位置の続きから読み出しを行なう。前者の場合には、音節の先頭部分の子音の後の位置から音節の読み出しが行われるため、例えば「ハレルヤ」のフレーズの「ハ」の音節を読み出す場合には、最初の押鍵では「ハ」という波形データが再生されるが、以降の押鍵では「ハ」の母音部分である「ア」の波形データが再生される。
【0068】
なお、それまで議み出していた音節に母音開始位置が設定されている揚合であっても、使用者により現在の読出位置からの読み出しが指定できるようにしてもよい。この場合、それまで読み出していた音節に母音開始位置が設定されており使用者により現在の読出位置からの読み出しが指定されていないときには母音開始位置から読み出しを行ない、それまで読み出していた音節に母音開始位置が設定されているが使用者により現在の読出位置からの読み出しが指定されたときには現在の読出位置の続きの位置から読出しを行なうようにする。
【0069】
図5、図6は、発音開始指示があったときの処理フローであるが、発音開始後は、図示しないサンプリング周期毎の処理により、読み出し音高により定まる分だけ読み出しアドレスを歩進させ、歩進させた読み出しアドレスによって指定されるアドレスの波形データのサンプルを読み出し、読み出した波形データに指示された制御レベルを乗算して出力する。なお、読み出し開始からの時間経過に伴って読み出し音高を徐々に目標音高に近づけるとともに、制御レベルの急速な減衰が指示されている場合にはその指示からの時間経過に伴って指示された減衰速度で制御レベルを徐々に減衰させる。
【0070】
図7は、発音停止指示、すなわちここでは鍵11における離鍵があったときに制御部12で実行される処理を示すフローチャートである。
【0071】
ここでは、離鍵された鍵が押鍵されたときに読み出しを開始された波形データがまだ読み出されているか否かを判定し(ステップ(31))、読み出されている場合には波形データにかけている制御レベルを読み出し中の音節に設定されている「リリース速度」の示す速度で減衰させ、減衰が完了したら読み出しを停止する(ステップ(32))。
【0072】
すなわち、ここでは、新たな離鍵に応じて、その鍵に対応して波形データが読み出されている場合には読み出されている波形データにかかる制御レベルを減衰させる。
【0073】
図8は、フレーズを構成する各音節の、「ループ終了位置」まで波形データの読出しが行なわれるときに実行される音節終了ルーチンフローチャートである。
【0074】
このルーチンが起動されると先ず、「音節連続再生」スイッチ155が押下されているか否かが判定され(ステップ(41))「音節連続再生」スイッチ155が押下されていた場合、今回「ループ終了位置」まで読み出しが行われたのがフレーズの最後の音節か否か判定し(ステップ(42))、最後の音節でなければ処理を終了して波形データの読み出しをそのまま続行する。即ち、波形データの読み出しが続行されるため、次の音節に読み出しが移行されることになる。最後の音節であればループ読み出しが指定されているか否かを判定し(ステップ(43))、ループ読み出しが指定されていない場合にはフレーズの終了位置まで波形データを読み出した後に読み出しを停止し(ステップ(44))、ループ読み出しが指定されている場合には、今回「ループ終了位置」まで読み出しが行われた音節の「ループ開始位置」に戻って読み出しを続行する(ステップ(45))。なお、図8の処理においては、ループ読み出しが指定されているか否かの判定は、「ループ終了位置」で読み出しが終了した音節にループ読み出しが設定されているか否か、および、「ループ/非ループ」スイッチ156によりループ読み出しが指定されいるか否かの2つ判定を行ない、その音節にループ読み出しが設定されており、かつ「ループ/非ループ」スイッチ156によりループ読み出しが指定されている場合に、ループ読出しが指定されているものと判定する。なお「ループ/非ループ」スイッチ156は、押下の度にループ読み出しを行なう状態とループ読み出しを行なわない状態とを交互に切り替えるスイッチである。
【0075】
ステップ(41)において「音節連続再生」スイッチ155が押下されていないと判定された場合には、今回「ループ終了位置」まで読出しが行なわれた音節に「音節無視」することが設定されているか否かが判定され(ステップ(46))、「音節無視」することが設定されている場合には、「音節連続再生」スイッチ155が押下されていた場合と同様に取り扱う。
【0076】
一方、ステップ(46)において「音節無視」が設定されていないと判定された場合には、ループ読み出しが指定されているか否かを判定する(ステップ(47))。ループ読み出しを行なうことが指定されている場合には、今回「ループ終了位置」まで読み出しが行われた音節の「ループ開始位置」に戻って読み出しを続行する(ステップ(45))。一方、ループ読み出しを行なわないことが指定されている場合には、波形データにかけている制御レベルを読み出し中の音節に設定されている「リリース速度」の示す速度で減衰させ、減衰が完了したら読み出しを停止する(ステップ(48))。なお、減衰をしている途中に新たな押鍵があった場合には処理を図5、図6に示す処理に移行させる。
【0077】
すなわち、ここでは、音節の末尾(「ループ終了位置」)まで読み出しを行なったときに音節連続再生が指示されているか、あるいは音節連続再生は指示されていないが末尾までの読み出しを行なった音節に音節無視が設定されている場合には、末尾までの読み出しを行なった音節がフレーズ最後の音節でなければそのまま次の音節を読み出し、末尾までの読み出しを行なった音節がフレーズ最後の音節でありかつループ読み出しが指定されていなければフレーズの終了位置まで読み出しを行ない、末尾までの読み出しを行なった音節がフレーズ最後の音節でありかつループ読み出しが指定されていればその音節のループ開始位置に戻りループ読み出しを行なう。音節連続再生が指示されておらず、かつ末尾までの読み出しを行なった音節に音節無視が設定されていない場合には、ループ読み出しが指定されていればループ読み出しを行ない、ループ読み出しが設定されていなければリリース処理を行ない読み出しを停止する。
【0078】
従って、音節連続再生を指示しないことにより音節毎の読み出しが可能であるとともに、音節連続再生を指示することにより全ての音節を連続して読み出すことも可能である。音節連続再生をするか否かの指示は波形データの読み出し中であっても変更できるため、当初は音節連続再生を指示しておき2番目の音節まで読み出し、その後音節連続再生の指示を止めることにより、次の押鍵から3番目の音節に移行することや、あるいは当初は音節連続再生を指示しないでおきある音節をループ読み出ししている最中に音節連続再生を指示することにより、ループ読み出しを中断して次の音節に移行することも可能である。なお、音節連続再生を指示して、読み出しを次の音節に移行するときには、読み出し音高の変更は行なっていない。このため、各音節の波形データの本来有している各音節の音高の相対関係がそのまま反映された音が再生されるため、生々しい再生音が得られる。例えば、2番目の音節の音高が1番目の音節に対して半音高く、3番目の音節の音高が1番目の音節に対して全音高い、各波形データを連続再生した場合には、1番目の音節は押鍵により指示された音高で再生され、2番目の音節は押鍵により指示された音高よりも半音高い音高で再生され、3番目の音節は押鍵により指示された音高よりも全音高い音高で再生される。
【0079】
図9は、「フレーズリセット」スイッチ153が押下されたとき、すなわちフレーズのリセットが指示されたときに実行される処理フローを示すフローチャートである。
【0080】
ここでは「フレーズリセット」スイッチ153の押下に応じてフレーズリセットフラグを“1”とする。
【0081】
すなわち、「フレーズリセット」スイッチ153を押下した後の最初の押鍵に関しては、それまでいずれの音節を読み出していたかに関わらず、先頭の音節を読み出し対象とする。
以上説明した実施形態では、押鍵をしたときに音節ホールドスイッチが押下されていることにより次の音節に進むのを禁止するようにしたが、フレーズリセットスイッチと同様に、音節ホールドスイッチを押下した後の最初の押鍵に関して次の音節に進むのを禁止するようにしてもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、フレーズリセットスイッチを押下した後の最初の押鍵に関してフレーズの先頭の音節に進むようにしたが、音節ホールドスイッチと同様に、押鍵をしたときにフレーズリセットスイッチが押下されていることによりフレーズの先頭の音節に進むようにしてもよい。
【0083】
また、上記の実施形態では、フレーズリセットスイッチによりフレーズの先頭の音節に進むようにしたが、フレーズの先頭以外の所定の音節に進むようにしてもよい。この「所定の音節」を使用者が任意に指定できるようにしてもよい。
【0084】
さらに、上記の実施形態では、鍵操作によって発音開始指示および発音停止指示を入力するようにしたが、他の操作子やMIDIなどの通信手段を介して入力するようにしてもよい。
【0085】
さらに、上記の実施形態では、音節連続再生を行なう場合に、音節の終了位置まで波形データを読み出した時点では読み出し音高の変更は行なっていないため、各音節のもともと有している音高の相対関係を保って波形データが再生されるが、音節の終了位置まで波形データを読み出したときに発音開始指示に対する処理と同様に新たに読み出す音節に対応して読出音高を設定し直すようにしてもよい。この場合には全ての音節が押鍵により指示された音高で再生されることになる。
【0086】
また、上記の実施形態では、音節ホールドに関わるスイッチの機能を、そのスイッチを押下せずに新たな押鍵をした場合には次の音節を読み出し、そのスイッチを押下して新たな押鍵をした場合にはそれまで読み出していた音節を読み出すものとしたが、逆の機能としてもよい。すなわち、特定のスイッチを押下せずに新たな押鍵をした場合にはそれまで読み出していた音節を読み出し、特定のスイッチを押下して新たな押鍵をした場合には次の音節を読み出すようにする。
【0087】
また、上記の実施形態では、音節ホールド中でない状態で新たな押鍵がなされたときに、読み出し中の音節の読み出しを中止して次の音節の読み出しに移行するようにしているが、読み出し中の音節の所定位置まで読み出しをしてから次の音節の読み出しに移行するようにしてもよい。音節の先頭部分は音の出始めの部分であり、この音の出始めの部分で波形データの読み出しを中止すると不自然な音が再生されることがある。新たな押鍵がなされたときに、読み出し中の音節の音の出始めの部分の読み出しを終えてから次の音節の読み出しに移行するようにすればこの不自然さを防ぐことができる。
【0088】
さらに、上述の実施形態では、音節ホールド状態における押鍵に応じて、従前の音節の開始位置から読み出す、従前の音節の母音開始位置から読み出す、従前の音節の従前の読み出し位置の続きから読み出す、の3通りの読み出し方法を、レガート形式で押鍵したか否か、リリース処理中であるか否か、波形データの読み出し中であるか否か、母音開始位置が設定されているか否か、の各条件により決定したが、別の条件で決定するようにしてもよい。例えば、これらの3つの読み出し方を排他的に指定する3つの操作情報を入力する手段を設け、この入力手段により入力された操作情報の操作内容によってその操作内容に対応する読み出し方法を選択する。ただしこの場合、母音開始位置からの読み出しが指定されたが読み出し対象の音節に母音開始位置が設定されていない場合には、従前の音節の従前の読み出し位置の続きから読み出すようにする。
【0089】
さらに、上述の実施形態では、波形データに対して最大音量を示す制御レベルをかけるようにしたが、所定のあるいは任意の時間変化する制御レベルをかけるようにしてもよい。例えば図10に示すようにアタック部分において変化する制御レベルをかけるようにすることにより、音節の開始部分にアクセントを付加することができる。「ハレルヤ」というフレーズの「ハ」の音節に関してはフレーズの最初の音節であるため波形データそのものに適度のアタック感がついているが、「レ」「ル」「ヤ」の各音節に関しては途中の音節であるため波形データそのものにはあまりアタック感がついておらず、押鍵に応じてこれらの音節を読み出したときに明瞭なアタック感を感じることができない。「レ」「ル」「ヤ」の各音節に関して図10に示すアタック特性を有する制御レベルをかけることにより、これらの音節にも適度にアタック感がつくようになる。特に、母音開始位置が設定されていない音節においてレガート形式で押鍵をしたときには、新たな押鍵に応じて音高のみが変化することとなるため、このような場合に適用すると効果的であり、このような場合には自動的にアタック特性を有する制御レベルがかけられるようにしてもよい。
【0090】
このようなアタック特性を有する制御レベルを演奏中の任意の音節にかけれることを指示する指示手段を設けることが望ましい。この場合、例えば指示手段として押しボタンスイッチを設け、このスイッチを押しながら押鍵したときにはアタック特性を有する制御レベルをその押鍵に応じて読み出される音節にかけるようにする。また、アタック特性を有する制御レベルは唯一のものとしてもよいが、予め用意された複数の制御レベルのなかから演奏者が任意のものを選択できるようにしてもよいし、演奏者が任意に作成できるようにしてもよい。さらに、どのようなアタック特性を有する制御レベルを使用するかをフレーズ毎に予め決めておくようにしてもよい。
【0091】
さらに上述の実施形態では、新たな押鍵に応じて今まで読み出していた音節の次の音節を読み出したり、今まで読み出していた音節の母音開始位置から読み出したりする際に、読み出しを行なっている波形データにかけている制御レベルを一旦急速に減衰してから新たな音節あるいは読み出し位置の波形データを読み出すようにしている。これは波形データにかかる制御レベルを減衰させずに読み出し位置を切り替えると読み出された波形データが不連続となりノイズが発生するおそれがあるためであるが、ノイズが発生しない場合には別の処理方法を採用してもよい。例えば、押鍵に応じてそれまでの読み出しを続行させつつ、新たに波形データの読み出しを行なう。なおこの場合、それまでの読み出しにより読み出される波形データにかかる制御レベルを徐々に減少させ、いわゆるクロスフェードを施す。あるいは、それまで読み出している波形データの波高値が0となった時点で、新たな波形データの読み出しを行なう。
【0092】
さらに上述の実施の形態では、元々連続している1つのオーディオフレーズの各部分を各波形データとして扱うようにしたが、本発明はこれに限られることなく、複数の波形データの再生される順序が定義されていればよい。例えば、複数のオーディオフレーズから、その一部分あるいは全部を1つの波形データとして定義することにより複数の波形データを定義するとともに、各波形データ間の再生の順序を定義しておくものであってもよい。
【0093】
さらに上述の実施の形態では、音節ホールドの指示がなされていない状態でレガート形式で演奏がなされたときに母音開始位置から読み出しを行なうようにしている。母音開始位置は所定の位置からの読み出しを指定するものであって、必ずしも母音の開始位置から読み出しを行なわなくてもよい。例えば、楽器音など母音が存在しない音を扱う場合には、波形データの途中の所定の位置を母音開始位置として見倣すようにする。
【0094】
さらに上述の実施の形態では、音節ホールドの指示とフレーズリセットの指示が両方なされている場合、音節ホールドの指示のみが有効とされているが、別の方法を採用してもよい。例えば、音節ホールドの指示とフレーズリセットの指示が両方なされている場合、フレーズリセットの指示のみを有効としたり、あるいはいずれの指示を有効とするかを使用者が任意に設定できるようにしてもよい。
【0095】
さらに上述の実施の形態では、プログラムは予めメモリ14に記憶されていたが、CDROMなどの記憶媒体にプログラムを記憶しておき、記憶媒体からメモリ14にプログラムをローディングするように構成してもよい。
【0096】
さらに上述の実施の形態では、音節連続再生が指示されているか否かにかかわらず新たな押鍵がなされ時に同じ処理を行なっているが、音節連続再生が指示されている場合には上述の実施の形態とは異なる処理を行なうようにしてもよい。例えば、音節連続再生が指示されている場合には、新たな押鍵にかかわらずそのまま読み出しを続行し音高のみを新たな押鍵に対応して変更する。この場合、新たな押鍵がなされた時に音高を変更してもよいし、読み出しの続行により読み出し対象の音節が次の新たな音節になった時に音高を変更してもよい。またこの場合、新たな押鍵により指示された音高と、音高が変更される際に読み出される音節に設定されている基準音高とに基づいて、上述の実施の形態に記載したように絶対的に読み出し音高を決定するようにしてもよい。あるいは、新たな押鍵により指示された音高と、新たな押鍵の直前の押鍵により指示された音高との音程の分だけ既に設定されている読み出し音高を変更することにより相対的に読み出し音高を決定するようにしてもよい。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、多彩な演奏を行なうことのできる波形読出装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である波形読出装置の構成図である。
【図2】オーディオフレーズの波形データのメモリマップを示す図である。
【図3】1つのフレーズの波形データのエンベロープのレベル変化(a)と、音高変化(b)を示す図である。
【図4】各フレーズに対応して設定されたパラメータのメモリマップを示す図である。
【図5】発音開始指示、すなわちここでは鍵盤における押鍵があったときに制御部で実行される処理を示すフローチャートの一部を示す図である。
【図6】発音開始指示、すなわちここでは鍵盤における押鍵があったときに制御部で実行される処理を示すフローチャートの一部を示す図である。
【図7】発音停止指示、すなわちここでは鍵における離鍵があったときに制御部で実行される処理を示すフローチャートである。
【図8】フレーズを構成する各音節の、「ループ終了位置」まで波形データの読出しが行なわれたときに実行される音節終了ルーチンフローチャートである。
【図9】「フレーズリセット」スイッチが押下されたとき、すなわちフレーズのリセットが指示されたときに実行される処理フローを示すフローチャートである。
【図10】アタック特性を有する制御レベルを示す図である。
【符号の説明】
10 波形読出装置
11 鍵盤
12 制御部
13 D/A変換器
14 メモリ
15 操作パネル
151 フレーズ選択スイッチ
152 音節ホールド
153 フレーズリセット
154 ポルタメント
155 音節連続再生
156 ループ/非ループ
157 パラメータ設定用の操作子群
158 表示器
Claims (2)
- 発音開始指示を入力する発音開始指示入力手段と、
順序付けられた複数の波形データを記憶する波形記憶手段と、
少なくとも3つの、第1の読出形式、第2の読出形式、及び第3の読出形式の中から読出形式を指定する読出形式指定手段と、
前記波形記憶手段に記憶された波形データを前記発音開始指示入力手段により入力される発音開始指示に応じて読み出す波形読出手段とを備え、
前記波形読出手段が、前記読出形式指定手段により指定された、第1の読出形式、第2の読出形式、あるいは第3の読出形式に応じて、それぞれ、今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データの次の波形データの読出し、今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データの先頭からの読出し、あるいは、今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データの途中からの読出しを行なう波形読出装置において、
所定の波形ホールド指示を前記発音開始指示の入力とは独立して入力する波形ホールド指示入力手段を備えるとともに、前記発音開始指示入力手段が、レガート形式及び非レガート形式の双方の形式での発音開始指示の入力が可能なものであって、
前記読出形式指定手段が、前記波形ホールド指示入力手段と前記発音開始指示入力手段との組合せからなり、前記波形ホールド指示手段による波形ホールド指示の非存在をもって前記第1の読出形式の指定となし、前記波形ホールド指示手段による波形ホールド指示が存在する場合には、前記発音開始指示入力手段により入力される発音開始指示が非レガート形式であるかあるいはレガート形式であるかを読出形式指定のための要件の1つとして、第2の読出形式あるいは第3の読出形式を指定するものであることを特徴とする波形読出装置。 - 前記波形データは、人声を表わすものであって、
前記読出形式指定手段によって前記第3の読出形式が指定されたときには、
前記波形読出手段が今回の発音開始指示に対する直前の発音開始指示により読み出された波形データの途中からの読出しを行なう際に該波形データ中の母音の開始位置から読出しを行なうことを特徴とする請求項1記載の波形読出装置。
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