JP4668371B2 - 音信号発生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人間が歌ったり喋ったりした一連の音声信号、または人が演奏した一連の楽音信号等をサンプリングした波形データを読み出して、音信号を発生する音信号発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子楽器の技術が進歩し、音信号(人の音声信号や楽器演奏の楽音信号等)をサンプリングして、フレーズデータとしてメモリに記憶させておき、鍵盤などで発音する音高を指定することによって、指定された音高でフレーズデータを発音するいわゆるサンプラーが開発されている。
【0003】
フレーズは、イントネーション、歌詞の歌唱の仕方、演奏の仕方などの関係で複数に区切って発音することができる。例えば、言葉のフレーズ「happy birthday to you」であれば、「happy birthday」と「to you」との2つに区切って発音することができる。以下の説明では、上記のように例えば1つのフレーズを区切って発音される複数の区間の1つ(「happy birthday」や「to you」)を「発音単位」と定義し、その区切られている波形の1つを「発音単位波形」と定義して、説明を進めることにする。
【0004】
従来、サンプラーで発音させる場合には、複数の発音単位の各々をそれぞれ鍵に割り当てておき、押鍵されると、押鍵された鍵に割り当てられている発音単位を発音するようになっている。従って、上記のように発音単位ごとに区切って発音させようとした場合には、或る鍵に「happy birthday」という発音単位を割り当て、もう1つの鍵に「to you」という発音単位を割り当てる。そして、前記或る鍵を押鍵することで、「happy birthday」を発音し、もう1つの鍵を押鍵することで「to you」を発音させることが可能であるので、一応、発音単位毎にそれぞれを区切って発音させることは可能であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のサンプラーでは、モノモード(同時に一音しか発音しないモード)においては、或る発音単位を再生中に、次の押鍵があった場合、今まで発音していた発音単位の再生を中断し、次の押鍵に割り当てられている発音単位の発音が開始されるようになっている。従って、前述の例でいえば、「happy birthday」という発音単位の発音途中、例えば「happy」まで発音した際に、「to you」に対応する鍵が押鍵されると、「happybirthday」の発音単位の発音を中断し、「to you」の発音単位の発音が開始されるので、「birthday」が読み飛ばされてしまう。
また、従来のサンプラーにおけるポリモード(複数音同時に発音可能なモード)においては、或る発音単位を再生中に、次の押鍵があった場合、今まで発音していた発音単位がまだ途中までしか発音していない状態であっても、次の押鍵に割り当てられている発音単位の発音が開始され、複数の発音単位の発音が同時に重なって発音されるようになっている。従って、前述の例でいえば、「happy birthday」という発音単位の発音途中、「happy」まで発音したときに、「to you」に対応する鍵が押鍵されると、「birthday」の発音単位の発音と「to you」の発音単位の発音が同時に重なって再生されるので、聴取者には、なんと発音されたのかが全く分からなくなる。
また、従来のサンプラーでは、或る発音単位を再生中に、その鍵が離鍵されてしまった場合、直ちに発音を中止する。従って、前述の例で言えば、「happy birthday」という発音単位の発音途中、「happy」まで発音した際に、離鍵されてしまうと、「birthday」が発音されない。
【0006】
上記したように、発音されるものが言語である場合、或る発音単位を読み出している最中に他の発音単位の発音を中断し、他の発音単位を読み出すと、言葉の意味がおかしくなってしまうし、時系列的に連続して再生させたい複数の発音単位が、同時に重なって発音されると、何を言っているのか分からなくなってしまう。
このような問題は、上記の例のような言葉のフレーズだけに存在するのではなく、楽器の演奏のフレーズが発音された場合にも当てはまる。世間一般には、「この演奏の後に続くのは、このような演奏である。」と幅広く認識されている定型フレーズ、いわゆる「お決まりのフレーズ」というフレーズが存在する。即ち、そういった定型フレーズは、或る演奏の後に続く演奏が大体決まっている。従って、定型フレーズを従来のサンプラーで各発音単位毎に区切って発音させようとした場合には、先ほど「happy birthday to you」を例にして説明した問題と同様な問題が生じる。
【0007】
さらに、複数の発音単位に区切って発音させる場合には、特に発音単位の後半の部分に言語学上や演奏上、重要な意味を持っていることが多い。上記の例では、「birthday」という部分が非常に重要で、この部分が発音されなかったり、「to you」の発音と重なって発音されてしまったりすると、全く意味が通じない。
それにも拘わらず、上述したような従来のものでは、最初の発音単位が最後まで読み出されていない状態で、次の押鍵が行われた場合や、発音単位の発音中に離鍵されてしまった場合には、発音単位の最後の言語学上、演奏上非常に重要な意味を持つ部分を発音させることができなかったり、他の発音単位と重なって発音されて、聴取できない。
【0008】
本願は、前述の問題を解決するためになされたもので、予め発音単位の波形データの中に、発音の中断を禁止する部分(有意な部分:中断すると変になってしまう部分)と、発音の中断を許容する部分(有意ではない部分:中断しても差し支えない部分)とを定義しておいて、先に発音中の発音単位波形が最後まで読み出されていない状態で、次の発音開始指示がされたり、発音停止指示されてしまった場合であっても、中断を禁止している部分においては最後まで発音し、中断を許容する部分においてのみ、発音を中断し、次の波形の発音を開始することにより、発音単位波形の大切な部分(有意の部分)を必ず発音させるようにした音信号発生装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の一態様の音信号発生装置は、人の音声信号や楽器演奏の楽音信号からなる一連のフレーズを区切って発音または演奏される複数の区間の1つである音信号を表現する少なくとも第1及び第2の発音単位波形データを記憶し、少なくとも第1の発音単位波形データは、発音または演奏が中断されるとその意味が分からなくなる有意と定義された区間に相当する第1の波形データと、繰り返し読み出し可能であって時間を延ばして発音させても違和感がなく発音または演奏が中断されても発音または演奏に差し支えのない非有意と定義された区間に相当する第2の波形データとを含むメモリ手段と、第1及び第2の発音単位波形データを読み出して、音信号を発生する音信号発生手段とを、有している。更に制御手段を有している。制御手段は、少なくとも第1及び第2の発音単位波形データに対する発音開始指示を行う発音開始指示手段と、前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の発音単位波形データの第1の波形データに基づく音信号が発生中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、少なくとも第1の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させ、前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の発音単位波形データの第1の波形データに基づく音信号が最後まで発生し終わり、続いて第2の波形データに基づく音信号が最後まで発生し終わっても第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が非供給のとき第2の波形データに基づく音信号の発生を繰り返し、第2の波形データに基づく音信号を発生している最中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、第2の波形データに基づく音信号の発生を中断して、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させるように、前記音信号発生手段を制御する。
【0010】
なお、「中断」には、直ちに読み出しを中止するものや、急速減衰させるもの、或いは緩やかなエンベロープを音信号に付与して音信号のレベルを低下させるものや、第2の波形データの読み出しは継続しているが、第2の波形データに対応する音信号の出力だけを低下させたり、カットしたりするものも含まれる。要するに、第2の波形データを「最後まで発音させないものが「中断」である。
【0011】
本発明の別の態様の音信号発生装置は、人の音声信号や楽器演奏の楽音信号からなる一連のフレーズを区切って発音または演奏される複数の区間の1つである音信号を表現する少なくとも第1及び第2の発音単位波形データを記憶し、少なくとも第1の発音単位波形データは、発音または演奏が中断されるとその意味が分からなくなる有意と定義された区間に相当する第1の波形データと繰り返し読み出し可能であって時間を延ばして発音させても違和感がなく発音または演奏が中断されても発音または演奏に差し支えのない非有意と定義された区間に相当する第2の波形データと前記有意と定義された区間に相当する第3の波形データと含むメモリ手段と、第1及び第2の発音単位波形データを読み出して、音信号を発生する音信号発生手段と、少なくとも第1及び第2の発音単位波形データに対する発音開始指示を行う発音開始指示手段と、制御手段とを、有している。制御手段は、 前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられ、第1の波形データに基づく音信号が発生中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、少なくとも第1の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから、第3の波形データに基づく音信号を発生させ、更に第3の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させ、前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられ、第1の波形データに基づく音信号が最後まで発生し終わり、続いて第2の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わっても第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が非供給のとき第2の波形データに基づく音信号の発生を繰り返し、第2の波形データに基づく音信号を発生している最中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、第2の波形データに基づく音信号の発生を中断して、第3の波形データに基づく音信号を発生させ、更に第3の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させるように、前記音信号発生手段を制御する。
【0012】
上記の別の態様において、前記第1の発音単位波形データに対する発音停止指示を行う発音停止指示手段と、制御手段とが設けられている。この制御手段は、前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の波形データに基づく音信号が発生中に、前記発音停止指示手段による前記発音停止指示が与えられた際に、少なくとも第1の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終えてから、第3の波形データに基づく音信号を発生し、更に第3の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから前記発音単位波形データに基づく音信号の発生を停止させ、前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の波形データに基づく音信号が最後まで発生し終わり、続いて第2の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わっても前記第1の発音単位波形データに対する前記発音停止指示手段による発音停止指示が非供給のとき第2の波形データに基づく音信号の発生を繰り返し、第2の波形データに基づく音信号が発生している最中に、前記発音停止指示手段による前記発音停止指示が与えられると、第2の波形データに基づく音信号の発生を中断して、第3の波形データに基づく音信号を発生し、更に第3の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから前記発音単位波形データに基づく音信号の発生を停止させるように、前記音信号発生手段を制御する。
【0013】
本発明の他の態様の音信号発生装置は、人の音声信号や楽器演奏の楽音信号からなる一連のフレーズを区切って発音または演奏される複数の区間の1つである音信号を表現する少なくとも第1及び第2の発音単位波形データを記憶し、少なくとも第1の発音単位波形データは、繰り返し読み出し可能であって時間を延ばして発音させても違和感がなく発音または演奏が中断されても発音または演奏に差し支えのない非有意と定義された区間に相当する第1の波形データと発音または演奏が中断されるとその意味が分からなくなる有意と定義された区間に相当する第2の波形データとを含むメモリ手段と、第1及び第2の発音単位波形データを読み出して、音信号を発生する音信号発生手段と、少なくとも第1及び第2の発音単位波形データに対する発音開始指示を行う発音開始指示手段と、制御手段とを、具備している。制御手段は、前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わっても第2の発音単位波形データに対する前記発音開始指示手段による発音開始指示が非供給のとき第1の波形データに基づく音信号の発生を繰り返し、第1の波形データに基づく音信号を発生中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、第1の波形データに基づく音信号の発生を中断して、第2の発音波形データに基づく音信号を発生させ、この音信号を最後まで発生し終わってから、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させるように、前記音信号発生手段を制御する。
【0036】
なお、コンピュータを上記各態様の音信号発生信号発生装置の各手段として機能させるためのプログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶させることもできる。
【0037】
上記の各態様において、第1及び第2の波形データまたは第1乃至第3の波形データをまとめて1つの発音単位波形データとし、これらの発音単位波形データが複数まとめられて、1つのフレーズデータとすることができるとした。しかし、各発音単位波形データは、1つのフレーズデータとして物理的、論理的に一連に構成されている必要はない。また、各発音単位波形データをそれぞれ構成する第1及び第2の波形データ又は第1乃至第3の波形データも、物理的、論理的に一連に構成されている必要はない。従って、1つのフレーズデータが、それぞれ異なる複数のフレーズデータのうちから選択された発音単位波形データによって構成されていてもよいし、1つの発音単位波形データが、様々な波形データの中から選択されたものによって構成されていてもよいし、1つの発音単位波形データが、別々のフレーズデータ中のバラバラの波形データから選択されたもので構成されていてもよい。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の1実施の形態の電子楽器は、図1に示すように、メモリ手段、例えばメモリ2を有している。メモリ2には、図2に示すように、複数、例えば8つのフレーズデータが記憶されている。フレーズデータは、図3に示すような、複数の発音単位からなるフレーズを所定の周波数でサンプリングして、各サンプリング値をディジタル化した波形データである。なお、メモリ2には、後述するレジスタも設けられている。メモリ2としては、RAMやROMを使用することができる他、ハードディスクやMD等も使用することができる。
【0039】
この電子楽器は、操作子、例えば鍵盤4を有している。この鍵盤4の鍵が押鍵されるごとに、これを制御部8が検出し、発音開始指示を生成する。これに応じて、メモリ2の所定のフレーズから発音単位で波形データが読み出される。また、鍵盤4の鍵を離鍵すると、制御部8がこれを検出し、発音停止指示を生成する。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するために、発音開始の指示が与えられると、メモリ2から読み出される発音単位は、元の音高で発音するとして説明する。しかし、押鍵された鍵に対応した音高に変換して発音単位を発音させることもできる。
【0040】
このメモリ2からの発音単位の読み出しは、鍵盤4からの指示及びパネル6の各ボタンの操作状態に応じて、発音開始指示手段、発音停止指示手段、音信号発生手段及び制御手段、例えば制御部8が行う。制御部8としては、例えばCPUまたはDSPまたは両者を使用することができる。制御部8が実行するプログラムは、メモリ2に記憶されている。メモリ2へのプログラムの記憶は、記録媒体、例えばフロッピィディスク、ハードディスク又はCD−ROM等からプログラムを読みとることによって行われる。メモリ2から読み出された波形データは、D/A変換器10によってアナログ信号に変換され、サウンドシステム(図示せず)に供給される。
【0041】
パネル6は、フレーズ選択ボタン12a乃至12hを有している。これらフレーズ選択ボタン12a乃至12hは、メモリ2に記憶されている8つのフレーズにそれぞれ対応して設けられている。フレーズ選択ボタン12a乃至12hのうち任意のものを選択すると、操作されたボタンに対応するフレーズが読み出し可能となるように、制御部8がメモリ2を制御する。
【0042】
これらフレーズ選択ボタン12a乃至12hの他に、パネル6は、発音単位選択ボタン14a乃至14jを有している。フレーズ選択ボタン12a乃至12hのいずれかの操作によって1つのフレーズが選択されたとき、この選択されたフレーズの複数の発音単位を、発音単位選択ボタン14aから発音単位選択ボタン12j側に向かって順に制御部8が割り当てる。これら発音単位選択ボタン14aから14jのうち任意のものを操作すると、制御部8内にメモリ2から波形データを読み出すために設けられている読み出しポインタが、操作された発音単位選択ボタンに割り当てられている発音単位の1つ前の発音単位の開始位置に設定される。鍵盤4の鍵を押鍵すると、選択された発音単位から波形データの読み出しが行われる。即ち、フレーズの途中からの読み出しが行われる。
【0043】
パネル6には、表示器16も設けられている。このパネル6には、フレーズ選択ボタン12a乃至12hの操作によって選択されたフレーズが表示され、かつ発音単位選択ボタン14a乃至14jに、どのような発音単位が割り当てられているかを表示する。
【0044】
メモリ2内に設けられているレジスタは、各フレーズごとにフレーズレジスタを有している。1つのフレーズレジスタは、図4に示すように、1つのフレーズを構成している各発音単位ごとに、前半開始位置FS、ループ開始位置LS、ループ終了位置LE、後半開始位置SS、基準音高P、急速減衰限界位置RL、リリース開始位置RSの各領域を有している。なお、図4において、FS、LS、LE、SS、P、RL、RSの末尾の数字は、何番目の発音単位のものであるかを示している。
【0045】
前半開始位置FSは、発音単位の前半部のスタートアドレスを記憶している。
ループ開始位置LSは、ループ開始のアドレスを記憶している。従って、前半開始位置FSからループ開始位置LSまでが、前半部である。
【0046】
ループ終了位置LEは、ループ区間の終了アドレスを記憶している。従って、ループ開始位置LSからループ終了位置LEまでがループ区間である。後半開始位置SSは、後半部のスタートアドレスであるアドレスを記憶しており、後半開始位置SSから次の発音開始位置FSまでが後半部である。
【0047】
基準音高Pは、その発音単位の基準音高(オリジナルキー)を記憶している。
これは、当該発音単位を発音させる際に、音高を変化させる場合に使用する。本実施の形態では、この点の説明を省略する。
【0048】
急速減衰限界位置RLは、或るアドレスを記憶しているもので、現在読み出している発音単位の波形データのアドレスが、このアドレスよりも前であれば、急速減衰させるが、このアドレスよりも後であると、急速減衰させないと言う急速減衰させるか否かの限界のアドレスを表している。即ち、急速減衰限界位置RLは、この位置よりも後で急速減衰を行っても、実質的に意味のある急速減衰が行えない位置を表している。この急速減衰限界値RLは、ループ区間内における後半開始位置SSに非常に近い位置に例えば設定されている。
【0049】
リリース開始位置RSは、離鍵された場合に、リリースを開始する位置を記憶している。このリリース開始位置RSは、後半部内に設定されている。
【0050】
フレーズレジスタは、上記の各データの他に、フレーズの終了アドレスを記憶している終了位置と、フレーズを構成している発音単位数を記憶している発音単位数、フレーズの名前を記憶しているフレーズ名の領域も有している。
【0051】
なお、発音単位によっては、後半部のない発音単位も存在するので、後半部を持たない発音単位の場合、後半開始位置SSには、最大値9999が記憶されている。これを利用して、後述するように、発音単位が後半部を有するか否かを判断している。
【0052】
図3に示すように、発音単位の前半部と後半部との間に、ループ区間が設定されている。このループ区間は、ループ開始位置LSとループ終了位置LEとにおいて、波形の振幅レベルが同じになるように設定されており、しかも、時間をのばして発音させても、違和感の無いように、フレーズが音声の場合、母音を発音している区間に設定されている。
【0053】
以下、制御部8が行う制御について説明する。その前に、図5及び図6を参照して、制御部8が行う制御の概略を説明する。図5(a)及び図6(a)に示すように、1つの発音単位には、次の4つの区間が定義されている。区間1は、前半開始位置FSとループ開始位置LSとの間であり、発音単位の前半部を示している。区間2は、ループ開始位置LSから急速減衰限界位置RLとの間の区間であり、ループ区間の前半部である。区間3は、急速減衰限界位置RLとループ終了位置LEとの間の区間であり、ループ区間の後半部である。区間4は、後半開始位置SSから次の発音単位の開始位置FSまでの区間であり、発音単位の後半部を示している。なお、発音単位波形によっては、ループ終了位置LEから後半開始位置SSまでの区間が長いものも存在する。そういった発音単位波形においては前記区間3はなく、ループ開始位置LSからループ終了位置LEまでが、区間2ということになる。なお、区間1及び区間4は、発音を中止させることが禁止されている部分として予め定義されており、一方、ループ区間(区間2及び区間3)は、発音を中断させることが許容されている部分として定義されているものである。
【0054】
全く発音が行われていない状態において、発音開始指示、例えば鍵盤4の或る鍵が押鍵されたことによるノートオンによって、制御部8は、発音単位の区間1を読み出す。区間1を読み出している間に、別の発音開始指示や発音停止指示がされなければ、区間1の読み出し終了後に、区間2の読み出しを開始する。区間2を読み出している間に別の発音開始指示や発音停止指示がされなければ、区間2の読み出し終了後に、区間3の読み出しを開始する。更に区間3を読み出している間に別の発音開始指示や発音停止指示がされなければ、区間3の読み出し終了後に、区間2の読み出しを開始する。即ち、ループ区間(区間2及び区間3)は、別の発音開始指示や発音停止指示がされない限り、繰り返し読み出されるようになっている。
【0055】
鍵盤4の或る鍵が押鍵されたことによるノートオンによって、或る発音単位が読み出されている最中に、次の発音単位の発音開始の指示、即ち、次の押鍵(ノートオン)がある場合として、図5(b)乃至(e)に示す4つの場合がある。即ち、区間1の読み出し中、区間2の読み出し中、区間3の読み出し中、区間4の読み出し中の場合である。
【0056】
図5(b)に示すように、区間1の読み出し中にノートオンがあると、区間1を最後まで読み出した後、区間2においてレベルを急速減衰させ、その後に区間4を読み出し、さらに次の発音単位を読み出す。従って、発音単位における有意な区間である区間1が読み出された後、区間2が急速減衰され、更に、有意な区間である区間4が読み出される。
【0057】
図5(c)に示すように、区間2の読み出し中にノートオンがあると、直ちに区間2においてレベルを急速減衰し、その後に区間4を読み出し、さらに次の発音単位を読み出す。
【0058】
図5(d)に示すように、区間3の読み出し中にノートオンがあると、そのまま区間3、4の読み出しを行い、その後に、次の発音単位を読み出す。
【0059】
図5(c)、(d)は、区間2または3において次のノートオンがあった場合の説明であるが、ループ終了位置LE間までの間に、次のノートオンが無く、先のノートオンに対応するノートオフもない場合(先のノートオンに対応する鍵が押鍵され続けている場合)には、押鍵され続けている間、ループ開始位置LSからループ終了位置LEを繰り返し読み出すようになっている。
【0060】
図5(e)に示すように、区間4の読み出し中にノートオンがあると、そのまま区間4の読み出しを継続し、その後に、次の発音単位を読み出す。
【0061】
このように、或る発音単位の読み出しを行っている際に、次の押鍵があっても、直ちに次の発音単位の読み出しを行うのではなく、現在発音中の発音単位を読み出した後、具体的には、次のノートオンの指示が現在発音中の発音単位のいずれの区間で与えられても、区間4、即ち発音単位の後半部を読み出した後に、次の発音単位を読み出している。従って、現在読み出されている発音単位において区間1及び区間4として予め設定してある区間(有意な部分)は、確実に読み出される。
【0062】
しかも、図5(b)、(c)に示すように、区間1において或いは区間2において、ノートオンの指示があると、急速減衰を行って、区間4が読み出されるまでの時間を短縮している。また、図5(d)に示すように、区間3にノートオンの指示があると、急速減衰するまでもなく、まもなく区間4の読み出しが可能となるので、そのまま区間3の読み出しを行い、その後に区間4の読み出しを行っている。区間4の読み出し中にノートオンの指示があると、区間4の読み出しをそのまま継続している。
【0063】
鍵盤4の或る鍵の押鍵によるノートオンの指示によって、或る発音単位が読み出されている最中に、発音停止指示、即ち離鍵(ノートオフ)の指示がある場合も、区間1の最中、区間2の最中、区間3の最中、区間4の最中の4つの場合がある。
【0064】
図6(b)に示すように、或る発音単位の区間1を読み出している最中に、離鍵指示があると、区間1を読み出してから、区間2を読み出し、区間2を読み出し始めた直後に急速減衰を行い、その後に区間4を読み出す。
【0065】
図6(c)に示すように、或る発音単位の区間2を読み出している最中に、ノートオフの指示があると、直ちに急速減衰を行い、その後に区間4を読み出す。
【0066】
図6(d)に示すように、或る発音単位の区間3を読み出している最中に、ノートオフの指示があると、区間3をそのまま読み出し、その後に、区間4を読み出す。
【0067】
特殊な場合であるが、図6(e)に示すように、次のノートオンにより区間4を読み出した後に、次の発音単位を読み出そうとした場合に、区間4を実際に読み出す前に、次のノートオンに対応するノートオフの指示があった場合、区間4を読み出し終えてから終了する。つまり、この場合、図6(b)または(c)のような形で終了し、次の発音単位波形の読み出しは行わない。
【0068】
いずれの場合も、区間4を読み出しているとき、リリース開始位置まで読み出すと、リリースが開始される。
【0069】
このように、或る発音単位の読み出しを行っている際に離鍵されても、直ちに消音するのではなく、区間1及び区間4(予め有意な部分として設定してある区間)を確実に読み出した後、消音を行っている。
【0070】
しかも、図6(b)、(c)に示すように、区間1において或いは区間2においてノートオフの指示があると、急速減衰を行って、区間4が読み出されるまでの時間を短縮している。また、図6(d)に示すように、区間3にノートオフの指示があると、急速減衰するまでもなく、まもなく区間4の読み出しが可能となるので、そのまま区間3の後半部の読み出しを行い、その後に区間4の読み出しを行っている。区間4の読み出し中にノートオフの指示があると、発音単位の重要な要素である区間4の読み出しをそのまま行っている。以上説明してきたように、図5及び図6に示すいずれの場合であっても、予め有意な部分として設定してある区間(区間1と区間4)が確実に読み出されるので、その発音単位が言語を表す場合でも、その意味が聴者に理解できる。
【0071】
以下、制御部8がメモリ2に記憶されているプログラムに従って行う処理をフローチャートに基づいて詳細に説明する。まず、図7を参照して、制御部8が行うメインルーチンを説明する。メインルーチンでは、この電子楽器に電源が投入されたときに初期化処理を行う(ステップS2)。初期化処理は、電源が投入された際に、予め定められたフレーズを選択し、そのフレーズに対応するフレーズレジスタの所定の発音単位波形(最後の発音単位波形の前半開始位置FS)に、制御部8に設けられている読み出しポインタを移動する処理である。
【0072】
次に、パネル6のフレーズ選択ボタン12a乃至12hのうち、いずれが操作されたか判断し(ステップS4)、操作されている場合、選択されたフレーズに対応するフレーズレジスタの最後の発音単位の前半開始位置FSに、読み出しポインタを移動し、かつ選択されたフレーズの各発音単位を発音単位選択ボタン14a乃至14jに割り当てる(ステップS6)。次に、フレーズ名をフレーズレジスタから読み出して、表示器16に表示すると共に、各発音単位選択ボタン14a乃至14jと、これらに割り当てられている発音単位とを、表示器16に表示する(ステップS8)。なお、読み出しポインタを最後の発音単位の前半開始位置に移動させるのは、後述する読み出しルーチンの都合上である。
【0073】
ステップS8の処理が終了した後、或いはステップS4においてフレーズ選択ボタンが操作されていないと判断されたとき、発音単位選択ボタン14a乃至14hのいずれかが操作されたか否かを判断する(ステップS10)。発音単位選択ボタン14a乃至14hのいずれかが操作された場合、選択された発音単位の1つ前の発音単位の前半開始位置FSに、読み出しポインタを移動する(ステップS12)。そして、選択された発音単位からフレーズが読み出し可能であることを、表示する(ステップS14)。なお、読み出しポインタを、選択された発音単位の1つ前の発音単位の前半開始位置FSに移動させるのも、読み出しルーチンの都合上である。
【0074】
ステップS14に続いて、或いはステップS10において発音単位選択ボタンのいずれもが操作されていないと判断されると、ステップS4に再び移行し、以下、電源が投入されている間、上記した図7のメインルーチンが繰り返される。
【0075】
鍵盤4の鍵が押鍵されると、制御部8は、パネル6で選択したフレーズ或いはデフォルトで設定されているフレーズをサンプリング周期ごとに、読み出しポインタの値に従って読み出す読み出しルーチンを実行する。この読み出しルーチンでは、波形データの読み出しと共に、区間1を読み出し終えたか、区間4を読み出し終えたかの判断を行い、区間1を読み出し終えたとき、後述する区間1終了ルーチンを実行し、区間4を読み出し終えたとき、リリース開始位置ルーチンを実行する。また、鍵盤4の鍵が離鍵された場合には、後述するノートオフ終了ルーチンを実行する。なお、この読み出しルーチンの図示は省略する。
【0076】
鍵盤4の操作に従って、制御部8は、発音の開始、停止の制御を行う。この制御を行うために、制御部8が有するワーキングエリアには、前半押鍵フラグ、前半離鍵フラグ、後半終了フラグの3つのフラグが設けられている。前半押鍵フラグは、区間1の読み出し中に発音開始(ノートオン)の指示があると、オンとなり、区間1の読み出し中に発音停止(ノートオフ)の指示があると、オフになる。前半離鍵フラグは区間1を読み出し中に発音停止(ノートオフ)の指示があると、オンとなり、区間1の読み出し中に発音開始(ノートオン)の指示があると、オフとなる。後半終了フラグは、区間1乃至4までのいずれかの区間の読み出し中に、発音開始の指示が与えられると、オンとなる。このフラグがオンの場合、区間4を読み出し終えた後、次の発音単位の前半が読み出される。
【0077】
図8は、鍵盤4の鍵が押鍵されたときに、起動されるノートオンルーチンを示したもので、押鍵されたとき、現在発音単位の読み出しが行われているか否かを判断する(ステップS16)。読み出しが行われていないと、読み出しポインタの値を次の発音単位の前半開始位置に進め、次の発音単位の読み出しの開始を指示する(ステップS18)。これによって、次にサンプリング周期のタイミングが到来したときから、読み出しルーチンによって次の発音単位の読み出しが開始される。そして、このノートオンルーチンを終了する。
【0078】
ステップS16において、発音単位の読み出し中であると判断されると、即ち、既に別の鍵が押鍵されていたと判断されると、現在、この押鍵された鍵に対応する発音単位のいずれの区間を読み出し中であるかを判断する(ステップS20)。これは、ノートオンの指示が、現在読み出されている発音単位の図5(b)乃至(e)のいずれに該当する位置で発生しているかを判断する。この判断は、例えば、読み出しポインタの値と、フレーズレジスタの各値とを比較することによって行える。
【0079】
ここで区間1が読み出し中であると判断されると、上述した前半押鍵フラグがオンとされ(ステップS22)、前半離鍵フラグがオフとされ(ステップS23)、更に後半終了フラグがオンとされ(ステップS24)、このノートオンルーチンが終了する。
【0080】
以下、読み出しルーチンによって区間1の波形データの読み出しが行われ、区間1の読み出しが終了すると、図9に示す区間1終了ルーチンが実行される。
【0081】
この区間1終了ルーチンでは、前半押鍵フラグがオンであるか判断され(ステップS26)、前半押鍵フラグがオンでなければ、前半離鍵フラグがオンであるか判断され(ステップS58)、オンでなければ、このルーチンを終了する。例えば、区間1を読み出している最中に、発音指示が与えられていないと、区間1が終了した時点では、前半押鍵フラグはオンではなく、前半離鍵フラグもオンではない。従って、このルーチンを終了する。
【0082】
前半押鍵フラグがオンの場合(区間1において次のノートオンの指示があった場合)、前半押鍵フラグをオフとし(ステップS28)、レベルの急速減衰を行う(ステップS30)。そして、現在読み出している発音単位に後半部が存在しているか否かを判断する(ステップS32)。これは、現在読み出している発音単位に対応するフレーズレジスタの後半開始位置の値が9999であるか否かを判断することによって行う。
【0083】
後半部が存在していると、後半読み出しの指示を読み出しルーチンに与え(ステップS34)、このルーチンを終了する。具体的には、読み出しポインタの値を後半開始位置に変更し、このルーチンを終了する。後半が存在しないと判断されると、次の発音単位の読み出しを指示する(ステップS36)。具体的には、読み出しポインタの値を次の発音単位の前半開始位置に変更する。
【0084】
後半部が存在すると、以下、読み出しルーチンによって、後半部(区間4)が読み出され、区間4のリリース開始位置まで読み出しが終了したとき、図10に示すリリース開始位置ルーチンが実行される。このルーチンでは、後半終了フラグがオフであるか判断され、後半終了フラグがオフであると、リリース処理を行い(ステップS39)、このルーチンを終了する。このルーチンは、後述するノートオフの場合にも、実行されるので、そのとき、次の発音単位を読み出さずにリリース処理をするために、ステップS38、S39が設けられている。
【0085】
ステップS38において、後半終了フラグがオフでないと判断されると、後半終了フラグをオフとし(ステップS40)、区間4の終了までを読み出し(ステップS41)、次の発音単位の読み出しの開始を指示する(ステップS42)。このような一連の処理によって、図5(b)に示すように区間1でノートオンの指示があった場合には、区間1を全て読み出した後に急速減衰させ、それから後半部(区間4)をリリース処理を行わずに読み出し、その後に次の発音単位を読み出すことが行われる。なお、後半部が存在しないと、急速減衰の後、直ちに次の発音単位が読み出される。
【0086】
図8のステップS20において区間2を読み出し中であると判断されると、急速減衰が行われる(ステップS44)。この急速減衰は、非常に短期間で行われるので、このステップS44において行われている。この急速減衰後に、上述したステップS32と同様に後半部があるか否かの判断が行われ(ステップS46)、後半部がある場合には、ステップS34と同様に後半部の読み出し開始の指示が与えられ(ステップS48)、更にステップS24が実行されて、このルーチンが終了する。また、ステップS46において、後半部がないと判断されると、ステップS18が実行されて、次の発音単位の読み出しの指示が与えられ、このルーチンが終了する。
【0087】
そして、後半部のある場合、後半部の読み出しが開始され、上述した図10に示すリリース開始位置ルーチンが実行され、その後、次の発音単位の読み出しが開始される。これによって、図5(c)に示すように、区間2の読み出し中にノートオンの指示が与えられると、急速減衰が行われ、後半部が存在する場合には、後半部(区間4)がリリース処理されずに読み出された後、次の発音単位が読み出される。なお、後半部が存在しない場合には、急速減衰した後、直ちに次の発音単位が読み出される。
【0088】
図8のステップS20において、区間3が読み出し中であると判断されると、区間3を全部読み出す(ステップS50)。区間3は、図5(a)に示すように非常に短い期間であるので、読み出しルーチンで読み出さずに、ステップS50において区間3の読み出しを行っている。区間3の読み出しが終了した後、ステップS48の後半の読み出しの開始の指示が与えられ、ステップS24の後半終了フラグをオンとする処理が実行される。なお、区間3は、区間4を持っている発音単位波形には全て設けるものであり、スムーズに区間4の読み出しを開始できるようにしたものであるので、前記説明のように区間4があるかないかを判断しても良いが、区間3があるかないかを判断することによって、区間4があるかないかを判断するようにしても良い。
【0089】
区間4の読み出しが実行されて、区間4のリリース開始位置までの読み出しが終了すると、上述した図10に示すリリース開始位置ルーチンが実行され、その後、次の発音単位の読み出しが開始される。これによって、図5(d)に示すように、区間3の読み出し中にノートオンの指示が与えられると、区間3を読み続け、区間3の読み出しが終了すると、後半部(区間4)が存在する場合には、後半部をリリース処理せずに読み出した後、次の発音単位が読み出される。なお、後半部が存在しない場合には、急速減衰した後、直ちに次の発音単位が読み出される。
【0090】
図8のステップS20において、読み出し中の区間が区間4であると判断されると、ステップS24において後半終了フラグがオンされて、このルーチンが終了する。従って、区間4がそのまま読み出され、区間4のリリース開始位置まで読み終わると、上述した図10のリリース開始位置ルーチンが実行され、その後に、次の発音単位の読み出しが開始される。これによって、図5(e)に示すように、区間4の読み出し中にノートオンの指示が与えられると、区間4をリリース処理せずに読み続け、区間4の読み出しが終了すると、次の発音単位が読み出される。
【0091】
図11は、今まで押鍵されていた鍵が離鍵されたときに実行されるノートオフ処理を示したものである。この処理では、まず、現在読み出されている発音単位が、ノートオフの指示があった鍵に対応する発音単位であるか判断する(ステップS52)。読み出し中の発音単位がノートオフの指示があった鍵に対応する発音単位でなければ、この処理を終了する。
【0092】
読み出し中の発音単位がノートオフの指示があった鍵に対応する発音単位であると、この読み出し中の発音単位のいずれの区間に該当するか判断する。即ち、ノートオフの指示が、図6(b)乃至(d)に示すノートオフの指示のいずれに該当するか判断する(ステップS54)。
【0093】
区間1に該当すると判断されると、前半離鍵フラグをオンにして(ステップS56)、前半押鍵フラグをオフにして(ステップS57)、この処理を終了する。従って、読み出しルーチンに従って、区間1の読み出しが継続される。
【0094】
区間1の読み出しが終了したとき、再び図9の区間1終了ルーチンが実行され、ステップS26において前半押鍵フラグがオンと判断されるが、ステップS57においてオフにされているので、ステップS58を実行する。ステップS58では、前半離鍵フラグがオンであるか判断される。前半離鍵フラグがオンでないと判断されると、このルーチンを終了する。なお、このルーチンの起動時には、図示しない読み出しルーチンにより、すでに区間2の読み出しが開始されている。
【0095】
区間1において次のノートオフの指示があると、ステップS56において前半離鍵フラグがオンとされているので、ステップS58に続いて、前半離鍵フラグをオフとし(ステップS60)、次に急速減衰を行う(ステップS62)。続いて、現在読み出し中の発音単位に後半部(区間4)が存在しているか判断する(ステップS64)。後半部が存在していると、後半の読み出し開始の指示を与え(ステップS66)、このルーチンを終了する。後半部が存在していないと、直ちに、このルーチンを終了する。
【0096】
後半部が存在しない場合、このルーチンが終了することによって、前半部が読み出された後、急速減衰して、消音することになる。一方、後半部が存在する場合、図6(b)に示すように、前半部が読み出された後、急速減衰してから後半部が読み出され、リリース開始位置ルーチンのステップS38、S39が実行されることによってリリース処理が行われて、消音することになる。
【0097】
図11のステップS54において、区間2を現在読み出していると判断されると、急速減衰が行われ(ステップS68)、後半部(区間4)が存在するか判断される(ステップS70)。後半部が存在しない場合、直ちに、このルーチンを終了する。後半部が存在する場合、後半部の読み出し開始の指示が読み出しルーチンに与えられ(ステップS72)、このルーチンを終了する。
【0098】
従って、区間2においてノートオフの指示が与えられると、直ちに急速減衰が行われ、後半部が存在しない場合には、そのまま消音され、後半部が存在する場合、図6(c)に示すように、後半部が読み出された後、リリース開始位置ルーチンのステップS38、S39が実行され、リリース処理がなされて、消音される。
【0099】
ステップS54において、区間3を現在読み出していると判断されると、区間3を全部読み出し(ステップS74)、その後、後半読み出し開始の指示を読み出しルーチンに与え、このルーチンを終了する。
【0100】
従って、区間3においてノートオフの指示が与えられると、図6(d)に示すように、区間3を全部読み出し、直ちに後半部が読み出され、リリース開始位置まで読み出された後、リリース開始位置ルーチンのステップS38、S39が実行されて、リリース処理がなされ、消音される。
【0101】
なお、ノートオフの指示が区間4において与えられた場合には、現在区間4を読み出しているので、そのまま、読み出しルーチンが区間4の読み出しを継続し、リリース開始位置まで読み出された後、リリース開始位置ルーチンのステップS38、S39が実行され、リリース処理が実行された後、消音される。そのため、区間4のための特別な処理は、このルーチン中には用意されていない。
【0102】
なお、図8のステップS20において区間2であると判断された場合、ステップS44、ステップS46、ステップS48、ステップS24を実行し、区間3であると判断された場合、ステップS50、ステップS46、ステップS48、ステップS24を実行したが、区間2であると判断されたとき、ステップS44に代えて、急速減衰指示のフラグをオンとした後に、ステップS24のみを実行して、この処理を終了するように、区間3であると判断されたとき、ステップS24のみを実行するように、このルーチンを構成し、別に急速減衰指示のフラグがオンとなったときに急速減衰の指示を読み出しルーチンに与えると共に、後半終了フラグをオンとするルーチンと、区間4の読み出しの直前に実行されるルーチンであって、後半終了フラグがオンであるとき、ステップS46、ステップS48、ステップS18を実行するルーチンとを、別に構成しても良い。
【0103】
同様に、図11のステップS54において、区間2であると判断された場合、ステップS68、ステップS70、ステップS72を実行したが、ステップS68に代えて、急速減衰指示のフラグをオンとして、このルーチンを終了するように、かつ、区間3と判断されたとき、前半離鍵フラグをオンとするステップを実行して、このルーチンを終了するように構成し、急速減衰指示のフラグがオンであるときに、急速減衰の指示を読み出しルーチンに与える処理と、前半離鍵フラグをオンとするステップとを実行するルーチンと、区間4の開始直前に実行されるルーチンであって、前半離鍵フラグがオンであるときに、ステップS46、ステップS48、ステップS18を実行するルーチンとを、別に構成しても良い。なお、この発明の実施の形態では、図10に示すリリース処理をしている最中に、次の発音開始指示がなされた場合、その発音開始指示が無視されてしまうが、図示しない従来技術を用いて、リリース処理中における発音開始指示に備えてもよい。
【0104】
また、発音単位波形データは、区間1、区間2、区間3及び区間4を備えるものとしたが、例えば前半部である区間1と後半部である区間4とのみを備えるものとすることもできる。
【0105】
なお、上記の実施の形態では、区間1を読み出している最中に、発音開始指示又は発音停止指示があった際には、区間1の読み出しを終了してから区間4を読み出すと共に、区間2及び区間3を読み出している最中に発音開始指示又は発音停止指示があった際には、即座に発音レベルを急速減衰させて区間4を読み出すように構成したが、これに代えて、発音開始指示又は発音停止指示があった際に区間1乃至3のいずれを読み出している最中であっても、即座に発音レベルを急速減衰させて、区間4を読み出すようにしてもよい。
【0106】
また、上記の実施の形態では、1つの発音単位を4つの区間に定義したが、1つの発音単位は、いくつの区間に定義してもよく、それぞれの区間に対して読み出し中断を許容するか否かを定義しておいてもよい。この場合には、発音開始指示がされた際に読み出し中断を許容しない部分のみを全て読み出して発音させ、その後に、指示された発音単位(例えば次の発音単位)を読み出して発音するようにすればよい。
【0107】
上記の実施の形態では、区間1乃至区間4をまとめて1つの発音単位と定義し、これらの発音単位が複数まとめられて、1つのフレーズデータを定義しているが、発音単位は、1つのフレーズデータとして物理的、論理的に一連に構成されている必要はなく、また、1つの発音単位を構成する区間1、2、3、4も同様に物理的、論理的に一連に構成されている必要はない。従って、1つのフレーズデータを、様々なフレーズデータ中から選択した複数の発音単位から構成することもできるし、また、各発音単位が1つのフレーズデータ中の様々な発音単位を構成している区間から選択されたもので構成されていてもよいし、1つの発音単位波形データが、異なるフレーズデータの各発音単位を構成している区間の中から任意に選択されたものによって構成されていてもよい。
【0108】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、例えば第1及び第2の波形データを含むような或る発音単位波形データを読み出している状態で、次の発音単位波形データの読み出し開始指示がなされた場合や、発音中の発音単位波形データの発音停止指示がなされた際に、直ちに次の発音単位波形データの読み出しを開始してしまったり、読み出しを停止してしまうと、意味が分からなくなる区間を読み出し中である場合には、少なくともそういった有意な部分として予め設定されている部分は、必ず読み出してから、次の部分の読み出しを開始したり、停止したりするようになっている。反対に、次の発音単位波形データの読み出し開始指示がなされた場合や、この発音単位波形データの発音停止指示がなされた際に、直ちに別の部分の読み出しを開始しても構わない部分(有意でない部分)を読み出している場合には、他の部分の読み出しを開始するようになっている。従って、本願によれば、有意な部分の発音が中断されたり、時系列的に連続して再生すべき発音単位波形データが同時に重なって発音されるようなことがなく、複数の発音単位波形データで構成されるフレーズの持つ意味を保証しつつ、素早く次の発音単位波形データの発音を開始したり、発音単位波形データの後半部を発音させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施の形態の電子楽器のブロック図である。
【図2】図1の電子楽器において使用されるメモリの一部の構成を示す図である。
【図3】図1の電子楽器において使用されるメモリに記憶されるフレーズの一部を示す波形図である。
【図4】図1の電子楽器において使用されるメモリに構成されるフレーズレジスタを示す図である。
【図5】図1の電子楽器において或る発音単位を読み出し中に他の発音単位の読み出しが指示された場合の読み出し状態を示す図である。
【図6】図1の電子楽器においてある発音単位を読み出し中に発音停止指示が与えられた場合の読み出し状態を示す図である。
【図7】図1の電子楽器のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図1の電子楽器において押鍵されたときに実行されるノートオン処理のフローチャートである。
【図9】図1の電子楽器における区間1終了ルーチンのフローチャートである。
【図10】図1の電子楽器におけるリリース開始位置ルーチンのフローチャートである。
【図11】図1の電子楽器におけるノートオフ処理ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
2 メモリ
4 鍵盤(指示手段)
8 制御部(音信号発生手段、制御手段)

Claims (5)

  1. 人の音声信号や楽器演奏の楽音信号からなる一連のフレーズを区切って発音または演奏される複数の区間の1つである音信号を表現する少なくとも第1及び第2の発音単位波形データを記憶し、少なくとも第1の発音単位波形データは、発音または演奏が中断されるとその意味が分からなくなる有意と定義された区間に相当する第1の波形データと、繰り返し読み出し可能であって時間を延ばして発音させても違和感がなく発音または演奏が中断されても発音または演奏に差し支えのない非有意と定義された区間に相当する第2の波形データとを含むメモリ手段と、
    第1及び第2の発音単位波形データを読み出して、音信号を発生する音信号発生手段と、
    少なくとも第1及び第2の発音単位波形データに対する発音開始指示を行う発音開始指示手段と、
    前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の発音単位波形データの第1の波形データに基づく音信号が発生中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、少なくとも第1の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させ、
    前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の発音単位波形データの第1の波形データに基づく音信号が最後まで発生し終わり、続いて第2の波形データに基づく音信号が最後まで発生し終わっても第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が非供給のとき第2の波形データに基づく音信号の発生を繰り返し、第2の波形データに基づく音信号を発生している最中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、第2の波形データに基づく音信号の発生を中断して、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させるように、
    前記音信号発生手段を制御する制御手段とを、
    具備する音信号発生装置。
  2. 人の音声信号や楽器演奏の楽音信号からなる一連のフレーズを区切って発音または演奏される複数の区間の1つである音信号を表現する少なくとも第1及び第2の発音単位波形データを記憶し、少なくとも第1の発音単位波形データは、発音または演奏が中断されるとその意味が分からなくなる有意と定義された区間に相当する第1の波形データと繰り返し読み出し可能であって時間を延ばして発音させても違和感がなく発音または演奏が中断されても発音または演奏に差し支えのない非有意と定義された区間に相当する第2の波形データと前記有意と定義された区間に相当する第3の波形データと含むメモリ手段と、
    第1及び第2の発音単位波形データを読み出して、音信号を発生する音信号発生手段と、
    少なくとも第1及び第2の発音単位波形データに対する発音開始指示を行う発音開始指示手段と、
    前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられ、第1の波形データに基づく音信号が発生中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、少なくとも第1の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから、第3の波形データに基づく音信号を発生させ、更に第3の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させ、
    前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられ、第1の波形データに基づく音信号が最後まで発生し終わり、続いて第2の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わっても第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が非供給のとき第2の波形データに基づく音信号の発生を繰り返し、第2の波形データに基づく音信号を発生している最中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、第2の波形データに基づく音信号の発生を中断して、第3の波形データに基づく音信号を発生させ、更に第3の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させるように、
    前記音信号発生手段を制御する制御手段とを、
    具備する音信号発生装置。
  3. 請求項2に記載の音信号発生装置において、
    前記第1の発音単位波形データに対する発音停止指示を行う発音停止指示手段と、
    前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の波形データに基づく音信号が発生中に、前記発音停止指示手段による前記発音停止指示が与えられた際に、少なくとも第1の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終えてから、第3の波形データに基づく音信号を発生し、更に第3の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから前記発音単位波形データに基づく音信号の発生を停止させ、
    前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の波形データに基づく音信号が最後まで発生し終わり、続いて第2の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わっても前記第1の発音単位波形データに対する前記発音停止指示手段による発音停止指示が非供給のとき第2の波形データに基づく音信号の発生を繰り返し、第2の波形データに基づく音信号が発生している最中に、前記発音停止指示手段による前記発音停止指示が与えられると、第2の波形データに基づく音信号の発生を中断して、第3の波形データに基づく音信号を発生し、更に第3の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わってから前記発音単位波形データに基づく音信号の発生を停止させるように、
    前記音信号発生手段を制御する制御手段とを、
    さらに具備した音信号発生装置。
  4. 人の音声信号や楽器演奏の楽音信号からなる一連のフレーズを区切って発音または演奏される複数の区間の1つである音信号を表現する少なくとも第1及び第2の発音単位波形データを記憶し、少なくとも第1の発音単位波形データは、繰り返し読み出し可能であって時間を延ばして発音させても違和感がなく発音または演奏が中断されても発音または演奏に差し支えのない非有意と定義された区間に相当する第1の波形データと発音または演奏が中断されるとその意味が分からなくなる有意と定義された区間に相当する第2の波形データとを含むメモリ手段と、
    第1及び第2の発音単位波形データを読み出して、音信号を発生する音信号発生手段と、
    少なくとも第1及び第2の発音単位波形データに対する発音開始指示を行う発音開始指示手段と、
    前記発音開始指示手段による第1の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられて第1の波形データに基づく音信号を最後まで発生し終わっても第2の発音単位波形データに対する前記発音開始指示手段による発音開始指示が非供給のとき第1の波形データに基づく音信号の発生を繰り返し、第1の波形データに基づく音信号を発生中に、第2の発音単位波形データに対する発音開始指示が与えられたとき、第1の波形データに基づく音信号の発生を中断して、第2の発音波形データに基づく音信号を発生させ、この音信号を最後まで発生し終わってから、第2の発音単位波形データに基づく音信号を発生させるように、
    前記音信号発生手段を制御する制御手段とを、
    具備する音信号発生装置。
  5. コンピュータを請求項1乃至4いずれか記載の音信号発生装置の各手段として動作させるプログラムを、記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
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