JP4685298B2 - 波形発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、波形発生装置に関し、さらに詳細には、リアルタイムで波形データを時間軸上で圧縮または伸長したり、あるいは、リアルタイムで波形データの音高や音量を変化させたりする際に用いて好適な波形発生装置に関する。
【0002】
【発明の背景】
従来の波形発生装置において、音節を持った波形データを予め記憶しておき、リアルタイムで当該記憶しておいた波形データの再生指示を行って、当該記憶しておいた波形データを読み出して発音動作させる場合に、ある音節の発音を延長させるような再生指示が与えられると、当該音節の波形データの末尾にループ再生区間を設けてループ再生を行い再生時間を延長するようにしており、一方、ある音節の発音を短縮させる場合には、現在発音中の音節の途中で再生を中止して、次の音節の先頭に再生位置を移動するようになされていた。
【0003】
即ち、従来の波形発生装置においては、再生指示の操作がなされると、その再生指示の時点ではじめて再生時間を調整する処理を行っていた。このため、ある音節の再生時間を延長する場合には、ある音節の末尾のみがループ再生されてしまい、また、ある音節の再生時間を短縮する場合には、ある音節の途中までしか再生されなかったりして、ユーザーに違和感を与えるという問題点があった。
【0004】
特に、ある音節の再生時間を短縮する際には、音節のなかの波形データを全て再生することができない、即ち、音節のなかの一部を再生し、ユーザーに与える違和感は大きいという問題点があった。
【0005】
上記した再生時間の延長または短縮と同様な問題が、ポルタメント演奏を行う際に発生する。
【0006】
即ち、従来の波形発生装置においてポルタメント演奏を行うためには、押鍵などの再生指示があった後に、当該再生指示にて指示された音高に向かってポルタメントを開始するようになされていた。つまり、従来の波形発生装置においては、次の押鍵などの再生指示があってはじめて目標音高が決まり、それによりポルタメントを開始できるものであり、次の押鍵などの再生指示があるまでピッチや音量の変化を開始することができないので、ユーザーに違和感を与えるという問題点があった。
【0007】
一方、本願出願人は、特開平10−260685号「波形データの時間軸圧縮伸長装置」として、波形データを時間軸上で圧縮または伸長することのできる音源(以下、「オーディオ・フレーズ音源」と称する。)に関する発明を出願している。
【0008】
この特開平10−260685号に開示されたオーディオ・フレーズ音源においては、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)に中央処理装置(CPU)から必要なパラメータとして「時間圧伸率情報」(「時間圧伸率情報」とは、波形データを時間軸上で圧縮・伸長させる割合を示す情報である。)および音高情報が供給され、波形データの時間軸上での圧縮処理ならびに伸長処理が行われる。
【0009】
図1には、特開平10−260685号に開示されたオーディオ・フレーズ音源の概念的なブロック構成図が示されており、DSPにより記憶手段と波形発生手段とが構成され、CPUから波形発生手段に必要なパラメータとして時間圧伸率情報および音高情報が供給される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような従来の技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記したオーディオ・フレーズ音源に示すように、波形データの時間軸上での圧縮または伸長の制御や音高の制御をリアルタイムで任意に行うことが可能な音源に用いられた技術を利用して、音節を持った波形データの時間軸上での圧縮または伸長を行う際に、音節を全て再生することを可能にして、ユーザーに違和感を与えることのないようにした波形発生装置を提供しようとするものである。
【0011】
また、本発明の目的とするところは、上記したオーディオ・フレーズ音源に示すように、波形データの時間軸上での圧縮または伸長の制御や音高の制御をリアルタイムで任意に行うことが可能な音源に用いられた技術を利用して、ポルタメント演奏の場合などにおいて、次の押鍵などの再生指示を待たずに音高や音量の変化を開始することを可能にして、ユーザーに違和感を与えることのないようにした波形発生装置を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による波形発生装置は、手動演奏あるいは自動演奏などにより実際に演奏する予定の演奏内容を示す演奏データ(以下、「予定演奏データ」と適宜に称する。)を予め入力するようにして、実際の演奏が手動演奏あるいは自動演奏で行われたときには、当該実際の演奏による演奏データに従って、予定演奏データに基づき予め記憶された波形データに対して時間軸上の圧縮、伸長あるいは音高や音量の変化を施された波形データを生成するようにしたものである。
【0013】
ここで、予定演奏データは、上記したように、ユーザーが手動演奏して入力する演奏データでもよいし、自動演奏装置などが自動演奏を行うことにより入力する演奏データでもよい。
【0014】
また、この予定演奏データは、手動演奏あるいは自動演奏などにより実際に演奏する予定の演奏を繰り返し行うことにより、適宜に更新するようにしてもよい。
【0015】
本発明のうち請求項1に記載の発明は、一連の複数区間に分割された波形データを記憶した記憶手段と、上記記憶手段に記憶された波形データの各区間にそれぞれ対応した複数の演奏データよりなる一連の演奏データを入力する演奏データ入力手段と、上記記憶手段に記憶された波形データの各区間の時間長と上記演奏データ入力手段によって入力された第1の一連の演奏データの上記各区間と対応する各演奏データの時間長とに基づいて、上記記憶手段に記憶された波形データの各区間の時間圧伸率を取得する時間圧伸率取得手段とを備え、上記演奏データ入力手段によって入力された上記各区間と対応する各演奏データよりなる第2の一連の演奏データに従って波形データを再生する波形再生装置において、上記時間圧伸率取得手段によって取得された上記第2の一連の演奏データの各演奏データと対応する上記各区間の時間圧伸率に基づいて、上記記憶手段に記憶された波形データの上記各区間を圧縮伸長して新たな波形データを生成する波形生成手段を有するようにしたものである。
【0016】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、一連の複数区間に分割された波形データを記憶した記憶手段と、上記記憶手段に記憶された波形データの各区間にそれぞれ対応した複数の演奏データよりなる一連の演奏データを入力する演奏データ入力手段と、上記演奏データ入力手段によって入力された第1の演奏データの上記各区間に対応する各演奏データの音高情報を記憶する記憶手段とを備え、上記演奏データ入力手段によって入力された第2の一連の演奏データに従って波形データを再生する波形再生装置において、上記演奏データ入力手段によって入力された第2の一連の演奏データの各演奏データに対応する上記各区間のなかで音高が徐々に変化している区間の波形データの音高を、上記記憶手段に記憶した上記音高が徐々に変化している区間を含む上記各区間の次の区間に対応する演奏データの音高情報に基づいて変更する音高制御手段と、上記音高制御手段によって音高を変更された新たな波形データを生成する波形生成手段とを有するようにしたものである。
【0017】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、一連の複数区間に分割された波形データを記憶した記憶手段と、上記記憶手段に記憶された波形データの各区間にそれぞれ対応した複数の演奏データよりなる一連の演奏データを入力する演奏データ入力手段と、上記演奏データ入力手段によって入力された第1の演奏データの上記各区間に対応する各演奏データの音量情報を記憶する記憶手段とを備え、上記演奏データ入力手段によって入力された第2の一連の演奏データに従って波形データを再生する波形再生装置において、上記演奏データ入力手段によって入力された第2の一連の演奏データの各演奏データに対応する上記各区間のなかで音量が徐々に変化している区間の波形データの音量を、上記記憶手段に記憶した上記音量が徐々に変化している区間を含む上記各区間の次の区間に対応する演奏データの音量情報に基づいて変更する音量制御手段と、上記音量制御手段によって音量を変更された新たな波形データを生成する波形生成手段とを有するようにしたものである。
【0018】
上記した本発明において、演奏データ入力手段は、ユーザーがリアルタイムで手動演奏することにより生成された演奏データや、自動演奏装置などが自動演奏を行うことにより生成された演奏データを入力する。
【0019】
従って、上記した本発明によれば、予定演奏データ通りに手動演奏を行って、演奏データ入力手段に当該手動演奏することにより生成された演奏データを入力することにより、当該手動演奏による演奏データに従って全音節のほとんどの部分を再生可能な新たな波形データを生成することができる。
【0020】
なお、予定演奏データと当該手動演奏による演奏データとの微細な誤差は、従来から公知の手法により対処すればよい。
【0021】
即ち、予定より早く音節を進めるような手動演奏が行われた場合には、音節を進める指示を受けた時点から波形データを急速減衰させ、次の音節の先頭から波形データを再生する。この際に、音節を進める指示を受けた時点から次の音節の先頭の開始の時刻まで所定時間以内であれば、急速減衰などの処理をせずにそのまま再生を進め、次の音節の再生に移るようにしてもよい。
【0022】
また、予定より遅く音節を進めるような手動演奏が行われた場合には、先の音節の波形データの最後の数波を繰り返し再生して、次の音節へ進める指示を待機する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による波形発生装置の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0024】
図2には、本発明による波形発生装置の実施の形態の一例のブロック構成図が示されている。CPU10は、リード・オンリ・メモリ(ROM)14に記憶されたプログラムを実行し、後述する動作ならびに図5乃至図6のフローチャートに示す処理など各種の制御を行う。
【0025】
CPU10には、バス(BUS)12を介して、CPU10が各種の制御を行うために実行するプログラムなどが格納されたROM14と、CPU10によるプログラムの実行に必要な各種バッファ、レジスタあるいは鍵盤22により入力された演奏データを記憶する記憶領域やCPU10の制御により取得された時間圧伸率情報や音高情報を記憶する記憶領域などが設定されたランダム・アクセス・メモリ(RAM)16と、特開平10−260685号に開示されたオーディオ・フレーズ音源におけるDSPと同様な構成を備えており、複数の音節を持った波形データを当該複数の音節毎の区間に区切って記憶した記憶手段とCPU10から供給された時間圧伸率情報や音高情報に基づいて当該記憶手段から波形データを読み出して、当該波形データを時間圧伸や音高変更して出力する波形発生手段とを有するDSP20と、ユーザーが押鍵操作/離鍵操作することにより演奏データを生成する鍵盤22と、演奏データを出力する自動演奏装置24と、この波形再生装置の動作状態などを表示する表示装置26とが接続されている。
【0026】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明による波形発生装置の動作について詳細に説明する。
【0027】
この波形発生装置は、鍵盤22ならびに自動演奏装置24から入力された演奏データに従って元波形データを時間圧伸や音高変更して、当該演奏データに従ってユーザーが波形発生装置によって生成させたい波形データ(以下、「目標波形データ」と称する。)を生成しようとするものである。
【0028】
図3には、元波形データ(図3(a))と、当該元波形データを時間圧伸して生成させたい目標波形データ(図3(b))との一例が概念的に示されている。なお、図3においては、本発明の理解を容易にするために、元波形データと目標波形データとで音高は変化しないものとした。
【0029】
即ち、図3(a)は、波形データが、3つの音節に区切られた区間を備えており、第1音節は4分音符の長さで「アイ」と発音され、第2音節は8分音符の長さで「ラブ」と発音され、第3音節は8分音符の長さで「ユー」と発音されることを示している。
【0030】
一方、図3(b)は、元波形データの3つの音節に区切られた区間を、第1音節は8分音符の長さで「アイ」と発音し、第2音節は4分音符の長さで「ラブ」と発音し、第3音節は8分音符の長さで「ユー」と発音するものである。
【0031】
鍵盤22のある鍵が押鍵されると第1音節の再生が当該押鍵された鍵の音高で開始され、時間a’(図4参照)後に別の鍵が押鍵されると第2音節の再生が当該押鍵された別の鍵の音高で開始されるというように、鍵盤22の鍵の押鍵がある度に次の音節に再生が移行する。
【0032】
本発明による波形発生装置においては、まず、ユーザーは第1回目の演奏として、鍵盤22を押鍵操作/離鍵操作して第1音節と第2音節と第3音節との再生時間長が目標演奏データとなるように手動演奏を行う。
【0033】
このとき、予定演奏データは入力されていない状態であり、CPU10はリアルタイムでDSP20に対して、第1音節、第2音節および第3音節の全ての区間の時間圧伸率情報として「1」を送る。
【0034】
従って、図4(b)に示すように、元波形データの第1音節は再生時間長a’に急速減衰されて、a’以降の波形は再生されない。即ち、第1音節の区間については、ちょうど半分の再生が終わった時点で次の第2音節の区間の発音指示があるために、当該発音指示された時点で急速減衰して2番目の区間の先頭から発音を開始する。このため、第1音節の「アイ」が「ア」としか発音されなくなるという不具合がある。
【0035】
次に、第2音節の区間は、元波形データの2倍の長さとなるため、第2音節の区間の元波形データを再生した後に、第2音節の区間の終了点近くのループ区間を繰り返し再生する。そして、次の発音指示により急速減衰し、それから第3音節の区間を発音する。
【0036】
この第1回目の演奏は、予定演奏データとして記憶されている。この発明で重要なデータは、各区間毎の演奏時間であるので、その時間a’,b’・・・を記憶してもよいし、押鍵、離鍵の時刻を記憶し、一つの押鍵から次の押鍵までの時間を算出することにより、各区間の時間a’,b’・・・を得るようにしてもよい。
【0037】
第2回目の演奏では、この記憶した予定演奏データを参照して、時間軸圧縮伸長を行う。即ち、ある鍵が押鍵されると、まず、その鍵に対応した音高情報および演算した時間圧伸率情報a’/aをDSP20に送信する。DSP20は音高情報により指定された音高の楽音を時間圧伸率情報に応じて圧伸して再生を開始する。次の押鍵を検出する前に現音節の波形の読み出しを終了した場合は、所定区間を繰り返し読み出す。次の押鍵が検出されると、現音節の波形の再生を中止して、次の波形である第2音節の波形の再生を同様に開始する。
【0038】
第1回目の演奏では、元の波形の長さと演奏の長さとが極端に異なるため、「アイ」の「イ」が発音されなかったり、「ラブ」が「ラブー」となったり不自然であるが、2回目の演奏で1回目の演奏とほぼ同じ演奏が行われると、1回目の演奏で得た時間圧伸率情報を用いることにより上記した不自然さが解消される。
【0039】
なお、予定演奏データと当該手動演奏による演奏データとの微細な誤差は、従来から公知の手法により対処するよにすればよい。
【0040】
即ち、予定より早く音節を進めるような手動演奏が行われた場合には、音節を進める指示を受けた時点から波形データを急速減衰させ、次の音節の先頭から波形データを再生する。この際に、音節を進める指示を受けた時点から次の音節の先頭の開始の時刻まで所定時間以内であれば、急速減衰などの処理をせずにそのまま再生を進め、次の音節の再生に移るようにしてもよい。
【0041】
また、予定より遅く音節を進めるような手動演奏が行われた場合には、先の音節の波形データの最後の数波で繰り返し再生をして、次の音節へ進める指示を待機しておく。
【0042】
さらに、所定の時間以上に音節を進めるような手動演奏が行われた場合には、先の音節の再生の減衰処理を行って再生を止めればよい。
【0044】
以上において説明したように、予定演奏データと手動演奏の演奏データとに大きな差があるときには、発音される楽音は、目標演奏データによる演奏とは違う態様となる(図4(b)参照)。
【0045】
しかし、楽音をどのように発音させるかという目標が定まり、その発音をするための演奏データを手動操作で少なくとも2度入力すれば、1度目の演奏データにより各々の区間毎の時間圧伸率情報を取得するので、2度目に手動演奏するときには各々の区間毎の時間圧伸率情報がその時間長さに見合ったものとなるために、目標となる楽音を発音再生することができる。
【0046】
そして、自動演奏ならば全く誤差無く、手動演奏でもごくわずかな誤差だけで発音再生することができる。
【0047】
次に、図5乃至図6に示すフローチャートを参照しながら、この波形発生装置の時系列的な処理動作について説明する。なお、以下の説明においては、説明を簡略化して発明の理解を容易にするために、波形発生装置はモノ・モードで単音だけの発音を行うものとし、鍵盤22の押鍵/離鍵操作に基づいて演奏データを入力するものとする。
【0048】
なお、これらのルーチンは、第1回目の演奏でも数回目の演奏でも共通して実行されるものであるが、第1回目の演奏を開始する前には、時間圧伸率情報は各音節の区間ともすべて「1」に初期化され、音節を指定する区間カウンタnは「0」に初期化される。
【0049】
この実施の形態においては、鍵盤22の鍵が押鍵される度に次の音節の処理へ移行する。即ち、鍵盤22の鍵を押鍵すると、対応する音節が当該押鍵された鍵に対応する音高で発音開始され、当該押鍵された鍵を離鍵すると発音が停止される。次に鍵盤22の鍵を押鍵すると、同様に次の音節が発音される。
【0050】
なお、先に押鍵された鍵が離鍵される前に新たな鍵が押鍵された場合(こうした演奏を「レガート演奏」と称する。)の場合には、先の押鍵に対応する音節の発音を停止して、次の音節の発音を行う。
【0051】
図5のフローチャートに示す押鍵時割込み処理ルーチンについて説明する。鍵盤22の鍵が押鍵されると、この押鍵時割込み処理ルーチンが起動され、新たな押鍵があったので区間カウンタnを1つ進めて次の音節を指定する」(S502)。
【0052】
次に、区間カウンタnにより指定される音節の番号、当該音節に対応して記憶されている時間圧伸率情報、音高情報およびベロシティ値をDSP20へ出力し(S504)、DSP20に対して発音開始を指示する(S506)。
【0053】
それから、この押鍵時割込み処理ルーチンを起動した押鍵が第1回目の押鍵であるか否かを判断し(S508)、第1回目の押鍵である場合には、このルーチンを終了してメインルーチンにリターンする。一方、第1回目の押鍵でない場合には、レガート演奏であるか否かを判断し(S510)、レガート演奏でない場合には、このルーチンを終了してメインルーチンにリターンする。
【0054】
S510でレガート演奏であると判断された場合には、前回の押鍵から今回の押鍵までの時間を求めて新たな時間圧伸率情報を演算し、それを所定の記憶領域に記憶する(S512)。さらに、前回の押鍵により発音していた音節を消音し(S514)、このルーチンを終了してメインルーチンにリターンする。
【0055】
図6のフローチャートに示す離鍵時割込み処理ルーチンについて説明する。鍵盤22の鍵が離鍵されると、この離鍵時割込み処理ルーチンが起動され、レガート演奏であるか否かを判断し(S602)、レガート演奏である場合には、このルーチンを終了してメインルーチンにリターンする。
【0056】
一方、レガート演奏ではないと判断された場合には、前回の押鍵により発音していた音節を消音し(S604)、前回の押鍵された時刻からの経過時間を求めて新たな時間圧伸率情報を演算してそれを所定の記憶領域に記憶し(S606)、それからルーチンを終了してメインルーチンにリターンする。
【0057】
なお、図7には、鍵盤22の鍵の押鍵操作/離鍵操作に基づいて演奏データを入力している間の表示装置26の表示内容を示している。
【0058】
図7に示されているように、各音節を時々刻々と再生しながら、波形データの開始点から現在再生されている点までの間について、鍵盤22から入力されてきた演奏データによって確定した各音節の音高や長さを時々刻々と表示していく。
【0059】
なお、上記においては、波形データを時間軸上で圧縮伸長する場合について本発明を適用する場合について説明したが、同様に、波形データの区間毎に指示された音高を変化させる処理に本発明を適用することができる。
【0060】
即ち、音楽ではポルタメントあるいはスラーと呼ばれる、次の区間、音節などへ向かって発音される音高を徐々に変化させる奏法がある。
【0061】
図8(a)には、元波形データの音高変化の様子が模式的に示されており、第1音節は標準ピッチCからポルタメント区間において徐々に音高が高くなり、第2音節の標準ピッチであるDに変化している。
【0062】
この波形を鍵盤22で再生する際に、第1回目の演奏でCに続いてBフラットを押鍵した場合の音高の変化を図8(b)に示す。即ち、第1音節は音高Cで発音開始され、ポルタメント区間では徐々に音高Dまで変化する。次に、Bフラットが押鍵されると、第2音節がBフラットの音高で発音される。これは、非常に不自然である。
【0063】
しかしながら、1回目の演奏を記憶しておけば、2回目(本番)に同じ演奏が行われるものとして、このポルタメント区間の音高を補正することができる。図8(c)はその様子を示したものであり、1回目の演奏によって、Cの次にBフラットが指定されることがわかっているので、ポルタメント区間では音高がCからBフラットへ徐々に変化するように制御することができる。
【0064】
なお、上記において「標準ピッチ」とは、その区間の代表となるピッチのことを意味する。ある区間をあるピッチで発音指示したら、元々含まれている自然なピッチの揺らぎは残した状態でその区間を指示されたピッチで発音することになる。
【0065】
図9(a)には、元波形データの音量変化の様子が模式的に示されている。押鍵1と押鍵2とはほとんど同じ押鍵速度であるため、第1音節と第2音節との音量もほとんど同じとなる。
【0066】
音量変化については、第2音節から第3音節にかけて音量が徐々に変化している区間を経て、第3音節の音量まで変化している。
【0067】
この波形を鍵盤22で再生する際に、第1回目の演奏で押鍵1と押鍵2との押鍵速度は元波形の押鍵速度と同じような強さであって、押鍵3の押鍵速度は元波形の押鍵速度より強い場合を図9(b)に示す。即ち、第1音節および第2音節では同じ音量で発音を開始し、音量が徐々に変化している区間では第2音節の音量から第3音節の音量に向けて徐々に変化する。次に、押鍵3が元波形の音量以上の押鍵速度で押鍵されると、第3音節はその押鍵速度に見合った音量で発音される。この音量変化は、非常に不自然な繋がりとなる。
【0068】
しかしながら、1回目の演奏を記憶しておけば、2回目(本番)に同じ演奏が行われるものとして、この音量変化を徐々に行う区間の変化具合を補正することができる。図9(c)はその様子を示したものであり、1回目の演奏によって、押鍵3の押鍵速度がわかっているので、音量変化を徐々に行う区間では押鍵2の音量から押鍵3の音量へ徐々に変化するように制御することができる。
【0069】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(4)に示すように適宜に変形してもよい。
【0070】
(1)上記した実施の形態においては、時間圧伸率情報や音高情報を記憶する記憶手段を備えるものとして説明したが、これに限られるものではないことは勿論であり、時間圧伸率情報や音高情報を記憶する記憶手段を備えるようしなくてもよい。
【0071】
(2)上記した実施の形態においては、説明を簡略化して理解を容易にするために、一連の複数区間に分割された波形データの詳細な構成についての説明は省略したが、例えば、各記憶単位毎に読み出し指定可能な1つの記憶単位に記憶されている波形データであって、その波形データを区間毎に区切るためのマーク情報が付加されているものでもよいし、また、各記憶単位毎に読み出し指定可能な複数の記憶単位に波形データを区間毎に分割してそれぞれ記憶しておき、区間を区切るためのマーク情報は付加しないものでもよい。
【0072】
(3)一連の複数区間に分割された波形データを再生するに際して、完全に手動演奏で再生して発音している状態と、完全に予定演奏データにより自動演奏で再生して発音している状態とを、ユーザーが操作子を操作して任意に選択して設定することができるようにしてもよい。
【0073】
(4)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(3)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【0074】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、音節を持った波形データの時間軸上での圧縮または伸長を行う際に、音節を全て再生することが可能になり、ユーザーに違和感を与えることがないという優れた効果を奏する。
【0075】
また、本発明は、以上説明したように構成されているので、ポルタメント演奏を行う場合などにおいて、次の押鍵などの再生指示を待たずに音高や音量の変化を開始しすることが可能になり、ユーザーに違和感を与えることがないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】特開平10−260685号に開示されたオーディオ・フレーズ音源の概念的なブロック構成図である。
【図2】本発明による波形発生装置の実施の形態の一例のブロック構成図である。
【図3】元波形データ(図3(a))と、当該元波形データを時間圧伸して生成させたい目標波形データ(図3(b))との一例が示す説明図である。
【図4】本発明による波形データの時間圧伸の際の動作の説明図である。
【図5】押鍵時割込みルーチンを示すフローチャートである。
【図6】離鍵時割込みルーチンを示すフローチャートである。
【図7】鍵盤の鍵の押鍵操作/離鍵操作に基づいて演奏データを入力している間の表示装置の表示内容を示す説明図である。
【図8】本発明による波形データの音高変化の際の動作の説明図である。
【図9】本発明による波形データの音高変化の際における音量の変化の処理の説明図である。
【符号の説明】
10 中央処理装置(CPU)
12 バス(BUS)
14 リード・オンリ・メモリ(ROM)
16 ランダム・アクセス・メモリ(RAM)
20 デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)
22 鍵盤
24 自動演奏装置
26 表示装置
Claims (3)
- 一連の複数区間に分割された波形データを記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された波形データの各区間にそれぞれ対応した複数の演奏データよりなる一連の演奏データを入力する演奏データ入力手段と、
前記記憶手段に記憶された波形データの各区間の時間長と前記演奏データ入力手段によって入力された第1の一連の演奏データの前記各区間と対応する各演奏データの時間長とに基づいて、前記記憶手段に記憶された波形データの各区間の時間圧伸率を取得する時間圧伸率取得手段と
を備え、
前記演奏データ入力手段によって入力された前記各区間と対応する各演奏データよりなる第2の一連の演奏データに従って波形データを再生する波形再生装置において、
前記時間圧伸率取得手段によって取得された前記第2の一連の演奏データの各演奏データと対応する前記各区間の時間圧伸率に基づいて、前記記憶手段に記憶された波形データの前記各区間を圧縮伸長して新たな波形データを生成する波形生成手段を有する
ことを特徴とする波形発生装置。 - 一連の複数区間に分割された波形データを記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された波形データの各区間にそれぞれ対応した複数の演奏データよりなる一連の演奏データを入力する演奏データ入力手段と、
前記演奏データ入力手段によって入力された第1の演奏データの前記各区間に対応する各演奏データの音高情報を記憶する記憶手段と
を備え、
前記演奏データ入力手段によって入力された第2の一連の演奏データに従って波形データを再生する波形再生装置において、
前記演奏データ入力手段によって入力された第2の一連の演奏データの各演奏データに対応する前記各区間のなかで音高が徐々に変化している区間の波形データの音高を、前記記憶手段に記憶した前記音高が徐々に変化している区間を含む前記各区間の次の区間に対応する演奏データの音高情報に基づいて変更する音高制御手段と、
前記音高制御手段によって音高を変更された新たな波形データを生成する波形生成手段と
を有することを特徴とする波形発生装置。 - 一連の複数区間に分割された波形データを記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された波形データの各区間にそれぞれ対応した複数の演奏データよりなる一連の演奏データを入力する演奏データ入力手段と、
前記演奏データ入力手段によって入力された第1の演奏データの前記各区間に対応する各演奏データの音量情報を記憶する記憶手段と
を備え、
前記演奏データ入力手段によって入力された第2の一連の演奏データに従って波形データを再生する波形再生装置において、
前記演奏データ入力手段によって入力された第2の一連の演奏データの各演奏データに対応する前記各区間のなかで音量が徐々に変化している区間の波形データの音量を、前記記憶手段に記憶した前記音量が徐々に変化している区間を含む前記各区間の次の区間に対応する演奏データの音量情報に基づいて変更する音量制御手段と、
前記音量制御手段によって音量を変更された新たな波形データを生成する波形生成手段と
を有することを特徴とする波形発生装置。
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