JP4170486B2 - 三次元網状構造ガラス質焼結体およびその製造方法 - Google Patents

三次元網状構造ガラス質焼結体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば各種フィルター材、吸音材、断熱材、軽量骨材等に用いられ、液体濾過性、気体透過性、多孔性、吸音性、耐熱性等の性能を生かした用途に好適な三次元網状ガラス質焼結体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より前記のような各種性能を有する多孔質構造体の製造には様々な方法が用いられてきた。そのひとつは発泡成型法である。セラミックス粉末や樹脂等の主原料に発泡剤や多孔化剤等を混合分散させ、成型後に加熱乾燥あるいは焼成して気孔を形成させる方法である。多孔質セラミックス等がこの方法で製造されている。例えば特開平10−130076号公報に記載されている通り、セラミック原料および起泡剤(発泡剤)等を含有するスラリーを調製し、機械的に撹拌して気泡を形成保持して成型、焼結させてなる多孔質セラミックスが知られている。また、特開平10−12601号公報には気孔賦与材として大鋸屑を混合し、成型、焼成してなる多孔質セラミックス吸音材も知られている。
【0003】
もうひとつは有機繊維や無機繊維を使用して乾式あるいは湿式成型法にて単一ウエブの網状成型体として繊維間気孔を形成する方法である。高性能エアーフィルタや電池セパレータ等がこの方法で製造されている。これには、例えば特開平9−70512号公報に記載のようなフィルター材が知られている。
【0004】
しかし、前記の製造方法によって得られる多孔質構造体はそれぞれ問題があるために様々な用途に用いるものとして充分満足できるものはなかった。
【0005】
例えば、多孔質セラミックスについては発泡剤や多孔剤を用いるために気孔径や気孔率の調節が難しく、気孔の連通および開孔方向も不均一である。よって不均質な多孔質構造体となる。さらに多孔質セラミックスはあまり気孔径を大きくしたり気孔率を高くすると焼成後の機械的強度が低くなり加工性が悪くなる。このため、高い気孔率で均質な多孔質構造を有し、かつ大型のものを製造することが困難であるという欠点がある。
【0006】
また前記の単一ウエブの網状成型体はその成型方法(前記の乾式法及び湿式法)により形成される気孔が不規則に分散かつ交絡された繊維間の間隙によるので、気孔径は不均一となり気孔の連通方向も調節できない。このため前記の網状成型体についても高気孔率、かつ均質な多孔質構造のものを製造するのは困難であり、成型体を大型化しようとすれば製造が一層難しくなる。
【0007】
さらに前記の繊維質網状成型体ついては機械的強度を繊維の交絡強度に委ねる場合と結合材による繊維間の接着に委ねる場合があり、用途によっては機械的強度や耐薬品性、耐熱性等について充分満足できる性能が得られない場合がある。
【0008】
よって、前記の繊維質網状成型体は前記の問題点と合わせて様々な用途に用いるものとして充分満足できるものではないのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の課題は三次元網状構造で高気孔率、高強度、軽量かつ大型で加工性に優れ、製造が容易で安価なガラス質焼結体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するべく、本発明が提供する三次元網状構造ガラス質焼結体およびその製造方法はガラスフィラメントを面方向に不規則に分散かつ交絡させ形成したウェブシートを所定の厚みまで多重層に積層したのち荷重を加えながら焼成し、ガラスフィラメント交絡部を熔融接着して得られることを特徴とする。これによって、この三次元網状構造ガラス質焼結体は気孔率40%以上という高気孔率を有し、かつ多数の気孔が厚み方向に連通および開孔するようになる。
【0011】
また、前記のウエブシートに使用されるガラスフィラメントは単一あるいは2種以上のガラスフィラメントからなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体の製造方法について説明する。ガラスフィラメントを面方向に不規則に分散かつ交絡させ形成したウエブシートを製造する。このウエブシートを多重層、具体的には数十層以上になるように重ねて所定の厚さまで積層し、その後2〜20Kg/m好ましくは3〜10Kg/mの荷重を加えながら500〜1000℃の範囲の温度で焼成する。これによってウエブシート層内部および層間のガラスフィラメント交絡部だけが熔融接着してウエブシートが一体化し、三次元網状構造を有するガラス質焼結体として得られるのである。
【0013】
まず本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体の製造におけるウエブシートについて説明する。前記ウエブシートはガラスフィラメントを面方向に不規則に分散かつ交絡させ形成してなる。これは一般にはガラスフィラメントを主配合とする原料を通常の乾式および湿式の成型方法により製造するということであり、前記の網状成型体の製造方法と同種の方法である。よって、前記ウエブシートの製造方法については乾式法として例えば、メルトブロー法、エアレイド法、カード法等があり、また湿式法として例えば、円網式、長網式、傾斜ワイヤー式等の抄造法を用いることができる。
【0014】
前記ウエブシートの形成に用いられるガラスフィラメントとしては太さ3μm以上で長さ3mm以上が好ましく、太さ6μm以上で長さ6mm以上のものがより好ましい。なお、目的や用途に合わせてガラスフィラメントの太さおよび長さを変えることで本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体では気孔径、気孔率または開孔率の調節が可能である。また場合により2種以上のガラスフィラメントを混合使用することも可能である。
【0015】
また前記ガラスフィラメントは一般的な組成であれば使用できる。例えば、Eガラス(アルミナ・ケイ酸塩系)、Cガラス(ケイ酸カルシウム系)、Aガラス(アルカリガラス系)等が挙げられ、各ガラスフィラメントの融点によってそれに適した焼成温度(500〜1000℃)を設定できる。
【0016】
前記ウエブシートには結合材を使用しない方が好ましいが、ウエブシートを積層する際に最低限の取り扱い強度を維持するだけの有機系または無機系の結合材を使用しても良い。
【0017】
前記の有機系および/または無機系の結合材としてはガラスフィラメントのウエブシートに一般に用いられる結合材を使用することができる。例えば、有機系結合材としては、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、SBR等のゴム系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂バインダーが用いられ、水溶液、エマルジョン、粉末、繊維等の任意の形で用いることが可能である。また木材パルプ等の天然繊維や、ポエステル繊維等の合成繊維を結合材として用いても良い。さらに無機系結合材の例として、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルなどの酸化物ゾル等を使用することができる。さらにこれらの結合材を2種以上併用してもいっこうにかまわない。
【0018】
本発明では目的に応じて前記ウエブシートにガラスフィラメント以外の無機繊維を適量混合することによって、本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体に様々な機能を付与することが可能である。さらに積層する各ウエブシートへのこの無機繊維の混合率を変えることによって本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体に傾斜機能を付与することもできる。ガラスフィラメント以外の無機繊維としては例えば、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維等を使用することができる。
【0019】
次に本発明の三次元網状ガラス質焼結体の製造方法におけるウエブシートの積層について説明する。積層される前記ウエブシートはその成型方法(乾式法および湿式法)のために前記の網状成型体と同様の不均一な多孔質構造となっている。しかし、このウエブシートが不均一な多孔質構造を有するものであっても、このウエブシートを多重層、具体的には数十層以上に及ぶ非常に多くの枚数重ねて積層したものを焼成することによって各ウエブシート層の気孔が厚み方向に連通し、気孔径が均一化するのである。
【0020】
さらに積層される前記ウエブシートはその成型方法のために厚み方向の気孔の開孔率が高くなっている。従って、このウエブシートを積層することによって焼成後に得られた本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体は40%以上という高い気孔率を有し、厚み方向に開孔している多数の気孔が互いに連通することになるのである。
【0021】
前記の2つの積層の効果により、本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体は気孔径が不均一になることなく、多数の気孔が厚み方向に連通及び開孔し、かつ40%以上という高い気孔率を有する三次元網状構造体を得ることができるのである。すなわち前記の発泡成型法や単一ウエブ成型法のように高気孔率かつ均質な多孔質構造体を製造することが困難ということがないのである。
【0022】
さらに本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体では様々なガラスフィラメント配合や大きさ(長さ及び幅)のウエブシートを使用することができる。前記に記載の通り、ウエブシートの層の数を増やして厚みを大きくしても三次元網状構造を不均一化することがないので、焼成後に様々な種類や大きさ(長さ、幅及び厚み)の三次元網状構造ガラス質焼結体が容易に製造することが可能となる。
【0023】
次いで本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体の製造方法における焼成について説明する。本発明では前記のウエブシートを所定の厚みまで積層したものを厚み方向に荷重板等の治具を用いて2〜20Kg/m好ましくは3〜10Kg/mの荷重を加えながら500〜10000℃の範囲の温度で焼成する。これによって、ウエブシート層内部および積層したウエブシート層間におけるガラスフィラメントの交絡部だけが熔融接着して各ウエブシートが一体化する。よって得られた三次元網状構造のガラス質焼結体は機械的強度が焼成前のガラスフィラメント間の交絡および/または結合材の接着からガラスフィラメント交絡部の熔融接着に依存するようになるので、前記のような従来の乾式法や湿式法による網状成型体と比較して耐薬品性や耐熱性等が飛躍的に向上し、機械的強度も充分満足できるものが得られるのである。
【0024】
従って、本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体の製造方法によれば大型のものでも軽量で、かつ高強度のものが得られる。よって本発明の三次元網状構造ガラス質焼結体は前記の発泡成型法や単一ウエブ成型法によって得られた多孔質構造体に比べて切断や穴開け等の加工性にも優れるようになる。
【0025】
また本発明における焼成時の荷重は2〜20Kg/m好ましくは3〜10Kg/mの範囲に設定する。このことによって、ウエブシート積層体を均一に焼成することが可能になり、厚み方向および面方向のかさ密度も均一にできる。すなわち、20Kg/mより大きい荷重を加えると積層したウエブシートの下部ウエブシートのへたりが大きくなり焼成後の焼結体の厚み方向および面方向のかさ密度が不均一になる。さらに2Kg/m未満のような低荷重で焼成した場合、積層したウエブシートの上部の押さえが充分でなく、下部より上部の方が焼成収縮が大きくなり焼結体が変形することになる。特に無荷重で焼成した場合にこの変形が顕著となる。よって、本発明では従来のように積層体を焼成する場合に起きうる嵩密度の不均一化や変形ということを考慮することなく、所定の厚みのガラスフィラメントウエブシート積層体を容易に焼成することができる。従って、本発明のガラス質焼結体はガラスフィラメントウエブシートの積層によって実現される均質な三次元網状構造を焼成時の嵩密度の不均一化や変形によって不均質なものにしてしまうことはないのである。
【0026】
また前記の焼成は一般の焼成炉を用いて行うことができるが、例えば電気炉やシャトルキルン等のバッチ炉やローハースキルン等の連続炉にて酸化あるいは還元焼成によって行うことができる。
【0027】
本発明の三次元網状構造ガラス質構造体は従来の発泡成型法や単一ウエブ成型法に比べて成型および焼成が簡単にできるので、これらの従来の製造方法より容易に製造できる。また前記従来の発泡成型法や単一ウエブ成型法のように製造時に発泡剤や多孔化剤等の高価な薬剤を用いることもなく、充分な機械的強度を得るために多量の結合材を含有させることもないのでより安価に製造できるのである。
【0028】
【実施例】
次に本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものでない。
実施例1:太さ10μmで長さ13mmのアルミナ・ケイ酸塩系ガラスフィラメントを面方向に不規則に分散かつ交絡させ、その上からポリビニルアルコール水溶液を付量5g/mになるようにスプレーし乾燥後目付100g/mで500mm角のウェブシートを得た。このウェブシートを50層に積層したのちセッターに置き、10kg/mの荷重になるようにウェブシートより大きい荷重板を載せマッフル炉にて焼結温度800℃で酸化焼成しウェブシートの各交絡部を熔融接着せしめ、厚さ8.5mm、450mm角の大きさの三次元網状構造ガラス質焼結体を得た。この焼結体はかさ密度0.7g/cm、最大孔径250μm、気孔率75%、曲げ強度120kg/cmの高気孔率、高強度かつ軽量なものであった。
実施例2:太さ13μmで長さ25mmのアルミナ・ケイ酸塩系ガラスフィラメントを面方向に不規則に分散かつ交絡させ、その上から酢酸ビニルエマルジョンを付量20g/mになるようにスプレーし乾燥後目付200g/mで100cm角のウェブシートを得た。このウェブシートを100層に積層したのちセッターに置き、5kg/mの荷重になるようにウェブシートより大きい荷重板を載せシャトルキルンにて焼結温度760℃で酸化焼成しウェブシートの各交絡部を熔融接着せしめ、厚さ40mm、90cm角の大きさの三次元網状構造ガラス質焼結体を得た。この焼結体はかさ密度0.5g/cm、最大孔径320μm、気孔率80%、曲げ強度70kg/cmの高気孔率、軽量かつ大型なものであった。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明から明らかであるように、本発明の製造方法によって得られる三次元網状構造ガラス質焼結体は従来では考えられなかった高い気孔率を有し、高強度で、軽量かつ大型で加工性に優れており、また容易かつ安価に製造出来るものである。さらに、本発明の三次元構造ガラス質焼結体は多数の気孔が厚み方向に連通及び開孔しているのである。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】三次元網状構造ガラス質焼結体写真
【図2】焼結体の面方向の拡大SEM写真
【図3】焼結体の製造過程を示す説明図
【0031】
【符号の説明】
1‥‥三次元網状構造ガラス質焼結体
2‥‥ガラスフィラメント
3‥‥ガラスフィラメントの熔融部
4‥‥多重に積層されたウェブシート
5‥‥セッター
6‥‥荷重板

Claims (4)

  1. ガラスフィラメントを面方向に不規則に分散かつ交絡させ形成したウエブシートを多重層に積層したのち荷重を加えながら焼成し、該交絡部のみを熔融接着して得られることを特徴とする三次元網状構造ガラス質焼結体。
  2. 気孔率が40%以上で、かつ多数の気孔が厚み方向に連通および開孔していることを特徴とする請求項1記載の三次元網状構造ガラス質焼結体。
  3. 該ウエブシートに使用されるガラスフィラメントが単一あるいは2種以上からなることを特徴とする請求項1および2記載の三次元網状構造ガラス質焼結体。
  4. ガラスフィラメントを面方向に不規則に分散かつ交絡させ形成したウエブシートを多重層に積層したのち2〜20kg/mの荷重を加えながら焼成し、該交絡部のみを熔融接着して得られることを特徴とする三次元網状構造ガラス質焼結体の製造方法。
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