JP5549314B2 - 無機繊維質セラミックス多孔体及びその複合体、並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体において、(A)無機質短繊維を構成する(a1)非晶質物質としては、Si、C及びOを含む非晶質物質が挙げられ、実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質であることが好ましい。Mは、Ti又はZrである。
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体の製造方法において、原料となる(C)無機質繊維は、例えば、ジメチルジクロロシランを出発原料とし、これに金属ナトリウムで脱塩素縮合して合成されるポリジメチルシランを、450℃以上で加熱重縮合して合成されるポリカルボシランを前躯体とする。このポリカルボシランを溶融紡糸し、空気中100℃〜200℃で不融化処理し、さらに引き続いて窒素中1000〜1300℃で焼成することによって、Si、C、及びOからなる非晶質物質、又はβ−SiCの微結晶が非晶質中に分散しているSiC繊維を得ることができる。
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体には、本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体とSi、C、及びOを含有する無機繊維結合セラミックスとを含む。無機繊維結合セラミックスは、(X)無機繊維、(Y)結晶質物質、及び(Z)境界層から構成されている。
まず、上述した予備成形体(I)を作製する。そして、予備成形体(I)と、上述した無機繊維結合セラミックスとを接触させる。
繊維径13μmのチラノ繊維(Si;55 C;32 O;11 Ti;2(重量%),登録商標,宇部興産社製)を1000℃の空気中で40時間加熱処理して無機質繊維を得た。無機質繊維の表面には約200nmの均一な酸化層(無機物質)が形成されていた。この熱処理した無機質繊維は、内面層が(A’)(a1)Si、Ti、C及びOからなる非晶質物質から構成され、表面層が(B’)(b1)SiO2及びTiO2を主体とする非晶質物質から構成されていた。
ホットプレス成形の圧力を20MPaに変えた以外は実施例1と同様の方法で実施例2に係る無機繊維質セラミックス多孔体を得た。
ホットプレス成形の圧力を5MPaに変えた以外は実施例1と同様の方法で実施例3に係る無機繊維質セラミックス多孔体を得た。
繊維径10μmのチラノ繊維(登録商標:宇部興産株式会社製)を950℃の空気中で15時間加熱処理し、表面層と内面層からなる無機質繊維を作製した。繊維表面にはa=0.030に相当する平均約300nmの均一な表面層が形成されていた。次に、この無機質繊維の繻子織物シートを作製し、90mm×90mmに切断した後、30枚を積層して、カーボンダイス中にセットし、アルゴン雰囲気下、温度1800℃、圧力50MPaでホットプレス成形し、無機繊維結合セラミックスを得た。得られた無機繊維結合セラミックスは、β−SiC、TiC、及びCからなる結晶質超微粒子が分散したSiO2及びTiO2からなる非晶質物質から構成される無機繊維と、その無機繊維同士の間隙に、粒子径が約5〜50nmの大きさのTiCからなる結晶質微粒子が分散した非晶質なSiO2及びTiO2から構成される無機物質と、この無機繊維の表面に形成された、粒子径が約5〜20nmの大きさのTiCからなる結晶質微粒子が分散した5〜30nmの非晶質及び結晶質な乱層構造をしたCを主成分とする境界層とから構成されていた。この無機繊維結合セラミックスから50mm×50mm×厚さ3mmの板材を薄切盤及び平面研削盤を用いて採取した。この板材の上に実施例1で製造した予備成形体(I)を配置し、実施例1と同様にカーボン製のダイスに仕込み、アルゴン雰囲気中に200℃/時間の速度で1400℃まで昇温して、1400℃を保持した状態で40MPaの圧力を加えた。引き続き1750℃まで200℃/時間の速度で昇温してホットプレス成形し、実施例4に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体を得た。
ホットプレス成形の圧力を40MPaとする代わりに、20MPaに変えた以外は実施例4と同様の方法で実施例5に係る無機繊維質セラミックス多孔体とその複合体を得た。
ホットプレス成形の圧力を40MPaとする代わりに、5MPaに変えた以外は実施例4と同様の方法で実施例6に係る無機繊維質セラミックス多孔体とその複合体を得た。
図2に実施例1に係る無機繊維質セラミックス多孔体の断面組織構造をFE−SEMで観察した結果を示す。また、図6に、実施例1に係る無機繊維質セラミックス多孔体の断面組織構造の光学顕微鏡写真を示す。図6は、図2の低倍図に相当する。実施例1で得られた無機繊維質セラミックス多孔体の組織構造は、β−SiC、TiC、及びCからなる結晶質超微粒子が分散したSiO2及びTiO2からなる非晶質物質から構成される無機繊維と、粒子径が約5〜50nmの大きさのTiCからなる結晶質微粒子が分散した非晶質なSiO2及びTiO2から構成される無機物質とが強固に結合し、その周りに不規則に気孔が点在した構造となっていた。そして、この無機繊維の表面には、5〜30nmの非晶質及び結晶質な乱層構造をしたCを主成分とする境界層が偏在した無機繊維質セラミックス多孔体であることが分かった。
実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体について、アルキメデス法を用いて密度及び気孔率を求めた。結果を表1に示す。
実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体から、それぞれ厚さ1.5mm、直径10mmの円盤試験片Aを採取した。ここでの厚さ方向は、加圧軸方向のことを示す。
λ=ρCα (ρは密度を示す。)
実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体から、それぞれ長さ40mm、幅4mm、厚さ3mmの短冊状試験片Cを採取した。ここでの厚さ方向は、加圧軸方向のことを示す。
実施例4乃至6に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体から、それぞれの容積率が1:1の割合となるように、厚さ2.0mm、直径10mmの円盤試験片Bを採取した。
実施例6に係る無機繊維質セラミックス多孔体とその複合体から、それぞれ長さ40mm、幅4mm、厚さ3mmの短冊状試験片Dを採取した。
2 無機物質
3 気孔
4 境界層
5 無機繊維質セラミックス多孔体
6 無機繊維結合セラミックス
7 接合界面
Claims (14)
- (A)(a1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(Mは、Ti又はZr)、(a2)実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCとの固溶体、MC 1−x 、及びCのうち1以上からなる結晶質超微粒子が分散されたSiO 2 及びMO 2 の非晶質物質(xは0以上1未満の数である。)、並びに(a3)これら(a1)非晶質物質及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の混合物の少なくとも一つから構成される無機質短繊維と、
(B)(b1)実質的にSi、M、及びOからなる非晶質、(b2)結晶質のSiO 2 及びMO 2 からなる結晶質集合体、並びに(b3)これら(b1)非晶質及び(b2)結晶質集合体の混合物の少なくとも一つから構成される無機物質とからなり、
(A)無機質短繊維と(B)無機物質との間、及び(B)無機物質内の少なくとも一方に気孔が分散して形成され、前記気孔の占有率は、5〜50%であることを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体。 - (A)無機質短繊維と(B)無機物質の間に形成され、厚さ1〜200nmの非晶質及び結晶質の少なくとも一つの炭素からなる境界層をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の無機繊維質セラミックス多孔体。
- 1400℃以下の熱伝導率が0.1〜4.0W/m/Kであり、曲げ強度が10〜160MPaであることを特徴とする請求項1又は2記載の無機繊維質セラミックス多孔体。
- 内面層が(A’)(a1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(Mは、Ti又はZr)、(a2)実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCとの固溶体、MC 1−x 、及びCのうち1以上からなる結晶質超微粒子が分散されたSiO 2 及びMO 2 の非晶質物質(xは0以上1未満の数である。)、並びに(a3)これら(a1)非晶質物質及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の混合物の少なくとも一つから構成され、
表面層が(B’)(b1)実質的にSi、M、及びOからなる非晶質、(b2)結晶質のSiO 2 及びMO 2 からなる結晶質集合体、並びに(b3)これら(b1)非晶質及び(b2)結晶質集合体の混合物の少なくとも一つから構成される
無機質短繊維を三次元領域において不規則に配置した予備成形体(I)を形成し、
該予備成形体(I)を不活性ガス雰囲気中において1400〜1900℃の範囲の温度、5〜50MPaの範囲の圧力で加圧焼結することを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体の製造方法。 - 前記無機質短繊維の繊維長が1〜70mmであることを特徴とする請求項4記載の無機繊維質セラミックス多孔体の製造方法。
- (X)(x1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZr)、並びに(x2)β−SiC、MC、及びCのうち1以上からなる結晶質微粒子とSiO 2 及びMO 2 の非晶質物質との集合体のうち、(x1)非晶質物質及び(x2)集合体の少なくとも一つから構成される無機繊維と、
(Y)少なくとも前記(X)無機繊維の間隙に存在し、(y1)Si及びOを含む非晶質物質、及び(y2)結晶質のSiO 2 及びMO 2 からなる結晶質物質のうち、(y1)非晶質物質及び(y2)結晶質物質の少なくとも一つから構成される無機物質と、
(Z)前記(X)無機繊維の表面に形成されたCを主成分とする1〜100nmの境界層とから構成されている無機繊維結合セラミックスと、
請求項1乃至3いずれか記載の無機繊維質セラミックス多孔体とを含む無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体であって、
前記無機繊維結合セラミックスと前記無機繊維質セラミックス多孔体とが直接接合していることを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体。 - 前記(Y)無機物質は、さらに前記(y1)非晶質物質にMが含まれていることを特徴とする請求項6記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体。
- 前記(Y)無機物質には、さらに(y3)100nm以下の粒径のMCからなる結晶質微粒子無機物質が分散されていることを特徴とする請求項6又は7記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体。
- 前記(Z)境界層中には、100nm以下の粒径のMCからなる結晶質粒子が分散されていることを特徴とする請求項6乃至8いずれか記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体。
- 内面層が(A’)(a1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(Mは、Ti又はZr)、(a2)実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCとの固溶体、MC 1−x 、及びCのうち1以上からなる結晶質超微粒子が分散されたSiO 2 及びMO 2 の非晶質物質(xは0以上1未満の数である。)、並びに(a3)これら(a1)非晶質物質及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の混合物の少なくとも一つから構成され、
表面層が(B’)(b1)実質的にSi、M、及びOからなる非晶質、(b2)結晶質のSiO 2 及びMO 2 からなる結晶質集合体、並びに(b3)これら(b1)非晶質及び(b2)結晶質集合体の混合物の少なくとも一つから構成される
無機質短繊維を三次元領域において不規則に配置した予備成形体(I)を形成し、
(X)(x1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZr)、並びに(x2)β−SiC、MC、及びCのうち1以上からなる結晶質微粒子とSiO 2 及びMO 2 の非晶質物質との集合体のうち、(x1)非晶質物質及び(x2)集合体の少なくとも一つから構成される無機繊維と、
(Y)少なくとも前記(X)無機繊維の間隙に存在し、(y1)Si及びOを含む非晶質物質、及び(y2)結晶質のSiO 2 及びMO 2 からなる結晶質物質のうち、(y1)及び(y2)の少なくとも一つから構成される無機物質と、
(Z)前記(X)無機繊維の表面に形成されたCを主成分とする1〜100nmの境界層とから構成されている無機繊維結合セラミックスと前記予備成形体(I)とを接触させた状態で、不活性ガス雰囲気中、1400〜1900℃の範囲の温度、5〜50MPaの範囲の圧力で加圧焼結することを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。 - 前記接触は、前記予備成形体(I)と前記無機繊維結合セラミックスとを交互に配置して接触させていることを特徴とする請求項10記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。
- 前記(Y)無機物質は、さらに前記(y1)非晶質物質にMが含まれていることを特徴とする請求項10又は11記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。
- 前記(Y)無機物質には、さらに(y3)100nm以下の粒径のMCからなる結晶質微粒子無機物質が分散されていることを特徴とする請求項10乃至12いずれか記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。
- 前記(Z)境界層中には、100nm以下の粒径のMCからなる結晶質粒子が分散されていることを特徴とする請求項10乃至13いずれか記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。
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